説明

メール端末装置、メッセージ取得方法、メッセージ送信方法およびメールクライアントプログラム

【課題】
サイズが大きいメッセージを受信/送信する際にRAM不足とならず、プログラムの動作が不安定とならないメール端末装置、メッセージ取得方法、メッセージ送信方法およびメールクライアントプログラムを提供すること
【解決手段】 メール端末装置は、所定サイズのバッファーを有する揮発性メモリと、書き込み可能な不揮発性メモリと、処理部とを備えたメール端末装置において、前記処理部は、メッセージのデータを固定長ずつ前記バッファーに受信するステップと、前記固定長ずつ受信したデータを不揮発性メモリ上のファイルに逐次格納するステップとを繰り返してメッセージを取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メール端末装置、メッセージ取得方法、メッセージ送信方法およびメールクライアントプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンピュータネットワークを利用してメッセージを交換する方法として、電子メールは広く利用されている。また携帯電話端末ではシグナリングチャネルを利用してSMS(Short Message Service)、MMS(Multimedia Messaging Service)といったメッセージを交換するサービスが同一事業者の契約端末間で提供されており、さらに携帯電話端末とインターネットに接続されたコンピュータまたは他通信事業者の契約端末との間では電子メールを交換することも広く行われている。
【0003】
個々のローカルネットワーク内で独自の通信方式(プロトコル)によって運用されていた電子メールは、インターネットが普及することにより、TCP/IPネットワーク上でSMTP(Send Mail Transfer Protocol)、POP(Post Office Protocol)、IMAP(Internet Message Access Protocol)、MIME(Multipurpose Internet Mail Extensions)等のRFCで定められた共通のプロトコルによって運用されている。
【0004】
携帯電話端末の電子メールも基本的には同様のプロトコルに沿って運用されているが、移動体通信事業者が提供しているネットワークやサービスに対応するため独自の拡張および修正が加えられている場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1997−261344公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
携帯電話端末でメッセージの作成、送受信、閲覧および管理を実現するためには、携帯電話端末上でMUA(Mail User Agent)のプログラム(メーラー、メールクライアントと称する場合がある)を実行する必要がある。しかしながら、携帯電話端末はパーソナルコンピュータやサーバコンピュータ等と比べて処理能力やメモリ容量が制限されており、またメモリの構成も異なっている。このため、携帯電話端末用のメールクライアントでは、携帯電話端末に固有の問題が生じる場合がある。
【0007】
例えば、携帯電話のような組み込み機器におけるRAM搭載量は制限されているが、電子メールとして送受信されるメッセージの容量は数メガバイトに及ぶ場合もある。このため、携帯電話端末で使用されるメールクライアントプログラムで受信したメッセージをRAM上に保持する構成とすると、サイズの大きいメッセージを受信した際にメッセージによりRAMが占有されてメモリ不足となり、ひいてはプログラムの動作が不安定になるという問題がある。このような問題は、送信するメッセージをRAM上に保持する構成において、サイズの大きいメッセージを送信する際にも同様に発生し得るものである。
【0008】
そこで本発明は、サイズが大きいメッセージを受信/送信する際にRAM不足とならず、プログラムの動作が不安定とならないメール端末装置、メッセージ取得方法、メッセージ送信方法およびメールクライアントプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の第1の観点は、所定サイズのバッファーを有する揮発性メモリと、
書き込み可能な不揮発性メモリと、
処理部とを備えたメール端末装置において、
前記処理部は、メッセージのデータを固定長ずつ前記バッファーに受信するステップと、前記固定長ずつ受信したデータを不揮発性メモリ上のファイルに逐次格納するステップとを繰り返してメッセージを取得することを特徴とするメール端末装置を提供する。
