説明

メタルガスケット用表面処理ステンレス鋼板とその製造方法。

【課題】ゴムコーティング後に長期の耐不凍液性および耐水密着性を確保できる、クロムフリーの表面処理を施したメタルガスケット用表面処理ステンレス鋼板を製造する。
【解決手段】ステンレス鋼板の少なくとも片面に、次式で示される構造の有機樹脂と、シリカと、Tiおよび/またはZrの金属としての量が有機樹脂とシリカの合計量100部に対して1.0部以上、7.0部以下となる量のTiおよび/またはZrのフッ化物、さらに好ましくはカップリング剤を含む表面処理液を塗布し、最高到達板温が200℃以上となる温度で30秒以上の乾燥を行って表面処理層を形成する。
【化5】


式中、Y1、Y2は、互いに独立して、水素、アルキルアミノメチル基、またはアルキルアンモニウムメチル基である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタルガスケット用の表面処理ステンレス鋼板に関し、さらに詳しくは自動車エンジンなどのシリンダーガスケットに使用される耐熱ゴム塗装用の表面処理ステンレス鋼板に関する。本発明はまた、かかる表面処理ステンレス鋼板の製造方法にも関する
【背景技術】
【0002】
自動車エンジン等のシリンダーガスケット用材料は、高温・高圧下の条件でシール性を維持できるものでなければならない。従来は、石綿やカーボンが使用されてきたが、主に石綿では環境への有害性、カーボンではシール性の問題により、最近では、主にステンレス鋼板を用いたメタルガスケットが主流となりつつある。
【0003】
自動車エンジン等のシリンダーヘッドは、シリンダー内の爆発サイクルで強い圧力の変動サイクルを受けることから、ガスケットはこの圧力変動に十分に耐えるシール特性を発揮する必要がある。メタルガスケットの場合、このシール性を確保するために、ステンレス鋼板の表面に耐熱性のゴムコーティングを施すのが一般的である。
【0004】
従来はゴムコーティングとメタルの密着性を確保するために、例えば特許文献1に記載のようなクロメート処理が施されていた。クロメート処理は、ステンレス鋼板以外に、亜鉛めっき鋼板などのめっき鋼板に一般に使用されてきた。しかし、クロメート処理液に含まれる6価クロム化合物は水溶性であり、溶出した場合に環境汚染が問題となる。そこで最近では、クロムフリー処理に対する要望が高まっている。
【0005】
クロムを含まない、いわゆるクロムフリー化成処理の場合は、クロメート処理に比べて、特に長期の耐水密着性あるいは耐不凍液性に劣るとされている。
クロムを含まない化成処理をステンレス鋼板に施した例については、これまでも幾つかの技術が開示されている。例えば、特許文献2、特許文献3、特許文献4には、リン酸とシリカからなる、クロムフリー処理を行ったガスケット用ステンレス鋼板が提案されている。しかし、比較的短期の耐不凍液性に関する性能が示されているにすぎない。
【0006】
特許文献5、特許文献6、特許文献7には、透明塗膜を施した塗装鋼板用のクロムフリー表面処理が提案されているが、ガスケット用に必須の耐不凍液性や耐熱性などの記述はなく、そのままでは、長期の耐不凍液性が必要なガスケット用ステンレス鋼板としては適さない。
【0007】
近年、メタルガスケット用クロムフリー化成処理に関する技術開発が進展し、例えば、特許文献8には、表面を熱硝酸で処理し、焼付型の接着剤を塗布し、焼付けした例が開示されている。また、6価クロムを含まない3価クロム主体の化成処理技術も、特許文献9に開示されている。しかし、3価クロム自体も有害性が無いとは言えず、クロムフリーの処理液を用いた化成処理の開発が市場から望まれている。それを受けて、特許文献10および特許文献11には、Ti化合物あるいはZr化合物に樹脂やシリカなどを添加した処理液から皮膜を形成した処理鋼板が提案されている。
【0008】
しかし、これらの特許文献に提案された技術でも、耐熱ゴム塗装の耐不凍液性のみが調査されているにすぎず、耐水密着性については詳細に検討されていない。昨今のエンジンガスケットでは、冷却媒に常にLLC(Long Life Coolant、長寿命冷媒)が使用されるとは限らないので、耐水密着性も重要な位置づけであり、耐不凍液性と耐水密着性を合わせて各メーカで性能向上を進めている。クロムフリー表面処理液を使用する場合は、クロメートに比べて、特に耐水密着性が劣ることが問題となっている。
【特許文献1】特開平9−122580号公報
【特許文献2】特開平8−10699号公報
【特許文献3】特開平8−10700号公報
【特許文献4】特開平8−58015号公報
【特許文献5】特開平5−169584号公報
【特許文献6】特開平9−10678号公報
【特許文献7】特開平9−24578号公報
【特許文献8】特開2003−246975号公報
