説明

マンホール設置工事管理システム

【課題】 地中電線路の布設設計に基づいて、マンホールの設置場所を選定するマンホール設置工事管理システムを提供する。
【解決手段】 マンホールの設置工事を管理するマンホール設置工事管理システムであって、地中電線路の既設設備を網羅した既設設備データベース210と、地中電線路を布設するために検討すべき情報及び法令を網羅した布設情報データベース220と、マンホールを含む各種設備の工事基準及び法令を網羅した工事基準データベース230とを少なくとも含むデータベース200を具備すると共に、地中電線路の布設方式及びルートと布設されるケーブルの太さ及び条数とを少なくとも規定した布設設計1に基づいてマンホールの設置場所を選定すると共に、マンホールの構造を設計するのが困難な場合に、マンホールの設置場所を選定する選定段階及び布設設計1の設計段階の何れかの一方の段階まで戻す機能を有するマンホール設計手段110を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンホールの設置工事を管理するマンホール設置工事管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発電所や変電所などから各家庭や工場などの顧客に対して電力を供給するために、例えば、ケーブル等を地中に埋設した地中電線路が用いられている。また、この地中電線路には、ケーブル等の引入れや引抜き、あるいは接続のために、作業者が出入りすることができる程度の大きさのマンホールが設置される。
【0003】
このようなマンホールの設置工事においては、電力供給計画に基づいて決定される地中電線路の布設方式及びルート、布設されるケーブル等の布設設計が変わると、マンホールの設置場所や設計等について変更しなくてはならない。また、マンホールの設置工事では、例えば、地質調査、マンホールの設置場所の地中に既に布設されている地中電線路(管路)の調査、資材の運搬経路の検討等を行う必要があり、これらの各調査結果に基づくと、マンホールの設置場所や構造の設計等を変更しなくてはならない場合がある。さらに、実際にマンホールの設置工事を行っている最中に、例えば、他の地中電線路、水道管やガス管等の既存設備が存在していたり、近接していたりする場合、予め決定された地中電線路のルートだけでなく、ケーブル等の線種も変更しなくてはならない場合がある。このように、マンホールの設置工事は、布設設計の変更等によりマンホールの設置場所や構造の設計を変更しなくてはならず、非常に煩雑であり、工事費用が増大してしまうという問題がある。
【0004】
なお、従来から、マンホールの設置工事に関する工法や工具については種々の改良技術が提案されているが(例えば、特許文献1〜3参照)、このようなマンホールの設置工事に関し、マンホールの設置場所の選定や構造の設計等を管理する手法については全く検討されていないのが現状である。
【0005】
【特許文献1】特開2001−140270号公報(第1図)
【特許文献2】実開平7−29639号公報(第1図)
【特許文献3】実用新案登録第2530288号公報(第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような事情に鑑み、地中電線路の布設設計に基づいて、マンホールの設置場所を選定すると共にマンホールの構造を設計する作業を含むマンホールの設置工事を効率的に且つ正確に行うことができ、工事費用を大幅に削減することができるマンホール設置工事管理システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、マンホールの設置工事を管理するマンホール設置工事管理システムであって、地中電線路の既設設備を網羅した既設設備データベースと、地中電線路を布設するために検討すべき情報及び法令を網羅した布設情報データベースと、前記マンホールを含む各種設備の工事基準及び法令を網羅した工事基準データベースとを少なくとも含むデータベースを具備すると共に、地中電線路の布設方式及びルートと布設されるケーブルの太さ及び条数とを少なくとも規定した布設設計に基づいて、前記データベースを参照しながら前記マンホールの設置場所を選定すると共に前記マンホールの構造を設計する際に前記布設設計に基づくと当該マンホールの構造を設計するのが困難な場合に、前記マンホールの設置場所を選定する選定段階及び前記布設設計の設計段階の何れかの一方の段階まで戻す機能を有するマンホール設計手段を具備することを特徴とするマンホール設置工事管理システムにある。
【0008】
かかる第1の態様では、地中電線路の布設設計に基づいて、マンホールの設置場所を選定すると共にマンホールの構造を設計する作業を含むマンホールの設置工事を効率的に且つ正確に行うことができる。したがって、工事費用を大幅に削減することができる。
