マーキングトルクレンチ
【課題】締結面からの突出高さが相違するマーキング対象部品の頂部に対して、部品の交換等を要することなくマーキングを行う。
【解決手段】
トグル機構が動作すると、第1係合手段81が係合し、スリーブ54に対するインクカートリッジ6の移動を阻止する。次に、インクカートリッジ6が連動部材50及びスリーブ54と一体的に回転して、第2係合手段82によるインクカートリッジ6と突き当て部材51との係合が解除され、突き当て部材51に対するインクカートリッジ6の回転軸90に沿った移動が許容されるとともに、駆動手段80が連動部材50及びスリーブ54をソケット3の下端側へ移動させる。このとき、第1係合手段81がスリーブ54とインクカートリッジ6とを係合しているので、インクカートリッジ6のスタンプ46がマーキング位置へ移動してスタットボルト57の頂部57aにインクを塗布する。
【解決手段】
トグル機構が動作すると、第1係合手段81が係合し、スリーブ54に対するインクカートリッジ6の移動を阻止する。次に、インクカートリッジ6が連動部材50及びスリーブ54と一体的に回転して、第2係合手段82によるインクカートリッジ6と突き当て部材51との係合が解除され、突き当て部材51に対するインクカートリッジ6の回転軸90に沿った移動が許容されるとともに、駆動手段80が連動部材50及びスリーブ54をソケット3の下端側へ移動させる。このとき、第1係合手段81がスリーブ54とインクカートリッジ6とを係合しているので、インクカートリッジ6のスタンプ46がマーキング位置へ移動してスタットボルト57の頂部57aにインクを塗布する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、規定トルクで締め付けられた締結部品の頂部又は被締結部品の頂部にマーキングを行うマーキングトルクレンチに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの生産ラインでは、ボルトやナットなどの締結部品を締め付けた際に、締め付け済を示すために塗料をボルトの頂部などに塗布する場合があり、規定のトルクで締め付けられた締結部品に対して、自動的にマーキングを行うマーキング機能付きトルクレンチ(以下、マーキングトルクレンチを称する)が知られている。マーキングトルクレンチの内部にはスタンプカートリッジが装着され、規定のトルクで締め付けられた瞬間に、スタンプカートリッジのスタンプ先端が締結部品に押し付けられ、インクが塗布される。
【0003】
【特許文献1】特開3477221号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の一般的なマーキングトルクレンチでは、締結面から締結部品や被締結部品などのマーキング対象部品の頂部までの突出高さが相違する場合、異なるマーキングトルクレンチを使用するか又はマーキングトルクレンチの部品を交換しなければならない。例えば、寸法規格が同一であるナットと螺合する2つのスタットボルトの頂部にそれぞれ印を付ける場合、締結面からの頂部の突出高さが相違していると、同じマーキングトルクレンチによってマーキングを行うことができない。
【0005】
そこで、本発明は、締結面からの突出高さが相違するマーキング対象部品の頂部に対して、部品の交換等を要することなくマーキングを行うことが可能なマーキングトルクレンチの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく、本発明のマーキングトルクレンチは、ソケットとトルクレンチと連動部材と突き当て部材と第1付勢部材とマーキング部材と第2付勢部材と可動部材と第3付勢部材と駆動手段と第1係合手段と第2係合手段とを有する。
【0007】
前記ソケットは、前記締結部品と係合する係合凹部と、この係合凹部に係合する前記締結部品の回転軸方向に沿って形成され該回転軸方向の一端側の前記係合凹部と他端側とを貫通する貫通孔と、前記他端側に設けられた取付部と、を有する。
【0008】
前記トルクレンチは、前記ソケットの前記取付部が着脱自在に装着されるヘッド部と、該ヘッド部にトグル機構を介して取り付けられた操作部と、を有し、前記被締結部材に対する前記操作部からの締付力が所定値に達したときに前記トグル機構が動作して前記操作部が前記ヘッド部に対して変位する。
【0009】
前記連動部材は、前記ヘッド部内に配置され、前記回転軸方向に沿って移動自在で且つ当該回転軸を中心として回転自在に支持され、所定の初期位置から前記回転軸の一端側へ可動する。
【0010】
前記突き当て部材は、突き当て端を前記回転軸方向の一端側に有し、前記ソケットの前記貫通孔内の前記一端側で前記回転軸方向に沿って移動自在に支持される。
【0011】
前記第1付勢部材は、前記ソケットと前記突き当て部材の間に配置され、前記突き当て部材を初期位置へ付勢する。
【0012】
前記マーキング部材は、インクを保持するスタンプ先端を前記回転軸方向の一端側に有し、前記ソケットの前記貫通孔内で前記回転軸方向に沿って移動自在で且つ前記回転軸を中心として回転自在に支持され、前記スタンプ先端が、前記突き当て部材の前記突き当て端よりも前記回転方向の一端側へ突出するマーキング位置と突出しない初期位置との間で可動する。
【0013】
前記第2付勢部材は、前記突き当て部材と前記マーキング部材との間に配置され、前記マーキング部材を前記突き当て部材に対して前記回転軸方向の他端側へ付勢する。
【0014】
前記可動部材は、前記ソケットの前記貫通孔内の前記他端側で前記回転軸方向に沿って移動自在で且つ当該回転軸を中心として回転自在に支持され、前記ソケットの前記他端に最も近接する初期位置よりも前記一端側へ可動し、前記初期位置では、前記ヘッド部への前記ソケットの装着時に前記連動部材と係合して該連動部材と一体的に移動及び回転する。
【0015】
前記第3付勢部材は、前記マーキング部材と前記可動部材との間に配置され、前記マーキング部材を前記可動部材に対して前記回転軸方向の他端側へ付勢する。
【0016】
前記駆動手段は、前記トグル機構の動作による前記ヘッド部と前記操作部との相対変位に増加に応じて、前記連動部材を、前記可動部材に向かって移動させるとともに、前記回転軸を中心として初期回転位置から締付完了回転位置まで回転させる。
【0017】
前記第1係合手段は、前記可動部材と前記マーキング部材とにそれぞれ設けられ、前記初期回転位置の前記連動部材に前記可動部材が係合しているときは、係合せずに前記可動部材に対する前記マーキング部材の前記回転軸方向に沿った移動を許容し、前記初期回転位置から前記締付完了回転位置へ回転する前記連動部材に前記可動部材が係合しているときは、前記連動部材が前記初期回転位置から前記締付完了回転位置へ回転するまでの間であって前記駆動手段が前記連動部材を前記可動部材に向かって移動させる前に係合して前記可動部材に対する前記マーキング部材の前記回転軸方向に沿った移動と前記回転軸を中心とした回転とを阻止する。
【0018】
前記第2係合手段は、前記マーキング部材と前記突き当て部材とに設けられ、前記初期回転位置の前記連動部材に前記可動部材が係合しているときは、係合して前記突き当て部材に対する前記マーキング部材の前記回転軸方向に沿った移動を阻止し、前記初期回転位置から前記締付完了回転位置へ回転する前記連動部材に前記可動部材が係合し、且つ前記第1係合手段が係合しているときは、前記第1係合手段が係合してから前記連動部材が前記締付完了回転位置へ回転するまでの間に係合を解除し、前記突き当て部材に対する前記マーキング部材の前記回転軸方向に沿った移動を許容する。
【0019】
上記構成では、非締め付け操作時の初期状態では、トグル機構が動作しないため、連動部材は初期回転位置に、第1係合手段は非係合状態に、第2係合手段は係合状態にそれぞれ維持される。このため、突き当て部材とマーキング部材とは回転軸方向に沿って一体的に移動し、マーキング部材と可動部材とは相対移動が許容される。また、第1付勢部材及び第3付勢部材の付勢力によって、突き当て部材とマーキング部材とは、ソケットの回転軸方向の一端に最も近接した初期位置にそれぞれ維持され、可動部材は、ソケットの回転軸方向の他端に最も近接した初期位置に維持される。
【0020】
締結部品の締め付けを行う場合、被締結部品に締結部品を螺合し、ソケットの係合凹部に締結部品を係合した状態で操作部を所定方向に回転移動する。締結部材や被締結部材の締結面からの突出高さが、係合凹部への締結部品の係合の際に初期状態でのソケットの一端と突き当て部材の一端との距離未満であったり、締め付けの過程において、締結部材や被締結部材の突出高さがソケットの一端と突き当て部材の一端との距離未満となった場合、作業者は、ソケットを締結面側に押下する。これにより、締結部品又は被締結部品のうち締結面からの突出高さ高い方の部品(マーキング対象部品)に、突き当て部材が当接し、突き当て部材とマーキング部材とがソケットの他端側へ一体的に移動する。
【0021】
締付力が所定値(所定トルク)に達し、トグル機構が動作して、操作部がヘッド部に対して変位すると、駆動手段は、ヘッド部と操作部との相対変位に増加に応じて、連動部材を、可動部材に向かって移動させるとともに、回転軸を中心として初期回転位置から締付完了回転位置まで回転させる。このとき、第1係合手段は、駆動手段が連動部材を可動部材に向かって移動させる前に係合して、可動部材に対するマーキング部材の回転軸方向に沿った移動を阻止する。すなわち、可動部材とマーキング部材と突き当て部材とが第1係合手段及び第2係合手段のそれぞれの係合によって一時的に結合して一体化し、連動部材から突き当て部材までの距離が、マーキング対象部品の突出高さ(ソケット内部へのマーキング対象部品の進入量)に応じて初期状態から短くなる。
【0022】
連動部材の回転量がさらに増大すると、マーキング部材が連動部材及び可動部材と一体的に回転して、第2係合手段によるマーキング部材と突き当て部材との係合が解除され、突き当て部材に対するマーキング部材の回転軸方向に沿った移動が許容されるとともに、駆動手段が連動部材及び可動部材をソケットの一端側へ移動させる。このとき、第1係合手段が可動部材とマーキング部材とを係合しているので、マーキング部材がマーキング位置へ移動してマーキング対象部品の頂部にインクを塗布する。なお、マーキング後は、第3の付勢部材の付勢力によってマーキング部材が戻る。
【0023】
マーキングの完了により、締め付け作業が終了し、ソケットをマーキング対象部品から外すと、第1係合手段による可動部材とマーキング部材との係合が解除され、第1付勢部材及び第2付勢部材の付勢力によって、可動部材、マーキング部材及び突き当て部材が初期状態に戻り、マーキング部材と突き当て部材とが第2係合手段によって係合する。
