説明

メガヌクレアーゼ組換えシステム

本発明は、メガヌクレアーゼを用いてゲノム中の特定部位で二本鎖切断を作製し、そうしてこの遺伝子座でゲノム部位とトランスフェクトされたドナー配列との間の相同組換え事象を刺激することにより、ゲノム中の固定部位での特定ヌクレオチド配列の効率的で再現性のある導入を可能にする遺伝子構築物セットに関する。本発明はまた、これら構築物を用いる方法及びキット形態のこれら材料に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲノム中の固定部位での特定ヌクレオチド配列の効率的で再現性のある導入を可能にする遺伝子構築物セットに関する。本発明はまた、これら構築物を用いる方法及びキット形態のこれら材料に関する。
【背景技術】
【0002】
25年以上も前の酵母における最初の遺伝子ターゲティング実験(1,2)以来、相同組換えは、種々の細胞でゲノム配列の挿入、置換又は欠失に用いられてきた(3-5)。しかし、哺乳動物細胞では、標的とされた事象は極めて低い頻度でしか起こらない。相同組換えの頻度は、標的とされた遺伝子座での特異的なDNA二本鎖破断(DSB)によって顕著に増加させることができる(6,7)。このようなDSBは、大きなDNA標的部位(>12bp)を認識する配列特異的エンドヌクレアーゼであるメガヌクレアーゼを用いて作ることができる。これらタンパク質は、全体的なゲノムの完全性に影響することなく、固有の染色体配列を切断することができる。天然メガヌクレアーゼは、真核生物、細菌及び古細菌に見出される広範なクラスのタンパク質であるホーミングエンドヌクレアーゼにより本質的に代表される(8)。I-SceI及びHOホーミングエンドヌクレアーゼに関する初期の研究は、これらタンパク質の切断活性が生細胞中で如何にして相同組換え(HR)事象を開始するかを説明し、染色体DSBの組換え誘導特性を証明した(9,10)。以来、メガヌクレアーゼ誘導組換えが、細菌(11)、哺乳動物細胞(6,7,12-14)、マウス(15)及び植物(16,17)でゲノム操作目的で首尾良く用いられている。
【0003】
遺伝子挿入は、例えば、異種タンパク質の産生のために特定の遺伝子座での目的遺伝子の導入に用いることができる。昨今、治療用組換えタンパク質は、目的遺伝子で安定的にトランスフェクトされたCHO、マウスSP2/0及びNS0細胞又はヒトPerC.6細胞株のような哺乳動物細胞で主に産生される(18)。高度発現クローンを選択するプロセスにおいて、タンパク質発現のレベル及び安定性が2つの主要な基準である。個々のクローンから再現可能な結果を得ることは、スクリーニングの労力を改善する観点から有益である。これら原理はまた、特定の薬物標的をスクリーニングするための細胞の作製にも適用される。同じ原理はまた、同じゲノム背景で種々の遺伝子を発現させて、得られた細胞株を互いに比較研究及び分析するために適用され得る。このような細胞株は更に、スクリーニングプログラムで化合物ライブラリーの影響に対して供され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、現時点で、異種配列の挿入/欠失を容易に確実にし得る、遺伝子座でDSBを誘導する手段は存在していない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、そうでなければ同質遺伝子型である細胞株において目的遺伝子(GOI)又は一連の遺伝子群の再現可能な組込み及び発現を可能にする新規な遺伝子構築物セットを開発した。
【0006】
本発明の第1の観点によれば、下記構築物を含んでなる遺伝子構築物セットが提供される:
a)核酸分子によりコードされ、少なくとも以下の成分:
A1 - A2 - A3 - A4 - A5 (i)
(式中、A1は第1のプロモーターであり;A2は第1の相同部分であり;A3はメガヌクレアーゼ切断部位であり;A4は第1のマーカー遺伝子であり;A5は第2の相同部分である)を含んでなる構築物(i)であって、少なくとも1つの標的細胞のゲノム中に安定的に組み込まれるように構成されている構築物(i);
【0007】
b)核酸分子によりコードされ、少なくとも以下の成分:
A2' - B1 - B2 - B3 - B4 - A5' (ii)
(式中、A2'は前記第1の相同部分A2の一部を含んでなり;B1は前記第1のマーカー遺伝子とは異なる第2のマーカー遺伝子であり;B2は第2のプロモーターであり;B3は多重クローニング部位であり;B4は第3のプロモーターであり;A5'は前記第2の相同部分A5の一部を含んでなる)を含んでなる構築物(ii);
【0008】
c)核酸分子によりコードされ、少なくとも以下の成分:
C1 - C2 (iii);
C3 (iv)
を含んでなる構築物(iii)若しくは(iv);又は
少なくとも以下の成分:
C4 (v)
を含んでなる単離若しくは組換えのタンパク質である構築物(v)
(式中、C1は第4のプロモーターであり;C2はメガヌクレアーゼのオープンリーディングフレーム(ORF)であり;C3は前記メガヌクレアーゼのメッセンジャーRNA(mRNA)バージョンであり;C4は前記メガヌクレアーゼの単離若しくは組換えのタンパク質である)を含む群より選択される少なくとも1つの構築物であって、構築物(iii)、(iv)若しくは(v)からの前記メガヌクレアーゼがA3を認識・切断し;構築物(iii)、(iv)若しくは(v)は前記少なくとも1つの標的細胞中に構築物(ii)と共にコトランスフェクトされるように構成されてなる、少なくとも1つの構築物。
【0009】
この遺伝子構築物のシステムは、操作された細胞中で特定のゲノム位置でのGOIの組込み及び発現を可能にする。B3部分にクローニングされ得るGOIを含有する構築物(ii)が、構築物(i)のゲノム組込み位置に対応する特定部位で、メガヌクレアーゼに誘導される組換えを介してゲノム中に組み込まれる。この挿入事象は、極めて高い頻度で起こり、非常に特異的である。
この遺伝子構築物の各々は、上記必須成分A1〜A5、A2'及びA5'、B1〜B4並びにC1〜C2からなるが、これらの間には、本明細書中で定義される特許請求の範囲に記載の成分の特性に影響しない限り、他のヌクレオチド配列が存在してもよい。
【0010】
本発明において、プロモーターは、オープンリーディングフレームをコードする第2のヌクレオチド配列との組合せで配置されると、該オープンリーディングフレームの転写を引き起こすヌクレオチド配列である。加えて、RNA分子の場合、プロモーターとは、該RNA分子の翻訳レベルを増加させるように作用する非コード配列ということもできる。
本発明において、相同部分とは、配列間での相同組換えを導くように、別のヌクレオチド配列と共通するヌクレオチド残基を共有するヌクレオチド配列をいい、より具体的には少なくとも95%同一性、好ましくは97%同一性、より好ましくは99%同一性を有するものをいう。構築物(i)の第1及び第2の相同部分と構築物(ii)の第1及び第2の相同部分とは、100%同一であってもよいし、又は示したようにそれ未満であってもよい。
【0011】
特には、構築物(i)の部分A2及びA5と構築物(ii)の部分A2'及びA5'との間の重複は、200bp以上6000bp以下である。好ましくは、重複は1000bp〜2000bpである。
したがって、特には、構築物(ii)の成分A2'及びA5'はそれぞれ構築物(i)の成分A2及びA5の200bp以上6000bp以下を含んでなる。
とりわけ、構築物(ii)の成分A2'及びA5'はそれぞれ構築物(i)の成分A2及びA5の1000bp以上2000bpを含んでなる。
効率的なレベルの相同組換えを可能にするに必要な重複の量は、当該分野において公知である(49)。本発明者らは、これら公知のレベルから、本発明による構築物セットの使用について最も効率的な重複範囲を同定した。
【0012】
本発明において、メガヌクレアーゼ切断部位は、LAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼにより認識・切断される、22〜24bpの二本鎖パリンドローム、部分パリンドローム(偽パリンドローム)又は非パリンドロームのポリヌクレオチド配列を意味するものとする。この用語は、メガヌクレアーゼにより二本鎖破断(切断)が誘導される独特なDNA位置、好ましくはゲノム位置をいう。
メガヌクレアーゼ切断部位は、I-CreI又はI-DmoIのような野生型メガヌクレアーゼにより認識・切断されるDNA配列であり得る。或いは、メガヌクレアーゼ切断部位は、異なるDNA標的配列を認識・切断する改変メガヌクレアーゼにより認識・切断されるDNA配列であり得る。
【0013】
本発明者らその他によって、メガヌクレアーゼは異なるDNA標的を認識するように操作できることが示されている。特にI-CreI酵素は広範に研究されており、異なる研究グループがI-CreIの特異性を局所的に改変する半合理的アプローチを用いている(26-28)。
加えて、局所的に改変した特異性を有する数百のI-CreI誘導体が、半合理的アプローチとハイスループットスクリーニングとの組合せにより操作された:
− I-CreIの残基Q44、R68及びR70又はQ44、R68、D75及びI77に変異誘発し、DNA標的(5NNN DNA標的)の±3〜5位で改変した特異性を有する一団の変形体がスクリーニングにより同定された(27,28)、
− I-CreIの残基K28、N30及びQ38又はN30、Y33、及びQ38又はK28、Y33、Q38及びS40に変異誘発し、DNA標的(10NNN DNA標的)の±8〜10位で改変した特異性を有する一団の変形体がスクリーニングにより同定された(29,30)。
【0014】
このような全ての変形体メガヌクレアーゼ及びこれらが認識・切断する変形体DNA標的が本出願に含まれており、特定のメガヌクレアーゼとその標的との任意の組合せを、構築物(i)の特徴A3で表されるメガヌクレアーゼ標的配列及び構築物(iii)、(iv)及び(v)により種々にコードされるメガヌクレアーゼとして用いることができる。
本発明において、マーカー遺伝子は、発現したとき、該マーカー遺伝子を発現する細胞又は細胞群と該マーカー遺伝子を発現していない細胞又は細胞群との区別を可能にする遺伝子産物である。
本発明において、多重クローニング部位は、該多重クローニング部位を含むプラスミド中への目的のフラグメントのサブクローニングを可能にする、幾つかの制限部位を含有する短いDNAフラグメントである。
【0015】
本発明において、メガヌクレアーゼは、12〜45bpの二本鎖DNA標的配列を有するエンドヌクレアーゼを意味するものとする。これは、I-CreI又はI-DmoIのような野生型のメガヌクレアーゼであっても、これら酵素の1つの上記のような操作型であっても、1つ以上のメガヌクレアーゼの部分を含んでなる融合タンパク質であってもよい(31-33)。
本発明者らは、このシステムが、多くのGOIについて、多くの多様なモデル哺乳動物細胞株で機能できることを示した。
【0016】
好ましくは、成分A5は、マーカー遺伝子又はその一部を含んでなる。
本発明の好ましい実施態様によれば、成分A5は、相同組換え事象後に、改変細胞を検出できるように、マーカー遺伝子又はその一部をコードしていなければならない。
或いは、成分A5の後に、マーカー遺伝子をコードするDNA配列を配置することができ、この更なる部分はマーカー遺伝子をコードし、相同組換えを受けた細胞の検出を可能にする。
好ましくは、成分A5'は前記A5の3'末端欠失を含む。
【0017】
好ましくは、前記構築物(i)、(ii)、(iii)、(iv)及び(v)の各々の成分は、以下の群から選択される:
【表1】

【0018】
* 本発明による構築物セットで用いるメガヌクレアーゼ切断部位は、該構築物セットに同じく含まれるメガヌクレアーゼにより認識・切断されなければならない。前述のように、メガヌクレアーゼ切断部位は、野生型I-CreIメガヌクレアーゼ(本明細書中で配列番号:14、15及び58のように種々の形態で提供されている)の野生型切断部位 配列番号:8のような、野生型メガヌクレアーゼ標的部位であり得る。しかし、成分A3が改変されている場合には、成分C2、C3又はC4のメガヌクレアーゼもまた改変されている。
【0019】
上記の成分は単なる例に過ぎず、本発明がこれら特定配列又はその組合せに限定されることを意図しない。特許請求の範囲に記載される成分の特徴は本明細書で規定され、したがって他の適切な成分(例えば、耐性遺伝子又はプロモーター配列)の選択が本発明に包含される。
