説明

ミキサ装置及び該装置のスライドトレイ設置構造

【課題】パネルの前半部または後半部のいずれの上でスライドトレイを利用するかを選択でき、利便性を高める。
【解決手段】装置本体30の前端部30a、中間部30b、後端部30cには、それぞれ左右方向に沿って、前側レール部31、中間レール部32、後側レール部33が、互いに平行に形成されている。複数のスライドトレイTRのうち選択された1つを装置本体30に装着する。例えば、スライドトレイTR1を選択した場合は、その前側係合部TR1a、後側係合部TR1bを、それぞれ中間レール部32、後側レール部33に係合させる。これにより、スライドトレイTR1が、中間レール部32及び後側レール部33に架け渡された状態で設置され、パネル20の上において、左右方向の任意に位置にスライドトレイTR1を位置させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミキサ装置のパネルの上を左右方向にスライド移動自在にスライドトレイを設置するためのミキサ装置及び該装置のスライドトレイ設置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ミキサ装置には、小物等を置くことができるスライドトレイが左右方向にスライド移動自在に設置されるものが知られている。例えば、下記非特許文献1、2に示されるように、ミキサ装置の後端部と前後方向中間部とに、それぞれ左右方向に沿って平行に2本のレールを設けている。そして、これらのレールに、スライドトレイの後端部、前端部を摺動可能に係合させると、パネルとの間隔を有して、レールに沿ってスライドトレイを左右にスライドさせることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】“Digidesign”、[online]、D-Control Script Tray、〔平成20年9月27日検索〕、インターネット<URL:http://www.digidesign.com/index.cfm?langid=5&itemid=4924>
【非特許文献2】“Sweetwater”、[online]、Digidesign ICON D-Control Script Tray、〔平成20年9月27日検索〕、インターネット<URL:http://www.sweetwater.com/store/detail/DControlST>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のスライドトレイ設置構造では、装置後端部と装置の前後方向中間部の2箇所に設けたレールでスライドトレイを支持するので、スライドトレイは、パネルの後半部の上のスペースしか利用できず、利便性を高める上で改善の余地があった。
【0005】
また、スライドトレイを支持する上で、パネル面やレールの剛性が低いと撓んだり変形したりし、円滑なスライドを維持するのが困難になるため、工夫が求められる。
【0006】
本発明は上記従来技術の問題を解決するためになされたものであり、その第1の目的は、パネルの前半部または後半部のいずれの上でスライドトレイを利用するかを選択でき、利便性を高めることができるミキサ装置のスライドトレイ設置構造を提供することにある。
【0007】
本発明の第2の目的は、スライドトレイを支持するパネルの補強を図ると共に、3つのうち少なくとも2つのレール部を選択的に用いることを可能にして、適用するスライドトレイの選択肢を広げ、利便性を高めることができるミキサ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記第1の目的を達成するために本発明の請求項1のミキサ装置のスライドトレイ設置構造は、ミキサ装置(100)の装置本体(30)に対して、該ミキサ装置のパネル(10、20)の上を左右方向にスライド移動自在にスライドトレイを設置するためのミキサ装置のスライドトレイ設置構造であって、前記装置本体の前端部(30a)に左右方向に沿って設けられた前側レール部(31)と、前記装置本体の後端部(30c)に左右方向に沿って設けられた後側レール部(33)と、前記装置本体の前記前端部と前記後端部との間の中間部(30b)に左右方向に沿って設けられた中間レール部(32、50)とを有し、前記装置本体に対して着脱自在な複数のスライドトレイ(TR1〜TR3、TR11、TR12)のうち任意に選択したスライドトレイを前記装置本体に対して設置可能なように構成され、前記複数のスライドトレイには、前側係合部(TR2a)及び後側係合部(TR2b)を有し、前記前側係合部、前記後側係合部がそれぞれ前記前側レール部、前記中間レール部に係合し、前記前側レール部及び前記中間レール部に架け渡された状態で設置されて左右方向にスライド移動自在となる前側スライドトレイ(TR2)と、前側係合部(TR1a、43)及び後側係合部(TR1b、43)を有し、前記前側係合部、前記後側係合部がそれぞれ前記中間レール部、前記後側レール部に係合し、前記中間レール部及び前記後側レール部に架け渡された状態で設置されて左右方向にスライド移動自在となる後側スライドトレイ(TR1)とが含まれることを特徴とする。
