説明

ミスト装置

【課題】 ミスト空間を湿度が高い状態に保ちながら、水蒸気の凝縮を抑制して、ミスト空間を白濁させず、視界を良好に保つミスト装置を提供する。
【解決手段】 本発明では、水蒸気を生成する水蒸気生成装置を備えたミスト装置であって、前記ミスト装置の外部から、前記ミスト装置内部へ外気を導入するための吸込み部と、前記水蒸気に外気を供給するための送風装置と、前記送風装置により導入された外気を加熱する加熱装置と、前記水蒸気生成装置により生成された水蒸気と、前記送風装置により供給された外気とを混合して混合気を生成する混合部と、前記混合部で生成された混合気を吐出する吐出部と、前記水蒸気生成装置と前記加熱装置の少なくともどちらか一方の出力を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記水蒸気生成装置の出力が、前記加熱装置の出力よりも大きくなるように出力を制御することを特徴とするミスト装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に水蒸気を空間内に供給し、ミスト空間とするミスト装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
一般的に、身体を芯まで効率よく温めて発汗を促進したり、血行を促進し、身体に良好に作用するサウナ装置がある。サウナ装置には、例えば水蒸気を用いた「スチームサウナ」などと呼ばれるサウナ装置(ミスト装置)がある。
【0003】
従来のミスト装置は、ミスト空間で水蒸気が凝縮し、空間が白濁するため、視界が悪くなるという課題があった。これに対し、ミスト空間に新鮮空気を取り入れ、さらに白濁している空間を加熱することにより、凝縮した水蒸気を気化させて、視界を良好にするものがある(例えば、特許文献1参照。)。
このような場合、空間を加熱するため、相対湿度が低下し、温まり感が小さくなるという問題があった。また、一旦凝縮した水蒸気を再度気化させるには、大量のエネルギーを要し、さらに気化するまでに時間がかかるため、白濁した空間を、視界を良好な状態にするまでに非常に時間がかかるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭53−104365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、本発明の課題は、ミスト空間を湿度が高い状態を保ちながら、水蒸気の凝縮を抑制して、ミスト空間を白濁させず、視界を良好に保つことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明によれば、水蒸気を生成する水蒸気生成装置を備えたミスト装置であって、前記ミスト装置の外部から、前記ミスト装置内部へ外気を導入するための吸込み部と、前記水蒸気に外気を供給するための送風装置と、前記送風装置により導入された外気を加熱する加熱装置と、前記水蒸気生成装置により生成された水蒸気と、前記送風装置により供給された外気とを混合して混合気を生成する混合部と、前記混合部で生成された混合気を吐出する吐出部と、前記水蒸気生成装置と前記加熱装置の少なくともどちらか一方の出力を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記水蒸気生成装置の出力が、前記加熱装置の出力よりも大きくなるように出力を制御することを特徴とするミスト装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ミスト空間を湿度が高い状態に保ちながら、水蒸気の凝縮を抑制して、ミスト空間を白濁させず、視界を良好に保つという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第一の実施の形態を示す模式図である。
【図2】水蒸気生成のエネルギーと空気加熱のエネルギーとの比と空間に浮遊している水滴の量の関係を示す特性図である。
【図3】図1の実施の形態で実際に運転したときの室温と露点の経時変化を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
第1の発明は、水蒸気を生成する水蒸気生成装置を備えたミスト装置であって、前記ミスト装置の外部から、前記ミスト装置内部へ外気を導入するための吸込み部と、前記水蒸気に外気を供給するための送風装置と、前記送風装置により導入された外気を加熱する加熱装置と、前記水蒸気生成装置により生成された水蒸気と、前記送風装置により供給された外気とを混合して混合気を生成する混合部と、前記混合部で生成された混合気を吐出する吐出部と、前記水蒸気生成装置と前記加熱装置の少なくともどちらか一方の出力を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記水蒸気生成装置の出力が、前記加熱装置の出力よりも大きくなるように出力を制御することを特徴とするミスト装置が提供される。
