説明

ミラーの曇り止め構造

【課題】構造がシンプルで、製造コストを抑えたミラーの曇り止め構造を提供すること。
【解決手段】本発明のミラーの曇り止め構造は、浴室1の壁面1aに取り付けたミラー2の上方に貯水用タンク3を設けたものである。貯水用タンク3の下部には、貯水用タンク3に溜められた貯水Wをミラー2の表面上端部2aに搬送して流出孔4aから流出させる搬送部4を有する。搬送部4の流出孔4aの開口縁部4bは、ミラー2の表面上端部2aに弾性的に接触して流出孔4aを塞いでいる。流出孔4aの開口縁部4bは、貯水Wから受ける水圧が所定の水圧以上の場合に、流出孔4aを開くように弾性変形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室等のミラーの曇り止め構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば特許文献1に示すような、ミラーの曇り止め構造が提案されている。このミラーの曇り止め構造は、浴室の壁面に取り付けたミラーの上方に、貯水用タンクを設けたものである。貯水用タンクの下部には、貯水用タンクに溜められた貯水をミラーの表面上端部に搬送して流出孔から流出させる搬送部を有している。搬送部の流出孔は、浴室内に設置してあるスイッチを押したり、ミラーの表面の水膜の有無をセンサーで検知させたりして、制御回路を起動させて開閉を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−237014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記ミラーの曇り止め構造においては、スイッチや制御回路やセンサーなどの電気部品を用いるために、上記電気部品を湿気や水から守るための防水構造を設けなければならず、製造コストが高く、構造全体が大掛かりなものとなるという問題があった。
【0005】
本発明は前記事情に鑑みて発明したものであって、構造がシンプルで、製造コストを抑えたミラーの曇り止め構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために本発明のミラーの曇り止め構造は、浴室の壁面に取り付けたミラーの上方に貯水用タンクを設け、前記貯水用タンクの下部には、前記貯水用タンクに溜められた貯水を前記ミラーの表面上端部に搬送して流出孔から流出させる搬送部を有し、前記搬送部の前記流出孔の開口縁部は、前記表面上端部に弾性的に接触して前記流出孔を塞いでいて、前記貯水から受ける水圧が所定の水圧以上の場合に、前記流出孔を開くように弾性変形することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、構造がシンプルで、製造コストを抑えたミラーの曇り止め構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態のミラーの曇り止め構造を示す側面断面図である。
【図2】同上のミラーの曇り止め構造を示し、(a)は側面図であり、(b)は貯水用タンクの背面図であり、(c)は流出弁の斜視図である。
【図3】同上のミラーの曇り止め構造の貯水用タンク内に溜めた貯水の流れを説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて説明する。
【0010】
本実施形態のミラーの曇り止め構造を構成する貯水用タンク3は、図1に示すように、浴室1の壁面1aに取り付けられたミラー2の上方の壁面1aに、ねじ具5にて取り付けられるものである。以下においては、ミラー2及び貯水用タンク3が壁面1aに取り付けられた状態を基準とし、壁面1aが正対する方向Xを正面側として説明を行う。
【0011】
貯水用タンク3は、上部が上方に向かって開口する箱状のものであって、水を溜める貯水部7を内側に有する。また、貯水用タンク3は、貯水部7に溜めた貯水Wを外部に流出させる搬送経路となる搬送部4を下部に有する。貯水部7と搬送部4とは連通している。搬送部4の下流端部には、流出孔4aがミラー2の表面上端部2aに向かって開口している。
【0012】
搬送部4は、可撓性を有していて、ミラー2の上方に貯水用タンク3を取り付けた状態において、流出孔4aの開口縁部4bがミラー2の表面上端部2aに弾性的に接触するように構成されている。この状態において、流出孔4aは、ミラー2の表面上端部2aによって塞がれて、貯水Wを流出することができなくなっている。流出孔4aは、左右の幅の長さが、ミラー2の左右の幅の長さと略同じとなるよう形成されている。
【0013】
可撓性を有する搬送部4は、図3に示すように、貯水部7及び搬送部4に溜められた貯水Wの水量が所定の水量以上となった場合に、貯水Wから受ける水圧によって、開口縁部4bとミラー2の表面上端部2aとの間に下方に向けて開口する流出隙間Sができるように弾性変形させられる。この状態において、流出孔4aから、ミラー2の表面に沿って貯水Wは流出される。なお、本実施形態においては、流出隙間Sは、0.2mm〜1.0mm程度の隙間となっており、貯水用タンク3に溜めた貯水Wで、長時間、ミラー2の表面に薄い水膜を形成し続けることができるものである。ここで、流出隙間Sは、ミラー2の表面に薄い水膜ができる程度であれば、例示の数値に限定されない。