【0024】
このように、連動部材から突き当て部材までの距離を、マーキング対象部品の突出高さに応じて初期状態から短縮した後、突き当て部材とマーキング部材との係合を解除してマーキングを行うので、マーキング動作時のマーキング部材の移動距離を所定の距離に維持したまま、締結面からの突出高さが相違するマーキング対象部品の頂部に対して、部品の交換等を要することなくマーキングを行うことができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、締結面からの突出高さが相違するマーキング対象部品の頂部に対して、部品の交換等を要することなくマーキングを行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
まず、本発明のマーキングトルクレンチのマーキング機構の概略について説明する。図1及び図2は、本発明のマーキングトルクレンチのマーキング機構の概略を示す模式図であり、図1は締付力が作用していない初期状態を示し、図2は締付力が規定トルクに達した後でマーキングが未だ行われていない状態を示している。なお、図1及び図2は、各構成の機能を説明するための機能ブロック図であり、各構成の形状や位置を表すものではない。また、以下の説明において、下端及び上端をソケットの回転軸方向の一端及び他端として適宜使用する。
【0027】
図1及び図2に示すように、マーキングトルクレンチ1は、ソケット3と、トルクレンチ2と、連動部材50と、突き当て部材51と、第1付勢部材(コイルスプリング)52と、インクカートリッジ(マーキング部材)6と、第2付勢部材(コイルスプリング)53と、スリーブ(可動部材)54と、第3付勢部材(戻りスプリング)55と、駆動手段80と、第1係合手段81と、第2係合手段82とを有し、ナット(締結部品)56とナットが螺合して締結されるスタットボルト(被締結部品)57のうち締結面58からの突出高さが高い方の部品であるスタットボルト57の頂部57aにマーキングを行う。
【0028】
駆動手段80は、リンク機構4、連動部材50の他端面上に固定されたマグネット下47、リンク機構4に固定されたマグネット上5、連動部材50の外周面上に形成されたピニオンギヤ59、リンク機構4に固定されピニオンギヤ59と噛み合うラックギヤ60とを有する。リンク機構4は、マグネット下47と対向する動作位置と、マグネット下47と対向しない通常位置との間でマグネット上5を移動させるとともに、ラックギヤ60を移動させピニオンギヤ59を介して連動部材50を回転させる。
【0029】
ソケット3は、ナット56と係合する下端の係合凹部25と、この係合凹部25に係合するナット56の回転軸90に沿って形成された貫通孔17と、上端部(取付部)19とを有する。貫通孔17は、ソケット3の一端側から他端側へ貫通する。
【0030】
トルクレンチ2は、ソケット3の上端部19が着脱自在に装着されるトルクレンチヘッド(ヘッド部)9と、トルクレンチヘッド9にトグル機構を介して取り付けられた操作部とを有する。ナット56に対する操作部からの締付力が所定値に達したときにトグル機構が動作して操作部がトルクレンチヘッド9に対して変位する。なお、トグル機構及び操作部については、後述する。
【0031】
連動部材50は、トルクレンチヘッド9内に配置され、回転軸90に沿って移動自在で且つ回転軸90を中心として回転自在に支持され、所定の初期位置から下端側へ可動する。
【0032】
突き当て部材51は、突き当て端61を下端側に有し、ソケット3の貫通孔17内の下端側で回転軸90に沿って移動自在に支持される。この突き当て部材51によって、規定トルクに達する前にインクカートリッジ6がマーキング対象部品に接触してインクを塗布してしまうことが防止される。また、ソケット3に設けられたストッパ89は、ソケット3の下端側への突き当て部材50の移動下限を規定する。
【0033】
第1付勢部材52は、その上端がソケット3又はスリーブ54に支持され、下端が突き当て部材51に支持され、突き当て部材51を初期位置へ付勢する。なお、図1及び図2では、第1付勢部材52の上端がソケット3に支持された例を示している。
【0034】
インクカートリッジ6は、インクを保持するスタンプ(スタンプ先端)46を下端側に有し、ソケット3の貫通孔17内で回転軸90に沿って移動自在で且つ回転軸90を中心として回転自在に支持され、スタンプ46は、突き当て部材51の突き当て端61よりも下方へ突出するマーキング位置と突出しない初期位置との間で可動する。
【0035】
第2付勢部材53は、突き当て部材51とインクカートリッジ6との間に配置され、インクカートリッジ6を突き当て部材51に対して上端側へ付勢する。
【0036】
スリーブ54は、ソケット3の貫通孔17内の上端側で回転軸90に沿って移動自在で且つ回転軸90を中心として回転自在に支持され、ソケット3の上端に最も近接する初期位置よりも下端側へ可動し、初期位置では、トルクレンチヘッド9へのソケット3の装着時に連動部材50から延びるロッド21と係合して連動部材50と一体的に移動及び回転する。
【0037】
第3付勢部材55は、インクカートリッジ6とスリーブ54との間に配置され、インクカートリッジ6をスリーブ54に対してソケット3の下端側へ付勢する。
【0038】
駆動手段80は、トグル機構の動作によるトルクレンチヘッド9と操作部との相対変位に増加に応じて、連動部材50を、スリーブ54に向かって移動させるとともに、回転軸90を中心として初期回転位置から締付完了回転位置まで回転させる。
【0039】
第1係合手段81は、スリーブ54とカートリッジピン63とにそれぞれ設けられ、初期回転位置の連動部材50にスリーブ54が係合しているときは、非係合状態を維持して、スリーブ54に対するインクカートリッジ6の回転軸90に沿った移動を許容し、初期回転位置から締付完了回転位置へ回転する連動部材50にスリーブ54が係合しているときは、連動部材50が初期回転位置から締付完了回転位置へ回転するまでの間であって駆動手段80が連動部材50をスリーブ54に向かって移動させる前に係合し、スリーブ54に対するインクカートリッジ6の回転軸90に沿った移動と回転軸90を中心とした回転とを阻止する。第1係合手段81は、例えば図3に模式的に示すように、カートリッジピン63とラック形状の係合壁面62とから構成してもよい。図3の例のカートリッジピン63は、インクカートリッジ6の上端部の外周面から突出する。スリーブ54は、インクカートリッジ6及びカートリッジピン64が内部を移動可能なように、インクカートリッジ6及びカートリッジピン64の形状に合った断面形状で上下方向に延びる内面64を有する。係合壁面62は、スリーブ54の内面64のうち、回転軸90を中心としてインクカートリッジ6が回転した際に、カートリッジピン63が当接する面に形成されている。なお、このようなラック形状の係合壁面62は、例えば、インクカートリッジ6のうちカートリッジピン64を除いた部分よりも僅かに大きい内径となるように、回転軸90を中心とした雌ネジ孔を形成し、そのうちカートリッジピン64に対応する部分を切除することによって形成することができる。
【0040】
第2係合手段82は、インクカートリッジ6と突き当て部材51とに設けられ、初期回転位置の連動部材50にスリーブ54が係合しているときは、係合状態を維持して、突き当て部材51に対するインクカートリッジ6の回転軸90に沿った移動を阻止する。また、初期回転位置から締付完了回転位置へ回転する連動部材50にスリーブ54が係合し、且つ第1係合手段81が係合しているときは、第1係合手段81が係合してから連動部材50が締付完了回転位置へ回転するまでの間に係合を解除し、突き当て部材51に対するインクカートリッジ6の回転軸90に沿った移動を許容する。
【0041】
上記マーキング機構では、非締め付け操作時の初期状態では、トグル機構が動作しないため、連動部材50は初期回転位置に、第1係合手段81は非係合状態に、第2係合手段82は係合状態にそれぞれ維持される。このため、突き当て部材51とインクカートリッジ6とは回転軸方向に沿って一体的に移動し、インクカートリッジ6とスリーブ54とは相対移動が許容される。また、第1付勢部材52及び第3付勢部材55の付勢力によって、突き当て部材51とインクカートリッジ6とは、ソケット3の下端に最も近接した初期位置にそれぞれ維持され、スリーブ54は、ソケット3の上端に最も近接した初期位置に維持される。
【0042】
スタットボルト57にナット56を締め付ける場合、スタットボルト57にナット56を螺合し、ソケット3の係合凹部25にナット56を係合した状態でトルクレンチ2を所定方向に回転移動する。例えば、ナット56をある程度まで手で締めて、スタットボルト57の頂部57が上方に露出した状態からトルクレンチ2による締め付けを行う場合、作業者は、係合凹部25へのナット56の係合の際に、ソケット3を締結面58に向かって押下する。これにより、スタットボルト57の頂部57aに、突き当て部材51が当接し、突き当て部材51とインクカートリッジ6とがソケット3の上端側へ一体的に移動する。
【0043】
締付力が所定値(所定トルク)に達し、トグル機構が動作すると、駆動手段80は連動部材50に対し、スリーブ54に向かう移動駆動力と、回転軸90を中心とした回転駆動力とを付与する。回転駆動力を受けた連動部材50は、スリーブ54と一体的に初期回転位置から締付完了回転位置まで回転する。一方、移動駆動力を受けた連動部材50は、後述するように、第2係合手段82がインクカートリッジ6と突き当て部材51との係合を解除するまで移動せず、回転軸90方向においてスリーブ54は初期位置に維持される。なお、本実施形態では、後述するように、磁石(マグネット上5とマグネット下47)の反発力を利用することにより、トグル動作や他の動作に影響を与えることなく移動駆動力を維持したままスリーブ54を初期位置に維持させる構成を実現しているが、例えばバネを利用するなど他の方法によって実現することも可能である。
【0044】
スリーブ54が初期回転位置から回転すると、第1係合手段81は、駆動手段80が連動部材50をスリーブ54に向かって移動させる前に係合して、スリーブ54に対するインクカートリッジ6の回転軸90に沿った移動を阻止する。すなわち、スリーブ54とインクカートリッジ6と突き当て部材51とが第1係合手段81及び第2係合手段82のそれぞれの係合によって一時的に結合して一体化し、連動部材50から突き当て部材51までの距離が、スタットボルト57の突出高さ(ソケット3内部へのスタットボルト57の進入量)に応じて初期状態から短くなる。
【0045】
