説明

ミラーの曇り止め構造

【課題】構造がシンプルで、製造コストやランニングコストを抑えたミラーの曇り止め構造を提供すること。
【解決手段】本発明のミラーの曇り止め構造は、浴室1のミラー2の表面20と対向する位置に透明板3を設け、ミラー2の表面20と透明板3との間に湯を溜める貯湯空間4を形成することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室等のミラーの曇り止め構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、浴室のミラーが曇ることを防止する構造として、ミラーの裏側に給湯用パイプやヒータを設け、ミラーを裏側から温める構造のものが提案されている(特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−140799号公報
【特許文献2】特開平10−57208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ミラーの裏側に給湯用パイプを設ける場合、給湯用パイプは、ミラーの裏面全体に亘って張り巡らせねばならず、全体として構成が大掛かりなものとなってしまい、製造コストが嵩むといった問題があった。
【0005】
また、ミラーの裏側にヒータを設ける場合、ヒータに水が付着してショートを起こさないように防水構造を設けなければならず、これもまた、全体として構成が大掛かりなものとなって、製造コストが嵩む上に、通電のためのランニングコストも嵩むという問題があった。
【0006】
本発明は前記事情に鑑みて発明したものであって、構造がシンプルで、製造コストやランニングコストを抑えたミラーの曇り止め構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために本発明のミラーの曇り止め構造は、浴室のミラーの表面と対向する位置に透明板を設け、前記ミラーの前記表面と前記透明板との間に湯を溜める貯湯空間を形成することを特徴とする。
【0008】
また、前記透明板の下端部には、前記貯湯空間に連通する水抜き孔が開閉自在に設けられていることが好ましい。
【0009】
また、前記透明板は、前記ミラーに対して位置変更自在に設けられていて、位置変更によって前記貯湯空間と連通する水抜き用隙間が形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、構造がシンプルで、製造コストやランニングコストを抑えたミラーの曇り止め構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態1のミラーの曇り止め構造を示し、(a)は斜視図であり、(b)は側面断面図である。
【図2】本発明の実施形態2のミラーの曇り止め構造を示し、(a)は貯湯空間を開放した状態の斜視図であり、(b)は貯湯空間を形成した状態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて説明する。
【0013】
実施形態1のミラーの曇り止め構造は、図1(a)、図1(b)に示すように、浴室1の壁面10に取り付けられたミラー2の表面20と対向する位置に、透明板3が取り付けられたものである。以下においては、ミラー2の表面20と対向する位置に透明板3が取り付けられた状態を基準とし、ミラー2の表面20が正対する方向Xを前方として説明を行う。
【0014】
透明板3は、図1(b)にも示すように、前面板30と、前面板30の下端から延設された底面板31と、前面板30の左右両端から延設された2枚の側面板32,32と、が一体となったものから構成され、上方と後方が開口した箱状のものである。透明板3は、底面板31の後方の端面33がミラー2の表面20の下端部21に固着され、2枚の側面板32,32の後方の端面34,34がミラー2の表面20の両側端部22,22に固着されて、ミラー2の表面20に取り付けられている。前面板30は、前方から視てミラー2と略同大同形に形成されていて、ミラー2の表面20から所定の距離を置いて、対向する箇所に位置し、ミラー2に対して略平行となるように設けられている。透明板3は、ガラス,アクリル等の透明な材料で形成されている。
【0015】
透明板3の前面板30と、ミラー2の表面20との間には、湯を溜めることができる貯湯空間4が形成されている。貯湯空間4は、ミラー2の表面20、透明板3の前面板30、透明板3の側面板32,32、及び透明板3の底面板31で囲まれる上方に開口した空間である。