【0014】
上述した所定の水量は、本実施形態では、喫水面が搬送部4より上方の貯水部7に位置する水量を示す。なお、搬送部4の可撓性の度合いを調整して、所定の水量を、上述とは異なる他の水量となるように変更することは、もちろん可能である。
【0015】
ここで、本実施形態の貯水用タンク3の構成について、さらに詳しく説明する。
【0016】
貯水用タンク3は、図1及び図2(a)〜(c)に示すように、正面パーツ3aと、背面パーツ3bと、2つの側面パーツ3cと、板状の止水部3dと、流出弁3eと、を固定具6を使って組み立てた樹脂性のものから形成される。
【0017】
正面パーツ3aの左右の側面には、固定具6が側方から差し込まれる固定具嵌合穴3a1がそれぞれ複数(図では、各4つ)設けられている。正面パーツ3aの背面側の下部には、板状の止水部3dを摺動自在に差し込むための止水部差し込み凹部3a2が、後方に向けて開口するように設けられている。また、正面パーツ3aの下端部には、図2(c)に示す流出弁3eの凸部3e3が嵌合する断面略六角形状の流出弁嵌合凹部3a3が形成されている。なお、正面パーツ3aは左右方向の全域に亘って同じ断面形状で成形されている。
【0018】
背面パーツ3bの左右の側面には、固定具6が側方から差し込まれる固定具嵌合穴3b1がそれぞれ複数(図では、各3つ)設けられている。背面パーツ3bの前面側の下部には、正面パーツ3aの止水部差し込み凹部3a2に対向する位置に、板状の止水部3dを摺動自在に差し込むための止水部差し込み凹部3b2が前方に向けて開口するように設けられている。また、背面パーツ3bの下部には、搬送部4に流入した貯水Wが上方に流出することを防止する流出防止片3b3がミラー2の表面上端部2aに向けて突出して設けられている。なお、背面パーツ3bもまた、左右方向の全域に亘って同じ断面形状で成形されている。背面パーツ3bの背面には、図2(b)に示すように、ねじ具5の軸部を差し込むことができるねじ具差し込み用凹部3b4が成形後、設けられる。なお、成形時に形成されていても構わない。
【0019】
止水部3dは、正面パーツ3aの止水部差し込み凹部3a2と、背面パーツ3bの止水部差し込み凹部3b2に差し込まれて、前後に摺動自在となっている。なお、止水部3dは、後端部3d1が背面パーツ3bの止水部差し込み凹部3b2内に位置し、止水部3dの前端部3d2が正面パーツ3aの止水部差し込み凹部3a2内に位置した状態において、貯水部7と搬送部4とを区画した状態となる。また、図3に示すように、止水部3dの前端部3d2が正面パーツ3aの止水部差し込み凹部3a2の最奥面に接触した状態において、止水部3dは、全部分が、正面パーツ3aの止水部差し込み凹部3a2内に位置することとなる。止水部3dの側面の前端部には、貯水用タンク3を組み立てた後で、摘み部3d3が貯水用タンク3の外側から固着される。なお、通常、止水部3dは正面パーツ3aの止水部差し込み凹部3a2内に位置させていて、貯水部7と搬送部4とを連通した状態の貯水用タンク3が使用される。
【0020】
流出弁3eは、図2(c)に示すように、前端に正面パーツ3aの流出弁嵌合凹部3a3に嵌合する断面略六角形状の凸部3e3を有し、後端に、ミラー2の表面上端部2aに弾性的に接触する可撓部3e1と側方水漏れ防止片3e4を有する。凸部3e3と、可撓部3e1とは、板状の板部3e2で接続されている。凸部3e3と板部3e2とは、硬質樹脂製で、可撓部3e1と側方水漏れ防止片3e4とは軟質樹脂製で形成されている。側方水漏れ防止片3e4は、可撓部3e1の左右両側の端部に形成される側面視三角形状のものでる。側方水漏れ防止片3e4は、水圧で可撓部3e1と共に弾性変形されられた場合であっても、搬送部4に流入した貯水Wが側方に流出することを防止できるように形成されている。ここで、可撓部3e1は、下端部が、図3の仮想線で示すように、ミラー2の表面上端部2aとの間に流出隙間Sを形成するまで、前方向に撓むことができる程度の弾性を有する。なお、流出弁3eは、2種類の硬度の樹脂で形成するのではなく、1種類の硬度の樹脂で形成し、厚みを調整して、弾性を持たせるようにしてもよい。
【0021】
2つの側面パーツ3cには、図2(a)に示すように、正面パーツ3aの固定具嵌合穴3a1及び、背面パーツ3bの固定具嵌合穴3b1に対応する位置に、固定具6を差し込む固定具挿入孔3c1がそれぞれ複数(図では各7つ)設けられている。また、一方(右側)の側面パーツ3cには、止水部3dに固着される摘み部3d3がスライド自在な長孔部3c2が、正面パーツ3aの止水部差し込み凹部3a2に対応する位置に設けられている。側面パーツ3cは、貯水用タンク3に溜められた貯水Wが、外側に漏れ出さないように、正面パーツ3a、背面パーツ3b、流出弁3eを側方から覆っている。
【0022】
以上のように各パーツが構成される本実施形態の貯水用タンク3は、浴室1のミラー2の上方の壁面1aに取り付けたねじ具5に、背面パーツ3bのねじ具差し込み凹部3b4を介して着脱自在に取り付けられる。なお、貯水用タンク3は、止水部3dと、正面パーツ3aの止水部差し込み凹部3a2と、背面パーツ3bの止水部差し込み凹部3b2と、を設けないものであっても構わない。
【0023】
