説明

メガネフレームのツル継手構造

【課題】 メガネフレームのフロント部両側にツルが折畳み出来るように取付けられ、ロウ付け工程及びネジ止め工程を必要とせず、ツルの交換を可能としたツル継手構造の提供。
【解決手段】 フロント部側のヨロイ7とツル2の間には両軸8a,8bを所定の間隔をおいて平行に設けた□形継手3を介在し、ヨロイ側及びツル側には複数の連結片11,13を延ばすと共に各連結片の先端には係合部15,16を形成し、この係合部によって軸8a,8bを抱き込むことでツル2をヨロイ7と連結し、そしてツル2が開いた時の開き度を規制する為のストッパー12,14を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロウ付け工程を必要とせず、何時まで経ってもツルがガタ付くことのないメガネフレームのツル継手構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4には一般的なメガネフレームを示しているように、フロント部(イ)と2本のツル(ロ)、(ロ)から成り、ツル(ロ)、(ロ)は蝶番(ハ)、(ハ)を介して折畳み出来るように連結している。フロント部(イ)はレンズが嵌る両リム(ニ)、(ニ)が連結部材(ホ)にて左右対称に連結され、リム(ニ)、(ニ)の外側にはヨロイ(ヘ)、(ヘ)がロウ付けされている。上記ツル(ロ)、(ロ)はこのヨロイ(ヘ)、(ヘ)に蝶番(ハ)、(ハ)を介して折畳み出来るように取付けられている。
【0003】
ところで、メガネフレームには2本のツル(ロ)、(ロ)が備わっていて、継手を介して折畳まれるように成っている。上記蝶番(ハ)、(ハ)は最も代表的な継手であるが、近年のメガネフレームには蝶番以外の継手が採用されている。該蝶番(ハ)はヨロイ(ヘ)とツル(ロ)にロウ付けした蝶片が軸ネジを介して連結した構造としているが、ロウ付け工程が必要になると共に軸ネジが弛むなどしてツル(ロ)はガタ付くことが多い。
【0004】
特開2001−13468号に係る「眼鏡の丁番構造」は、眼鏡を構成する2部材を回動自在に結合するための眼鏡の丁番構造であり、部材自体のバネ性を用いずに回動動作に適度な抵抗を与える「あがき」を安定した構造としている。
すなわち、 テンプルの端部に接続された軸受部の外周面にリング状の弾性摺動部材を嵌め込み、軸受部を軸に通した状態で弾性摺動部材は当接部との間で圧縮され、テンプルの回動に伴い摺動抵抗によるあがきを得ることが出来る。
【0005】
特開2002−122819号に係る「眼鏡部品の連結構造」は、スポット溶接やロー付け或いはネジ締めをすることなく簡単かつ円滑にテンプル等を連結できる他、より簡単な構造で経年変化に強く、かつ、テンプルの回動限界位置も正常に保つことができる眼鏡部品の連結構造である。
そこで、智(ヨロイ)の連結部に設けられた環体と、該環体に回動自在に抜け止めされてテンプル(ツル)を支持せしめる突起体とを備えてなる。
【0006】
特表2007−537468号に係る「メガネ」は、サイドピース及びフレームに付随する結合要素から構成されるメガネに関し、共にメガネの左右に存在する。そして、結合要素は、サイドピースのフレーム末端部上に設けられる関節要素と協働する関節要素を備えて蝶番を形成する。サイドピースは、そのフレーム末端部上で縦方向に延在する、少なくとも2つのフィンガを含み、該フィンガは、蝶番の関節軸の方向でバネ作用を発揮することが出来る。
【0007】
このように、蝶番を使用しないツルの継手構造は色々知られ、基本的にはツルがガタ付かない構造としているが、しかしこれら継手構造は非常に複雑であるため製作誤差に基づくガタを発生することが考えられる。又、組立てに際しては個々の部品をロウ付けしなくてはならない煩わしさもある。また、蝶番をはじめ従来の継手構造ではツルの取付けに多くの時間がかかり、まして該ツルの交換は不可能である。
【特許文献1】特開2001−13468号に係る「眼鏡の丁番構造」
【特許文献2】特開2002−122819号に係る「眼鏡部品の連結構造」