【0009】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記マンホール設計手段は、前記マンホールの構造を設計するのが困難な場合に前記マンホールの選定段階まで戻し、それでも前記マンホールの構造を設計するのが困難で且つ前記マンホールの設置場所を選定するのが困難な場合に前記布設設計の設計段階まで戻す機能を有することを特徴とするマンホール設置工事管理システムにある。
【0010】
かかる第2の態様では、マンホールの構造を設計するのが困難な場合に、マンホールの選定段階に一旦戻すことにより、マンホールの設置工事をより効率的に且つ正確に行うことができる。
【0011】
本発明の第3の態様は、第1又は2の態様において、前記データベースは、総合的な地中設備の情報を網羅した地域管理センターデータベースをさらに含むことを特徴とするマンホール設置工事管理システムにある。
【0012】
かかる第3の態様では、総合的な地中設備の情報を参照して、マンホールの設置場所の選定や構造の設計を行うので、その後に、総合的な地中設備との兼ね合いで、マンホールの設置場所の選定や構造の設計のやり直しがなくなり、マンホールの設置工事をより効率的に且つ確実に行うことができる。
【0013】
本発明の第4の態様は、第1〜3の何れかの態様において、前記既設設備データベースは、前記マンホールの既存設備に関するデータについても網羅していることを特徴とするマンホール設置工事管理システムにある。
【0014】
かかる第4の態様では、マンホールの設置場所を選定する際に、既存のマンホールを有効に活用することができる。
【0015】
本発明の第5の態様は、第4の態様において、前記マンホール設計手段は、前記マンホールの設計が完了した時点で必要に応じて前記既設設備データベースの前記マンホールの既存設備に関するデータを更新することを特徴とするマンホール設置工事管理システムにある。
【0016】
かかる第5の態様では、マンホールの構造の設計が完了した段階で、そのマンホールの設備データを既設設備データベースに反映することで、続けて関連するマンホールの設置工事を行う際に最新情報を参照することができ、効率的なマンホールの設置工事が可能となる。
【0017】
本発明の第6の態様は、第1〜5の何れかの態様において、前記マンホール設計手段は、前記マンホールの設置場所を検証すると前記布設設計に基づいて前記マンホールの設置工事を行うのが困難な場合に、前記布設設計の設計段階、前記マンホールの設置場所を選定する選定段階、前記マンホールの構造を設計する設計段階の何れかの段階まで戻してその戻した段階を再度行うことを特徴とするマンホール設置工事管理システムにある。
【0018】
かかる第6の態様では、現場検証によりマンホールの設置工事を行うのが困難と判断した場合に、マンホール設計手段が、布設設計の設計段階、マンホールの選定段階、マンホールの設計段階の何れかの段階に戻すことにより、マンホールの設置工事をより効率的に且つ正確に行うことができる。
【0019】
本発明の第7の態様は、第1〜6の何れかの態様において、外部の端末がネットワークを経由して接続可能に設けられていることを特徴とするマンホール設置工事管理システムにある。
【0020】
かかる第7の態様では、作業者等が端末を介してマンホールの設計データを比較的容易に参照することができ、マンホールの設置工事をより効率的に且つ正確に行うことができる。
【0021】
本発明の第8の態様は、第7の態様において、前記データベース内に設けられ前記マンホールの設置工事に関する作業手順データが蓄積される作業手順データベースと、当該作業手順データベースから前記マンホールの構造の設計に関する必要な作業手順データを抽出して前記外部の端末に案内する作業手順案内手段とをさらに具備することを特徴とするマンホール設置工事管理システムにある。
【0022】
かかる第8の態様では、作業者等が端末を介してマンホールの設計工事の進行状況に従って、必要な作業手順データを参照することができるため、マンホールの設置工事をより効率的に且つ正確に行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のマンホール設置工事管理システムによれば、地中電線路の布設設計に基づいて、マンホールの設置場所を選定すると共にマンホールの構造を設計する作業を含むマンホールの設置工事を効率的に且つ正確に行うことができ、工事費用を大幅に削減することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0025】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るマンホール設置工事管理システムの概略構成を示す図である。図1に示すように、本実施形態のマンホール設置工事管理システムは、マンホール設置工事管理サーバ100を具備し、このマンホール設置工事管理サーバ100は、地中電線路の布設設計1に基づいてマンホールの設置場所を選定すると共にマンホールの構造を設計するマンホール設計手段110と、マンホールの設置工事を行うために必要な各種情報を網羅したデータベース(DB)200とが備えられている。
