説明

ミラー取付け装置

【課題】コンパクトな構成にしながら、ミラーの受光視野を広範囲に調整できるようにしたミラー取付け装置を提供する。
【解決手段】ミラーMを支持する支持板1と構造物Sに対する固定用の取付板2とを、それらの端部同士を蝶番機構10を介して回動可能に連結する。取付板2は構造物Sに対して締付けネジ9により該締付けネジを中心に任意の回動角度で固定可能にするか、又は永久磁石21を利用して構造物S側の強磁性体板22に対して任意の相対角度で吸着可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はミラー取付け装置に関し、さらに詳しくは、コンパクトな構成にしながら、ミラーの受光視野を広範囲に調整できるようにしたミラー取付け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
壁面などにミラーを所定の傾斜角度で取り付けることにより、ミラーに死角から入射する映像を映し出すことができる。特に凸面鏡のミラーは、映し出す死角の範囲を一層広げることができる。このような機能を有するため、ミラーはコンビニエンスストアやスパーマーケットなどの店舗において万引き防止手段として、また公共施設、工場、倉庫などのコーナーにおいて、通行人同士や車両同士、或いは通行人と車両との衝突防止や接触防止の手段として利用されている。
【0003】
特許文献1は、このように利用されるミラーの取付け装置として、壁面から突出させた複数本の支持アームにより、ミラー背面の上部側左右の位置と下部側の中央位置とを支持するようにし、かつこれら支持アームのうち上部側左右の位置の支持アームの支持長さを互いに異ならせることにより、ミラーの取付角度(傾斜角度)を調整するようにしたものを開示している。
【0004】
しかし、このミラー取付け装置のように、ミラーの背面側で支持アームの長さを異ならせることによりミラーの取付角度を調整する構成では、ミラー取付け角度を変化させることができる範囲が狭いため、受光視野を広範囲に拡大することができないという問題があった。また、ミラーの背面側で支持アームの支持長さを調節するためには、ミラーの背面側に一定のスペースを確保する必要があるため、取付け壁面からのミラーの位置が必然的に相当離れた距離にならざるを得ず、ミラーを壁面に接近させたコンパクトな状態に取り付けられないという問題があった。
【0005】
また,ミラーの取付け装置としては、支持アームとしてフレキシブルチューブを使用するものがある。しかし、フレキシブルチューブの場合も、ミラーの背面と取付け壁面との間でフレキシブルチューブを屈曲変形させるための十分なスペースが必要になるため、特許文献1のミラー取付け装置の場合と同様に、ミラーを壁面に可及的に接近させたコンパクトな取り付け状態にすることは難しかった。
【特許文献1】特開2000−316688号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、コンパクトな構成にしながら、ミラーの受光視野を広範囲に調整できるようにしたミラー取付け装置を提供することにある。本発明の他の目的は、ミラーを取付け壁面に接近するようにコンパクトな状態に取付けを可能にするミラー取付け装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では二つのミラー取付け装置を提供することができる。その第1番目のミラー取付け装置は、ミラーを支持する支持板と構造物に対する固定用の取付板とを、それらの端部同士を蝶番機構を介して回動可能に連結し、かつ前記取付板を前記構造物に対して締付けネジにより該締付けネジを中心に任意の回動角度で固定するようにしたことを特徴とするものである。
【0008】
また、第2番目のミラー取付け装置は、ミラーを支持する支持板と構造物に対する固定用の取付板とを、それらの端部同士を蝶番機構を介して回動可能に連結し、かつ前記取付板に永久磁石を取り付ける一方、前記構造物に強磁性体を配置し、前記取付板を前記構造物に対し任意の相対角度で吸着させようにしたことを特徴とするものである。