【特許文献9】特開2003−342745号公報
【特許文献10】特開2002−264253号公報
【特許文献11】特開2003−105321号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ステンレス鋼板およびゴムコーティングとの密着性に優れ、ゴムコーティング後に長期の耐不凍液性および耐水密着性を確保し、かつ環境に優しいクロムフリーの表面処理を施したステンレス鋼板およびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、ステンレス鋼板の表面に上述した従来技術に従って各種の表面処理層を形成した後、フッ素ゴムまたはNBRゴムコーティングを施し、500および1000時間後の長期の耐水密着性と耐不凍液密着性について試験することにより、鋼板およびゴムとの密着性を調査した。
【0011】
その結果、後で参考例として示すように、従来のクロムフリー表面処理では、耐不凍液性はクロメート処理なみに良好でも、耐水密着性がクロメート処理に比べて著しく劣ることが判明した。つまり、耐不凍液性の調査だけでは不十分で、耐水密着性も評価しないと、メタルガスケット用の表面処理ステンレス鋼板の評価は不十分であることになる。
【0012】
さらに、これらの結果を詳細に調査したところ、クロムフリー表面処理品は、耐不凍液性が悪い場合と耐水密着性が悪い場合とで、剥離が起こる箇所が異なることが判明した。すなわち、耐水密着性に劣る場合は、クロムフリー表面処理層とステンレス鋼板との界面での剥離が主となっているのに対し、耐不凍液性が劣る場合は、表面処理層と接着剤またはゴムコーティングとの界面での剥離が主となっていた。一方、クロメート処理品で密着性が劣る場合は、耐不凍液性試験におけるクロメート層と接着剤またはゴムコーティングとの界面での剥離であり、耐水密着性が劣ることは無かった。
【0013】
このように、クロムフリー表面処理の場合、従来のクロメート品では問題とならなかった耐水密着性の確保が問題となり、その原因は、鋼板とクロムフリー表面処理層との密着力不足という、従来のクロメート品には無い弱点であった。
【0014】
本発明によれば、有機樹脂と、シリカと、特定量のTiとZrの一方または両方のフッ化物、とを含有する表面処理層をステンレス鋼板の表面に形成することにより、ゴムコーティング後の耐不凍液性のみならず、耐水密着性も改善することができる。
【0015】
1側面において、本発明は、ステンレス鋼板の少なくとも片面に、有機樹脂と、シリカと、フッ化物由来のTiおよび/またはZrとを含み、クロムを実質的に含まない表面処理層を備え、表面処理層中のフッ化物由来のTiおよび/またはZrの金属としての量が、有機樹脂とシリカの合計量100質量部に対して、1.0質量部以上、7.0質量部以下であることを特徴とする、メタルガスケット用表面処理ステンレス鋼板である。
【0016】
別の側面からは、本発明は、ステンレス鋼板の少なくとも片面に、有機樹脂と、シリカと、Tiおよび/またはZrのフッ化物とを含み、クロムを実質的に含まない表面処理液を塗布し、次いで、最高到達板温が200℃以上となる温度条件で30秒以上の乾燥を行うことを特徴とする、メタルガスケット用表面処理ステンレス鋼板の製造方法である。
【0017】
「クロムを実質的に含まない」とは、積極的にクロム化合物を添加しないが、不純物レベルのクロムの存在は許容するという意味である。具体的には、全固形分に基づいて1質量%未満のクロムの存在は許容される。
【0018】
好適態様において、本発明は下記の1または2以上の条件をさらに満たす:
・前記シリカが、比表面積50m2/g以上のものである;
・前記表面処理層がフッ化物由来のTiおよびZrの両方を含み、これらの金属としての質量比が次式を満たす:
Zr≧0.3Ti・・・(式1);
・前記表面処理層の付着量が100mg/m2以上、300mg/m2以下である;
・前記有機樹脂が次式で示される構造を持つ水溶性ポリマー(被膜中ではその架橋物として存在)である:
【0019】
【化3】

【0020】
式中、Y1、Y2は、互いに独立して、水素、アルキルアミノメチル基、またはアルキルアンモニウムメチル基であり、nは2〜50である;
・前記乾燥を複数回行う;
・前記乾燥を行った後、鋼板表面に水を接触させずに鋼板の冷却を行う;
・前記表面処理液がpH2.0以上、4.5以下の水性処理液である;
・表面処理液を塗布する前に、ステンレス鋼板に焼鈍とその後の酸洗を施す。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、環境に優しいクロムフリー処理液を用いた表面処理によって、エンジンガスケットに必須の長期間の耐熱性、耐油性、耐LLC性を確保でき、それにより長期の耐不凍液性と耐水密着性を示すエンジンガスケットを供給することが可能となるため、その工業面での技術的意義は高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に本発明を特に好適態様に関して詳細に説明する。以下の説明において、%は特に指定しない限り質量%である。