スリーブ54(連動部材50)の回転量がさらに増大すると、インクカートリッジ6が連動部材50及びスリーブ54と一体的に回転して、第2係合手段82によるインクカートリッジ6と突き当て部材51との係合が解除され、突き当て部材51に対するインクカートリッジ6の回転軸90に沿った移動が許容され、駆動手段80から移動力を受けた連動部材50は、スリーブ54をソケット3の下端側へ移動させる。このとき、第1係合手段81がスリーブ54とインクカートリッジ6とを係合しているので、インクカートリッジ6のスタンプ46がマーキング位置へ移動してスタットボルト57の頂部57aにインクを塗布する。なお、マーキング後は、第2付勢部材53の付勢力によってインクカートリッジ6が戻る。
【0046】
マーキングの完了により、締め付け作業が終了し、ソケット3をボルト56及びナット57から外すと、第1係合手段81によるスリーブ54とインクカートリッジ6との係合が解除され、第1付勢部材52及び第3付勢部材55の付勢力によって、スリーブ54、インクカートリッジ6及び突き当て部材51が初期状態に戻り、インクカートリッジ6と突き当て部材51とが第2係合手段82によって係合する。
【0047】
次に、上記マーキング機構を有する本発明の一実施形態のマーキングトルクレンチについて説明する。図4はトグル機構が動作する前のマーキングトルクレンチを示す図、図5はトグル機構が動作したときのマーキングトルクレンチを示す図、図6はマーキングトルクレンチの上側部分の要部断面図、図7はマーキングトルクレンチのトルクレンチヘッド側の要部断面図、図8は図7のVIII方向矢視断面図、図9は図7のIX方向矢視断面図、図10は図7のX方向矢視断面図、図11は図7のXI方向矢視断面図、図12は図7のXII方向矢視断面図、図13はスリーブに対してインクカートリッジ及び突き当て部材が上方へ相対移動した状態を示す要部断面図、図14はマーキング動作を示す要部断面図である。
【0048】
図4〜図13に示すように、トルクレンチ2は、筒状のトルクレンチグリップ(操作部)8と、トルクレンチグリップ8の一端側に支軸によって回転可能に取り付けられて一部がトルクレンチグリップ8内に挿入されたトルクレンチヘッド9等を有している。
【0049】
トルクレンチグリップ8は、断面が略楕円形状の楕円筒部10と、断面が略円形状の円筒部11とを有する。楕円筒部10は、トルクレンチグリップ8の一端側に配置され、内部にトグル機構12が設けられている。
【0050】
トルクレンチヘッド9は、一端9a側に角ドライブ13を有する。トルクレンチヘッド9の他端側は、楕円筒部10内に挿入されてトグル機構12に連結されている。
【0051】
トグル機構12は、ボルトやナットの締付作業時において、締付力が所定値に達するまでの間は、トルクレンチグリップ8とトルクレンチヘッド9との固定状態を保ち、締付力が所定値に達したときのトグル機構12の動作よってトルクレンチグリップ8とトルクレンチヘッド9との固定状態を解除する。トグル機構12によってトルクレンチグリップ8とトルクレンチヘッド9との固定状態が保たれているとき、トルクレンチヘッド8及びトルクレンチグリップ8は上方から視て略一直線上に並んでいる。一方、トグル機構12の動作によってトルクレンチグリップ8とトルクレンチヘッド9との固定状態が解除されたとき、トルクレンチグリップ8に加わる締付力に対してトルクレンチヘッド9が追従せず、支軸を中心として、トルクレンチグリップ8がトルクレンチヘッド9に対して一方向(図3中、時計回り)に所定角度変位する。
【0052】
角ドライブ13は、断面略円形状に形成されてトルクレンチヘッド8に支持される上端部15と、この上端部15から下方に延びてトルクレンチヘッド8の下端面よりも下方に突出した断面略角形状の下端部16とを有している。角ドライブ13は、トルクレンチグリップ8の軸方向に直交する方向に回転軸心を有する。この角ドライブ13の回転軸心上には貫通孔17が設けられ、下端部16の外側面には、凹状の溝が設けられている。
【0053】
リンク機構4は、固定ピボット29と、略平板状のリンクプレート30と、可動ピボット31と、リンクアーム32と、リンクアーム押さえ33等を有する。
【0054】
固定ピボット29は、略円柱状の下端部34と、この下端部34よりも外径の小さい略円柱状の上端部35とを有する断面略凸字状の部材であり、楕円筒部10の上面に固定されている。すなわち、固定ピボット29は、トグル機構12の動作に伴よるトルクレンチグリップ8とトルクレンチヘッド9との相対変位に応じて、トルクレンチグリップ8とともにトルクレンチヘッド9に対して相対移動する。
【0055】
リンクプレート30は、固定ピボット29よりもトルクレンチヘッド9側且つトルクレンチヘッド9及び楕円筒部10の上方に配置され、トルクレンチヘッド9の軸方向に沿って延びている。リンクプレート30の一端側は、トルクレンチヘッド9の上面に溶着され、他端側は、楕円筒部10から上方に僅かに離れて配置されている。また、リンクプレート30の一端側には、角ドライブ13よりも大きい貫通孔36が形成されている。
【0056】
可動ピボット31は、略円柱状の下端部37と、下端部37よりも外径の小さい略円柱状の上端部38とを有し、リンクプレート30の他端側上面に固定されている。上端部38の外周面には、溝が設けられており、E形止め輪39が着脱自在に係止される。E形止め輪39は、外径が下端部37の外径よりも大きく形成されている。
【0057】
リンクアーム32は、略矩形板状の非磁性体(例えば、ステンレス製)であり、可動ピボット31の上端部38の外径と略同じ大きさの可動ピボット用孔40と、固定ピボット29の上端部35の外径と略同じ大きさの固定ピボット用孔41とを有する。可動ピボット用孔40と固定ピボット用孔41とには、それぞれ可動ピボット29の上端部38と固定ピボット29の上端部35とが挿通され、リンクアーム32は、可動ピボット31によって回転自在に支持されている。リンクアーム32は、トルクレンチグリップ8の軸方向に対して傾いた非作動位置と、トルクレンチグリップ8の軸方向に沿って延びる作動位置との間を回転移動する。また、リンクアーム32の一端側には、リンクアーム押さえ33が配置されている。
【0058】
リンクアーム押さえ33は、潤滑性(他の部材に対する滑動性)のある材質(例えば、真鍮)で形成された略コ字状の部材である。リンクアーム押さえ33は、可動ピボット31よりもトルクレンチヘッド8側でリンクアーム32を跨ぐようにしてリンクプレート30の上面に固定され、リンクアーム32の上方移動を規制している。また、リンクアーム押さえ33の幅方向の端部は、リンクアーム32が非作動位置と作動位置との間で移動し得るようにリンクアーム32の回転移動を規制している。リンクアーム押さえ33の略中央部且つリンクアーム32の下方には支持ネジ42が配置されている。
【0059】
支持ネジ42は、リンクプレート30に対して固定されて、リンクアーム32を下方からスライド移動可能に支持している。すなわち、リンクアーム32は、可動ピボット31に係止されたE形止め輪39とリンクアーム押さえ33とによって上方移動が規制され、可動ピボット31の下端部37と支持ネジ42とによって下方移動が規制されている。
【0060】
マグネット上5は、表面に磁極が設けられた磁性体であり、リンクアーム32の一端部に固定されて下方に向かって突出している。マグネット上5は、角ドライブ13の回転軸心から離れた通常位置と角ドライブ13の回転軸心上に位置する動作位置との間を移動する。
【0061】
ソケット3は、上端部19と下端部20とこれら上端部19と下端部20とを貫通する貫通孔17とを有する。このソケット3は、上端部19から下端部20までの距離が長く設定された所謂エクステンションタイプであり、角ドライブ13の下端部16にロック部材83によって着脱自在に連結される。ロック部材83は、ソケット3の上端部19の外周面上に配置される環状本体84と、環状本体84からソケット3に向かって突出し、ソケット3の挿通孔91を介して角ドライブ13のロック孔92に挿入されるロックピン87と、ロック孔86に挿入された位置にロックピンを付勢するコイルバネ88とを有する。
【0062】
カバー49は、断面略コ字状の樹脂部材であり、リンクプレート30に着脱自在に固定されている。カバー49は、リンクプレート30に固定された状態でリンク機構12及びインクカートリッジ6等を上方から覆っている。なお、カバー49は、樹脂部材である場合に限定されず、アルミニウムや銅等の他の材質であってもよい。
【0063】
トルクレンチヘッド9及びソケット3には、上述のマーキング機構が設けられている。なお、上記図1及び図2において説明した構成については、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0064】
連動部材50は、略円板形状を有し、コイルスプリングによって上方の初期位置に付勢される。スリーブ54の上端のキー溝は、トルクレンチヘッド9へのソケット3の装着時に連動部材50から延びるロッド21の下端のキーと係合して、その上下位置及び回転位置が初期位置に設定される。スリーブ54とロッド21との係合は、トルクレンチヘッド9にソケット3が装着されている限り維持され、ロッド21と係合したスリーブ54は、連動部材50と一体的に移動及び回転する。
【0065】
連動部材54の上面に配置されるマグネット下47には、マグネット上5と対向した際に反発力を発生させる磁極(マグネット上5同極の磁性)が付与されている。
【0066】
突き当て部材51は、円筒形状を有し、ソケット3の貫通孔17内の下端側に挿入される。突き当て部材51は、ソケット3の内周面に回転軸90に沿って形成されたスライド溝と係合した状態(回転軸90を中心とした回転が阻止された状態)で、上下方向に移動自在に支持される。
【0067】
スリーブ54は、円筒状断面を有し、その内部に第3付勢部材55が収容されている。第3付勢部材55の上端は、スリーブ54の上部内面に当接し、下端は、インクカートリッジ6に当接する。
【0068】
インクカートリッジ6は、第1付勢部材52の内側に配置される。第1付勢部材52の上端は、ソケット3の内面に支持され、下端は、突き当て部材51に当接する。
【0069】
インクカートリッジ6は、略円筒形状のインクカートリッジ本体43と、インクカートリッジ本体43から下方へ延びるスタンプ46と、インクカートリッジ本体43の上端に締結固定されたカートリッジヘッド44とを有する。カートリッジヘッド44の外周面からカートリッジピン63が突出している。
【0070】
インクカートリッジ本体43は、インクを染み込ませた略円柱状の中綿を内装し、スタンプ46の上端は、インクカートリッジ本体43の下端から挿入されて中綿に接する。スタンプ46は、フェルト等の柔軟性を有する素材で形成され、毛細管現象によって中綿からインクが移動する。