【0010】
上記構成において、前記処理部は、さらに受信するメッセージのサイズが所定値以下の場合には、メッセージのデータを固定長ずつ前記バッファーに受信するステップと、前記固定長ずつ受信したデータを揮発性メモリ上のオブジェクトに逐次格納するステップとを繰り返してメッセージを取得する構成とすることが望ましい。
【0011】
また、本発明の第2の観点は、所定サイズのバッファーを有する揮発性メモリと、
書き込み可能な不揮発性メモリと、
処理部とを備えたメール端末装置において、
前記処理部は、作成したメッセージのデータを不揮発性メモリ上のファイルに格納するステップと、当該ファイルからデータを固定長ずつ読み出して前記バッファーに格納して逐次データを送信するステップとを繰り返してメッセージを送信することを特徴とするメール端末装置を提供する。
【0012】
上記構成において、前記処理部は、さらに作成したメッセージのサイズが所定値以下の場合には、メッセージのデータを揮発性メモリ上に保持するステップと、当該揮発性メモリ上に保持されたデータを固定長ずつ前記バッファーに格納して逐次データを送信するステップとを繰り返してメッセージを送信する構成とすることが望ましい。
【0013】
さらに、本発明の第3の観点は、所定サイズのバッファーを有する揮発性メモリと、書き込み可能な不揮発性メモリと、処理部とを備えたメール端末装置でメッセージを取得する方法において、
メッセージのデータを固定長ずつ前記バッファーに受信するステップと、前記固定長ずつ受信したデータを不揮発性メモリ上のファイルに逐次格納するステップとを繰り返してメッセージを取得することを特徴とするメッセージ取得方法を提供する。
【0014】
上記構成においても、受信するメッセージのサイズが所定値以下の場合には、メッセージのデータを固定長ずつ前記バッファーに受信するステップと、前記固定長ずつ受信したデータを揮発性メモリ上のオブジェクトに逐次格納するステップとを繰り返してメッセージを取得する構成とすることが望ましい。
【0015】
さらにまた、本発明の第4の構成は、所定サイズのバッファーを有する揮発性メモリと、書き込み可能な不揮発性メモリと、処理部とを備えたメール端末装置でメッセージを送信する方法において、
作成したメッセージのデータを不揮発性メモリ上のファイルに格納するステップと、当該ファイルからデータを固定長ずつ読み出して前記バッファーに格納して逐次データを送信するステップとを繰り返してメッセージを送信することを特徴とするメール送信方法を提供する。
【0016】
上記構成においても、作成したメッセージのサイズが所定値以下の場合には、メッセージのデータを揮発性メモリ上に保持するステップと、当該揮発性メモリ上に保持されたデータを固定長ずつ前記バッファーに格納して逐次データを送信するステップとを繰り返してメッセージを送信する構成とすることが望ましい。
【0017】
さらにまた、本発明の第5の観点は、所定サイズのバッファーを有する揮発性メモリと、書き込み可能な不揮発性メモリと、処理部とを備えたメール端末装置で実行されるメールクライアントプログラムにおいて、
前記処理装置で実行することにより、メッセージのデータを固定長ずつ前記バッファーに受信するステップと、前記固定長ずつ受信したデータを不揮発性メモリ上のファイルに逐次格納するステップとを繰り返してメッセージを取得する処理を実現することを特徴とするメールクライアントプログラムを提供する。
【0018】
前記処理装置で実行することにより、さらに受信するメッセージのサイズが所定値以下の場合には、メッセージのデータを固定長ずつ前記バッファーに受信するステップと、前記固定長ずつ受信したデータを揮発性メモリ上のオブジェクトに逐次格納するステップとを繰り返してメッセージを取得する処理を実現することが望ましい。
【0019】
さらにまた、本発明の第6の観点においては、所定サイズのバッファーを有する揮発性メモリと、書き込み可能な不揮発性メモリと、処理部とを備えたメール端末装置で実行されるメールクライアントプログラムにおいて、
前記処理装置で実行することにより、作成したメッセージのデータを不揮発性メモリ上のファイルに格納するステップと、当該ファイルからデータを固定長ずつ読み出して前記バッファーに格納して逐次データを送信するステップとを繰り返してメッセージを送信することを特徴とするメールクライアントプログラムを提供する。
【0020】
