説明

ミスト発生装置

【課題】ミスト発生機構から発生されるミストの飛散距離と、液剤噴霧機構にて静電霧化された液剤の飛散距離とを等しくすることが可能なミスト発生装置を提供する。
【解決手段】ミストM1を発生させてミスト吐出口26から顔Fに噴霧するミスト発生機構12と、液剤M2を静電霧化して液剤噴霧口35aから顔Fに噴霧する液剤噴霧機構13とを備え、液剤噴霧機構13は、少なくとも液剤M2を噴霧している状態において、液剤噴霧口35aがミスト吐出口26よりも該ミスト吐出口26の噴霧方向側に位置するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミスト発生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ミスト生成して放出するミスト発生装置は、美顔器や加湿器等に広く用いられている(例えば特許文献1参照)。ミスト発生装置において、例えば美顔器では、加熱機構等により発生させたミスト(粒径が例えば粒径が数μm程度)を顔に当てることで、肌に潤いを与えたり、古い角質や汚れを落としたりすることが可能であり、美容作用や健康作用が得られるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−361009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のようなミスト発生装置において、更なる美容健康作用の向上のために、保湿剤や美白剤等の液剤を静電霧化して噴霧する液剤噴霧機構を備えるものが考えられる。液剤噴霧機構は、高圧電源回路からの電圧印加にて生じるコロナ放電によって液剤を静電霧化するものであり、液剤は静電霧化によって帯電した微細なミストに形成される。この液剤のミストは、肌の角質層表面の隙間に浸透可能であり、肌に与える美容健康作用は高い。このようなミスト発生装置では、ミスト発生機構からのミストに加え、静電霧化による液剤の噴霧が可能であるため、より高い美容作用や健康作用を肌に与えることが可能となっている。
【0005】
しかしながら、このようなミスト発生装置では、静電霧化された液剤は、静電気力で吐出されるため、その飛散距離(ミスト発生装置本体を基点とした飛散距離)がミスト発生機構にて発生されるミストの飛散距離に比べて短い。そのため、ミスト発生機構からのミストは噴霧対象物(例えば顔)に十分届くが、液剤噴霧機構からの剤ミストは噴霧対象まで十分に届かない虞があった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、ミスト発生機構から発生されるミストの飛散距離と、液剤噴霧機構にて静電霧化された液剤の飛散距離とを等しくすることが可能なミスト発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、ミストを発生させてミスト吐出口から噴霧対象物に噴霧するミスト発生機構と、液剤を静電霧化して液剤噴霧口から前記噴霧対象物に噴霧する液剤噴霧機構とを備え、前記液剤噴霧機構は、少なくとも前記液剤を噴霧している状態において、前記液剤噴霧口が前記ミスト吐出口よりも該ミスト吐出口の噴霧方向側に位置するように構成されたことを特徴とする。
【0008】
この発明では、液剤噴霧機構の液剤噴霧口が、ミスト発生機構のミスト吐出口よりも該ミスト吐出口の噴霧方向側(噴霧対象物側)に位置するため、ミスト発生機構から発生されるミストの飛散距離と静電霧化された液剤の飛散距離とを同等にすることが可能となる。尚、ミスト及び液剤の飛散距離とは、ミスト発生装置本体を基点とした飛散距離を指す。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のミスト発生装置において、前記液剤噴霧機構は、前記液剤噴霧口を有しその開口軸方向に進退可能に構成された可動ノズル部を備えたことを特徴とする。
【0010】
この発明では、可動ノズル部を進退させることで液剤噴霧口の位置調節ができ、これにより、静電霧化された液剤の飛散距離の調節が可能となる。また、液剤の非噴霧時において、可動ノズル部を退避させることができ、可動ノズル部が邪魔にならないように構成できる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のミスト発生装置において、前記噴霧対象物との間の距離を検出する距離検出手段と、前記距離検出手段で検出された前記距離に基づき前記可動ノズル部を制御する制御部とを備えたことを特徴とする。
【0012】