【0026】
かかるマンホール設置工事管理サーバ100には、所定のネットワーク10を介して、外部から所定の端末20が接続できるようになっている。ここで、端末20は、上述した布設設計を行う社内部署の端末、又は工事請負会社等の外部会社の端末、あるいは現場の作業者が携帯する端末等であり、本実施形態では、社内部署の端末とした。なお、このような端末20としては、一般的なコンピュータの各種機能を備える情報通信機器であればよく、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)等が挙げられる。また、ネットワーク10は、LANや専用線やインターネットを介しての接続手段をいう。
【0027】
また、データベース200は、地中電線路の既設設備を網羅した既設設備データベース210と、地中電線路を布設するために検討すべき情報及び法令を網羅した布設情報データベース220と、マンホールを含む各種設備の工事基準及び法令を網羅した工事基準データベース230とを少なくとも含むものであり、本実施形態では、さらに、総合的な地中設備の情報を網羅した地域管理センターデータベース240を具備する。データベース200は、これに限定されるものではなく、さらに必要な情報を備えるものであってもよい。
【0028】
また、データベース200は、マンホール設置工事管理サーバ100内に設けられているように図示しているが、これに限定されず、全部又は一部がネットワーク等を介して接続され、マンホール設計手段110が参照できるものであればよい。
【0029】
ここで、既設設備データベース(既設設備DB)210は、既存のマンホールに関するデータや、地中電線路の地理データに関連付けられたルートや、あるいは、各ルートに布設されたケーブルの太さ、条数、種類等の仕様、ケーブルが布設された配管、共同溝、直接埋設式などの布設方式等の各種データや、管路の勾配を示すデータ等が蓄積されている。
【0030】
また、布設情報データベース(布設情報DB)220は、地中電線を布設するために検討すべき情報及び法令を網羅したものであり、技術的課題である地形情報や、地域情報、道路法や河川法などの各種法令が蓄積されている。ここで、地形情報としては、例えば、地質データ、地下水位データ等が挙げられる。地質データとしては、例えば、砂地盤、粘土地盤等の地盤の種類を示すデータが挙げられる。また、地域情報としては、例えば、道路、橋、川等、あるいは家屋、施設、電柱(電線)等の地図データが挙げられる。
【0031】
さらに、工事基準データベース(工事基準DB)230は、マンホール等の各種設備の工事基準及び法令を網羅したものであり、例えば、本実施形態では、マンホールの設置場所に関するデータや、マンホール設計データ等のマンホール工事基準データが蓄積されている。
【0032】
ここで、マンホールの設置場所に関するデータとしては、例えば、「変電所引出口等でケーブルを分散して布設する場合に、曲管では対応できない場所」、「ケーブルの引入れにおいてケーブルに加わる張力や側圧が許容値を超過する虞がある場合に、許容値以下にできる場所」、「管路の勾配が大きくケーブルの滑落防止が必要な場所」、「橋梁等で道路部分と橋梁部分との管路を接続する上で必要な場所」、「ケーブルの伸縮対策上必要な場所」等が挙げられる。
【0033】
一方、マンホール設計データとしては、例えば、マンホールの型(直線型[S型]、片方向分岐型[L型]、両方向分岐型([T型]、[π型])や種類(レジコン製マンホール、ブロック式マンホール等)、寸法データ、その他、土埋め・支保工や路面覆工、基礎工等の土木工事に関するデータ、首部の取り付け方法を示すデータ等が挙げられる。
【0034】
なお、このような工事基準データベース230には、マンホールの設置工事において必要な特殊な工法データを蓄積させてもよし、マンホールの設置工事に関連するマンホール以外の各種設備の工事基準及び法令も蓄積させてもよい。マンホール以外の地下設備工事としては、例えば、管路工事、ハンドホール工事、機器工事、地上引き込み工事等が挙げられる。
【0035】
また、地域管理センターデータベース(地域管理センターDB)240は、総合的な地中設備の情報を網羅したものであり、例えば、本実施形態では、地中電線路以外の水道管、ガス管等の配管のルート、管路数、管径及び布設方法等や、水道管用のマンホールなどの設備及び機器の位置、大きさ等が挙げられる。なお、この地域管理センターデータベース240には、地下鉄等の大規模施設等のデータについても蓄積されている。
【0036】
