説明

メイクアップカラーの配色提示方法およびそれに用いる装置

【課題】顧客の肌色に適したメイクアップカラーの配色を、簡単かつ的確な手法で顧客に提示することのできる方法およびそれに用いる装置を提供する。
【解決手段】メイクアップ対象者の特定部位の肌色のRGB値(赤色系成分の数値:R値、緑色系成分の数値:G値、青色系成分の数値:B値)を、画像情報処理手段1を用いて測定し、得られたR値、G値、B値の少なくとも一つの値を、特定の変換式にしたがって変換し、変換後のRGB値に対応する色見本を、上記メイクアップ対象者の肌色に適したメイクアップカラーとして提示するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧品販売員や美容員等が顧客に対して行うメイクアップカラーの配色提示方法およびそれに用いる装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ファンデーション、リップカラー、アイカラー等のメイクアップ化粧品は、化粧品の種類ごとに、それぞれ豊富な色が用意されており、顧客は、自分の好みで、あるいは化粧品販売員や美容員によるアドバイスを受けて、自分に適した色のメイクアップ化粧品を選択することができるようになっている。
【0003】
しかしながら、メイクアップ化粧品の色(本願では、これを「メイクアップカラー」という)の選択は、顔全体の印象を左右するため、自分の肌の色を考慮した上で、慎重に選択する必要がある。すなわち、メイクアップによって、自分の顔に、どのようなイメージをもたせたいかを明確に持っていても、ベースとなる肌色との組み合わせによって、色の効果に大きな違いがあるため、肌色との相性を充分に理解した上で、メイクアップカラーを選択しなければ、イメージ通りのメイクアップを実現することはできず、かえって印象が悪くなるおそれがあるからである。しかも、ベースとなる肌色は、通常、素肌の上に重ねられたファンデーションの色であり、その色は千差万別である。
【0004】
そこで、化粧品販売員等が顧客に対し、店頭で効率よくメイクアップカラーに関しアドバイスを与えるための手法として、例えば、予め肌の色とメイクアップカラーの関係をデータ化しておき、店頭で顧客の肌の色を測定した後、その肌色に似合うメイクアップカラーを選択して推奨する方法がいくつか提案されている(特許文献1、2等参照)。
【特許文献1】特許第2872912号公報
【特許文献2】特許第3390558号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1の方法は、肌色とメイクアップカラーの明度差のみを指標とするため、「調和する」、「調和しない」の大まかな判断をするには好都合であるものの、色相や彩度の異なる様々な色味のものを、統一感をもたせて組み合わせるには不向きである。
【0006】
また、上記特許文献2の方法は、リップカラーをアドバイスするのに、肌色とリップカラーとの色相差、明度差、彩度差を指標とするものであるが、「色相」、「明度」、「彩度」は、互いに独立する色の3属性であるため、これらを統一した指標として取り扱うことはできず、3つの指標に順次照らして判定するという手順が必要となり煩雑であるという問題がある。また、判定のためのデータも、上記3要素のそれぞれについて別個に作成しなければならず、多大な作業を要するという問題がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、顧客の肌色に適したメイクアップカラーの配色を、簡単かつ的確な手法で顧客に提示することのできる方法およびそれに用いる装置の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明は、メイクアップ対象者の特定部位の肌色のRGB値(赤色系成分の数値:R値、緑色系成分の数値:G値、青色系成分の数値:B値)を、画像情報処理手段を用いて測定し、得られたR値、G値、B値の少なくとも一つの値を、特定の変換式にしたがって変換し、変換後のRGB値に対応する色見本を、上記メイクアップ対象者の肌色に適したメイクアップカラーとして提示するようにしたメイクアップカラーの配色提示方法を第1の要旨とする。
【0009】
また、本発明は、そのなかでも、特に、下記の工程(1)〜(3)を有するメイクアップカラーの配色提示方法を第2の要旨とする。
(1)メイクアップ対象者の特定部位の肌色のRGB値を、画像情報処理手段を用いて測定する工程。
(2)得られたRGB値から(B/R)の値を算出し、この値が、予め設定された基準値から上になる場合、撮像された肌色をピンク系として分類し、上記基準値から下になる場合、撮像された肌色をイエロー系として分類する工程。