この発明では、静電霧化された液剤の飛散距離を、噴霧対象物側との間の距離に応じた適切な距離に調節することが可能となる。これにより、例えば噴霧対象物を液剤噴霧口に近づけすぎた場合等に、その噴霧対象物の位置に応じて液剤噴霧口の位置が調節され、液剤を噴霧対象物に対して好適に噴霧することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
従って、上記記載の発明によれば、ミスト発生機構から発生されるミストの飛散距離と、液剤噴霧機構にて静電霧化された液剤の飛散距離とを等しくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態のミスト発生装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、本実施形態のミスト発生装置は、ケース11と、該ケース11内に略収容されたミスト発生機構12及び液剤噴霧機構13と、同ケース11内に収容された制御部14と、距離検出手段としての距離センサ15とを備える。このミスト発生装置は、例えば美顔器として用いられるものであり、ミスト発生機構12から発生されたミストM1と、液剤噴霧機構13にて静電霧化された液剤(そのミスト)M2とを噴霧対象物としての顔Fに噴霧可能な装置である。
【0016】
ケース11には、上方(天方向)に開口したミスト用開口部11aと、側方(水平方向)に開口した液剤用開口部11bとが形成されている。尚、ケース11は、例えば、上方が開口した有底四角筒状のケース本体と、ケース本体の上端開口部を覆う蓋部材等からなるが、図1では、それらを一体的に模式的に図示している。また、本実施形態の液剤用開口部11bは、ケース11の側面11cから側方(水平方向であって、図1中、左方向)に筒状に突出するとともに、ケース11内外を連通するように形成されている。
【0017】
ミスト発生機構12は、着脱可能なタンク21から水Wが供給される貯水槽22と、貯水槽22と連通管23を介して連通され該貯水槽22の水WからミストM1を発生させるミスト発生部24と、ミスト発生部24と連通されたミスト移送経路25を介して発生したミストM1を吐出するためのミスト吐出口26とを備える。
【0018】
本実施形態のミスト発生部24は、水Wを加熱してミストM1を発生させる加熱式のものであって、ヒータ24aを備えたものである。また、ミスト移送経路25は、ミスト用開口部11aからケース11の外部に突出するとともに略直角に屈曲し、そこから液剤用開口部11bと平行な方向(水平方向であって、図1中、左方向)に延出されて、その先端部(図1における左側端部)がケース11の側面11cと略面一となる位置に形成されている。そして、そのミスト移送経路25の延出先端部には、前記ミスト吐出口26が形成されており、そのミスト吐出口26は、液剤用開口部11bの開口方向(水平方向)と同方向に開口するように構成されている。尚、ミスト吐出口26及び液剤用開口部11bは、その開口軸方向から見て上下方向に並設され、液剤用開口部11bがミスト吐出口26よりも下側に配置されている。また、ミスト吐出口26及び液剤用開口部11bは、その開口方向において略同位置となるように構成されている。
【0019】
液剤噴霧機構13は、保湿剤や美白剤等の液剤M2を噴霧対象物としての顔Fに噴霧するためのものである。詳しくは、液剤噴霧機構13は、液剤を貯蔵するための液剤貯蔵部31と、液剤貯蔵部31と連通された固定ノズル部32と、固定ノズル部32に設けられたポンプ33と、高圧電源回路34と、固定ノズル部32の先端部32aに設けられた可動ノズル部35と、可動ノズル部35を駆動するためのモータ36とを備える。ポンプ33は、液剤貯蔵部31内の液剤を固定ノズル部32に送り込むためのものである。固定ノズル部32は、その先端部32aが液剤用開口部11bに対応する位置まで延びるとともに、円筒状の可動ノズル部35に挿通されている。
【0020】
可動ノズル部35は、前記液剤用開口部11bに挿通されており、該可動ノズル部35の先端部(図1における左側端部)には、液剤M2を噴霧するための液剤噴霧口35aを有している。可動ノズル部35は、その液剤噴霧口35aの開口軸方向に進退可能に設けられている。そして、可動ノズル部35は、前記モータ36により進退駆動されるようになっている。尚、モータ36と可動ノズル部35とは、例えば巻き取り機構を介して連結されており、モータ36の回転力はその巻き取り機構にて可動ノズル部35の開口軸方向への駆動力に変換されるようになっている。
【0021】
