説明

メッキ用電源装置

【課題】素早く数値設定できる操作パネル構造を有し、出力波形がパルス電流であっても並列運転で増設可能なメッキ用電源装置を提供する。
【解決手段】
メッキ電流が直流または指定波形を出力する電源装置において、出力ON・OFFキー領域、各種モード選択キー領域、数値設定用のジョグダイヤルと数値ディスプレーからなる数値設定領域、の三つの領域が機能別に区分され、操作位置的には関連付けて接近した配置で形成され、パルス立ち上がり信号同期手段を第1と第2の各PWM信号発生器に接続して、並列接続の電源出力パルスの立ち上がりタイミングを同期させたメッキ用電源装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,メッキ用電源装置の出力パルス波形の改善と操作性向上に関する。
【背景技術】
【0002】
この関連技術を開示した文献として下記の特許文献1の(段落0021)に「図2には電気メッキ用の電源装置のパネル表示部30及び入力キーを示す・・・」「41はデータ設定を行う場合に目的の数字に合わせるUP・DOWNボタンを、42は該UP・DOWNボタンの速度を早める高速ボタンを示す。そして、43は出力電流を、44は出力電圧を示す」と記載されていて図2に表面パネル内の配置図が示されている。(特許文献1の図2は本明細書の文中では図5と付与した)
【0003】
操作パネルの従来例を図5に平面図で示す。ここに表示部30及び入力キー34〜42を示す。この設定作業で、目的の数字に合わせるときの動作には、もっと速い設定にならないかとの課題があった。例えば46.20アンペアで定電流制御させるならば、設定したい数字をUP・DOWNボタン41で「46.20」の各桁に数字を表示部に表示させながらセットする。UPボタン41を押して数字を上げて行き希望する数字が通過したら、すぐに引き返すようにDOWNボタンで数字を降ろしていく。高速ボタン42で数字の早い変化をさせるようにしてある。従来の操作パネルでは、このようにパネルに押ボタンが配置されていた。
【0004】
従来の操作パネルでは、34は段替えボタン、35はスタート/ストップ、36は設定、37は編集、38は書込みボタン、39は機能ボタン、40はリセットボタンである。以上の操作ボタンで操作したときに、パネル表示部30に例えば液晶表示で表示される。埃をかぶって見え難くなるパネル表示部30は、とくに視認性が要求されていた。
【0005】
【特許文献1】「特開平5−44099号」公報,「電気めっき用の電源装置」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、メッキ精度が要求される多くの種類の被メッキ物に対して、それぞれ最適値に波形や電流値を調整する必要があり、もし電流値などの数値設定ミスがあったときは、メッキ品質目標から遠くかけ離れた仕上がり品となり、多額の損失が発生していたので、数値設定ミスがなく、速く設定操作できる構造の、操作性に優れた操作パネル構成の要望が高まってきた。また、メッキ現場で電流値増強の必要が生じた場合、大電流メッキ用電源装置と入れ替え設置するより安価に設備導入するために、並列運転で必要な電流値まで増強する選択肢がある。並列運転時の出力波形としてパルス波形が要求されたときは、出力のパルス電流の立ち上がりが同期しないで並列運転したときには合成波形が立ち上がりの崩れた波形となってくる。このために並列運転用として最適の標準的な電源装置を供給側で準備することが設備要求者への即応性を含めて重要課題であった。
【0007】
制御したい数値を設定する操作については、以上のような従来の欠点を排除し、数値設定誤りを発生させない操作パネル構造を提供する事が本発明の目的である。加えて、出力波形がパルス波である並列運転方式で増設することが可能な電源装置を提供できるようにする事が本発明の付随的な課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