(3)上記肌色がピンク系に分類された場合、上記肌色のRGB値のうち、G値、B値をそれぞれ1/2としたRGB値となる色を、その肌色に適した基本口紅色として提示し、上記肌色がイエロー系に分類された場合、上記肌色のRGB値のうち、G値を1/2としたRGB値となる色を、その肌色に適した基本口紅色として提示する工程。
【0010】
さらに、本発明は、そのなかでも、特に、上記工程(1)〜(3)を有し、さらに、下記の工程(4)を有するメイクアップカラーの配色提示方法を第3の要旨とする。
(4)上記基本口紅色のRGB値の、R値、G値、B値をそれぞれ1/2にした色と、同じく上記基本口紅色のRGB値の、R値、G値、B値をそれぞれ1/3にした色とを、その肌色に適したポイントメイクの色として提示する工程。
【0011】
そして、本発明は、そのなかでも、特に、上記工程(4)において、その肌色に適したポイントメイクの色として、さらに、上記肌色に適した基本口紅色の補色を提示するようにしたメイクアップカラーの配色提示方法を第4の要旨とする。
【0012】
また、本発明は、前記第2の要旨である発明のなかでも、特に、上記工程(1)〜(3)を有し、さらに、上記肌色がピンク系に分類された場合、下記の工程(5)を有し、上記肌色がイエロー系に分類された場合、下記の工程(6)を有するメイクアップカラーの配色提示方法を第5の要旨とする。
(5)上記ピンク系に分類された肌色のRGB値の、R値、G値、B値をそれぞれ1/2にした色と、同じく上記肌色のRGB値の、R値、G値、B値をそれぞれ1/3にした色と、同じく上記肌色のRGB値の、G値をB値と同値にした色とを、その肌色に適したポイントメイクの色として提示する工程。
(6)上記イエロー系に分類された肌色のRGB値の、R値、G値、B値をそれぞれ1/2にした色と、同じく上記肌色のRGB値の、R値、G値、B値をそれぞれ1/3にした色と、同じく上記肌色のRGB値の、G値をR値と同値にした色とを、その肌色に適したポイントメイクの色として提示する工程。
【0013】
そして、本発明は、そのなかでも、特に、上記工程(5)および工程(6)の各工程において、その肌色に適したポイントメイクの色として、さらに、上記肌色の補色を提示するようにしたメイクアップカラーの配色提示方法を第6の要旨とする。
【0014】
また、本発明は、前記第1の要旨であるメイクアップカラーの配色提示方法に用いられる装置であって、メイクアップ対象者の特定部位の肌色を撮像し、その肌色を赤色系成分と緑色系成分と青色系成分の3成分に分けてRGB値(赤色系成分の数値:R値、緑色系成分の数値:G値、青色系成分の数値:B値)として出力する画像情報処理手段と、上記出力されたRGB値を処理するための情報処理手段と、これに接続される画面表示手段とを備え、上記情報処理手段には、上記RGB値の、R値、G値、B値の少なくとも一つの値を、特定の変換式にしたがって変換することにより、メイクアップ対象者の肌色に適したメイクアップカラーのRGB値を導出する変換処理手段と、RGB値ごとに、そのRGB値に対応する色見本を取り出すことのできる色見本データとが設けられており、上記変換処理手段によって導出されたRGB値に対応する色見本が、上記画面表示手段に表示されるようになっているメイクアップカラーの配色提示装置を第7の要旨とする。
【0015】
さらに、本発明は、そのなかでも、特に、上記変換処理手段として、上記画像情報処理手段から出力された(B/R)の値を算出し、この値を、予め設定された基準値と対比して、基準値から上になる肌色をピンク系、基準値から下になる肌色をイエロー系として分類する肌色分類手段と、上記肌色分類手段によって肌色がピンク系に分類された場合、上記肌色のRGB値のうち、G値、B値をそれぞれ1/2としたRGB値を、その肌色に適した基本口紅色のRGB値として導出し、上記肌色がイエロー系に分類された場合、上記肌色のRGB値のうち、G値を1/2としたRGB値となる色を、その肌色に適した基本口紅色のRGB値として導出するよう設定された口紅色変換手段とが設けられており、上記口紅色変換手段によって導出された基本口紅色のRGB値に対応する色見本が、メイクアップ対象者の肌色に適した口紅色として、上記画面表示手段の画面上に表示されるようになっているメイクアップカラーの配色提示装置を第8の要旨とする。
【0016】
そして、本発明は、そのなかでも、特に、上記変換手段として、上記肌色分類手段および口紅色変換手段とともに、上記口紅色変換手段によって導出された基本口紅色のRGB値の、R値、G値、B値をそれぞれ1/2にしたRGB値と、同じく上記基本口紅色のRGB値の、R値、G値、B値をそれぞれ1/3にしたRGB値とを、その肌色に適したポイントメイクの色のRGB値として導出するよう設定されたポイントメイク色変換手段が設けられており、上記ポイントメイク色変換手段によって導出されたポイントメイクの色のRGB値に対応する色見本が、メイクアップ対象者の肌色に適したポイントメイクの色として、上記画面表示手段の画面上に表示されるようになっているメイクアップカラーの配色提示装置を第9の要旨とする。