【0010】
これにより、ミスト空間を、湿度が高いにもかかわらず、凝縮した液滴による白濁を抑制した空間にできるので、高湿度で且つ視界が良好なミスト空間を作ることができ、使用者に快適な入浴感を提供することができる。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、前記制御部が、前記水蒸気生成装置の出力と前記加熱装置の出力の比が4:1から12:1の範囲内となるよう、前記水蒸気生成装置と前記加熱装置の少なくともどちらか一方の出力を制御するミスト装置が提供される。
【0012】
これにより、ミスト空間を、相対湿度が100%RH近傍の高湿度にもかかわらず、凝縮した液滴による白濁を抑制した空間に保持できるので、高湿度で且つ視界が良好なミスト空間を作ることができ、使用者に快適な入浴感を提供することができる。
【0013】
第3の発明は、第1の発明において、前記制御部が、前記水蒸気生成装置の出力と前記加熱装置の出力の比が6:1から9:1の範囲内となるよう、前記水蒸気生成装置と前記加熱装置の少なくともどちらか一方の出力を制御するミスト装置が提供される。
【0014】
これにより、ミスト空間を、相対湿度が100%RH近傍の高湿度にもかかわらず、凝縮した液滴による白濁を抑制した空間に、安定的に保持できるので、高湿度で且つ視界が良好なミスト空間を作ることができ、使用者に快適な入浴感を提供することができる。
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0016】
図1は、本発明の第一の実施の形態にかかるミスト装置を例示する模式図である。この図を用いて、ミスト装置のミスト生成方法を説明する。
図1に示したミスト装置は、ミストを生成するミスト生成部100と、ミスト生成部100で生成されたミストを、ミスト空間200に吹出す吹出し部300と、空気をミスト空間200からミスト生成部100へ取り込む吸込み部400と、を備えている。ミスト生成部100と、ミスト空間200とは、吹出し部300と、吸込み部400を介して連通されている。
【0017】
ミスト生成部100は、給水源から水を給水したり止水したりする給水装置102と、給水源から給水された水から水蒸気を生成する水蒸気生成装置104と、ミスト空間200内の空気をミスト生成部100内に取り入れる送風装置108と、送風装置108で供給した空気を加熱する加熱装置106と、水蒸気生成装置104で生成された水蒸気と送風装置108で吸込み、加熱装置106で加熱された加熱空気とを混合する混合気流路150と、を有している。また、ミスト生成部100は、給水装置102と、水蒸気生成装置104と、送風装置108と、加熱装置106の動作を制御する制御部114と、を有している。
【0018】
ここで、本明細書において「水蒸気」とは気化した水を表すこととする。また「空気」とは、ミスト装置外部の気体(外気)のことを表す。なお、ミスト装置の内部に存在しても、ミスト装置外部から、送風装置108で供給された、混合気流路150の上流の気体も、外気と同じ成分のため、「空気」と表すこととする。さらに、混合気流路150内の気体(空気との混合により凝縮した水蒸気(液滴)も含む)は「混合気」と表すこととする。なお、本実施の形態では「空気(外気)」を、ミスト空間200内の気体としたが、これに限らず、ミスト装置外部の気体であれば「空気」と表すこととする。すなわち、図示しないミスト空間200以外に設けた吸込み部を経て、ミスト空間200以外から取り入れた空気を、ミスト生成部100で加湿してからミスト空間200に吹出してもよい。
【0019】
図1において、給水装置102と水蒸気生成装置104とは、水流路130を介して接続されており、水蒸気生成装置104と、混合気流路150とは、水蒸気流路131を介して接続されている。給水装置102と、水蒸気生成装置104と、混合気流路150とは、水流路130と、水蒸気流路131とを介してそれぞれ直列に接続されている。一方、吸込み部400と送風装置108とは、第一の空気流路140を介して接続されており、送風装置108と加熱装置106とは、第二の空気流路141を介して接続されている。さらに、加熱装置106と混合気流路150とは、加熱空気流路142を介して接続されている。吸込み部400と、送風装置108と、加熱装置106と、混合気流路150と、は第一の空気流路140と、第二の空気流路141と、加熱空気流路142とを介してそれぞれ直列に接続されている。さらに混合気流路150は、吹出し部300を介して、ミスト空間200と接続されている。混合気流路150は、水蒸気と空気を混合しながら吹出し部300に連通する流路であるため、水蒸気と空気が混合するの混合部の機能を兼ね備えている。すなわち、本明細書においては、混合気流路150を水蒸気と空気の混合部とみなす。
