説明

ミラー組込み表示板

【課題】表示板ベースの表面に表示された特定の表示に対応する方向の状況を、表示板を見るだけで把握できるようにしたミラー組込み表示板を提供する。
【解決手段】フレネルミラー3が取り付けられた表示板ベース2と、この表示板ベース2の表面に表示された特定の表示9とを有し、フレネルミラー3に対向した際に、特定の表示9に対応する方向がフレネルミラー3によって見えるようにしたので、特定の表示9に対応する方向に移動したり、視線を移さなくても、表示板1を見るだけで、その方向の状況を把握することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミラー組込み表示板に関し、さらに詳しくは、表示板ベースの表面に表示された特定の表示に対応する方向の状況を、表示板を見るだけで把握できるようにしたミラー組込み表示板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特定の場所、特定の場所に設置された物等を第三者に知らせるために、表示板には必要な情報が表示されている。例えば、建物内においては、トイレ、会議室等の特定の場所や、消火器や非常ボタン等のその場所に設置されている特定の物を示すために、壁面に取り付けられた表示板には、その特定の場所や特定の物を示す表示が記載されている。屋外でも同様の表示板が設置されている。一般的に、人は表示板の表示を見て、この表示に基づいて行動しており、表示板によって誘導されている。このように表示板は、第三者に必要な情報を提供するので、目に付き易くするために様々な工夫がなされている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、従来の表示板では、表面に表示された特定の表示に対応する方向の状況を把握するには、実際に、その方向に移動したり、その方向に視線を移さなければならないという問題があった。そのため、移動したり、視線を移す際に、注意が散漫になって人や物に衝突することがある。
【0004】
また、表示板の表示に従って、実際にその方向に移動した後に、その方向が混雑している場合がある。このような場合、表示板の特定の表示に対応する方向の状況を事前に把握できれば、無駄な移動をする必要もなく、また、混雑を回避することもでき、より適切な行動をすることが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−305309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、表示板ベースの表面に表示された特定の表示に対応する方向の状況を、表示板を見るだけで把握できるようにしたミラー組込み表示板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明のミラー組込み表示板は、平面状の透明プラスチック板の裏面に、多数の環状傾斜溝が同心円状に形成されるとともに、この裏面に反射膜が積層されたフレネルミラーと、このフレネルミラーが取り付けられた表示板ベースと、この表示板ベースの表面に表示された特定の表示とを有し、このフレネルミラーに対向した際に、前記特定の表示に対応する方向がフレネルミラーによって見えるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のミラー組込み表示板によれば、フレネルミラーが取り付けられた表示板ベースと、この表示板ベースの表面に表示された特定の表示とを有し、このフレネルミラーに対向した際に、特定の表示に対応する方向がフレネルミラーによって見えるようにしたので、特定の表示に対応する方向に顔を向けて目視しなくても、特定の表示とともにフレネルミラーを見るだけで、この方向の状況を把握することができる。それ故、この表示板によって適切な誘導を行なうことが可能になり、人や物との不用意な衝突を回避したり、混雑緩和等には有利になる。
【0009】
ここで、前記特定の表示が、この特定の表示に対応する方向を示す表示部を有する仕様にすることもできる。この仕様によれば、この方向を示す表示部によって、この方向に対する意識が喚起されるので、この方向の状況をより確実に把握し易くなる。
【0010】
前記特定の表示に対応する方向を示す表示部を矢印にすることもできる。この場合、この方向を示す矢印によって、この方向が一見して分かるので、この方向の状況をさらに確実に把握し易くなる。