好ましいプロモーター配列は、pCMVプロモーター(配列番号:25)、pSV40プロモーター(配列番号:20)、pEF1α(配列番号:1)及びユビキチンサブユニットcプロモーター(配列番号:52)である。
好ましいマーカー遺伝子は、ネオマイシン耐性遺伝子(配列番号:7);ピューロマイシン耐性遺伝子(配列番号:21)、ハイグロマイシン耐性遺伝子(配列番号:2);ブラストサイジン耐性遺伝子、ゼオシン耐性遺伝子及びフレオマイシン耐性遺伝子である。多くの他の選択可能マーカー遺伝子が存在し、これら全てを本出願で用いることができる。
【0020】
最も好ましくは、構築物(i)は、cGPS(細胞ゲノムポジショニングシステム(cellular Genome Positioning System))細胞株を作製するために用いられた本発明者らの好ましい構築物からなる配列番号:6を含んでなる。この構築物では、特異的なメガヌクレアーゼ標的部位が、宿主細胞のゲノム中に固有の遺伝子座で挿入されている。この部位は、目的遺伝子の正確な挿入遺伝子座である。この部位は、より長い構築物の一部として宿主細胞株中に単一コピーで挿入されている。最終のcGPS細胞株において、メガヌクレアーゼ標的部位は、ハイグロマイシン耐性遺伝子の近くでEF1αプロモーターの下流に配置される。その結果、cGPS細胞株はハイグロマイシン耐性となる。更に、ネオマイシン耐性遺伝子がハイグロマイシン遺伝子の直ぐ下流に配置されるが、これはcGPS細胞株をG418感受性にするプロモーターを欠いている(図1を参照)。
【0021】
cGPS遺伝子座の重要な特徴を下記の表1に列挙する。
【表2】

【0022】
最も好ましくは、構築物(ii)は、CMVプロモーターの制御下でGOIを発現する6932bpベクターであるpTV-DS-MCS2からなる配列番号:22を含んでなる。これはまた、cGPS遺伝子座での効率的なHR及びGOI挿入のための2つの相同性アームを含有する(図2を参照)。
【0023】
pTV-DS-MCS2の重要な特徴を下記の表2に記載する。全ての特徴が機能的に検証されている。
【表3】

【0024】
最も好ましくは、構築物(iii)は、それぞれpCLS1088(図33)又はpCLS2147(図34)からなる、配列番号:38及び配列番号:39を含んでなる。これら5647bpベクターは、CMVプロモーターの制御下にメガヌクレアーゼの2つの異なるORFを含有する。
【0025】
pCLS1088及びpCLS2147の重要な特徴を下記の表3に記載する。全ての特徴が機能的に検証されている。
【表4】

【0026】
最も好ましくは、構築物(iv)はメガヌクレアーゼのORF(配列番号:14及び配列番号:15)を含んでなる。
ここで、構築物(iv)はメガヌクレアーゼポリアデニル化mRNA(配列番号34、配列番号35)からなり、このmRNAからリボソームスキャニングが7−メチル−グアニンキャップ化配列又は内部リボソーム侵入部位(IRES)のいずれかにより媒介される(図3を参照)。
【0027】
ここで、構築物(v)は、メガヌクレアーゼのN末端部に融合した細胞透過性ペプチドからなる。本発明のこの観点によるメガヌクレアーゼの例が、配列番号:58として提供される。この配列は、メガヌクレアーゼのN末端に融合した細胞透過性ペプチドDPV15b(配列番号:56)及びメガヌクレアーゼのC末端に融合した6×ヒスチジンタグを有するI-CreIモノマーをコードする。本発明者らは、別の細胞透過性ペプチドDPV1047(配列番号:57)もまた評価した。
細胞透過性ペプチドは当初、HIV-1タンパク質Tatを含む或るタンパク質が細胞膜を横断し得るという観察を受けて開発された(34)。HIV-1転写活性化因子Tatは、ウイルス遺伝子発現の強力な誘導因子としての作用に加え、細胞内で及び細胞外に輸送されるという多機能タンパク質である(35)。この細胞透過特性は、高度に塩基性のアルギニンリッチ配列(アミノ酸49〜58)の完全性に依存する。
【0028】
このアルギニンリッチ配列を含有し、Tatペプチドと名付けられたペプチドが開発された。これは、一連の高分子に接合後に、該接合体の細胞侵入を促進することができる。この細胞内送達法は、インビトロで、蛍光色素、酵素、抗体及びリポソームを含む一連の高分子について首尾良く用いられている(41,42,43,45,47,48)。Tatペプチドはまた、インビボで、β−ガラクトシダーゼのような機能タンパク質の細胞侵入を促進することが示されている(46)。
【0029】
他の多くのタンパク質及びそのペプチド誘導体が、同様の細胞内在化特性を有することが見出されており、これらとしては、ヘルペスウイルステグメントタンパク質VP22 (37)、Drosophila melanogasterアンテナペディア(Antp)のホメオティックタンパク質(完全長Antpに由来する内在化ペプチドはペネトラチンと呼ばれる)(36)、プロテグリン1(PG-1)抗菌性ペプチドSynB (40)及び塩基性線維芽細胞増殖因子(39)が挙げられる。これらタンパク質に由来するキャリアペプチドは、互いに配列相同性を殆ど示さないが、全てが高度にカチオン性でアルギニンリッチ又はリシンリッチである。この観察後、合成ポリアルギニンペプチドが、高レベルの効率性で内在化されることが示された(38,44)。
連結したメガヌクレアーゼの内在化速度の増大を引き起こすことができるこのような細胞透過性ペプチドの全てが、本特許出願に組み込まれる。
【0030】
本発明の第2の観点によれば、本発明の第1の観点による遺伝子構築物セットと、該遺伝子構築物セットを用いて形質転換細胞を作製するための指示書とを含んでなる、GOIをコードする配列を少なくとも1つの細胞に導入するキットが提供される。
好ましくは、キットは、pTV-DS-LacZからなる配列番号:17 (Lac-Z)からなる構築物(vi)を更に含んでなる。
【0031】
pTV-DS-LacZは、以前(23)に記載されたように、CMVプロモーターの制御下でGOIの代わりに(陽性対照として)LacZを発現する9981bpベクターである。これはまた、cGPS遺伝子座での効率的な相同組換え及びGOIの挿入のための2つの相同性アームを含有する。図4に、このベクターの特徴をまとめる。pTV-DS-LacZの特徴は、pTV-DS-MCS2とまさしく同じ特徴から構成されるが、このプラスミドは、CMVプロモーターの制御下にβ−ガラクトシダーゼタンパク質をコードするLacZ遺伝子を含有する。これは、cGPS部位でのHRについての陽性対照として用いることができる。
【0032】
好ましくは、キットは、前記構築物(i)で安定的に形質転換された少なくとも1つの細胞を更に含んでなる。
最も好ましくは、前記少なくとも1つの細胞は、CHO-K1細胞(Sigma-Aldrich);HEK-293由来細胞(Invitrogen);Caco2細胞(Invitrotech);U2-OS細胞(Invitrogen);NIH 3T3細胞(Invitrogen);NSO細胞(Sigma-Aldrich);SP2細胞(Sigma-Aldrich);CHO-S細胞(Invitrogen);DG44細胞(Invitrogen)を含む群から選択される。
【0033】
本発明の第3の観点によれば、
a)前記のような構築物(i)を少なくとも1つの細胞のゲノム中に挿入することにより、該少なくとも1つの細胞を安定的に形質転換する工程;
b)前記のような構築物(ii)のB3位置に、目的遺伝子をコードする配列をクローニングする工程;
c)工程b)の構築物(ii)と前記のような構築物(iii)、(iv)又は(v)とで工程a)の細胞をコトランスフェクトする工程;
d)前記構築物(ii)と前記安定的に挿入された構築物(i)との間での相同組換え後に、前記構築物(i)の成分A4によりコードされる第1のマーカー遺伝子の欠如、及び成分B1によりコードされる第2のマーカー遺伝子の活性、及び成分A5によりコードされる第3のマーカー遺伝子の活性に基づいて、工程c)から少なくとも1つの細胞を選択する工程、
を含んでなる、HRにより少なくとも1つの細胞を形質転換するための方法が提供される。
【0034】
最も好ましくは、工程d)における選択は、前記第1のマーカー、前記第2のマーカー及び前記第3のマーカーの各々について逐次に行う。
本発明のより良い理解のため及び本発明が如何に実施され得るかを示すために、以下に、例示のみを目的として、添付の図面を参照しながら、本発明による具体的実施形態、方法及びプロセスを示す。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1はcGPS遺伝子座の概略図を示す。
【図2】図2はpTV-DS-MCS2ベクターの概略図を示す。
【図3】図3はメガヌクレアーゼキャップ化ポリアデニル化mRNAの概略図を示す。
【図4】図4はpTV-DS-LacZベクターの概略図を示す。
【図5】図5は、本発明によるcGPS CHO-K1細胞株についてのトランスフェクションプロトコルの概略図を示す。
【図6】図6は、cGPS CHO-K1細胞株についてのクローン選択プロトコール(左列)及びバッチ選択プロトコル(右列)の概略図を示す。
【図7】図7は、本発明によるcGPS NIH 3T3細胞株についてのトランスフェクションプロトコルの概略図を示す。
【図8】図8は、cGPS NIH 3T3細胞株についてのクローン選択プロトコル(左列)及びバッチ選択プロトコル(右列)の概略図を示す。
【図9】図9は、cGPS NIH 3T3システムにおける二重抵抗性lacZ標的化クローンの産生及びそれらの分子特徴付けを示す。
【図10】図10は、本発明によるcGPS HEK 293細胞株についてのトランスフェクションプロトコルの概略図を示す。
【図11】図11は、cGPS HEK 293細胞株についてのクローン選択プロトコル(左列)及びバッチ選択プロトコル(右列)の概略図を示す。
【図12】図12は、cGPS NIH 3T3システムにおける二重抵抗性lacz標的化クローンの産生及びそれらの分子特徴付けを示す。
【図13】図13は、pTV-DS-LacZベクターで標的化された25の選択クローンのサザンブロット分析を示す。
【図14】図14は、FACS分析によりヒトCD4発現の経時的安定性を決定する実験の結果を示す。
【図15】図15は、GOIとしてソマトスタチンレセプター(GPCR-SSTR2)で標的化されたクローンに対して実施されたcAMP産生阻害に関する機能アッセイの結果を示す。
【図16】図16はcGPS CHO-K1 hATXからのhATX発現の結果を示す。
【図17】図17は、cGPS CHO-K1 hMT1標的化クローンで実施された放射性リガンド飽和実験の結果を示す。
【図18】図18は、cGPS CHO-K1 hMT2標的化クローンで実施された放射性リガンド飽和実験の結果を示す。
【図19】図19は、モノクローナル抗体を発現する幾つかのクローンの、ユビキチンサブユニットcプロモーター(pUbc)により制御された発現レベルの均一性を決定する実験の結果を示す。
【図20】図20は、選択剤の存在下で23週間及び選択剤の不在下で15週間にわたる、β−ガラクトシダーゼ(4つのcGPS CHO-K1 lacz標的化クローンの平均値)及びルシフェラーゼ(4つのcGPS CHO-K1ルシフェラーゼ標的化クローンの平均値)の発現安定性を示す。
【図21】図21は、透過性ペプチドに融合したI-CreI組換えタンパク質(DPV15b/I-CreI N75/6xHis)を用いた遺伝子ターゲティングの有効性を示す。
【図22】図22はcGPSカスタムCHO-K1 lacz組込みマトリクスベクターの概略図を示す。
【図23】図23はSc MA17-RM2-G19H33メガヌクレアーゼ発現ベクターの概略図を示す。
【図24】図24はサザンブロットによる二重標的化クローンの分子特徴付けを示す。
【図25】図25は、11週間にわたるβ−ガラクトシダーゼ及びルシフェラーゼ(4つの二重標的化クローンの平均値)の発現安定性を示す。
【図26】図26はpTV-DS-CD4ベクターの概略図を示す。
【図27】図27はpTV-DS-SSTR2ベクターの概略図を示す。
【図28】図28はpTV-DS-hATXベクターの概略図を示す。
【図29】図29はpTV-DS-hMT1ベクターの概略図を示す。