【0071】
第2付勢部材53の上端は、インクカートリッジ本体43に固定され、下端は、突き当て部材51に固定されている。突き当て部材51はソケット3に対して回転しないため、インクカートリッジ6が回転すると、第2付勢部材53はその反対方向にインクカートリッジ6を付勢し、インクカートリッジ6に対する回転力が除去された際に、第2付勢部材53の付勢力によってインクカートリッジ6が突き当て部材51(ソケット3)に対する初期回転位置に戻る。
【0072】
第1係合手段81(インクカートリッジ6側のカートリッジピン63とスリーブ54側の係合壁面62)は、トグル動作によって初期回転位置のスリーブ54が回転を始めると係合を開始し、初期回転位置からの回転角度が所定角度θ1に達すると、完全係合状態となり、インクカートリッジ6とスリーブ54との相対移動及び相対回転が阻止される。所定角度θ1を超えると、スリーブ54の回転力がカートリッジピン63及び係合壁面62を介してカートリッジピン63に伝達され、スリーブ54とカートリッジピン63が一体的に回転する。
【0073】
スリーブ54の回転角度が所定角度θ1に達する前(第1係合手段81が完全に係合する前)にマグネット上5とマグネット下47とが反発力を発生してしまうと、スリーブ54のみが下方へ移動し、インクカートリッジ6が下方へ移動せず、マーキングが行われない可能性が生じる。このため、リンク機構4によるマグネット上5の移動軌跡は、スリーブ54の回転角度が所定角度θ1に達した後に、マグネット下47と対向して反発力を発生するように設定されている。
【0074】
第2係合手段82は、図12に示すように、突き当て部材51に形成された係合溝85と、インクカートリッジ6から突出する係合ピン86とから構成されている。係合溝85は、回転軸90との直交面に沿って横方向に延びる幅細の横溝と、横溝の端部から回転軸90に沿って下方に延びる幅太の縦溝とを有する。インクカートリッジ6が初期回転位置にあるときは、係合ピン86は横溝に係合し、インクカートリッジ6は突き当て部材51に対して上下方向に移動しない。
【0075】
スリーブ54の回転角度が所定角度θ1を超えると、係合ピン86が横溝内を縦溝に向かって移動し、所定角度θ2に達すると、縦溝に達する。係合ピン86が縦溝に達することにより、第2係合手段82の係合か解除され、インクカートリッジ6は、突き当て部材51に対して下方へ移動可能となる。なお、マグネット上5とマグネット下47とが反発力を発生する時期は、スリーブ54の回転角度が所定角度θ2に達する前及び後の何れであってもよいが、何れの場合であっても、インクカートリッジ6が下方へ移動する時期は、回転角度が所定角度θ2に達した後である。
【0076】
次に、本実施形態のマーキングトルクレンチ1の動作について説明する。
【0077】
例えば、ナット56をある程度まで手で締め、係合凹部25にナット56を係合させソケット3を締結面58に向かって押下すると、スタットボルト57の頂部57aに突き当て部材51が当接し、突き当て部材51とインクカートリッジ6とがソケット3の上端側へ一体的に移動する。この移動時には、第1係合手段81が係合していないため、スリーブ54に対してインクカートリッジ6が上方へ移動し、第1付勢部材52及び第3付勢部材55が縮められる。
【0078】
トルクレンチ2による締め付け作業が行われ、締付力が所定値(所定トルク)に達し、トグル機構が動作すると、リンク機構4、ラック60及びラチェット59を介して連動部材50が回転し、これと一体的にスリーブ54が回転する。回転角度が所定角度θ1に達するまでは、インクカートリッジ6は回転せず、所定角度θ1を超えると、第1係合手段81が完全に係合する。第1係合手段81が係合すると、スリーブ54に対するインクカートリッジ6の上下方向の移動が阻止される。すなわち、スリーブ54とインクカートリッジ6と突き当て部材51とが第1係合手段81及び第2係合手段82のそれぞれの係合によって一時的に結合して一体化し、連動部材50から突き当て部材51までの距離が、スタットボルト57の突出高さ(ソケット3内部へのスタットボルト57の進入量)に応じて初期状態から短くなる。
【0079】
回転角度が所定角度θ1を超えると、インクカートリッジ6がスリーブ54とともに回転する。回転角度が所定角度θ2に達すると、第2係合手段82の係合が解除され、突き当て部材51に対するインクカートリッジ6の下方への移動が許容される。そして、マグネット上5とマグネット下47とが反発力により、連動部材50及びスリーブ54が下方へ移動する。このとき、第1係合手段81がスリーブ54とインクカートリッジ6とを係合しているので、インクカートリッジ6のスタンプ46がマーキング位置へ移動してスタットボルト57の頂部57aにインクを塗布する。なお、マーキング後は、第2付勢部材53の付勢力によってインクカートリッジ6が戻る。
【0080】
マーキングの完了により、締め付け作業が終了すると、第1係合手段81によるスリーブ54とインクカートリッジ6との係合が解除され、第1付勢部材52及び第3付勢部材55の付勢力によって、スリーブ54、インクカートリッジ6及び突き当て部材51が初期状態に戻り、インクカートリッジ6と突き当て部材51とが第2係合手段82によって係合する。
【0081】
このように、本実施形態によれば、連動部材50から突き当て部材51までの距離を、マーキング対象部品の突出高さに応じて初期状態から短縮した後、突き当て部材51とインクカートリッジ6との係合を解除してマーキングを行うので、マーキング動作時のインクカートリッジ6の移動距離を所定の距離に維持したまま、締結面58からの突出高さが相違するマーキング対象部品の頂部に対して、部品の交換や特別な操作等を要することなくマーキングを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、マーキングトルクレンチに広くて適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明のマーキングトルクレンチのマーキング機構の初期状態を示す模式図である。
【図2】締付力が規定トルクに達した後でマーキングが未だ行われていない状態のマーキング機構を示す模式図である。
【図3】第1係合手段を模式的に示す斜視図である。
【図4】トグル機構が動作する前のマーキングトルクレンチを示す平面図である。
【図5】トグル機構が動作したときのマーキングトルクレンチを示す平面図である。
【図6】マーキングトルクレンチの上側部分の要部断面図である。
【図7】マーキングトルクレンチのトルクレンチヘッド側の要部断面図である。
【図8】図7のVIII方向矢視断面図である。
【図9】図7のIX方向矢視断面図である。
【図10】図7のX方向矢視断面図である。
【図11】図7のXI方向矢視断面図である。
【図12】図7のXII方向矢視断面図である。
【図13】スリーブに対してインクカートリッジ及び突き当て部材が上方へ相対移動した状態を示す要部断面図である。
【図14】マーキング動作を示す要部断面図である。
【符号の説明】
【0084】
1:マーキングトルクレンチ
2:トルクレンチ
3:ソケット
6:インクカートリッジ(マーキング部材)
50:連動部材
51:突き当て部材
52:第1付勢部材
53:第2付勢部材
54:スリーブ(可動部材)
55:第3付勢部材
56:ナット(締結部品)
57:スタットボルト(被締結部品)
80:駆動手段
81:第1係合手段
82:第2係合手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、規定トルクで締め付けられた締結部品の頂部又は被締結部品の頂部にマーキングを行うマーキングトルクレンチに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの生産ラインでは、ボルトやナットなどの締結部品を締め付けた際に、締め付け済を示すために塗料をボルトの頂部などに塗布する場合があり、規定のトルクで締め付けられた締結部品に対して、自動的にマーキングを行うマーキング機能付きトルクレンチ(以下、マーキングトルクレンチを称する)が知られている。マーキングトルクレンチの内部にはスタンプカートリッジが装着され、規定のトルクで締め付けられた瞬間に、スタンプカートリッジのスタンプ先端が締結部品に押し付けられ、インクが塗布される。
【0003】
【特許文献1】特開3477221号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の一般的なマーキングトルクレンチでは、締結面から締結部品や被締結部品などのマーキング対象部品の頂部までの突出高さが相違する場合、異なるマーキングトルクレンチを使用するか又はマーキングトルクレンチの部品を交換しなければならない。例えば、寸法規格が同一であるナットと螺合する2つのスタットボルトの頂部にそれぞれ印を付ける場合、締結面からの頂部の突出高さが相違していると、同じマーキングトルクレンチによってマーキングを行うことができない。
【0005】
そこで、本発明は、締結面からの突出高さが相違するマーキング対象部品の頂部に対して、部品の交換等を要することなくマーキングを行うことが可能なマーキングトルクレンチの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく、本発明のマーキングトルクレンチは、ソケットとトルクレンチと連動部材と突き当て部材と第1付勢部材とマーキング部材と第2付勢部材と可動部材と第3付勢部材と駆動手段と第1係合手段と第2係合手段とを有する。
【0007】
前記ソケットは、前記締結部品と係合する係合凹部と、この係合凹部に係合する前記締結部品の回転軸方向に沿って形成され該回転軸方向の一端側の前記係合凹部と他端側とを貫通する貫通孔と、前記他端側に設けられた取付部と、を有する。
【0008】
前記トルクレンチは、前記ソケットの前記取付部が着脱自在に装着されるヘッド部と、該ヘッド部にトグル機構を介して取り付けられた操作部と、を有し、前記被締結部材に対する前記操作部からの締付力が所定値に達したときに前記トグル機構が動作して前記操作部が前記ヘッド部に対して変位する。
【0009】
前記連動部材は、前記ヘッド部内に配置され、前記回転軸方向に沿って移動自在で且つ当該回転軸を中心として回転自在に支持され、所定の初期位置から前記回転軸の一端側へ可動する。
【0010】
前記突き当て部材は、突き当て端を前記回転軸方向の一端側に有し、前記ソケットの前記貫通孔内の前記一端側で前記回転軸方向に沿って移動自在に支持される。
【0011】