【0009】
好ましくは、前記中間レール部(32)は1本であり、該1本の中間レール部は、前記前側スライドトレイの前記後側係合部、前記後側スライドトレイの前記前側係合部のいずれとも係合可能である(請求項2)。
【0010】
好ましくは、前記複数のスライドトレイにはさらに、前側係合部(TR3a)、中間係合部(TR3c)及び後側係合部(TR3b)を有し、前記前側係合部、前記中間係合部及び前記後側係合部がそれぞれ前記前側レール部、前記中間レール部及び前記後側レール部に係合し、前記前側レール部、前記中間レール部及び前記後側レール部に架け渡された状態で設置されて左右方向にスライド移動自在となる全面スライドトレイ(TR3)が含まれる(請求項3)。
【0011】
好ましくは、前記中間レール部は前側と後側とに2本設けられ(32−1、32−2)、前記前側スライドトレイ(TR12)は、その前記前側係合部(TR12a)、前記後側係合部(TR12b)が、それぞれ前記前側レール部(31)、前記前側の中間レール部(32−1)に同時に係合可能であり、前記後側スライドトレイ(TR11)は、その前記前側係合部(TR11a)、前記後側係合部(TR11b)が、それぞれ前記後側の中間レール部(32−2)、前記後側レール部(33)に同時に係合可能である(請求項4)。
【0012】
好ましくは、前記装置本体には、左右方向に沿って、前記中間レール部(50)に対して固定的に、前記中間レール部から下方に延設された補強部材(36)が設けられる(請求項5)。
【0013】
上記第2の目的を達成するために本発明の請求項6のミキサ装置は、操作子が設けられると共に、スライドトレイを左右方向にスライド移動自在に支持するパネルを有したミキサ装置であって、前記パネルには、左右方向に沿って、前端部、後端部、前記前端部と前記後端部との間の中間部に、それぞれ前側レール部(31)、後側レール部(33)、中間レール部(50)が設けられ、前記ミキサ装置の装置本体には、左右方向に沿って、前記中間レール部に対して固定的に、前記中間レール部から下方に延設された補強部材(36)が設けられたことを特徴とする。
【0014】
好ましくは、前記補強部材は、前記装置本体の底板(37)から上方に突設され、その上端部(36b)に前記中間レール部が固定的に配設されている(請求項7)。
【0015】
好ましくは、前記パネルは、着脱自在な複数のスライドトレイのうち任意に選択したスライドトレイを設置可能なように構成され、前記複数のスライドトレイには、前側係合部及び後側係合部を有し、前記前側係合部、前記後側係合部がそれぞれ前記前側レール部、前記中間レール部に係合し、前記前側レール部及び前記中間レール部に架け渡された状態で設置されて左右方向にスライド移動自在となる前側スライドトレイと、前側係合部(43)及び後側係合部(43)を有し、前記前側係合部、前記後側係合部がそれぞれ前記中間レール部、前記後側レール部に係合し、前記中間レール部及び前記後側レール部に架け渡された状態で設置されて左右方向にスライド移動自在となる後側スライドトレイ(TR1)とが含まれる(請求項8)。
【0016】
なお、上記括弧内の符号は例示である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の請求項1によれば、パネルの前半部または後半部のいずれの上でスライドトレイを利用するかを選択でき、利便性を高めることができる。
【0018】
請求項2によれば、1本の中間レール部が、前側/後側のスライドトレイの支持機能を兼ねるようにして、構成の複雑化を避けることができる。
【0019】
請求項3によれば、パネルの前半部、後半部、全体のいずれの上でスライドトレイを利用するかを選択でき、選択のバリエーションが増えて利便性が一層高まる。
【0020】
請求項4によれば、パネルの前半部及び後半部に別々のスライドトレイを一緒に設置して個々にスライドでき、利便性を高めることができる。
【0021】
請求項5によれば、スライドトレイを支持するパネルの補強を図ることができる。
【0022】