[ステンレス鋼板]
ガスケットの素材のステンレス鋼板は、オーステナイト系、フェライト系等、その種類は問わない。しかし、ガスケット用途には、エンジン環境下での耐食性とバネ材としての強度、ビード加工部の疲労特性が要求されるため、オーステナイト系ステンレス鋼板が一般に用いられる。特に、準オーステナイト系ステンレス鋼板であるSUS301(17%Cr−7%Ni)を焼鈍→酸洗するか、光輝焼鈍した後に、冷間圧延して加工硬化により強度を上昇させたものがよく用いられ、本発明においても、これらが好適である。
【0023】
本発明においては、クロムフリー表面処理層と鋼板との密着性向上が課題であるので、ステンレス鋼板の表面はなるべく粗い方が、表面処理層の密着性向上に有利である。具体的には、Raが0.10μm以上、Rzは0.50μm以上が好ましい。ただし、メタルガスケットに用いられるステンレス鋼板はシール機能が最優先となるので、そのためには粗さが小さい方が好ましい。従って、Raで0.4μm以下、Rzで1.0μm以下が好ましい。また、鋼板製造工程としては、途中工程の焼鈍工程に光輝焼鈍を用いた工程よりは、焼鈍→酸洗によるスケール除去を行う工程の方が、鋼板表面に微少な凹凸が多数生成していて、密着性向上に寄与するため、本発明にとってより好ましい。
【0024】
[表面処理層]
本発明に従ってステンレス鋼板の少なくとも片面に形成する表面処理層は、クロムを実質的に含まないクロムフリーの被膜である。この表面処理層は、有機樹脂と、シリカと、フッ化物由来のTiおよびZrの一方または両方を含有する、有機−無機複合被膜である。従って、表面処理に用いる表面処理液は、Tiおよび/またはZrのフッ化物を含有する。TiおよびZrのフッ化物とは、四フッ化チタンおよび四フッ化ジルコニウム、ならびにそれらの水和物および加水分解物でよく、それらを水溶液状態で使用してもよい。上記特許文献10および11で使用されている、ヘキサフルオロチタン酸およびヘキサフルオロジルコニウム酸ならびにそれらの塩は、本発明におけるTiフッ化物およびZrフッ化物に含まれない。
【0025】
有機樹脂は、表面処理層の主成分であり、ステンレス鋼板および表面処理層との密着機能を主に担う。シリカ成分は、表面処理層の上層に施される接着剤あるいはゴムコーティングとの密着性を改善する機能を有する。
【0026】
Tiおよび/またはZrのフッ化物は、表面処理液中で加水分解して、TiやZrの水酸化物になり、フッ素イオンが遊離する。この加水分解で生成した、反応性に富んだTi/Zrの水酸化物(例、Ti−OH)が、有機樹脂あるいはシリカ(またはシラノール)と架橋反応を生じ、密着性のよい緻密な表面処理層を形成する。また、加水分解により遊離したFイオンが鋼板表面をエッチングするが、乾燥時にフッ素イオンはHFとして揮散する。その結果、ステンレス鋼板上に−O−Ti(Zr)−O−有機樹脂の結合が形成され、耐水性、耐水密着性のよい緻密な皮膜からなる表面処理層が生成する。
【0027】
表面処理層中のTiおよび/またはZrの金属としての量は、有機樹脂とシリカの合計量100質量部に対して、1質量部以上、7質量部以下となる量である。この量の計算は、各成分とも、固形分基準で行う。TiとZrの両方が存在する場合は、その合計量で計算する。
【0028】
Tiおよび/またはZrの量が上記範囲を下回ると、機能(1)による架橋機能が不足し、耐水性、耐水密着性が劣り、上記範囲より多くなると、表面処理液の安定性が失われる場合が多く、耐水性、耐水密着性の改善効果が飽和する。Tiおよび/またはZrの量の好ましい範囲は、有機樹脂とシリカの合計量100質量部に対して、2.0質量部以上、5.0質量部以下であり、より好ましくは2.5質量部以上、4.0質量部以下である。
【0029】
本発明で用いる有機樹脂の種類は特に制限されず、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂等も使用できるが、より高度な耐水密着性を得るためには、特に好ましい有機樹脂は,次式で示される構造を持つものである。
【0030】
【化4】

【0031】
式中、Y1、Y2は、互いに独立して、水素、アルキルアミノメチル基、またはアルキルアンモニウムメチル基であり、nは2〜50である。
【0032】