上記構成においても、前記処理装置で実行することにより、さらに作成したメッセージのサイズが所定値以下の場合には、メッセージのデータを揮発性メモリ上に保持するステップと、当該揮発性メモリ上に保持されたデータを固定長ずつ前記バッファーに格納して逐次データを送信するステップとを繰り返してメッセージを送信する処理を実現することが望ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明のメール端末装置、メッセージ取得方法およびメールクライアントプログラムは、メッセージのデータを固定長ずつ前記バッファーに受信するステップと、前記固定長ずつ受信したデータを不揮発性メモリ上のファイルに逐次格納するステップとを繰り返してメッセージを取得するので、受信したメッセージが揮発性メモリ(RAM)上に配置されることはない。したがって、サイズの大きいメッセージを受信してもメール端末装置はRAM不足とはならず、プログラムの動作が不安定になることはない。
【0022】
また、本発明のメール端末装置、メッセージ送信方法およびメールクライアントプログラムは、作成したメッセージのデータを不揮発性メモリ上のファイルに格納するステップと、当該ファイルからデータを固定長ずつ読み出して前記バッファーに格納して逐次データを送信するステップとを繰り返してメッセージを送信するので、送信するメッセージが揮発性メモリ(RAM)上に配置されることはない。したがって、サイズの大きいメッセージを送信する際にメール端末装置がRAM不足となることはなく、プログラムの動作が不安定になることはない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】 本発明の一実施形態にかかる通信端末装置のハードウェアブロック図である。
【図2】 本発明の一実施形態にかかる通信端末装置のソフトウェアブロック図である。
【図3】 本発明の一実施形態にかかるメールクライアントプログラムのブロック図である。
【図4】 (a)は電子メールメッセージのデータ構造例を示す図面であり、(b)は別のデータ構造例を示す図面である。
【図5】 メッセージ取得動作のフローチャートである。
【図6】 メッセージ送信動作のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明にかかるメール受信方法、メール端末装置およびメールクライアントプログラムの実施の形態について説明する。図1は本発明にかかるメール端末装置の一実施形態である通信端末装置100のハードウェアブロック図である。この図では、標準的なハードウェア構成について示しており、機能ブロックの一部には本発明と関係ないものも併せて示されている。図1に示すように、この通信端末装置100は、主として、処理装置であるアプリケーションプロセッサ101およびベースバンドプロセッサ102と、アプリケーションプロセッサ101に接続されたバッテリー103、揮発性メモリであるRAM104、書き込み可能な不揮発性メモリであるフラッシュメモリ105、メモリーカード端子106、GPSトランシーバ108、WiFi/Bluetoothトランシーバ109、キーパッド/ボタン110、LCD/タッチパネル111、マイク112、スピーカ113、USB端子114およびカメラ115と、ベースバンドプロセッサ102に接続されたトランシーバ/USIM107とから構成されている。
以下、これらの構成について説明する。
【0024】
アプリケーションプロセッサ101はMPUないしCPUであり、バッテリー103から電力の供給を受けて後述するフラッシュメモリ105に格納されたプログラムを実行することにより種々の機能を実現する部である。ベースバンドプロセッサ102は、無線通信の基本的な機能を実現するための信号処理を行うプロセッサである。これらアプリケーションプロセッサ101およびベースバンドプロセッサ102は一つのチップセットとして構成してもよいし、両者の機能を一つのプロセッサに統合したものであっても構わない。
【0025】
バッテリー103は、各機能ブロックに電力を供給する部であり、必要に応じてバッテリーを制御するコントローラチップが併用される。
【0026】
RAM104は、揮発性メモリでありSRAMやPSRAM、各種DRAM等の半導体記憶装置が採用される。フラッシュメモリ105は、書き換え可能な不揮発性メモリであって、NAND型であってもNOR型であってもよいし他の形式であっても構わない。RAM104とフラッシュメモリ105とを比較すると、その読み出し時間および書き込み時間はいずれもRAM104がより高速である。また、通信端末装置100にはメモリーカード端子106が設けられており、小型のフラッシュメモリモジュールを外部メモリとして接続することが可能である。
【0027】