本発明の請求項6によれば、スライドトレイを支持するパネルの補強を図ると共に、3つのうち少なくとも2つのレール部を選択的に用いることを可能にして、適用するスライドトレイの選択肢を広げ、利便性を高めることができる。
【0023】
請求項7によれば、パネルの一層の補強を図ると共に、補強部材を外観に現れないように配設するのを容易にすることができる。
【0024】
請求項8によれば、パネルの前半部または後半部のいずれの上でスライドトレイを利用するかを選択でき、利便性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るスライドトレイ設置構造が適用されるミキサ装置の斜視図である。
【図2】ミキサ装置の右側面図(図(a))、装置本体の中間部の左右方向中間位置における部分縦断面図(図(b))である。
【図3】ミキサ装置の右側面図(図(a)、(b))である。
【図4】装置本体の後端部の右端部の平面図(図(a))、図4(a)のA−A線に沿う断面図(図(b))である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係るスライドトレイ設置構造が適用されるミキサ装置の右側面図(図(a))、装置本体の中間部の左右方向中間位置における部分縦断面図(図(b))である。
【図6】後側スライドトレイを前側スライドトレイに代用した例を示すミキサ装置の右側面図(図(a))、後側スライドトレイと中間レール部とに変更を施した例を示す断面図(図(b))である。
【図7】本発明の第3の実施の形態に係るスライドトレイ設置構造が適用されるミキサ装置の縦断面の部分斜視図(図(a))、中間レール部材近傍の模式的な断面図(図(b))、後側レール部近傍の模式的な断面図(図(c))である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0027】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るスライドトレイ設置構造が適用されるミキサ装置の斜視図である。このミキサ装置100は、装置本体30の前半部、後半部の各上方が、前後2つのコントロールパネル10、20にそれぞれ覆われてなる。コントロールパネル(以下、単に「パネル」という)10、20は、前後に配設され、パネル10が配設される側を前側とする。操作者はミキサ装置100の前側に位置するとし、左右方向については操作者からみた方向を基準とする。
【0028】
パネル10には、多数の操作子13が配設される。パネル20には、多数の操作子23のほか、LCDでなる表示部24が配設される。操作子13、23には、スライド式のフェーダ操作子のほか、回転式、押下式等の各種操作子が含まれる。また、パネル10、20に配設されるものには、操作子や表示部だけでなく、LEDも含まれる。パネル10にも表示部24に相当するものが設けられていてもよい。
【0029】
装置本体30の上部の左右両側には、ツバ部34、35が設けられる。右側のツバ部35は、装置本体30の右側面30dよりも右側方に少し突出している。ツバ部34についても左右対称に同様に構成される。
【0030】
パネル10、20はいずれも、左右方向においてツバ部34、35の間に配設される。そして、パネル10は、装置本体30の前端部30aから前後方向における中間部30bまでの間を覆っている。パネル20は、装置本体30の中間部30bから後端部30cまでの間を覆っている。
【0031】
本実施の形態では、装置本体30に、複数のスライドトレイTRが択一的に着脱自在である。スライドトレイTRの種類については、図2、図3で説明する。
【0032】
図2(a)、図3(a)、(b)は、ミキサ装置100の右側面図である。図2(a)、図3(a)、(b)では、それぞれ、複数のスライドトレイTRのうち選択された1つのスライドトレイTRが設置された状態を示す。図2(b)は、装置本体30の中間部30bの左右方向中間位置における部分縦断面図である。
【0033】
スライドトレイTRには、前側スライドトレイTR2、後側スライドトレイTR1、全面スライドトレイTR3がある。各スライドトレイTRの左右方向の幅は、装置本体30の全幅より小さければよく、例えば、半分程度である。各スライドトレイTRは、フラットな面を有し、簡易な小物置として利用できる。また、各スライドトレイTRは、好ましくは半透明で、パネル10、20の面が透視可能である。
【0034】