【0017】
また、本発明は、そのなかでも、特に、上記肌色分類手段、口紅色変換手段およびポイントメイク色変換手段とともに、上記口紅色変換手段によって導出された基本口紅色のRGB値から、その補色となる色のRGB値を導出するよう設定された補色変換手段が設けられており、上記補色変換手段によって導出された、基本口紅色の補色のRGB値に対応する色見本が、メイクアップ対象者の肌色に適したポイントメイクの色として、上記画面表示手段の画面上に表示されるようになっているメイクアップカラーの配色提示装置を第10の要旨とする。
【0018】
さらに、本発明は、前記第8の要旨である発明のなかでも、特に、上記肌色分類手段および口紅色変換手段とともに、上記肌色分類手段によって肌色がピンク系に分類された場合、上記肌色のRGB値の、R値、G値、B値をそれぞれ1/2にしたRGB値と、同じく上記肌色のRGB値の、R値、G値、B値をそれぞれ1/3にしたRGB値と、同じく上記肌色のRGB値の、G値をB値と同値にしたRGB値とを、その肌色に適したポイントメイクの色のRGB値として導出し、上記肌色分類手段によって肌色がイエロー系に分類された場合、上記肌色のRGB値の、R値、G値、B値をそれぞれ1/2にしたRGB値と、同じく上記肌色のRGB値の、R値、G値、B値をそれぞれ1/3にしたRGB値と、同じく上記肌色のRGB値の、G値をR値と同値にしたRGB値とを、その肌色に適したポイントメイクの色のRGB値として導出するよう設定されたポイントメイク色変換手段が設けられており、上記ポイントメイク色変換手段によって導出されたポイントメイクの色のRGB値に対応する色見本が、メイクアップ対象者の肌色に適したポイントメイクの色として、上記画面表示手段の画面上に表示されるようになっているメイクアップカラーの配色提示装置を第11の要旨とする。
【0019】
また、本発明は、そのなかでも、特に、上記肌色分類手段、口紅色変換手段、ポイントメイク色変換手段とともに、上記画像情報表示手段から出力された肌色のRGB値から、その補色となる色のRGB値を導出するよう設定された補色変換手段が設けられており、上記補色変換手段によって導出された、その肌色の補色のRGB値に対応する色見本が、メイクアップ対象者の肌色に適したポイントメイクの色として、上記画面表示手段の画面上に表示されるようになっているメイクアップカラーの配色提示装置を第12の要旨とする。
【発明の効果】
【0020】
すなわち、本発明のメイクアップカラーの配色提示方法によれば、化粧品販売員等が、メイクアップ化粧品の購入やメイクアップカウンセリング等を希望する顧客に対し、その顧客の肌色のRGB値を測定するだけで、そのRGB値を基に、その肌色に適した、一連のメイクアップカラーの配色を提示することができるため、顧客の肌色に適したメイクアップカラーを、即座に選択することができる。しかも、上記提示されるメイクアップカラーは、顧客の肌色のRGB値をベースに、そのR値、G値、B値の少なくとも一つを、特定の変換式にしたがって変換して得られる色であり、顧客の肌色と一元的に関連づけられた色であるため、互いの調和性が高く、統一された色調の組み合わせとなる。
【0021】
なお、本発明において、顧客(メイクアップ対象者)に提示することのできるメイクアップカラーは、口紅色だけでなく、アイシャドウ、チークカラー等のポイントメイクの色についても、RGB値を適宜変換させることにより、簡単に、好ましい色群を提示することができる。
【0022】
そして、本発明のメイクアップカラーの配色提示装置によれば、上記メイクアップカラーの配色提示方法を、簡単かつ効率的に実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
つぎに、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0024】
図1は、本発明のメイクアップカラーの配色提示装置の一実施の形態を示している。この装置は、メイクアップ化粧品の購入やメイクアップカウンセリングを希望する顧客に、その顧客の肌の色に適したメイクアップカラーの配色を提示するために、店頭に設置されるもので、顧客の肌色のRGB値を測定するための画像情報処理手段1と、パーソナルコンピュータ(以下「PC」という)2とを備えている。
【0025】
上記画像情報処理手段1は、顧客の特定の部位(例えば頬、額等)の肌の色を画像として取り込み、その画像の色を、RGB値(赤色系成分の数値:R値、緑色系成分の数値:G値、青色系成分の数値:B値)に分解して数値化するためのもので、例えば、画像取り込み専用の撮像ヘッドが好適に用いられる。