【図30】図30はpTV-DS-hMT2ベクターの概略図を示す。
【図31】図31はpTV-DS-5F11ベクターの概略図を示す。
【図32】図32はpTV-DSルシフェラーゼベクターの概略図を示す。
【図33】図33はI-CreI N75メガヌクレアーゼ発現ベクターの概略図を示す。
【図34】図34はI-CreI N75 105A 132Vメガヌクレアーゼ発現ベクターの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下に、例示として、本発明者らにより企図された具体的態様を記載する。下記の説明では、十分な理解を提供するために、多数の具体的な詳細を示す。しかし、本発明がこれら具体的詳細に限定されることなく実施し得ることは当業者に明らかである。他の例において、不必要に説明を分かり難くしないように、周知の方法及び構成は記載していない。
【0037】
定義
− ポリペプチド配列中のアミノ酸残基は、本明細書において、一文字表記に従って表し、例えばQはGlnすなわちグルタミン残基を意味し、RはArgすなわちアルギニン残基を意味し、DはAspすなわちアスパラギン酸残基を意味する。
− 疎水性アミノ酸は、ロイシン(L)、バリン(V)、イソロイシン(I)、アラニン(A)、メチオニン(M)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)及びチロシン(Y)をいう。
【0038】
− ヌクレオチドは以下のとおり表す:一文字表記をヌクレオシドの塩基を表すために用いる:aはアデニンであり、tはチミンであり、cはシトシンであり、gはグアニンである。縮重ヌクレオチドについて、rはg又はa(プリンヌクレオチド)を表し、kはg又はtを表し、sはg又はcを表し、wはa又はtを表し、mはa又はcを表し、yはt又はc(ピリミジンヌクレオチド)を表し、dはg、a又はtを表し、vはg、a又はcを表し、bはg、t又はcを表し、hはa、t又はcを表し、nはg、a、t又はcを表す。
【0039】
− 「メガヌクレアーゼ」とは、12〜45bpの二本鎖DNA標的配列を有するエンドヌクレアーゼを意図する。例としては、I-Sce I、I-Chu I、I-Cre I、I-Csm I、PI-Sce I、PI-Tli I、PI-Mtu I、I-Ceu I、I-Sce II、I-Sce III、HO、PI-Civ I、PI-Ctr I、PI-Aae I、PI-Bsu I、PI-Dha I、PI-Dra I、PI-Mav I、PI-Mch I、PI-Mfu I、PI-Mfl I、PI-Mga I、PI-Mgo I、PI-Min I、PI-Mka I、PI-Mle I、PI-Mma I、PI-Msh I、PI-Msm I、PI-Mth I、PI-Mtu I、PI-Mxe I、PI-Npu I、PI-Pfu I、PI-Rma I、PI-Spb I、PI-Ssp I、PI-Fac I、PI-Mja I、PI-Pho I、PI-Tag I、PI-Thy I、PI-Tko I、PI-Tsp I、I-MsoIが挙げられる。
【0040】
− 「親のLAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼ」とは、野生型LAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼ又はその機能的変形体を意図する。親のLAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼは、単量体であってもよいし、22〜24bpの二本鎖DNA標的を切断できる機能的エンドヌクレアーゼに組み合わされるLAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼの2つのコアドメインを含んでなる二量体(ホモ二量体又はヘテロ二量体)であってもよい。
− 「ホモ二量体LAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼ」とは、I-CreI若しくはI-MsoIのような、単一LAGLIDADGモチーフを有し、パリンドロームDNA標的配列を切断する野生型ホモ二量体LAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼ又はその機能的変形体を意図する。
− 「LAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼ変形体」又は「変形体」とは、LAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼ配列の少なくとも1つのアミノ酸を、異なるアミノ酸で置換することにより得られるタンパク質を意図する。
【0041】
− 「機能的変形体」とは、DNA標的、好ましくは野生型LAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼにより切断されない新規DNA標的を切断できるLAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼ変形体を意図する。例えば、このような変形体は、DNA標的配列に接触するか又はDNA標的と直接若しくは間接的に相互作用する位置にてアミノ酸変化を有する。
− 「新規な特異性を有するホーミングエンドヌクレアーゼ変形体」とは、親のホーミングエンドヌクレアーゼのものとは異なる、切断標的パターン(切断プロフィール)を有する変形体を意図する。変形体は、親のホーミングエンドヌクレアーゼより少ない標的(制限されたプロフィール)又は多い標的を切断し得る。好ましくは、変形体は、親のホーミングエンドヌクレアーゼにより切断されない少なくとも1つの標的を切断できる。
【0042】
− 用語「新規な特異性」、「改変した特異性」、「新規な切断特異性」、「新規な基質特異性」は等価で区別せずに用いられ、DNA標的配列のヌクレオチドに対する変形体の特異性をいう。
− 「I-CreI」とは、SWISSPROT P05725又はpdbアクセッションコード1g9yの配列(配列番号:36)を有する野生型I-CreIを意図する。
− 「I-DmoI」とは、SWISSPROT番号P21505の配列(配列番号:37)又はPDBコード1b24の構造を有する野生型I-DmoIを意図する。
【0043】
− 「ドメイン」又は「コアドメイン」とは、約100アミノ酸残基の配列に相当する、LAGLIDADGファミリーのホーミングエンドヌクレアーゼの特徴的なαββαββα折り畳みである「LAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼコアドメイン」を意図する。このドメインは、DNA標的の一方の半分と相互作用する逆平行βシートに折り畳まれる4つのβ鎖を含んでなる。このドメインは、DNA標的の他方の半分と相互作用する別のLAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼコアドメインと会合して、該DNA標的を切断できる機能的エンドヌクレアーゼを形成できる。例えば、二量体ホーミングエンドヌクレアーゼI-CreI (163アミノ酸)の場合、LAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼコアドメインは、残基6〜94に相当する。単量体ホーミングエンドヌクレアーゼの場合、2つのこのようなドメインが、エンドヌクレアーゼの配列中に見出される;例えば、I-DmoI (194アミノ酸)では、第1ドメイン(残基7〜99)及び第2ドメイン(残基104〜194)が短いリンカー(残基100〜103)によって隔てられている。
【0044】
− 「サブドメイン」とは、ホーミングエンドヌクレアーゼDNA標的のハーフ部位の独特な部分と相互作用するLAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼコアドメインの領域を意図する。2つの異なるサブドメインは独立して又は部分的に独立して挙動し、一方のサブドメイン中の変異は、他方のサブドメインの結合及び切断特性を変更しないか又は多くの場合で変更しない。したがって、2つのサブドメインは、ホーミングエンドヌクレアーゼDNA標的のハーフ部位の独特な部分に結合する。
− 「βヘアピン」とは、ループ又はターンにより接続されている、LAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼコアドメインの逆平行βシートの連続する2つのβ鎖を意図する。
− 「C1221」とは、パリンドロームを形成するように第1のハーフ「12」が逆行反復した(「21」)I-CreI標的部位の第1のハーフをいうものとする。
【0045】
− 「切断活性」により、本発明の変形体の切断活性は、PCT出願WO 2004/067736;Epinatら、Nucleic Acids Res., 2003, 31, 2952-2962;Chamesら、Nucleic Acids Res., 2005, 33, e178及びArnouldら、J. Mol. Biol., 2006, 355, 443-458に記載されるように、レポーターベクターを用い酵母又は哺乳動物細胞で直列反復組換えアッセイによって測定され得る。レポーターベクターは、酵母又は哺乳動物の発現ベクター中にクローニングされた、レポーター遺伝子の2つの短縮化非機能的コピー(直列反復)及び介在配列内のキメラDNA標的配列を含んでなる。DNA標的配列は、少なくとも1つのヌクレオチドの異なるヌクレオチドによる置換によって、親のホーミングエンドヌクレアーゼ切断部位から導かれる。好ましくは、DNA切断部位の1以上の位置で4つの塩基(g、a、c、t)の異なる組合せを表すパリンドローム又は非パリンドロームDNA標的のパネルを試験する(n個の変異位置について4nのパリンドローム標的)。変形体の発現は、DNA標的配列を切断できる機能的エンドヌクレアーゼをもたらす。この切断は、直列反復間での相同組換えを誘導し、機能的レポーター遺伝子を生じる。その遺伝子の発現は、適切なアッセイによりモニターすることができる。
【0046】
− 「DNA標的」、「DNA標的配列」、「標的配列」、「標的部位」、「標的」、「部位」、「認識部位」、「認識配列」、「ホーミング認識部位」、「ホーミング部位」、「切断部位」とは、LAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼにより認識・切断される、22〜24bpの二本鎖パリンドローム、部分パリンドローム(偽パリンドローム)又は非パリンドロームのポリヌクレオチド配列を意図する。これら用語は、該エンドヌクレアーゼにより二本鎖破断(切断)が誘導される独特なDNA位置、好ましくはゲノム位置をいう。DNA標的は、二本鎖ポリヌクレオチドの一方の鎖の5'→3'配列により定義される。例えば、野生型I-CreIにより切断されるパリンドロームDNA標的配列は、配列5'- t-12c-11a-10a-9a-8a-7c-6g-5t-4c-3g-2t-1a+1c+2g+3a+4c+5g+6t+7t+8t+9t+10g+11a+12 (配列番号:8)により定義される。DNA標的の切断は、センス鎖及びアンチセンス鎖についてそれぞれ、+2位及び−2位のヌクレオチドで起こる。示さない限り、メガヌクレアーゼ変形体によるDNA標的の切断が起こる位置は、DNA標的のセンス鎖上の切断部位に対応する。
【0047】
− 「DNA標的のハーフ部位」、「ハーフ切断部位」又は「ハーフ部位」は、各LAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼコアドメインが結合するDNA標的の部分を意図する。
− 「キメラDNA標的」又は「ハイブリッドDNA標的」とは、2つの親のメガヌクレアーゼ標的配列の異なる半分の融合体を意図する。加えて、当該標的の少なくとも一方の半分は、別個のサブドメインが結合するヌクレオチドの組み合わせ(組合せのDNA標的)を含んでなり得る。
− 「変異」とは、核酸/アミノ酸配列における、1以上のヌクレオチド/アミノ酸の置換、欠失及び/又は付加を意図する。
【0048】
− 「相同」とは、別の配列と、配列同士間で相同組換えを導くに十分な同一性を有する配列を意図し、より具体的には少なくとも95%の同一性、好ましくは97%の同一性、より好ましくは99%を有するものが意図される。