【特許文献3】特表2007−537468号に係る「メガネ」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように従来のツル継手構造には上記のごとき問題がある。本発明が解決しようとする課題はこれら問題点であり、組み立てに際してネジを用いることなく、又ロウ付け工程がいらず、しかもツルを取外して新たなツルとの交換も容易に行うことが出来、さらにガタ付かないシンプルなツル継手構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るツル継手構造は、概略□形継手を介してヨロイとツルが連結している。すなわち、所定の間隔をおいて起立した2本の平行軸の上端と下端が繋がれて□形の継手を構成している。そして、ヨロイの先端には複数本の連結片が設けられ、この連結片は□形継手の軸に係合して連結している。そこで、連結片には軸を抱き込むことが出来る係合部を形成している。
【0010】
同じく、ツル端にも複数本の連結片が設けられ、この連結片は□形継手の軸に係合して連結している。該連結片には軸の外周を抱き込む係合部を形成している。ここで、上記係合部とは軸に接して該軸を抱き込むことが出来る形状とし、一般的は概略半円形断面又はV形断面を成して軸外周に接することが出来る。そして、ヨロイ側及びツル側にはツルの開き度を規制することが出来るストッパーを形成している。
【0011】
このストッパーの具体的な形態は限定しないが、連結片より長く延ばして□形継手の両軸に係合する為の係合部を設けることも出来る。すなわち、短い連結片は片側の軸にのみ係合し、長いストッパーは両軸に係合する。そして、連結片及びストッパーに形成した係合部は軸を対向する側から抱き込んで該軸と連結することが出来る。ここで、□形継手は両軸と該両軸を繋ぐ継手片を有しているが、この□形継手の具体的な組み立て構造に関しては任意である。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るツル継手構造は□形継手を介してフロント部のヨロイにツルが取付けられるが、ヨロイ及びツルに設けた複数の連結片が継手の軸に係合する継手構造であり、ロウ付け工程及びネジ止め工程は不要となる。従って、ツルの取付け作業は簡単であり、又ツルを交換する為に取外すことも出来る。すなわち、連結片及びストッパーに係合部が形成されて、該係合部が軸を抱き込むように係合しているが、バネ性(弾性)を備えていることで軸を係合部から着脱することが出来る。
【0013】
ヨロイ及びツルには連結片が形成されて□形継手の軸に係合するが、該連結片より大きく延びて両軸に係合するストッパーを形成している為に、ツル及びヨロイは軸を基点とした回転方向の位置決めが規制される。すなわち、メガネを掛ける際にツルを開く場合、該ツル及びヨロイから延びるストッパーが継手のヨロイ側軸及びツル側軸に当って所定の位置で停止することが出来る。さらに、バネ性を備えたストッパーは撓み変形することが出来ることで、ツルを外方向へ僅かに押し開くことが出来、従来のバネ蝶番と同じように機能することが可能と成る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るツル継手構造を備えたメガネフレーム。
【図2】本発明のツル継手構造の具体例。
【図3】継手に連結する為に、ツル及びヨロイに形成した連結片及びストッパー。
【図4】一般的なメガネフレーム。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は本発明のツル継手構造を備えたメガネフレームの外観図を示す実施例である。同図の1はフロント部、2はツルを表し、該ツル2,2はフロント部1の両側に継手3,3を介して折畳み出来るように取付けられている。フロント部1にはレンズが嵌るリム4,4が設けられ、両リム4,4は連結部材5によって連結され、そして、連結部材5の下方でリム4,4の中央側には鼻当てパット6,6が取付けられている。
【0016】
ところで、本発明はツル2が折畳み出来るように連結される上記継手3を対象とするものであり、上記フロント部1の形態は限定しない。同図のフロント部1はレンズが嵌る円環状リム4,4を備えているが、上側半分のハーフリムと下側に水糸を張設した構造のフロント部1としたり、又はリムを用いないで両レンズを連結部材の両側に直接ネジ止めすると共に外側にはヨロイを直接ネジ止めした構造の縁なしメガネとして構成する場合もある。
