説明

メッシュネットワークとこれに用いる親局及び子局

【課題】 通信ノードの新設や除去を容易に行うことができるメッシュネットワークを構成できるようにする。
【解決手段】 親局1は、上位ポートSで受信した下りフレームを自局の第1及び第2ポートL,Rから送信し、子局2は、自局の第1又は第2ポートL,R受信した下りフレームを、受信側とは逆の自局の第1又は第2ポートL,Rと、支線ポートB及び下位ポートUの少なくとも一方とから送信する。子局2は、下位ポートUで受信した上りフレームを自局の第1及び第2ポートL,Rから送信し、自局の第1又は第2ポートL,Rで受信した上りフレームを受信側とは逆の第1又は第2ポートL,Rから送信し、自局の支線ポートB受信した上りフレームを自局の第1及び第2ポートL,Rから送信し、親局1は、自局の第1又は第2ポートL,Rで受信した上りフレームを上位ポートSから送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メッシュネットワークとこれに用いる親局及び子局に関する。
【背景技術】
【0002】
メッシュネットワークは、各々の通信ノードが隣接する複数の通信ノードと接続されることで、全体が網目状に構成された接続形態のネットワークである。
この場合、メッシュネットワーク内の通信信号は、隣接する通信ノードへの転送を繰り返して伝送されるので、いずれかのノードがインターネット等の外部ネットワークと接続されていれば、メッシュネットワーク内のすべての通信ノードが外部ネットワークと通信可能な状態となる。
【0003】
かかるメッシュネットワークでは、あるノードが破損したり離脱したりしても、代替経路を確保し易いので、基地局が不通になるとネットワーク全体が停止するスター型ネットワークに比べて、障害に強いという利点がある。
もっとも、通信経路の探索や無限ループを防止する伝送制御を適切に行うために、高度なルーティング技術が必要であり、また、ユーザ認証などで通信ノードを限定しないと、第三者がメッシュに参加し易く情報漏洩のリスクが高いという欠点もある。
【0004】
上記メッシュネットワークを用いた通信システムとして、メッシュネットワークをリングネットワークの複合体として定義し、リングネットワークのループ経路ごとに、そのリングネットワークのトポロジに対応したプロトコル(具体的には、IEEE802.17として標準化されたRPR(Resilient Packet Ring ))を採用することにより、障害発生時における復旧を短時間で行えるようにした通信システムが、既に提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−212741号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1に記載の従来の通信システムでは、宛先の通信ノードに至るまでのリングをリングIDテーブルに基づいて決定するので、リングIDテーブルに、各通信ノードに対応するリング経路を予め設計して設定しておく必要がある。
このため、従来の通信システムでは、リングIDテーブルを各通信ノードに設定する作業が非常に煩雑であり、通信ノードの新設や除去を容易に行えないという欠点がある。
【0007】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑み、通信ノードの新設や除去を容易に行うことができるメッシュネットワークを構成できるようにすることを第1の目的とする。
【0008】
また、従来の通信システムが採用するRPRでは、入口通信ノードにおいてリングの一方向にのみパケットを巡回させ、宛先通信ノードでパケットを取り出すものであり、その経路のどこかに障害が発生し、それを入口通信ノードが認識すると、従前とは逆方向にパケットを巡回させることによって、プロテクションを実現している。
従って、障害が発生してから、経路が切り替わるまでに相当の期間が経過し、その期間に従来の方向に送出されたパケットは廃棄され、障害発生時にパケットロスが発生するという問題もある。
【0009】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑み、障害発生時に通信データのロスが少ない、あるいはロスが発生しないメッシュネットワークを構成できるようにすることを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1) 本発明の親局は、複数の子局とメッシュネットワークを構成する親局であって、上位網に通じる上位ポートと、相手方ノードの第2ポートに通じる第1ポートと、相手方ノードの第1ポートに通じる第2ポートと、前記上位ポートで受信した下りフレームを自局の前記第1及び第2ポートから送信する転送処理が可能であり、自局の前記第1又は第2ポートで受信した上りフレームを前記上位ポートから送信する転送処理が可能であるフレーム処理部と、を備えていることを特徴とする。
【0011】
(2) また、本発明の子局は、1つの親局とメッシュネットワークを構成する子局であって、下位網に通じる下位ポートと、相手方ノードの第2ポートに通じる第1ポートと、相手方ノードの第1ポートに通じる第2ポートと、相手方ノードの第1又は第2ポートに通じる支線ポートと、自局の前記第1又は第2ポートで受信した下りフレームを、受信側と逆の自局の前記第1又は第2ポートと、前記支線ポート及び前記下位ポートのうちの少なくとも一方とから送信する転送処理が可能であり、前記下位ポートで受信した上りフレームを自局の前記第1及び第2ポートから送信し、自局の前記第1又は第2ポートで受信した上りフレームを受信側と逆の自局の前記第1及び第2ポートから送信し、前記支線ポートで受信した上りフレームを自局の前記第1及び第2ポートから送信する転送処理が可能であるフレーム処理部と、を備えていることを特徴とする。
【0012】
(3) 本発明の親局と子局と採用すれば、各通信ノードが次のような転送処理を行うメッシュネットワークを構成することができる。
【0013】
すなわち、本発明のメッシュネットワークは、次の(a)及び(d)の転送処理が可能な1つの親局と、次の(b)及び(c)の転送処理が可能な複数の子局とを含むことを特徴とする。
(a) 前記親局が、上位ポートで受信した下りフレームを自局の第1及び第2ポートから送信する。
(b) 前記子局が、自局の第1又は第2ポートから受信した下りフレームを、受信側と逆の自局の前記第1又は第2ポートと、支線ポート及び下位ポートのうちの少なくとも一方とから送信する。
【0014】
(c) 前記子局が、前記下位ポートで受信した上りフレームを自局の前記第1及び第2ポートから送信し、自局の前記第1又は第2ポートで受信した上りフレームを受信側とは逆の前記第1及び第2ポートから送信し、前記支線ポートから受信した上りフレームを自局の前記第1及び第2ポートから送信する。
(d) 前記親局が、自局の前記第1又は第2ポートで受信した上りフレームを前記上位ポートから送信する。
【0015】
本発明のメッシュネットワークによれば、親局が、上位ポートで受信した下りフレームを自局の第1及び第2ポートから送信可能であり、子局が、自局の第1又は第2ポートから受信した下りフレームを、受信側と逆の第1又は第2ポートと、支線ポート及び下位ポートのうちの少なくとも一方とから送信可能であるから、親局から任意の子局に至るまでの下り経路を各子局に予め設定しなくても、メッシュネットワーク内の任意の子局宛の下りフレームを、当該子局に伝送することができる。
【0016】
また、本発明のメッシュネットワークによれば、子局が、下位ポートで受信した上りフレームを自局の第1及び第2ポートから送信可能であり、自局の第1又は第2ポートで受信した上りフレームを受信側とは逆の第1及び第2ポートから送信可能であり、支線ポートから受信した上りフレームを自局の第1及び第2ポートから送信可能であり、親局が、自局の第1又は第2ポートで受信した上りフレームを上位ポートから送信可能であるから、任意の子局から親局に至るまでの上り経路を各子局に予め設定しなくても、メッシュネットワーク内の任意の子局が送信した親局宛ての上りフレームを、当該親局に伝送することができる。
【0017】