− 「同一性」は、2つの核酸分子又はポリペプチド間の配列同一性をいう。同一性は、比較のために整列され得る各配列中の位置を比較することにより決定することができる。比較される配列中の位置が同じ塩基で占められている場合、それら分子は当該位置で同一である。核酸又はアミノ酸配列間の類似性又は同一性の程度は、核酸配列により共有される位置での同一の又は一致するヌクレオチドの数の関数である。種々のアラインメントアルゴリズム及び/又はプログラムを用いて2つの配列間の同一性を算出でき、そのようなアルゴリズム及び/又はプログラムとしては、GCG配列解析パッケージ(University of Wisconsin, Madison, Wis.)の一部として利用可能であるFASTA又はBLASTが挙げられ、これらは例えばデフォルト設定で使用することができる。
【0049】
− 「個体」は、哺乳動物及びその他の脊椎動物(例えば、鳥類、魚類及び爬虫類)を含む。用語「哺乳動物」及び「哺乳動物の」とは、本明細書で用いる場合、生存する子を出産する(真獣類(eutharian)又は胎盤哺乳類(placental mammals))か又は産卵し(後獣類(metatharian)又は非胎盤哺乳動物類(nonplacental mammals))、子に授乳する任意の脊椎動物(単孔類、有袋類及び有胎盤類(placental)を含む)をいう。哺乳動物の種の例としては、ヒト並びにその他の霊長類(例えば、サル、チンパンジー)、げっ歯類(例えば、ラット、マウス、モルモット)及び反すう動物(例えば、ウシ、ブタ、ウマ)が挙げられる。
− 「目的遺伝子」又は「GOI」とは、既知又は推定の遺伝子産物をコードする任意のヌクレオチド配列をいう。
【0050】
− 「遺伝病」とは、部分的又は完全に、直接的又は間接的に、1又は数個の遺伝子における異常に起因する任意の疾患をいう。この異常は、変異、挿入又は欠失であり得る。変異は、点状変異(punctual mutation)であり得る。異常は、遺伝子のコード配列又はその調節配列に影響し得る。異常は、ゲノム配列の構造又はコードされるmRNAの構造若しくは安定性に影響し得る。この遺伝病は、劣性又は優性であり得る。このような遺伝病は、限定されないが、嚢胞性線維症、ハンチントン舞踏病、家族性高コレステロール血症(LDLレセプター欠損)、肝芽腫、ウィルソン病、先天性肝性ポルフィリン病、肝代謝の遺伝性障害、レッシュナイハン症候群、鎌状赤血球貧血、サラセミア、色素性乾皮症、ファンコニ貧血、網膜色素変性症、毛細管拡張性運動失調、ブルーム症候群、網膜芽腫、デュシェンヌ型筋ジストロフィー及びテイ-サックス病であり得る。
【0051】
− 「cGPS部位」又は「cGPS遺伝子座」は、構築物(i)の必須成分が安定的に導入されているゲノム位置をいう。
− 「cGPS細胞株」は、「cGPS部位」又は「cGPS遺伝子座」が存在する少なくとも1つの細胞をいう。
− 「細胞透過性ペプチド」又は「CPP」は、通常は標的細胞に対して何らかの効果を有するに十分な割合で細胞膜を通過することができない種々の分子積荷(molecular cargo)、特にタンパク質及び大きな高分子の細胞取込みを促進するペプチドをいう。
【0052】
− 「EF1α」は、リボソームへのアミノアシルtRNAの酵素送達を担う伸長因子-1複合体のαサブユニットのイソフォームをコードするヒト遺伝子をいう。ヒトEF1αのプロモーター、第1及び第2エキソン並びに第1のイントロンの配列は配列番号:9として提供され;ヒトEF1αの第1イントロンの配列は配列番号:10として提供され;ヒトEF1αの第1エキソンの配列は配列番号:11として提供され;ヒトEF1αの第2エキソンの配列は配列番号:12として提供される。
【0053】
− 「ベクター」:本発明において、例えば上記の構築物(ii)又は(iii)として使用され得るベクターとしては、限定されないが、ウイルスベクター、プラスミド、RNAベクター、又は染色体、非染色体、半合成若しくは合成の核酸からなり得る直鎖状若しくは環状のDNA若しくはRNA分子が挙げられる。好ましいベクターは、自律複製できるもの(エピソームベクター)及び/又は連結された核酸の発現を可能にするもの(発現ベクター)である。多数の適切なベクターが当業者に公知であり、市販されている。
【0054】
ウイルスベクターとしては、レトロウイルス、アデノウイルス、パルボウイルス(例えばアデノ随伴ウイルス)、コロナウイルス、マイナス鎖RNAウイルス(例えばオルトミクソウイルス(例えばインフルエンザウイルス)、ラブドウイルス(例えば狂犬病及び水疱性口内炎ウイルス)、パラミクソウイルス(例えば麻疹及びセンダイ))、プラス鎖RNAウイルス(例えばピコルナウイルス及びアルファウイルス)並びに二本鎖DNAウイルス(アデノウイルス、ヘルペスウイルス(例えば単純ヘルペスウイルス1及び2型、エプスタイン-バーウイルス、サイトメガロウイルス)及びポックスウイルス(例えばワクシニア、鶏痘及びカナリア痘)を含む)が挙げられる。その他のウイルスとしては、例えばノーウォークウイルス、トガウイルス、フラビウイルス、レオウイルス、パポバウイルス、ヘパドナウイルス及び肝炎ウイルスが挙げられる。レトロウイルスの例としては、トリ白血病肉腫、哺乳類C型、B型ウイルス、D型ウイルス、HTLV-BLV群、レンチウイルス、スプマウイルスが挙げられる(Coffin, J. M., Retroviridae: The viruses and their replication, In Fundamental Virology、第3版、B. N. Fieldsら編、Lippincott-Raven Publishers、Philadelphia, 1996)。用語「ベクター」は、連結された別の核酸を輸送できる核酸分子をいう。好ましいベクターの1つのタイプは、エピソーム、すなわち染色体外複製が可能な核酸である。好ましいベクターは、自律複製及び/又は連結された核酸の発現を可能にするものである。作動可能に連結された遺伝子の発現を導くことができるベクターは、本明細書において「発現ベクター」という。本発明によるベクターとしては、限定されないが、YAC (酵母人工染色体)、BAC (細菌人工)、バキュロウイルスベクター、ファージ、ファージミド、コスミド、ウイルスベクター、プラスミド、RNAベクター、又は染色体、非染色体、半合成若しくは合成のDNAからなり得る直鎖状若しくは環状のDNA若しくはRNA分子が挙げられる。一般に、組換えDNA技術において実用性のある発現ベクターは、一般には環状二本鎖DNAループをいう「プラスミド」の形態にあることが多く、ベクターの形態で染色体に結合していない。多数の適切なベクターが当業者に公知である。
【0055】
ベクターは、選択マーカー(例えば:真核細胞培養には、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ、ヒスチジノールデヒドロゲナーゼ、ジヒドロ葉酸レダクターゼ、ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ、アデノシンデアミナーゼ、グルタミンシンセターゼ及びヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ;S. cerevisiaeにはTRP1;E. coliにはテトラサイクリン、リファンピシン又はアンピシリン耐性)を含んでなることができる。これらの選択マーカーは、本発明による構築物(i)及び(ii)の一部としても用いることもできる。
【0056】
好ましくは、ベクターは、本発明のポリペプチドの産生又は合成を可能にするように該タンパク質をコードする配列が適切な転写及び翻訳制御エレメントの制御下に配置されている発現ベクターである。したがって、上記ポリヌクレオチドは発現カセットに含まれる。より詳細には、ベクターは、複製開始点、上記コーディングポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーター、リボソーム部位、RNAスプライシング部位(ゲノムDNAを用いる場合)、ポリアデニル化部位及び転写終結部位を含んでなる。これはまた、エンハンサー又はサイレンサーエレメントを含mんでなることができる。プロモーターの選択は、ポリペプチドを発現させる細胞に依存する。
【実施例】
【0057】
実施例1:構築物(i)でトランスフェクトした安定な真核細胞株の作製
構築物(i)は、公知の方法を用いて細胞中に安定的にトランスフェクトすることができる。外来DNAを真核細胞中に導入する種々の方法が存在し、多くの材料がトランスフェクションのキャリアとして使用されている。キャリアは3種類に分類することができる:(カチオン性)ポリマー、リポソーム及びナノ粒子。他のトランスフェクション法としては、ヌクレオフェクション、エレクトロポレーション、熱ショック、マグネトフェクション及び専売トランスフェクション試薬(例えば、Lipofectamine(登録商標)、Dojindo Hilymax(登録商標)、Fugene(登録商標)、JetPEI(登録商標)、Effectene(登録商標)、DreamFect(登録商標)、PolyFect(登録商標)、Nucleofector(登録商標)、Lyovec(登録商標)、Attractene(登録商標)、Transfast(登録商標)、Optifect(登録商標))が挙げられる。
【0058】
1.1 CHO-K1
本実施例では、構築物(i)は配列番号:6からなり、これは、固有の遺伝子座でCHO-K1のゲノム中に挿入されている特異的なメガヌクレアーゼ標的部位を含んでなる。この部位はGOIの正確な挿入遺伝子座である。この部位は、より大きな構築物の一部としてCHO-K1細胞株中に単一コピーとして挿入されている。cGPS-CHO-K1と名付けた最終的な細胞株では、メガヌクレアーゼ標的部位は、ハイグロマイシン耐性遺伝子の近傍で、EF1αプロモーターの下流に位置している。よって、cGPS-CHO-K1細胞株はハイグロマイシンに耐性である。更に、ネオマイシン耐性遺伝子がハイグロマイシン遺伝子の直ぐ下流に位置しているが、cGPS-CHO-K1細胞株をG418感受性にするプロモーターを欠いている(図1を参照)。
【0059】
1.2 NIH 3T3
本実施例では、構築物(i)は配列番号:6からなり、これは、固有の遺伝子座でNIH 3T3のゲノム中に挿入されている特異的なメガヌクレアーゼ標的部位を含んでなる。この部位はGOIの正確な挿入遺伝子座である。この部位は、より大きな構築物の一部分としてNIH 3T3細胞株中に単一コピーとして挿入されている。cGPSNIH 3T3と名付けた最終的な細胞株では、メガヌクレアーゼ標的部位は、ハイグロマイシン耐性遺伝子の近傍で、EF1αプロモーターの下流に位置している。よって、cGPSNIH 3T3細胞株はハイグロマイシンに耐性である。更に、ネオマイシン耐性遺伝子がハイグロマイシン遺伝子の直ぐ下流に位置しているが、cGPSNIH 3T3細胞株をG418感受性にするプロモーターを欠いている(図1を参照)。
【0060】
1.3 HEK 293
本実施例では、構築物(i)は配列番号:6からなり、これは、固有の遺伝子座でヒトHEK 293のゲノム中に挿入されている特異的なメガヌクレアーゼ標的部位を含んでなる。この部位はGOIの正確な挿入遺伝子座である。この部位は、より大きな構築物の一部分としてHEK 293細胞株中に単一コピーとして挿入されている。cGPSHEK 293と名付けた最終的な細胞株では、メガヌクレアーゼ標的部位は、ハイグロマイシン耐性遺伝子の近傍で、EF1αプロモーターの下流に位置している。よって、cGPSHEK 293細胞株はハイグロマイシンに耐性である。更に、ネオマイシン耐性遺伝子がハイグロマイシン遺伝子の直ぐ下流に位置しているが、cGPSHEK 293細胞株をG418感受性にするプロモーターを欠いている(図1を参照)。
【0061】
実施例2:cGPS細胞株への目的遺伝子(GOI)の高度に効率的な標的化挿入
2.1 構築物(ii)中へのGOIのクローニング
GOIを発現する細胞株を作製するための第1工程は、GOIをpTV-DS-MCS2ベクター(配列番号:22;図2を参照)中にサブクローニングすることである。この目的のために、多重クローニング部位をその中に導入した。
