説明

マンホール用ステップの取付孔の削孔方法及び削孔設備

【課題】削孔作業するマンホール内壁面の高さ位置によらず、常に楽な姿勢で削孔作業を行うことができるステップの取付孔の削孔方法及び削孔設備を提供する。
【解決手段】削孔ドリル31を備えた削孔装置と作業員50の腰掛部12を備えた作業台10を、吊下げ架台1から繰り出すチェーン3を介してマンホール40内に上下動自在に吊下げた。作業台に搭乗した作業員50が削孔ドリル31を操作してマンホール内壁面44にステップ取付用の取付孔を削孔することができるので、削孔作業するマンホール内壁面の高さ位置によらず、常に楽な姿勢で削孔作業を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水道施設などのマンホールの内壁面に作業員などが昇降する際に利用するステップを取り付けるステップの取付孔を削孔する削孔方法及び削孔設備に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、コンクリート製のマンホールの内壁面には、作業員などが昇降するための複数のステップが上下方向に所定間隔置きに設置されている。ステップは、全体としてほぼコ字状に形成されており、その両端部をマンホール内壁面に削孔した一対の取付孔に挿入して、接着用樹脂やモルタルなどにより接着固定している。
【0003】
特許文献1には従来のステップ取付孔の削孔装置が開示されている。この削孔装置を利用してマンホール内壁面にステップを取り付ける取付孔を削孔する場合、図7に示すように、前部反力受け35と後部反力受け36を備えたセンターバー34を拡張ハンドル37を回動操作することにより、センターバー34の両端を突っ張ってマンホール壁43内のマンホール内壁面44に水平に固定し、センターバー34の長手方向に前後進移動自在に取り付けたドリル取付フレーム38に左右対称に取付けた2台の電動ドリル30の削孔ドリル31を利用して、マンホール壁43に一対のステップ取付孔を同時に削孔していた。
【0004】
また、特許文献2には、長手方向両端にマンホールの内周壁に当接可能な当て板部材を備えた伸縮可能なドリル支持部材と、該ドリル支持部材に対し摺動可能に配設された摺動枠と、摺動枠に搭載されて摺動枠が前進した際にマンホールの内周壁に孔を開けるドリルと、摺動枠に回動可能に設けられた水平ピンに取り付けられると共に摺動枠に設けたラックに離脱自在に噛合されたピニオンと、ラックに噛合されたピニオンを回動させるため水平ピンに取り付けられた操作レバーと、を備えたドリル装置が開示されている。
【0005】
特許文献1に開示されたステップ取付孔の削孔装置では、一対の削孔ドリルを利用して2つのステップ取付孔を同時に削孔することができるが、マンホール内壁面の高さ方向の位置により削孔装置を操作する作業員の足場が不安定になる場合があり、削孔作業が制約を受けるおそれがある。
【0006】
また、特許文献2に開示されたドリル装置は、特許文献1の削孔装置と同様に、マンホール内壁面の高さ方向の位置により削孔作業が制約を受けるおそれがあるだけでなく、1台のドリルを備えているだけであるので、ステップ取付孔の削孔作業がさらに煩雑となってしまう。
【特許文献1】特開2007−23613号公報
【特許文献2】特開2002−160111号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、削孔作業するマンホール内壁面の高さ位置によらず、常に楽な姿勢で削孔作業を行うことができるステップの取付孔の削孔方法及び削孔設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載のマンホール用ステップの取付孔の削孔方法に係る発明は、削孔ドリルを備えた削孔装置を載置した作業台を、マンホール外に設置した吊下げ架台から吊下げたチェーンを介してマンホール内に上下動自在に吊持し、作業台に搭乗した作業員が削孔装置を操作してマンホール内壁面にステップ取付用の取付孔を削孔することを特徴とする。
請求項2に記載のマンホール用ステップの取付孔の削孔方法に係る発明は、請求項1に記載の発明において、作業台に設置した腰掛部に作業員が腰掛けた姿勢で削孔装置を操作することを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載のマンホール用ステップの取付孔の削孔設備に係る発明は、削孔ドリルを備えた削孔装置と、該削孔装置を設置する据付台と、作業員の搭乗部と、を備えた作業台と、該作業台をマンホール内で上下動自在に吊持する吊下げ架台と、を備えることを特徴とする。