【0011】
前記フレネルミラーの表面と表示板ベースの表面とが同じレベルである仕様にすることもできる。この仕様によれば、表示板の表面が平坦になるので、何かが引っ掛かったり、フレネルミラーと表示板ベースとの段差にゴミ等が堆積することを防止することができる。
【0012】
本発明のミラー組込み表示板は、例えば、T字通路の突き当たりの壁面、または、扉の表面に設置される。T字通路の突き当たりの壁面にミラー組込み表示板を設置することにより、特定の表示に対応する方向が見通しのきかないT字路の死角領域であっても、その状況を把握することが可能になる。扉の表面にミラー組込み表示板を設置することにより、扉を開ける際に自身の後方および周囲の状況を把握することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のミラー組込み表示板を例示する正面図である。
【図2】図1のA−A断面の一部拡大図である。
【図3】ミラー組込み表示板の変形例を示す図1のA−A断面の一部拡大図である。
【図4】ミラー組込み表示板の変形例を示す図1のA−A断面の一部拡大図である。
【図5】ミラー組込み表示板を、T字通路の突き当たりの壁面に設置した状態を例示する平面図である。
【図6】ミラー組込み表示板を、扉の表面に設置した状態を例示する平面図である。
【図7】ミラー組込み表示板の別の実施形態を例示する正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のミラー組込み表示板を、図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0015】
図1および図2に例示するように、本発明のミラー組込み表示板1(以下、表示板1という)は、表示板ベース2とフレネルミラー3とを有している。尚、図1〜4における一点鎖線CLは、フレネルミラー3の上下方向中心線である。
【0016】
表示板ベース2は、樹脂や金属等で形成されており、材質は特に限定されるものではない。この実施形態の表示板ベース2は、正面視で四角形状であり、均一な厚さの平板(平面状)になっている。表示板ベース2の形状は四角形状に限定されず、円形、楕円形、三角形、その他の多角形、任意の形状など種々の形状を採用することができるが、平面状のものが好ましい。表示板ベース2の厚さは、例えば、1mm〜5mm程度である。四角形状の表示板ベース2の場合、その大きさは例えば、一辺が50mm〜1000mm程度である。
【0017】
フレネルミラー3は、両面テープ8を介して表示板ベース2の表面に取り付けられている。このフレネルミラー3は、平面状の透明プラスチック板4と反射膜6とを備えており、反射膜6の裏面には塗料等からなる保護層7が設けられている。透明プラスチック板4の裏面には、多数の環状傾斜溝5が同心円状に形成されていて、この多数の環状傾斜溝5を覆うように、プラスチック板4の裏面には反射膜6が積層されている。これら環状傾斜溝5の半径方向配置ピッチは、例えば0.1mm〜0.5mm、好ましくは0.2mm〜0.3mm程度である。
【0018】
環状傾斜溝5は、同心円中心に対して外側に傾斜する傾斜面を有し、その傾斜面の傾斜角度は、同心円中心から半径方向外側になるほど大きくなるように形成されている。この傾斜角度および傾斜角度の変化具合は、表示板1の設置場所や後述する特定の表示9の内容等に応じて適宜決定される。
【0019】
透明プラスチック板4の材質としては、ポリカーボネート(PC)、アクリル(PMMA)、塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PET)等の透明性に優れた樹脂を例示することができる。透明プラスチック板4の厚さは、例えば0.5mm〜3.0mm程度である。
【0020】
反射膜6としては、金属蒸着膜や金属メッキ膜等を用いることができる。反射膜6の厚さは、例えば10nm〜200nm程度である。
【0021】
フレネルミラー3の形状は特に限定されず、正面視で四角形状、円形、楕円形、三角形、その他の多角形、任意の形状など種々の形状を採用することができる。表示板ベース2におけるフレネルミラー3の配置は特に限定されず、表示板ベース2の中央部、上方に偏った位置、下方に偏った位置、左右のいずれか一方の偏った位置等任意の配置にすることができる。
【0022】