目的遺伝子の発現は、CMVプロモーター及びウシ成長ホルモン(BGH)ポリアデニル化シグナルにより制御される。pTV-DS-MCS2プラスミドは、cGPS遺伝子座(配列番号:6)で高度に効率的なHR事象を助ける全ての特徴を含有している。左の相同性アーム(構築物(i)のA2部及び構築物(ii)のA2'部に相当)は、cGPS細胞株中のメガヌクレアーゼ標的部位の1kb上流のゲノムに相同な0,8kbフラグメントから構成される。右の相同性アーム(構築物(i)のA5及び構築物(ii)のA5'に相当)は、cGPS細胞株中のメガヌクレアーゼ標的部位の0.8kb下流のゲノムに相同な0.6kbフラグメントから構成される。
【0062】
両相同性アームは、(i)ピューロマイシン耐性遺伝子(これは当該プラスミド上でプロモーターを欠いている)、(ii)GOI発現用のCMVプロモーター、(iii)GOI挿入用の多重クローニング部位、(iv)GOIのmRNAの安定性を制御するポリアデニル化シグナル及び(v)改変ネオマイシン耐性遺伝子により隔てられている。pTV-DS-MCS2プラスミドは、それ自体では、ピューロマイシン及びネオマイシン耐性表現型を誘導することができない。
【0063】
例えば、pTV-DS-LacZプラスミド(配列番号:17;図4参照)は、pTV-DS-MCS2の多重クローニング部位中にlacZ遺伝子をクローニングすることによって取得された。pTV-DS-LacZプラスミド(配列番号:17)は、哺乳動物細胞トランスフェクション用の陽性対照ベクターとして使用することができる。これは、cGPS細胞株中の発現レベルについてアッセイするために使用し得る。lacZ遺伝子の挿入後のcGPS部位の配列を配列番号:18として提供する。lacZ遺伝子の挿入前のcGPS部位の配列を配列番号:24として提供する。
cGPS遺伝子座でのLacZの挿入は、それがまるでGOIであるかのようにモニターすることができる。
【0064】
2.2 cGPS CHO-K1細胞株
2.2.1 cGPSCHO-K1の培養条件及びトランスフェクション
cGPSCHO-K1細胞を、0.6mg/mlのハイグロマイシンを補充したF-12K完全培地で継代培養する。cGPSCHO-K1細胞を1:10〜1:40の比で週に2回継代する。
【0065】
培地及び補充物
− 完全培地:F-12K培地(Invitrogen-Life Science)に、2mM L-グルタミン、ペニシリン(100UI/ml)、ストレプトマイシン(100μg/ml)、アンホテリシンB(Fongizone)(0.25μg/ml)及び10% FBSを補充する。
− PBS
− ハイグロマイシンB溶液(Sigma)
− ピューロマイシン二塩酸塩(Sigma)
− G418硫酸塩(Invitrogen-Life Science)
− トリプシン-EDTA溶液(Invitrogen-Life Science)
− 凍結培地:10% DMSOを補充したF12K完全培地
【0066】
トランスフェクション
トランスフェクションの1日前に、cGPSCHO-K1細胞を10cm組織培養ディッシュにおいて完全F-12K培地中に播種する(2×105細胞/ディッシュ)。
実行日に、2μgのpTVプラスミドバージョン(任意のGOIを含有するpTV-DS-MCS2、又はpTV-DS-LacZ)及び1μgのメガヌクレアーゼ構築物(pCLS1088若しくはpCLS2147プラスミドDNA、又はメガヌクレアーゼコーディングmRNA)をEC-R緩衝液中に希釈する。6μlのエンハンサー試薬を添加する(比 核酸(μg):エンハンサー(μl)は1:2とすべき)。
DNA:エンハンサーEC-R緩衝液の総容量は100μlとすべきである。10秒間ボルテックスし、室温にて5分間インキュベートする。
【0067】
24μlのTransMessengerTM (Qiagen)試薬(比 核酸(μg):TransMessengerTM (μl)は1:8とすべき)を上記ミックスに添加する。10秒間ボルテックスし、室温にて10分間インキュベートする。
この間に、培養培地を9mlの新鮮な培地と置換する。
トランスフェクションミックスの血清フリー及び抗生物質フリーの培地900μlを添加し、プレートした細胞上に分注する。
ディッシュを37℃、5% CO2湿潤インキュベータ中でインキュベートする。
トランスフェクションプロトコルの概略図を図5に示す。
【0068】
2.2.2 cGPS CHO-K1標的化クローン選択
2.2.2.1 cGPS CHO-K1クローン選択
クローン選択は、GOIを発現する適切な細胞株を選択するための、長いがより良好なプロトコルである。図6は、クローン選択プロトコルの概略図を示している(左列)。
cGPS CHO-K1細胞を上記(2.2.1)のプロトコルでトランスフェクトする。トランスフェクションの24時間後、細胞を洗浄し、0.6mg/mlのG418を補充した新鮮な培地を添加する。
【0069】
G418選択の10日後、培養培地を0.6mg/mlのG418及び10μg/mlのピューロマイシンを補充した完全培地と交換する。
3〜4日後、二重耐性クローンを採取し、96ウェルプレートに播種する。二重耐性クローンを、10cm培養ディッシュでコンフルーエンスに達するまで増幅させる。
7〜10日後、二重耐性クローンは、分析PCR及びサザンブロッティング実験により特徴付けることができる。pTV-DS-LacZを陽性対照として使用した場合には、陽性対照クローンはβ-ガラクトシダーゼ活性についてアッセイすることができる。
【0070】
2.2.2.2 cGPS CHO-K1集団選択
上記のクローン選択に加えて、挿入クローンの回収に集団選択手順を使用することができる。この手順はより速く、取り扱いが遥かに容易である;しかし、本発明者らは、純粋な単一挿入クローンを取得するには、クローン手順がより良好であると考えている。
例えば、cGPS CHO-K1細胞を上記(2.2.1)のプロトコルでトランスフェクトする。
トランスフェクションの24時間後、細胞を洗浄し、0.6mg/mlのG418を補充した新鮮な培地を添加する。
【0071】
G418選択の10日後、細胞を洗浄し、0.6mg/mlのG418及び10μg/mlのピューロマイシンを補充した新鮮な培地を添加する。
4〜10日後、二重耐性集団は、2つの選択剤を補充した完全培地中で増幅することができる。
図6は、集団選択プロトコルの概略図を示している(右列)。
cGPS CHO-K1における異なるGOIについての標的化挿入を実施例3、4、5、6及び7に示す。
【0072】
2.3 cGPS NIH 3T3細胞株
2.3.1 cGPS NIH 3T3の培養条件及びトランスフェクション
cGPS NIH 3T3細胞を、0.6mg/mlのハイグロマイシンを補充したDMEM完全培地で継代培養する。cGPS NIH 3T3細胞を1:3〜1:10の比で週に2回継代する。
【0073】
培地及び補充物
− 完全培地:DMEM培地(Invitrogen-Life Science)に、2mM L-グルタミン、ペニシリン(100UI/ml)、ストレプトマイシン(100μg/ml)、アンホテリシンB(Fongizone)(0.25μg/ml)及び10% FBSを補充する。
− PBS
− ハイグロマイシンB溶液(Sigma)
− ピューロマイシン二塩酸塩(Sigma)
− G418硫酸塩(Invitrogen-Life Science)
− トリプシン-EDTA溶液(Invitrogen-Life Science)
− 凍結培地:10% DMSOを補充したDMEM完全培地
【0074】
トランスフェクション
トランスフェクションの1日前に、cGPS NIH 3T3細胞を10cm組織培養ディッシュにおいて完全培地中に播種する(2×105細胞/ディッシュ)。
実行日に、1μgのpTVプラスミドバージョン(任意のGOIを含有するpTV-DS-MCS2、又はpTV-DS-LacZ)及び1μgのメガヌクレアーゼ構築物(pCLS1088若しくはpCLS2147プラスミドDNA、又はメガヌクレアーゼコーディングmRNA)を300μlのEC緩衝液中に希釈する。16μlのエンハンサー試薬を添加する(比 核酸(μg):エンハンサー(μl)は1:8とすべき)。
DNA:EC緩衝液の総容量は300μlとすべきである。軽くボルテックスし、室温にて5分間インキュベートする。
【0075】
40μlのEffecteneTM (Qiagen)試薬(比 核酸(μg):EffecteneTM (μl)は1:20とすべき)を上記ミックスに添加する。10秒間ボルテックスし、室温にて10分間インキュベートする。
この間に、培養培地を9mlの新鮮な培地と置換する。
トランスフェクションミックスの完全培地1mlを添加し、プレートした細胞上に分注する。
ディッシュを37℃、5% CO2湿潤インキュベータ中でインキュベートする。
トランスフェクションプロトコルの概略図を図7に示す。
【0076】
2.3.2 cGPS NIH 3T3標的化クローン選択
クローン選択は、GOIを発現する適切な細胞株を選択するための、長いがより良好なプロトコルである。図8は、クローン選択プロトコルの概略図を示している(左列)。
cGPS NIH 3T3細胞を上記(2.3.1)のプロトコルでトランスフェクトする。トランスフェクションの24時間後、細胞を洗浄し、0.4mg/mlのG418を補充した新鮮な培地を添加する。
【0077】
G418選択の10日後、単一コロニークローンを採取し、96ウェルプレートにおいて0.4mg/mlのG418及び3μg/mlのピューロマイシンを補充した完全培地中に播種する。
6〜7日後、二重耐性クローンは、2つの選択剤を補充した完全培地中で増幅することができる。
7〜10日後、二重耐性クローンは、分析PCR及びサザンブロッティング実験により特徴付けることができる。pTV-DS-LacZを陽性対照として使用した場合には、陽性対照クローンはβ-ガラクトシダーゼ活性についてアッセイすることができる。
【0078】
図9パネルAに示されるように、二重耐性クローンは、メガヌクレアーゼ発現ベクター及びpTV-DS-Laczでのコトランスフェクションに際してのみ存在する。対照(すなわち、メガヌクレアーゼ発現ベクターでのトランスフェクト細胞(陰性対照1)又はpTV-DS-lacZ(陰性対照2)でのトランスフェクト細胞)では、二重耐性クローンは得られない。更に、ほぼ全ての二重耐性クローンは、X-gal染色(材料及び方法について実施例6を参照)で明らかにされたように、lacz遺伝子を発現した。幾つかの二重耐性クローンをランダムに採取し、サザンブロッティングによる分子特徴付け(2.5章を参照)のために増幅させる。図9パネルBに示されるように、14の二重耐性クローンからのゲノムDNAをRsrII制限酵素で消化し、ニトロセルロースメンブレン上に固定化し、32P-ネオマイシンプローブとハイブリダイズさせる。正確な標的化挿入は、6.3kbのバンドの同定により特徴付ける。このバンドは、分析した全ての二重耐性クローンについて同定される一方、親のcGPS NIH 3T3については1.6kbのバンドが示される。6.3kbバンドに加えて、4/14クローンで他のバンドが存在する。このバンドは、おそらく付加的なランダム挿入に起因する。よって、これら結果は、上記の方法で得られたcGPS NIH 3T3二重耐性クローンが、cGPS遺伝子座に正確に標的化されている、組込みマトリクス上に存在するレポーター遺伝子を発現したことを証明している。
【0079】
2.4 cGPS HEK 293細胞株
2.4.1 cGPS HEK 293の培養条件及びトランスフェクション
cGPS HEK 293細胞を、0.1mg/mlのハイグロマイシンを補充したDMEM完全培地で継代培養する。cGPS HEK 293細胞を1:3〜1:10の比で週に2回継代する。
【0080】
培地及び補充物
− 完全培地:DMEM培地Glutamax (Invitrogen-Life Science)に、ペニシリン(100UI/ml)、ストレプトマイシン(100μg/ml)、アンホテリシンB(Fongizone)(0.25μg/ml)及び10% FBSを補充する。
− PBS
− ハイグロマイシンB溶液(Sigma)
− ピューロマイシン二塩酸塩(Sigma)
− G418硫酸塩(Invitrogen-Life Science)
− トリプシン-EDTA溶液(Invitrogen-Life Science)
− 凍結培地:10% DMSOを補充したDMEM完全培地
【0081】
トランスフェクション.