前記第1付勢部材は、前記ソケットと前記突き当て部材の間に配置され、前記突き当て部材を初期位置へ付勢する。
【0012】
前記マーキング部材は、インクを保持するスタンプ先端を前記回転軸方向の一端側に有し、前記ソケットの前記貫通孔内で前記回転軸方向に沿って移動自在で且つ前記回転軸を中心として回転自在に支持され、前記スタンプ先端が、前記突き当て部材の前記突き当て端よりも前記回転方向の一端側へ突出するマーキング位置と突出しない初期位置との間で可動する。
【0013】
前記第2付勢部材は、前記突き当て部材と前記マーキング部材との間に配置され、前記マーキング部材を前記突き当て部材に対して前記回転軸方向の他端側へ付勢する。
【0014】
前記可動部材は、前記ソケットの前記貫通孔内の前記他端側で前記回転軸方向に沿って移動自在で且つ当該回転軸を中心として回転自在に支持され、前記ソケットの前記他端に最も近接する初期位置よりも前記一端側へ可動し、前記初期位置では、前記ヘッド部への前記ソケットの装着時に前記連動部材と係合して該連動部材と一体的に移動及び回転する。
【0015】
前記第3付勢部材は、前記マーキング部材と前記可動部材との間に配置され、前記マーキング部材を前記可動部材に対して前記回転軸方向の他端側へ付勢する。
【0016】
前記駆動手段は、前記トグル機構の動作による前記ヘッド部と前記操作部との相対変位に増加に応じて、前記連動部材を、前記可動部材に向かって移動させるとともに、前記回転軸を中心として初期回転位置から締付完了回転位置まで回転させる。
【0017】
前記第1係合手段は、前記可動部材と前記マーキング部材とにそれぞれ設けられ、前記初期回転位置の前記連動部材に前記可動部材が係合しているときは、係合せずに前記可動部材に対する前記マーキング部材の前記回転軸方向に沿った移動を許容し、前記初期回転位置から前記締付完了回転位置へ回転する前記連動部材に前記可動部材が係合しているときは、前記連動部材が前記初期回転位置から前記締付完了回転位置へ回転するまでの間であって前記駆動手段が前記連動部材を前記可動部材に向かって移動させる前に係合して前記可動部材に対する前記マーキング部材の前記回転軸方向に沿った移動と前記回転軸を中心とした回転とを阻止する。
【0018】
前記第2係合手段は、前記マーキング部材と前記突き当て部材とに設けられ、前記初期回転位置の前記連動部材に前記可動部材が係合しているときは、係合して前記突き当て部材に対する前記マーキング部材の前記回転軸方向に沿った移動を阻止し、前記初期回転位置から前記締付完了回転位置へ回転する前記連動部材に前記可動部材が係合し、且つ前記第1係合手段が係合しているときは、前記第1係合手段が係合してから前記連動部材が前記締付完了回転位置へ回転するまでの間に係合を解除し、前記突き当て部材に対する前記マーキング部材の前記回転軸方向に沿った移動を許容する。
【0019】
上記構成では、非締め付け操作時の初期状態では、トグル機構が動作しないため、連動部材は初期回転位置に、第1係合手段は非係合状態に、第2係合手段は係合状態にそれぞれ維持される。このため、突き当て部材とマーキング部材とは回転軸方向に沿って一体的に移動し、マーキング部材と可動部材とは相対移動が許容される。また、第1付勢部材及び第3付勢部材の付勢力によって、突き当て部材とマーキング部材とは、ソケットの回転軸方向の一端に最も近接した初期位置にそれぞれ維持され、可動部材は、ソケットの回転軸方向の他端に最も近接した初期位置に維持される。
【0020】
締結部品の締め付けを行う場合、被締結部品に締結部品を螺合し、ソケットの係合凹部に締結部品を係合した状態で操作部を所定方向に回転移動する。締結部材や被締結部材の締結面からの突出高さが、係合凹部への締結部品の係合の際に初期状態でのソケットの一端と突き当て部材の一端との距離未満であったり、締め付けの過程において、締結部材や被締結部材の突出高さがソケットの一端と突き当て部材の一端との距離未満となった場合、作業者は、ソケットを締結面側に押下する。これにより、締結部品又は被締結部品のうち締結面からの突出高さ高い方の部品(マーキング対象部品)に、突き当て部材が当接し、突き当て部材とマーキング部材とがソケットの他端側へ一体的に移動する。
【0021】
締付力が所定値(所定トルク)に達し、トグル機構が動作して、操作部がヘッド部に対して変位すると、駆動手段は、ヘッド部と操作部との相対変位に増加に応じて、連動部材を、可動部材に向かって移動させるとともに、回転軸を中心として初期回転位置から締付完了回転位置まで回転させる。このとき、第1係合手段は、駆動手段が連動部材を可動部材に向かって移動させる前に係合して、可動部材に対するマーキング部材の回転軸方向に沿った移動を阻止する。すなわち、可動部材とマーキング部材と突き当て部材とが第1係合手段及び第2係合手段のそれぞれの係合によって一時的に結合して一体化し、連動部材から突き当て部材までの距離が、マーキング対象部品の突出高さ(ソケット内部へのマーキング対象部品の進入量)に応じて初期状態から短くなる。
【0022】
連動部材の回転量がさらに増大すると、マーキング部材が連動部材及び可動部材と一体的に回転して、第2係合手段によるマーキング部材と突き当て部材との係合が解除され、突き当て部材に対するマーキング部材の回転軸方向に沿った移動が許容されるとともに、駆動手段が連動部材及び可動部材をソケットの一端側へ移動させる。このとき、第1係合手段が可動部材とマーキング部材とを係合しているので、マーキング部材がマーキング位置へ移動してマーキング対象部品の頂部にインクを塗布する。なお、マーキング後は、第3の付勢部材の付勢力によってマーキング部材が戻る。
【0023】
マーキングの完了により、締め付け作業が終了し、ソケットをマーキング対象部品から外すと、第1係合手段による可動部材とマーキング部材との係合が解除され、第1付勢部材及び第2付勢部材の付勢力によって、可動部材、マーキング部材及び突き当て部材が初期状態に戻り、マーキング部材と突き当て部材とが第2係合手段によって係合する。
【0024】
このように、連動部材から突き当て部材までの距離を、マーキング対象部品の突出高さに応じて初期状態から短縮した後、突き当て部材とマーキング部材との係合を解除してマーキングを行うので、マーキング動作時のマーキング部材の移動距離を所定の距離に維持したまま、締結面からの突出高さが相違するマーキング対象部品の頂部に対して、部品の交換等を要することなくマーキングを行うことができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、締結面からの突出高さが相違するマーキング対象部品の頂部に対して、部品の交換等を要することなくマーキングを行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
まず、本発明のマーキングトルクレンチのマーキング機構の概略について説明する。図1及び図2は、本発明のマーキングトルクレンチのマーキング機構の概略を示す模式図であり、図1は締付力が作用していない初期状態を示し、図2は締付力が規定トルクに達した後でマーキングが未だ行われていない状態を示している。なお、図1及び図2は、各構成の機能を説明するための機能ブロック図であり、各構成の形状や位置を表すものではない。また、以下の説明において、下端及び上端をソケットの回転軸方向の一端及び他端として適宜使用する。
【0027】
図1及び図2に示すように、マーキングトルクレンチ1は、ソケット3と、トルクレンチ2と、連動部材50と、突き当て部材51と、第1付勢部材(コイルスプリング)52と、インクカートリッジ(マーキング部材)6と、第2付勢部材(コイルスプリング)53と、スリーブ(可動部材)54と、第3付勢部材(戻りスプリング)55と、駆動手段80と、第1係合手段81と、第2係合手段82とを有し、ナット(締結部品)56とナットが螺合して締結されるスタットボルト(被締結部品)57のうち締結面58からの突出高さが高い方の部品であるスタットボルト57の頂部57aにマーキングを行う。
【0028】
駆動手段80は、リンク機構4、連動部材50の他端面上に固定されたマグネット下47、リンク機構4に固定されたマグネット上5、連動部材50の外周面上に形成されたピニオンギヤ59、リンク機構4に固定されピニオンギヤ59と噛み合うラックギヤ60とを有する。リンク機構4は、マグネット下47と対向する動作位置と、マグネット下47と対向しない通常位置との間でマグネット上5を移動させるとともに、ラックギヤ60を移動させピニオンギヤ59を介して連動部材50を回転させる。
【0029】
ソケット3は、ナット56と係合する下端の係合凹部25と、この係合凹部25に係合するナット56の回転軸90に沿って形成された貫通孔17と、上端部(取付部)19とを有する。貫通孔17は、ソケット3の一端側から他端側へ貫通する。
【0030】
トルクレンチ2は、ソケット3の上端部19が着脱自在に装着されるトルクレンチヘッド(ヘッド部)9と、トルクレンチヘッド9にトグル機構を介して取り付けられた操作部とを有する。ナット56に対する操作部からの締付力が所定値に達したときにトグル機構が動作して操作部がトルクレンチヘッド9に対して変位する。なお、トグル機構及び操作部については、後述する。
【0031】
連動部材50は、トルクレンチヘッド9内に配置され、回転軸90に沿って移動自在で且つ回転軸90を中心として回転自在に支持され、所定の初期位置から下端側へ可動する。
【0032】
突き当て部材51は、突き当て端61を下端側に有し、ソケット3の貫通孔17内の下端側で回転軸90に沿って移動自在に支持される。この突き当て部材51によって、規定トルクに達する前にインクカートリッジ6がマーキング対象部品に接触してインクを塗布してしまうことが防止される。また、ソケット3に設けられたストッパ89は、ソケット3の下端側への突き当て部材50の移動下限を規定する。
【0033】
第1付勢部材52は、その上端がソケット3又はスリーブ54に支持され、下端が突き当て部材51に支持され、突き当て部材51を初期位置へ付勢する。なお、図1及び図2では、第1付勢部材52の上端がソケット3に支持された例を示している。
【0034】
インクカートリッジ6は、インクを保持するスタンプ(スタンプ先端)46を下端側に有し、ソケット3の貫通孔17内で回転軸90に沿って移動自在で且つ回転軸90を中心として回転自在に支持され、スタンプ46は、突き当て部材51の突き当て端61よりも下方へ突出するマーキング位置と突出しない初期位置との間で可動する。
【0035】
第2付勢部材53は、突き当て部材51とインクカートリッジ6との間に配置され、インクカートリッジ6を突き当て部材51に対して上端側へ付勢する。
【0036】