【0026】
そして、上記画像情報処理手段1は、PC2の本体部3に接続されており、測定動作の指示、測定結果等が、上記PC2に接続されたカラーモニター4の画面4aに表示されるようになっている。5は本体部3に接続されるキーボード等の入力手段である。
【0027】
一方、上記PC2の本体部3には、図2に示すように、上記画像情報処理手段1から出力されたRGB値を処理するための情報処理手段として、上記RGB値に基づき、その肌色がピンク系かイエロー系かを分類する肌色分類手段7と、上記肌色のRGB値を変換して、その肌色に適した口紅色のRGB値を導出する口紅色変換手段8と、上記口紅色のRGB値に基づき、その肌色に適したポイントメイクの色のRGB値を導出するポイントメイク色変換手段9と、同じく上記肌色のRGB値に基づき、その肌色に適したポイントメイクの色のRGB値を導出するポイントメイク色変換手段10とが設けられている。
【0028】
また、上記肌色に適した口紅色のRGB値を変換して、その口紅色の補色のRGB値を導出する補色変換手段11と、上記肌色のRGB値を変換して、その肌色の補色のRGB値を導出する補色変換手段12と、RGB値ごとに、そのRGB値に対応する色見本を取り出すことのできる色見本データ13とが設けられている。
【0029】
より詳しく説明すると、上記情報処理手段により、下記の手順で、顧客の肌の色のRGB値が処理されるようになっている(図3参照)。すなわち、まず、上記画像情報処理手段1により、顧客の特定の部位の肌が撮像され、その画像から、その肌色のRGB値が測定される。この肌色を、以下「肌色A」という。そして、そのRGB値が、上記肌色分類手段7に入力されると、そのR値とB値から、(B/R)の値が算出され、その値が、予め記憶された基準値(この例では0.7)と対比されて、0.7以上である場合、肌色Aはピンク系、0.7未満である場合、上記肌色Aはイエロー系として分類されるようになっている。
【0030】
なお、上記基準値の設定は、日本人の成人女性1000人のカラー写真の肌の色のRGB値を、上記画像情報処理手段1で測定し、その(B/R)の値を算出するとともに、ピンク系に見えるかイエロー系に見えるかを評価して、その境界線となる値を決定したものである。
【0031】
そして、上記口紅色変換手段8では、上記肌色AのRGB値を用い、肌色Aがピンク系に分類された場合と、肌色Aがイエロー系に分類された場合で異なる変換式を適用して、肌色Aに適した口紅色のRGB値が導出されるようになっている。すなわち、ピンク系の肌色Aに対しては、上記肌色AのRGB値のうち、G値、B値をそれぞれ1/2としたRGB値が、その肌色Aに適した口紅色のRGB値として導出され、イエロー系の肌色Aに対しては、上記肌色AのRGB値のうち、G値を1/2としたRGB値が、その肌色Aに適した口紅色のRGB値として導出されるようになっている。なお、上記口紅色を、以下「基本口紅色B」という。
【0032】
また、上記ピンク系の肌色に対するRGB値の変換式と、イエロー系の肌色に対するRGB値の変換式は、前記肌色分類の基準値を決定する場合と同様、日本人の成人女性1000人のカラー写真の肌の色と口紅の色のRGB値を測定し、互いの色の似合う、似合わないの評価と、各RGB値との関係を解析することにより、決定したものである。さらに、以下に述べる、各種のRGB値の変換式についても、上記の手法に準じて決定したものである。
【0033】
そして、上記ポイントメイク色変換手段9では、肌色Aがピンク系、イエロー系にかかわらず、上記基本口紅色BのRGB値の、R値、G値、B値をそれぞれ1/2にしたRGB値と、同じく上記基本口紅色BのRGB値の、R値、G値、B値をそれぞれ1/3にしたRGB値とが、その肌色に適したポイントメイクの色のRGB値として導出されるようになっている。
【0034】
さらに、上記ポイントメイク色変換手段10では、ピンク系の肌色Aに対しては、上記肌色AのRGB値の、R値、G値、B値をそれぞれ1/2にしたRGB値と、同じく上記肌色AのRGB値の、R値、G値、B値をそれぞれ1/3にしたRGB値と、上記肌色AのRGB値の、G値をB値と同値にしたRGB値とが、その肌色Aに適したポイントメイクの色のRGB値として導出されるようになっている。また、イエロー系の肌色Aに対しては、上記肌色AのRGB値の、R値、G値、B値をそれぞれ1/2にしたRGB値と、同じく上記肌色AのRGB値の、R値、G値、B値をそれぞれ1/3にしたRGB値と、上記肌色AのRGB値の、G値をR値と同値にしたRGB値とが、その肌色Aに適したポイントメイクの色のRGB値として導出されるようになっている。
【0035】