このため、運用中のメッシュネットワークに新たに子局を新設したり、そのネットワークから子局を除去したりしても、既存の子局の設定を変更せずに上りフレームと下りフレームを適切に伝送することができる。
従って、メッシュネットワークに対する子局の新設や除去を容易に行うことができ、前記第1の目的が達成される。
【0018】
(4) 本発明のメッシュネットワークにおいて、前記親局又は前記子局よりなる通信ノードは、既に転送した下りフレーム又は上りフレームと同じ通信フレームを廃棄する通過限定処理を行うことが好ましい。
かかる通過限定処理を行えば、メッシュネットワーク内を流れる同じ通信フレームの数を所望数に絞る運用が可能となるので、メッシュネットワーク内の伝送帯域を有効に確保することができる。
【0019】
(5) 前記通過限定処理としては、例えば、予め設定された指定ポートから受信した通信フレームのみの転送を許容し、前記指定ポートで受信する場合のフレームロスの回数が所定値以上である場合に、前記指定ポートを別のポートに切り替える、パス限定処理を採用することができる。
この場合、子局に指定ポートを設定する必要があるが、通信フレームにシーケンス番号フィールドを定義してなくても、通過限定処理を行うことができる。
【0020】
(6) また、前記通過限定処理としては、異なるポートから受信した同じ複数の通信フレームを、先に到達した通信フレームに絞って所定の出力ポートから送信する、フレーム限定処理であってもよい。
この場合、受信した通信フレームの重複を判定するため、通信フレームにシーケンス番号フィールドを定義する必要があるが、子局に指定ポートを設定しなくても、通過限定処理を行うことができる。
【0021】
そして、上記のフレーム限定処理では、通信フレームを通過させるか否かをフレーム単位で判定するので、障害発生時に強制的に経路が切り替えられることがなく、経路の切り替え前に送出された通信フレームが切り替え後に廃棄されることによる、通信フレームのロスが発生することがない。
このため、障害発生時に通信データのロスが発生しないメッシュネットワークを構成することができ、前記第2の目的が達成される。
【0022】
(7) 本発明のメッシュネットワークにおいて、前記通信ノードは、前記通過限定処理として、前記パス限定処理と、異なるポートから受信した同じ複数の通信フレームを、先に到達した通信フレームに絞って所定の出力ポートから送信する、フレーム限定処理との双方を実行可能であることが好ましい。
この場合、パス限定処理とフレーム限定処理の長所と短所を互いに補完した通過限定処理を行うことができ、メッシュネットワークを柔軟に運用することができる。
【0023】
(8) 本発明のメッシュネットワークにおいて、下りフレーム又は上りフレームよりなる通信フレームの転送可能回数を記すフィールドが当該通信フレームに含まれている場合には、前記子局は、前記通信フレームの転送ごとに前記フィールドの値を減算又は加算し、その値が所定値となった前記通信フレームを廃棄することが好ましい。
この場合、所定回数だけ転送された通信フレームがメッシュネットワークから消滅するので、通信フレームが何時までも転送され続けることによる、伝送帯域の低下を防止することができる。
【0024】
(9) 本発明のメッシュネットワークでは、必ずしもすべての子局が上述の転送内容を実行する必要はなく、複数の前記子局には、所定の宛先の下りフレーム又は所定の送信元の上りフレームを、自局の所定ポートから送信しない出力制限を行うものが含まれていてもよい。
この場合、出力制限を行う子局を適宜決定することにより、明らかに宛先に届かない部分パスへの通信フレームの流通を防止したり、プロテクションパスを所望数に絞ったりすることができ、ネットワークの伝送帯域の確保や消費電力の低下を図ることができる。
【発明の効果】
【0025】
以上の通り、本発明によれば、通信ノードの新設や除去を容易に行うことができるメッシュネットワークを構成することができる。
また、本発明によれば、障害発生時に通信データのロスが発生しないメッシュネットワークを構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係る通信システムの接続形態を示す図である。
【図2】親局の構成を示すブロック図である。
【図3】子局の構成を示すブロック図である。
【図4】親局の転送規則の一例を示す表である。
【図5】親局の転送規則の説明図である。
【図6】子局の転送規則の一例を示す表である。
【図7】子局の転送規則の説明図である。
【図8】親局の通過判定テーブルの一例を示す図である。
【図9】子局の通過判定テーブルの一例を示す図である。
【図10】図1の通信システムの子局に識別符号を付した図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を説明する。
〔通信システムの接続形態〕
図1は、本発明の実施形態に係る通信システムの接続形態を示す図である。
図1に示すように、本実施形態の通信システムは、各通信ノード1,2が隣接する複数の通信ノードと接続されることより、ネットワーク全体が網目状に構成されたメッシュネットワークよりなる。
【0028】
具体的には、本実施形態の通信システムは、1つの親局1と、多数の子局2と、これらのすべてを複数の隣接ノードと通信可能に接続する多数の通信回線3とからなり、親局1は、メッシュネットワーク内においてポイントツーマルチポイントで各子局2と通信可能となっている。
メッシュネットワークを構成する通信ノード1,2のうち、親局1は上位網に接続されており、子局2はそれぞれの下位網に接続されている。
【0029】
図1において、「ポートL」(Lは「Left」の意味)と「ポートR」(Rは「Right 」の意味)は、親局1と子局2が、メッシュネットワーク内の通信に使用する2種類の物理ポートである。親局1は、インターネット等の上位網への物理ポートである上位ポートSと、上記ポートL,Rとを有する。
子局2は、ユーザネットワーク等の下位網に通じる下位ポートUと、上記ポートL,Rと、メッシュネットワーク内の通信に用いる第3のポートである「ポートB」(Bは「Branch」の意味)とを有する。
【0030】
なお、本明細書において、「L」を「第1ポート」といい、「R」を「第2ポート」といい、「B」を「支線ポート」ということがある。また、「S」を「上位ポート」或いは「SNI(Service Node Interface)ポート」といい、「U」を「下位ポート」或いは「UNI(User Node Interface )ポート」ということがある。
また、図1では、図示の簡略化のために、1つの子局2のみが下位網と接続されているが、実際には、すべての子局2が下位網と接続可能である。
【0031】
本実施形態の通信システムでは、メッシュネットワークのトポロジをリングまたは弧の複合として認識すべくLとRという区別をし、ポートLは相手方ノードのポートRと接続し、ポートRは相手方ノードのポートLを接続するものとしているが、隣接ノードの2つのポートを任意に数珠繋ぎした結果として、ポートLとポートRが定義されるようにしてもよい。ただし、本実施形態のメッシュネットワークでは、リングまたは弧がすべて閉じられている必要はなく、図1に例示されるように、オープンな弧が存在してもよい。
また、ポートBは、相手方ノードのポートL又はポートRと接続し、ポートB同士の接続は行わない。なお、本実施形態の通信システムでは、ネットワーク回線(通信回線3)は2芯の光ファイバを想定している。
【0032】
〔親局の構成〕
図2は、親局1の構成を示すブロック図である。
図2に示すように、親局1は、図示左側から右側に向かって順に、送受信部11〜13と、送受信用バッファ14〜19と、フレーム処理部20と、通過判定テーブル10とを備えている。
【0033】
送受信部11は、上位ポートSに対応する送受信部であり、上位ポートSから入力される受信信号から所定フォーマットの受信フレームを生成し、生成した受信フレームを受信用バッファ15に入れる。
送受信部11は、送信用バッファ14から取り出した送信フレームを上位網の規約に従う所定の送信信号に変換し、変換した送信信号を上位ポートSに出力する。
【0034】
送受信部12は、ポートLに対応する送受信部であり、ポートLから入力される光信号を電気信号に変換して所定フォーマットの受信フレームを生成し、生成した受信フレームを受信用バッファ17に入れる。