この樹脂は、アルキルアミノメチルまたはアルキルアンモニウムメチル置換ビスフェノールAとホルムアルデヒドとの重縮合により得られる水溶性のオリゴマーまたはポリマーであり、アミノまたはアンモニウムメチル置換ビニルビスフェノールA樹脂と呼べるものである。アルキルアミノメチル基の例は、ジメチルアミノメチル基、ジエチルアミノメチル基などである。アルキルアンモニウムメチル基の例は、トリメチルアンモニウムメチル基、トリエチルアンモニウムメチル基などである。
【0033】
この樹脂は、アルキルアミノ基またはアルキルアンモニウム基がTi、Zrのフッ化物と反応することにより表面処理層中に、−O−Ti(Zr)−O−有機樹脂の架橋構造を導入して、被膜をより緻密することができるため、表面処理層の耐水密着性の向上に寄与する。同様の理由で、ポリエチレンイミンやその誘導体も好ましく用いることができる。
【0034】
シリカとしては、コロイド粒径のシリカ(コロイド状シリカ)が好ましく、液相シリカ(コロイダルシリカまたは水性シリカ)と気相シリカ(ヒュームドシリカ、乾式シリカ)のいずれも使用可能である。その平均一次粒径は小さい方が良く、0.1μm以下のものが好ましく用いられる。また、その比表面積が50m2/g以上であると、さらに耐水密着性が向上するため好ましい。比表面積はより好ましくは150m2/g以上である。比表面積が50m2/g以上であると密着性が改善する理由は、現時点で明らかではないが、推定理由としては、より多くのSi−OH基を有することで、水素結合起点が多くなるため密着性が改善することと、比表面積が大きくなるとより、入り組んだ表面となり、アンカー効果により密着性が改善すること、が考えられる。
【0035】
より大きな比表面積が密着性向上に寄与するという観点から、気相シリカがより適している。気相シリカとしては、日本アエロジル社製のアエロジル130などが用いられる。比表面積が大きければ大きいほど密着性が向上するので、比表面積に特に上限はないが、あまりに比表面積が大きいシリカを使用すると、表面処理液の粘度が著しく増大して、表面処理液のステンレス鋼板への塗布がやりにくくなる。従って、増粘作用が著しくなるような比表面積を持つシリカの使用は好ましくない。
【0036】
有機樹脂とシリカの質量比は、95:5〜50:50の範囲が好ましく、より好ましくは90:10〜70:30の範囲である。シリカ量が多くなると、表面がパウダリングしやすくなり、密着性が損なわれやすくなる。また、前述したシリカの増粘作用により表面処理液が増粘して塗布が困難となる。一方、シリカが少なすぎると、表面処理層のステンレス鋼板やゴムコーティングとの十分な密着性が得られない。
【0037】
表面処理層に含まれるフッ化物由来のTiとZrは、それらのいずれか一方だけでも、両方でもよい。TiとZr併用する場合には、TiとZrの金属としての質量比が下記の式1の範囲であれば、より良好な性能を得ることができる。理由は不明であるが、ZrはTiに比べて、量的により多くても表面処理層の耐水性あるいは耐水密着性を向上させることが可能であるからである。
【0038】
Zr≧0.3Ti・・・(式1)
Zr<0.3Tiであると、表面処理層中のZr+Tiの合計量が上記範囲内であっても、Zr≧0.3Tiである場合に比べて、耐水性、耐水密着性がやや劣る傾向が見られる。特に好ましいのは、Zr≧0.4Tiの範囲である。但しZr単独での使用は十分な性能が得られないことがある。TiとZrの作用が、やや異なっていることも考えられる。すなわち、先に述べたTi、Zrの機能のうち、Tiは機能(2)に寄与する割合が多く、Zrは機能(1)に寄与する割合が大きいのではないかと推察される。機能(1)と機能(2)では、機能(1)は表面処理層全体に関する機能であるのに対し、機能(2)は表面処理層−ステンレス鋼板の界面を強化する機能である。従って、機能(2)に関与するTi、Zrが少なくても良いのに対し、機能(1)に関与するTi、Zrは多いにこしたことはない。そのため、Ti+Zrが一定量であれば、Zr比率が高い方が、より良好な密着性を得ることができ、またTi、Zrを併用することが、より良好な耐水密着性を得ることにつながるものと考えられる。
【0039】
有機樹脂とシリカとフッ化物由来のTiおよび/またはZrとを含有する表面処理層の付着量は、100mg/m2以上、500mg/m2以下であることが好ましい。100mg/m2未満では、耐水密着性が1ランク低下するものとなり、500mg/m2を超えると、曲げ加工部のゴム密着性が低下することがある。より好ましい付着量の範囲は、100mg/m2以上、300mg/m2以下である。
【0040】