【0016】
透明板3の下端部である底面板31には、上下に貫通する平面視円状の水抜き孔5が形成されている。この水抜き孔5は、貯湯空間4と、透明板3の外側の浴室空間とを連通させて、貯湯空間4に溜められた湯を水抜きするためのものである。水抜き孔5は、水抜け防止栓6が下方から着脱自在に嵌め込まれて、開閉自在となっている。水抜け防止栓6は、下端に近づくほど径が太くなる略円錐状のもので、水抜き孔5に下方から差し込むと、途中で水抜き孔5に水密に嵌合して、水抜き孔5から貯湯空間4に溜められた湯が抜けていくことを止めるものである。なお、水抜け防止栓6は、水抜き孔5に水密に嵌合可能であれば、水抜き孔5より若干径が大きい円柱状等の他の形状のものであっても構わない。また、水抜け防止栓6を、透明板3の底面板31の下面の一部に連結する紐部(図示せず)を有するものとして、水抜き孔5から外した際に、無くなることがないようにしてもよい。また、水抜き孔5は、水抜け防止栓6の代わりに、底面板31の下面に沿ってスライドする板状のスライド開閉蓋(図示せず)で開閉自在とするものであっても構わない。
【0017】
上記構成のミラー2の曇り止め構造の使用方法について説明を行う。
【0018】
まず、水抜き孔5を水抜け防止栓6で塞ぐ。次に、透明板3とミラー2の表面20との間の貯湯空間4に、上方からシャワー等で湯を溜める。なお、ここで溜める湯は、入浴の際に、浴槽に溜めたりシャワー等で吐水させる、40℃程度の温度のものである。
【0019】
以上のようにすると、ミラー2の表面20と透明板3との間には湯の層ができ、透明板3は、その湯の層によって浴室1の室温以上の温度に温められる。すなわち、ミラー2の表面20と、透明板3の貯湯空間4側の面(前面板30の後面及び側面板32,32の内側面)には、湯の層が重なることになるので、結露ができず曇ることはない。また、透明板3自体が浴室1の室温以上の温度に温められた状態となっている間は、透明板3の外側の面(前面板30の前面及び側面板32,32の外側面)には、結露ができず曇ることはない。
【0020】
そして、ミラー2の表面20との間に湯の層を形成するように設けた透明板3は透明で、間に溜めた湯も透明であるので、入浴者が透明板3及び湯を介してミラー2を視た場合に映る姿が、ミラー2を直接視た場合に映る姿とほぼ変わらない。よって、本実施形態のミラー2の曇り止め構造は、ミラー2の表面20との間に湯の層を形成するように透明板3を設けたことで、曇りが発生することを極力抑制したものとなっている。
【0021】
なお、仮に貯湯空間4に溜めた湯の温度が下がって、透明板3の外側の面(前面板30の前面及び側面板32,32の外側面)に結露が生じることがあれば、水抜き孔5を開状態にして、温度の下がった湯を一旦抜いて、新しく40℃程度の湯を溜めればよい。
【0022】
次に実施形態2のミラー2の曇り止め構造について、説明を行う。なお、実施形態1と同じ構成には、同じ符号を付けて説明を省略し、違う構成について説明を行う。
【0023】
実施形態2のミラー2の曇り止め構造は、ミラー2の表面20に板状の透明板3を取り付けたものである。すなわち、実施形態2の透明板3は、実施形態1の透明板3の前面板30のみで構成される。
【0024】
図2(a)に示すように、透明板3の前面板30の後面の両側端部及び下端部には、全体の形状が略U字状となる防水パッキン7が透明板3の外枠に沿うように固着されている。防水パッキン7は、方向Xの幅(寸法)が肉厚に形成されている。透明板3の後面の防水パッキン7がミラー2の表面20に当接するように透明板3をミラー2に取り付けた状態において、ミラー2の表面20、透明板3、及び防水パッキン7で囲まれる空間が、貯湯空間4となる。すなわち、本実施形態では、防水パッキン7が、実施形態1の透明板3の2枚の側面板32,32、及び底面板31の代わりの構成となっている。ここで、上述の貯湯空間4を形成した状態において、透明板3の上端部とミラー2の上端部との間には、防水パッキン7の厚み分の隙間が形成されていて、この隙間を介して、貯湯空間4にシャワー等で湯を流し込むことができる。
【0025】