送受信部12は、送信用バッファ16から取り出した送信フレームを所定波長帯の光信号に変換し、変換した送信信号をポートLに出力する。
【0035】
送受信部13は、ポートRに対応する送受信部であり、ポートRから入力される光信号を電気信号に変換して所定フォーマットの受信フレームを生成し、生成した受信フレームを受信用バッファ19に入れる。
送受信部13は、送信用バッファ18から取り出した送信フレームを所定波長帯の光信号に変換し、変換した送信信号をポートRに出力する。
【0036】
フレーム処理部20は、各受信用バッファ15,17,19から受信フレームを取り出し、取り出した受信フレームをどのポートS,L,Rから送出するかを、後述する転送規則に従って決定し、転送先のポートS,L,Rに対応する送信用バッファ14,16,18に受信フレームとデータ内容が同じ送信フレームを入れる。ここで、前記データ内容には、後述のカプセル化情報は除くものとする。
なお、上記の転送処理には、通過判定テーブル10(図8参照)に基づいて行われる、既転送の通信フレームと同じ通信フレームを廃棄してその重複通過を許さない「通過限定処理」が含まれるが、その詳細は後述する。
【0037】
〔子局の構成〕
図3は、子局2の構成を示すブロック図である。
図3に示すように、子局2は、図示左側から右側に向かって順に、送受信部21〜24と、送受信用バッファ25〜32と、フレーム処理部33と、通過判定テーブル34とを備えている。
【0038】
送受信部21は、下位ポートUに対応する送受信部であり、下位ポートUから入力される受信信号から所定フォーマットの受信フレームを生成し、生成した受信フレームを受信用バッファ26に入れる。
送受信部21は、送信用バッファ25から取り出した送信フレームを下位網の規約に従う所定の送信信号に変換し、変換した送信信号をユーザポートUに出力する。
【0039】
送受信部22は、ポートLに対応する送受信部であり、ポートLから入力される光信号を電気信号に変換して所定フォーマットの受信フレームを生成し、生成した受信フレームを受信用バッファ28に入れる。
送受信部22は、送信用バッファ27から取り出した送信フレームを所定波長帯の光信号に変換し、変換した送信信号をポートLに出力する。
【0040】
送受信部23は、ポートRに対応する送受信部であり、ポートRから入力される光信号を電気信号に変換して所定フォーマットの受信フレームを生成し、生成した受信フレームを受信用バッファ30に入れる。
送受信部13は、送信用バッファ29から取り出した送信フレームを所定波長帯の光信号に変換し、変換した送信信号をポートRに出力する。
【0041】
送受信部24は、ポートBに対応する送受信部であり、ポートBから入力される光信号を電気信号に変換して所定フォーマットの受信フレームを生成し、生成した受信フレームを受信用バッファ32に入れる。
送受信部24は、送信用バッファ31から取り出した送信フレームを所定波長帯の光信号に変換し、変換した送信信号をポートBに出力する。
【0042】
フレーム処理部33は、各受信用バッファ26,28,30,32から受信フレームを取り出し、取り出した受信フレームをどのポートU,L,R,Bから送出するかを、後述する転送規則に従って決定し、転送先のポートU,L,R,Bに対応する送信用バッファ25,27,29,31に受信フレームと同じデータ内容である送信フレームを入れる。ここで、前記データ内容には、後述のカプセル化情報は除くものとする。
なお、上記の転送処理には、通過判定テーブル34(図9参照)に基づいて行われる、既転送の通信フレームと同じ通信フレームを廃棄してその重複通過を許さない通過限定処理が含まれるが、その詳細は後述する。
【0043】
〔通信フレームのフォーマット〕
本実施形態の通信システムに用いる通信フレームは、イーサネットフレーム(「イーサネット」は登録商標である。)又はIPパケットに、以下の情報(a)〜(d)を格納するフィールドをカプセル化することによって構成されている。
このカプセル化ないしデカプセル化(カプセル情報を削除すること。)は、親局1のポートSの送受信部11および子局2のポートUの送受信部21において行われ、親局1のポートSおよび子局2のポートUを流れる通信フレームはカプセル化されない。
【0044】
(a)方向情報
この「方向情報」は、親局1が送信元である「下りフレーム」と、子局2が送信元である「上りフレーム」とを区別するための情報である。
親局1は、上位網から取得した通信フレームをメッシュネットワークに送信する場合、フレーム処理部20において通信フレームの方向情報を「下り」に設定し、その通信フレームをポートL,Rから送出する。
【0045】
また、子局2は、ユーザ網から取得した通信フレームをメッシュネットワークに送信する場合、フレーム処理部33において通信フレームの方向情報を「上り」に設定し、その通信フレームをポートL,Rから送出する。
従って、ネットワーク内の各通信ノード1,2のフレーム処理部20,33は、受信フレームの方向情報フィールドに記された値又は記号に基づいて、受信フレームの方向が下りか上りかを判定することができる。
【0046】
(b)子局情報
この「子局情報」は、通信システム内の子局1の識別情報(ID)であり、下りフレームの場合は宛先、或いは、上りフレームの場合は送信元の子局2を表す。
親局1のポートSの送受信部11において、下り通信フレームの内容から宛先子局が決定される。これには、例えば、イーサネットフレームのVLAN IDを子局IDとしてそのまま、あるいはテーブル等により一意な値に変換して決定すればよい。
親局1は、下りフレームをメッシュネットワークに送出する場合、通信フレームの子局情報フィールドに、子局IDを記す。また、子局2は、上りフレームをメッシュネットワークに送出する場合、通信フレームの子局情報フィールドに、設定されている自局IDを記す。
【0047】
(c)通信フレームのシーケンス番号
この「シーケンス番号」は、子局2が送信する通信フレームの順番を表す情報であり、通信フレームの方向と子局IDごとに独立している。
子局2は、自局から送信する上りフレーム及び下りフレームごとに、及び、子局IDごとにシーケンス番号を記した通信フレームを、メッシュネットワークに送信する。
【0048】
なお、後述の通過限定処理において、フレーム単位で重複を判断して転送するフレームを絞る「フレーム限定処理」(フレームモード)の場合には、このシーケンス番号を用いてフレームの重複を判定する。
また、後述の通過限定処理において、入力ポートを予め1つのパスに限定しておき、通信が途切れた場合に他のパスに切り替える「パス限定処理」(パスモード)では、シーケンス番号は不要である。
【0049】
(d)TTL(Time To live)情報
この「TTL情報」は、通信フレームの現時点における転送可能回数(残余ホップ回数)を表す情報である。
子局2は、メッシュネットワークを流れる通信フレームを自局で転送する場合、TTL情報フィールドに記された番号を1つデクリメントする。また、子局2は、その番号が「0」になった通信フレームを廃棄する。
【0050】
従って、本実施形態の通信システムによれば、ある子局2が後述の転送規則に従わない異常な動作を行っても、残りの正常な子局2が、TTL情報がゼロである通信フレームを廃棄することで、ループフレームの発生を未然に防止することができる。
なお、子局2は、転送ごとにTTL情報をインクリメントすることにし、その値が所定値に達した場合に通信フレームを廃棄することにしてもよい。
【0051】
〔親局の転送処理〕
図4は、親局1の転送規則の一例を示す表であり、図5は、その表で定義された親局1の転送規則の説明図である。
以下、図4及び図5を参照して、親局1のフレーム処理部20が行う通信フレームの転送処理の内容を説明する。
【0052】
親局1のフレーム処理部20は、図4の1行目左列に示すように、入力ポートがポートSである「下りフレーム」については、ポートLとポートRの双方を出力ポートに設定する(図5の(a)参照)。
親局1のフレーム処理部20は、図4の2行目左列に示すように、入力ポートがポートLである「下りフレーム」を廃棄し(図5の(b)参照)、図4の2行目左列に示すように、入力ポートがポートRである「下りフレーム」についても、これを廃棄する(図5の(c)参照)。