後側スライドトレイTR1は、前端部、後端部において下方に延設された前側係合部TR1a、後側係合部TR1bを有する(図2(a)参照)。前側スライドトレイTR2は、前端部、後端部において下方に延設された前側係合部TR2a、後側係合部TR2bを有する(図3(a)参照)。全面スライドトレイTR3は、前端部、前後方向中間部、後端部においてそれぞれ下方に延設された、前側係合部TR3a、中間係合部TR3c、後側係合部TR3bを有している(図3(b)参照)。
【0035】
図1に示すように、装置本体30の前端部30a、中間部30b、後端部30cには、それぞれ左右方向に沿って、前側レール部31、中間レール部32、後側レール部33が、互いに平行に形成されている。これらレール部31〜33は、ツバ部34とツバ部35との間において設けられる。
【0036】
中間レール部32については、図2(b)に示すように、装置本体30の中間部30bにおいて、上方に開口した1本の凹溝として形成される。中間レール部32には、後側スライドトレイTR1の前側係合部TR1a、前側スライドトレイTR2の後側係合部TR2b(図3(a)参照)、全面スライドトレイTR3の中間係合部TR3c(図3(b)参照)が、択一的に摺動自在に係合可能である。
【0037】
図4(a)は、装置本体30の後端部30cの右端部の平面図である。図4(b)は、図4(a)のA−A線に沿う断面図である。後側レール部33も、図4(a)、(b)に示すように、後端部30cにおいて、上方に開口した凹溝として形成される。後側レール部33には、後側スライドトレイTR1の後側係合部TR1b、全面スライドトレイTR3の後側係合部TR3bが、択一的に摺動自在に係合可能である。
【0038】
前側レール部31については、その断面を図示しないが、中間レール部32と同様に構成される。前側レール部31には、前側スライドトレイTR2の前側係合部TR2a(図3(a)参照)、全面スライドトレイTR3の前側係合部TR3a(図3(b)参照)が、択一的に摺動自在に係合可能である。
【0039】
3種類のスライドトレイTRは、ミキサ装置100の購入当初から付属している。あるいは、別売りとして、所望のものだけを後からユーザが購入する形態としてもよい。
【0040】
スライドトレイTRが3種類用意されているとして、ユーザは、それらのうち所望のものを1つ選択し、装置本体30に装着する。すなわち、選択したスライドトレイTRの係合部を、上記した係合可能なレール部に係合させる。
【0041】
例えば、後側スライドトレイTR1を選択した場合は、図1、図2(a)に示すように、その前側係合部TR1a、後側係合部TR1bを、それぞれ中間レール部32、後側レール部33に係合させる。これにより、後側スライドトレイTR1が、中間レール部32及び後側レール部33に架け渡された状態で設置される。そして、後側スライドトレイTR1のフラットな面がパネル20に対して所定の間隔を維持した状態で、左右方向の任意に位置に後側スライドトレイTR1を位置させることができる。
【0042】
後側スライドトレイTR1または全面スライドトレイTR3を選択した場合は、それぞれ、パネル10の上、パネル10及びパネル20の上において、左右方向の任意に位置に後側スライドトレイTR1、TR3を位置させることができる(図3(a)、(b)参照)。
【0043】
本実施の形態によれば、それぞれスライドする位置が異なるスライドトレイTRを複数用意し、所望のスライドトレイTRを1つ選択して装着可能にしたので、パネル10の上、パネル20の上、またはパネル10、20の全体のいずれの上でスライドトレイTRを利用するかを選択でき、利便性を高めることができる。選択のバリエーションが3つあるので、利便性が高い。
【0044】
また、中間レール部32は、後側スライドトレイTR1の前側係合部TR1a、前側スライドトレイTR2の後側係合部TR2b(図3(a)参照)、全面スライドトレイTR3の中間係合部TR3cのいずれとも係合可能である。これにより、中間レール部32は、それ自体は1本でありながら、スライドトレイTR1、TR2、TR3の支持機能を兼ねるようにして、構成の複雑化を避けることができる。
【0045】
なお、レール部31〜33は、凹状の溝部とし、スライドトレイTRの係合部を突部としたが、これに限られない。例えば、凹凸関係を、これとは逆にしてもよい。
【0046】
なお、全面スライドトレイTR3については、頑丈に構成すれば、中間係合部TR3cを廃止し、前側係合部TR3a、後側係合部TR3bのみで支持されるように構成してもよい。
【0047】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態では、前後2種類のスライドトレイTRを個別にスライド自在に一緒に装着状態にする構成を採用する。
【0048】