【0009】
第1番目及び第2番目のいずれのミラー取付け装置も、前記蝶番機構としては、前記支持板の端部と前記取付板の端部とにそれぞれ軸受部を形成すると共に、これら軸受部を軸方向が同軸になるように直列に配置し、これら軸受部に枢支軸を挿入して該枢支軸の両端部から軸方向に締付け力を与えるように構成したものがよい。また、前記支持板の軸受部と前記取付板の軸受部との間には弾性材を介在させるようにするとよい。
【0010】
ミラーが凸面鏡である場合は、該凸面鏡の支持板による支持を、該支持板に円形の補助板を取り付け、該補助板の周縁部を前記凸面鏡の裏面に接着するようにするとよい。
【0011】
また、ミラーとしては、種類は特に限定されないが、凸面鏡、平面鏡又は凸面鏡機能を有する平面状のフレネルミラーなどが好ましく使用される。
【発明の効果】
【0012】
本発明のミラー取付け装置によれば、第1番目及び第2番目のいずれも、ミラーを支持するための支持板と構造物に対する固定用の取付板とが蝶番機構を介して回動可能に連結されているので、ミラーの支持板を構造物に固定した取付板に対して略180度の範囲で回動可能である上に、取付板を、第1番目の発明では締付けネジを中心に構造物に対して360°の範囲で回動可能にでき、また第2番目の発明では、永久磁石を介して構造物に対して全ゆる相対角度に吸着できるようになっているため、支持板に支持したミラーの受光視野を非常に広い角度範囲に調整することができる。しかも、ミラーの支持板と構造物に対する取付板とを蝶番機構を介して回動可能に連結したことにより、支持板上のミラーを構造物の取付け壁面に可及的に接近させたコンパクトな状態にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1〜4は、本発明の第1番目のミラー取付け装置について、その実施形態を例示したものである。
【0014】
図1において、1はミラーMを支持する支持板であり、2は構造物Sに対して固定する取付板である。支持板1と取付板2とは、それらの端部同士が蝶番機構10を介して回動可能に連結されている。支持板1及び取付板2の材料は金属板が好ましいが、樹脂板で構成したものであってもよい。
【0015】
取付板2を固定するための構造物Sは、一般に建造物などの壁面や天井などである。また、ミラーMは、図1の例では平面鏡であるが、種類はこれに限定されず、凸面鏡或いは凸面鏡機能を有する平面状のフレネルミラーであってもよい。フレネルミラーとは、凸面鏡を同心円状の多数の径が異なるリングに輪切りにし、これらリングを中心軸を一致させて平面状に並べ変えるように構成した平面状のミラー構造体のことをいう。
【0016】
ミラーMは、表面側を反射面をもつ鏡面部Mfにし、背面側を非鏡面部Mbとして構成されている。支持板1には、ミラーMの非鏡面部Mbが面方向を互いにほぼ平行にするようにして取り付けられている。取付けは、接着剤や両面接着テープなどで直接接着してもよく、或いはネジで固定するようにしてもよい。
【0017】
図1及び図2を参照すると、支持板1と取付板2とを連結する蝶番機構10は、次のように構成されている。支持板1と取付板2とが互いに対向し合う端部に、それぞれ円筒状の軸受部3及び軸受部4を形成すると共に、これら軸受部3、4を軸方向が共軸になるよに直列に配置している。このように直列に配置された軸受部3、4の軸心に、頭部7を有する枢支軸5が挿入され、その他端側のネジ部にナット6が螺合するように構成されている。したがって、ナット6を締め付けると、軸受部3、4間に軸方向の締付け力が与えられて圧着されるため、軸受部3、4間に摩擦力が発生し、その摩擦力により支持板1と取付板2との間の相対回転が固定される。反対に、ナット6の締め付けを弛めると、支持板1と取付板2とは相対回転が許容されるようになる。
【0018】