スリーブ54は、ソケット3の貫通孔17内の上端側で回転軸90に沿って移動自在で且つ回転軸90を中心として回転自在に支持され、ソケット3の上端に最も近接する初期位置よりも下端側へ可動し、初期位置では、トルクレンチヘッド9へのソケット3の装着時に連動部材50から延びるロッド21と係合して連動部材50と一体的に移動及び回転する。
【0037】
第3付勢部材55は、インクカートリッジ6とスリーブ54との間に配置され、インクカートリッジ6をスリーブ54に対してソケット3の下端側へ付勢する。
【0038】
駆動手段80は、トグル機構の動作によるトルクレンチヘッド9と操作部との相対変位に増加に応じて、連動部材50を、スリーブ54に向かって移動させるとともに、回転軸90を中心として初期回転位置から締付完了回転位置まで回転させる。
【0039】
第1係合手段81は、スリーブ54とカートリッジピン63とにそれぞれ設けられ、初期回転位置の連動部材50にスリーブ54が係合しているときは、非係合状態を維持して、スリーブ54に対するインクカートリッジ6の回転軸90に沿った移動を許容し、初期回転位置から締付完了回転位置へ回転する連動部材50にスリーブ54が係合しているときは、連動部材50が初期回転位置から締付完了回転位置へ回転するまでの間であって駆動手段80が連動部材50をスリーブ54に向かって移動させる前に係合し、スリーブ54に対するインクカートリッジ6の回転軸90に沿った移動と回転軸90を中心とした回転とを阻止する。第1係合手段81は、例えば図3に模式的に示すように、カートリッジピン63とラック形状の係合壁面62とから構成してもよい。図3の例のカートリッジピン63は、インクカートリッジ6の上端部の外周面から突出する。スリーブ54は、インクカートリッジ6及びカートリッジピン64が内部を移動可能なように、インクカートリッジ6及びカートリッジピン64の形状に合った断面形状で上下方向に延びる内面64を有する。係合壁面62は、スリーブ54の内面64のうち、回転軸90を中心としてインクカートリッジ6が回転した際に、カートリッジピン63が当接する面に形成されている。なお、このようなラック形状の係合壁面62は、例えば、インクカートリッジ6のうちカートリッジピン64を除いた部分よりも僅かに大きい内径となるように、回転軸90を中心とした雌ネジ孔を形成し、そのうちカートリッジピン64に対応する部分を切除することによって形成することができる。
【0040】
第2係合手段82は、インクカートリッジ6と突き当て部材51とに設けられ、初期回転位置の連動部材50にスリーブ54が係合しているときは、係合状態を維持して、突き当て部材51に対するインクカートリッジ6の回転軸90に沿った移動を阻止する。また、初期回転位置から締付完了回転位置へ回転する連動部材50にスリーブ54が係合し、且つ第1係合手段81が係合しているときは、第1係合手段81が係合してから連動部材50が締付完了回転位置へ回転するまでの間に係合を解除し、突き当て部材51に対するインクカートリッジ6の回転軸90に沿った移動を許容する。
【0041】
上記マーキング機構では、非締め付け操作時の初期状態では、トグル機構が動作しないため、連動部材50は初期回転位置に、第1係合手段81は非係合状態に、第2係合手段82は係合状態にそれぞれ維持される。このため、突き当て部材51とインクカートリッジ6とは回転軸方向に沿って一体的に移動し、インクカートリッジ6とスリーブ54とは相対移動が許容される。また、第1付勢部材52及び第3付勢部材55の付勢力によって、突き当て部材51とインクカートリッジ6とは、ソケット3の下端に最も近接した初期位置にそれぞれ維持され、スリーブ54は、ソケット3の上端に最も近接した初期位置に維持される。
【0042】
スタットボルト57にナット56を締め付ける場合、スタットボルト57にナット56を螺合し、ソケット3の係合凹部25にナット56を係合した状態でトルクレンチ2を所定方向に回転移動する。例えば、ナット56をある程度まで手で締めて、スタットボルト57の頂部57が上方に露出した状態からトルクレンチ2による締め付けを行う場合、作業者は、係合凹部25へのナット56の係合の際に、ソケット3を締結面58に向かって押下する。これにより、スタットボルト57の頂部57aに、突き当て部材51が当接し、突き当て部材51とインクカートリッジ6とがソケット3の上端側へ一体的に移動する。
【0043】
締付力が所定値(所定トルク)に達し、トグル機構が動作すると、駆動手段80は連動部材50に対し、スリーブ54に向かう移動駆動力と、回転軸90を中心とした回転駆動力とを付与する。回転駆動力を受けた連動部材50は、スリーブ54と一体的に初期回転位置から締付完了回転位置まで回転する。一方、移動駆動力を受けた連動部材50は、後述するように、第2係合手段82がインクカートリッジ6と突き当て部材51との係合を解除するまで移動せず、回転軸90方向においてスリーブ54は初期位置に維持される。なお、本実施形態では、後述するように、磁石(マグネット上5とマグネット下47)の反発力を利用することにより、トグル動作や他の動作に影響を与えることなく移動駆動力を維持したままスリーブ54を初期位置に維持させる構成を実現しているが、例えばバネを利用するなど他の方法によって実現することも可能である。
【0044】
スリーブ54が初期回転位置から回転すると、第1係合手段81は、駆動手段80が連動部材50をスリーブ54に向かって移動させる前に係合して、スリーブ54に対するインクカートリッジ6の回転軸90に沿った移動を阻止する。すなわち、スリーブ54とインクカートリッジ6と突き当て部材51とが第1係合手段81及び第2係合手段82のそれぞれの係合によって一時的に結合して一体化し、連動部材50から突き当て部材51までの距離が、スタットボルト57の突出高さ(ソケット3内部へのスタットボルト57の進入量)に応じて初期状態から短くなる。
【0045】
スリーブ54(連動部材50)の回転量がさらに増大すると、インクカートリッジ6が連動部材50及びスリーブ54と一体的に回転して、第2係合手段82によるインクカートリッジ6と突き当て部材51との係合が解除され、突き当て部材51に対するインクカートリッジ6の回転軸90に沿った移動が許容され、駆動手段80から移動力を受けた連動部材50は、スリーブ54をソケット3の下端側へ移動させる。このとき、第1係合手段81がスリーブ54とインクカートリッジ6とを係合しているので、インクカートリッジ6のスタンプ46がマーキング位置へ移動してスタットボルト57の頂部57aにインクを塗布する。なお、マーキング後は、第2付勢部材53の付勢力によってインクカートリッジ6が戻る。
【0046】
マーキングの完了により、締め付け作業が終了し、ソケット3をボルト56及びナット57から外すと、第1係合手段81によるスリーブ54とインクカートリッジ6との係合が解除され、第1付勢部材52及び第3付勢部材55の付勢力によって、スリーブ54、インクカートリッジ6及び突き当て部材51が初期状態に戻り、インクカートリッジ6と突き当て部材51とが第2係合手段82によって係合する。
【0047】
次に、上記マーキング機構を有する本発明の一実施形態のマーキングトルクレンチについて説明する。図4はトグル機構が動作する前のマーキングトルクレンチを示す図、図5はトグル機構が動作したときのマーキングトルクレンチを示す図、図6はマーキングトルクレンチの上側部分の要部断面図、図7はマーキングトルクレンチのトルクレンチヘッド側の要部断面図、図8は図7のVIII方向矢視断面図、図9は図7のIX方向矢視断面図、図10は図7のX方向矢視断面図、図11は図7のXI方向矢視断面図、図12は図7のXII方向矢視断面図、図13はスリーブに対してインクカートリッジ及び突き当て部材が上方へ相対移動した状態を示す要部断面図、図14はマーキング動作を示す要部断面図である。
【0048】
図4〜図13に示すように、トルクレンチ2は、筒状のトルクレンチグリップ(操作部)8と、トルクレンチグリップ8の一端側に支軸によって回転可能に取り付けられて一部がトルクレンチグリップ8内に挿入されたトルクレンチヘッド9等を有している。
【0049】
トルクレンチグリップ8は、断面が略楕円形状の楕円筒部10と、断面が略円形状の円筒部11とを有する。楕円筒部10は、トルクレンチグリップ8の一端側に配置され、内部にトグル機構12が設けられている。
【0050】
トルクレンチヘッド9は、一端9a側に角ドライブ13を有する。トルクレンチヘッド9の他端側は、楕円筒部10内に挿入されてトグル機構12に連結されている。
【0051】
トグル機構12は、ボルトやナットの締付作業時において、締付力が所定値に達するまでの間は、トルクレンチグリップ8とトルクレンチヘッド9との固定状態を保ち、締付力が所定値に達したときのトグル機構12の動作よってトルクレンチグリップ8とトルクレンチヘッド9との固定状態を解除する。トグル機構12によってトルクレンチグリップ8とトルクレンチヘッド9との固定状態が保たれているとき、トルクレンチヘッド8及びトルクレンチグリップ8は上方から視て略一直線上に並んでいる。一方、トグル機構12の動作によってトルクレンチグリップ8とトルクレンチヘッド9との固定状態が解除されたとき、トルクレンチグリップ8に加わる締付力に対してトルクレンチヘッド9が追従せず、支軸を中心として、トルクレンチグリップ8がトルクレンチヘッド9に対して一方向(図3中、時計回り)に所定角度変位する。
【0052】
角ドライブ13は、断面略円形状に形成されてトルクレンチヘッド8に支持される上端部15と、この上端部15から下方に延びてトルクレンチヘッド8の下端面よりも下方に突出した断面略角形状の下端部16とを有している。角ドライブ13は、トルクレンチグリップ8の軸方向に直交する方向に回転軸心を有する。この角ドライブ13の回転軸心上には貫通孔17が設けられ、下端部16の外側面には、凹状の溝が設けられている。
【0053】
リンク機構4は、固定ピボット29と、略平板状のリンクプレート30と、可動ピボット31と、リンクアーム32と、リンクアーム押さえ33等を有する。
【0054】
固定ピボット29は、略円柱状の下端部34と、この下端部34よりも外径の小さい略円柱状の上端部35とを有する断面略凸字状の部材であり、楕円筒部10の上面に固定されている。すなわち、固定ピボット29は、トグル機構12の動作に伴よるトルクレンチグリップ8とトルクレンチヘッド9との相対変位に応じて、トルクレンチグリップ8とともにトルクレンチヘッド9に対して相対移動する。
【0055】
リンクプレート30は、固定ピボット29よりもトルクレンチヘッド9側且つトルクレンチヘッド9及び楕円筒部10の上方に配置され、トルクレンチヘッド9の軸方向に沿って延びている。リンクプレート30の一端側は、トルクレンチヘッド9の上面に溶着され、他端側は、楕円筒部10から上方に僅かに離れて配置されている。また、リンクプレート30の一端側には、角ドライブ13よりも大きい貫通孔36が形成されている。