トランスフェクションの1日前に、安定なcGPSHEK 293細胞を10cm組織培養ディッシュにおいて完全培地中に播種する(106細胞/ディッシュ)。
実行日に、3μgのpTVプラスミドバージョン(任意のGOIを含有するpTV-DS-MCS2、又はpTV-DS-LacZ)及び2μgのメガヌクレアーゼ構築物(pCLS1088若しくはpCLS2147プラスミドDNA、又はメガヌクレアーゼコーディングmRNA)を300μlの無血清DMEM中に希釈する。一方で、10μlのLipofectamine 2000 (Invitrogen)を290μlの無血清DMEMと混合する。
2つのミックスを室温で5分間インキュベートする。次いで、DNAミックスをlipofectamineミックスに添加し、室温で20分間インキュベートする。
【0082】
この間に、培養培地を9mlの新鮮な培地と置換する。
インキュベーション期間の後、全トランスフェクションミックス(600μl)をプレートした細胞上に添加する。
ディッシュを37℃、5% CO2湿潤インキュベータ中でインキュベートする。
トランスフェクションの6時間後に培地を交換する(任意)。
このトランスフェクションプロトコルの概略図を図10に示す。
【0083】
2.4.2 cGPS HEK 293標的化クローン選択
クローン選択は、GOIを発現する適切な細胞株を選択するための、長いがより良好なプロトコルである。図11は、クローン選択プロトコルの概略図を示している(左列)。
cGPS HEK 293細胞を上記(2.4.1)のプロトコルでトランスフェクトする。トランスフェクションの24時間後、培養培地を、0.4mg/mlのG418を補充した新鮮な培地と置換する。
【0084】
G418選択の12日後、第2の選択剤(ピューロマイシン)を0.4μg/mlの濃度で添加する。
二重選択の7〜9日後、単一コロニークローンを採取し、96ウェルプレートにおいて0.4mg/mlのG418及び0.4μg/mlのピューロマイシンを補充した完全培地中に播種する。
10日後、二重耐性クローンは、分析PCR及びサザンブロッティング実験により特徴付けることができる。pTV-DS-LacZを陽性対照として使用した場合には、陽性対照クローンはβ-ガラクトシダーゼ活性についてアッセイすることができる。
【0085】
図12パネルAに示されるように、二重耐性クローンは、メガヌクレアーゼ発現ベクター及びpTV-DS-lacZでのコトランスフェクションに際して取得される。これら二重耐性クローンは、X-gal染色(材料及び方法について実施例6を参照)で明らかにされたように、lacz遺伝子を発現した。幾つかの二重耐性クローンをランダムに採取し、サザンブロッティングによる分子特徴付け(2.5章を参照)のために増幅させた。図12パネルBに示されるように、13の二重耐性クローンからのgDNAをRsrII制限酵素で消化し、ニトロセルロースメンブレン上に固定化し、32P-neoプローブとハイブリダイズさせる。正確な標的化挿入は、4.3kbのバンドの同定により特徴付けられる。このバンドは、分析した13クローンのうち11の二重耐性クローンについて同定される一方、親のcGPS HEK 293については1.6kbのバンドが示される。4.3kbバンドに加えて、11クローンのうちの3つについて第2のバンドが存在する。これは、おそらく付加的なランダム挿入に起因する。よって、これら結果は、上記の方法で得られたcGPS HEK 293二重耐性クローンが、cGPS遺伝子座に正確に標的化されている、組込みマトリクス上に存在するレポーター遺伝子を発現したことを証明している。
【0086】
2.5 挿入クローンの分子特徴付け
二重耐性クローンにおける正確な標的化挿入は、サザンブロット分析により分子レベルで容易に同定することができる(図13)。或いは、標的化クローンの迅速な特徴付けのために、PCRプライマーを設計することもできる。
【0087】
材料及び方法
標的化クローンからのゲノムDNA (gDNA)を107細胞(10cmディッシュでほぼコンフルーエント)から、Blood and Cell culture DNA midiキット(Qiagen)を用いて精製した(5〜10μgのgDNAを10倍過剰の制限酵素で一晩のインキュベーションにより消化する)。
消化gDNAを0.8%アガロースゲル上で分離し、ナイロンメンブレン上に移した。
次いで、ナイロンメンブレンをEF1αイントロンに特異的な32P DNAプローブでプローブした。
適切な洗浄後、オートラジオグラフィーによりプローブの特異的ハイブリダイゼーションが明らかになる。
【0088】
標的化挿入の左領域を検査するために:
フォワードオリゴ(cGPS遺伝子座中) F1_Prom:CCCCGACCGGAGCTGAGAGTAATT (配列番号:30)
リバースオリゴ(pTV-DS-MCS2ベクター中) B1_Pur:CAGGAGGCCTTCCATCTGTTG (配列番号:31)
増幅産物は1794塩基対(bp)長である。
【0089】
標的化挿入の右領域を検査するために:
フォワードオリゴ(pTV-DS-MCS2ベクター中) SV40s:CTGTGGAATGTGTGTCAGT (配列番号:32)
リバースオリゴ(cGPS遺伝子座中) NEOr:CAACGCTATGTCCTGATAGCGGTC (配列番号:33)
増幅産物は1073bp長である。
【0090】
結果
例えば(図13)、二重消化BglII (pEF1αプロモーターの上流の一部位)及びEcoRV (lacZ遺伝子中の固有部位)を用いて5'側でLacZの標的化挿入を検査する。プローブはEF1αイントロン内に位置する。よって、BglII/EcoRVで消化すると、天然型遺伝子座により、10kbより高いバンドが得られる。対照的に、標的化挿入は、BglII部位の近傍にLacZ由来のEcoRV部位をもたらす。二重消化に際して、イントロンプローブで同定される5kbのDNAフラグメントが生じる。同じアプローチを挿入の3'側についても使用することができる。
【0091】
実施例3 cGPS CHO-K1細胞株における目的遺伝子の発現
3.1 CD4発現
ヒトCD4 ORF (配列番号:40)をpTV-DS-MCS2中にクローニングした。得られたベクター(pTV-DS-CD4,図26,配列番号:41)を、2.2.1に記載のプロトコルに従ってcGPS CHO-K1細胞中にトランスフェクトした。CD4遺伝子の挿入後のcGPS部位の配列を配列番号:62として提供する。選択プロセス(2.2.2)を生き残った標的化クローンを単離し、膜貫通CD4タンパク質の発現を評価する。
【0092】
材料及び方法
標的化クローンからの細胞をPBS中で2回洗浄し、2mlのVersene溶液とインキュベートする。37℃にて5分間のインキュベーション後、細胞を15mlの円錐管に採集する。細胞を計数する。
106細胞を5mlチューブ(Falcon, 2058)に移し、300gで5分間4℃にて遠心分離する。細胞をFACS緩衝液で1回洗浄する。細胞ペレットを、20μlのビオチン接合抗-CD4又はビオチン接合イソタイプ対照抗体中に再懸濁する。氷上での30分間のインキュベーション後、細胞をFACS緩衝液で1回洗浄する。次いで、細胞ペレットを20μlのストレプトアビジン接合PEと30分間氷上でインキュベートし、遮光する。細胞をFACS緩衝液で1回洗浄し、最後に0.5mlのFACS緩衝液中に再懸濁する。
【0093】
結果
細胞サンプルを、FACS vantage II (BD Bioscience)で488nm鉄-アルゴンレーザを用いて分析する。放射蛍光(放射波長約580nm)を蛍光2チャンネルに集める(図14)。
これら実験により、CD4遺伝子産物をcGPS遺伝子座中に確実に挿入することができ、その後延長された期間にわたって安定的に発現させることができると示された。
【0094】
3.2 ソマトスタチンレセプター(GPCR SSTR2)発現
ヒトGPCR SSTR2 ORF (配列番号:42)をpTV-DS-MCS2中にクローニングした。得られたベクター(pTV-DS-SSTR2,図27,配列番号:43)を2.2.1に記載のプロトコルに従ってcGPS CHO-K1細胞中にトランスフェクトした。SSTR2遺伝子の挿入後のcGPS部位の配列を配列番号:63として提供する。選択プロセス(2.2.2)を生き残った標的化クローンを単離し、SSTR2タンパク質の発現を評価する。
【0095】
材料及び方法
GPCR SSTR2活性は、SSTR2レセプターの適切なアゴニスト刺激後のcAMP産生の阻害を測定することにより達成する。本発明者らは、HitHunterTM cAMP XS+アッセイキット(DiscoverX)により提供されたプロトコル及び試薬を使用した。簡潔には、標的化クローンからの細胞を白色96ウェルプレートに104細胞/ウェルの密度で播種する。フォルスコリン(100μM)及び漸増濃度のソマトスタチン(10-12M〜10-4M)での細胞の同時刺激後、細胞を溶解し、マイクロプレートルミノメータ(Victor, Perkin Elmer)を用いてcAMPレベルを測定する(図15)。
【0096】
結果
これら実験において、個々のクローンは、異なるレベルのソマトスタチンに応答して、同じcAMP産生阻害プロフィールを本質的に示すことが判明した。
【0097】
3.3 ヒトオートタキシン(hATX)
ヒトオートタキシンORF (配列番号:44)をpTV-DS-MCS2中にクローニングした。得られたベクター(pTV-DS-hATX,図28,配列番号:45)を2.2.1に記載のプロトコルに従ってcGPS CHO-K1細胞中にトランスフェクトした。hATX遺伝子の挿入後のcGPS部位の配列を配列番号:64として提供する。選択プロセス(2.2.2)を生き残った標的化クローンを単離し、ウェスタンブロッティングによりhATXタンパク質の発現を評価する。
【0098】
材料及び方法
ATX馴化培地の調製
cGPS CHO-K1 hATX標的化クローンを先ずPBSで2回洗浄し、血清を除去するために1%グルタミンを補充した無血清FK12培地で3回洗浄し(6ウェルプレートについて2ml/ウェル/洗浄)、次いで7% CO2を含有する湿潤雰囲気中同じ培地(1ml/ウェル)で37℃にて6時間インキュベートした。インキュベーション後、馴化培地(CM)を細胞から分離し、遠心分離して細胞残渣を排除し、次いでSpectra-Por 1.7 ml/cmチューブ(Pierce Chemicals,Interchim,Montlucon,France)を用いて、10リットルの20mM HEPES (pH7.4)、6mM D(+)-グルコース、1mM CaCl2及び1.2mM MgSO4に対して一晩透析した。透析後、Amicon Ultra 10,000 (Millipore)を用いてCMを濃縮する(約15倍)。濃縮馴化培地(CCM)を小分けして、使用まで−20℃で保存した。
【0099】
SDS-PAGE分離及びウェスタンブロッティング
Laemmli (25)に従ってSDS-PAGE 4〜12%を行い、続いてSypro Ruby染色及びウェスタンブロッティング検出を行った。サンプル緩衝液(Novex,Invitrogen)の添加後、CMの濃縮画分を100℃にて5分間煮沸した。1mm厚の18×10-cmゲル4〜12%アクリルアミド上でタンパク質の電気泳動分離を行った。サンプル緩衝液中の等量の総タンパク質を4-mmウェルのゲルにロードし、40mAで分離した。合計30μgの標準物質(Mark12又はMagic Mark,Invitrogen)を隣のレーンで移動させた。ゲルの一方をSypro Rubyで染色し、他方をニトロセルロースメンブレンに移し、ニワトリ抗-オートタキシン抗体に続いてHRP-接合抗-ニワトリ抗体(Sigma Aldrich)で染色した後、免疫複合体の化学発光検出を行った。
【0100】
結果
cGPS CHO-K1 hATX標的化クローンの上清中でのhATXの検出はウェスタンブロットにより行う。図16は、10のcGPS CHO-K1 hATX標的化クローンの上清又はcGPS CHO-K1 hATX標的化細胞集団(poly)からの馴化培地における、ヒトATXに特異的な抗体を用いた100kDを超えるバンドの同定を示している。陰性対照からの上清にはバンドは検出されない。これら結果は、このかなり大きな分泌タンパク質が全てのcGPS CHO-K1 hATX標的化クローンによって発現されることを示す。
【0101】
3.4 ヒトメラトニン1レセプター(hMT1)及びヒトメラトニン2レセプター(hMT2)
ヒトGPCR MT1 ORF (配列番号:46)をpTV-DS-MCS2中にクローニングした。得られたベクター(pTV-DS-hMT1,図29,配列番号:47)を2.2.1に記載のプロトコルに従ってcGPS CHO-K1細胞中にトランスフェクトした。hMT1遺伝子の挿入後のcGPS部位の配列を配列番号:65として提供する。選択プロセス(2.2.2)を生き残った標的化クローンを単離し、MT1タンパク質の発現を評価する。
ヒトGPCR MT2 ORF (配列番号:48)をpTV-DS-MCS2中にクローニングした。得られたベクター(pTV-DS-hMT2,図30,配列番号:49)を2.2.1に記載のプロトコルに従ってcGPS CHO-K1細胞中にトランスフェクトした。hMT2遺伝子の挿入後のcGPS部位の配列を配列番号:66として提供する。選択プロセス(2.2.2)を生き残った標的化クローンを単離し、hMT2タンパク質の発現を評価する。
【0102】
材料及び方法
インタクトな細胞による放射性リガンドの飽和