請求項4に記載のマンホール用ステップの取付孔の削孔設備に係る発明は、請求項3に記載の発明において、作業台に、マンホール内壁面に取り付けたステップが通過する切欠き開口部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、マンホール外に設置した吊下げ架台から吊下げた作業台に設置した削孔装置を同じ作業台に搭乗した作業員が操作してマンホール内壁面にステップ取付用の取付孔を削孔することができるので、削孔作業するマンホール内壁面の高さ位置によらず、常に楽な姿勢で削孔作業を行うことができるステップの取付孔の削孔方法を提供することができる。
また、請求項2に係る発明によれば、請求項1の効果に加えて、作業台に設置した腰掛部に作業員が腰掛けた姿勢で削孔装置を操作することができるので、さらに楽な姿勢で削孔作業を行うことができるステップの取付孔の削孔方法を提供することができる。
【0011】
一方、請求項3に係る発明によれば、削孔作業するマンホール内壁面の高さ位置によらず、常に楽な姿勢で削孔作業を行うことができるステップの取付孔の削孔設備を提供することができる。
また、請求項4に係る発明によれば、請求項3の効果に加えて、作業台に、マンホール内壁面に取り付けたステップが通過する切欠き開口部を備えるので、同じ作業台を利用して、マンホール内壁面へのステップ取付作業や、マーンホール内壁面にステップを取り付けた後のマンホールのメンテナンス作業などを実施することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態に係るマンホール用ステップの取付孔の削孔方法及び削孔設備を図1〜図6に基づいて図7を参照しながら説明する。
まず、マンホール用ステップの取付孔の削孔方法に係る削孔作業の概要を説明する。
【0013】
図1に示すように、ステップの取付孔の削孔作業を行うマンホール40のマンホール開口部42の上方の地面41上にチェーンブロック2を備えた吊下げ架台1を設置する。その後、チェーンブロック2のチェーン3を吊下げ金具4に連結して、削孔ドリル31を備えた削孔装置を装着した作業台10をロープ7を介して吊下げる準備をする。
そして、削孔ドリル31を備えた削孔装置を設置した作業台10を、吊下げ架台1から吊下げた状態で、チェーンブロック2からチェーン3を繰り出してマンホール開口部42からマンホール40内に降下させる。この場合、作業員50は最初から作業台10に乗り込んでもよい。
【0014】
その後、作業台10をマンホール内壁面44のステップの取付孔を削孔する位置まで降下させた後、チェーン3の繰り出し作業を停止する。そして、作業台10に搭乗した作業員50が一対の削孔ドリル31を操作してマンホール内壁面44にステップ取付用の一対の取付孔を同時に削孔する。この場合、作業員50は、作業台10上に設置した腰掛部12に腰掛けた姿勢で、削孔ドリル31を備えた削孔装置をマンホール内壁面44の所定位置に位置決めして、操作レバー39を操作して削孔作業を行うことができる。
削孔作業が終了した後、再びチェーン3を繰り出して、次のステップの取付孔を削孔する位置まで降下させた後、再びステップの取付孔の削孔作業を行う。以後、チェーン3の繰り出し作業及び削孔作業を順次行って、所定数のステップの取付孔をマンホール壁43に形成する。
削孔作業の終了後は、チェーン3を巻き戻して作業台10を上昇させて、マンホール開口部42から作業台10を地面41上に取り出して、マンホール用ステップの取付孔の削孔作業を終了する。その後、削孔ドリル31を備えた削孔装置を取り外した作業台10に作業員50が搭乗して、削孔した取付孔にステップを取り付けるステップ取付作業を実施する。
【0015】
上述したように、マンホール用ステップの取付孔の削孔作業は、マンホール内壁面44に所定数の取付孔を削孔するまで連続して実施して、その後、削孔ドリル31を備えた削孔装置を取り外した作業台10に作業員50が搭乗して、削孔した取付孔にステップを取り付けるステップ取付作業を実施することを基本とするが、削孔作業及びステップ取付作業は、一対の取付孔を削孔した後に順次ステップの取付作業を繰り返して実施してもよい。
ここで、本発明に係る削孔方法で使用する作業台10には、図2に示すように、マンホール壁43に取り付けたステップ45が通過できる程度の大きさの切欠き開口部11が形成されているので、削孔作業、ステップ取付作業、または、これらの作業を組み合わせた作業でも、支障なく実施することができる。また、ステップ取付作業も作業台10に設置した腰掛部12に作業員50が腰掛けた姿勢で行うことができる。
【0016】
次に、本発明の実施の形態に係るマンホール用ステップの取付孔の削孔設備について説明する。
