説明

メタルハライドランプ

【課題】 放電空間に本質的に水銀を含まない条件において、点灯中のアーク幅を大きく見せ、配光特性を良くする。
【解決手段】 放電空間12を形成する発光管部11、該発光管部11の両端に形成された封止部131、132とを有する透光性の気密容器1の放電空間12に金属ハロゲン化物および希ガス、かつ本質的に水銀を含まない放電媒体が封入されている。封止部131、132の内部には、金属箔21、22が封着され、一端は放電空間12内で所望の電極間距離を保って対向配置され、他端は金属箔21、22の一端に接続された一対の電極31、32が封着されている。そして、発光管部11は、そのアーク10形成方向に垂直な断面において、略平行の内壁面111、112を具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の前照灯等に使用される放電空間に本質的に水銀を含まないメタルハライドランプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、発光管内に、水銀、希ガス、希土類金属のハロゲン化物、セシウムのハロゲン化物、およびインジウムのハロゲン化物とを含む金属ハロゲン化物を封入し、上記金属ハロゲン化物の総封入量、ハロゲン化セシウムと金属ハロゲン化物の封入モル比、ハロゲン化インジウムと金属ハロゲン化物の封入モル比を好適な量だけ封入したメタルハライドランプの発明がある。(例えば、特許文献1)
【特許文献1】特開平8−329889号公報(第2〜9頁、図3〜5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現在、環境負荷の高い水銀を使用しないメタルハライドランプの開発が行われている。この水銀を封入しないメタルハライドランプにおいて、点灯中のアークが細く見えるという現象が発生している。これは水銀自体が持っていたアークを太くするという作用を得られなくなったためであると考えられており、アークが細く見える状態であるとそのランプをスクリーン等に投影したときの配光特性が悪くなってしまう。
【0004】
この課題に対して、例えば、上記特許文献1の第3頁右2〜5行に記載されているように、アークを太くする作用があるセシウムのハロゲン化物を封入することが有効であることが知られている。しかし、セシウムのハロゲン化物を封入すると、ランプの明るさ、すなわち全光束が低下してしまうことがわかった。
【0005】
本発明の目的は、放電空間に本質的に水銀を含まない条件において、アークの幅を大きく見せ、配光特性の良いメタルハライドランプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のメタルハライドランプは、放電空間を形成する発光管部、該発光管部の両端に形成された封止部とを有する透光性の気密容器と、前記放電空間に金属ハロゲン化物および希ガスが封入され、かつ本質的に水銀を含まない放電媒体と、前記封止部の内部に封着された金属箔と、一端は前記金属箔に接続され、他端は前記放電空間内で所望の電極間距離を保って対向配置された一対の電極とを具備し、前記気密容器の前記発光管部のアーク形成方向に垂直な断面において、略平行の内壁面を具備してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、放電空間に本質的に水銀を含まない条件において、点灯中のアーク幅を大きく見せ、配光特性を良くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(第1の実施の形態)
以下に、本発明の実施の形態のメタルハライドランプについて図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態であるメタルハライドランプの全体図である。
【0009】
気密容器1は、例えば、透光性の石英ガラスからなり、ほぼ楕円形の形状の発光管部11とその長手方向の両端部に発光管部11と同材料で形成された封止部131、132からなる。発光管部11の内部には、放電空間12が形成されており、放電空間12には、放電媒体として金属ハロゲン化物であるヨウ化ナトリウム、ヨウ化スカンジウム、ヨウ化亜鉛、および希ガスであるキセノンが封入されている。ヨウ化ナトリウムに含有されている金属ナトリウムおよびヨウ化スカンジウムに含有されている金属スカンジウムは、主に発光金属として作用し、ヨウ化亜鉛に含まれている金属亜鉛は、主に水銀に代わるランプ電圧形成媒体として作用し、キセノンは、主に始動ガスとして作用する。また、ハロゲン化物としては、他のハロゲン化物よりも反応性が低いヨウ素が最も好適である。
【0010】