【0020】
水蒸気生成装置104は、電気や燃料などにより、水を加熱して蒸発させる装置である。また、給水装置102は、開閉弁やポンプなどでありで、水蒸気生成装置104内に設けた、図示していない水位や水量などを検知する検知手段からの信号に基づいて、制御部114からの信号により、水蒸気生成装置104に水を給水したり、止水したりする。水蒸気生成装置104で生成された水蒸気は、水蒸気流路131を通って、混合気流路150に入り、空気と混合してから、混合気の1つの成分として、吹出し部300からミスト空間200に供給される。
【0021】
送風装置108で供給された空気は、空気流路141を通って、加熱装置106に到達し、加熱装置106で加熱される。その後、加熱空気流路142を通って、混合気流路150に入り、水蒸気と混合してから、混合気の1つの成分として、吹出し部300からミスト空間200に供給される。
【0022】
水蒸気生成装置104で生成した水蒸気と、送風装置108で供給され、加熱装置106で加熱された加熱空気は、混合気流路150で混合され、吹出し部300から、ミスト空間200に供給される。ミスト空間200は、混合気によって、加温、加湿される。すなわち、水蒸気生成装置104で生成された水蒸気によって加湿され、また、水蒸気が保持しているエネルギーと、加熱空気が保持しているエネルギーによって加温される。
【0023】
ここで、混合気やミスト空間200での、水蒸気の挙動について、水蒸気の飽和蒸気圧に基づいて説明する。温度が低いほど、飽和蒸気圧は低くなる。水蒸気とその他の気体が共存している場合、水蒸気の割合と全体の圧力から決まる水蒸気の分圧が、水蒸気の飽和蒸気圧を超えていると、その余剰分の水蒸気は凝縮し、液体の水となる。液体になった水のうち、一部は水として流れるが、一部は液滴となり、空中に浮遊する。空中に浮遊する液滴の量が多いと、空間が白濁し、白い「もや」のように見える。また、このような「もや」に満たされた空間に入ると、視界が良好でなくなる。
【0024】
高温の水蒸気に、室温程度の温度の空気を混合すると、混合気中の水蒸気の割合は低下するが、同時に混合気の温度が水蒸気の温度よりも低くなるため、水蒸気の一部は凝縮し、空中に浮遊する。例えば、100℃の水蒸気と、25℃、相対湿度60%RHの空気を、1:2(体積比)で混合した場合、混合気の温度は68℃、相対湿度は100%RHとなり、混合した水蒸気の5.4%が凝縮する。また、1:3(体積比)で混合した場合は、混合気の温度は62℃、相対湿度は100%RHとなり、混合した水蒸気の6.7%が凝縮し、空気の混合量が多くなるほど、凝縮する水蒸気量は多くなることがわかる。すなわち、水蒸気と空気を混合した場合、水蒸気の温度低下による飽和蒸気圧の低下分は、水蒸気の割合の低下分よりも大きいため、水蒸気の一部は必ず凝縮する。しかし、加熱装置106を設け、空気を一旦加熱してから水蒸気と混合すると、空気との混合による水蒸気の温度低下を抑制しながら、水蒸気の割合を低下できるため、水蒸気の凝縮が抑制され、空間に浮遊する液滴を少なくすることができる。従って、ミスト空間200が白濁することなく、視界を良好に保つことができる。
【0025】
ミスト空間200は、ミスト生成部100によって生成された混合気が、吹出し部300から供給されることにより、相対湿度が約100%RHで、且つ、温度が37〜42℃程度の比較的低温の環境を維持した空間であり、使用者はミスト空間200に入浴することで、体を温めることができる。ここで、使用者がミスト空間200に入浴したときに得られる温まり感、すなわち、身体が空間から受ける熱量は、同じ温度では、相対湿度が高いほど、大きくなる。次に、身体と空間との熱の授受について説明する。
【0026】
空間で人間が安静にしているときの、空間と身体との熱の収支は大きく3つの経路に分類できる。まず第一の熱収支経路は、皮膚を介した空間と身体の熱の移動であり、その中には、さらに、皮膚と空気との対流熱伝達、皮膚から空間への蒸発、輻射の3様態が考えられる。