操作パネル構造に関しては、定電流制御と定電圧制御とを切替えてメッキ電流を出力し、指定された直流または電流波形を出力する電源装置において、出力ON・OFFキー領域、各種モード選択キー領域、数値設定用の回転式エンコーダと数値ディスプレーからなる数値設定領域、の三つの領域が機能別に区分して設置されて、しかも操作位置としては関連付けて接近した配置となるよう形成され、設定作業の速度が向上可能なことを特徴とする操作パネル構造を有するメッキ用電源装置とした。
【0009】
請求項2に関しては、前記回転式エンコーダは、回転操作とプッシュ操作との2方向操作に対応した設定値が出力できるジョグダイヤルで形成され、プッシュ操作で数値の桁変更を指定し、回転操作で数字変更をさせる片手操作が可能で、素早い操作速度が得られる回転式エンコーダである操作パネル構造を有する、メッキ用電源装置とした。
【0010】
請求項3に関しては,前記各種モード選択キー領域は、少なくとも、波形モード選択キー、CC(定電流)/CV(定電圧)モード選択キー、の領域を具備したモード選択キー領域である、メッキ用電源装置の操作パネルを有するメッキ用電源装置とした。
【0011】
請求項4に関しては、第1の整流回路と第1の高周波インバータと第1のPWM信号発生器とを具備し、定電流制御と定電圧制御とを切替えてメッキ電流を出力し、指定された電流波形を出力する第1の電源装置、と、第2の整流回路と第2の高周波インバータと第2のPWM信号発生器とを具備し、定電流制御と定電圧制御とを切替えてメッキ電流を出力し、指定された電流波形を出力する第2の電源装置とが、並列接続される、メッキ用電源装置において、立ち上がり信号同期手段を第1のPWM信号発生器と第2のPWM信号発生器に接続したことによって並列接続のメッキ用電源装置出力パルスの立ち上がりタイミングを同期させたメッキ用電源装置とした。
【0012】
高周波インバータをPWM制御で定電圧制御や、定電流制御させて軽量小型の高周波トランスを用いてメッキに適した電圧まで降圧するインバータとする事は電力変換効率の高い、内部ロスが少ない電源装置が実現できて装置の材料コスト削減、資源の縮減など環境に寄与できる工業的価値を高める為に有効である。上記PWM制御の信号の立ち上がりを同期させることによって並列運転される複数台のメッキ用電源装置の出力パルスが同期できるので、並列運転間に循環電流が流れるような内部ロスの原因を未然に削除している。
【発明の効果】
【0013】
操作性の良い操作パネル構造の提供は使用者の設定ミス防止に役立ち、不良メッキの防止で、メッキの生産コストを抑えることに貢献し、内部ロスが削減された並列運転される複数台の電源装置とすることはコスト縮減の効果があるので工業的価値が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1に操作パネル構造の本発明による実施の形態を示し,これと同じ目的の従来の表面パネルの配置図を図5に示して比較しながら説明する。図1において数字表示部300は4桁表示のLEDであり、上段、下段ともにAとVとを切替えて表示できる。4桁表示のLEDの近傍に回転式エンコーダ(ジョグダイヤル)410を配置する、回転式エンコーダは、回転操作とプッシュ操作との2方向操作に対応した設定値が出力できるジョグダイヤルであり、プッシュ操作で数値の桁変更を指定し、回転操作で数字変更をさせる片手操作が可能で、素早い操作速度が得られる。ジョグダイヤルとしては、例えば特許文献2に開示された構造のものである。
【特許文献2】「特開平6−178371号」公報,「ジョグエンコーダ」
【0015】
数字表示部300の4桁表示のLEDの近傍に、表示単位ランプ301が配置されていてA(アンペア)、%、H(時間)、M(分)、S(秒)などの文字がランプで浮き出るようにバックライトが仕組まれメンブレンスイッチで操作するように形成されているから数値設定ミスが排除できて、速い設定が可能となった。以上の操作・表示部位を、数値設定領域の枠でリセットキー400と共に囲んだので操作性が一層向上した。
【0016】
以上の数値設定領域に近接して、運転モード選択キー510、波形モード選択キー520、CC(定電流)/CV(定電圧)モード選択キー530、を具備したモード選択キー領域を配置して、セットキー360、クリアキー370と共に囲み領域とした。