高圧電源回路34は、固定ノズル部32の先端部32aに到達した液剤をコロナ放電により静電霧化するためのものである。高圧電源回路34にて静電霧化された液剤M2は、帯電した微細なミストに形成され、可動ノズル部35を通ってその液剤噴霧口35aから噴霧されるようになっている。そして、その液剤M2を顔Fに浴びることで、液剤M2が肌の角質層表面の隙間に浸透し、高い美容作用や健康作用を得ることが可能となっている。尚、液剤噴霧口35aの開口軸方向は、前記ミスト吐出口26の開口軸方向と平行をなしており、液剤M2及びミストM1は同方向に噴霧されるようになっている。
【0022】
前記距離センサ15は、噴霧対象物としての顔Fとの間の距離Dを検出するものであり、例えば光電センサや超音波式のセンサ、又は赤外線等で熱を検知して距離を検出するセンサにて構成される。距離センサ15は、液剤用開口部11bが形成されたケース11の側面11cに設けられるとともに、前記制御部14と電気的に接続されている。
【0023】
制御部14は、図示しない操作スイッチ等の操作に基づき、ミスト発生機構12のヒータ24aに通電する制御と、液剤噴霧機構13のポンプ33、高圧電源回路34及びモータ36を駆動する制御とを行い、ミストM1と液剤M2とを同時(又は交互)に噴霧させる。
【0024】
上記のようなミスト発生装置において、可動ノズル部35は、液剤M2を噴霧していない状態では、液剤噴霧口35aが液剤用開口部11bの内側に位置する退避位置(実線の可動ノズル部35を参照)に配置されている。尚、可動ノズル部35の退避位置は、液剤噴霧口35aが液剤用開口部11bの突出先端部と面一の状態も含む。この状態では、可動ノズル部35の全体がケース11内に収容されており、可動ノズル部35がミスト発生装置の外形の突出部分として邪魔にならないように構成されている。また、可動ノズル部35は、退避位置にある状態で、その液剤噴霧口35aが開口軸方向において前記ミスト吐出口26と略同位置となっている。
【0025】
そして、例えば、前記操作スイッチにてミストM1と液剤M2を同時に噴霧するための同時噴霧コースの操作(例えば、同時噴霧コースボタンを押す)が行われると、制御部14は、ミスト発生機構12にてミストM1を発生させる。また、このとき、制御部14は、距離センサ15にて検出された顔Fとの間の距離Dに基づき、液剤噴霧口35aから顔Fまでの距離を液剤M2の噴霧に適した距離(例えば10cm)に調節すべく、可動ノズル部35を前進させるようになっている。例えば、制御部14は、距離センサ15にて検出された距離Dに基づき液剤噴霧口35aから顔Fまでの距離を算出し、その算出値が予め設定された所定値(例えば10cm)よりも大きい場合には、モータ36にて可動ノズル部35をその噴霧方向側に所定量前進させる。そして、制御部14は、これを繰り返し、算出値が所定値以下となったときに、液剤噴霧機構13にて液剤M2を液剤噴霧口35aから噴霧させるようになっている。これにより、例えば、顔Fをミスト発生装置に近づけすぎた場合においても、その顔Fの位置に応じて液剤噴霧口35aの位置が調節され、液剤M2を顔Fに対して好適に噴霧することが可能となっている。
【0026】
そして、制御部14は、例えば液剤M2の噴霧の開始から所定時間が経過した後に、液剤M2の噴霧を終了させ、モータ36にて可動ノズル部35を前記退避位置まで戻し、ミストM1の噴霧も終了させるようになっている。
【0027】
尚、本実施形態のミスト発生装置では、可動ノズル部35が最も前進した状態(2点鎖線の可動ノズル部35を参照)において、液剤M2のミスト発生装置本体(例えば、ケース11の側面11c)を基点とした飛散距離が、ミストM1のミスト発生装置本体(同様にケース11の側面11c)を基点とした飛散距離(例えば20cm)と等しくなるように設定されている。これにより、ミストM1は顔Fまで届くが、液剤M2は届かないといった状況が生まれにくくなり、ミストM1及び液剤M2を顔Fに好適に噴霧させることが可能となっている。
【0028】
また、上記のようなミスト発生装置では、2種類のミスト(ミストM1と液剤M2)が噴霧可能であるため、水のミストM1によって肌の表面に潤いを与えるとともに、帯電した微細な液剤のミスト(液剤M2)によってその成分を肌へ均一に与えて、肌の内側まで届けることが可能であり、より高い美容健康作用を与えることが可能となっている。
【0029】
次に、本実施形態の特徴的な作用効果を記載する。
(1)本実施形態では、液剤噴霧機構13は、少なくとも液剤M2を噴霧している状態において、液剤噴霧口35aがミスト吐出口26よりも該ミスト吐出口26の噴霧方向側に位置するように構成されるため、ミスト発生機構12から発生されるミストM1の飛散距離と、静電霧化された液剤M2の飛散距離とを同等にすることが可能となる。尚、ミストM1及び液剤M2の飛散距離とは、ミスト発生装置本体(例えば、ケース11の側面11c)を基点とした飛散距離を指す。
