説明

ミスト発生装置およびこれを備えた浴室空調装置

【課題】運転停止時にハウジングの上壁部の下面に多くの液体が付着したまま残留することを好適に抑制することが可能なミスト発生装置を提供する。
【解決手段】ハウジングH内に供給されてきた液体を周囲に飛散させるロータ2と、このロータ2から飛散してきた液体を衝突させることによってミストを発生させるための複数の衝突壁部12と、を備えている、ミスト発生装置MG1であって、ハウジングHの上壁部10の下面10aの全体または一部は、この下面10aに付着した液体をこの下面10aの外周縁寄りに進行させることが可能に、この下面10aの中心寄り領域から外周縁寄り領域に向けて進むほど高さが低くなるように傾斜した傾斜面10a'とされており、複数の衝突壁部12は、ハウジングHの上壁部10と底壁部11との間に設けられて、下面10aの外周縁寄りに進行した液体を底壁部11上に導くことが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動回転するロータを利用して液体のミスト化を図るタイプのミスト発生装置、およびこれを備えた浴室空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ミスト発生装置の具体例として、特許文献1に記載されたものがある。同文献に記載されたミスト発生装置は、水平状の上壁部および底壁部を有する所定形状のハウジング内に、駆動回転自在な円板状のロータが設けられており、このロータ上にその上方から水が供給されると、この水は遠心力によって前記ロータの周囲に飛散するように構成されている。前記ロータの周囲には、複数の衝突壁部が設けられており、これら複数の衝突壁部に前記の水が衝突することにより、この水の微細水滴化が図られ、ミストが発生する。このミストは、前記ハウジングの上壁部に形成されている開口部を通過して前記ハウジングの上方に噴出する。また、ハウジングの下部には、排水口が設けられており、ロータの周囲に飛散した水のうち、ハウジングの上方にミストとして噴出されなかったものは、前記排水口からハウジングの外部に排出されるように構成されている。
【0003】
しかしながら、前記従来技術においては、次に述べるように、改善すべき点があった。
【0004】
すなわち、ミスト発生装置をたとえば浴室に設置してミストシャワー用途などに用いる場合には、このミスト発生装置が不衛生な状態になることを防止し、このミスト発生装置によって発生されるミストを清浄なものにすることが要請される。このような要請に的確に応えるには、ミスト発生装置の運転終了後に、ハウジング内に多くの水が残留しないようにし、ハウジング内を早期に乾燥し得るように構成することが要請される。ハウジング内の残留水は、ハウジング内においてカビや雑菌が繁殖することを助長する要因となるからである。
【0005】
これに対し、前記従来技術においては、ハウジングの上壁部の下面が水平状とされている。このため、この上壁部の下面に水が掛かると、ある程度の量の水は、重力によってハウジングの底壁部上に流れ落ちるものの、それ以外の水は、適当な大きさの水滴となって上壁部の下面に残り易い。このように水滴が付着した下面は、乾燥させ難い。ハウジング内の残留水を少なくして衛生に優れたものとするには、ハウジングの上壁部以外の箇所の残留水についても少なくすることが望まれるものの、上壁部の下面は、ハウジングの内面の全面積のうち、比較的大きな割合を占める場合もあるため、上壁部の下面に多くの水が残留しないようにすることは重要な課題として挙げることができる。前記従来技術においては、このような点において改善すべき余地があった。
【0006】
なお、ミスト発生装置の他の例として、特許文献2に記載のものがある。同文献に記載のミスト発生装置は、図10(a)に模式的に示すように、ハウジング80の上壁部81や、ロータ82を一方向に傾斜させている。このような構成によれば、上壁部81の下面に付着した水滴は、その傾斜に沿って下端部81bに向けて流れるために、前記した特許文献1と比較すると、上壁部81に水滴を残留し難くすることが可能である。ところが、この特許文献2では、上壁部81を一方向に傾斜させているに過ぎないために、上壁部81の上端部81aと下端部81bとの間の距離Lは、非常に長くなる(ロータ82の直径よりも大きな寸法となる)。これでは、上端部81aの近傍に付着した水が下端部81bに迅速に到達し難くなり、下端部81bに到達する以前に水滴となって滞留する割合が多くなり易い。また、特許文献2では、上壁部81の傾斜に対応させてロータ82をも傾斜させているが、これでは、ロータ82から下向きに飛散する水量と上向きに飛散する水量とが不均一となって、均一な粒径のミストを安定的に発生させる上で、余り好ましいものではない。なお、これを解消することを目的として、たとえば図10(b)に示すように、ロータ82を水平に設定した場合には、ロータ82から上壁部81の下面までの寸法h1,h2の差が非常に大きくなる。これでは、ロータ82の上方の空間スペースがロータ82の周方向においてアンバランスなものとなって、ロータ82の回転時には、ミストの発生を不安定とする空気の乱流がハウジング80内に生じ易くなるといった不具合が生じてしまう。