フラッシュメモリ105には、アプリケーションプロセッサ101およびベースバンドプロセッサ102で実行することにより通信端末装置100で所定の機能を実現するための種々のプログラムおよびデータが格納されている。これらのプログラムおよび/またはデータは必要に応じてRAM104にロードされ、RAM104上に確保されたヒープメモリを利用して実行される。
【0028】
トランシーバ/USIM107はベースバンドプロセッサ102と接続されており、装着されたUSIM(Universal Subscriber Identity Module)すなわち汎用加入者識別モジュールの情報に基づいて、ベースバンドプロセッサ102の制御により所定電波帯域で電波を送受信して通信を行う回路である。本実施形態における通信端末装置100は、ベースバンドプロセッサ102とトランシーバ/USIM107により移動体通信網に接続して通信を行う構成となっている。
【0029】
GPSトランシーバ108は、通信端末装置100の位置情報を取得するGPS信号を受信するための部であり、WiFi/Bluetoothトランシーバ109はIEEE802.11a,IEEE802,11b,IEEE802.11g,IEEE802.11n等で規定されたWiFi(無線LAN)技術を利用した通信およびIEEE802.15.1およびBluetooth規格で規定されたBluetooth技術を利用した通信を行う回路である。これらの回路は互いに独立したチップとして実装しても良いし、双方の回路を一つのチップに実装した構成であっても構わない。
【0030】
キーパッド/ボタン110は、通信端末装置100の筐体に設けられた入力装置であって、後述するLCD/タッチパネル111とともにユーザが通信端末装置100を操作するための入力を受け付ける。
【0031】
LCD/タッチパネル111は、タッチパネル機能を備えた液晶ディスプレイ装置であって、通信端末装置100はLCD/タッチパネル111の画面にアプリケーションの情報を表示するとともにGUI(Graphical User Interface)を表示してユーザの操作に供する。
【0032】
さらに、マイク112およびスピーカ113は通信端末装置100で音声の入出力を実現し、USB114は通信端末装置100を別の機器に接続してデータを送受信したり機能を制御したりするために使用される。また、カメラ115は、通信端末装置100で写真撮影する機能を提供する。
【0033】
次に、以上のように構成された通信端末装置100のフラッシュメモリ105に格納されたプログラムの構成について概略を説明する。図2は、通信端末装置100の全体的なプログラム構成を示す図面である。
図2に示すように通信端末装置100のプログラム構成は、主として、オペレーティングシステム200、ミドルウェア202およびアプリケーション207の3層からなっている。これらのプログラムはフラッシュメモリ105に格納されており、必要に応じてRAM104を使用してアプリケーションプロセッサ101および/またはベースバンドプロセッサ102により実行されることにより各種機能を実現するものである。
【0034】
オペレーティングシステム200は、ハードウェアを制御するためのデバイスドライバ201を内蔵しており、ミドルウェア202およびアプリケーション207に入出力の制御、メモリ管理、プロセス管理等といったコンピュータシステムとしての基本的な機能を提供する。
【0035】
ミドルウェア202は、例えばグラフィック処理を行うグラフィックライブラリ203、HTMLファイルのレンダリング処理を行うHTMLレンダリングエンジン204、データベースを管理するためのデータベースAPIを提供するデータベース管理システム205、Unix系OSにおけるIibcに代表される標準ライブラリ206を含み、アプリケーション207が利用する汎用的な機能を提供する。ここで、通信端末100でJava(登録商標)アプリケーションのように実行環境を必要とするプログラムを実行する場合には、ミドルウェア202として当該実行環境を実装する。
【0036】
アプリケーション207は、Webページを取得してHTMLレンダリングエンジン204で作成した画面を表示するブラウザ208、後述するメールクライアントプログラム209、電話機能を提供する電話アプリケーション210等を含み、通信端末装置100のユーザに各種機能を提供するものである。
【0037】
以下、メールクライアントプログラム209について説明する。