【0053】
親局1のフレーム処理部20は、図4の2行目右列に示すように、入力ポートがポートLである「上りフレーム」については、ポートSを出力ポートに設定し(図5の(d)参照)、図4の3行目右列に示すように、入力ポートがポートRである「上りフレーム」についても、ポートSを出力ポートに設定する(図5の(e)参照)。
ただし、ポートLとポートRで受信した上りフレームを通過限定処理の対象とする。すなわち、ポートLとポートRの双方で受信した同じ上りフレームについては、いずれか一方のポートで受信した上りフレームのみをポートSに出力し、他方のポートで受信した上りフレームを廃棄する。
【0054】
なお、図4の転送規則において、1行目右列の処理を定義していない理由は、入力ポートがポートSである通信フレーム(SNIポートの受信フレーム)は必ず下りフレームであり、上りフレームではないからである。
また、図4の転送規則において、ポートL又はポートRで受信した下りフレームを廃棄(図5の(b)及び(c)参照)する理由は、下りフレームは親局1が子局2宛てに送信した通信フレームであるから、SNIポートから上位網に転送したり、ネットワーク内に再転送したりする必要がないからである。
【0055】
親局1における通信フレームの転送ルールを纏めると、次のようになる。
(規則a1)
上位ポートSで受信した下りフレームは、第1及び第2ポートL,Rから送信する。
(規則a2)
第1ポートLで受信した下りフレームは、廃棄する。
(規則a3)
第2ポートRで受信した下りフレームは、廃棄する。
【0056】
(規則a4)
第1ポートLで受信した上りフレームは、第2ポートRで受信した上りフレームとの重複を除いて、上位ポートSから送信する。
(規則a5)
第2ポートRで受信した上りフレームは、第1ポートRで受信した上りフレームとの重複を除いて、上位ポートSから送信する。
【0057】
〔子局の転送処理〕
図6は、子局2の転送規則の一例を示す表であり、図7は、その表で定義された子局2の転送規則の説明図である。
以下、図6及び図7を参照して、子局2のフレーム処理部33が行う通信フレームの転送処理の内容を説明する。
【0058】
子局2のフレーム処理部33は、図6の1行目左列に示すように、入力ポートがポートLである「下りフレーム」については、その下りフレームが他局宛の場合は、ポートRとポートBの双方を出力ポートに設定し、その下りフレームが自局宛の場合は、ポートU(UNIポート)を出力ポートに設定する(図7の(a)参照)。
子局2のフレーム処理部33は、図6の2行目左列に示すように、入力ポートがポートRである「下りフレーム」については、その下りフレームが他局宛の場合は、ポートLとポートBの双方を出力ポートに設定し、その下りフレームが自局宛の場合は、ポートU(UNIポート)を出力ポートに設定する(図7の(b)参照)。
【0059】
ただし、ポートLとポートRで受信した下りフレームを通過限定処理の対象とする。すなわち、ポートLとポートRで受信した同じ下りフレームについては、いずれか一方のポートで受信した下りフレームのみをポートBに転送し、他方のポートで受信した下りフレームについては、ポートBへの転送は行わない。もっとも、ポートL又はポートRへの転送は行われる。
子局2のフレーム処理部33は、図6の3行目左列に示すように、入力ポートがポートBである「下りフレーム」を廃棄する(図7の(c)参照)。
【0060】
子局2のフレーム処理部33は、図6の1行目右列に示すように、入力ポートがポートLである「上りフレーム」については、ポートRを出力ポートに設定し(図7の(d)参照)、図6の2行目右列に示すように、入力ポートがポートRである「上りフレーム」については、ポートLを出力ポートに設定する(図7の(e)参照)。
子局2のフレーム処理部33は、図6の3行目右列に示すように、入力ポートがポートBである「上りフレーム」については、ポートLとポートRの双方を出力ポートに設定する(図7の(f)参照)。
【0061】
ただし、ポートL(又はポートR)とポートBで受信した上りフレームを通過限定処理の対象とする。すなわち、ポートL(又はポートR)及びポートBで受信した同じ上りフレームについては、いずれか一方のポートで受信した上りフレームのみを転送し、他方のポートで受信した上りフレームを廃棄する。
子局2のフレーム処理部33は、図6の4行目右列に示すように、入力ポートがポートU(UNIポート)である「上りフレーム」については、ポートLとポートRの双方を出力ポートに設定する(図7の(g)参照)。
【0062】
なお、図6の転送規則において、4行目左列の処理を定義していない理由は、入力ポートがポートUである通信フレーム(UNIポートの受信フレーム)は必ず上りフレームであり、下りフレームではないからである。
また、図6の転送規則において、ポートBで受信した下りフレームを廃棄(図7の(c)参照)する理由は、支線ポートBは下りフレームを下位側にフラッディングするために設けたポートであるから、下りフレームを支線ポートBに戻す必要がないからである。
【0063】
子局2における通信フレームの転送ルールを纏めると、次のようになる。
(規則b1)
第1ポートLで受信した下りフレームは、他局宛の場合は、第2ポートRで受信した下りフレームとの重複を除いて、支線ポートBと第2ポートRから送信し、自局宛の場合は、下位ポートUから送信する。
【0064】
(規則b2)
第2ポートRで受信した下りフレームは、他局宛の場合は、第1ポートLで受信した下りフレームとの重複を除いて、支線ポートBと第1ポートLから送信し、自局宛の場合は、下位ポートUから送信する。
(規則b3)
支線ポートBで受信した下りフレームは、廃棄する。
【0065】
(規則b4)
第1ポートLで受信した上りフレームは、支線ポートBで受信した上りフレームとの重複を除いて、第2ポートRから送信する。
(規則b5)
第2ポートRで受信した上りフレームは、支線ポートBで受信した上りフレームとの重複を除いて、第1ポートLから送信する。
【0066】
(規則b6)
支線ポートBで受信した上りフレームは、第1及び第2ポートL,Rで受信した上りフレームとの重複を除いて、第1及び第2ポートL,Rから送信する。
(規則b7)
下位ポートUで受信した上りフレームは、第1及び第2ポートL,Rから送信する。
【0067】
〔親局の通過限定処理〕
図8は、親局1の通過判定テーブル10の一例を示す図である。
図8に示すように、親局1の通過判定テーブル10は、上りフレーム用の1種類のみであり、子局IDのエントリごとに図示の各フィールドが含まれている。
親局1のフレーム処理部20は、判定対象の上りフレームの入力ポートと、通信フレームのヘッダ部から抽出した方向情報、子局ID、シーケンス番号及びTTL情報に基づいて、通過判定テーブル10を用いた以下の通過限定処理を実行することにより、受信した上りフレームを通過させるか廃棄するかを判定する。
【0068】
(有効判定)
まず、フレーム処理部20は、通過判定テーブル10における、判定対象フレームに記された子局IDの値に対応するエントリを参照し、受信した上りフレームが有効か否かを判定する。
ここで、通過判定テーブル10が正しく設定されている場合は、状態フィールドが「有効」になっているが(子局ID=X,Zの場合)、正しく設定されていない場合は、状態フィールドが「無効」となっている(子局ID=Yの場合)。
【0069】
そこで、フレーム処理部33は、状態フィールドが無効である子局ID(=Y)の上りフレームについては、廃棄と判定して処理を終了し、状態フィールドが有効である子局ID(=X,Z)の上りフレームにのみ、更に以下の処理を実行する。
【0070】
(上りのパス限定処理)
フレーム処理部20は、通過判定テーブル10における、判定対象フレームに記された子局IDの値に対応するエントリのモードフィールドを参照し、ここで指定された動作モードが「パス」である場合(図8の例では、子局ID=Xの場合)には、上りフレームの入力ポートを絞る「パス限定処理」を行う。
すなわち、フレーム処理部20は、モードフィールドが「パス」の上りフレームについては、通過判定テーブル10のセレクタフィールドで指定されている指定ポートのみを、上りフレームの入力ポートに設定する。