【0007】
【特許文献1】特開平8−182727号公報
【特許文献2】特許第3198907号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであって、運転停止時にハウジングの上壁部の内面に多くの液体が付着したまま残留することを適切に抑制することができ、ハウジング内を早期に乾燥させて衛生などに優れたものとするのに好適なミスト発生装置、およびこれを備えた浴室空調装置を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0010】
本発明の第1の側面により提供されるミスト発生装置は、上壁部および底壁部を有するハウジングと、前記上壁部および底壁部の間に配されるようにして前記ハウジング内に収容され、かつ前記ハウジング内に供給されてきた液体を周囲に飛散させることが可能なロータと、このロータの周囲に設けられ、かつ前記ロータから飛散してきた液体を衝突させることによってミストを発生させるための複数の衝突壁部と、前記ミストを前記ハウジングの内部から外部に噴出させるためのミスト噴出口と、を備えている、ミスト発生装置であって、前記ハウジングの上壁部の下面の全体または一部は、この下面に付着した液体をこの下面の外周縁寄りに進行させることが可能に、この下面の中心寄り領域から外周縁寄り領域に向けて進むほど高さが低くなるように傾斜した傾斜面とされ、前記複数の衝突壁部は、前記ハウジングの上壁部と底壁部との間に設けられ、かつ前記下面の外周縁寄りに進行した液体をこれら複数の衝突壁部に伝わせて前記底壁部上に導くことが可能とされていることを特徴としている。
【0011】
このような構成によれば、ハウジングの上壁部の下面に付着した液体は、この下面の傾斜面に沿って外周縁寄りに進行した後に、複数の衝突壁部を伝ってハウジングの底壁部上に導かれる。したがって、ミスト発生装置の運転停止後に、ハウジングの上壁部の下面に多くの液体が付着したまま長期間にわたって残留することが防止される。その結果、ハウジングの内面全域を早期に乾燥させ易くなり、ハウジング内を衛生的なものにするのに好ましいものとなる。とくに、本発明においては、ハウジングの上壁部の下面に形成された傾斜面は、一方向のみに傾斜した特許文献2の傾斜面とは異なり、上壁部の内面の中心寄り領域から外周縁寄り領域に向けて進むほど高さが低くなるように傾斜したもの(たとえば、略円錐面状)であるために、上壁部の下面の最も高さが高い位置から衝突壁部が設けられている位置までの距離を、たとえばロータの半径程度あるいはそれよりもやや長い程度の短い距離とし、上壁部の内面に付着した液体を迅速に衝突壁部に到達させて底壁部に導くことができる。また、本発明においては、特許文献2とは異なり、ハウジングの上壁部の下面の傾斜に対応させてロータを一方向に傾斜させるといった必要もない。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記上壁部の下面は、親水処理面とされている。
【0013】
このような構成によれば、上壁部の下面に水滴などの液滴を生じ難くすることができる。前記構成とは異なり、上壁部の下面が撥水面とされている場合には、この下面に液滴が生じ易くなって、液体が下面に沿って円滑に流れ難くなる。また、液滴は、その体積に比較して全体の表面積が小さいために、蒸発させ難い。これに対し、前記構成によれば、液滴の発生が抑制されるために、上壁部の下面に多くの液体が残留しないようにし、この下面を早期に乾燥させるのに、より好ましいものとなる。
【0014】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記ハウジングの底壁部の上面の全体または一部は、この上面の外周寄り領域から中心寄り領域に向けて進むほど高さが低くなるように傾斜した傾斜面とされて、前記底壁部上には、液体を貯留可能な貯液部が形成されているとともに、前記ハウジングの上壁部から底壁部上に導かれた液体を前記貯液部に進行させることが可能とされており、前記ロータは、回転板と、この回転板から下方に突出した軸状部とを有し、かつ回転時には、前記貯液部に貯留されている液体を前記軸状部によって前記回転板まで汲み上げてからこの回転板によって前記複数の衝突壁部に向けて飛散させることが可能な構成とされている。