透明板3は、上端の両側部がミラー2の表面20の上端の両側部にヒンジ部等の連結部35(詳細な構成は図示せず)を介して取り付けられていて、透明板3の下端部36がミラー2の表面20の下端部24から離れる方向に動くことができるようになっている。すなわち、透明板3は、ミラー2に対して連結部35を軸として回転移動自在に設けられている。また、透明板3の下端部36がミラー2の表面20の下端部24から離れた状態で、透明板3とミラー2の間には水抜き用隙間9が形成される。この水抜き用隙間9は、実施形態1における水抜き孔5と同様に、貯湯空間4と透明板3の外側の浴室空間とを連通させて、貯湯空間4に溜められた湯を水抜きするためのものである。
【0026】
ミラー2の表面20には、図2(b)に示すように、透明板3が取り付けられた状態において、略U字状の防水パッキン7の内側面70に一面が当接する複数の位置決め用パッキン8が、所定の間隔を開けながら全体として略U字状となるように取り付けられている。位置決め用パッキン8は、防水パッキン7と、方向Xの幅(寸法)が略同じとなるように形成されている。この複数の位置決め用パッキン8のミラー2の外枠側の面(外側面80)に、防水パッキン7の内側面70が相互に押し合うように当接して、防水パッキン7は全体としてこの複数の位置決め用パッキン8に嵌合する状態となる。ここで、透明板3は、透明板3の自重と、防水パッキン7と位置決め用パッキン8との嵌合とで、ミラー2から外れ難くなっている。なお、ミラー2の下端部24又はミラー2の下方の壁面10に外れ防止用フック(図示せず)を設けて、その外れ防止用フックで、透明板3がミラー2から外れないようにしても構わない。外れ防止用フックを設けるのであれば、位置決め用パッキン8を設けない構成としても構わない。
【0027】
上記構成のミラー2の曇り止め構造の使用方法について説明を行う。
【0028】
まず、透明板3をミラー2に押し付け、防水パッキン7と位置決め用パッキン8とを嵌合させて、貯湯空間4を形成する。次に、透明板3とミラー2の表面20との間の貯湯空間4に上方からシャワー等で湯を溜める。
【0029】
以上のようにすると、ミラー2の表面20と透明板3との間には、湯の層ができ、透明板3は、その湯の層によって浴室1の室温以上の温度に温められる。すなわち、ミラー2の表面20と、透明板3の貯湯空間4側の面(前面板30の後面)には、湯の層が重なることになるので、結露ができず曇ることはない。また、透明板3自体が浴室1の室温以上の温度に温められた状態となっている間は、透明板3の外側の面(前面板30の前面)には、結露ができず曇ることはない。
【0030】
なお、仮に貯湯空間4に溜めた湯の温度が下がって、透明板3の外側の面(前面板30の前面)に、結露が生じることがあれば、透明板3の下端部36をミラー2の下端部24から離れる方向に動かして貯湯空間4を開放して、温度の下がった湯を一旦抜いて、新しく40℃程度の湯を溜めればよい。
【0031】
このように、実施形態2では、実施形態1の水抜き孔5の構成の代わりに、透明板3をミラー2に対して回転移動自在としたことで、貯湯空間4を開放した状態にして、排水することができるようになっている。このような構成としたことで、実施形態2のミラー2の曇り止め構造は、透明板3及びミラー2の手入れがしやすくなっている。
【0032】
以上、本発明の実施形態について説明した。以下においては、本発明の実施形態の奏する効果について、改めて詳述する。
【0033】
(各実施形態の作用効果)
以上、本発明の実施形態1,2について説明した。奏する効果について、改めて詳述する。
【0034】
本発明の実施形態1,2のミラー2の曇り止め構造は、浴室1のミラー2の表面20と対向する位置に透明板3を設け、ミラー2の表面20と透明板3との間に湯を溜める貯湯空間4を形成している。
【0035】
以上のような構成とすることで、浴室1のミラー2の表面20と、ミラー2の表面20に対向する位置に設けた透明板3との間の貯湯空間4に湯(40℃程度の湯)を溜めることができる。貯湯空間4に湯を溜めることで、ミラー2の表面20と透明板3の貯湯空間4側の面には、湯の層が重なるので、結露できず曇ることはない。ここで、透明板3自体が浴室1の室温以上の温度に温められた状態となっている間は、透明板3の外側の面には、結露ができず曇ることはない。このように、実施形態1,2のミラー2の曇り止め構造は、ミラー2の表面20との間に湯の層を形成するように透明板3を設けたことで、曇りが発生することを極力抑制したものとなっている。
【0036】
上述のような構成とすることで、本発明の実施形態1,2のミラー2の曇り止め構造は、従来例のようにミラー2の裏側にヒータや給湯管を設けなくてもよく、ミラー2と対向する位置に透明板3をミラー2との間に湯の層が形成されるように設けるだけでよい。よって、本発明の実施形態1,2のミラー2の曇り止め構造は、構造がシンプルで、製造コストやランニングコストを抑えたものとなっている。