一方、マンホール設計手段110は、詳しくは後述するが、上述したデータベース200を参照しながら、布設設計1に基づいて、基本的にはマンホールの設置場所を選定すると共にマンホールの構造を設計し、設計した設計データ3を出力するようになっている。なお、本実施形態では、社内部署の端末20で入力された布設設計1が、ネットワーク10を経由してマンホール設置工事管理サーバ100に送信されると、マンホール設計手段110によってマンホールの設計データ3が作製され、この設計データ3は、ネットワーク10を経由して社内部署の端末20に出力(送信)されるようになっている。
【0037】
ここで、地中電線路の布設設計1とは、電力供給計画に基づいて布設されるケーブルを考慮しながら地中電線路の布設方式及びルート等(布設設計1)を設計し且つそのルートに適合させながら布設するケーブルを決定したものである。電力供給計画とは、例えば、電力供給を計画する地域や供給する電圧、容量などを定めたものであり、これに基づくと、何処の発電所からどのように電力を供給すべきかが判断される。
【0038】
また、地中電線路のルートとは、ケーブルを布設するルートのことであり、地図データに照らし合わせて道路上などの布設可能な領域に沿って設計されたものであるが既存の管路や共同溝を利用する領域も含めてルートという。
【0039】
さらに、地中電線路の布設方式は、ケーブルを地中に直接埋設する直埋式、ケーブルを配管で埋設する配管式及び水道管やガス管などの他の配管と共に共同溝に布設する共同溝式などが設定されたものである。このような布設方式は、ルートと関連付けて設定されることで、ルートの所定の領域毎に設定されている。例えば、ルートの一部の領域に既設の共同溝がある場合には、その領域に共同溝式が設定され、その他の領域に直埋式や配管式などの他の方式が設定される。
【0040】
また、地中電線路のケーブルは、布設するケーブルが特別高圧線、高圧線、高圧引込線、低圧線、低圧引込線、保安通信線から選択されるケーブルの種別や、ケーブルの太さ、条数などの仕様が設定されたものである。
【0041】
以下、マンホール設計手段110がマンホールの設置場所を選定する機能について説明する。本実施形態のマンホール設計手段110は、布設設計1に対応する地図データを布設情報データベース220から抽出すると共に、工事基準データベース230に蓄積されているマンホールの設置場所に関するデータを参照し、所定の基準に従って、マンホールの設置場所を選定する。
【0042】
ここで、所定の基準としては、例えば、ケーブルの引入れや引抜き又は接続を行うため、マンホールを約300m間隔で設置するという基準が挙げられる。マンホールの設置間隔をこれ以上とすると、例えば、ケーブルをドラムに巻いて運搬する関係上、道路の高さ制限や幅等の制約を受けて運搬できなくなる可能性があり、最悪の場合には、ルートの変更が必要となってしまうからである。なお、このようなマンホールを設置する間隔等については、例えば、布設設計のルートや、運搬ルート等に応じて、適宜調整すればよく、これに限定されるものではない。例えば、港付近にマンホールの設置場所を選定した場合には、港から直接ケーブルの引入れを行えばよいので、この場合には、ケーブルをドラムに巻いて運搬する必要がないため、上述した制約は受けないことになる。
【0043】
また、マンホールの設置場所の選定においては、工事基準データベース230に蓄積されているマンホールの設置場所に関するデータを原則としつつ、その他、運搬や既存のマンホール等を考慮して選定する。例えば、変電所出口等でケーブルを分散して施設する際に、曲管では対応できない場所がある場合には、その場所をマンホールの設置場所として選定する。また、複数の管路を経由して目的地までケーブルを布設しなければならない場合には、分岐点に分岐型マンホールを設置する必要があるため、そのような分岐点をマンホールの設置場所として選定する。さらに、ルートの全長が、基準の300m以内であっても、途中に橋梁等がある場合には、橋梁と道路との接続部分をマンホールの設置場所として選定する。また、既設設備データベース210に蓄積されている既存のマンホールの設備に関するデータを参照すると、ルート上に既存のマンホールが存在している場合に、そのマンホールが利用可能であれば、そのマンホールを選定するようにしてもよい。
【0044】
このようなマンホール設計手段110は、上述したようにマンホールの設置場所を選定するが、その際、本実施形態では、データベース200を参照し、布設設計1に基づいてマンホールの設置場所の選定を行うのが困難な場合には、布設設計1の設計段階まで戻し、布設設計1を再設計する機能を有する。
【0045】
例えば、マンホール設計手段110は、一旦選定したマンホールの設置場所に関し、その場所が、布設情報データベース220の地図データなどを詳細に検討すると、布設設計1に基づいてケーブル等の引入れや引抜きが困難な場所や、ケーブル等の資材を運搬できない場所等である場合には、再度、マンホールの設置場所を選定する。それでも現状のルートではマンホールの設置場所を選定できない等の場合には、マンホール設計手段110は、布設設計1の設計段階まで戻し、布設設計1を再設計する。なお、その後は、再設計された布設設計に基づいて、マンホール設計手段110がマンホールの設置場所の選定を繰り返し行うことになり、それでも、マンホールの設置場所を選定できない場合には、布設設計1を再設計する。