【0015】
このような構成によれば、ミスト発生装置の運転時には、貯液部の液体をロータにより汲み上げ、これを適切にミスト化することができる。その際、ハウジングの上壁部から底壁部上に導かれた液体についても、貯液部に進行させることにより、ミスト化に有効利用することができる。一方、ミスト発生装置の運転を停止するときには、貯液部への液体供給を停止した状態で、貯液部の液体をミスト化して消費させると、貯液部に多くの液体が残留しないようにすることができる。したがって、ハウジングの底壁部上にも多くの液体が残留しないようにし、ハウジングの内面を早期に乾燥させるのに一層好適となる。
【0016】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記ハウジングの底壁部には、液体排出用の孔部が設けられており、前記ロータが回転してミストが発生されるときには、前記貯液部の液体が前記孔部から前記ハウジングの外部に排出されることを防止し、かつ前記ロータの停止時には、前記貯液部の液体を前記孔部から前記ハウジングの外部に排出することが可能な構成とされている。
【0017】
このような構成によれば、ミスト発生装置の運転停止後に、ハウジング内に多くの液体が残留しないようにできることに加え、ミスト発生装置の運転停止中において、何らかの事情によりハウジング内に液体が進入した場合に、この液体をハウジング外部に排出させることも可能となる。
【0018】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記ロータの回転板は、外周縁部の下面が先下がり状に屈曲し、または外周縁部の上面が先上がり状に屈曲した屈曲面を有しており、前記ロータの回転時において、前記軸状部によって前記回転板の下面または上面の高さまで汲み上げられた液体は、前記回転板の下面または上面の中央寄り領域から前記外周縁部に進行したときに前記屈曲面に沿って流れてからその周囲に飛散するように構成されている。
【0019】
このような構成によれば、ロータの回転板の外周縁からその周囲に液体を連続して飛散させる際の飛散量のばらつきを少なくし、ミストを安定的に発生させるのに好ましいものとなる(詳細は、図6および図7を参照して後述する)。
【0020】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記複数の衝突壁部どうしの隙間は、前記ハウジングの周囲に向けて開口しており、この開口部分が、前記ミスト噴出口とされている。
【0021】
このような構成によれば、ロータの周囲に飛散した液体が複数の衝突壁部に衝突することによって発生したミストは、それら複数の衝突壁部どうしの隙間をそのまま通過してハウジングの周囲に噴出されることとなる。したがって、ミストがハウジング内において水滴化する機会を少なくし、ハウジング外部へのミスト噴出量を多くするのに好適となる。
【0022】
本発明の第2の側面により提供される浴室空調装置は、浴室の上部または上方に設置されて、前記浴室の空調を行なうのに用いられる浴室空調装置であって、本発明の第1の側面により提供されるミスト発生装置を備えていることを特徴としている。
【0023】
このような構成によれば、本発明の第1の側面により提供されるミスト発生装置について述べたのと同様な効果が得られる。また、浴室暖房装置をミスト発生装置のブラケットとして利用することが可能となり、ミスト発生装置の施工作業の省略化あるいは簡略化を図ることもできる。
【0024】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記ミスト発生装置に向けて温風供給が可能とされている。
【0025】
このような構成によれば、温風を利用し、ミスト発生装置のハウジングやその他の各部を早期に、かつ十分に乾燥させることが可能となる。したがって、ミスト発生装置を衛生に優れたものとするのにより好ましいものとなる。
【0026】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0028】
図1〜図5は、本発明が適用されたミスト発生装置を備えた浴室空調装置、およびこれに関連する構成の一例を示している。図1に示す浴室空調装置Aは、浴室暖房乾燥機として構成されており、ユニットバスなどの浴室の天井部80に取り付けられている。浴室空調装置Aの下部に設けられているパネル41には、ミスト発生装置MG1が取り付けられている。
【0029】
図2によく表われているように、ミスト発生装置MG1は、ハウジングH、ロータ2、このロータ2の駆動回転用のモータM、およびミスト発生用の湯水(温水または非加熱の水)をハウジングH内に供給するための給水管92を備えている。給水管92には、給水のオン・オフ、あるいは流量制御が可能なバルブV1が設けられている(図1を参照)。