【0071】
より具体的には、フレーム処理部20は、セレクタフィールドの指定ポートと判定対象フレームの入力ポート(ポートL又はポートR)とを比較し、入力ポートがポートLであって指定ポートがLであれば、通過と判定し、通過判定テーブル10のL通過時刻フィールドを現在時刻で更新して処理を終了する。フレーム処理部20は、入力ポートがポートRであって指定ポートがRである場合も、通過と判定し、通過判定テーブル10のR通過時刻フィールドを現在時刻で更新して処理を終了する。
また、フレーム処理部20は、上記指定ポートと入力ポートとが異なる場合は、廃棄と判定して処理を終了する。
【0072】
(上りのフレーム限定処理)
フレーム処理部20は、通過判定テーブル10における、判定対象フレームに記された子局IDの値に対応するエントリのモードフィールドを参照し、ここで指定された動作モードが「フレーム」である場合(図8の例では、子局ID=Zの場合)には、ポートLとポートRから受信した同じ上りフレームを、先に到達した上りフレームに絞って送信する「フレーム限定処理」を行う。
【0073】
すなわち、フレーム処理部20は、モードフィールドが「フレーム」である上りフレームについては、入力ポートの種別L,Rに応じて、次のフレーム限定処理を行う。
例えば、フレーム処理部20は、上りフレームの入力ポートがポートLである場合、Rシーケンス番号フィールドの値(=SNRt とする。)と判定対象フレームのシーケンス番号の値(=SNf とする。)との比較、及び、R通過時刻フィールドの値(=TRt とする。)と現在時刻(=Tc とする。)との比較に基づいて、上りフレームを通過させるか否かを判定する。
【0074】
より具体的には、フレーム処理部20は、上記の各値について、次の2つの不等式の双方が成立する場合には、廃棄と判定して処理を終了する。
SNRt − SNub ≦ SNf ≦ SNRt
Tc − Tub ≦ TRt
なお、上記の不等式において、Tubは、重複が発生しうる期間の上限値を表すシステムパラメータであり、SNubは、Tubの期間中に通過し得るフレーム数を表すシステムパラメータである(以下、同様)。
【0075】
逆に、上記2つの不等式のいずれかが成立しない場合には、フレーム処理部20は、通過と判定し、Rシーケンス番号フィールドをSNf で更新するとともに、R通過時刻フィールドを現在時刻で更新して処理を終了する。
ただし、メッシュネットワークにおいて発生した障害が復旧した場合など、(前記更新前の)SNRt+1=SNfでない場合、すなわち、フレームの追い越しが発生する場合がある。このような場合は、Rシーケンス番号フィールドを更新せず、追い越したフレームを一旦バッファリングし、追い越されたシーケンス番号が到着するのを待ってから、シーケンス番号順に出力するようにしてもよい。
また、フレーム処理部33は、上りフレームの入力ポートがポートRの場合は、Lシーケンス番号フィールドの値(=SNLt とする。)と判定対象フレームのシーケンス番号の値(=SNf )との比較、及び、L通過時刻フィールドの値(=TLt とする。)と現在時刻(=Tc )との比較に基づいて、入力ポートがポートLの場合と同様の処理を行う。
【0076】
〔子局の通過限定処理〕
図9は、子局2の通過判定テーブル34の一例を示す図である。
図9に示すように、子局2の通過判定テーブル34は、下りフレーム用(図9(a))と上りフレーム用(図9(b))とがあり、子局IDのエントリごとに図示の各フィールドが含まれている。以下、下りフレーム用の通過判定テーブル34を「下りテーブル34A」といい、上りフレーム用の通過判定テーブル34を「上りテーブル34B」という。
【0077】
子局2のフレーム処理部33は、判定対象の通信フレームの入力ポートと、通信フレームのヘッダ部から抽出した方向情報、子局ID、シーケンス番号及びTTL情報とに基づいて、各テーブル34A,34Bを用いた以下の処理を実行することにより、受信した通信フレームを通過させるか廃棄するかを判定する。
【0078】
(1)下りフレームの通過限定処理
子局2のフレーム処理部33は、通信フレームから抽出した方向情報が「下り」である場合には、下りフレームに関する次の通過限定処理を実行する。
【0079】
(有効判定)
フレーム処理部33は、下りテーブル34Aにおける、判定対象フレームに記された子局IDの値に対応するエントリの状態フィールドを参照し、受信した下りフレームが有効か否かを判定する。
ここで、下りテーブル34Aが正しく設定されている場合は、状態フィールドが「有効」になっているが(子局ID=X,Zの場合)、正しく設定されていない場合は、状態フィールドが「無効」となっている(子局ID=Yの場合)。
【0080】
そこで、フレーム処理部33は、状態フィールドが無効である子局ID(=Y)の下りフレームについては、廃棄と判定して処理を終了し、状態フィールドが有効である子局ID(=X,Z)の下りフレームにのみ、更に以下の処理を実行する。
【0081】
(下りのパス限定処理)
フレーム処理部33は、下りテーブル34Aにおける、判定対象フレームに記された子局IDの値に対応するエントリのモードフィールドを参照し、ここで指定された動作モードが「パス」である場合(図9(a)の例では、子局ID=Xの場合)には、下りフレームの入力ポートを絞る「パス限定処理」を行う。
すなわち、フレーム処理部33は、モードフィールドが「パス」の下りフレームについては、下りテーブル34Aのセレクタフィールドで指定されている指定ポートのみを、下りフレームの入力ポートに設定する。
【0082】
より具体的には、フレーム処理部33は、セレクタフィールドの指定ポートと判定対象フレームの入力ポート(ポートL又はポートR)とを比較し、それらが異なるポートであれば、廃棄と判定し、更に後述の「下りパス確認処理」を行って処理を終了する。
また、フレーム処理部33は、上記指定ポートと入力ポートが同じであれば、通過と判定し、下りテーブル34Aの通過時刻フィールドを現在時刻で更新するとともに、同テーブル34Aのロス回数フィールドを0にクリアして処理を終了する。
【0083】
なお、図9(a)の例では、子局ID=Xのエントリのモードフィールドが「パス」に設定されているので、子局ID=Xの下りフレームに対して上記のパス限定処理が行われる。
また、図9(a)の例では、子局ID=Xのエントリのセレクタフィールドが「L」に指定されているので、子局ID=Xの下りフレームについては、ポートLからポートRに通過方向(パス)が限定されている。
【0084】
(下りパス確認処理)
フレーム処理部33は、上記のパス限定処理において、セレクタフィールドで指定された指定ポートと異なるポートから入力された下りフレームを廃棄する場合に、次の「下りパス確認処理」を行う。
すなわち、フレーム処理部33は、通過時刻フィールドの値Tt と現在時刻Tc とを比較し、Tc − Tub ≦ Tt でなければ、ロス回数フィールドの値を1つインクリメントする。なお、Tubは、重複が発生しうる期間の上限値を表すシステムパラメータである。
【0085】
そして、フレーム処理部33は、ロス回数が予め決められている上限値に達すれば、当該エントリのセレクタフィールドの指定ポートを反転させる(=パスの切り替え)とともに、テーブル34Aのロス回数フィールドを0にクリアする。
なお、図9(a)の例では、子局ID=Xのエントリのセレクタフィールドが「L」に指定されているので、上記の反転が行われると、当該フィールドにおける指定ポートが「R」に切り替わる。
【0086】
(下りのフレーム限定処理)
フレーム処理部33は、下りテーブル34Aにおける、判定対象フレームに記された子局IDの値に対応するエントリのモードフィールドを参照し、ここで指定された動作モードが「フレーム」である場合(図9(a)の例では、子局ID=Zの場合)には、ポートLとポートRから受信した同じ下りフレームを、先に到達した下りフレームに絞って送信する「フレーム限定処理」を行う。
【0087】
すなわち、フレーム処理部33は、モードフィールドが「フレーム」の下りフレームについては、シーケンス番号フィールドの値(=SNt とする。)と判定対象フレームのシーケンス番号の値(=SNf とする。)との比較、及び、通過時刻フィールドの値(=Tt とする)と現在時刻(=Tc とする。)との比較に基づいて、下りフレームを通過させるか否かを判定する。