【0030】
(2)本実施形態では、液剤噴霧機構13は、液剤噴霧口35aを有しその開口軸方向に進退可能に構成された可動ノズル部35を備える。このため、可動ノズル部35を進退させることで液剤噴霧口35aの位置調節ができ、これにより、静電霧化された液剤M2の飛散距離の調節が可能となる。また、液剤M2の非噴霧時において、可動ノズル部35を退避させることができ、可動ノズル部35が邪魔にならないように構成できる。
【0031】
(3)本実施形態では、噴霧対象物としての顔Fとの間の距離Dを検出する距離センサ15と、距離センサ15で検出された距離Dに基づき可動ノズル部35を制御する制御部14とを備える。このため、静電霧化された液剤M2の飛散距離を、顔Fとの間の距離Dに応じた適切な距離に調節することが可能となる。これにより、例えば顔Fを液剤噴霧口35aに近づけすぎた場合等に、その顔Fの位置に応じて液剤噴霧口35aの位置を調節でき、液剤M2を顔Fに対して好適に噴霧することが可能となる。
【0032】
尚、本発明の実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、液剤噴霧口35aを有する可動ノズル部35を備え、液剤M2の噴霧時において、液剤噴霧口35aがミスト吐出口26よりも該ミスト吐出口26の噴霧方向側に位置するように可動ノズル部35を制御したが、特にこれに限定されるものではなく、例えば、可動ノズル部35を設けずに、液剤M2を噴霧する液剤噴霧口をミスト吐出口26よりも該ミスト吐出口26の噴霧方向側に設けてもよい。
【0033】
・上記実施形態では、可動ノズル部35をモータ36にて進退させるように構成したが、これ以外に例えば、可動ノズル部35を手動で進退可能に構成してもよい。
・上記実施形態では、液剤噴霧口35a及びミスト吐出口26の各開口軸方向が水平面に対して平行となるように構成されたが、水平面に対して傾斜するように構成してもよい。また、上記実施形態では、液剤噴霧口35a及びミスト吐出口26の各開口軸方向が互いに平行をなすように構成され、液剤M2及びミストM1の噴霧方向も平行をなしたが、これ以外に例えば、液剤噴霧口35a及びミスト吐出口26の各開口軸が交差するように構成し、液剤M2及びミストM1の噴霧方向が交差するように構成してもよい。
【0034】
・上記実施形態では、液剤用開口部11bは、ケース11の側面11cから外側に突出するように形成されたが、特にこれに限らず、突出部分がない形状としてもよい。
・上記実施形態では、噴霧対象物を顔Fとしたが、これ以外に例えば、人体の顔F以外の部位でもよい。
【0035】
・上記実施形態では、ミスト発生機構12のミスト発生部24に加熱式のものを用いたが、これ以外に例えば、液体を超音波にて霧化させる超音波式のものや、霧吹き等の原理で知られるベンチュリー効果を用いたものとしてもよい。
【符号の説明】
【0036】
D…距離、M1…ミスト、M2…液剤、12…ミスト発生機構、13…液剤噴霧機構、14…制御部、15…距離検出手段としての距離センサ、26…ミスト吐出口、35…可動ノズル部、35a…液剤噴霧口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミストを発生させてミスト吐出口から噴霧対象物に噴霧するミスト発生機構と、液剤を静電霧化して液剤噴霧口から前記噴霧対象物に噴霧する液剤噴霧機構とを備え、
前記液剤噴霧機構は、少なくとも前記液剤を噴霧している状態において、前記液剤噴霧口が前記ミスト吐出口よりも該ミスト吐出口の噴霧方向側に位置するように構成されたことを特徴とするミスト発生装置。
【請求項2】
請求項1に記載のミスト発生装置において、
前記液剤噴霧機構は、前記液剤噴霧口を有しその開口軸方向に進退可能に構成された可動ノズル部を備えたことを特徴とするミスト発生装置。
【請求項3】
請求項2に記載のミスト発生装置において、
前記噴霧対象物との間の距離を検出する距離検出手段と、
前記距離検出手段で検出された前記距離に基づき前記可動ノズル部を制御する制御部と
を備えたことを特徴とするミスト発生装置。

【図1】
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【公開番号】特開2010−172660(P2010−172660A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−21578(P2009−21578)
【出願日】平成21年2月2日(2009.2.2)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】