【0046】
次に、マンホール設計手段110がマンホールの構造を設計する機能について説明する。本実施形態のマンホール設計手段110は、上述したようにマンホールの設置場所を選定した後に、マンホールの構造を設計する。このマンホールの構造の設計においては、布設設計1に基づいて、工事基準データベース230に蓄積されているマンホールの工事基準に関する必要な情報、例えば、本実施形態では、マンホール設計データ等を抽出し、マンホールの構造を設計する。
【0047】
例えば、マンホールの設置場所がルートの分岐点である場合には、マンホールの型を分岐型に設計する。また、ルートの分岐点が、ケーブル引入れ張力等を許容範囲内とするための設置場所である場合には、L型又はT型のマンホールとして設計し、変電所引き出しのための設置場所である場合には、π型のマンホールとして設計する。さらに、分岐が2方向である場合にはL型のマンホールとして設計し、分岐が3方向である場合にはT型のマンホールとして設計する。また、マンホールの深さ、すなわち、掘削深さについては、地下水位データ等を参考にして設計し、掘削現場の周辺にある構造物や布設するケーブル等に応じてマンホールの外形寸法を設計すると共に、マンホールの規模等に応じて、作業スペースの設計も行う。マンホールの設置場所に関する地質、掘削規模、地下水等の状況に応じて、矢板等の補強材の設置構造について設計する。マンホール内でケーブルを接続したり、あるいは固定したりする構造が必要である場合には、ケーブルの条数や種類等を考慮して、それらの接続構造及び固定構造について設計する。さらに、マンホールの入り口となる首部や、マンホールの内部に出入りするためのステップや梯子等について設計する。また、マンホールの設置場所に関する地質データ(土質)を考慮して、地盤に併せて基礎コンクリート等の設計もする。なお、地盤の種類等に応じて、矢板の工法(軽量鋼矢板工法、簡易鋼矢板工法、鋼矢板工法、親杭横矢板工法等)が異なるため、これらも設計段階で決めておく。
【0048】
また、このようなマンホール設計手段110は、マンホールの構造を設計する際に、データベース200を参照し、布設設計1に基づくとマンホールの構造を設計するのが困難な場合には、マンホールの設置場所の選定段階及び布設設計1の設計段階の何れか一方の段階まで戻す機能を有する。例えば、本実施形態では、マンホール設計手段110は、マンホールの設計を行うのが困難な場合には、マンホールの選定段階まで一旦戻し、それでもマンホールの構造を再設計するのが困難で且つマンホールの選定も困難となった場合には、布設設計1の段階まで戻して、布設設計1の再設計を行うようにした。
【0049】
ここで、マンホールの構造を設計するのが困難な場合としては、例えば、既設設備データベース210や地域管理センターデータベース240等から地下の既設設備に関するデータを参照すると、その場所に別の地中電線路や配管等が布設されており、その場所に必要なマンホールの構造を設計できない場合等が挙げられる。また、布設情報データベース220に基づいてマンホールの設置場所に対応する地下水位データを参照すると、必要なマンホールの深さを確保できない場合等についても同様である。
【0050】
このように、本実施形態のマンホール設置工事管理システム(マンホール設置工事管理サーバ100)では、マンホール設計手段110が地中電線路の布設設計1に基づいてデータベース200を参照しながら、マンホールの設置場所を選定する作業とマンホールの構造を設計する作業とを繰り返し行うと共に、必要に応じて布設設計1の再設計を行うようにしたので、実際のマンホールの設置工事の段階において、マンホールの設置場所や構造の設計、あるいは布設設計1等の変更がなく、マンホールの設置工事を効率的に且つ確実に行うことができる。したがって、工事費用を大幅に削減することができる。
【0051】
また、本実施形態では、マンホール設計手段110は、マンホールの設置工事が完了した時点で、必要に応じて既設設備データベース210内に蓄積されている既存のマンホールに関する設備データ等を更新する機能も有する。すなわち、マンホールの設計が完了すると、その時点でのマンホールの設計データ3でマンホールの設置工事が実行される可能性が高いので、既存設備データベース210に登録するようにする。これは、次の電力供給計画に基づいたマンホールの設置場所の選定、及びマンホールの構造の設計に利用させるためである。勿論、設計中の設備専用のデータベースを設けて、端末20等を介して参照できるようにしておいてもよい。このように、マンホールの構造の設計が完了した段階で、そのマンホールの設備データを既設設備データベース210に反映することで、続けて関連するマンホールの設置工事を行う際に最新情報を参照することができ、効率的なマンホールの設置工事が可能となる。