皮膚と空気との対流熱伝達は、流体内に生じる境界層を通しての熱移動であって、物体の形状や流体の速度、密度など諸状態によって変化するものである。温風にて、皮膚を温める際、皮膚表面の空気の流速を大きくすることで、空気と、皮膚との境界層を薄くすることができ、同じ温度でも、流速が大きいほうが、空気から皮膚への熱の移動量は大きくなる。ただし、風速を大きくしすぎると、身体にとって不快に感じるといった課題がある。皮膚から空間への蒸発による熱移動とは、汗や、付着した水分等、皮膚表面から、液体が蒸発するときの気化熱により、皮膚表面から熱が奪われることである。空間の露点が、皮膚温よりも低い場合、蒸発により皮膚から空間へ熱が移動する。ここで、露点とは、温度を低下させていったときに、結露が生じる温度のことである。従って、同じ温度(気温)でも、湿度が高いと露点が高くなる。輻射とは、空間を隔てた2つの物体の間に行われる熱移動で、中間に媒体を必要とせず、熱が移動する。
【0027】
第二の熱収支経路は、呼吸時の気道を介した空間との熱移動である。サウナ内の空気のように、体温より温度が高い空気が、呼吸により、気道や肺胞内に取り入れられたとき、体内は加温される。このとき、空気は、湿った気道を通ることで、飽和に近い状態まで加湿されて呼気として排出される。この過程で、気道からの蒸発による熱移動も生じる。
【0028】
第三の熱収支経路は、代謝と呼ばれる、身体内部の熱産生である。身体と空間の熱の移動ではなく、人間が生命活動をする上で常に生成されている熱量であり、一般的な成人男性で安静にしているときでも、100W程度の熱を常に産生している。
【0029】
上記の身体と空間の熱収支経路の中で、皮膚と空気との熱移動は、温度や皮膚表面での風速以外にも、湿度の影響を大きく受ける。例えば、空間の露点が、皮膚温度よりも高いのとき、皮膚表面では、水分の凝縮が生じ、凝縮熱が発生し、身体へ熱が移動する。このときの凝縮熱は、皮膚温度が一定の場合は、露点が高いほど大きくなる。すなわち、同じ空間温度の場合は、相対湿度100%にて、空間温度=露点となり、皮膚へ与える熱量が最も大きくなる。
【0030】
また、皮膚から空間への蒸発による熱移動についても、空間の露点が皮膚温度以上のときは、皮膚から空間への蒸発は生じないため、気化熱による、身体から空間への熱の移動は生じない。
【0031】
さらに、呼吸時の気道を介した空間との熱移動に関しても、湿度の高い(露点の高い)空気が気道に導入されると、気道で凝縮が起こり、凝縮熱が発生して、空気から身体へ熱が移動したり、気道からの蒸発が抑制されたりする。すなわち、この場合も、露点が高い、つまり湿度が高いほど、身体が温まる。
【0032】
代謝については、湿度により代謝量が上がることはないが、湿度が高く、皮膚温度や、気道表面の温度よりも空間の露点が高い場合には、蒸発による皮膚や気道から空間への熱移動がなくなるため、代謝による熱産生が身体内部に留まることとなり、身体の温まりが高くなる。
【0033】
以上のことから、湿度が高いほど、身体へ与える熱量が大きくなり、且つ、身体から空間へ移動する熱量も小さくなる。空間の温度を上げれば、身体へ熱量を与えられるが、温度を高くすると、身体にかかる負担が大きくなり、身体が楽でなくなる。しかし、相対湿度を高くすれば、37〜42℃と、比較的低温でも身体に熱量を与えることができる。従って、使用者に身体が楽で、温まるという両方の効果を提供することができる。
【0034】
ミスト空間200内の水蒸気の割合を多くして、相対湿度を高くすればするほど、使用者に温まり感を提供できる。しかし、ミスト空間200の水蒸気の分圧が、飽和蒸気圧を超えるほど大多量に水蒸気が存在しても、飽和蒸気圧を超えた分の水蒸気は凝縮して、液体の水分として外部に流れ出たり、水滴となって空間に浮遊したりする。すなわち、相対湿度は100%RH以上にはならない。凝縮した水蒸気は、液体の水分として外部に流れ出ると、水分やエネルギーの損失となるため、省エネではない。また、空間に浮遊する水滴の量が多くなると、空間内が白濁し、使用者の視界が悪くなり、例えば、ミスト空間200内で、テレビを見たり、本を読んだりしにくくなる。従って、使用者に視界がよく、十分で快適な温まり感を提供するミスト空間を、省エネで作るためには、ミスト空間200を、湿度は高いが、凝縮する水蒸気の量が少なくするのがよい。すなわち、相対湿度を100%RHちょうどにするのがするのが最もよい。
【0035】
次に、ミスト空間200を所望の温湿度に維持する方法について説明する。ミスト空間200の外部は、ミスト空間200よりも低温の場合が多いので、ミスト空間200を所望の温度に保つには、ミスト生成部100からミスト空間200にエネルギーを供給しなければいけない。ミスト生成部100からミスト空間200へのエネルギーの供給は、水蒸気と加熱空気を介して行われる。すなわち、水蒸気生成装置104では、水蒸気生成装置104に供給されたエネルギー分の水蒸気が生成され、供給されたエネルギーを持った水蒸気となる。また、加熱装置106では、加熱装置106に供給されたエネルギー分で空気が加熱され、供給されたエネルギーをもった加熱空気となる。そのようにしてエネルギーをもった水蒸気と加熱空気がミスト空間200に供給されることで、ミスト空間200が所望の温度に保持される。