【0017】
又、従来のフロント部とは全く違った2重構造として構成することもある。すなわち、フロント部1をレンズが嵌らないリムを備えたフロントフレームとその裏側(背面側)にレンズを保持するリムを備え、フロントフレームを小さい繋ぎ片を介して連結した構造とする。そして、ツル2,2はフロントフレームの両側に設けたヨロイに継手3,3を介して取付けられる。
【0018】
図2は本発明の継手3を示す拡大図であり、2はツル、3は継手、7はヨロイをそれぞれ表している。該ヨロイ7はフロント部1の両側に設けられ、このヨロイ7に継手3を介してツル2が取付けられ、しかもツル2は継手3を介して折畳まれる。ところで、該継手3は同図に示すように□形を成し、所定の間隔をおいて2本の軸8a,8bを有し、平行な2本の軸8a,8bは上繋ぎ片9と下繋ぎ片10にて繋がれている。
【0019】
ところで、この□形継手3の軸8a,8bにはツル2及びヨロイ7に形成した複数本の連結片が係合して連結する構造と成っている。図3は継手3に連結する前のヨロイ先端とツル端を示す具体例である。ツル2には上部と下部に連結片11a,11eが延び、そして両連結片11a,11eの間に所定の空間を残して2本のストッパー12b,12dを形成している。そして、該ストッパー12b,12dは連結片11a,11eに比較して長く成っている。
【0020】
一方のヨロイ7には4本の連結片13a,13b,13d,13eが延び、中央にはストッパー14が延びている。そして、ツル2及びヨロイ7の各連結片11a,11e,13a,13b・・・、及び各ストッパー12b,12d,14が継手3の軸8a,8bに係合することで、ツル2はヨロイ7に連結することが出来る。しかも、該継手3を介してツル2は折畳まれる。
【0021】
ところで、継手3の軸8a,8bにヨロイ7及びツル2が係合して連結されるように、上記連結片及びストッパーには係合部を形成している。図3において、ツル2の連結片11aには半円形断面の係合部15aが設けられ、ストッパー12bには同じく半円形断面の2個の係合部15b,15bが設けられている。又、ストッパー12dにも半円形断面の係合部15d,15dが形成され、さらに連結片11eには半円形断面の係合部(図示なし)が形成されている。
【0022】
一方のヨロイ7の連結片13aには半円形断面の係合部16aが設けられ、連結片13bには半円形断面の係合部16bが設けられ、ストッパー14には半円形断面をした2個の係合部16c,16cが設けられ、連結片13dには半円形断面の係合部16dが設けられ、さらに、連結片13eには半円形断面の係合部(図示なし)が形成されている。
【0023】
そして、ツル2とヨロイ7が連結する場合には、□形継手3の軸8bにヨロイ側に形成した係合部16a,16b,16c,16d,15b、15dが係合し、軸8aにはツル側に形成した係合部15a,15b,15d、16cが係合して、前記図2に示す継手構造を構成する。
【0024】
ところで、図2はツル2が開いている状態であるが、該ツル2を折り畳む場合には、該ツル2は継手3の軸8aを中心として旋回することが出来る。又は軸8bを中心として継手3と共に旋回して折り畳むことも出来る。そして、ツル2を開く際には軸8aと中心として旋回し、又は継手3と共に軸8bと中心として旋回する。ツル2は所定の位置まで開いたならば、ストッパーにてツル2の開き度が規制される。
【0025】
すなわち、軸8aを中心としてツル2が旋回して開く場合、連結片11a,11eより大きく延びているストッパー12b,12dの先端側に形成している係合部15b,15dが軸8bに当って停止する。停止した状態で、継手3がツル2と共に軸8bを中心として旋回することがないように、ヨロイ7から延びるストッパー14の先端に形成している係合部16cが軸8aに当って係合することで該継手3の旋回は阻止される。
【0026】
ところで、継手3の軸8a,8bは連結片11a,11e,13a、13b・・・に形成した係合部15a,16a,16b・・・、及びストッパー12b,12d,14に形成した係合部15b,15d,16c・・に抱き込まれている。そして、細い連結片11a,11e,13a、13b・・は撓み変形することが出来、各軸8a,8bを抱き込むに際して弾性変形し、軸8a,8bに係合した状態ではバネ力(弾性力)が付勢される。