図3はメールクライアントプログラム209のソフトウェアブロック図を各種データ等と併せて示した図面である。図3に示すようにメールクライアントプログラム209は、主としてメニュー表示部221、アカウント設定管理部222、アドレス管理部223およびメッセージ管理部227から構成される。また、各種データ等は、データベース管理システム205で管理されたアカウント情報241、アドレスデータ部242、メールボックス243およびメッセージ格納部244を含んでいる。
【0038】
フォルダ一覧表示部221は、起動後に表示される画面をなすブロックであり、デフォルトに設定されているアカウントのメールボックスについて、設定されているフォルダの一覧を表示してユーザの選択に供する。また、アカウント切り替え、設定、メール作成、アドレス帳表示の各機能を呼び出すためのUIを併せて画面に表示する。
【0039】
アカウント設定管理部222は、フォルダ一覧表示部表示部221のなす画面からアカウントの切り替えのUIまたは設定のUIを操作することで呼び出され、アカウント一覧を表示してユーザの選択したものにアカウントを切り替える機能、アカウントの設定を行う機能を提供する。アカウント管理部222が設定管理するユーザのアカウント情報は、データベース管理システム205によって管理されたアカウント情報部241に保存される。
【0040】
アドレス管理部223は、フォルダ一覧表示部表示部221のなす画面からアドレス帳表示のUIを操作することで呼び出され、登録されたアドレスの一覧を表示するアドレス一覧表示部224、登録されたアドレスを個別に画面に表示するアドレス個別表示部225、アドレスの追加および登録されたアドレスの修正を行うアドレス追加修正部226を備え、アドレス帳に登録されたデータの利用および管理する処理を行う。アドレス管理部223が管理するアドレス帳のデータは、データベース管理システム205によって管理されたアドレスデータ部242に保存される。
【0041】
メッセージ管理部227は、メッセージ(メールクライアントプログラム209が作成ないし送受信した個々のメールをいう)を表示してユーザに閲覧させるメッセージ表示部228、新規メッセージの作成編集を行うメッセージ作成編集部229、メールサーバに接続してメッセージの送信を行うメッセージ送信部230、メールサーバに接続してメッセージの受信を行うメッセージ受信部231を備え、これらにより新規メールを作成して送信し、新規メールを受信して管理し、また画面に表示する処理を行う。
【0042】
受信バッファー232は、メッセージ受信部231が移動体通信網を介して接続したメールサーバからメッセージのデータを取得するために使用するRAM104上の領域である。また、送信バッファー233がメッセージ送信部230が移動体通信網を介して接続したメールサーバにメッセージのデータを送信するために使用するRAM104上の領域である。受信バッファー232および送信バッファー233は、ずれも固定長バッファーである。
【0043】
以下、メッセージ管理部227が管理するメッセージおよびメールボックスのデータ形式について説明する。メールクライアントプログラム209が送受信するメッセージは電子メールとして標準的なデータ形式をとるものであり、その構造は図4(a)および(b)に示す通りである。図4(a)は添付ファイルが無いテキストメールのデータ構造を示しており、この場合のメッセージはヘッダ情報と、本文からなるボディ情報とが空行により分離された構造となっている。これに対して図4(b)はファイルの添付されたマルチパートメールのデータ構造を示しており、この場合のメッセージはヘッダ情報と、本文のパートと添付ファイルのパートからなるボディ情報とが空行により分離された構造となっている。
【0044】
メッセージ管理部227は、このようなメッセージから、受信した形態が(TO,CC,BCC)のいずれかであるかを示す受信タイプ、Uid、タイトル、受信日、送信日、送信元、返信先、ボディ情報、コンテンツ形式およびMIMEタイプ等を抽出ないし判断し、さらにメッセージを格納するデータベース名、データベースのプライマリーキーとして使用するID、ユーティリティフラグ、フォルダ名、既読フラグ等を付与したメッセージオブジェクトをなし、当該メッセージオブジェクトの管理を行う。また、データベース管理システム205を利用してメールボックス243にメッセージオブジェクトを格納し、データベースとして管理する。
【0045】
以下、メールクライアントプログラム209が使用する各種データ等について説明する。アカウント情報部241は、メッセージの送受信に使用するメールサーバにログインするためのアカウント情報を格納したデータベースであり、フラッシュメモリ105上に設けられている。アカウント情報にはメールの送受信に使用するメールアドレスが含まれており、さらに後述するメールボックスの一つが関連付けられている。