【0036】
ミスト空間200の温度が低下すると、それにともない、飽和蒸気圧も低下する。ミスト空間200の相対湿度が100%RHの場合、ミスト空間200の温度が少しでも低下すると、ミスト空間200内の水蒸気の分圧が飽和蒸気圧を超えるため、ミスト空間200内の水蒸気が凝縮する。この状態のミスト空間200に、加湿せず、加温だけする、すなわち、水蒸気を供給せず、加熱空気だけ供給すると、凝縮した水蒸気の分、相対湿度が低下する。また、ミスト空間200の外部が、ミスト空間200よりも低温のとき、ミスト空間200を構成する壁や扉の温度は、ミスト空間200よりも低温になる。ミスト空間200は、湿度が高いため、露点が室温に近い。壁や扉の温度が空間の露点よりも低いと、壁の表面で結露が生じ、その分、ミスト空間200の水蒸気は少なくなり、湿度が低下する。そのため、ミスト空間200の相対湿度を約100%に保持するためには、ミスト生成部100からミスト空間200に水蒸気を供給しなければいけない。ミスト空間200に供給される水蒸気の流量は、水蒸気生成装置104で生成される水蒸気の量、すなわち、水蒸気生成装置104に供給されるエネルギーによって決まる。
【0037】
ミスト空間200を所望の温度に保つために供給するエネルギーは、水蒸気生成装置104と加熱装置106の2つから供給される。つまり、供給するエネルギーとは、水蒸気生成装置104と加熱装置106から供給されるエネルギーの合計のことである。一方、ミスト空間200を所望の湿度に保つために供給される水蒸気は、水蒸気生成装置104のみから供給される。水蒸気生成装置104と加熱装置106は、制御部114からの信号に基づいて運転している。すなわち、水蒸気生成装置104と加熱装置106から供給されるエネルギーは、制御部114からの信号に基づいた出力で供給されている。次に、水蒸気生成装置104と加熱装置106から供給されるエネルギーの値を、制御部114が決める方法について説明する。
【0038】
ミスト空間200に供給するエネルギー、すなわち、水蒸気生成装置104と加熱装置106から供給されるエネルギーの合計は、ミスト空間200の室温を検知する空間温度検知部122の検知結果に基づいて、制御部114によって決められる。すなわち、ミスト空間200の室温が所望の温度、例えば37℃を保持するように、空間温度検知部122の検知結果がそれよりも低温の場合は、供給するエネルギーを増大させ、検知結果が高温の場合は供給するエネルギーを減少させるよう、制御部114によって供給するエネルギーの出力を算出する。供給するエネルギー(出力)の算出方法は、ON−OFF制御や、比例制御、PID制御など、どのような方法でもよい。
【0039】
次に、ミスト空間200を高湿度だが、凝縮する水分量が少ない状態に保つために、ミスト空間200に供給する水蒸気の量、すなわち、水蒸気を生成するために、水蒸気生成装置104から供給されるエネルギーを決める方法について説明する。
【0040】
ミスト空間200を高湿度で、且つ、視界が良好な白濁のない状態に保つためには、空間温度検知部122の検知結果に基づいて、制御部114によって決められた水蒸気生成装置104と加熱装置106から供給されるエネルギーの合計を、水蒸気生成装置104から供給されるエネルギーを、加熱装置106から供給されるエネルギーよりも大きくなるように振り分けるとよい。所望の温度、例えば37℃で且つ相対湿度100%RHを維持しているミスト空間200において、空間温度検知部122が、ミスト空間200の温度低下を検知したとき、制御部114から、ミスト空間200を所望の温度に戻すためのエネルギーが算出される。このとき、ミスト空間200の温度低下にともなって、ミスト空間200内の水蒸気が凝縮する。また、ミスト空間200を構成する壁などにも、水蒸気が結露している。そのため、ミスト空間200に凝縮した分の水蒸気を供給しなければ、湿度100%RHを保持できない。すなわち、ミスト空間200を37℃、100%RHに保つためには、水蒸気生成装置104と加熱装置106の両方から温度低下を回復するためのエネルギーを、水蒸気生成装置104から凝縮した分の水蒸気を供給しなければならないが、水蒸気生成装置104から供給されるエネルギーが加熱装置106から供給されるエネルギー以下だと、空間の温度上昇に対して、相対的に水蒸気の供給量が足りず、ミスト空間200の湿度が下がってしまう。そのため、ミスト空間200を高湿度で、且つ、視界が良好な白濁のない状態に保つためには、室温保持のために、空間温度検知部122の検知結果に基づいて、制御部114によって決められた水蒸気生成装置104と加熱装置106から供給されるエネルギーの合計を、水蒸気生成装置104から供給されるエネルギーを、加熱装置106から供給されるエネルギーよりも大きくなるように、振り分けるとよい。