ここで、発光管部11に封入される放電媒体には、水銀は本質的に含まれていない。この「本質的に水銀を含まない」とは、水銀を全く含まないか、または1ccあたり2mg未満、好ましくは1mg以下の水銀量が存在していても許容するという意味である。つまり、従来の水銀入りのショートアーク形ランプのように、水銀蒸気によってメタルハライドランプの電圧を所要に高くする場合、1ccあたり20〜40mg、場合によっては50mg以上封入しており、この水銀量と比較すれば、2mg未満の水銀量は圧倒的に少なく、本質的に水銀が含まれないと言える。
【0011】
圧潰形成された板状の封止部131、132の内部には、例えばモリブデンからなる金属箔21、22が封着されている。放電空間12側の金属箔21、22の一端部には、直径が異なる大径部311、321と小径部312、322とが一体に形成され、かつ例えばタングステンからなる電極31、32の一端が、金属箔21、22とほぼ一体になるように抵抗溶接により接続され、電極31、32の他端は、発光管部11付近の封止部131、132を通って、放電空間12に延出し、5mm以下の電極間距離を保って、その先端同士が対向するように配置されている。ここで、電極31、32の大径部311、321は放電空間12に、小径部312、322は封止部131、132内にそれぞれ位置している。
【0012】
電極31、32の金属箔21、22と近接する軸部分には、金属導線を数回、回巻して形成したコイル41、42が、その外周面と接触するように接続されている。このコイル41、42は、金属箔21、22側の端部から放電空間12に向けて所定距離巻かれ、コイル41、42の他端は封止部131、132に内在している。
【0013】
金属箔21、22において、電極31、32の接続部分に対して反対側の端部には、導入導体51、52が溶接等により接続されており、この導入導体52の他端は、封止部132の外部に延出し、L字状に形成された給電端子53の一端とほぼ直角になるように接続されている。この給電端子53の他端は、導入導体51の方向、かつ封止部131、132とほぼ平行に延出している。そして、封止部131、132と平行する給電端子53には、絶縁チューブ6が取着されている。
【0014】
これらを備えた気密容器1の外側には、例えば紫外線を遮断する材料からなる筒状の外管7が、その長手方向に沿って覆うように設けられている。この外管7の長手方向の両端部には、縮径部71が形成されており、縮径部71は封止部132の発光管部11方向に対して反対側の端部付近をガラス溶着しており、図示していないもう一方の縮径部は、封止部131の発光管部11方向に対して反対側の端部付近をガラス溶着している。
【0015】
そして、気密容器1を内部に覆った状態の外管7は、その外周面を挟持するように形成された固定金属具8を介して、ソケット9に接続されている。このソケット9の径小部分には、金属端子91が、その外周面に沿って形成されており、この金属端子91は、給電端子53とソケット9内部で電気的に接続されている。また、図示していないが、発光管部11に対して反対方向に延出していた導入導体51は、ソケット9内部を通って、ソケット9の底部部分に位置している。
【0016】
これらで構成されたメタルハライドランプは、ランプの長手方向において、点灯中、電極31、32の軸間を結ぶ直線に対して、一方向に湾曲したアーク10が形成される。
【0017】
図2は、アーク形成方向に垂直な断面図である。ここで、図中の点線はアークの仮想の切断図、直線X−X’はアークと一対の電極が形成する平面の一直線、直線Y−Y’は発光管の略中央、かつ直線X−X’に対して垂直な直線である。
【0018】
図2のように発光管部11の内壁は直線X−X’と平行、かつアーク10を対称の中心としてほぼ等距離に離間する内平壁111、112とそれらの壁をつなぐ円弧状の内弧壁113、114とからなり、外壁は直線X−X’と平行な外平壁115、116とそれらの壁をつなぐ117、118からなる。この内平壁111、112は、直線Y−Y’よりアーク10側は、アーク10の中心を通る直線Y−Y’と平行な直線と交わる内壁付近まで形成されるのが望ましく、アーク10の反対側は、アーク10側で形成された位置と直線Y−Y’に対して対象となる位置まで形成されるのが望ましい。また、内平壁111、112の軸方向の長さは、少なくとも一対の電極31、32が形成する電極間距離よりも長いことが望ましい。
【0019】
図3は、発光管部の内壁及び外壁の断面形状が円形のランプにおいて、擬似的にアークの測定を行った図であり、発光管の長手方向の中心軸線を示す直線Z−Z’からL(ここでは0.7mm)だけ離れた位置に擬似のアークとして、直径が0.39mmの針金を配置した。ここで、図中のD(mm)は発光管を介さないで見た針金の直径、d(mm)は発光管を介して見た針金の直径を示している。
【0020】