【0056】
可動ピボット31は、略円柱状の下端部37と、下端部37よりも外径の小さい略円柱状の上端部38とを有し、リンクプレート30の他端側上面に固定されている。上端部38の外周面には、溝が設けられており、E形止め輪39が着脱自在に係止される。E形止め輪39は、外径が下端部37の外径よりも大きく形成されている。
【0057】
リンクアーム32は、略矩形板状の非磁性体(例えば、ステンレス製)であり、可動ピボット31の上端部38の外径と略同じ大きさの可動ピボット用孔40と、固定ピボット29の上端部35の外径と略同じ大きさの固定ピボット用孔41とを有する。可動ピボット用孔40と固定ピボット用孔41とには、それぞれ可動ピボット29の上端部38と固定ピボット29の上端部35とが挿通され、リンクアーム32は、可動ピボット31によって回転自在に支持されている。リンクアーム32は、トルクレンチグリップ8の軸方向に対して傾いた非作動位置と、トルクレンチグリップ8の軸方向に沿って延びる作動位置との間を回転移動する。また、リンクアーム32の一端側には、リンクアーム押さえ33が配置されている。
【0058】
リンクアーム押さえ33は、潤滑性(他の部材に対する滑動性)のある材質(例えば、真鍮)で形成された略コ字状の部材である。リンクアーム押さえ33は、可動ピボット31よりもトルクレンチヘッド8側でリンクアーム32を跨ぐようにしてリンクプレート30の上面に固定され、リンクアーム32の上方移動を規制している。また、リンクアーム押さえ33の幅方向の端部は、リンクアーム32が非作動位置と作動位置との間で移動し得るようにリンクアーム32の回転移動を規制している。リンクアーム押さえ33の略中央部且つリンクアーム32の下方には支持ネジ42が配置されている。
【0059】
支持ネジ42は、リンクプレート30に対して固定されて、リンクアーム32を下方からスライド移動可能に支持している。すなわち、リンクアーム32は、可動ピボット31に係止されたE形止め輪39とリンクアーム押さえ33とによって上方移動が規制され、可動ピボット31の下端部37と支持ネジ42とによって下方移動が規制されている。
【0060】
マグネット上5は、表面に磁極が設けられた磁性体であり、リンクアーム32の一端部に固定されて下方に向かって突出している。マグネット上5は、角ドライブ13の回転軸心から離れた通常位置と角ドライブ13の回転軸心上に位置する動作位置との間を移動する。
【0061】
ソケット3は、上端部19と下端部20とこれら上端部19と下端部20とを貫通する貫通孔17とを有する。このソケット3は、上端部19から下端部20までの距離が長く設定された所謂エクステンションタイプであり、角ドライブ13の下端部16にロック部材83によって着脱自在に連結される。ロック部材83は、ソケット3の上端部19の外周面上に配置される環状本体84と、環状本体84からソケット3に向かって突出し、ソケット3の挿通孔91を介して角ドライブ13のロック孔92に挿入されるロックピン87と、ロック孔86に挿入された位置にロックピンを付勢するコイルバネ88とを有する。
【0062】
カバー49は、断面略コ字状の樹脂部材であり、リンクプレート30に着脱自在に固定されている。カバー49は、リンクプレート30に固定された状態でリンク機構12及びインクカートリッジ6等を上方から覆っている。なお、カバー49は、樹脂部材である場合に限定されず、アルミニウムや銅等の他の材質であってもよい。
【0063】
トルクレンチヘッド9及びソケット3には、上述のマーキング機構が設けられている。なお、上記図1及び図2において説明した構成については、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0064】
連動部材50は、略円板形状を有し、コイルスプリングによって上方の初期位置に付勢される。スリーブ54の上端のキー溝は、トルクレンチヘッド9へのソケット3の装着時に連動部材50から延びるロッド21の下端のキーと係合して、その上下位置及び回転位置が初期位置に設定される。スリーブ54とロッド21との係合は、トルクレンチヘッド9にソケット3が装着されている限り維持され、ロッド21と係合したスリーブ54は、連動部材50と一体的に移動及び回転する。
【0065】
連動部材54の上面に配置されるマグネット下47には、マグネット上5と対向した際に反発力を発生させる磁極(マグネット上5同極の磁性)が付与されている。
【0066】
突き当て部材51は、円筒形状を有し、ソケット3の貫通孔17内の下端側に挿入される。突き当て部材51は、ソケット3の内周面に回転軸90に沿って形成されたスライド溝と係合した状態(回転軸90を中心とした回転が阻止された状態)で、上下方向に移動自在に支持される。
【0067】
スリーブ54は、円筒状断面を有し、その内部に第3付勢部材55が収容されている。第3付勢部材55の上端は、スリーブ54の上部内面に当接し、下端は、インクカートリッジ6に当接する。
【0068】
インクカートリッジ6は、第1付勢部材52の内側に配置される。第1付勢部材52の上端は、ソケット3の内面に支持され、下端は、突き当て部材51に当接する。
【0069】
インクカートリッジ6は、略円筒形状のインクカートリッジ本体43と、インクカートリッジ本体43から下方へ延びるスタンプ46と、インクカートリッジ本体43の上端に締結固定されたカートリッジヘッド44とを有する。カートリッジヘッド44の外周面からカートリッジピン63が突出している。
【0070】
インクカートリッジ本体43は、インクを染み込ませた略円柱状の中綿を内装し、スタンプ46の上端は、インクカートリッジ本体43の下端から挿入されて中綿に接する。スタンプ46は、フェルト等の柔軟性を有する素材で形成され、毛細管現象によって中綿からインクが移動する。
【0071】
第2付勢部材53の上端は、インクカートリッジ本体43に固定され、下端は、突き当て部材51に固定されている。突き当て部材51はソケット3に対して回転しないため、インクカートリッジ6が回転すると、第2付勢部材53はその反対方向にインクカートリッジ6を付勢し、インクカートリッジ6に対する回転力が除去された際に、第2付勢部材53の付勢力によってインクカートリッジ6が突き当て部材51(ソケット3)に対する初期回転位置に戻る。
【0072】
第1係合手段81(インクカートリッジ6側のカートリッジピン63とスリーブ54側の係合壁面62)は、トグル動作によって初期回転位置のスリーブ54が回転を始めると係合を開始し、初期回転位置からの回転角度が所定角度θ1に達すると、完全係合状態となり、インクカートリッジ6とスリーブ54との相対移動及び相対回転が阻止される。所定角度θ1を超えると、スリーブ54の回転力がカートリッジピン63及び係合壁面62を介してカートリッジピン63に伝達され、スリーブ54とカートリッジピン63が一体的に回転する。
【0073】
スリーブ54の回転角度が所定角度θ1に達する前(第1係合手段81が完全に係合する前)にマグネット上5とマグネット下47とが反発力を発生してしまうと、スリーブ54のみが下方へ移動し、インクカートリッジ6が下方へ移動せず、マーキングが行われない可能性が生じる。このため、リンク機構4によるマグネット上5の移動軌跡は、スリーブ54の回転角度が所定角度θ1に達した後に、マグネット下47と対向して反発力を発生するように設定されている。
【0074】
第2係合手段82は、図12に示すように、突き当て部材51に形成された係合溝85と、インクカートリッジ6から突出する係合ピン86とから構成されている。係合溝85は、回転軸90との直交面に沿って横方向に延びる幅細の横溝と、横溝の端部から回転軸90に沿って下方に延びる幅太の縦溝とを有する。インクカートリッジ6が初期回転位置にあるときは、係合ピン86は横溝に係合し、インクカートリッジ6は突き当て部材51に対して上下方向に移動しない。
【0075】
スリーブ54の回転角度が所定角度θ1を超えると、係合ピン86が横溝内を縦溝に向かって移動し、所定角度θ2に達すると、縦溝に達する。係合ピン86が縦溝に達することにより、第2係合手段82の係合か解除され、インクカートリッジ6は、突き当て部材51に対して下方へ移動可能となる。なお、マグネット上5とマグネット下47とが反発力を発生する時期は、スリーブ54の回転角度が所定角度θ2に達する前及び後の何れであってもよいが、何れの場合であっても、インクカートリッジ6が下方へ移動する時期は、回転角度が所定角度θ2に達した後である。
【0076】
次に、本実施形態のマーキングトルクレンチ1の動作について説明する。
【0077】
例えば、ナット56をある程度まで手で締め、係合凹部25にナット56を係合させソケット3を締結面58に向かって押下すると、スタットボルト57の頂部57aに突き当て部材51が当接し、突き当て部材51とインクカートリッジ6とがソケット3の上端側へ一体的に移動する。この移動時には、第1係合手段81が係合していないため、スリーブ54に対してインクカートリッジ6が上方へ移動し、第1付勢部材52及び第3付勢部材55が縮められる。
【0078】
トルクレンチ2による締め付け作業が行われ、締付力が所定値(所定トルク)に達し、トグル機構が動作すると、リンク機構4、ラック60及びラチェット59を介して連動部材50が回転し、これと一体的にスリーブ54が回転する。回転角度が所定角度θ1に達するまでは、インクカートリッジ6は回転せず、所定角度θ1を超えると、第1係合手段81が完全に係合する。第1係合手段81が係合すると、スリーブ54に対するインクカートリッジ6の上下方向の移動が阻止される。すなわち、スリーブ54とインクカートリッジ6と突き当て部材51とが第1係合手段81及び第2係合手段82のそれぞれの係合によって一時的に結合して一体化し、連動部材50から突き当て部材51までの距離が、スタットボルト57の突出高さ(ソケット3内部へのスタットボルト57の進入量)に応じて初期状態から短くなる。
【0079】
回転角度が所定角度θ1を超えると、インクカートリッジ6がスリーブ54とともに回転する。回転角度が所定角度θ2に達すると、第2係合手段82の係合が解除され、突き当て部材51に対するインクカートリッジ6の下方への移動が許容される。そして、マグネット上5とマグネット下47とが反発力により、連動部材50及びスリーブ54が下方へ移動する。このとき、第1係合手段81がスリーブ54とインクカートリッジ6とを係合しているので、インクカートリッジ6のスタンプ46がマーキング位置へ移動してスタットボルト57の頂部57aにインクを塗布する。なお、マーキング後は、第2付勢部材53の付勢力によってインクカートリッジ6が戻る。