【0041】
ミスト空間200を高湿度、特に相対湿度100%RH近傍で、且つ、視界が良好な白濁のない状態に保つためには、室温保持のために、空間温度検知部122の検知結果に基づいて、制御部114によって決められた水蒸気生成装置104と加熱装置106から供給されるエネルギーの合計を、水蒸気生成装置104から供給されるエネルギーと、加熱装置106から供給されるエネルギーの比率を、4:1〜12:1の範囲で振り分けるのが、好ましい。本発明のミスト装置を使用する環境は、通常の大気環境下なので、送風装置108でミスト生成部100に供給される外気は、ミスト装置外の空気を使用する場合、温度は0〜35℃、湿度は0〜100%RHと想定される。また、ミスト空間200の空気を使用する場合は、温度は37〜42℃と高温、且つ、湿度も100%RH近傍と高湿度になっている。このような温湿度範囲の外気を混合気の一成分として用いて、ミスト空間200を加熱、加湿して、所望の温湿度(37〜42℃で且つ、100%RH)を保持するには、水蒸気生成装置104から供給されるエネルギーと加熱装置106から供給されるエネルギーの比率を、外気の温度や湿度に応じて、4:1〜12:1の範囲で振り分けるとよい。つまり、外気の温度が低い、例えば0℃のときは、空気加熱の割合を上げるように、例えば、4:1で水蒸気生成装置104から供給されるエネルギーと加熱装置106から供給されるエネルギーを振り分け、外気温の温度が高く、湿度が低いとき、例えば35℃で相対湿度30%RHのときは、水蒸気生成の割合を上げるように、例えば12:1でエネルギーを振り分けるとよい。
【0042】
外気として、ミスト空間200の空気を使用する場合、ミスト空間200を高湿度、特に相対湿度100%RH近傍で、且つ、視界が良好な白濁のない状態に保つためには、室温保持のために、空間温度検知部122の検知結果に基づいて、制御部114によって決められた水蒸気生成装置104と加熱装置106から供給されるエネルギーの合計を、水蒸気生成装置104から供給されるエネルギーと、加熱装置106から供給されるエネルギーの比率を、6:1〜9:1の範囲で振り分けると、より好ましい。ミスト空間200の外部からの空気を供給すると、それにともない、ミスト空間200内部の空気が押し出され、排気されるが、ミスト空間200の空気を外気として使用すると、ミスト空間200内部の空気が排気されにくくなるため、排気にともなってミスト空間200から外部に放出されるエネルギーが少なくなる。そのため、ミスト装置を省エネで運転することができる。さらにこの場合、加熱装置106に供給される外気の温湿度が、ミスト空間200の温湿度とほぼ同様になるため、より限られた温湿度条件の空気を使用してミスト装置を運転することができる。それにより、ミスト空間200を所望の温湿度に保つための、エネルギーの制御範囲を狭く、すなわち、水蒸気生成装置104から供給されるエネルギーと、加熱装置106から供給されるエネルギーの比率を、6:1〜9:1の範囲にすることができ、さらに、ミスト空間200を、湿度が100%RH近傍で且つ、白濁のない状態に、時間的な温度や湿度の乱れが少ない状態で、安定的に保持することができる。
【0043】
図2は、図1に示したミスト装置を用いて、水蒸気生成装置104と加熱装置106からエネルギーを供給して、ミスト空間200を37℃に保持したときの、水蒸気生成装置104から供給したエネルギーの出力と、加熱装置106から供給したエネルギーの出力との比率と、ミスト空間200に浮遊している水滴の量の関係を示した。ここで、ミスト空間200に浮遊している水滴の量とは、ミスト空間200の絶対湿度(湿り空気中に含まれている水蒸気の質量と、その湿り空気から水蒸気を除外した乾燥空気だけの質量との比)から、ミスト空間200の室温での飽和水蒸気量を絶対湿度に換算した値を差し引いた値とした。ミスト空間200の絶対湿度は、ミスト空間200の空気(凝縮した水分も含む)を60℃程度まで一旦加熱した後、鏡面冷却式露点計に取り込んで測定した露点から換算した。浮遊している水滴の量は、値が0g/kg−DAのとき、相対湿度100%RHを表し、負の値になるほど、相対湿度が低くなる、また、正の値になるほど、湿度は100%RHで、空間に浮遊している水滴の量が多くなることを表している。なお、空間に浮遊している水滴の量が1.0g/kg−DAより多くなると、空間に浮遊している水滴が目視で確認できるようになる。
【0044】