【0030】
ハウジングHは、ロータ2を収容する空間部を形成する上壁部10と底壁部11とを具備している。また、ハウジングHには、それら以外として、ロータ2の周囲に位置する複数の衝突壁部12、および複数のミスト噴出口13も設けられている。このハウジングHは、全体の概略形状が上面開口のカップ状とされたハウジング本体1上に、カバー体19が組み付けられることにより構成されている。ハウジング本体1およびカバー体19は、ともに合成樹脂製である。ハウジングHは、たとえばパネル41の下面にその上部が当接するように配置され、図示されていないネジ部材あるいは適当なブラケットを用いてパネル41に固定されている。ハウジング本体1とカバー体19との組み付けも、たとえばネジ部材(図示略)を用いて行なわれている。
【0031】
ハウジングHの上壁部10は、カバー体19を利用して構成されており、ハウジング本体1の上部開口からその上方にミストが噴出することを防止する役割を果たす。本実施形態においては、この上壁部10上にモータMが載設されており、モータ支持部材としての役割をも果たしている。上壁部10の中央部には、空気流入口33が設けられており、モータMと上壁部10との隙間を進行してきた外部空気をハウジングH内に進行させることが可能である。上壁部10の下面10aの略全体は、傾斜面10a'とされている。この傾斜面10a'は、下面10aの中央部寄り領域から外周縁寄り領域に進むほど、高さが低くなる円錐面またはこれに近似した曲面(図示された傾斜面10a'は、厳密には、円錐台の側面に相当する曲面)である。この傾斜面10a'は、下面10aに付着した湯水を外周縁に向けて進行させて、ハウジング本体1の上部に形成されているリング状部分18の内周面や、複数の衝突壁部12の上部に到達させるのに役立つ。
【0032】
上壁部10の下面10aは、親水処理面であり、水滴を発生させ難い仕様となっている。好ましくは、下面10a以外にも、ハウジンHの内外面の略全体が親水処理面とされている。ハウジングHの各部の面を親水処理面にするための手段としては、たとえばコロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理など、対象表面に活性種を生成させる手段、プライマやその他の親水性に優れる物質を対象表面に塗布する手段、あるいは対象表面にエッチングやブラスト処理などを施して対象表面を粗面化する手段などを採用することができる。また、これ以外としては、ハウジング本体1やカバー体19を樹脂成形する場合に、その成形材料として、親水性材料を含んだ樹脂を用いる手段を採用することもできる。
【0033】
ハウジングHの底壁部11は、その中央寄り部分が窪み、適当量の液体を貯留可能な貯液部14を形成している。給水管92は、この貯液部14に湯水供給を行なうことが可能にハウジングH内に差し込まれている。底壁部11の上面11aのうち、少なくとも貯液部14の周囲に位置する外周縁寄り領域は、中央寄り部分ほど高さが低くなる傾斜面として形成されている。この傾斜面は、上面11aの外周縁寄りに存在する水滴などを貯液部14に流入させて回収させるのに役立つ。
【0034】
ロータ2は、モータMの駆動軸30に支持されて回転自在であり、円板状の回転板20と、この回転板20の中央部から下向きに突出した湯水汲み上げ用の軸状部21とを有している。軸状部21は、上部寄りほど大径となる円錐状または円錐台状である。軸状部21がこのような形状であると、この軸状部21を高速で回転させた際に、貯液部14に貯留されている湯水をこの軸状部21の外周面に沿った膜状にして上昇させることが可能である。前記湯水が軸状部21に沿って上昇し、回転板20の下面まで汲み上げられると、この湯水は、遠心力によって回転板20の中央寄り領域から外周方向に向けて加速され、回転板20の周囲に飛散する。このようなロータ2の作用自体は、従来公知のもの(たとえば、特開2001−289470号公報に記載のロータ)と同様である。回転板20の外周縁の下面は、先下がり状に傾斜した屈曲面20aとされている。このことの技術的意義については後述する。
【0035】
軸状部21の下部は、ハウジングHの底部に設けられた液体排出用の孔部16に挿通している。この孔部16と軸状部21の外周面との間には、たとえば1〜3mmほどの隙間が形成されている。この隙間に存在する湯水は、前記したようにロータ2の回転時において軸状部21がその外周面に沿って湯水を上昇させる作用によって、常時上方に汲み上げられる。その結果、貯液部14の湯水が孔部16から下方に漏れることは適切に防止される。もちろん、ロータ2の回転を停止させた際には、貯液部14内の湯水は孔部16から流出する。孔部16を設けておけば、ミスト発生装置MG1の運転停止時において、この孔部16からハウジングH内の湯水を外部に排出することができる。また、たとえば浴室で使用されるシャワー水がハウジングHに掛かり、このシャワー水がハウジングH内に進入した場合であっても、この水を孔部16からハウジングHの外部に適切に排出させることが可能となる。