表示モード選択キー540、本体/リモート選択キー550も各種モード選択キー領域に囲まれて配置されるのが有効である。
【0017】
運転モードにはノーマル、メモリー、パターン運転、などを選択キーで選び、表示ランプと共に配置されている。独立した領域に出力ON.OFFキー350が表示ランプと共に配置されている。出力ON・OFFキー領域、各種モード選択キー領域、数値設定用の回転式エンコーダと数値ディスプレーからなる数値設定領域、の三つの領域が機能別に区分し設置されて、しかも、操作位置的には関連付けて接近した配置となるよう形成され、設定作業の速度が向上した。回転式エンコーダはジョグダイヤルであり片手操作が可能で、素早い操作速度が得られる構成にしたので下記のUP・DOWNボタンで数字を設定するのに比べ誤操作を未然に排除する効果がある。
【0018】
操作パネルの従来例を図5に平面図で示す。ここに表示部30及び入力キー34〜44を示す。41はデータ設定を行う場合の数字に合わせるUP・DOWNボタン、該UP・DOWNボタンの速度を早める高速ボタン42。UPボタン41を押して数字を上げて行き希望する数字が通過したら、すぐに引き返すように41のDOWNボタンで数字を降ろしていく。高速ボタン42で数字の早い変化をさせるようにしてある。このように、従来の操作パネルでは、パネルに押ボタンが配置されていた。34は段替えボタン、35はスタート/ストップ、36は設定、37は編集、38は書込みボタン、39は機能ボタン、40はリセットボタンであり、操作の誤りや設定の速度不満に課題があったが、これらの課題を本発明は解消した。
【0019】
メッキ作業の現場に設置されたこのような電源装置では、埃をかぶって見え難くなる表示部は、とくに視認性が要求されるので、図1に示した操作部の表示と機能領域を明確にした操作パネルによる、操作スピード向上はメッキ事業経営に於いて重要な要素であり、本発明の作業場への貢献度は大きい。
【0020】
図2の本発明による一実施の形態を示す回路図において、商用電源1に接続された第1の電源装置71は第1の整流回路21と第1の高周波インバータ31と第1のPWM信号発生器61とを具備し、定電流制御と定電圧制御とに切替えてメッキ電流を出力端子100から出力する、4は高周波トランス、5は出力整流回路である。出力波形を記憶させ出力させるCPUを具備した操作パネル9が制御回路8に接続されている。図3の(a)、(b)、(c)、(d)に示した指定された電流波形を出力する第1の電源装置71、と、第2の整流回路22と第2の高周波インバータ32と第2のPWM信号発生器62とを具備し、定電流制御と定電圧制御とに切替えてメッキ電流を出力し、指定された電流波形を出力端子100から出力する第2の電源装置72とが並列接続されている。第2の電源装置72も図3(a)、(b)、(c)、(d)に示したメモリにある指定された電流波形を出力する。ここで図3は本発明による一実施の形態を示す波形図である。
【0021】
以上のメッキ用電源装置において、立ち上がり信号同期手段6を第1のPWM信号発生器61と第2のPWM信号発生器62に接続したことによって並列接続のメッキ用電源装置出力パルスの立ち上がりタイミングを同期させたメッキ用電源装置とした。図4の原理説明図に出力パルス電流を示すように、図4(a)ではパルスの立ち上がりタイミングが1台目と2台目の電源装置において、ズレがランダムに発生しているが、図4(b)ではパルス立ち上がりのズレは0.1ミリ秒以下になるように同期して出力する。このように並列接続の電源装置2台の出力がタイミングを合わせて立ち上がるようにしたのでメッキ電流にパルスの波形崩れがない。ズレが大きくなると出力電流波形の並列合成波は、立ち上がりと立ち下がりにおいて階段状の波形になる。
【0022】
高周波インバータをPWM制御で定電圧制御や、定電流制御させて軽量小型の高周波トランス4を用いてメッキに適した電圧まで降圧するインバータ31、32、とする事は電力変換効率の高い電源装置が実現できて装置の材料コスト削減、資源の縮減など地球環境保護に寄与できる工業的価値を高める為に有効である。