図2から、水蒸気生成装置104で供給する、水蒸気を生成するためのエネルギーが、加熱装置106で供給する、空気を加熱するためのエネルギーよりも大きくないと、相対湿度が100%RHを大きく下回ることがわかる。さらに、水蒸気生成装置104で供給する、水蒸気を生成するためのエネルギーが、加熱装置106で供給する、空気を加熱するためのエネルギーに対して6倍以上の場合、相対湿度が100%RHとなり、身体に最も多く熱量を与えられる条件となる。そこで、水蒸気生成装置104で供給するエネルギーを加熱装置106で供給するエネルギーの6倍以上にすると、相対湿度が100%RHになり、高い温まり感を提供できるといえる。
【0045】
しかし、水蒸気生成装置104で供給する、水蒸気を生成するためのエネルギーを、加熱装置106で供給する、空気を加熱するためのエネルギーに対して9倍よりも大きくすると、ミスト空間200に浮遊する水滴の量が、水滴を目視でも確認できる1.0g/kg−DAを超えるため、ミスト空間200内部が白濁する。このような空間では、使用者の視界が悪くなるため、快適な入浴感を提供できない。また、凝縮して、液体の水として外部に流れる水蒸気の量も多くなるため、エネルギーの損失になり、省エネでもない。従って、ミスト空間200を、身体に最も多く熱量を与えられる相対湿度100%RHで、且つ、視界が良好な白濁のない状態に保つためには、室温保持のために、空間温度検知部122の検知結果に基づいて、制御部114によって決められた水蒸気生成装置104と加熱装置106から供給されるエネルギーの合計を、水蒸気生成装置104から供給されるエネルギーと、加熱装置106から供給されるエネルギーの比率を、6:1〜9:1の範囲で振り分けるとよい。
【0046】
ミスト空間200を、ミスト使用者に体に負担のかからない、比較的低温度でも高い温まり感を与える、湿度が高い状態に保持するためには、水蒸気生成装置104で供給する、水蒸気を生成するためのエネルギーを、加熱装置106で供給する、空気を加熱するためのエネルギーよりも大きくするとよい。さらに、想定される外気の温湿度条件の空気を用いて、ミスト空間の温湿度を制御する場合、水蒸気生成装置104で供給する、水蒸気を生成するためのエネルギーと、加熱装置106で供給する、空気を加熱するためのエネルギーの比率を、4:1〜12:1とすると、ミスト空間の相対湿度を100%RH近傍に保持することができる。特に、外気として、ミスト空間200の空気を使用する場合は、水蒸気生成装置104から供給するエネルギーと、加熱装置106から供給するエネルギーの比率を6:1〜9:1にすると、ミスト空間の相対湿度を100%RH近傍に保持することができる。すなわち、上記のエネルギーの比率の範囲で、水蒸気生成装置104と加熱装置106を運転することで、使用者に、高い温まり感を与え、且つ、白濁しない快適なミスト空間を、省エネで提供できる。従って、ミスト空間200の室温を保持するために、空間温度検知部122の検知結果に基づいて決められた水蒸気生成装置104と加熱装置106から供給されるエネルギーの合計を、水蒸気生成装置104から供給されるエネルギーを、加熱装置106から供給されるエネルギーよりも大きくなるように出力する、好ましくは、水蒸気生成装置104から供給されるエネルギーと加熱装置106から供給されるエネルギーの比率を4:1〜12:1、外気として、ミスト空間200の空気を用いた場合には、6:1〜9:1になるように、それぞれに分配して算出し、出力するとよい。
【0047】
図3は、図1に示したミスト装置で、実際に運転したときの、ミスト空間200の室温と露点の経時変化である。水蒸気生成装置104と加熱装置106から供給されるエネルギーの合計を、ミスト空間200の室温を検知する空間温度検知部122の検知結果に基づいて算出し、そのエネルギーを、水蒸気生成装置104と加熱装置106に6:1で分配して、出力した。水蒸気生成装置104は最大出力2400W、加熱装置106は最大出力400Wとした。また、ミスト空間200は、800mm×1600mm×2000mmの空間で、37℃に維持する運転を行った。ミスト空間200外部の気温は26℃だった。この結果から、上記のような方法で運転を行うと、室温は、運転開始直後は上昇し、しばらくすると設定温度(±1K)を保持することがわかる。また、露点も、運転直後は上昇するが、しばらくすると室温とほぼ同じ温度で推移し、相対湿度が約100%RHを保持していることがわかる。なお、所望の温湿度を保持している間(運転開始から10分〜30分)に、水蒸気生成装置104から供給したエネルギーは平均1170W、加熱装置106から供給したエネルギーは平均195Wだった。従って、上記のような方法で運転すると、ミスト空間200を所望の温湿度に保持することが確認できた。
【0048】
図1に示した実施の形態では、送風装置108によってミスト生成部100に供給する空気を、ミスト空間200内の空気としたが、ミスト空間200以外の空気を供給してもよい。また、ミスト空間200内の空気と、ミスト空間200以外の空気を混合して供給してもよい。しかし、ミスト空間200内の空気を供給して運転する場合が、最もエネルギーの損失が少なくなり、省エネとなる。