【0036】
ハウジングHの複数の衝突壁部12は、ロータ2が回転して回転板20からその周囲に水が飛散したときにこの水を衝突させるための部位であり、この衝突により微小粒径のミストを適切に発生させることが可能である。図3に示すように、複数の衝突壁部12は、ハウジングHの中心軸周りに略等間隔で放射状に並んだリブ状である。互いに隣り合う衝突壁部12どうしの隙間は、略水平方向および下方を向いて開口しており、この開口部分がミスト噴出口13である。複数の衝突壁部12に水が衝突することにより発生したミストは、複数の衝突壁部12どうしの隙間から複数のミスト噴出口13をそのまま通過して、ハウジングHの周囲に噴出する。
【0037】
各衝突壁部12は、上端がハウジング本体1のリング状部分18の下面に繋がり、かつ下端が底壁部11の上面11aに繋がった構成とされている(図4も参照)。このことにより、上壁部10の下面10aに付着した湯水がリング状部分18の内周面に到達したときには、その後に前記湯水を衝突壁部12の内面側に伝わせて底壁部11上に導くことが可能である。なお、本発明においては、本実施形態とは異なり、上壁部10の下面10aに衝突壁部12の上端が直接接触するように形成し、下面10aの湯水がリング状部分18を介することなく衝突壁部12に直接進行するように構成することもできる。また、衝突壁部12は、上壁部10の下面10aから底壁部11上に湯水を進行させる橋渡し機能を発揮すればよいために、上壁部10や底壁部11に直接繋がっていなくてもよい。湯水は、小さな隙間であれば、この隙間を通過することが可能であるために、上壁部10または底壁部11と衝突壁部12との間に、小さな隙間が形成されている構成とすることもできる。
【0038】
底壁部11には、1または複数の筒状部15aが上向きに起立して設けられており、この筒状部15aの孔部は、外部空気をハウジングH内に流入させるための空気流入口15となっている(図5も参照)。この空気流入口15からハウジングH内に外部空気が流入すると、ロータ2の周辺空気が乱流状態になることを抑制し、貯液部14の湯水が軸状部21に沿って汲み上げられてから回転板20の周囲に向けて進行する動作を安定させるのに役立つ。上壁部10に設けられている空気流入口33も、ハウジングH内に乱流が生じることを抑制するのに役立つ。
【0039】
図1に示すように、浴室空調装置Aは、ケース4、ファン50、加熱手段としての熱交換器51、および制御部7を備えている。ケース4は、ファン50および熱交換器51を内部に収容し、かつ浴室の天井板80の上面側に設置される下部開口状であり、このケース4の下部開口は、パネル41により塞がれている。パネル41には、給気口41aと、送風口41bを有するルーバ42とが設けられている。
【0040】
この浴室空調装置Aにおいては、ファン50が駆動すると、給気口41aからケース4内に空気が吸入され、この空気が熱交換器51により加熱される。熱交換器51は、たとえば浴室の外部に設置された給湯装置などの熱源機(図示略)から温水供給がなされる複数のフィン付チューブを用いて構成されており、ファン50による吸入空気はそれら複数のフィン付チューブ間を通過する際に加熱される。この加熱された空気は、ルーバ42までガイドされてその送風口41bから吹き出される。この送風口41bから吹き出される空気の流れは、ミスト発生装置MG1から噴出されるミストを所望領域に効率良く供給するのに利用することができる。ルーバ42は、揺動動作および角度調整が可能であるが、好ましくは、ミスト発生装置MG1のハウジングHに向けて温風を吹きつけることが可能な角度にも設定可能である。このような構成によれば、ミスト発生装置MG1の運転停止時に、温風を利用してハウジングHやロータ2などを早期に乾燥させることができる。制御部7は、たとえばマイクロコンピュータを用いて構成されており、図示されない操作リモコンからの動作指令などに対応し、浴室空調装置Aの各部の動作制御を実行する。ミスト発生装置MG1のモータMの駆動やバルブV1の開閉動作も、この制御部7により制御される。
【0041】
次に、ミスト発生装置MG1を備えた浴室空調装置Aの作用について説明する。
【0042】