マンホール用ステップの取付孔の削孔設備は、一対の削孔ドリル31を備えた削孔装置と、この削孔装置を搭載する作業台10と、この作業台10をマンホール40内で上下動自在に吊持する吊下げ架台1と、から概略構成されている。
【0017】
図1に示すように、吊下げ架台1は、少なくとも3本の脚部を備えており、各脚部を広げた状態で、図1に示すように、マンホール開口部42の上方の地面41上に設置される。また、吊下げ架台1は、その上部にチェーンブロック2を備えており、このチェーンブロック2からチェーン3を繰り出すことができるように構成されている。
また、図5に示すように、作業台10を吊下げる吊下げ金具4は、ほぼ十字状に形成されており、吊下げ金具4の各端部の上面にはチェーンを掛止する掛止環5が、また、各端部の下面には、ロープ7を掛け止めるフック6が、それぞれ取り付けられている。なお、図5には、チェーンブロック2のチェーン3と吊り下げ金具4の各端部の上面に取り付けた掛止環5とを連結するチェーンは図示を省略している。
【0018】
そして、チェーン3を介して作業台10を吊下げる場合には、まず、各ロープ7の一端部に取り付けた掛止具19を、それぞれ作業台10の四隅に固着した後、各ロープ7の他端部を、それぞれフック6に掛けて、作業台10に吊下げ金具4を取り付ける。次に、吊下げ金具4の各掛止環5に、それぞれチェーンの一端部を掛止した後、各チェーンの他端部を、チェーン3の端部に取り付けた掛止環に掛け止める。この状態で、図1及び図5に示すように、作業台10を吊下げる準備が完了する。なお、作業台10と吊下げ金具4とを連結する4本のロープ7は、作業台10の四隅と十字形状の吊下げ金具4との間に左右方向に間隔をあけて配設されているため、図1に示すように、作業台10に作業員50が搭乗した際に邪魔になることはない。
【0019】
図2及び図3に示すように、作業台10はほぼ円盤状のグレーチングから構成されており、図2の図視方向に格子状に複数の貫通孔が形成されている。作業台10の外径は、マンホール40のマンホール開口部42(図1参照)を通過できる程度の外径で、マンホール壁43のマンホール内壁面44の内径よりも小径に形成されている。また、作業台10には、マンホール壁43に取付端部46を取り付けたステップ45と干渉しないような大きさの切欠き開口部11が形成されている。このように、作業台10に切欠き開口部11を形成することにより、マンホール内壁面44にステップ45を取り付けるステップ取付作業やマンホール内壁面44にステップ45を取り付けた後のメンテナンス作業などを、ステップ45が邪魔になることがなく容易に実施することができる。
また、図示した作業台10はほぼ円盤状のグレーチングから構成されているが、作業台10をヒンジを利用して二つ折り構造に構成することにより、作業台10をマンホール開口部42から挿入する場合、挿入作業をさらに容易にすることができる。この場合、作業台10の切欠き開口部11とほぼ平行する方向(後述するセンターバー保持具18と直交する方向)に沿って、作業台10を二つ折り構造に構成する方がよいが、どの方向に沿って二つ折り構造にしてもよい。さらに、作業台10は、3部材以上に分断して、各分断部に沿って折り畳むような構造を採用することもできる。
そして、作業台10は、図1に示すように、吊下げ架台1から繰り出すチェーン3、吊下げ金具4及び少なくとも4本のロープ7を介して、マンホール40内に上下動自在に吊下げられる。
【0020】
また、図3に示すように、作業台10には、据付台基部14及び据付台本体15が図示しない締結手段(例えば、ボルト及びナット)を介して取り付けられている。据付台基部14及び据付台本体15は有底円筒部材から構成されており、据付台本体15を据付台基部14に挿入して両者の各底部を重ね合わせた状態で図示しない締結手段で作業台10に取り付けられる。据付台本体15の上部には、切欠き開口部11とほぼ平行に支持杆16が取り付けられている。この支持杆16は、図4に示すセンターバー保持具18を前後揺動自在に支持する。また、据付台本体15の上部には、支持杆16と直交する方向に一対の切欠き17が形成されており、これらの切欠き17にセンターバー保持具18が遊嵌されている。センターバー保持具18は支持杆16に支持された状態で、一対の切欠き17にガイドされて前後方向に揺動する。
【0021】
さらに、図6に示すように、作業台10には、削孔装置と腰掛台12が設置される。ここで、削孔装置は、図7に示す従来の削孔装置とほぼ同じ部材から構成されている。簡単に説明すると、図6及び図7に示すように、削孔装置は、削孔ドリル31を備えた電動ドリル30と、二台の電動ドリル30を左右対称に保持するドリル取付フレーム38と、電動ドリル30を作動させて一対の削孔ドリル31を操作する操作レバー39と、から概略構成されている。各電動ドリル30は給水装置32を備えており、削孔ドリル31によるステップ取付孔の削孔作業の際に、給水ホース33を介して削孔ドリル31の中空部から水を供給する。