図5(a)は、本発明の第2の実施の形態に係るスライドトレイ設置構造が適用されるミキサ装置の右側面図である。図5(b)は、装置本体30の中間部30bの左右方向中間位置における部分縦断面図である。
【0049】
図5(b)に示すように、中間部30bには、第1の実施の形態における中間レール部32に相当するものが2本、前後に近接して平行に形成される。これらを前側中間レール部32−1、後側中間レール部32−2と記す。また、本実施の形態では、スライドトレイTR1、TR2に代えて、後側スライドトレイTR11、前側スライドトレイTR12を選択肢として用意する。その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0050】
後側スライドトレイTR11を選択した場合は、後側スライドトレイTR11の前側係合部TR11a、後側係合部TR11b(図5(a)参照)を、それぞれ後側中間レール部32−2、後側レール部33(図1参照)に係合させる。一方、前側スライドトレイTR12を選択した場合は、前側スライドトレイTR12の前側係合部TR12a(図5(a)参照)、後側係合部TR12bを、それぞれ前側レール部31(図1参照)、前側中間レール部32−1に係合させる。スライドトレイTR11、TR12については、用いるレール部が競合しないので、双方を同時に選択し、一緒に装着状態にすることも可能である。
【0051】
全面スライドトレイTR3については、その中間係合部TR3cは、前側中間レール部32−1、後側中間レール部32−2のいずれかに係合するように構成する。
【0052】
本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を奏するだけでなく、スライドトレイTR11、TR12については、単独で設置可能であることはもちろんのこと、双方を一緒に設置して、個別に左右方向にスライド可能にすることもできる。従って、利便性を一層高めることができる。
【0053】
ところで、上記第1の実施の形態において、後側スライドトレイTR1を、前後の向きを変えて用い、前側スライドトレイTR2に代用するようにしてもよい。
【0054】
図6(a)は、後側スライドトレイTR1を前側スライドトレイTR2に代用した例を示すミキサ装置の右側面図である。これは、第1の実施の形態と全く同一構成でも実現可能であるが、より利用しやすくするために、図6(b)に示すように、後側スライドトレイTR1と中間レール部32とに変更を施すのが望ましい。
【0055】
すなわち、後側スライドトレイTR1の前側係合部TR1aの前端を丸くする。さらに、中間レール部32の凹形状は、前側係合部TR1aの前端に対応してR形状とし、前方への開口を大きめにとる。これは、後側スライドトレイTR1の前後方向を逆にすると、後ろ側となる前側係合部TR1aの角度が前傾することに対処するためである。これらと同様に、後側係合部TR1bの前端形状及び前側レール部31(図1参照)の凹形状についても変更するのがよい。
【0056】
これによれば、前側スライドトレイTR2を廃止しても、第1の実施の形態と同様の効果を奏することができるので、部品点数削減に寄与する。ところで、後側スライドトレイTR1の前後方向が逆になったとき、図6(a)に示すように、水平となる部分(水平部8)が生じるため、無理なく使用することができる。
【0057】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態では、スライドトレイTRの係合部に車輪を採用すると共に、凹溝の中間レール部32に代えて湾曲した凹面を有する中間レール部材を採用した構成を例示する。
【0058】
図7(a)は、本発明の第3の実施の形態に係るスライドトレイ設置構造が適用されるミキサ装置の縦断面の部分斜視図である。図7(b)は、中間レール部材近傍の模式的な断面図である。図7(c)は、後側レール部33近傍の模式的な断面図である。
【0059】
図7(b)に示すように、パネル10、パネル20はそれぞれ、回動支点P1、P2を中心に回動可能に配設される。これにより、パネル10、パネル20を開けて内部を開放し、部品装着作業やメンテナンスを行いやすくなっている。そして、パネル10、パネル20が、図7(b)に示す、製品としての正規の回動角度に配設された状態で、上側からパネル10とパネル20とに架け渡されるような形で中間レール部材50が被せられる。
【0060】
図7(a)に示すように、装置本体30の内部においては、パネル10、20の中間に、上下及び左右方向に平行な鉛直リブ36が設けられる。鉛直リブ36は、下端部に折曲部38、上端部に折曲部36b(図7(b))を有し、折曲部38が装置本体30の底板37に当接している。鉛直リブ36は、複数箇所の固定部39を介して底板37に固定される。