【0052】
さらに、本実施形態のマンホール設置工事管理システムでは、マンホールの設置場所を検証すると布設設計1に基づいてマンホールの設置工事を行うのが困難な場合に、マンホール設計手段110が、布設設計1の設計段階、マンホールの設置場所を選定する選定段階、及びマンホールの構造を設計する設計段階の何れかの段階まで戻し、その戻した段階を再度行うようになっている。
【0053】
ここで、マンホールの設置工事を行うのが困難である場合とは、マンホール設計手段110が選定したマンホールの設置場所について現場検証(地質レーダ、ボーリング等による地質調査や試掘り)を行った結果、例えば、布設設計1、マンホールの設置場所及び構造の設計等の変更が必要となる場合のことである。例えば、布設情報データベース220の地質情報では砂地盤であるのに対し、地質調査を行うと粘土地盤であった場合等が挙げられる。このような場合には、端末20を介して、検証データ2がマンホール設置工事管理サーバ100に送信される。そして、受信した検証データ2と設計データ3とを比較検討し、設計変更の必要がある場合には、マンホール設計手段110が、マンホールの設計段階まで戻し、砂地盤に対応するマンホールの構造の設計データ3を粘土地盤に対応できるマンホールの構造を再設計する。なお、このように、現場検証してデータベース200に蓄積された各種データが、実際のものと異なっている場合には、データ修正を行うようにする。また、検証データ2の検討については、人が行ってもよいし、マンホール設計手段110が行うようにしてもよい。後者の場合には、マンホール設計手段110は、設計データ3と検証データ2とを照合し、予め設定された基準データに基づいて、再設計の必要があるか否かを判定するようにすればよい。
【0054】
以下、上述したマンホール設置工事管理システム(マンホール設置工事管理サーバ100)の動作について詳しく説明する。なお、図2は、本発明の実施形態1に係るマンホール設置工事管理システムの動作を説明するフローチャートである。
【0055】
図2に示すように、まず、電力供給計画に基づいて、例えば、ケーブルのルート、布設方式、ケーブルの太さ及び条数を規定する地中電線路の布設設計1を設計する(ステップS1)。そして、このように設計された地中電線路の布設設計1が、端末20からネットワーク10を経由してマンホール設置工事管理サーバ100に送信されると、マンホール設計手段110が、データベース200を参照して、マンホールの設置場所の選定及びマンホールの構造の設計を開始する(ステップS2)。次に、マンホール設計手段110が、マンホールを約300m間隔で設置することを基準とし、布設設計1に基づいて布設情報データベース220を参照し且つマンホールの設置場所に関するデータを考慮して地図データ等から、マンホールの設置場所を選定する(ステップS3)。ここで、マンホールの設置場所を選定できない場合(ステップS3;No)には、マンホール設計手段110が布設設計1の設計段階(ステップS1)まで戻し、布設設計1を再設計する。一方、マンホールの設置場所を選定した場合(ステップS3;Yes)には、マンホール設計手段110が、選定した設置場所に対応するマンホールの構造の設計を行う(ステップS4)。ここでは、マンホール設計手段110は、マンホールの構造を設計する際に、データベース200を参照して布設設計1に基づくとマンホールの設計を行うのが困難な場合(ステップS4;No)には、マンホールの選定段階(ステップS3)まで一旦戻し、ステップS3を再び実行してマンホールの設置場所を再度選定し直す。その後、再びステップS4を実行しても、マンホールの構造を再設計するのが困難な場合には、再度、ステップS3に戻す。このようにステップS3及びS4を繰り返し実行しても、マンホールの構造を設計するのが困難となり且つマンホールの設置場所の選定についても困難となった場合(ステップS3;No)には、マンホール設計手段110は、布設設計1の段階(ステップS1)まで戻し、布設設計1を再設計する。一方、マンホールの構造の設計を行うことができた場合(ステップS4;Yes)には、マンホール設計手段110がマンホールの構造の設計データ3を作成することで、マンホールの設置場所の選定及び構造の設計が完了する(ステップS5)。
【0056】
次に、マンホール設計手段110は、端末20にマンホールの設計データ3を出力すると共に、その設計データ3を既設設備データベース210に書き込む(ステップS6)。このように、マンホールの構造の設計が完了した段階で、そのマンホールの設計データ3を既設設備データベース210に設備データとして反映することで、続けて関連するマンホールの設置工事を行う際に最新情報を参照することができ、効率的なマンホールの設置工事が可能となる。
【0057】