一方、取付板2は、図3に示すように、構造物Sの壁面に対して1本の締付けネジ9により固定されるようになっている。締付けネジ9により取付板2を固定した状態で、蝶番機構10のナット6を弛めると、支持板1の取付板2に対する開き角度αを、枢支軸5を中心にして略180°の範囲で変化させることができ、またナット6を締め付けると、支持板1の開き角度αを任意の角度で固定することができる。他方、図3及び図4に示すように、取付板2の締付けネジ9を弛めると、支持板1を取付板2と共に締付けネジ9の軸周りに回動させ、その軸周り対する回動角度βを360°の範囲にわたり変化させることができると共に、締付けネジ9を締め付けると、任意の回動角度βで固定することができる。
【0019】
上述のようにミラーMを支持した支持板1は、蝶番機構10の枢支軸5の周りを回動できるだけでなく、締付けネジ9の軸周りにも回動することができるため、支持板1の開き角度αを約180°の範囲にわたり、また回動角度βを360°の範囲にわたり変化させることにより、ミラーMの傾斜角度を極めて広範囲に変化させることができる。そのため、ミラーMの受光視野を大幅に広い範囲にわたり調節することができる。また、上記ミラー取付け装置は、ミラーMを支持する支持板1と構造物Sに固定する取付板2とを蝶番機構10を介して回動可能に連結した構成であるため、支持板1に支持したミラーMを構造物Sの取付け壁面に対し可及的に接近させて、コンパクトな取り付けた状態にすることができる。
【0020】
本発明において、蝶番機構10における軸受部3、4間の摩擦力による回転制御を効果的に行うためには、軸受部3と軸受部4との間にスプリングワッシャなどの弾性材8を介在させるとよい。さらに必要により、枢支軸5の頭部7と軸受部3との間及びナット6と軸受部4との間にも、スプリングワッシャなどの弾性材8を介在させるとよい。このように、少なくとも軸受部3と軸受部4との間に弾性材8を介在させると、ナット6の締付け力を調整することにより軸受部3、4間の摩擦力を所望の大きさにすることができる。この軸受部3、4間の摩擦力の調整により、手で支持板1を押圧するだけで支持板1を取付板2に対して所望の開き角度(回動角度)に変える一方、手の押圧を解除したとき、その支持板1の開き角度を静止状態に維持することができる。
【0021】
図5及び6は、本発明の第2番目のミラー取付け装置について、その実施形態を例示したものである。
【0022】
このミラー取付け装置は、第1番目のミラー取付け装置と同様に、ミラーMを支持する支持板1と構造物Sに対して固定する取付板2とは、蝶番機構10を介して回動可能に連結されている。また、蝶番機構10は、支持板1側の軸受部3と取付板2側の軸受部4とが直列に配列するように衝き合わされ、これらの軸受部3、4の軸心に頭部7付き枢支軸5が挿入され、他端のネジ部にナット6が螺合しりように構成されている。さらに蝶番機構10には、軸受部3と軸受部4の間にスプリングワッシャなどの弾性材8が介在し、好ましくは枢支軸5の頭部7と軸受部3との間及びナット6と軸受部4との間にも弾性材8が介在している。
【0023】
取付板2の構造物Sの壁面に対する固定は、締付けネジで行うのではなく、永久磁石21を利用して吸着するようになっている。取付板2の裏面側に永久磁石21が貼着され、これに対して構造物Sの壁面側に、鉄、コバルト、ニッケルなどの強磁性体からなる強磁性体板22が貼着されるようになっている。このように永久磁石21が取り付けられていることにより、取付板2を構造物S上の強磁性体板22に吸着させることができる。永久磁石21による吸着であるため、締付けネジのように1点に拘束されていないので、取付板2の構造物Sに対する取付け角度を高い自由度で選択することができる。
【0024】
支持板1に支持するミラーMは、図の実施形態では凸面鏡である。この凸面鏡からなるミラーMを取り付けるため、支持板1は円形に切り出された補助板23を取り付け、この補助板23をミラーMの球状の内壁面Mbに貼り付けるようにしている。補助板23の貼り付けは、補助板23の周縁部に接着剤24を介在させてミラーMの球状の内壁面Mbに接着するようにすればよい。さらに必要により、図示の例のように頭付ボルト25とナット26で連結すれば、接着剤が剥離した場合の脱落を防止することができる。
【0025】