そして、上記基本口紅色Bの補色となる色B′のRGB値が、補色変換手段11において導出され、上記肌色Aの補色となる色A′のRGB値が、補色変換手段12において導出されるようになっている。
【0036】
そして、これらの変換されたRGB値に対応する色見本が、色見本データ13から取り出されて、PC2に接続されたカラーモニター4の画面4aに、適宜表示されるようになっている。
【0037】
上記装置を用い、例えばつぎのようにして、化粧品販売員(美容員、美容カウンセラー等を含む)が、来店した顧客に対し、その顧客の肌の色に適したメイクアップカラーの配色を提示して、好ましい色を組み合わせたメイクアップ化粧品の購入や、メイクアップ方法のカウンセリングを行うことができる。
【0038】
まず、PC2のカラーモニター4の画面4aに表示されるメニュー画面(図示せず)から、「測定」の項目を選択し、画面4aに、画像情報処理手段1の操作手順を表示させる。そして、この操作手順に従い、画像情報処理手段1を用いて顧客の特定部位の肌の色を撮像することにより、そのRGB値を測定する。測定されたRGB値は、自動的にPC2の本体部3に出力され、前記肌色分類手段7(図2参照)により、肌色Aがピンク系かイエロー系かの分類がなされる。
【0039】
この分類結果は、画面4aに、図4に示すように表示される。すなわち、画面4aの左上の四角枠20内に、肌色AのRGB値のうち、R値とB値を用いて算出された、(B/R)の値が表示される。ただし、数値は、×100(%)の形で、少数第1位までの数値として表示されるようになっている。そして、その下に、画面左右方向に延びる色見本帯21が表示されており、その中央に、(B/R)×100の値が70%の肌色が示されている。そして、左にいくほどその値が小さくなって黄味が強くなる肌色が示され、右にいくほどその値が大きくなって赤味が強くなる肌色が示されている(図において、目盛りは省略)。そして、この色見本帯21のどの位置に、上記測定された肌色Aの(B/R)×100の値が位置するかが、丸で囲われた「A」22で示されており、顧客は、自分の肌の色が、ピンク系とイエロー系のどちらに、どの程度の偏りで分類されるかを、一目で把握することができる。
【0040】
つぎに、画面4aの右下に設けられた「メニューへ」の見出し23をクリックしてメニュー画面に戻り、「あなたに似合う口紅」という項目を選択すると、図5に示すように、前記口紅色変換手段8(図2参照)により、特定の変換式によって算出されたRGB値に対応する色見本が、基本口紅色Bとして、四角枠24に表示される。また、この画面4aには、前記肌色Aの色見本が、四角枠25に表示される。
【0041】
さらに、この画面4aには、上記基本口紅色Bの濃淡を変えた3種類の色B1 、B2 、B3 の色見本が、バリエーション色として、四角枠26〜28に表示されている。
【0042】
したがって、顧客は、この画面4aに表示された、基本口紅色Bとバリエーション色B1 、B2 、B3 の色見本を見て、自分の肌の色に適した口紅の色を、一目で知ることができる。そして、その中から最適な色を選択して、今後の口紅購入やメイクアップに役立てることができる。
【0043】
なお、この画面4aの左上には、「口紅」と「ポイントメイク(アイシャドウ・チーク等)」の見出し29、30が表示されており、上記「ポイントメイク…」の見出し30をクリックすると、図6に示すように画面4aの表示が変わるようになっている。もちろん、図5の画面4aにおいて、右下の「メニューへ」の見出し23をクリックしてメニュー画面に戻り、「あなたに似合うポイントメイク」という項目を選択することにより、図6の画面4aに進むこともできる。
【0044】
図6において、画面4aの左上には、前記「口紅」を示す画面4aと同様、「口紅」と「ポイントメイク(アイシャドウ・チーク等)」の見出し29、30が表示されており、上記「口紅」の見出し30をクリックすると、前記図5の画面4aに戻るようになっている。また、右下の「メニューへ」の見出し23をクリックすると、メニュー画面に戻るようになっている。
【0045】
上記図6の画面4aの最上段には、前記ポイントメイク色変換手段9、10、補色変換手段11、12により、特定の変換式によって算出された各RGB値に対応する色見本群が、列状に示されるようになっている。すなわち、まず、最上段中央の四角枠31には、前記基本口紅色Bの補色B′の色見本が表示され、その右の四角枠32には、基本口紅色BのRGB値を1/2にした色B4 の色見本が表示され、その右隣の四角枠33には、基本口紅色BのRGB値を1/3にした色B5 の色見本が表示されている。
【0046】