図3に例示するように、表示板ベース2の表面に設けられた嵌合凹部2aに、フレネルミラー3を嵌め込んで両面テープ8を介して取り付けることもできる。この実施形態では、表面板ベース2の表面とフレネルミラー3の表面とは同じレベルになっており、表示板1の表面は平坦になっている。そのため、表示板1に何かが引っ掛かったり、フレネルミラー3の上端面にゴミ等が堆積することを防止することができる。
【0023】
図4に例示するように、表示板ベース2に設けられた嵌合穴部2bに、フレネルミラー3を嵌め込んで取り付けることもできる。表面板ベース2の表面とフレネルミラー3の表面とは同じレベルになっている。この仕様では、表示板ベース2とフレネルミラー3とが実質的に同じ厚さであり、表示板1の厚さを最小限にすることができる。
【0024】
表示板ベース2の周縁の一部を切欠いた切欠き部に、フレネルミラー3を嵌め込んで取り付けることにより、フレネルミラー3を、表示板ベース2の上下左右のいずれかに偏って配置した仕様にすることもできる。本発明において、表示板ベース2にフレネルミラー3を取り付けるには、両面テープ8や単なる嵌合に限らず、接着剤やネジ等の他の手段を用いることができる。
【0025】
表示板ベース2の表面には、フレネルミラー3の外側周辺(この実施形態ではフレネルミラー3の上側周辺)に特定の表示9が示されている。特定の表示9の配置は、フレネルミラー3に対して上下左右のいずれの側でもよいが、特定の表示9に対応する方向と同じ方向側或いはフレネルミラー3の上側周辺、下側周辺に配置するのがよい。
【0026】
尚、平面状の透明プラスチック板4の裏面の全範囲または一部の範囲に、多数の環状傾斜溝5を同心円状に形成し、この裏面に反射膜6を積層することによりフレネルミラー3を設け、この透明プラスチック板4の表面に特定の表示9を配置して、本発明の表示板1にすることもできる。即ち、透明プラスチック板4と表示板ベース2とを兼用することで、フレネルミラー3が取り付けられた表示板ベース2を構成することもできる。
【0027】
特定の表示9とは、特定の場所、特定の物、特定の方向の状態等を示す表示である。また、特定の表示9に対応する方向とは、特定の表示9が示す特定の場所、特定の物、特定の状態等が存在している方向である。
【0028】
特定の表示9は、特定の表示部9aだけで構成することもでき、特定の表示9に対応する方向を示す表示部9b(以下、方向表示部9bという)を加えて構成することもできる。特定の場所を表示する特定の表示部9aとしては、「トイレ」、「会議室」、「受付」、「会計レジ」、「食品売り場」等を例示できる。特定の物を示す特定の表示部9aとしては、「消火器」、「非常ボタン」、「ごみ箱」、「電話」等を例示できる。特定の方向の状態等を示す特定の表示部9aとしては、「危険」、「注意」、「工事中」、「養生中」、「関係者以外立ち入り禁止」等を例示できる。
【0029】
方向表示部9bとは、例えば、「右」、「左」、「上」、「下」、「頭上」、「足元」、「後方」、「ココ」、「矢印(←、→、↑、↓)」等である。
【0030】
人Hがフレネルミラー3に対向した位置でフレネルミラー3を見た際には、フレネルミラー3の上下左右の全方向の周辺領域を見ることができる。したがって、図1に例示した表示板1(フレネルミラー3)に人Hが対向した際には、その人Hは、特定の表示9に対応する方向(ここでは右側)がフレネルミラー3によって見えるようになっている。
【0031】
例えば、図5に示すように、通路11と通路11とが交差するT字通路の突き当たりの壁面Wに表示板1が設置され、特定の表示部9aとして対象物10の名称(例えば、「消火器」)が記載されていると、表示板1(フレネルミラー3)に対向した人Hは、T字交差点まで移動しなくても、特定の表示9に対応する方向をフレネルミラー3によって見ることができる。即ち、その位置で表示板1を見るだけで(特定の表示9とともにフレネルミラー3を見るだけ)で、特定の表示9に対応する方向に存在している対象物10(ここでは、消火器)を把握することができる。尚、表示板1は、両面テープ、接着剤、フック掛け、ネジ等の適当な手段によって壁面Wに取り付けられる。
【0032】