【0088】
より具体的には、フレーム処理部33は、上記の各値について、次の2つの不等式の双方が成立する場合には、廃棄と判定して処理を終了する。
SNt − SNub ≦ SNf ≦ SNt
Tc − Tub ≦ Tt
【0089】
逆に、上記2つの不等式のいずれかが成立しない場合には、フレーム処理部33は、通過と判定し、シーケンス番号フィールドをSNfで更新するとともに、通過時刻フィールドを現在時刻で更新し、ロス回数フィールドを0にクリアして処理を終了する。
ただし、メッシュネットワークにおいて発生した障害が復旧した場合など、(前記更新前の)SNt+1=SNfでない場合、すなわち、フレームの追い越しが発生する場合がある。このような場合は、追い越されたシーケンス番号のフレームであっても、シーケンス番号毎に最初に到着したフレームを通過させるようにしてもよい。
【0090】
更に、自局宛フレームについては、シーケンス番号フィールドを更新せず、追い越したフレームを一旦バッファリングし、追い越されたシーケンス番号が到着するのを待ってから、シーケンス番号順にポートUに出力するようにしてもよい。
なお、本実施形態では、シーケンス番号と時刻は有限の巡回カウンタで生成されるようになっており、大小比較においてはカウンタの折り返しをリニアに展開して比較する。
【0091】
(2)上りフレームの通過限定処理
子局2のフレーム処理部33は、通信フレームから抽出した方向情報が「上り」である場合には、上りフレームに関する次の通過限定処理を実行する。
【0092】
(有効判定)
フレーム処理部33は、上りテーブル34Bにおける、判定対象フレームに記された子局IDの値に対応するエントリの状態フィールドを参照し、受信した上りフレームが有効か否かを判定する。
【0093】
ここで、上りテーブル34Bが正しく設定されている場合は、状態フィールドが「有効」になっているが(子局ID=X,Zの場合)、正しく設定されていない場合は、状態フィールドが「無効」となっている(子局ID=Yの場合)。
そこで、フレーム処理部33は、状態フィールドが無効である子局ID(=Y)の上りフレームについては、廃棄と判定して処理を終了し、状態フィールドが有効である子局ID(=X,Z)の上りフレームにのみ、更に以下の処理を実行する。
【0094】
(上りのパス限定処理)
フレーム処理部33は、上りテーブル34Bにおける、判定対象フレームに記された子局IDの値に対応するエントリのモードフィールドを参照し、ここで指定された動作モードが「パス」である場合(図9(b)の例では、子局ID=Xの場合)には、上りフレームの入力ポートを絞る「パス限定処理」を行う。
すなわち、フレーム処理部33は、モードフィールドが「パス」の上りフレームについては、上りテーブル34Bのセレクタフィールドで指定されている情報に基づき、支線ポートBから入力される上りフレームの転送内容を設定する。
【0095】
より具体的には、フレーム処理部33は、入力ポートがポートLの上りフレームについては、通過と判定し、R通過時刻フィールドを現在時刻で更新して処理を終了し、入力ポートがポートRの上りフレームの場合も、通過と判定し、L通過時刻フィールドを現在時刻で更新して処理を終了する。
【0096】
これに対して、フレーム処理部33は、入力ポートがポートBであり、かつ、セレクタフィールドが「自局」に指定されている場合には、通過と判定し、L通過時刻フィールドとR通過時刻フィールドを現在時刻で更新して処理を終了する。
そして、フレーム処理部33は、入力ポートがポートBであり、かつ、セレクタフィールドが「他局」に指定されている場合には、廃棄と判定して処理を終了する。
【0097】
なお、図9(b)の例では、子局ID=Xのエントリのモードフィールドが「パス」に設定されているので、子局ID=Xの上りフレームに対して上記のパス限定処理が行われる。
また、図9(b)の例では、子局ID=Xのエントリのセレクタフィールドが「自局」に指定されているので、子局ID=Xの上りフレームについては、ポートBからポートLとポートRに中継される。
【0098】
(上りのフレーム限定処理)
フレーム処理部33は、上りテーブル34Bにおける、判定対象フレームに記された子局IDの値に対応するエントリのモードフィールドを参照し、ここで指定された動作モードが「フレーム」である場合(図9(b)の例では、子局ID=Zの場合)には、ポートL又はポートRとポートBから受信した同じ上りフレームを、先に到達した上りフレームに絞って送信する「フレーム限定処理」を行う。
【0099】
すなわち、フレーム処理部33は、モードフィールドが「フレーム」である上りフレームについては、入力ポートの種別L,R,Bに応じて、次のフレーム限定処理を行う。
例えば、フレーム処理部33は、上りフレームの入力ポートがポートLである場合、Rシーケンス番号フィールドの値(=SNRt とする。)と判定対象フレームのシーケンス番号の値(=SNf とする。)との比較、及び、R通過時刻フィールドの値(=TRt とする。)と現在時刻(=Tc とする。)との比較に基づいて、上りフレームを通過させるか否かを判定する。
【0100】
より具体的には、フレーム処理部33は、上記の各値について、次の2つの不等式の双方が成立する場合には、廃棄と判定して処理を終了する。
SNRt − SNub ≦ SNf ≦ SNRt
Tc − Tub ≦ TRt
逆に、上記2つの不等式のいずれかが成立しない場合には、フレーム処理部33は、通過と判定し、Rシーケンス番号フィールドをSNf で更新するとともに、R通過時刻フィールドを現在時刻で更新して処理を終了する。
ただし、メッシュネットワークにおいて発生した障害が復旧した場合など、(前記更新前の)SNRt+1=SNfでない場合、すなわち、フレームの追い越しが発生する場合がある。このような場合は、追い越されたシーケンス番号のフレームであっても、シーケンス番号毎に最初に到着したフレームを通過させるようにしてもよい。
【0101】
フレーム処理部33は、上りフレームの入力ポートがポートRの場合には、Lシーケンス番号フィールドの値(=SNLt とする。)と判定対象フレームのシーケンス番号の値(=SNf )との比較、及び、L通過時刻フィールドの値(=TLt とする。)と現在時刻(=Tc )との比較に基づいて、入力ポートとポートLの場合と同様の処理を行う。
また、フレーム処理部33は、上りフレームの入力ポートがポートBの場合には、入力ポートがポートLの場合の上記処理と、入力ポートがポートRの場合の上記処理の双方を行う。
【0102】
なお、上述の実施形態では、通過判定テーブル10,34にて通過限定処理の動作モードを子局IDごとに設定可能として、パス限定処理とフレーム限定処理とを同時に実行可能とする場合を例示したが、メッシュネットワーク全体で、或いは上り方向又は下り方向について、通過限定処理の動作モードを、パス限定処理とフレーム限定処理のいずれか一方に統一することにしてもよい。この場合には、通過判定テーブル10,34にモードフィールドを設けるは必要ない。
【0103】
また、上述の実施形態において、上りパスの正常性の確認は、子局2からの応答の有無や、OAMによる明示的な接続性の確認や、通過判定テーブル34の参照により、親局1が統括的に判断する。
そして、現在有効となっている上りパスが異常と判断した場合には、親局1は、別経路の上りパスが有効となるように、関係する子局2にパスの切り替えを指示すればよい。子局2は、この切り替え指示を受けると、例えば、上り通過判定テーブル34Bの該当するセレクタフィールドの設定を変更する。
【0104】
〔通信システムの効果〕
以上の通り、本実施形態の通信システム(メッシュネットワーク)によれば、親局1が、上位ポートSで受信した下りフレームを自局のポートLとポートRから送信し、子局2が、自局のポートL又はポートRで受信した下りフレームを、他局宛の場合は、ポートR又はポートLと支線ポートBから送信し、自局宛の場合は、下位ポートUから送信するので、親局1から任意の子局2に至るまでの下り経路を各子局2に予め設定しなくても、メッシュネットワーク内の任意の子局2宛の下りフレームを、当該子局2に伝送することができる。