また、最上段左端の四角枠34には、前記肌色Aの補色A′の色見本が表示され、その右隣の四角枠35には、前記肌色AのRGB値を1/2にした色A1 の色見本が表示され、その右隣の四角枠36には、前記肌色AのRGB値を1/3にした色A2 の色見本が表示されている。そして、右端の四角枠36には、前記肌色Aがピンク系の場合、肌色AのG値をB値と同値にした色A3 の色見本が表示され、前記肌色Aがイエロー系の場合、肌色AのG値をR値と同値にした色A3 の色見本が表示されるようになっている。
【0047】
そして、その下には、最上段7色の各色の濃淡を変化させたバリエーション色の色見本が、上下3段に並んだ四角枠37に表示されている。
【0048】
また、最下段の各四角枠38には、上記最上段7色の各色の補色となる色(左から順に、A′の補色、すなわち肌色A、A1 ′、A2 ′、B′の補色、すなわちB、B4 ′、B5 ′、A3 ′)の色見本が表示されている。
【0049】
したがって、顧客は、この画面4aに表示された、A′、A1 、A2 等の色見本を見て、自分の肌の色に適したポイントメイクの色を一目で知ることができる。そして、その中から最適な色を選択して、今後のアイシャドウやチークの購入、あるいはメイクアップに役立てることができる。
【0050】
このように、顧客は、自分の肌に、異なる色のメイクアップ化粧品をつぎつぎと塗布して肌に重ねた色の感じを試してみなくても、PC2の画面4a上で、一括して、自分の肌に適した色群を知ることができるため、短時間で、簡単に、今後のメイクアップ化粧品の購入やメイクアップカウンセリングに役立つ色情報を得ることができる。そして、このようにして提示される色群は、ベースとなる肌色AのRGB値のR値、G値、B値の少なくとも一つを特定の変換式にしたがって変換させる、という手法により、系統立てて導出されているため、互いの色調に調和がとれており、バランスのよい印象のメイクアップを得ることができる。
【0051】
なお、上記の例では、画像情報処理手段1として専用の撮像ヘッドを用い、これをPC2と接続して操作するようにしたが、画像情報処理手段1を単独で操作して顧客の肌色のRGB値を測定し、その値から、化粧品販売員がB/R値を算出してPC2に入力するようにしても差し支えない。そして、上記画像情報処理手段1は、上記撮像ヘッドに限らず、市販のデジタルビデオカメラやデジタルカメラ等を利用することができる。また、顧客の肌の実像を、そのまま撮像して取り込む以外に、撮影されたカラー映像やカラー写真から、その肌の色のRGB値を得るようにしてもよい。さらに、PC2にスキャナ等を接続し、カラー写真を取り込んで、その肌の色のRGB値を得るようにしてもよい。
【0052】
また、上記の例では、肌色に適したポイントメイク色を導出するために、基本口紅色BのRGB値を変換するとともに、肌色AのRGB値を変換するようにしたが、これらの変換は、必ずしも両方を行う必要はなく、基本口紅色Bをベースにした変換と、肌色Aをベースにした変換の、いずれか一方のみを行うようにしてもよい。そして、上記の例で用いた、各RGB値の変換式は、必ずしも上記の例に限るものではなく、必要に応じて変更することができる。
【0053】
さらに、基本口紅色Bの補色B′や、肌色Aの補色A′を、肌色Aに適したポイントメイク色として導出することも、必ずしも必要ではなく、任意である。また、図5や図6において、好適な口紅色、好適なポイントメイク色として、濃淡を変えたバリエーション色を導出することも、任意である。
【0054】
なお、上記の例において、画像情報処理手段1を用いて肌色を測定する部位は、特に限定するものではないが、通常、頬なら頬、額なら額、と測定する部位を決めておくことが好ましい。
【0055】
また、本発明は、肌の色を基準にして、メイクアップカラーを提示するものであるが、メイクアップでつくりたい印象が、年代によって微妙に異なってくるため、例えば10代、20代、30代、40代、50代、60代以上、といった年代別に、変換式に補正値を加えることにより、顧客の肌色に適し、しかもその年代に適した色調を提示するようにしてもよい。
【0056】
同様に、メイクアップでつくりたい印象が、季節によっても微妙に異なってくるため、例えば、春、夏、秋、冬の季節別に、変換式に補正値を加えることにより、顧客の肌色に適し、しかもその季節に適した色調を提示するようにしてもよい。
【0057】
さらに、上記の例では、PC2の画面4aを利用して、色見本を提示するようにしているが、例えば、予め、上記PC2の画面4aの表示と同様に構成された冊子やカード等の表示物を用意しておき、これをめくって、該当する色見本を順次提示するようにしてもよい。ただし、その場合も、RGB値を測定することは必要であり、画像情報処理手段1を用いて肌のRGB値を求めることが必要である。
【0058】