【0022】
また、ドリル取付フレーム38は、センターバー34に前後進自在に取り付けられており、センターバー34は前部反力受け35と後部反力受け36を備え、拡張ハンドル37により全長が調整されるように構成されている。そして、拡張ハンドル37を操作することにより、後部反力受け36をマンホール内壁面44に押し付けて、センターバー34、すなわち、削孔装置を所定位置に位置決め固定できるようにしている。なお、図6に示すセンターバー34は前部反力受け35に拡張ハンドル37が設けられているのに対して、図7に示す従来のセンターバー34は後部反力受け36に拡張ハンドル37が設けられているが、センターバー34を伸縮する機能は同じように構成されている。
【0023】
そして、図6に示すように、腰掛台12は、外形が鳥居形状に形成されており、両方の脚部13が作業台10の格子部に挿入された状態で図示しない固定手段により固定されている。この腰掛台12は、図1に示すように、作業員50が作業台10上に搭乗した状態で腰掛けて作業ができる高さに設置されている。なお、作業台10上には、削孔装置を設置する据付台14,15と腰掛部12の両脚部13が配設されているので、作業員50が腰掛台12に腰掛けた姿勢で両足を置く作業台10の上面が作業員の搭乗部となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係るステップの取付孔を削孔する削孔方法及び削孔装置を説明する図である。
【図2】図1の削孔装置の作業台を、削孔装置を取り除いて示す平面図である。
【図3】作業台に、削孔装置を据え付ける据付台を取り付けた状態を示す斜視図である。
【図4】図3に示す作業台に、削孔装置を支持するセンターバー保持具を装着した状態を示す斜視図である。
【図5】図4に示す作業台に、吊下げ金物を装着した状態を示す斜視図である。
【図6】図4に示す作業台に、削孔装置及び腰掛台を装着した状態を示す斜視図である。
【図7】従来の削孔装置をマンホールに設置した状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 吊下げ架台、2 チェーンブロック、3 チェーン、4 吊下げ金物、5 掛止環、6 フック、7 ロープ、10 作業台、11 切欠き開口部、12 腰掛台、13 脚部、14 据付台基部、15 据付台本体、16 支持軸、17 切欠き、18 センターバー保持具、19 掛止具、30 電動ドリル、31 削孔ドリル、32 給水装置、33 給水管、34 センターバー、35 前部反力受け、36 後部反力受け、37 拡張ハンドル、38 ドリル取付フレーム、39 操作レバー、40 マンホール、41 地面、42 マンホール開口部、43 マンホール壁、44 マンホール内壁面、45 ステップ、46 取付端部、50 作業員

【特許請求の範囲】
【請求項1】
削孔ドリルを備えた削孔装置を装着した作業台を、マンホール外に設置した吊下げ架台から吊下げたチェーンを介してマンホール内に上下動自在に吊持し、作業台に搭乗した作業員が前記削孔装置を操作してマンホール内壁面にステップ取付用の取付孔を削孔することを特徴とするマンホール用ステップの取付孔の削孔方法。
【請求項2】
前記作業台に設置した腰掛部に作業員が腰掛けた姿勢で削孔装置を操作することを特徴とする請求項1に記載のマンホール用ステップの取付孔の削孔方法。
【請求項3】
削孔ドリルを備えた削孔装置と、該削孔装置を設置する据付台と、作業員の搭乗部と、を備えた作業台と、該作業台をマンホール内で上下動自在に吊持する吊下げ架台と、を備えることを特徴とするマンホール用ステップの取付孔の削孔設備。
【請求項4】
前記作業台に、マンホール内壁面に取り付けたステップが通過する切欠き開口部を備えることを特徴とする請求項3に記載のマンホール用ステップの取付孔の削孔設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−240332(P2008−240332A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−81555(P2007−81555)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(599157778)日本ステップ工業株式会社 (6)
【出願人】(591027422)株式会社ニチコン (12)
【Fターム(参考)】