表面処理層は、上記成分以外に、性能向上のために各種の添加剤を含有しうる。特に、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤などのカップリング剤は、有機樹脂の架橋やステンレス鋼板と有機樹脂の結合の強化、さらには上層の接着剤やゴムコーティングとの結合の強化に有効である。カップリング剤を使用する場合、その添加量は、有機樹脂とシリカの合計量100質量部に対して0.1質量部以上、2質量部以下が好ましく、より好ましくは0.5質量部以上、1.5質量部以下である。添加量が少ないと効果が見られず、添加量が多すぎると塗布に用いる表面処理液の安定性が失われる。
【0041】
また、表面処理層の形成に用いる表面処理液には、塗工性を向上させるための濡れ性向上剤や皮張り防止剤、あるいは架橋反応を促進するための酸系の添加剤などが添加されていても良い。
【0042】
[表面処理鋼板の製造方法]
前述した表面処理層を有する本発明のメタルガスケット用表面処理ステンレス鋼板は、ステンレス鋼板の少なくとも片面に、有機樹脂と、シリカと、Tiおよび/またはZrのフッ化物とを含み、クロムを実質的に含まない表面処理液を塗布し、次いで、最高到達板温が200℃以上となる温度条件で30秒以上の乾燥を行うことにより製造することができる。
【0043】
表面処理液に用いる上記各成分および所望により添加できる任意成分については、前述した通りである。表面処理液の溶媒は、通常は水であるが、水と50%未満の量の水混和性有機溶媒との混合溶媒も使用できる。この表面処理液は、TiまたはZrフッ化物のエッチング機能により、ステンレス鋼板の表面をエッチングして、−O−Ti(Zr)−O−有機樹脂の結合を生成させることにより被膜の耐水密着性を改善する。液のエッチング力を増大させるには、表面処理液が酸性で、pHが低い方が有利である。しかし、pHが低すぎると、シリカによる増粘が大きくなり、塗工性が低下する。表面処理液の好ましいpHは、2.0以上、4.5以下であり、より好ましくは2.5〜4.0の範囲である。
【0044】
表面処理液の塗布方法は、ロールコートやスプレーコート、浸漬法、浸漬→リンガー絞り法、カーテンフローコートなどの公知の方法で適用できる。仕上がりの外観と前述の好ましい付着量範囲への制御の容易性を考慮すると、ロールコートが好ましい。
【0045】
上記の塗布方法は、表面処理液の粘度が高いと、処理液の泡立ちや塗装後の表面の模様などが発生しやすいため、塗工に用いる表面処理液の粘度は20cp以下とすることが好ましい。そのためには、Ti、Zr塩の添加量や、添加するシリカの種類(比表面積)と添加量を前述のように制御することが好ましい。表面処理液の塗布前に処理液による濡れ性の向上のために、ステンレス鋼板に、アルカリ脱脂や溶剤脱脂、さらには湯洗や酸洗を施すことも有効であり、これらの前処理は本発明の効果を妨げるものではない。
【0046】
表面処理液の塗布後、乾燥を行う。十分な耐水密着性を得るには、乾燥時の温度を最高到達板温が200℃以上となる温度とし、かつ乾燥時間を30秒以上とることが好ましい。特に、Tiおよび/またはZrの量が少ない場合には、乾燥温度を高くし、および/または乾燥時間を長くとることにより、安定した密着性を得ることができる。また、製造設備が複数回の乾燥を行うことができものであれば、複数回の乾燥を行うことによりさらに安定した耐水密着性を得ることができる。
【0047】
例えば、通常の薄板用コイル塗工ラインを例に取ると、ロールコーターが2基以上、乾燥炉が2基以上設置されている場合が多い。その場合、コイルの入り側から最初のロールコーターで本発明に従った表面面処理液を塗布し、後の2つの乾燥炉のいずれかで、鋼板温度200℃以上、30秒以上の乾燥を施す。2基以上の乾燥炉で、鋼板温度200℃以上、30秒以上の乾燥を繰り返すことにより、耐水密着性をさらに改善することができる。また、乾燥温度を高くするほど耐水密着性は向上する。乾燥温度の上限は乾燥炉の能力にもよるものの、400℃以下とすることが好ましい。400℃を超えると、ステンレス鋼板の表面に酸化スケールが発生し、密着性を損なうことがある。乾燥温度は、より好ましくは350℃以下、さらに望ましくは320℃以下である。
【0048】
乾燥時間は、長すぎると前述の酸化スケールの問題が生じ、生産性にも悪影響があるので、好ましくは3分以下であり、より望ましくは2分以下である。乾燥時間は、製造する設備の能力(乾燥炉の昇温速度や炉の能力)と、製造された表面処理鋼板の密着性の評価により決定すればよい。
【0049】
乾燥後の冷却は、放冷あるいは空冷とすることが望ましい。水冷のように冷却速度の大きい冷却を行うと、表面処理層の収縮により、ステンレス鋼板/表面処理層の界面に著しい熱応力が発生し、密着性が低下する。前記のような表面処理を行う製造設備において、生産性向上のため水冷を行う場合があるが、なるべく放冷・空冷により冷却速度を小さく抑えることが好ましい。好ましい冷却速度は50℃/s以下であり、冷却速度が小さいほど密着性低下の防止には有効である。しかし、冷却速度を極端に小さくすることは、生産性を低下させるので望ましくない。