【0027】
従って、係合部と軸間には隙間がなく、しかもバネ力が付勢されることでツル2はガタ付くことなく開閉操作が行なわれる。ここで、係合部の断面形状として同図では半円形としているが、V形断面をした係合部とすることも出来る。すなわち、V形断面とすることで軸8a,8bとは線接触にて係合することが可能であり、機能的には半円形断面の係合部と同じである。
【0028】
一方、継手3は両軸8a,8bを上繋ぎ片9と下繋ぎ片10にて連結して□形をしているが、この継手3は両軸8a,8bを上繋ぎ片9と下繋ぎ片10にてネジ止めした構造とすることが出来る。又は、樹脂製の継手3であれば、両軸8a,8bと共に上繋ぎ片9と下繋ぎ片10を一体成形することも可能である。
【0029】
上記連結片11a,11e,13a,13b・・・及びストッパー12a,12d,14はバネ性(弾性)を備えていることで撓み変形することが出来、□形継手3の状態で各連結片11a,11e,13a,13b・・・の係合部15a,16a,16b・・・に軸8a,8bを嵌めて係合する。ただし、連結片11a,11e,13a,13b・・・及びストッパー12a,12d,14ha撓み変形を行うことが出来るが、厚さが大きくて剛性が高い場合には、各係合部15a,15b,15d,16a,16b・・・に軸8a,8bを挿入した後で両軸8a,8bを上繋ぎ片9と下繋ぎ片10にてネジ止めして繋ぐことが出来る。
【0030】
一方、ツル2を開いた時のストッパーとしては上記図3に示すように連結片11a,11e,13a,13b・・・より大きく延ばして対向する軸に係合する場合に限定しない。軸に係合する係合部を設けることなく単に軸に当接するようにしてもよく、又軸ではなくツル側のストッパー12b,12dを直接ヨロイ7に当接可能とし、又ヨロイ側から延びるストッパー14をツル2に当接可能としてもよい。
【0031】
さらには、ストッパーを大きく延ばすことなく連結片11a,11e,13a,13b・・・と同じ形状とし、軸8a,8bに固定して外周面に突出したストッパー(図示なし)に先端が当るようにすることで、ツル2の開き度を規制することも出来る。そして、ツル2及びヨロイ7に設けている連結片及びストッパーの本数も限定せず、連結片に関しては継手3の軸8a,8bを抱き込んで安定した連結が可能であればよい。
【符号の説明】
【0032】
1 フロント部
2 ツル
3 継手
4 リム
5 連結部材
6 鼻当てパット
7 ヨロイ
8 軸
9 上繋ぎ片
10 下繋ぎ片
11 連結片
12 ストッパー
13 連結片
14 ストッパー
15 係合部
16 係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メガネフレームのフロント部両側にツルが折畳み出来るように取付けたツル継手構造において、フロント部側のヨロイとツルの間には両軸を所定の間隔をおいて平行に設けた□形継手を介在し、ヨロイ側及びツル側には一体的に形成した複数の連結片を延ばすと共に各連結片の先端には係合部を一体的に成形し、この係合部によってバネ力(弾性力)を付勢した状態で軸を抱き込んでツルをヨロイと連結し、そしてツルが開いた時の開き度を規制する為のストッパーを設けたことを特徴とするメガネのツル継手構造。
【請求項2】
上記ストッパーは連結片に比較して大きく延ばし、対向する軸の外側に係合した請求項1記載のメガネのツル継手構造。
【請求項3】
上記ストッパーは連結片に比較して大きく延ばし、ヨロイから延びるストッパーはツルまで達し、ツルから延びるストッパーはヨロイまで達するようにした請求項1記載のメガネのツル継手構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−145523(P2011−145523A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−6881(P2010−6881)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(506293580)有限会社 梅田 (7)
【Fターム(参考)】