【0023】
上記PWM制御の信号の立ち上がりを同期させることによって並列運転される複数台のメッキ用電源装置の出力パルスが同期できるので、並列運転間に循環電流が流れるような内部ロスの原因を未然に削除している。
【産業上の利用可能性】
【0024】
メッキ品質の向上は事業者に重要な要素であり、メッキ電流にパルスの波形崩れがない、操作性に優れた本装置による貢献度は高く、産業的価値が大きい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明による一実施の形態を示す平面図である。
【図2】本発明による一実施の形態を示す回路図である。
【図3】本発明による一実施の形態を示す波形図である。
【図4】本発明による一実施の形態を示す原理説明図である。
【図5】従来の電源の表面パネルの配置図(特許文献1の図2)
【符号の説明】
【0026】
6 立ち上がり信号同期手段
21 第1の入力整流回路
31 第1の高周波インバータ
71 第1の電源装置
72 第2の電源装置
30 パネル表示部
33 出力スイッチ
34 段替えボタン
35 スタート/ストップボタン
36 設定ボタン
37 編集ボタン
38 書込みボタン
39 機能ボタン
40 リセットキー
41 アップダウンキー
42 高速ボタン
43 表示部
44 表示部
300 数字表示部
301 単位表示ランプ
350 出力ON・OFFキー
360 セットキー
370 クリアキー
400 リセットキー
410 ジョグダイヤル(回転エンコーダ)
510 運転モード選択キー
520 波形モード選択キー
530 CC/CV選択キー
540 表示モード選択キー
550 本体/リモート選択キー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
定電流制御と定電圧制御とを切替えてメッキ電流を出力し、指定された電流波形を出力する電源装置において、ON・OFFキー領域、各種モード選択キー領域、数値設定用の回転式エンコーダと数値ディスプレーからなる数値設定領域、の三つの領域が機能別に区分されて、操作位置的には接近して形成され、設定作業速度を向上させた事を特徴とする操作パネル構造を有するメッキ用電源装置。
【請求項2】
前記回転式エンコーダは、回転操作とプッシュ操作との2方向操作に対応した設定値が出力できるジョグダイヤルで形成されており、プッシュ操作で数値桁変更を、回転操作で数字変更をさせる片手操作が可能で且つ素早い操作速度が得られる回転式エンコーダである、請求項1記載の操作パネル構造を有する請求項1記載のメッキ用電源装置。
【請求項3】
前記各種モード選択キー領域は、少なくとも波形モード選択キー、CC(定電流)/CV(定電圧)モード選択キー、の領域を具備したモード選択キー領域である操作パネル構造を有する請求項1又は2記載のメッキ用電源装置。
【請求項4】
第1の整流回路と第1の高周波インバータと第1のPWM信号発生器とを具備し、定電流制御と定電圧制御とを切替えてメッキ電流を出力し、指定された電流波形を出力する第1の電源装置、及び、第2の整流回路と第2の高周波インバータと第2のPWM信号発生器とを具備し、定電流制御と定電圧制御とを切替えてメッキ電流を出力し、指定された電流波形を出力する第2の電源装置が並列接続される、メッキ用電源装置において、立ち上がり信号同期手段を第1のPWM信号発生器と第2のPWM信号発生器接続したことによって並列接続のメッキ用電源装置出力パルスの立ち上がりタイミングを同期させた事を特徴とする請求項1乃至3記載のメッキ用電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−312758(P2006−312758A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−135167(P2005−135167)
【出願日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(000144393)株式会社三社電機製作所 (95)