【0037】
また、本発明の実施形態1のミラーの曇り止め構造は、透明板3の下端部には、貯湯空間4に連通する水抜き孔5が開閉自在に設けられている。
【0038】
以上のような構成とすることで、透明板3の下端部に設けた水抜き孔5を開状態とすれば、貯湯空間4に溜まっていた温度の下がった湯を排水することができる。よって、透明板3の温度が、浴室1の温度以下になった場合には、湯を入れ替えて、また曇らない状態とすることができる。
【0039】
また、本発明の実施形態2のミラーの曇り止め構造は、透明板3が、ミラー2に対して位置変更自在に設けられていて、位置変更によって貯湯空間4と連通する水抜き用隙間9が形成される。
【0040】
以上のような構成とすることで、透明板3をミラー2の表面20に対して位置変更させて、貯湯空間4の水が抜ける水抜き用隙間9を形成すれば、貯湯空間4に溜まっていた温度の下がった湯を排水することができる。よって、透明板3の温度が、浴室1の室温以下になった場合には、湯を入れ替えて、また曇らない状態とすることができる。
【0041】
(変更例)
なお、実施形態1,2においては、透明板3はミラー2の表面20に直接取り付けられた構成となっているが、透明板3は、ミラー2の外側の浴室1の壁面10に取り付けられるような構成であっても構わない。このようにすれば、ミラー2の表面20全面を有効に利用できる。
【0042】
また、実施形態2においては、ミラー2の上端と透明板3の上端とを連結部35を介して取り付けたが、ミラー2の側端部と透明板3の側端部とを連結部35を介して取り付けてもよいし、ミラー2の下端部24と透明板3の下端部36とを連結部35を介して取り付けてもよい。この場合、貯湯空間4に溜めた湯や透明板3の自重によって、ミラー2から透明板3が勝手に外れないように、上述した外れ防止フックのような構成を設ければよい。
【0043】
また、実施形態1,2においては、透明板3をミラー2に接続部を介して着脱自在に取り付けても構わない。また、透明板3をミラー2にスライド部を介してスライド自在に取り付けても構わない。これらの場合も、透明板3の自重で、ミラー2から透明板3が勝手に外れたりしないような構成を別途設ければよい。
【0044】
また、実施形態1においては、透明板3の底面板31に水抜き孔5を設けていたが、透明板3の下端部であれば、前面板30や側面板32,32に設けても構わない。また、実施形態2においても、透明板3の下端部36の前面板30や防水パッキン7に、水抜き孔5を設けても構わない。
【0045】
以上、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて説明したが、本発明は上述の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の意図する範囲内であれば、適宜の設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 浴室
2 ミラー
20 表面
3 透明板
4 貯湯空間
5 水抜き孔
6 水抜き用隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室のミラーの表面と対向する位置に透明板を設け、前記ミラーの前記表面と前記透明板との間に湯を溜める貯湯空間を形成することを特徴とするミラーの曇り止め構造。
【請求項2】
前記透明板の下端部には、前記貯湯空間に連通する水抜き孔が開閉自在に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のミラーの曇り止め構造。
【請求項3】
前記透明板は、前記ミラーに対して位置変更自在に設けられていて、位置変更によって前記貯湯空間と連通する水抜き用隙間が形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載のミラーの曇り止め構造。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−245021(P2011−245021A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120935(P2010−120935)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】