この第2番目のミラー取付け装置も、ミラーMの支持板1が蝶番機構10の枢支軸5の周りに回動可能になっているだけでなく、取付板2が構造物Sに対して広範囲の相対角度で吸着するようになっているため、支持板1に支持されたミラーMの傾斜角度を広範囲に変化させることができる。そのため、ミラーMの受光視野を幅広い範囲にわたり調節することができる。また、ミラーMを構造物Sの取付け壁面に可及的に接近させたコンパクトな取付け状態にすることができる。
【0026】
なお、第1番目及び第2番目の発明とも、図示の例では、軸受部3と軸受部4をそれぞれ支持板1と取付板2とに1個ずつ設けた構成になっているが、その数は2個ずつ以上であってもよく、数は特に限定されるものではない。また、支持板1側の軸受部3の数と取付板2側の軸受部4の数とは同数でなくてもよく、一方の数に対して他方の数を1個だけ多く設けるものであってもよい。ただし、いずれの場合にも、支持板1側の軸受部3と取付板2側の軸受部4とは、軸方向に交互に配列するようにしなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態からなるミラー取付け装置を示す斜視図である。
【図2】図1のミラー取付け装置における蝶番機構の要部を示す断面図である。
【図3】本発明のミラー取付け装置における支持板の変化を説明する側面図である。
【図4】本発明のミラー取付け装置における支持板と取付板の変化を説明する平面図である。
【図5】本発明の他の実施形態からなるミラー取付け装置を示す斜視図である。
【図6】図5のミラー取付け装置の縦断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 (ミラーMの)支持板
2 (構造物Sに対する)取付板
3、4 軸受部
5 枢支軸
6 ナット
8 弾性材
9 締付けネジ
10 蝶番機構
21 永久磁石
22 強磁性体板
23 補助板
24 接着剤
M ミラー
S 構造物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミラーを支持する支持板と構造物に対する固定用の取付板とを、それらの端部同士を蝶番機構を介して回動可能に連結し、かつ前記取付板を前記構造物に対して締付けネジにより該締付けネジを中心に任意の回動角度で固定するようにしたミラー取付け装置。
【請求項2】
ミラーを支持する支持板と構造物に対する固定用の取付板とを、それらの端部同士を蝶番機構を介して回動可能に連結し、かつ前記取付板に永久磁石を取り付ける一方、前記構造物に強磁性体を配置し、前記取付板を前記構造物に対し任意の相対角度で吸着させるようにしたミラー取付け装置。
【請求項3】
前記蝶番機構を、前記支持板の端部と前記取付板の端部とにそれぞれ軸受部を形成すると共に、これら軸受部を軸方向が同軸になるように直列に配置し、これら軸受部に枢支軸を挿入して該枢支軸の両端部から軸方向に締付け力を与えるように構成した請求項1又は2に記載のミラー取付け装置。
【請求項4】
前記支持板の軸受部と前記取付板の軸受部との間に弾性材を介在させた請求項3に記載のミラー取付け装置。
【請求項5】
前記ミラーが凸面鏡であり、該凸面鏡の前記支持板による支持を、該支持板に円形の補助板を取り付け、該補助板の周縁部を前記凸面鏡の裏面に接着するようにした請求項1〜4のいずれかに記載のミラー取付け装置。
【請求項6】
前記ミラーが凸面鏡、平面鏡又は凸面鏡機能を有する平面状のフレネルミラーである請求項1〜4のいずれかに記載のミラー取付け装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−82421(P2010−82421A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−299305(P2008−299305)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【出願人】(390010526)コミー株式会社 (10)
【Fターム(参考)】