cGPS CHO-K1 hMT1標的化クローン及びcGPS CHO-K1 hMT2標的化クローンをTris/HCl 50mM pH7.4、EDTA 1mM及びMgCl2 5mM中に再懸濁し、96-ウェルポリプロピレンプレート中に13,000細胞/ウェルで分注した。全結合シグナルを決定するために[125I]-2-ヨードメラトニン5pM〜1.5nMを添加する一方、対照ウェルには非特異結合を決定するために追加の1μMメラトニンを含ませた。インキュベーションを250μLの総容量で37℃にて2時間行った。次いで、FilterMate細胞捕集器(Perkin Elmer)を用いて細胞を単一フィルタGF/Bプレート(Perkin Elmer)に移し、1mlの氷冷Tris 50mMで3回洗浄した。Microscint 20 (40μl/well, Perkin Elmer)を添加した後、プレートを密封した。フィルタープレートに結合した放射性リガンドを、TopCount (Perkin Elmer)シンチレーションカウントにより評価した。実験は3連で行った。データは、総タンパク質mg当たりの放射性リガンド特異結合部位(総量−非特異)fmolとして表す。グラフ及びデータ分析はPRISM 4.03 (GraphPad)を用いて作成した。
【0103】
結果
10のcGPS CHO-K1 hMT1標的化クローン及び10のcGPS CHO-K1 hMT2標的化クローンをランダムに採取し、[125I]-ヨードメラトニンを用いる放射性リガンド飽和実験に関して機能的に試験した。hMT1について得られた結果を図17に示し、hMT2について得られた結果を図18に示す。飽和曲線から、スキャッチャード分析によりpKd値が得られる(図17パネルA及び図18パネルA)。飽和曲線から、総タンパク質mg当たりの特異結合部位の量(fmol)が測定される(Bmax,図17パネルB及び図18パネルA)。両レセプターで同様な結果が得られる。このデータは、各クローンからのpKd値が互いに及びポリクローナルcGPS CHO-K1 hMT1-又はhMT2-標的化細胞集団と非常に近似していることを示している。しかし、hMT1及びhMT2レセプター発現の幾らかのバリエーションがクローン毎に観察される。両レセプターに関するpKd及びBmax値は、以前に公開された観察と一致している。
【0104】
実施例4 異なるプロモーターSの制御下でのGOIの発現
本実施例では、5F11モノクローナル抗体(Medarex Inc.)の重鎖(配列番号:50)及び軽鎖(配列番号:51)をpTV-DS-MCS2中にクローニングした。両鎖ともユビキチンサブユニットcプロモーター(pUbc,配列番号:52)の制御下にある。得られたベクター(pTV-DS-5F11,図31,配列番号:53)を2.2.1に記載されたプロトコルに従ってcGPS CHO-L1細胞中にトランスフェクトした。5F11遺伝子の挿入後のcGPS部位の配列を配列番号:67として示す。選択プロセス(2.2.2)を生き残った標的化クローンを単離し、5F11モノクローナル抗体タンパク質の発現を評価する。
【0105】
材料及び方法
標的化クローンからの細胞を96ウェルプレート(Costar)に104細胞/ウェルの密度で播種する。完全培地中での48時間の培養後、上清を採集し、ELISAによりモノクローナル抗体発現についてアッセイする。簡潔には、96ウェルプレートをPBS中ヤギ-抗-ヒトκ軽鎖(Southern Biotechnology Associates)で一晩4℃にてコートする。全ての洗浄工程をPBS、0.1% Tween 20中で行う。洗浄後、プレートをPBS、1% BSA (PBA)で90分間37℃にて振盪下でブロックする。洗浄後、サンプルからの50μlの希釈上清を添加し、90分間37℃にて振盪下でインキュベートする。洗浄後、PBA中のアルカリホスファターゼにカップリングしたヤギ-抗-ヒトIgG Fc (Jackson ImmunoResearch)を添加する。洗浄後、1mg/ml PNPP (Pierce)を含有する発色緩衝液(Pierce)を添加する。マイクロプレートリーダー(Model 550, BioRad)を用いて、光学密度(OD)を405nmで読み取る(図19)。
【0106】
結果
この研究により、測定した抗体発現レベルが作製したクローンの各々について48時間で0.04μg/mlより大きかったこと、及び発現レベルがほぼ均質であったことが示された。ただし、クローン29は調べた他のクローンと比較してより高い発現レベルを示した。
【0107】
実施例5 選択薬物の存在下又は不在下でのGOIの長期発現
本実施例で、本発明者らは、lacZ遺伝子を発現する4つのcGPS CHO-K1標的化クローン及びルシフェラーゼ遺伝子を発現する4つのcGPS CHO-K1標的化クローンの発現レベルをモニターした。lacZ ORF (配列番号:16)をpTV-DS-MCS2中にクローニングした。得られたベクター(pTV-DS-lacz,図4,配列番号:17)を2.2.1に記載のプロトコルに従ってcGPS CHO-K1細胞中にトランスフェクトした。選択プロセス(2.2.2)を生き残った標的化クローンを単離し、2.5章に従って特徴付ける。ルシフェラーゼORF (配列番号:54)をpTV-DS-MCS2中にクローニングした。得られたベクター(pTV-DS-ルシフェラーゼ,図32,配列番号:55)を2.2.1に記載のプロトコルに従ってcGPS CHO-K1細胞中にトランスフェクトした。ルシフェラーゼ遺伝子の挿入後のcGPS部位の配列を配列番号:68として提供する。選択プロセス(2.2.2)を生き残った標的化クローンを単離し、2.5章に従って特徴付ける。
4つのcGPS CHO-K1 lacz標的化クローン及び4つのcGPS CHO-K1ルシフェラーゼ標的化クローンを45継代(2継代/週)にわたって培養で維持した。各クローンを選択薬物(Puro;10μg/ml及びG418:0.6mg/ml)の存在下で培養した。更に、本発明者らは、30継代に相当する期間にわたって、同じクローンについてではあるが選択薬物なし(すなわち、完全F12K培地中)で2つのレポーター遺伝子の発現を評価した。
【0108】
材料及び方法
Lacz発現:標的化クローンからの細胞をPBS中で2回洗浄後、5mlのトリプシン-EDTA溶液とインキュベートする。37℃での5分間のインキュベーション後、細胞を15ml円錐管に採集し、計数する。
次いで、細胞を完全F-12K培地中に50000細胞/mlの密度で再懸濁する。100μl(5000細胞)を白色96ウェルプレート(Perkin-Elmer)に3連で小分けする。1ウェルあたり100μlのbeta-Glo試薬(Promega)を添加し、30分間のインキュベーション期間の後、プレートをルミノメータ(Viktor, Perkin-Elmer)で読み取ることができる。
【0109】
ルシフェラーゼ発現:標的化クローンからの細胞をPBS中で2回洗浄後、5mlのトリプシン-EDTA溶液とインキュベートする。37℃での5分間のインキュベーション後、細胞を15ml円錐管に採集し、計数する。
次いで、細胞を完全F-12K培地中に50000細胞/mlの密度で再懸濁する。100μl(5000細胞)を白色96ウェルプレート(Perkin-Elmer)に3連で小分けする。1ウェルあたり100μlのOne-Glo試薬(Promega)を添加し、短いインキュベーション後、プレートをマイクロプレートルミノメータ(Viktor,Perkin-Elmer)で読み取ることができる。
【0110】
結果
データを図20に示す。パネルA及びBでは、4つのcGPS CHO-K1 lacz標的化クローンのlacz発現の平均レベルを、それぞれ選択剤の存在下又は不在下で時間の関数として測定する。パネルC及びDには、4つのcGPS CHO-K1ルシフェラーゼ標的化クローンのルシフェラーゼ発現の平均レベルを、それぞれ選択剤の存在下又は不在下で時間の関数として示している。これらデータは、両レポーターの発現とも長期間の培養後でさえ顕著に安定であることを示している。更に、選択剤の存在は、導入遺伝子の長期発現を確実にするためには必要でない。なぜならば、標的化クローンを選択剤なしで培養したときのレポーター発現の安定性は等価であるからである。
【0111】
実施例6 I-CreI組換えタンパク質を用いる標的化クローンの作製
本実施例で、本発明者らは、I-CreI発現ベクタープラスミド又はmRNAの代わりに、組換えタンパク質としてI-CreIを使用して、cGPS CHO-K1システムにおける効率的な遺伝子ターゲティングを達成することができる可能性に取り組んだ。2つの異なる細胞透過性ペプチド(DPVとも呼ばれる)が、上皮細胞(HeLa、HCT116)、骨髄細胞(HL-60)、赤血球(K562)、リンパ球(Molt4)、線維芽細胞(NIH-3T3)を含む種々の哺乳動物細胞株並びに肝細胞の初代培養物(24)において、レポータータンパク質を核に輸送することが証明されている。これらは、200kDaまでの数ダルトン程度の分子の内在化を効率的に媒介することが示されている。これらペプチド配列DPV15b (配列番号:56)及びDPV1047 (配列番号:57)は、I-CreI N75メガヌクレアーゼタンパク質(配列番号:14)のN-末端部分に融合し、得られた組換えタンパク質をE. coli中で産生し、精製した。本実施例では、本発明者らは、DPV15b/I-CreI N75/6xHis(配列番号:58)と名付けた精製組換えタンパク質を使用した。
【0112】
材料及び方法
トランスフェクション:実行日に、Qiagen製のPolyFect(登録商標)試薬を用いて、0.5μgのpTV-DS-lacz (配列番号:17)をcGPS CHO-K1細胞中にトランスフェクトする。組込みマトリクスのトランスフェクションの1日後(D+1)に、1000μgの精製DPV15b/I-CreI N75/6xHis (配列番号:58)メガヌクレアーゼタンパク質をトランスフェクトcGPS CHO-K1細胞中に直接添加する。
選択:上記のプロトコルでcGPS CHO-K1細胞をトランスフェクトする。トランスフェクションの24時間後、細胞を洗浄し、0.6mg/mlのG418を補充した新鮮な培地を添加する。G418選択の10日後、培養培地を、0.6mg/mlのG418及び10μg/mlのピューロマイシンを補充した完全培地で置換する。3〜4日後、倒立顕微鏡により二重耐性クローンを可視化する。この工程で、二重耐性クローンをlacz発現のモニター用に染色するか又は増幅及び分子特徴付けのために採取する(2.5章を参照)。
【0113】
X-gal染色:培養培地を取り除き、LacZ-標的化二重耐性cGPS CHO-K1接着性細胞をPBSで1回洗浄する。5mlの固定緩衝液(100mMリン酸緩衝液,1mM MgCl2,0.5%(v/v)グルタルアルデヒド(Prolabo,25%溶液))を添加する。氷上で10分間のインキュベーション後、固定緩衝液を5mlの洗浄緩衝液(100mMリン酸緩衝液,1mM MgCl2,0.02%(v/v) NP40)で置換する。次いで、5mlの染色緩衝液(10mMリン酸緩衝液,1mM MgCl2,33mM KFerri [ヘキサシアノ鉄カリウム(III)],33mM KFerro [ヘキサシアノ鉄カリウム(II)],0,1%(v/v) X-Gal)を37℃のインキュベーション用に添加する。24時間以内に青色細胞が現れるはずである。
【0114】
結果
図21パネルAに示されるように、KIアッセイ後に、I-CreI N75メガヌクレアーゼを発現した瞬間から(pCLS1088)又はLacZをコードする組込みマトリクスのトランスフェクションと共にDPV細胞透過性ペプチドとの融合物(DPV15b/I-CreI N75/6xHis)を添加した瞬間から(pCLS1625)、二重耐性(NeoR/PuroR) cGPS CHO-K1細胞コロニーが生じる。対照的に、組込みマトリクスの単独トランスフェクションは細胞コロニーを生じない。このことは、cGPS CHO-K1 KIモデルにおける相同組換えを媒介するI-CreI N75メガヌクレアーゼの重要性を強調している。
【0115】
I-CreI N75-コードDNAプラスミドのトランスフェクションから示されるもの(約50,5×10-4の選択頻度)に比して、DPV15b/I-CreI N75/6xHis (配列番号:58)組換えタンパク質の送達ではより少ない細胞コロニー(約30,3×10-4の選択頻度を導く)が生じたが、これら結果は、DPV15b/I-CreI N75/6xHis (配列番号:58)組換えタンパク質がlacz遺伝子の標的化組込みを誘引することを明確に示している。更に、こらら全てのcGPS CHO-K1 lacZ標的化クローンは、DNA及びタンパク質の両方の状態についてX-Gal染色後に青色である。このことは、おそらく、全ての細胞クローンが確実に標的化されていることを示唆している。
【0116】
しかし、レポーターLacZ遺伝子の発現は、ランダムな染色体組込みから生じ得るので、異なる二重耐性cGPS CHO-K1細胞クローンについて組込みの正確なcGPS遺伝子パターンを検査するためにサザンブロット分析を行った。19の個別のcGPS CHO-K1 lacz標的化クローン並びにCHO-K1及び非標的化cGPS CHO-K1細胞から抽出したゲノムDNAを、cGPS染色体遺伝子座(すなわち、EF1αイントロン配列)に特異的なプローブとのハイブリダイゼーションに供した。
【0117】
図21パネルBに示されるように、大多数のLacZ-標的化cGPS CHO-K1細胞クローン(19中の18)が、LacZ遺伝子の標的化挿入を証明する約5kbバンドを有し、予想されたcGPS改変遺伝子座を含有する。対照的に、元の非標的化cGPS CHO-K1細胞株に由来するゲノムDNA抽出物のハイブリダイゼーションにより、より高いバンド(10kb)の存在が明らかにされ、陰性対照(すなわち、EF1αイントロン配列を含有しないCHO-K1細胞株)ではバンドが検出されない。cGPS遺伝子座でのターゲティングは高度に特異的である。なぜならば、LacZ-標的化cGPS CHO-K1細胞クローンからは追加のバンドは検出されず、したがってゲノム中のどこにもランダムな組込みがないことが明らかになったからである。