まず、ミスト発生装置MG1を運転させる場合には、給水管92から貯液部14に湯水を供給するとともに、モータMを駆動させてロータ2を回転させる。貯液部14に貯留された湯水の一部は、既述したように、ロータ2の軸状部21の回転作用によってこの軸状部21の外周面に沿って回転板20の下面まで上昇してからその周囲に飛散し、複数の衝突壁部12に衝突する。この衝突により、複数の衝突壁部12どうしの隙間において多くのミストが発生し、このミストがそのままミスト噴出口13を通過してハウジングHの周囲に噴出される。したがって、ハウジングH内において発生したミストの多くが外部に噴出されないままハウジングH内において水滴化することが適切に抑制され、ミスト噴出量を多くすることができる。ハウジングHの周囲に噴出されたミストは、その後浴室の上部から重力を利用して徐々に下降させることが可能であるが、送風口41aから吹き出されるエア流れを利用してミスト発生装置MG1の直下以外の領域に積極的に供給することもできる。このようなことから、たとえば入浴者がミストシャワーを浴びる際のミスト量を多くし、入浴者にとって快適なものとすることができる。
【0043】
前記したようなミスト発生を行なっている場合、複数の衝突壁部12に衝突した湯水の一部は、上壁部10の下面10aに付着する。すると、この湯水は、下面10aの傾斜面10a'に沿ってその外周縁方向に円滑に流れてから、複数の衝突壁部12のいずれかを伝ってハウジングHの底壁部11の上面11a上に導かれる。したがって、ミスト発生装置MG1の運転を停止させたときに、上壁部10の下面10aに多くの湯水が残留しないようにすることができる。下面10aは、既述したように、親水処理面とされ、下面10aに付着した湯水が水滴化して滞留することが抑制されるために、下面10aに湯水が残留することをより徹底して防止することができる。
【0044】
また、傾斜面10a'は、円錐面またはこれに近似した曲面であるために、この傾斜面10a'のいずれかの位置に湯水が付着した場合、この湯水は、傾斜面10a'の周縁部のうち、前記の付着位置から最短距離の位置に向けて進行することとなる。図10(a)に模式的に示した従来技術では、上端部81aに付着した湯水は下端部81bに向けてロータ82の直径よりも大きい距離Lだけ移動する必要があるが、本実施形態においては、そのようなことはなく、下面10aのいずれの位置に付着した湯水であっても、衝突壁部12の上端近辺までの短距離を迅速かつ円滑に進行させることができる。また、ロータ2の回転板20の上方の隙間の最大および最小寸法h3,h4の差は、図10(b)に示した隙間寸法h1,h2の差と比較すると、かなり小さくすることができる。このため、ロータ2の回転時に、回転板20の上方の空気がアンバランスな状態で旋回することも抑制され、ハウジングH内に空気の乱流をより生じ難くする効果も期待できる。
【0045】
複数の衝突壁部12を伝って底壁部11上に導かれた湯水は、その後に底壁部11の上面11aの傾斜に沿って流れ、貯液部14に流入する。このことにより、前記湯水は、ミスト発生に有効に再利用される。ミスト発生装置MG1の運転を停止する場合には、給水管92から貯液部14への湯水供給を停止させた状態において、ロータ2を暫く回転させることにより、貯液部14の湯水をミスト化して消費することにより、貯液部14内の湯水残量を少なくすることが可能である。その後、ロータ2の回転を停止させた際に、仮に、ハウジング2内に湯水が残存していたとしても、ロータ2の回転停止時であれば、その湯水は液体排出用の孔部16からハウジングHの外部に排出される。この排出により、ハウジングHの底壁部11上の湯水残留がより少なくなる。その結果、このミスト発生装置MG1では、運転停止後にハウジングH内の全域を早期に乾燥させることが可能となる。なお、孔部16から浴室の床面上に排水液が直接流れ落ちることを防止したい場合には、孔部16に排水ガイド用の適当な配管部材を接続すればよい。
【0046】
ロータ2の回転板20に設けられた屈曲面20aは、次のような作用を生じさせる。すなわち、図6に模式的に示すように、ロータ2が回転し、貯液部14の湯水が軸状部21の外周面に沿って汲み上げられる場合、厳密には、その湯水は矢印線Laで示すように、軸状部21の周囲を螺旋状に上昇する。この湯水が、回転板20の下面に到達してから膜状となってその外周縁に向けて進行する場合には、渦巻き状に進行していく。このようなことから、回転板20の下面の水膜は、各所の厚みが一定に揃わず、周期的に厚みが大きい部分n1が発生する傾向がある。このような状況において、図7に示す対比例(この対比例も、本発明の技術的範囲に含まれる)のように、回転板20の外周縁の水平状の下面から、前記した膜状の湯水をそのまま周囲に飛散させたのでは、その湯水は、その水量に増減変化を生じた脈動状態となる。ミストを安定的に発生させる観点からすると、このような現象は抑制されることが望まれる。これに対し、本実施形態では、図6に示すように、前記した膜状の湯水が屈曲面20aに当たることによって、水膜の厚みが均一化されることとなる。したがって、回転板20の周囲には、湯水が略一定量で連続して飛散することとなり、ミストを安定的に発生させるのに好ましいものとなる。