【0080】
マーキングの完了により、締め付け作業が終了すると、第1係合手段81によるスリーブ54とインクカートリッジ6との係合が解除され、第1付勢部材52及び第3付勢部材55の付勢力によって、スリーブ54、インクカートリッジ6及び突き当て部材51が初期状態に戻り、インクカートリッジ6と突き当て部材51とが第2係合手段82によって係合する。
【0081】
このように、本実施形態によれば、連動部材50から突き当て部材51までの距離を、マーキング対象部品の突出高さに応じて初期状態から短縮した後、突き当て部材51とインクカートリッジ6との係合を解除してマーキングを行うので、マーキング動作時のインクカートリッジ6の移動距離を所定の距離に維持したまま、締結面58からの突出高さが相違するマーキング対象部品の頂部に対して、部品の交換や特別な操作等を要することなくマーキングを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、マーキングトルクレンチに広くて適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明のマーキングトルクレンチのマーキング機構の初期状態を示す模式図である。
【図2】締付力が規定トルクに達した後でマーキングが未だ行われていない状態のマーキング機構を示す模式図である。
【図3】第1係合手段を模式的に示す斜視図である。
【図4】トグル機構が動作する前のマーキングトルクレンチを示す平面図である。
【図5】トグル機構が動作したときのマーキングトルクレンチを示す平面図である。
【図6】マーキングトルクレンチの上側部分の要部断面図である。
【図7】マーキングトルクレンチのトルクレンチヘッド側の要部断面図である。
【図8】図7のVIII方向矢視断面図である。
【図9】図7のIX方向矢視断面図である。
【図10】図7のX方向矢視断面図である。
【図11】図7のXI方向矢視断面図である。
【図12】図7のXII方向矢視断面図である。
【図13】スリーブに対してインクカートリッジ及び突き当て部材が上方へ相対移動した状態を示す要部断面図である。
【図14】マーキング動作を示す要部断面図である。
【符号の説明】
【0084】
1:マーキングトルクレンチ
2:トルクレンチ
3:ソケット
6:インクカートリッジ(マーキング部材)
50:連動部材
51:突き当て部材
52:第1付勢部材
53:第2付勢部材
54:スリーブ(可動部材)
55:第3付勢部材
56:ナット(締結部品)
57:スタットボルト(被締結部品)
80:駆動手段
81:第1係合手段
82:第2係合手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
締結部品と係合する係合凹部と、この係合凹部に係合する前記締結部品の回転軸方向に沿って形成され該回転軸方向の一端側の前記係合凹部と他端側とを貫通する貫通孔と、前記他端側に設けられた取付部と、を有するソケットと、
前記ソケットの前記取付部が着脱自在に装着されるヘッド部と、該ヘッド部にトグル機構を介して取り付けられた操作部と、を有し、前記被締結部材に対する前記操作部からの締付力が所定値に達したときに前記トグル機構が動作して前記操作部が前記ヘッド部に対して変位するトルクレンチと、
前記ヘッド部内に配置され、前記回転軸方向に沿って移動自在で且つ当該回転軸を中心として回転自在に支持され、所定の初期位置から前記回転軸の一端側へ可動する連動部材と、
突き当て端を前記回転軸方向の一端側に有し、前記ソケットの前記貫通孔内の前記一端側で前記回転軸方向に沿って移動自在に支持される突き当て部材と、
前記ソケットと前記突き当て部材の間に配置され、前記突き当て部材を初期位置へ付勢する第1付勢部材と、
インクを保持するスタンプ先端を前記回転軸方向の一端側に有し、前記ソケットの前記貫通孔内で前記回転軸方向に沿って移動自在で且つ前記回転軸を中心として回転自在に支持され、前記スタンプ先端が、前記突き当て部材の前記突き当て端よりも前記回転方向の一端側へ突出するマーキング位置と突出しない初期位置との間で可動するマーキング部材と、
前記突き当て部材と前記マーキング部材との間に配置され、前記マーキング部材を前記突き当て部材に対して前記回転軸方向の他端側へ付勢する第2付勢部材と、
前記ソケットの前記貫通孔内の前記他端側で前記回転軸方向に沿って移動自在で且つ当該回転軸を中心として回転自在に支持され、前記ソケットの前記他端に最も近接する初期位置よりも前記一端側へ可動し、前記初期位置では、前記ヘッド部への前記ソケットの装着時に前記連動部材と係合して該連動部材と一体的に移動及び回転する可動部材と、
前記マーキング部材と前記可動部材との間に配置され、前記マーキング部材を前記可動部材に対して前記回転軸方向の他端側へ付勢する第3付勢部材と、
前記トグル機構の動作による前記ヘッド部と前記操作部との相対変位に増加に応じて、前記連動部材を、前記可動部材に向かって移動させるとともに、前記回転軸を中心として初期回転位置から締付完了回転位置まで回転させる駆動手段と、
前記可動部材と前記マーキング部材とにそれぞれ設けられ、前記初期回転位置の前記連動部材に前記可動部材が係合しているときは、係合せずに前記可動部材に対する前記マーキング部材の前記回転軸方向に沿った移動を許容し、前記初期回転位置から前記締付完了回転位置へ回転する前記連動部材に前記可動部材が係合しているときは、前記連動部材が前記初期回転位置から前記締付完了回転位置へ回転するまでの間であって前記駆動手段が前記連動部材を前記可動部材に向かって移動させる前に係合して前記可動部材に対する前記マーキング部材の前記回転軸方向に沿った移動と前記回転軸を中心とした回転とを阻止する第1係合手段と、
前記マーキング部材と前記突き当て部材とに設けられ、前記初期回転位置の前記連動部材に前記可動部材が係合しているときは、係合して前記突き当て部材に対する前記マーキング部材の前記回転軸方向に沿った移動を規制し、前記初期回転位置から前記締付完了回転位置へ回転する前記連動部材に前記可動部材が係合し、且つ前記第1係合手段が係合しているときは、前記第1係合手段が係合してから前記連動部材が前記締付完了回転位置へ回転するまでの間に係合を解除し、前記突き当て部材に対する前記マーキング部材の前記回転軸方向に沿った移動を許容する第2係合手段と、
を備えたことを特徴とするマーキングトルクレンチ。
【請求項1】
締結部品と係合する係合凹部と、この係合凹部に係合する前記締結部品の回転軸方向に沿って形成され該回転軸方向の一端側の前記係合凹部と他端側とを貫通する貫通孔と、前記他端側に設けられた取付部と、を有するソケットと、
前記ソケットの前記取付部が着脱自在に装着されるヘッド部と、該ヘッド部にトグル機構を介して取り付けられた操作部と、を有し、前記被締結部材に対する前記操作部からの締付力が所定値に達したときに前記トグル機構が動作して前記操作部が前記ヘッド部に対して変位するトルクレンチと、
前記ヘッド部内に配置され、前記回転軸方向に沿って移動自在で且つ当該回転軸を中心として回転自在に支持され、所定の初期位置から前記回転軸の一端側へ可動する連動部材と、
突き当て端を前記回転軸方向の一端側に有し、前記ソケットの前記貫通孔内の前記一端側で前記回転軸方向に沿って移動自在に支持される突き当て部材と、
前記ソケットと前記突き当て部材の間に配置され、前記突き当て部材を初期位置へ付勢する第1付勢部材と、
インクを保持するスタンプ先端を前記回転軸方向の一端側に有し、前記ソケットの前記貫通孔内で前記回転軸方向に沿って移動自在で且つ前記回転軸を中心として回転自在に支持され、前記スタンプ先端が、前記突き当て部材の前記突き当て端よりも前記回転方向の一端側へ突出するマーキング位置と突出しない初期位置との間で可動するマーキング部材と、
前記突き当て部材と前記マーキング部材との間に配置され、前記マーキング部材を前記突き当て部材に対して前記回転軸方向の他端側へ付勢する第2付勢部材と、
前記ソケットの前記貫通孔内の前記他端側で前記回転軸方向に沿って移動自在で且つ当該回転軸を中心として回転自在に支持され、前記ソケットの前記他端に最も近接する初期位置よりも前記一端側へ可動し、前記初期位置では、前記ヘッド部への前記ソケットの装着時に前記連動部材と係合して該連動部材と一体的に移動及び回転する可動部材と、
前記マーキング部材と前記可動部材との間に配置され、前記マーキング部材を前記可動部材に対して前記回転軸方向の他端側へ付勢する第3付勢部材と、
前記トグル機構の動作による前記ヘッド部と前記操作部との相対変位に増加に応じて、前記連動部材を、前記可動部材に向かって移動させるとともに、前記回転軸を中心として初期回転位置から締付完了回転位置まで回転させる駆動手段と、
前記可動部材と前記マーキング部材とにそれぞれ設けられ、前記初期回転位置の前記連動部材に前記可動部材が係合しているときは、係合せずに前記可動部材に対する前記マーキング部材の前記回転軸方向に沿った移動を許容し、前記初期回転位置から前記締付完了回転位置へ回転する前記連動部材に前記可動部材が係合しているときは、前記連動部材が前記初期回転位置から前記締付完了回転位置へ回転するまでの間であって前記駆動手段が前記連動部材を前記可動部材に向かって移動させる前に係合して前記可動部材に対する前記マーキング部材の前記回転軸方向に沿った移動と前記回転軸を中心とした回転とを阻止する第1係合手段と、
前記マーキング部材と前記突き当て部材とに設けられ、前記初期回転位置の前記連動部材に前記可動部材が係合しているときは、係合して前記突き当て部材に対する前記マーキング部材の前記回転軸方向に沿った移動を規制し、前記初期回転位置から前記締付完了回転位置へ回転する前記連動部材に前記可動部材が係合し、且つ前記第1係合手段が係合しているときは、前記第1係合手段が係合してから前記連動部材が前記締付完了回転位置へ回転するまでの間に係合を解除し、前記突き当て部材に対する前記マーキング部材の前記回転軸方向に沿った移動を許容する第2係合手段と、
を備えたことを特徴とするマーキングトルクレンチ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−155314(P2010−155314A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−335351(P2008−335351)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】
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