次いで、マンホールの設計データ3に基づいて、マンホールの設置場所で実際にマンホールの設置工事ができるか否かの現場検証を行う(ステップS7)。具体的には、外部会社の作業者等が、例えば、マンホールの設置場所周辺にマンホールの設置工事の障害となる構造物等がないかどうか、あるいは、地質レーダやボーリングによる地質調査や試掘り等を行い、その結果に基づいて、マンホールの設置工事が設計データ3に従って行えるかどうかを検証する。そして、マンホールの設置工事ができないと判断した場合(ステップS7;No)には、端末20を介して検証データ2がマンホール設置工事管理サーバ100に送信され、その検証データ2と設計データ3とを比較検討した上で、設計変更が必要であると判断した場合には、マンホール設計手段110は、マンホールの構造の設計段階(ステップS4)まで一旦戻し、マンホールの構造の再設計を行う。一方、マンホールの設置工事ができると判断した場合(ステップS7;Yes)には、実際にマンホールの設置工事を着工する(ステップS8)。
【0058】
なお、その後は、例えば、マンホールの設置工事を着工している最中に、予期せぬ障害物等で、マンホールの構造の設計を再設計しなければならない場合には、端末20を介して検証データ2がマンホール設置工事管理サーバ100に送信される。そして、マンホール設置工事管理サーバ100では、検証データ2と設計データ3とを比較検討した上で、設計変更の必要があると判断した場合には、マンホール設計手段110が、マンホールの設計段階(ステップS4)まで再び戻し、マンホールの構造の再設計を行うようにする。
【0059】
(実施形態2)
図3は、本発明の実施形態2に係るマンホール設置工事管理システムの概略構成を示す図である。図3に示すように、本実施形態のマンホール設置工事管理サーバ100Aには、現場の作業者が携帯する端末20Aがネットワーク10を経由して接続可能に設けられている。また、データベース200Aは、マンホールの設置工事に関する作業手順データが蓄積される作業手順データベース(作業手順DB)250を含んでいる。さらに、マンホール設置工事管理サーバ100Aは、この作業手順データベース250からマンホールの構造の設計に関する必要な作業手順データを抽出し、現場の作業者が携帯する端末20Aに作業手順データ4を案内する作業手順案内手段120を具備する以外は、上述した実施形態1と同様の構成である。
【0060】
作業手順案内手段120は、マンホールの設置工事の進行状況に併せて、端末20Aからの要求に従い、次工程の作業手順データを作業手順データベース250から抽出し、その作業手順データ4を端末20Aに送信する。そして、現場の作業者は、端末20Aの画面に、受信した作業手順データ4を表示して、その表示内容に従って、マンホールの設置工事を進めることになる。このように、現場の作業者が、マンホールの設計に必要な作業手順データを端末20Aに表示し、それを作業の進行状況に併せて参照することができるため、マンホールの設置工事をより効率的に且つ正確に行うことができる。
【0061】
なお、本実施形態では、現場の作業者の端末20Aからマンホール設置工事管理サーバ100Aに検証データ2が送信されると、上述した実施形態1と同様に、その検証データと設計データ2とを比較検討した後、設計変更の必要があると判断した場合には、マンホール設計手段110がマンホールの構造の設計を再設計うようになっている。
【0062】
(他の実施形態)
以上、本発明を各実施形態に基づいて説明したが、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではない。例えば、上述した実施形態1及び2では、各種端末20,20Aがネットワーク10を経由して接続可能となるマンホール設置工事管理サーバ100,100Aを具備するマンホール設置工事管理システムを例示して説明したが、勿論これに限定されず、マンホール設置工事管理サーバを設けず、各種データベースと、マンホール設計手段と、布設設計の入力手段と、マンホール設計手段により作製された設計データ3を出力する出力手段とを具備するマンホール設置工事管理システムとしてもよい。
【0063】
また、上述した実施形態1では、マンホールの構造を設計するのが困難な場合に、マンホール設計手段110によってマンホールの設置場所を選定する選定段階まで一旦戻すようにしたが、勿論これに限定されず、マンホール設計手段によって布設設計の設計段階まで戻すようにしてもよい。
【0064】