そして、測定されたR値とB値から、B/R値を算出した上で、例えば図7に示すように、その値の大小によって複数種類用意された、典型的な肌色の色見本40を提示し、その値に近似する肌色を特定する。そして、その肌色に応じて、その肌色ごとにまとめられた、その肌色に適した口紅色の色見本群や、その肌色に適したポイントメイク色の色見本群を提示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施例に用いる装置の説明図である。
【図2】上記装置のPC本体部内の模式的なブロック図である。
【図3】上記情報処理手段を用いた情報処理のフロー図である。
【図4】上記装置におけるPC画面の構成の説明図である。
【図5】上記装置におけるPC画面の構成の説明図である。
【図6】上記装置におけるPC画面の構成の説明図である。
【図7】本発明の他の実施例における色見本の提示形態の説明図である。
【符号の説明】
【0060】
1 画像情報処理手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メイクアップ対象者の特定部位の肌色のRGB値(赤色系成分の数値:R値、緑色系成分の数値:G値、青色系成分の数値:B値)を、画像情報処理手段を用いて測定し、得られたR値、G値、B値の少なくとも一つの値を、特定の変換式にしたがって変換し、変換後のRGB値に対応する色見本を、上記メイクアップ対象者の肌色に適したメイクアップカラーとして提示するようにしたことを特徴とするメイクアップカラーの配色提示方法。
【請求項2】
下記の工程(1)〜(3)を有する請求項1記載のメイクアップカラーの配色提示方法。
(1)メイクアップ対象者の特定部位の肌色のRGB値を、画像情報処理手段を用いて測定する工程。
(2)得られたRGB値から(B/R)の値を算出し、この値が、予め設定された基準値から上になる場合、撮像された肌色をピンク系として分類し、上記基準値から下になる場合、撮像された肌色をイエロー系として分類する工程。
(3)上記肌色がピンク系に分類された場合、上記肌色のRGB値のうち、G値、B値をそれぞれ1/2としたRGB値となる色を、その肌色に適した基本口紅色として提示し、上記肌色がイエロー系に分類された場合、上記肌色のRGB値のうち、G値を1/2としたRGB値となる色を、その肌色に適した基本口紅色として提示する工程。
【請求項3】
上記工程(1)〜(3)を有し、さらに、下記の工程(4)を有する請求項2記載のメイクアップカラーの配色提示方法。
(4)上記基本口紅色のRGB値の、R値、G値、B値をそれぞれ1/2にした色と、同じく上記基本口紅色のRGB値の、R値、G値、B値をそれぞれ1/3にした色とを、その肌色に適したポイントメイクの色として提示する工程。
【請求項4】
上記工程(4)において、その肌色に適したポイントメイクの色として、さらに、上記肌色に適した基本口紅色の補色を提示するようにした請求項3記載のメイクアップカラーの配色提示方法。
【請求項5】
上記工程(1)〜(3)を有し、さらに、上記肌色がピンク系に分類された場合、下記の工程(5)を有し、上記肌色がイエロー系に分類された場合、下記の工程(6)を有する請求項2記載のメイクアップカラーの配色提示方法。
(5)上記ピンク系に分類された肌色のRGB値の、R値、G値、B値をそれぞれ1/2にした色と、同じく上記肌色のRGB値の、R値、G値、B値をそれぞれ1/3にした色と、同じく上記肌色のRGB値の、G値をB値と同値にした色とを、その肌色に適したポイントメイクの色として提示する工程。
(6)上記イエロー系に分類された肌色のRGB値の、R値、G値、B値をそれぞれ1/2にした色と、同じく上記肌色のRGB値の、R値、G値、B値をそれぞれ1/3にした色と、同じく上記肌色のRGB値の、G値をR値と同値にした色とを、その肌色に適したポイントメイクの色として提示する工程。
【請求項6】
上記工程(5)および工程(6)の各工程において、その肌色に適したポイントメイクの色として、さらに、上記肌色の補色を提示するようにした請求項5記載のメイクアップカラーの配色提示方法。
【請求項7】
請求項1記載のメイクアップカラーの配色提示方法に用いられる装置であって、メイクアップ対象者の特定部位の肌色を撮像し、その肌色を赤色系成分と緑色系成分と青色系成分の3成分に分けてRGB値(赤色系成分の数値:R値、緑色系成分の数値:G値、青色系成分の数値:B値)として出力する画像情報処理手段と、上記出力されたRGB値を処理するための情報処理手段と、これに接続される画面表示手段とを備え、上記情報処理手段には、上記RGB値の、R値、G値、B値の少なくとも一つの値を、特定の変換式にしたがって変換することにより、メイクアップ対象者の肌色に適したメイクアップカラーのRGB値を導出する変換処理手段と、RGB値ごとに、そのRGB値に対応する色見本を取り出すことのできる色見本データとが設けられており、上記変換処理手段によって導出されたRGB値に対応する色見本が、上記画面表示手段に表示されるようになっていることを特徴とするメイクアップカラーの配色提示装置。