なお、図3に示すように、貯水部7の貯水空間は、止水部3dが摺動する位置よりも上方の、正面パーツ3aと背面パーツ3bと側面パーツ3cによって囲まれる貯水用タンク3の上部の空間で形成される。また、搬送部4の流通空間は、流出弁3eと正面パーツ3aと背面パーツ3bと側面パーツ3cによって囲まれる貯水用タンク3の下部の空間で形成される。また、流出孔4aの開口縁部4bは、流出弁3eの可撓部3e1と側方水漏れ防止片3e4の、ミラー2の表面上端部2aに接触する端部で構成されている。
【0024】
浴室1のミラー2の上方の壁面1aに貯水用タンク3を取り付けた状態において、流出弁3eの可撓部3e1と側方水漏れ防止片3e4は、ミラー2の表面上端部2aに弾性的に接触して、搬送部4の流出孔4aを閉じた状態となっている。また、背面パーツ3bの流出防止片3b3と側面パーツ3cの、ミラー2の表面上端部2aに接触する端部は、貯水部7から流入してきた貯水Wが、図3の矢印に示すように流れて、外側に漏れ出すことがないようにミラー2の表面上端部2aに密着している。
【0025】
上述した構成のミラーの曇り止め構造の使用方法について説明する。
【0026】
まず、シャワーや風呂桶を使って、貯水用タンク3の貯水部7及び搬送部4に所定の水量以上貯水Wを溜める。すると、搬送部4の下流端部の流出孔4aの開口縁部4bは、貯水Wの水圧に押されて、ミラー2の表面上端部2aから流出隙間Sだけ離れる。そして、流出孔4aからミラー2の表面上端部2aの左右の幅方向全域に供給された貯水Wは、下方に向けて開口する流出隙間Sを通って流下し、ミラー2の表面全体に薄い水膜を形成する。
【0027】
なお、もしミラー2の表面への貯水Wの供給を中止したい場合には、止水部3dの後端部3d1が背面パーツ3bの止水部差し込み凹部3b2内に位置するように止水部3dの摘み部3d3を後方にスライド操作して(図2(a)参照)、貯水部7と搬送部4とを区画すればよい。
【0028】
また、本実施形態においては、貯水用タンク3は、左右の幅方向の全域に亘って略同じ断面形状で成形されているので、取り付けるミラー2の左右の幅に合わせて長さを調整すれば、どのような幅のミラー2にでも、左右の幅方向の全域に亘って、取り付けることができる。
【0029】
また、本実施形態の貯水用タンク3は、ねじ具5を用いれば、ミラー2に取り付けることができるので、既存の浴室1のミラー2にも取り付けることが可能である。
【0030】
以上、本発明の実施形態について説明した。以下のおいては、本発明の実施形態の奏する効果について、改めて詳述する。
【0031】
本発明の実施形態のミラーの曇り止め構造は、浴室1の壁面1aに取り付けたミラー2の上方に貯水用タンク3を設けたものである。貯水用タンク3の下部には、貯水用タンク3に溜められた貯水Wをミラー2の表面上端部2aに搬送して流出孔4aから流出させる搬送部4を有する。搬送部4の流出孔4aの開口縁部4bは、表面上端部2aに弾性的に接触して流出孔4aを塞いでいる。開口縁部4bは、貯水Wから受ける水圧が所定の水圧以上の場合に、流出孔4aを開くように弾性変形する。
【0032】
以上のような構成とすることで、貯水用タンク3に所定の水量以上、水を溜めると、その水圧で、開口縁部4bが弾性変形して、流出孔4aが開く。流出孔4aからは、ミラー2の表面に沿って貯水Wが流出されるので、ミラー2の表面に水膜を形成することができる。
【0033】
よって、本実施形態のミラーの曇り止め構造には、従来例のように電気部品を設ける必要がなく、そのための防水構造も必要でない。すなわち、本実施形態のような構成とすることで、構成がコンパクトで、製造コストを抑えたミラーの曇り止め構造を提供することができる。
【0034】
以上、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて説明したが、本発明は上述の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の意図する範囲内であれば、適宜の設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 浴室
1a 壁面
2 ミラー
2a 表面上端部
3 貯水用タンク
4 搬送部
4a 流出孔
4b 開口縁部
W 貯水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室の壁面に取り付けたミラーの上方に貯水用タンクを設け、前記貯水用タンクの下部には、前記貯水用タンクに溜められた貯水を前記ミラーの表面上端部に搬送して流出孔から流出させる搬送部を有し、前記搬送部の前記流出孔の開口縁部は、前記表面上端部に弾性的に接触して前記流出孔を塞いでいて、前記貯水から受ける水圧が所定の水圧以上の場合に、前記流出孔を開くように弾性変形することを特徴とするミラーの曇り止め構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−229569(P2011−229569A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100272(P2010−100272)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】