【0050】
本発明の表面処理ステンレス鋼板から常法に従ってメタルガスケットが製造される。一般に、メタルガスケットの製造は、次のいずれかの工程順で行われる:
(1)鋼板→接着剤コーティング→ゴムコーティング→打ち抜き→成形→ガスケット、
(2)鋼板→打ち抜き→成形→接着剤コーティング→ゴムコーティング→ガスケット。
【0051】
上記(1)の工程順で製造されるガスケットは、鋼板の全面にゴムがコーティングされるため、冷却水が接触する部分にもゴムが存在し、耐水密着性が必要となる。本発明の表面処理ステンレス鋼板は、耐水密着性に優れているので、上記(1)の工程順で製造されるガスケットに適しているが、もちろん上記(2)の工程順で製造されるガスケットにも適用可能である。
【実施例】
【0052】
以下の実施例は本発明を例示するものである。実施例中、部および%は特に指定しない限り、質量部および質量%である。
(実施例1)
厚さ0.4mmのSUS301(17%Cr−7%Ni)ステンレス鋼板に、光輝焼鈍(100%H2中)を施した後、調質圧延によって板厚を0.2mmとし、加工硬化させたステンレス鋼板を基材として用意した。このステンレス鋼板の硬度はHv約400であった。基材ステンレス鋼板の表面を、日本パーカライング社製FC436S(20g/l、60℃)のスプレーによりアルカリ脱脂した後、水洗乾燥を行った。
【0053】
次いで、表1に示す組成の表面処理液(溶媒は水)を所定の乾燥皮膜量となるようにロールコートし、最高鋼板温度220℃で45秒間の乾燥を行い、その後の冷却は空冷により行った。表面処理液に使用したTiおよびZrのフッ化物は、それぞれ四フッ化チタンおよび四フッ化ジルコニウムであった。使用した樹脂およびシリカは次の通りであった。
【0054】
樹脂A:上述した構造式で示されるアルキルアミノメチル置換ポリビニルビスフェノールA樹脂(式中、Y1はジメチルアミノメチル基、Y2は水素であり、nは約5)
樹脂B:水性ポリエステル樹脂(東洋紡社製MD1200);
樹脂C:エポキシエステル樹脂(大日本インキ株式会社製CD540)。
【0055】
シリカA:気相シリカ(比表面積200m2/g);
シリカB:気相シリカ(比表面積130m2/g);
シリカC:液相シリカ(比表面積 3m2/g);
シリカD:気相シリカ(比表面積 50m2/g)。
【0056】
作成された表面処理ステンレス鋼板について下記の評価を行った。試験結果も表1に併記する。
<処理液の評価>
液安定性評価(○以上を合格)
処理液を40℃で10日間保持した後の処理液の状態を目視で評価した。
【0057】
◎:浮遊物無し、粘度変化無し;
○:浮遊物無し、粘度がやや増加;
△:浮遊物無し、増粘顕著;
×:浮遊物有り。
【0058】
<耐熱ゴムコーティング層の形成>
作成した表面処理板の上層に、下記のように耐熱ゴムコーティングを下記条件にて施した。
【0059】
接着剤層
エポキシ系接着剤を乾燥膜厚2μmとなるようにディップコーティングし、200℃で3分間乾燥。
【0060】
フッ素ゴム(以下、フッ素とも表記)
使用塗料:ダイキン工業(株)製、ダイエルDPA351
乾燥膜厚25μm、加硫条件200℃×30分。
【0061】
NBR(アクリロニトリル−ブタジエン)ゴム(以下、NBRとも表記)
使用塗料:日本黒鉛(株)製、コートハイト
乾燥膜厚25μm、加硫条件200℃×30分。
【0062】
<耐熱ゴムコーティング層を形成したサンプルの評価>
耐不凍液性
トヨタ(株)製純正ロングライフクーラント(LLC)とイオン交換水とを50/50の体積比で混合したLLC水溶液を試験鋼板の評価用サンプルとともに耐圧容器に封入し、フッ素ゴム製シールをはめて容器を密閉し、120℃で500および1000時間加熱した。その後、LLC水溶液から取り出したサンプルを常温に24時間放置して乾燥を行った後、ゴム層の表面に1mmマス碁盤目を100個けがき、テープ剥離を行って、ゴム残存マス数をカウントした。評価方法は下記のとおりであった(○以上が合格)。
【0063】
☆:残存マス数100個;
◎:残存マス数90個以上、99個以下;
○:残存マス数70個以上、89個以下;
△:残存マス数50個以上、69個以下;
×:残存マス数50個未満。
【0064】
耐熱水性
イオン交換水と試験鋼板の評価用サンプルを耐圧容器に封入し、フッ素ゴム製シールをはめて容器を密閉し、120℃または150℃で500時間および1000時間加熱した。サンプルを取り出して2時間放置した後、ゴム層表面に1mmマス碁盤目を100個けがき、テープ剥離を行って、ゴム残存マス数をカウントした。評価は下記のように行った(○以上が合格)。
【0065】
☆:残存マス数100個;
◎:残存マス数90個以上、99個以下;
○:残存マス数70個以上、89個以下;