【請求項8】
請求項7記載の変換処理手段として、上記画像情報処理手段から出力された(B/R)の値を算出し、この値を、予め設定された基準値と対比して、基準値から上になる肌色をピンク系、基準値から下になる肌色をイエロー系として分類する肌色分類手段と、上記肌色分類手段によって肌色がピンク系に分類された場合、上記肌色のRGB値のうち、G値、B値をそれぞれ1/2としたRGB値を、その肌色に適した基本口紅色のRGB値として導出し、上記肌色がイエロー系に分類された場合、上記肌色のRGB値のうち、G値を1/2としたRGB値となる色を、その肌色に適した基本口紅色のRGB値として導出するよう設定された口紅色変換手段とが設けられており、上記口紅色変換手段によって導出された基本口紅色のRGB値に対応する色見本が、メイクアップ対象者の肌色に適した口紅色として、上記画面表示手段の画面上に表示されるようになっている請求項7記載のメイクアップカラーの配色提示装置。
【請求項9】
請求項8記載の変換処理手段として、上記肌色分類手段および口紅色変換手段とともに、上記口紅色変換手段によって導出された基本口紅色のRGB値の、R値、G値、B値をそれぞれ1/2にしたRGB値と、同じく上記基本口紅色のRGB値の、R値、G値、B値をそれぞれ1/3にしたRGB値とを、その肌色に適したポイントメイクの色のRGB値として導出するよう設定されたポイントメイク色変換手段が設けられており、上記ポイントメイク色変換手段によって導出されたポイントメイクの色のRGB値に対応する色見本が、メイクアップ対象者の肌色に適したポイントメイクの色として、上記画面表示手段の画面上に表示されるようになっている請求項8記載のメイクアップカラーの配色提示装置。
【請求項10】
請求項9記載の変換処理手段として、上記肌色分類手段、口紅色変換手段およびポイントメイク色変換手段とともに、上記口紅色変換手段によって導出された基本口紅色のRGB値から、その補色となる色のRGB値を導出するよう設定された補色変換手段が設けられており、上記補色変換手段によって導出された、基本口紅色の補色のRGB値に対応する色見本が、メイクアップ対象者の肌色に適したポイントメイクの色として、上記画面表示手段の画面上に表示されるようになっている請求項9記載のメイクアップカラーの配色提示装置。
【請求項11】
請求項8記載の変換処理手段として、上記肌色分類手段および口紅色変換手段とともに、上記肌色分類手段によって肌色がピンク系に分類された場合、上記肌色のRGB値の、R値、G値、B値をそれぞれ1/2にしたRGB値と、同じく上記肌色のRGB値の、R値、G値、B値をそれぞれ1/3にしたRGB値と、同じく上記肌色のRGB値の、G値をB値と同値にしたRGB値とを、その肌色に適したポイントメイクの色のRGB値として導出し、上記肌色分類手段によって肌色がイエロー系に分類された場合、上記肌色のRGB値の、R値、G値、B値をそれぞれ1/2にしたRGB値と、同じく上記肌色のRGB値の、R値、G値、B値をそれぞれ1/3にしたRGB値と、同じく上記肌色のRGB値の、G値をR値と同値にしたRGB値とを、その肌色に適したポイントメイクの色のRGB値として導出するよう設定されたポイントメイク色変換手段とが設けられており、上記ポイントメイク色変換手段によって導出されたポイントメイクの色のRGB値に対応する色見本が、メイクアップ対象者の肌色に適したポイントメイクの色として、上記画面表示手段の画面上に表示されるようになっている請求項8記載のメイクアップカラーの配色提示装置。
【請求項12】
請求項11記載の変換処理手段として、上記肌色分類手段、口紅色変換手段、ポイントメイク色変換手段とともに、上記画像情報表示手段から出力された肌色のRGB値から、その補色となる色のRGB値を導出するよう設定された補色変換手段が設けられており、上記補色変換手段によって導出された、その肌色の補色のRGB値に対応する色見本が、メイクアップ対象者の肌色に適したポイントメイクの色として、上記画面表示手段の画面上に表示されるようになっている請求項11記載のメイクアップカラーの配色提示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−301882(P2008−301882A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−149246(P2007−149246)
【出願日】平成19年6月5日(2007.6.5)
【出願人】(000158781)紀伊産業株式会社 (327)