図1の表示板1には、特定の表示部9aに加えて、方向表示部9bとして右矢印(→)が表記されているため、この方向に対する意識が喚起されて、この方向の状況をより確実に把握し易くなる。方向表示部9bは矢印ではなく、「右側」等の表記にすることもできるが、矢印を採用すると、この方向が一見して分かるので、この方向の状況を一段と把握し易くなる。対象物10を確認するために無駄な移動をすることもないので、不用意に人や物に衝突する危険を回避することができる。特に、T字通路の突き当たりでは、死角領域があって危険であるが、このように表示板1を設置することにより、死角領域の状況が把握できる。
【0033】
別の例として、図5に記載された対象物10がトイレである場合は、特定の表示9(特定の表示部9a)として「トイレ」と表記し、より好ましくは、図1のように方向表示部9bも表記する。この場合、表示板1(フレネルミラー3)に対向した人Hは、T字交差点まで移動しなくても、その位置で表示板1を見るだけで、特定の表示9に対応する方向に存在している対象物10(トイレ)を把握することができる。ここで、トイレが清掃中であったり混雑していれば、事前にそれが把握できるので、無駄な移動することなく、別の場所のトイレに向かうことができる。このように、表示板1によって適切な誘導が行なわれて混雑緩和にも有益である。
【0034】
別の例として、通路11の天井を工事している場合や雨漏りしている場合は、その近辺の壁面に表示板1を設置して、特定の表示9として、方向表示部9bと特定の表示部9aを組み合わせて「上方注意」、「頭上注意」等を表示する。これにより、通路11を通行する人Hは、表示板1を見るだけで特定の表示9に対応する方向の状態を把握することができる。即ち、上方に顔を向けたり、視線を移す必要がないので不用意な衝突等を回避することができる。
【0035】
図6に例示するように、扉12の表面に表示板1を設置することもできる。この場合は、例えば、特定の表示9(特定の表示部9a)として「関係者以外立ち入り禁止」と表記する。方向表示部9bとして「後方注意」等を追加することもできる。これにより、扉12を開ける際に、自身の後方および周囲の状況を把握することが可能になるので、周囲を見渡さなくても不審者の侵入を防止することが可能になる。
【0036】
表示板ベース2の表面には図7に例示するように、複数の特定の表示9を表示することもできる。この表示板1を建物のロビーの壁面W等に設置すれば、表示板1によって適切な誘導を行なうことが可能になる。
【0037】
表示板1は上記した場所に限らず、屋内外の壁面、柱など、人目に付く適切な場所に設置することができ、表示板ベース2の表面には必要とされる様々な特定の表示9が表示される。
【符号の説明】
【0038】
1 ミラー組込み表示板
2 表示板ベース
2a 嵌合凹部
2b 嵌合穴部
3 フレネルミラー
4 透明プラスチック板
5 環状傾斜溝
6 反射膜
7 保護層
8 両面テープ
9 特定の表示
9a 特定の表示部
9b 方向表示部
10 対象物
11 通路
12 扉
W 壁面
H 人

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面状の透明プラスチック板の裏面に、多数の環状傾斜溝が同心円状に形成されるとともに、この裏面に反射膜が積層されたフレネルミラーと、このフレネルミラーが取り付けられた表示板ベースと、この表示板ベースの表面に表示された特定の表示とを有し、このフレネルミラーに対向した際に、前記特定の表示に対応する方向がフレネルミラーによって見えるようにしたミラー組込み表示板。
【請求項2】
前記特定の表示が、この特定の表示に対応する方向を示す表示部を有する請求項1に記載のミラー組込み表示板。
【請求項3】
前記特定の表示に対応する方向を示す表示部が矢印である請求項2に記載のミラー組込み表示板。
【請求項4】
前記フレネルミラーの表面と表示板ベースの表面とが同じレベルである請求項1〜3のいずれかに記載のミラー組込み表示板。
【請求項5】
T字通路の突き当たりの壁面に設置される請求項1〜4のいずれかに記載のミラー組込み表示板。
【請求項6】
扉の表面に設置される請求項1〜4のいずれかに記載のミラー組込み表示板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−209342(P2011−209342A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74121(P2010−74121)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(390010526)コミー株式会社 (10)