△:残存マス数50個以上、69個以下;
×:残存マス数50個未満。
【0066】
【表1】

【0067】
表1からわかるように、Tiおよび/またはZrのフッ化物の量が、金属換算で、シリカ+有機樹脂100部に対して、1部より少ないと密着性が不足し、7部より多いと、処理液の液安定性が劣化する。TiとZrの一方だけを単独で使用するより、両者を併用し、かつZrを多く使用することにより、少ないTi+Zr量で、安定した密着性の向上効果が得られる。
【0068】
シリカは、比表面積が大きい方が密着性が向上する。また、シリカ:樹脂の配合比率は10:90から30:70程度で最良の密着性が得られる。表面処理層の付着量は120〜300mg/m2が良好となる。
【0069】
(参考例1)
参考のために、前述した特許文献の実施例に従って、実施例1と同じ基材のステンレス鋼板を表面処理して、従来技術の試験表面処理ステンレス鋼板を作成した。この試験鋼板に、フッ素ゴムを使用して、実施例1と同様に耐熱ゴムコーティングを行い、実施例1と同様に耐不凍液性(加熱温度120℃)および耐水性(加熱温度120℃、150℃)を試験した。試験結果を表2に示す。
【0070】
耐不凍液性および耐水性の試験において、残存マス数が90個より少ない、評価が○、△または×である試験片については、XPS分析により剥離面を特定した。その結果も表2に一緒に示す。なお、剥離面は下記記号で表示する:
R :ゴム膜または接着剤層の凝集破壊(表面処理層の密着性は良好);
A1:接着剤層/表面処理層の界面(接着剤との密着性不足);
C: 表面処理層の凝集破壊(表面処理層の強度不足);
A2:鋼板/表面処理層の界面(鋼板との密着性不足)。
【0071】
【表2】

【0072】
表2に示すように、クロメート処理は、耐不凍液性と耐水性のいずれも非常に良好である。しかし、従来の非クロメート系の表面処理は、耐不凍液性は比較的良好であるものの、耐水性の結果は悪くなった。特に、リン酸+シリカおよびクロムフリーの化成処理は、耐水性の結果が悪かった。剥離面については、耐不凍液性が○の場合は、剥離面がA1、すなわち、接着剤層と表面処理層との界面で起こっていたが、耐水性が○、△、×である場合の多くは、剥離面がA2、すなわち、ステンレス鋼板と表面処理層の界面で剥離が起こっていた。
【0073】
一方、本発明は、クロムフリーの化成処理であるにもかかわらず、実施例1の表1に示したように、耐不凍液性のみならず、耐水性の試験結果もクロメートに匹敵するような好成績を示すことができた。
【0074】
(実施例2)
厚さ0.4mmのSUS301(17%Cr―7%Ni)ステンレス鋼板に、光輝焼鈍(100%H2中)を施した後、調質圧延により板厚を0.2mmとして加工硬化させた基材を用意した(Hv約400、表面Ra=0.08μm)。基材表面に日本パーカライング社製FC436S(20g/l、60℃)をスプレーしてアルカリ脱脂を行い、水洗乾燥を行った。
【0075】
次いで、表1に示した試験番号6の表面処理液を150g/mの乾燥皮膜量となるようにロールコートし、表2に示した最高到達板温(PMTと略記)および乾燥時間で1回ないし3回のなる乾燥を行ったのち、空冷あるいは一部で水冷を行った。作成した表面処理ステンレス鋼板の評価は実施例1と同様に行い、その結果を表3にまとめて示す。
【0076】
【表3】

【0077】
表3からわかるように、乾燥温度は高い方が好ましく、密着性を安定させるには200℃以上、特に270℃以上の乾燥温度が好ましい、しかし、過度な高温で乾燥を行うと、鋼板表面にテンパーカラーが発生し、かえって密着性の低下を招く。乾燥を複数回行うことは密着性を向上させるが、乾燥温度200℃以上を確保しないと、その効果は少ない。また、乾燥後に水冷を行うと、密着性が僅かに低下する。
【0078】
(実施例3)
厚さ0.4mmのSUS301(17wCr―7wNi)ステンレス鋼板に、光輝焼鈍(100%H2中)を行った後、調質圧延により板厚を0.2mmとして加工硬化させた基材を用意した(Hv約400)。基材表面に日本パーカライング社製FC436S(20g/l、60℃)をスプレーしてアルカリ脱脂を行い、水洗乾燥を行った。
【0079】
次いで、表1に示した試験番号6の表面処理液をベースに、1%の酢酸あるいはリン酸水溶液を用いてpHを調整した表面処理液を、上記の乾燥して得た鋼板に乾燥後の付着量が150mg/m2となるように塗布し、最高鋼板温度230℃で40秒間の乾燥を行い、空冷を行って、表面処理ステンレス鋼板を作成した。作成した表面処理ステンレス鋼板の評価は実施例1と同様に行い、その結果を表4に示した。
【0080】
【表4】

【0081】