【0049】
送風装置108で供給する空気の流量は、多いとミスト空間200内部にいる使用者に強風が当たるため、快適ではない。しかしながら、流量が少ないと加熱空気、および、混合気の温度が高温になるため、吹出し部300の温度が高くなり、使用者が火傷をしたりする恐れがある。そこで、空気の流量は、吹出し部300の温度が高くなりすぎない、例えば60℃以上にならないように、制御部114で制御して、運転中に都度変更してもよいし、吹出し部300が高温になりすぎず、且つ使用者が不快に感じない流量を予め設定していてもよい。
【0050】
吹出し部300が高温になりすぎないように、吹出し部温度検知部120の検知結果に基づいて、水蒸気生成装置104と加熱装置106、もしくはそのどちらか一方から供給されるエネルギーの合計の上限を、運転中に都度設定してもよい。
【0051】
本明細書に記載したエネルギーの算出方法は、ミスト空間200を所望の温度と湿度に保持するときに適応する。すなわち、ミスト空間200が入浴に適した状態(例えば、ミスト空間200の温度が設定温度±1K)にあるときの、本ミスト装置の算出方法であり、制御方法であるといえる。従って、ミスト装置の起動時やミスト空間200の温度や湿度を上昇させるとき、あるいは停止時は、この限りではない。例えば、起動時やミスト空間200の温度や湿度を上昇させるときは、ミスト空間200の湿度が低いので、水蒸気の供給(生成)量を上げるため、水蒸気生成装置104から供給されるエネルギーの割合を高くしたり、停止時に、ミスト空間200を乾燥させるため、水蒸気の供給(生成)量を少なくするように、水蒸気生成装置104から供給されるエネルギーの割合を加熱装置106から供給されるエネルギーよりも低くしたり、してもよい。
【0052】
ミスト空間200は、ミスト入浴のための専用空間だけでなく、例えば、浴室やシャワーブースなどでもよく、また、ミスト空間200には浴槽や水栓装置などが適宜設けられていてもよい。そして、使用者は水蒸気によって温められたミスト空間200でミスト入浴し、高い温熱感を得ることができる。
【符号の説明】
【0053】
100…ミスト生成部
102…給水装置
104…水蒸気生成装置
106…加熱装置
108…送風装置
114…制御部
120…吹出し部温度検知部
122…ミスト空間温度検知部
130…水流路
131…水蒸気流路
140…第一の空気流路
141…第二の空気流路
142…加熱空気流路
150…混合気流路
200…ミスト空間
300…吹出し部
400…吸込み部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水蒸気を生成する水蒸気生成装置を備えたミスト装置であって、
前記ミスト装置の外部から、前記ミスト装置内部へ外気を導入するための吸込み部と、
前記水蒸気に外気を供給するための送風装置と、
前記送風装置により導入された外気を加熱する加熱装置と、
前記水蒸気生成装置により生成された水蒸気と、前記送風装置により供給された外気とを混合して混合気を生成する混合部と、
前記混合部で生成された混合気を吐出する吐出部と、
前記水蒸気生成装置と前記加熱装置の少なくともどちらか一方の出力を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記水蒸気生成装置の出力が、前記加熱装置の出力よりも大きくなるように出力を制御する
ことを特徴とするミスト装置。
【請求項2】
前記制御部が、
前記水蒸気生成装置の出力と前記加熱装置の出力の比が4:1から12:1の範囲内となるよう、
前記水蒸気生成装置と前記加熱装置の少なくともどちらか一方の出力を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載のミスト装置。
【請求項3】
前記制御部が、
前記水蒸気生成装置の出力と前記加熱装置の出力の比が6:1から9:1の範囲内となるよう、
前記水蒸気生成装置と前記加熱装置の少なくともどちらか一方の出力を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載のミスト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−201095(P2010−201095A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−52758(P2009−52758)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】