さらに、上述した実施形態2では、作業手順案内手段120を設けるようにしたが、勿論これに限定されず、作業手順案内手段を設けなくてもよいが、この場合には、現場の作業者が、端末を介してマンホール設計手段が作製したマンホール設置工事の設計データをダウンロードできるようにするのが好ましい。これにより、現場の作業者は、ダウンロードした設計データを端末に表示し、それを参照しながらマンホールの設置工事を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、地中に布設する地中電線路用のマンホールの設置工事に限らず、ガス・水道管等の配管用のマンホールの設置工事の管理においても適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施形態1に係るマンホール設置工事管理システムの概略構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態1に係るマンホール設置工事管理システムの動きを説明するフローチャートである。
【図3】本発明の実施形態2に係るマンホール設置工事管理システムの概略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0067】
1 布設設計
2 検証データ
3 設計データ
4 作業手順データ
10 ネットワーク
20 端末
100 マンホール設置工事管理サーバ
110 マンホール設計手段
120 作業手順案内手段
200 データベース
210 既設設備データベース
220 布設情報データベース
230 工事基準データベース
240 地域管理センターデータベース
250 作業手順データベース


【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンホールの設置工事を管理するマンホール設置工事管理システムであって、
地中電線路の既設設備を網羅した既設設備データベースと、地中電線路を布設するために検討すべき情報及び法令を網羅した布設情報データベースと、前記マンホールを含む各種設備の工事基準及び法令を網羅した工事基準データベースとを少なくとも含むデータベースを具備すると共に、
地中電線路の布設方式及びルートと布設されるケーブルの太さ及び条数とを少なくとも規定した布設設計に基づいて、前記データベースを参照しながら前記マンホールの設置場所を選定すると共に前記マンホールの構造を設計する際に前記布設設計に基づくと当該マンホールの構造を設計するのが困難な場合に、前記マンホールの設置場所を選定する選定段階及び前記布設設計の設計段階の何れかの一方の段階まで戻す機能を有するマンホール設計手段を具備することを特徴とするマンホール設置工事管理システム。
【請求項2】
請求項1において、前記マンホール設計手段は、前記マンホールの構造を設計するのが困難な場合に前記マンホールの選定段階まで戻し、それでも前記マンホールの構造を設計するのが困難で且つ前記マンホールの設置場所を選定するのが困難な場合に前記布設設計の設計段階まで戻す機能を有することを特徴とするマンホール設置工事管理システム。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記データベースは、総合的な地中設備の情報を網羅した地域管理センターデータベースをさらに含むことを特徴とするマンホール設置工事管理システム。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかにおいて、前記既設設備データベースは、前記マンホールの既存設備に関するデータについても網羅していることを特徴とするマンホール設置工事管理システム。
【請求項5】
請求項4において、前記マンホール設計手段は、前記マンホールの設計が完了した時点で必要に応じて前記既設設備データベースの前記マンホールの既存設備に関するデータを更新することを特徴とするマンホール設置工事管理システム。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかにおいて、前記マンホール設計手段は、前記マンホールの設置場所を検証すると前記布設設計に基づいて前記マンホールの設置工事を行うのが困難な場合に、前記布設設計の設計段階、前記マンホールの設置場所を選定する選定段階、前記マンホールの構造を設計する設計段階の何れかの段階まで戻してその戻した段階を再度行うことを特徴とするマンホール設置工事管理システム。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかにおいて、外部の端末がネットワークを経由して接続可能に設けられていることを特徴とするマンホール設置工事管理システム。
【請求項8】
請求項7において、前記データベース内に設けられ前記マンホールの設置工事に関する作業手順データが蓄積される作業手順データベースと、当該作業手順データベースから前記マンホールの構造の設計に関する必要な作業手順データを抽出して前記外部の端末に案内する作業手順案内手段とをさらに具備することを特徴とするマンホール設置工事管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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