表4からわかるように、処理液に酸を添加して処理液pHを2.5〜4.5の範囲に調整することにより、処理液の液安定性を保持しながら、密着性を向上させることができる。pH調整域が高いか、あるいは低すぎると、それぞれ密着性向上効果が乏しいか、あるいは液安定性を劣化させるという不具合を生じる。
【0082】
(実施例4)
厚さ0.4mmのSUS301(17%Cr―7%Ni)ステンレス鋼板に、100%H2中で光輝焼鈍を行った後、調質圧延により板厚を0.2mmとして加工硬化させた基材を用意した(Hv約400)。別に、同じステンレス鋼板の原板に50%H2+50%N2雰囲気中で焼鈍を行い、その後に表面を10%HNO3+3%HFでの酸洗によりデスケーリングした後、調質圧延により板厚を0.2mmとして加工硬化させた基材も用意した(Hv約400)。各調質圧延において、圧延ロールの表面粗度を変化させることにより、基材の表面粗度Raを変化させた。
【0083】
次いで、基材表面に日本パーカライング社製FC436S(20g/l、60℃)をスプレーしてアルカリ脱脂を行い、水洗乾燥を行った。
その後、表1に示した試験番号6または15の表面処理液をベースに、1%の酢酸あるいはリン酸水溶液を用いてpHを調整した処理液を、上記基材に乾燥後の付着量が150mg/m2となるように塗布し、最高鋼板温度230℃で40秒間の乾燥を行い、空冷を行った。作成した表面処理ステンレス鋼板の評価を実施例1と同様に行い、結果を表5に示す。
【0084】
【表5】

【0085】
表5からわかるように、基材の作成工程において焼鈍後に酸洗する工程をとる方が、光輝焼鈍工程をとるよりも、密着性を高く安定させることができる。それは、表面粗度による効果ではなく、工程の違いにより表面に微細な溝が生じたための効果であると推定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステンレス鋼板の少なくとも片面に、有機樹脂と、シリカと、フッ化物由来のTiおよび/またはZrとを含み、クロムを実質的に含まない表面処理層を備え、表面処理層中のフッ化物由来のTiおよび/またはZrの金属としての量が、有機樹脂とシリカの合計量100質量部に対して、1.0質量部以上、7.0質量部以下であることを特徴とする、メタルガスケット用表面処理ステンレス鋼板。
【請求項2】
前記シリカが、比表面積50m2/g以上のものである、請求項1に記載のメタルガスケット用表面処理ステンレス鋼板。
【請求項3】
前記表面処理層がフッ化物由来のTiおよびZrを含み、これらの金属としての質量比が次式を満たす、請求項1または2に記載メタルガスケット用表面処理ステンレス鋼板。
Zr≧0.3Ti・・・(式1)
【請求項4】
前記表面処理層の付着量が100mg/m2以上、300mg/m2以下である、請求項1〜3のいずれかに記載のメタルガスケット用表面処理ステンレス鋼板。
【請求項5】
前記有機樹脂が次式で示される構造を持つ水溶性ポリマーの架橋物である、請求項1〜4のいずれかに記載のメタルガスケット用表面処理ステンレス鋼板。
【化1】

式中、Y1、Y2は、互いに独立して、水素、アルキルアミノメチル基、またはアルキルアンモニウムメチル基であり、nは2〜50である。
【請求項6】
ステンレス鋼板の少なくとも片面に、有機樹脂と、シリカと、Tiおよび/またはZrのフッ化物とを含み、クロムを実質的に含有しない表面処理液を塗布し、次いで、最高到達板温が200℃以上となる温度条件で30秒以上の乾燥を行うことを特徴とする、メタルガスケット用表面処理ステンレス鋼板の製造方法。
【請求項7】
前記乾燥を複数回行う、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記乾燥を行った後、鋼板表面に水を接触させずに鋼板の冷却を行う、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記表面処理液がpH2.0以上、4.5以下の水性処理液である、請求項6〜8のいずれかに記載の方法
【請求項10】
前記有機樹脂が次式で示される構造を持つ水溶性ポリマーである、請求項6〜9のいずれかに記載の方法。
【化2】

式中、Y1、Y2は、互いに独立して、水素、アルキルアミノメチル基、またはアルキルアンモニウムメチル基であり、nは2〜50である。
【請求項11】
表面処理液を塗布する前に、ステンレス鋼板に焼鈍とその後の酸洗を施す、請求項6〜10のいずれかに記載の方法。

【公開番号】特開2006−283182(P2006−283182A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−108707(P2005−108707)
【出願日】平成17年4月5日(2005.4.5)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】