【0061】
固定部39は、底板37に突設されたタップ部39cと、鉛直リブ36に設けられた固定片39bとを有し、ネジ39aによって、タップ部39cに固定片39bが螺着されることで、鉛直リブ36が底板37に固定される。鉛直リブ36には、配線や放熱用の穴36aが複数形成されている。
【0062】
図7(b)に示すように、中間レール部材50は、前方の前方延設部51と、後方上方に延設された後方延設部52とを有し、これら前方延設部51、後方延設部52がパネル10、20を押さえる機能を果たすと共に、パネル10、20の接続部分と鉛直リブ36とを目隠しする機能を果たす。
【0063】
図7(b)に示すように、中間レール部材50の下部には、当接部54が前後に形成され、全体として下方に開口した側面視コ字状を呈している。これら当接部54は、左右方向全長に亘って形成され、断面2次モーメントが大きいことから、中間レール部材50自体の剛性が高まっている。パネル10の後端部には、段差部を経て水平部14が延設形成されている。水平部14の上側から鉛直リブ36の折曲部36bが当接している。当接部54は、折曲部36bの上面に当接しており、中間レール部材50、折曲部36b、水平部14が、上方からネジ55で共締め状態で螺着固定されている。中間レール部材50の真下に鉛直リブ36があるので、中間レール部材50は比較的大きい力を受けても撓まない。
【0064】
中間レール部材50の上面は、緩やかな曲面を有する凹面53となっている。この中間レール部材50(の特に凹面53)が、第1、第2の実施の形態における中間レール部32と同様に、スライドトレイTRの係合部をスライド自在に支持するレール部としての機能を果たす。この意味で、中間レール部材50乃至凹面53も、特許請求の範囲にいう「レール部」に含まれる。
【0065】
図7(b)、(c)では、スライドトレイTRの代表として後側スライドトレイTR1を示す。図7(b)、(c)に示すように、後側スライドトレイTR1の本体部9の前端部、後端部には、車輪部40が取り付けられ、これら車輪部40が、前側係合部TR1a、後側係合部TR1b(図2(a)参照)に相当する。前側スライドトレイTR2、全面スライドトレイTR3についても係合部は同様に構成され、車輪部40が採用される。
【0066】
図7(b)、(c)に示すように、車輪部40においては、連結材41の下部に、前後方向に沿った回転軸42を中心に車輪43が軸支されている。連結材41の上部が本体部9に連結されている。
【0067】
本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を奏するだけでなく、車輪部40により、スライドトレイTRのスライド移動がより円滑になる。また、中間レール部材50の剛性を高め、ひいてはパネル10の補強を図り、スライドトレイTRのスライド移動を円滑に維持することができる。
【0068】
なお、上記した第1、第2の実施の形態(図1〜図5)においても、各スライドトレイTRに車輪部40を採用してもよく、それと共に中間レール部材50も採用してもよい。
【0069】
なお、鉛直リブ36は、中間レール部材50乃至パネル10を補強する観点からは、左右方向に沿って、中間レール部材50に対して固定的に、中間レール部材50から下方に延設されていればよく、底板37から突設されていればなおよい。
【符号の説明】
【0070】
10、20 コントロールパネル、 30 装置本体、 30a 前端部、 30b 中間部、 30c 後端部、 31 前側レール部、 32 中間レール部、 32−1 前側中間レール部、 32−2 後側中間レール部、 33 後側レール部、 36 鉛直リブ(補強部材)、 36b 折曲部(上端部)、 37 底板、 43 車輪(前側係合部、後側係合部)、 50 中間レール部材(中間レール部) 100 ミキサ装置、 TR1 後側スライドトレイ、 TR1a 前側係合部、 TR1b 後側係合部、 TR2 前側スライドトレイ、 TR2a 前側係合部、 TR2b 後側係合部、 TR3 全面スライドトレイ、 TR3a 前側係合部、 TR3b 後側係合部、 TR3c 中間係合部、 TR11 後側スライドトレイ、 TR11a 前側係合部、 TR11b 後側係合部、 TR12 前側スライドトレイ、 TR12a 前側係合部、 TR12b 後側係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミキサ装置の装置本体に対して、該ミキサ装置のパネルの上を左右方向にスライド移動自在にスライドトレイを設置するためのミキサ装置のスライドトレイ設置構造であって、