【0118】
実施例7 cGPS CHO-K1システムとカスタムメガヌクレアーゼ遺伝子ターゲティングシステムとの組合せによる二重標的化細胞株の作製
本実施例で、本発明者らは、cGPS CHO-K1システムをカスタムメガヌクレアーゼcGPSシステムとの組合せで使用して、CHO-K1ゲノムの2つの独特な遺伝子座中への2つの目的遺伝子のターゲティングを導くことができる可能性に取り組んだ。2つのGOIの挿入は逐次である。第1のGOIは、2.2章に記載されるcGPS遺伝子座に挿入する。一旦cGPS CHO-K1標的化クローンが2.5章に記載のように同定されると、CHO-K1 HPRT遺伝子の第3エキソンで切断するように操作されたSc MA17-RM2-G19H33 (WO2008/059382)と名付けられたカスタムメガヌクレアーゼ(配列番号:60)により、第2のGOIをcGPS CHO-K1標的化クローンに挿入する。lacZ遺伝子を含有するcGPSカスタムCHO-K1組込みマトリクス(図22;配列番号:59)及びメガヌクレアーゼ発現ベクター(図23;配列番号:61)を、cGPS CHO-K1標的化クローン中にコトランスフェクトする。コトランスフェクションにより、操作したメガヌクレアーゼが発現し、HPRT認識部位を認識し、この正確な部位でDNA二本鎖破断を誘導する。相同組換えがメガヌクレアーゼ認識部位で起こる。組込みマトリクス中相同性領域間にクローニングされた目的遺伝子は、この組換え事象の間にメガヌクレアーゼ認識部位で組み込まれる。メガヌクレアーゼ誘導相同組換えに続いて、ハイグロマイシン耐性遺伝子が内因性HPRTプロモーターを介して転写され、HPRTの第1のエキソン(エキソン1、2及びエキソン3の一部)との融合タンパク質として発現する。新たに獲得したハイグロマイシン耐性表現型に加えて、モノ対立遺伝子HPRT遺伝子座のターゲティングはその不活化を導き、したがって6-チオグアニン(6-TG)ヌクレオチドに対して耐性となる。よって、安定なcGPS CHO-K1標的化クローンを、ハイグロマイシン/6-TG二重耐性及び目的の組換えタンパク質の発現について選択することができる。
【0119】
以下の実施例では、ルシフェラーゼ遺伝子を、cGPS CHO-K1遺伝子座に挿入すべき第1のGOIとして選択する一方、lacz遺伝子がHPRT遺伝子座に挿入すべき第2のGOIである。二重標的化クローンの選択後、安定性を評価するために、2つのレポーター遺伝子の発現を20継代(40週間)にわたってモニターする。
【0120】
材料及び方法
トランスフェクション
トランスフェクションの1日前、cGPS CHO-K1標的化クローン細胞を10cm組織培養ディッシュに播種する(2×105細胞/ディッシュ)。トランスフェクション当日、1μgのメガヌクレアーゼ発現ベクター及び2μgの組込みマトリクス(lacZ遺伝子を含有)を275μlの無血清培地中に希釈する。25μlのPolyFectTM試薬を希釈DNAに添加し、トランスフェクションミックスを10秒間ボルテックスし、室温で10分間インキュベートする。
この間に、培養培地を9mlの新鮮な培地と置換する。次いで、700μlの完全培地をトランスフェクションミックスに添加し、全量を、プレートした細胞上に分注する。
トランスフェクト細胞を37℃、5% CO2湿潤インキュベータ中でインキュベートする。
【0121】
選択
トランスフェクションの3日後、細胞を洗浄し、0.6mg/mlのハイグロマイシンBを補充した新鮮な培地を添加する。
ハイグロマイシン選択の7日後(Day+10)、0.6mg/mlのハイグロマイシンB及び5μg/mlの6-チオグアニン(Hybrimax,Sigma)を補充した新鮮な培地を添加する。
二重選択の5又は8日後(Day+15〜Day+18)、単一コロニークローンを採取し、96ウェルプレートにおいて0.6mg/mlのハイグロマイシンB及び5μg/mlの6-チオグアニンを補充した完全培地中に播種する。
二重耐性クローンを、2つの選択剤を補充した完全培地中で増殖させる。下流の実験(すなわち、分子特徴付け、lacZ発現、など…)について、本発明者らは、均質な発現を維持するために、両選択剤を維持するように強く推奨する。
【0122】
サザンブロット
ゲノムDNA(gDNA)を107細胞(10cmディッシュでほぼコンフルーエント)から精製する。5〜10μgのgDNAを、一晩のインキュベーションにより10倍過剰のEcoRV制限酵素で消化する。消化DNAをニトロセルロースメンブレンに移し、32P-標識-laczプローブとのハイブリダイゼーションを実施する(詳細は2.5章を参照)。
【0123】
結果
本発明者らは、前に、ルシフェラーゼレポーター遺伝子を発現するcGPS CHO-K1標的化クローンを作製した(実施例4並びに図20パネルC及びDを参照)。これらcGPS CHO-K1ルシフェラーゼ標的化クローンの1つを使用して、第2の、Hprt遺伝子座中へのlacz遺伝子の標的化挿入を実施した。cGPS CHO-K1ルシフェラーゼ標的化細胞を、lacz遺伝子を含有する組込みマトリクスとハムスターHprt遺伝子に特異的なメガヌクレアーゼ発現ベクターとでコトランスフェクトする。選択に際しては、「材料及び方法」の章で記載したように、ハイグロマイシン及び6-TG耐性クローンを、Hprt遺伝子におけるlacz遺伝子の正確な挿入について分析する。図24パネルAに示されるように、18中18クローンが正確に標的付けられている。18中5クローンが、組込みマトリクスのランダム挿入におそらく対応する追加のバンドを示す。これらデータは、CHO-K1で実験を行ったときに得られたデータと一致している。更に、本発明者らは、第1の標的化挿入部位であるcGPS CHO-K1遺伝子座が依然として改変されていることを、サザンブロットにより検証した。図24パネルBに示されるように、18の分析したクローンは、改変されたcGPS CHO-K1遺伝子座に匹敵するハイブリダイゼーションパターンを示す。まとめると、これらデータは、cGPS CHO-K1遺伝子座における第1の標的化挿入が第2の挿入の効率に影響を与えないこと、及び第2の標的化挿入が少なくともゲノムレベルでは第1の挿入を害しないことを証明している。
【0124】
二重の挿入が2つのレポーター遺伝子の発現に影響を与えるかどうかを検証するために、4つの二重標的化クローンを11週間(21継代)にわたって培養で維持し、lacz及びルシフェラーゼの発現について定期的にチェックした。図25パネルAに示されるように、lacz遺伝子の発現は全研究期間にわたって安定である。同様に、ルシフェラーゼ発現は安定であり(図25パネルB)、cGPS CHO-K1単一標的化クローンについて観察された発現(図20パネルC及びD)に匹敵する。
【0125】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)核酸分子によりコードされ、少なくとも以下の成分:
A1 - A2 - A3 - A4 - A5 (i)
(式中、A1は第1のプロモーターであり;A2は第1の相同部分であり;A3はメガヌクレアーゼ切断部位であり;A4は第1のマーカー遺伝子であり;A5は第2の相同部分である)を含んでなる構築物(i)であって、少なくとも1つの標的細胞のゲノム中に安定的に組み込まれるように構成されている構築物(i);
b)核酸分子によりコードされ、少なくとも以下の成分:
A2' - B1 - B2 - B3 - B4 - A5' (ii)
(式中、A2'は前記第1の相同部分A2の一部を含んでなり;B1は前記第1のマーカー遺伝子とは異なる第2のマーカー遺伝子であり;B2は第2のプロモーターであり;B3は多重クローニング部位であり;B4は第3のプロモーターであり;A5'は前記第2の相同部分A5の一部を含んでなる)を含んでなる構築物(ii);
c)核酸分子によりコードされ、少なくとも以下の成分:
C1 - C2 (iii);
C3 (iv)
を含んでなる構築物(iii)若しくは(iv);又は
少なくとも以下の成分:
C4 (v)
を含んでなる単離若しくは組換えのタンパク質である構築物(v)
(式中、C1は第4のプロモーターであり;C2はメガヌクレアーゼのオープンリーディングフレーム(ORF)であり;C3は前記メガヌクレアーゼのメッセンジャーRNA(mRNA)バージョンであり;C4は前記メガヌクレアーゼの単離若しくは組換えのタンパク質である)を含む群より選択される少なくとも1つの構築物であって、構築物(iii)、(iv)若しくは(v)からの前記メガヌクレアーゼはA3を認識・切断し;構築物(iii)、(iv)若しくは(v)は前記少なくとも1つの標的細胞中に構築物(ii)と共にコトランスフェクトされるように構成されてなる少なくとも1つの構築物;
を含む、遺伝子構築物セット。
【請求項2】
前記構築物(ii)の成分A2'及びA5'がそれぞれ前記構築物(i)の成分A2及びA5の200bp以上6000bp以下を含んでなる請求項1の構築物セット。
【請求項3】
前記構築物(ii)の成分A2'及びA5'がそれぞれ前記構築物(i)の成分A2及びA5の1000bp以上2000bp以下を含んでなる請求項1又は2の構築物セット。
【請求項4】
前記成分A5がマーカー遺伝子又はその一部をコードする請求項1〜3のいずれか1項に記載の構築物セット。
【請求項5】
前記成分A5'が前記A5の3'末端の欠失を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の遺伝子構築物セット。
【請求項6】
前記各構築物(i)、(ii)、(iii)、(iv)及び(v)の前記成分が、以下の群:
【表1】

から選択される請求項1〜5のいずれか1項に記載の遺伝子構築物セット。
【請求項7】
構築物(i)が配列番号:6を含む請求項1〜6のいずれか1項に記載の遺伝子構築物セット。
【請求項8】
構築物(ii)が配列番号:22を含む請求項1〜7のいずれか1項に記載の遺伝子構築物セット。
【請求項9】
構築物(iii)が配列番号:38又は配列番号:39を含む請求項1〜8のいずれか1項に記載の遺伝子構築物セット。
【請求項10】
構築物(iv)が配列番号:14又は配列番号:15又は配列番号:34又は配列番号:35を含む請求項1〜9のいずれか1項に記載の遺伝子構築物セット。
【請求項11】
構築物(v)が細胞透過性ペプチドを含み、特に該細胞透過性ペプチドは配列番号:56、配列番号:57を含む群から選択される請求項1〜10のいずれか1項に記載の遺伝子構築物セット。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の遺伝子構築物セット及び該遺伝子構築物セットを用いて形質転換細胞を作製するための指示書を含んでなる、GOIをコードする配列を少なくとも1つの細胞に導入するためのキット。
【請求項13】
配列番号:17又は配列番号:54からなる構築物(vi)を更に含んでなる請求項12に記載のキット。
【請求項14】
前記構築物(i)で安定的に形質転換された少なくとも1つの細胞を更に含んでなる請求項12又は13に記載のキット。
【請求項15】
前記少なくとも1つの細胞が、CHO-K1細胞;HEK293細胞;Caco2細胞;U2-OS細胞;NIH 3T3細胞;NSO細胞;SP2細胞;CHO-S細胞;DG44細胞を含む群から選択される請求項14に記載のキット。
【請求項16】
a)請求項1〜7のいずれか1項に記載の構築物(i)を少なくとも1つの細胞のゲノム中に挿入することにより、該少なくとも1つの細胞を安定的に形質転換する工程;
b)請求項1〜8のいずれかに記載の構築物(ii)のB3位置に、目的遺伝子をコードする配列をクローニングする工程;
c)工程b)の構築物(ii)と請求項1〜11のいずれか1項に記載の構築物(iii)、(iv)又は(v)とで工程a)の細胞をコトランスフェクトする工程;
d)前記構築物(ii)と前記安定的に挿入された構築物(i)との間での相同組換え後に、前記構築物(i)の成分A4によりコードされる第1のマーカー遺伝子の欠如、及び成分B1によりコードされる第2のマーカー遺伝子の活性、及び成分A5によりコードされる第3のマーカー遺伝子の活性に基づいて、工程c)からの少なくとも1つの細胞を選択する工程、
を含んでなる、相同組換えにより少なくとも1つの細胞を形質転換する方法。
【請求項17】
工程d)における選択が前記第1のマーカー、前記第2のマーカー及び前記第3のマーカーの各々について逐次行われる請求項16に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【公表番号】特表2012−506252(P2012−506252A)
【公表日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532740(P2011−532740)
【出願日】平成21年10月23日(2009.10.23)
【国際出願番号】PCT/IB2009/007526
【国際公開番号】WO2010/046786
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(508245231)
【氏名又は名称原語表記】CELLECTIS
【住所又は居所原語表記】102 avenue Gaston Roussel,F−93235 Romainville Cedex,France
【Fターム(参考)】