この測定では発光管部11を介さずに測定した針金の大きさDは、0.39mmであったが、発光管部11を介して測定した針金の大きさdは、直径が0.33mmに縮小しており、約0.85倍の大きさになっていることがわかった。これは、発光管部の内部の針金が、発光管部の外側では小さく見えるように作用をするレンズ効果が生じたためであると考えられる。
【0021】
ここで、レンズ効果について説明をすると、内壁及び外壁の断面形状が円形の発光管部を光が出射する場合、内壁は凹レンズ、外壁は凸レンズの役割をしているといえる。したがって、この発光管の外部から内部の針金を見る場合、凹レンズは針金を小さく見せる作用を、凸レンズは針金を大きく見せる作用をする。また、このレンズ効果は、曲率半径が小さいほど作用すると予想されるため、結果的には、発光管内部の針金が実際の大きさよりも小さく見えたと考えられる。
【0022】
また、例えば、発光管内部ではアークの太さが1mm、発光管外部ではアークの太さが0.8mmであるランプと、本発明のように発光管の形状を変えることによって発光管内部ではアークの太さが1mm、発光管外部ではアークの太さが1mmになったランプとを比較すると、後者のランプの方が配光特性が良いことがわかった。
【0023】
したがって、本実施の形態では、放電空間に本質的に水銀を含まないランプにおいて、発光管部11に内平壁111、112及び外平壁115、116を形成することによって、これらの部分から出射する光はレンズ効果を受けないために、日本電球工業会に定められている自動車前照灯用メタルハライドランプのアーク測定試験(JEL−215)を行った場合、アーク10の幅を大きく見せることができる。
【0024】
また、内平壁111、112及び外平壁115、116によって、アーク10が太くなることで、配光特性を改善することができる。
【0025】
(第2の実施の形態)
図4は、本発明の第2の実施の形態のメタルハライドランプについて説明する断面図である。この第2の実施の形態の各部について、図1の第1の実施の形態のメタルハライドランプの各部と同一部分は同一符号で示し、その説明を省略する。この第2の実施の形態が、第1の実施の形態と異なる点は、発光管部11の外壁が真円状の外周壁119である点である。
【0026】
発光管部11の外側を円周状にすることで、内平壁111、112の外側に凸レンズが配置された構成となる。そして、本実施の形態では、この凸レンズによって、内壁が円周状である場合とは逆のレンズ効果を生じさせることになり、発光管内部のアーク10が外部では大きく見える作用をするレンズ効果を得ることができる。
【0027】
したがって、本実施の形態では、第1の実施の形態よりも、さらにアーク10の大きさ、及び配光特性を改善することができる。
【0028】
なお、第2の実施の形態において、外周壁119を真円状に形成したが、凸レンズの外壁部分の曲率を変化させても良い。これにより、アーク10の幅や配光特性を所望に調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明のメタルハライドランプの第1の実施の形態について説明するための全体図。
【図2】図1において、電極間の中心を軸方向に対して垂直に切断した図。
【図3】発光管部の内壁及び外壁の断面形状が円形のランプにおいて、擬似的にアークの測定を行った図。
【図4】本発明の第2の実施の形態のメタルハライドランプについて説明するための断面図。
【符号の説明】
【0030】
1 気密容器
11 発光管部
111、112 内平壁
12 放電空間
131、132 封止部
21、22 金属箔
31、32 電極
41、42 コイル
51、52 導入導体
53 給電端子
6 絶縁チューブ
7 外管
8 固定金属具
9 口金
10 アーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電空間を形成する発光管部、該発光管部の両端に形成された封止部とを有する透光性の気密容器と、
前記放電空間に金属ハロゲン化物および希ガスが封入され、かつ本質的に水銀を含まない放電媒体と、
前記封止部の内部に封着された金属箔と、
一端は前記金属箔に接続され、他端は前記放電空間内で所望の電極間距離を保って対向配置された一対の電極とを具備し、
前記気密容器の前記発光管部のアーク形成方向に垂直な断面において、略平行の内壁面を具備してなることを特徴とするメタルハライドランプ。
【請求項2】
前記略平行な内壁面は、それぞれ放電中に形成されるアークを対称の中心としてほぼ等距離に離間する壁面であることを特徴とする請求項1記載のメタルハライドランプ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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