前記装置本体の前端部に左右方向に沿って設けられた前側レール部と、
前記装置本体の後端部に左右方向に沿って設けられた後側レール部と、
前記装置本体の前記前端部と前記後端部との間の中間部に左右方向に沿って設けられた中間レール部とを有し、
前記装置本体に対して着脱自在な複数のスライドトレイのうち任意に選択したスライドトレイを前記装置本体に対して設置可能なように構成され、
前記複数のスライドトレイには、
前側係合部及び後側係合部を有し、前記前側係合部、前記後側係合部がそれぞれ前記前側レール部、前記中間レール部に係合し、前記前側レール部及び前記中間レール部に架け渡された状態で設置されて左右方向にスライド移動自在となる前側スライドトレイと、
前側係合部及び後側係合部を有し、前記前側係合部、前記後側係合部がそれぞれ前記中間レール部、前記後側レール部に係合し、前記中間レール部及び前記後側レール部に架け渡された状態で設置されて左右方向にスライド移動自在となる後側スライドトレイとが含まれることを特徴とするミキサ装置のスライドトレイ設置構造。
【請求項2】
前記中間レール部は1本であり、該1本の中間レール部は、前記前側スライドトレイの前記後側係合部、前記後側スライドトレイの前記前側係合部のいずれとも係合可能であることを特徴とする請求項1記載のミキサ装置のスライドトレイ設置構造。
【請求項3】
前記複数のスライドトレイにはさらに、前側係合部、中間係合部及び後側係合部を有し、前記前側係合部、前記中間係合部及び前記後側係合部がそれぞれ前記前側レール部、前記中間レール部及び前記後側レール部に係合し、前記前側レール部、前記中間レール部及び前記後側レール部に架け渡された状態で設置されて左右方向にスライド移動自在となる全面スライドトレイが含まれることを特徴とする請求項1または2記載のミキサ装置のスライドトレイ設置構造。
【請求項4】
前記中間レール部は前側と後側とに2本設けられ、前記前側スライドトレイは、その前記前側係合部、前記後側係合部が、それぞれ前記前側レール部、前記前側の中間レール部に同時に係合可能であり、前記後側スライドトレイは、その前記前側係合部、前記後側係合部が、それぞれ前記後側の中間レール部、前記後側レール部に同時に係合可能であることを特徴とする請求項1記載のミキサ装置のスライドトレイ設置構造。
【請求項5】
前記装置本体には、左右方向に沿って、前記中間レール部に対して固定的に、前記中間レール部から下方に延設された補強部材が設けられたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のミキサ装置のスライドトレイ設置構造。
【請求項6】
操作子が設けられると共に、スライドトレイを左右方向にスライド移動自在に支持するパネルを有したミキサ装置であって、
前記パネルには、左右方向に沿って、前端部、後端部、前記前端部と前記後端部との間の中間部に、それぞれ前側レール部、後側レール部、中間レール部が設けられ、
前記ミキサ装置の装置本体には、左右方向に沿って、前記中間レール部に対して固定的に、前記中間レール部から下方に延設された補強部材が設けられたことを特徴とするミキサ装置。
【請求項7】
前記補強部材は、前記装置本体の底板から上方に突設され、その上端部に前記中間レール部が固定的に配設されていることを特徴とする請求項6記載のミキサ装置。
【請求項8】
前記パネルは、着脱自在な複数のスライドトレイのうち任意に選択したスライドトレイを設置可能なように構成され、前記複数のスライドトレイには、前側係合部及び後側係合部を有し、前記前側係合部、前記後側係合部がそれぞれ前記前側レール部、前記中間レール部に係合し、前記前側レール部及び前記中間レール部に架け渡された状態で設置されて左右方向にスライド移動自在となる前側スライドトレイと、前側係合部及び後側係合部を有し、前記前側係合部、前記後側係合部がそれぞれ前記中間レール部、前記後側レール部に係合し、前記中間レール部及び前記後側レール部に架け渡された状態で設置されて左右方向にスライド移動自在となる後側スライドトレイとが含まれることを特徴とする請求項6または7記載のミキサ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−193249(P2010−193249A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−36292(P2009−36292)
【出願日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】