【0047】
図8および図9は、本発明の他の実施形態を示している。これらの図において、前記実施形態と同一または類似の要素には、同一の符号を付している。
【0048】
図8に示すミスト発生装置MG2においては、ロータ2の軸状部21が孔部210を有している。本実施形態においては、ロータ2が回転すると、貯液部14の湯水のうち、軸状部21の孔部210内に位置する湯水は、遠心力によって孔部210の内周面に沿った膜状となって上昇し、回転板20の上面に到達する。次いで、この湯水は、回転板20の上面において遠心力により加速されて膜状となり、回転板20の周囲に向けて飛散する。したがって、このような構成の軸状部21を備えたロータを用いることもできる。本実施形態において、前記実施形態の屈曲面20aを設けた場合と同様な効果を得る場合には、回転板20の外周縁部の上面が先上がり状に屈曲した屈曲面20bを設ければよい。
【0049】
図9に示すミスト発生装置MG3においては、ハウジングHの底壁部11の液体排出用の孔部16aに、ロータ2の軸状部21が挿入されていない。ただし、孔部16aには、遠隔操作が可能な開閉バルブV2を備えた配管部材99が接続されている。本実施形態によれば、ミスト発生装置MG3の運転時には、開閉バルブV2を閉状態としておくことにより、貯液部14の湯水が孔部16aを通過して外部に排出されないようにすることができる。一方、ミスト発生装置MG3の運転停止時には、開閉バルブV2を開状態とすることにより、孔部16aおよび配管部材99を介して貯液部14の湯水を外部に抜き、ハウジングH内を早期に乾燥させることができる。
【0050】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係るミスト発生装置、およびこれを備えた浴室空調装置の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0051】
本発明でいうハウジングの上壁部および底壁部は、それらの間にロータを収容するように上下に位置するハウジングの壁部であり、その具体的な形状、材質、およびサイズなどは種々に変更できる。上壁部の下面に形成される傾斜面は、排水性を高める観点からすると、下面の略全体に形成することが好ましいものの、やはりこれに限定されず、上壁部の下面に部分的に設けた構成とすることもできる。
【0052】
ロータとしては、特許文献1,2と同様に、その上面上に給水管などを利用して直接給水がなされ、この水がそのまま遠心力によってロータの周囲に飛散するようにしたものを採用することもできる。複数の衝突壁部は、必ずしも厚みが一定のリブ状でなくてもよい。たとえば、厚みを不均一としたり、平面視において屈曲した形状とすることもできる。また、ミスト噴出量を多くする観点からすると、ハウジングの外周の略全域にミストを噴出させるようにすることが好ましいものの、やはりこれに限定されず、たとえば複数の衝突壁部の周囲の一部にミスト噴出口から進行してくるミストを遮断する手段、あるいはミスト噴出口を塞ぐ手段を設けて、ハウジングの外周の一部の領域には、ミストが噴出されないようにすることもできる。
【0053】
本発明に係るミスト発生装置は、天井取り付けタイプの浴室空調装置に代えて、たとえば浴室の側壁部の天井部に近い箇所などに取り付けられる壁掛けタイプの浴室空調装置に具備させた構成とすることもできる。また、これとは異なり、ミスト発生装置を、浴室空調装置以外の装置・機器、あるいはブラケットなどを利用して浴室の上部や上方に設置し、浴室空調装置の有無には関係なく、それ単独で使用することもできる。本発明に係るミスト発生装置は、浴室(シャワールームを含む)での温水または非加熱水のミスト発生用途に適するが、浴室以外の箇所に設置し、湯水または湯水以外の液体の噴霧用途(たとえば、加湿用途、薬液などの液体散布の用途、ミスト発生に伴うマイナスイオン効果を目的とする用途など)に用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係るミスト発生装置を備えた浴室空調装置の一例を示す概略断面図である。
【図2】図1に示されたミスト発生装置の要部断面図である。
【図3】図2のIII−III要部平面断面図である。
【図4】図3のIV−IV断面図である。
【図5】図1に示されたミスト発生装置のハウジング本体を示す平面図である。
【図6】図1に示されたミスト発生装置のロータの屈曲面の作用を模式的に示す図である。