【0105】
また、本実施形態の通信システムによれば、子局2が、下位ポートUで受信した上りフレームを自局のポートLとポートRから送信し、自局のポートL又はポートRで受信した上りフレームをポートR又はポートLから送信し、支線ポートBで受信した上りフレームをポートLとポートRから送信し、親局1が、自局のポートL又はポートRで受信した上りフレームを上位ポートSから送信するので、任意の子局2から親局1に至るまでの上り経路を各子局2に予め設定しなくても、メッシュネットワーク内の任意の子局2が送信した親局1宛の上りフレームを、当該親局1に伝送することができる。
【0106】
このため、運用中のメッシュネットワークに新たに子局2を新設したり、そのネットワークから子局2を除去したりしても、既存の子局2の設定を変更せずに上りフレームと下りフレームを伝送することができ、ネットワークに対する子局2の新設や除去を容易に行うことができる。
【0107】
また、本実施形態の通信システムによれば、親局1と子局2が、既に転送した下りフレーム又は上りフレームと同じ通信フレームを廃棄する通過限定処理を行うので、メッシュネットワーク内を流れる同じ通信フレームの数を所望数に絞ることができ、メッシュネットワーク内の伝送帯域を有効に確保することができる。
【0108】
更に、本実施形態の通信システムによれば、親局1と子局2が、前記通過限定処理として、異なるポートから受信した同じ複数の通信フレームを、先に到達した通信フレームに絞って所定の出力ポートから送信する「フレーム限定処理」を行うので、通信フレームにシーケンス番号フィールドを定義しておく必要があるが、子局2に指定ポートを設定しなくても、通過限定処理を行うことができる。
【0109】
また、本実施形態の通信システムによれば、前記通過限定処理として、上記フレーム限定処理に加えて、指定ポートで受信する場合のフレームロスの回数が所定値以上である場合に、指定ポートを別のポートに切り替える「パス限定処理」を行うので、パス限定処理とフレーム限定処理の長所と短所を互いに補完した通過限定処理を行うことができ、メッシュネットワークを柔軟に運用できるという利点もある。
【0110】
〔第1の変形例〕
図10は、図1の通信システムの子局2に識別符号2a〜2sを付した図である。
上述の実施形態では、メッシュネットワークを流れる下りフレームは、ポートL,R同士を繋いだ複数のリンクよりなるリング(例えば、図10の親局1→子局2h→子局2g→子局2j→子局2l→子局2n→子局2m→親局1よりなるリング)或いは円弧の両方向に末端まで通過し、支線ポートBで繋がる他のリングにフラッディングされる。
また、メッシュネットワークを流れる上りフレームは、子局2の支線ポートBから両ポートR,Lで2手に分かれて、リング又は円弧の末端まで通過する。
【0111】
従って、本実施形態のメッシュネットワークでは、多数のエンドツーエンドのプロテクションパスが存在するが、メッシュの構造によっては、プロテクション状態に関係なく、宛先の子局2や親局1まで到達できない部分パスが存在することがある。そして、かかる部分パスにも通信フレームが流れ、最終的に廃棄される。
しかし、メッシュの構造上、明らかにプロテクション状態に影響しない上記部分パスまで自由に通信フレームを流れることを許容すると、伝送帯域が無駄に低下したり、電力を無駄に消費したりするので、このような場合にはパスを閉塞させることが合理的である。
【0112】
(部分パスへの流通防止)
例えば、図10において、子局2bが親局1宛に送信する上りフレームFb1に着目する。この場合、子局2bに隣接する子局2dが、仮に単純に前記転送規則(図7)に従うとすれば、子局2dは、ポートBで受信した上りフレームFb1と同じ内容の上りフレームFb2,Fb3を、自局のポートLとポートRから送信することになる。
しかし、子局2bで分岐する2つの上りフレームFb2,Fb3のうち、上りフレームFb3は末端の子局2cに到達するが、宛先の親局1には届かない部分パスである。
【0113】
従って、かかる上りフレームFb1のような、メッシュの構造上、宛先に届かない部分パスを通る通信フレームについては、これを受信した子局2dにおいて、転送規則に適合しない出力制限を行ってもよい。
具体的には、子局2dが、送信元が子局2bの上りフレームFb1を受信すると、ポートRだけから上りフレームFb2を送信し、ポートLからは上りフレームFb3を送信しないようにすればよい。
【0114】
(プロテクションパスを制限する場合)
一方、メッシュネットワークのプロテクションパスの数と、無駄な伝送帯域及び消費電力とは正の相関関係があるので、ネットワークの運用上で後者を重視したい場合は、プロテクションパスの一部を閉塞させてもよい。
例えば、図10において、子局2sが親局1宛に送信する上りフレームFb1に着目する。
【0115】
この場合、メッシュネットワークの子局2がすべて単純に前記転送規則(図7)に従うとすれば、子局2sが送信した上りフレームFs1は、子局2oにおいて2つの上りフレームFs2,Fs3に分岐し、そのうちの一方の上りフレームFs2が子局2pを経由してリング中の子局2nに到達する。
他方の上りフレームFs3は、子局2kのポートBで受信されて、子局2kにおいて更に2つの上りフレームFs4,Fs5に分岐し、そのうちの一方の上りフレームFs4がリング中の子局2lに到達する。また、他方の上りフレームFs5は、子局2fと子局2eを経由してリング中の子局2gに到達する。
【0116】
上記のように、子局2sが送信元の上りフレームFs1は、3つの上りフレームFs2,Fs4,Fs5となって親局1を含むリングに到達するので、プロテクションパスが3つ存在することになるが、伝送帯域の確保や消費電力の低下の観点から、2つのプロテクションパスで運用する場合には、例えば、支線ポートBから上りフレームを受信する子局2k,2oにおいて、転送規則に適合しない出力制限を行ってもよい。
【0117】
具体的には、子局2kが、送信元が子局2sである上りフレームFs3をポートBで受信すると、ポートL,Rのうちの一方だけから上りフレームFs4又は上りフレームFs5を送信し、他方からは送信しないようにすればよい。
或いは、子局2oが、送信元が子局2sである上りフレームFs1をポートBで受信すると、ポートRだけから上りフレームFs3を送信し、ポートLからは送信しないようにすればよい。
【0118】
上記のように、本実施形態のメッシュネットワークを構成する複数の子局2は、必ずしもすべてが前記転送規則(図7)に従う必要はなく、部分パスへの流通防止やプロテクションパスの制限を行うため、所定の送信元の上りフレームを、自局の所定ポートから送信しない出力制限を行う子局(図10の子局2d,2k,2o)が含まれていてもよい。
なお、図10では、上りフレームについて例示したが、親局1が所定の子局2宛に送信する下りフレームの場合も、同様の出力制限を行うことにしてもよい。
【0119】
また、上記のようなネットワーク内の一部の子局2に対する出力制限は、通信フレームの方向と子局IDごとに、当該子局2の出力ポートの開閉を設定することによって行うことができる。
より具体的には、かかる出力ポートの開閉設定は、例えば、通過判定テーブル34に、出力閉塞用のビットマップフィールドを追加し、このフィールドの値が「1」である出力ポートにはフレームを転送しないようにすることで実現することができる。
【0120】
〔その他の変形例〕
今回開示した実施形態(上述の各変形例を含む。)はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
例えば、上述の実施形態では、子局2の支線ポートBが1つだけ設けられているが、複数の支線ポートBを子局2に設けてもよい。この場合の転送規則も、支線ポートBが単数である上述の実施形態と同様である。
【0121】
上述の実施形態では、子局2がポートUに転送するフレームを、自局宛の下りフレームとしているが、自局宛か他局宛かにかかわらず、すべての下りフレームをポートUに転送してもよい。
また、子局2は、自局宛の下りフレームを、他局宛の場合と同様に、ポートU以外の出力ポートに転送してもよい。このような場合、子局2のポートUから下位網に流れた下りフレームは、元のフレームの宛先情報を参照して、適切な端末のみに受信される。