【図7】図6との対比例を示す図である。
【図8】本発明に係るミスト発生装置の他の例を示す要部断面図である。
【図9】本発明に係るミスト発生装置の他の例を示す要部断面図である。
【図10】(a)は、従来技術の一例を模式的に示す図であり、(b)は、その変形例を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0055】
A 浴室空調装置
MG1〜MG3 ミスト発生装置
H ハウジング(ミスト発生装置の)
2 ロータ
10 上壁部(ハウジングの)
10a 下面(上壁部の)
10a' 傾斜面
11 底壁部(ハウジングの)
11a 上面(底壁部の)
12 衝突壁部
13 ミスト噴出口
14 貯液部
16,16a 液体排出用の孔部
20 回転板(ロータの)
20a,20b 屈曲面
21 軸状部(ロータの)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上壁部および底壁部を有するハウジングと、
前記上壁部および底壁部の間に配されるようにして前記ハウジング内に収容され、かつ前記ハウジング内に供給されてきた液体を周囲に飛散させることが可能なロータと、
このロータの周囲に設けられ、かつ前記ロータから飛散してきた液体を衝突させることによってミストを発生させるための複数の衝突壁部と、
前記ミストを前記ハウジングの内部から外部に噴出させるためのミスト噴出口と、
を備えている、ミスト発生装置であって、
前記ハウジングの上壁部の下面の全体または一部は、この下面に付着した液体をこの下面の外周縁寄りに進行させることが可能に、この下面の中心寄り領域から外周縁寄り領域に向けて進むほど高さが低くなるように傾斜した傾斜面とされ、
前記複数の衝突壁部は、前記ハウジングの上壁部と底壁部との間に設けられ、かつ前記下面の外周縁寄りに進行した液体をこれら複数の衝突壁部に伝わせて前記底壁部上に導くことが可能とされていることを特徴とする、ミスト発生装置。
【請求項2】
前記上壁部の下面は、親水処理面とされている、請求項1に記載のミスト発生装置。
【請求項3】
前記ハウジングの底壁部の上面の全体または一部は、この上面の外周寄り領域から中心寄り領域に向けて進むほど高さが低くなるように傾斜した傾斜面とされて、前記底壁部上には、液体を貯留可能な貯液部が形成されているとともに、前記ハウジングの上壁部から底壁部上に導かれた液体を前記貯液部に進行させることが可能とされており、
前記ロータは、回転板と、この回転板から下方に突出した軸状部とを有し、かつ回転時には、前記貯液部に貯留されている液体を前記軸状部によって前記回転板まで汲み上げてからこの回転板によって前記複数の衝突壁部に向けて飛散させることが可能な構成とされている、請求項1または2に記載のミスト発生装置。
【請求項4】
前記ハウジングの底壁部には、液体排出用の孔部が設けられており、
前記ロータが回転してミストが発生されるときには、前記貯液部の液体が前記孔部から前記ハウジングの外部に排出されることを防止し、かつ前記ロータの停止時には、前記貯液部の液体を前記孔部から前記ハウジングの外部に排出することが可能な構成とされている、請求項3に記載のミスト発生装置。
【請求項5】
前記ロータの回転板は、外周縁部の下面が先下がり状に屈曲し、または外周縁部の上面が先上がり状に屈曲した屈曲面を有しており、
前記ロータの回転時において、前記軸状部によって前記回転板の下面または上面の高さまで汲み上げられた液体は、前記回転板の下面または上面の中央寄り領域から前記外周縁部に進行したときに前記屈曲面に沿って流れてからその周囲に飛散するように構成されている、請求項3または4に記載のミスト発生装置。
【請求項6】
前記複数の衝突壁部どうしの隙間は、前記ハウジングの周囲に向けて開口しており、この開口部分が、前記ミスト噴出口とされている、請求項1ないし5のいずれかに記載のミスト発生装置。
【請求項7】
浴室の上部または上方に設置され、前記浴室の空調を行なうのに用いられる浴室空調装置であって、
請求項1ないし6のいずれかに記載のミスト発生装置を備えていることを特徴とする、浴室空調装置。
【請求項8】
前記ミスト発生装置に向けて温風供給が可能とされている、請求項7に記載の浴室空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−291481(P2009−291481A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−149343(P2008−149343)
【出願日】平成20年6月6日(2008.6.6)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】