【0122】
一般に、メッシュネットワークでは、通常時に到達時間が最も小さい最短経路をパス設定し(フレーム限定処理においては自動的に最短経路を通る。)、障害発生時には到達時間がより大きいプロテクション経路に切り替わる。したがって、障害が復旧し通常のパスに戻る時点において、フレームの追い越しが発生しうる。
そこで、上述の実施形態において、障害復旧時には、網運用者の指示によって、親局1のポートSからの下り転送処理と、子局2のポートUからの上り転送処理を一旦中断してから通常パスに戻し、過去に転送したフレームがプロテクション経路を通過する時間に相当する時間を経過してから、転送を再開するようにしてもよい。このようにすると、フレーム限定処理における、追い越しを想定した処理が不要になる。
【0123】
上述の実施形態では、通信回線3が2芯の光ファイバよりなるが、1芯双方向伝送の光ファイバを採用してもよい。この場合、隣接する子局2の第1ポートLと第2ポートRとで、送信波長と受信波長が逆になるが、相手方のポートL又はRに対応して、支線ポートBの波長を変更できる子局2を用意すればよい。
また、SFP(Small Form factor Pluggable )等のプラガブルなトランシーバを使用すると、種類の変更が容易となる。
【0124】
上述の実施形態において、親局1や子局2が送信する光信号は、連続送信であってもよいし、バースト送信としてもよい。後者のバースト送信に場合は、レーザダイオードの寿命が長くなるという利点がある。
また、上述の実施形態において、親局1や子局2が行う中継処理は、方向情報や子局情報などの所定情報をカプセル化したフィールド部分のみを読み取り、カットスルー方式で行うことが好ましい。この場合、遅延時間を短縮できる利点がある。
【0125】
上述の実施形態において、通信フレームのフォーマット中の方向情報と子局情報のフィールドを区別しているが、一つのラベルフィールドとしてもよい。
また、子局2の転送規則を、方向とポート種別をもとに手続き的に定義しているが、ラベルと入力ポートをもとにテーブルを参照する形で転送規則を定義してもよい。より具体的には、ラベル値で参照される「転送規則テーブル」を設け、テーブルエントリには入力ポート毎に転送すべき出力ポートをビットマップ形式で示すようにすればよい。
【0126】
このようにすると、転送処理が簡単になる。また、メッシュネットワークにおけるMPtoMPの経路設定と共通化でき、テーブル設定によって任意の転送規則(経路設定)が定義できるので、ラベルによって経路を使い分けたり、子局2間通信を実現することができる。また、テーブルエントリに、出力ポート毎のシーケンス番号と通過時刻を記録するフィールドを追加すれば、フレームモードでの通過判定テーブルと統合することもできるので、転送処理がさらに簡単になる。また、ラベルテーブルを複数設け、網運用者の設定や、フレーム内容に応じて、ラベルテーブルを使い分けるようにしてもよい。このようにすると、親局1の交替やメッシュネットワークの結合/分離を容易かつ迅速に行うことができる。
【符号の説明】
【0127】
1 親局(通信ノード)
2 子局(通信ノード)
3 通信回線
10 通過判定テーブル
11〜13 送受信部
14,16,18 送信用バッファ
15,17,19 受信用バッファ
20 フレーム処理部
21〜24 送受信部
25,27,29,31 送信用バッファ
26,28,30,32 受信用バッファ
33 フレーム処理部
34 通過判定テーブル
34A 下りテーブル
34B 上りテーブル
S 上位ポート(SNIポート)
L 第1ポート
R 第2ポート
B 支線ポート
U 下位ポート(UNIポート)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の子局とメッシュネットワークを構成する親局であって、
上位網に通じる上位ポートと、
相手方ノードの第2ポートに通じる第1ポートと、
相手方ノードの第1ポートに通じる第2ポートと、
前記上位ポートで受信した下りフレームを自局の前記第1及び第2ポートから送信する転送処理が可能であり、
自局の前記第1又は第2ポートで受信した上りフレームを前記上位ポートから送信する転送処理が可能であるフレーム処理部と、
を備えていることを特徴とする親局。
【請求項2】
1つの親局とメッシュネットワークを構成する子局であって、
下位網に通じる下位ポートと、
相手方ノードの第2ポートに通じる第1ポートと、
相手方ノードの第1ポートに通じる第2ポートと、
相手方ノードの第1又は第2ポートに通じる支線ポートと、
自局の前記第1又は第2ポートで受信した下りフレームを、受信側と逆の自局の前記第1又は第2ポートと、前記支線ポート及び前記下位ポートのうちの少なくとも一方とから送信する転送処理が可能であり、
前記下位ポートで受信した上りフレームを自局の前記第1及び第2ポートから送信し、自局の前記第1又は第2ポートで受信した上りフレームを受信側と逆の自局の前記第1及び第2ポートから送信し、前記支線ポートで受信した上りフレームを自局の前記第1及び第2ポートから送信する転送処理が可能であるフレーム処理部と、
を備えていることを特徴とする子局。
【請求項3】
次の(a)及び(d)の転送処理が可能な1つの親局と、次の(b)及び(c)の転送処理が可能な複数の子局とを含むことを特徴とするメッシュネットワーク。
(a) 前記親局が、上位ポートで受信した下りフレームを自局の第1及び第2ポートから送信する。
(b) 前記子局が、自局の第1又は第2ポートから受信した下りフレームを、受信側と逆の自局の前記第1又は第2ポートと、支線ポート及び下位ポートのうちの少なくとも一方とから送信する。
(c) 前記子局が、前記下位ポートで受信した上りフレームを自局の前記第1及び第2ポートから送信し、自局の前記第1又は第2ポートで受信した上りフレームを受信側とは逆の前記第1及び第2ポートから送信し、前記支線ポートから受信した上りフレームを自局の前記第1及び第2ポートから送信する。
(d) 前記親局が、自局の前記第1又は第2ポートで受信した上りフレームを前記上位ポートから送信する。
【請求項4】
前記親局又は前記子局よりなる通信ノードは、既に転送した下りフレーム又は上りフレームと同じ通信フレームを廃棄する通過限定処理を行う請求項3に記載のメッシュネットワーク。
【請求項5】
前記通過限定処理は、予め設定された指定ポートから受信した通信フレームのみの転送を許容し、前記指定ポートで受信する場合のフレームロスの回数が所定値以上である場合に、前記指定ポートを別のポートに切り替える、パス限定処理である請求項4に記載に記載のメッシュネットワーク。
【請求項6】
前記通過限定処理は、異なるポートから受信した同じ複数の通信フレームを、先に到達した通信フレームに絞って所定の出力ポートから送信する、フレーム限定処理である請求項4に記載のメッシュネットワーク。
【請求項7】
前記通信ノードは、前記通過限定処理として、前記パス限定処理と、異なるポートから受信した同じ複数の通信フレームを、先に到達した通信フレームに絞って所定の出力ポートから送信する、フレーム限定処理との双方を実行可能である請求項5に記載のメッシュネットワーク。
【請求項8】
下りフレーム又は上りフレームよりなる通信フレームの転送可能回数を記すフィールドが当該通信フレームに含まれており、
前記子局は、前記通信フレームの転送ごとに前記フィールドの値を減算又は加算し、その値が所定値となった前記通信フレームを廃棄する請求項3〜7のいずれか1項に記載のメッシュネットワーク。
【請求項9】
複数の前記子局には、所定の宛先の下りフレーム又は所定の送信元の上りフレームを、自局の所定ポートから送信しない出力制限を行うものが含まれている請求項3〜8のいずれか1項に記載のメッシュネットワーク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−30992(P2013−30992A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165788(P2011−165788)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】