【0046】
アドレスデータ部242は、メッセージを送受信する相手の情報を格納したデータベースであり、フラッシュメモリ105上に設けられている。アドレスデータ部242には、相手の名前、メールアドレス等が含まれている。
【0047】
メールボックス243は、送受信および作成したメッセージをアカウント毎に格納したデータベースであり、フラッシュメモリ105上に設けられている。メールボックス243はメッセージ管理部227のメッセージ表示部228およびメッセージ作成編集部229よって読み出され、また、メッセージ受信部231が受信したメッセージおよびメッセージ送信部230が送信したメッセージが追加登録される。
【0048】
メッセージ格納部244は、フラッシュメモリ105上に設けられており、所定の場合に受信バッファー232が受信したメッセージのデータを格納するため、また、所定の場合にメッセージ作成編集部229を利用してユーザが作成したメッセージのデータを格納する。
【0049】
以下、以上のようなメールクライアントプログラム209の動作について、図面を参照しながら説明する。図5はメールクライアントプログラム209がメッセージを取得する動作を示すフローチャートであり、図6はメッセージを送信する動作を示すフローチャートである。
【0050】
図5に示すようにメッセージを取得する動作は、メールクライアントプログラム209が起動した状態で、ユーザがLCD/タッチパネル111上に表示されたGUI(Graphical User Interface)を操作して新着メールの受信を指示することから開始される(ST101)。まずメールクライアントプログラム209がアカウント情報部241に記録されたアカウント情報に基づいてメールサーバにログインし(ST102)、メールサーバから新着メールの数とサイズの情報を取得する(ST103)。
【0051】
続いてメールクライアントプログラム209は、メールサーバから取得した情報から新着メールがあるかを判断し(ST104)、新着メールがある場合には新着メールの合計サイズが所定値(例えば1Mバイト)以上であるかを判断する(ST105)。
【0052】
ST105で所定値以上であると判断した場合には、新着メールを受信バッファー232経由で取得してメッセージ格納部244に格納する処理が実行される(ST106)。より具体的には、例えばメールサーバのメールボックスに格納された新着メッセージを所定の順(例えばメールサーバに到着した順)に、所定長ずつ受信バッファー232で受信し、受信した所定長のデータをメッセージ格納部244に格納する処理を繰り返すことにより新規メッセージを取得する構成とすることができる。この際、新着メッセージのデータが1件ずつ別ファイルになるようにすることが望ましい。
【0053】
一方、ST105で所定値以上であると判断されなかった場合には、新着メールを受信バッファー232経由で取得してRAM104上に保持する処理が実行される(ST107)。より具体的には、例えばメールサーバのメールボックスに格納された新着メッセージを所定の順(例えばメールサーバに到着した順)に、所定長ずつ受信バッファー232で受信し、受信した所定長のデータをRAM104上にメッセージオブジェクトとして配置する処理を繰り返すことにより新規メッセージを取得する構成とすることができる。
【0054】
ST106またはST107の処理を終了した後およびST104で新着メッセージがないと判断された場合には、メールサーバからログオフして(ST108)、一連の処理を終了する。
【0055】
また、図6に示すようにメッセージを送信する動作は、メールクライアントプログラム209が起動した状態で、ユーザがLCD/タッチパネル111上に表示されたGUI(Graphical User Interface)を利用してメッセージを作成することから開始される(ST201)。まず、メールクライアントプログラム209はユーザが作成したメッセージのサイズが所定値(例えば1Mバイト)以上であるかを判断し(ST202)、所定値以上と判断した場合には作成したメッセージをメッセージ格納部244に保存する(ST203)。一方、ST202で所定値以上であると判断されなかった場合には、作成したメッセージはRAM104上に保持される(ST204)。
【0056】
その後、ユーザがLCD/タッチパネル111上に表示されたGUI(Graphical User Interface)を操作してメール送信を指示(ST205)することを経て、メールクライアントプログラム209はメールサーバにログインし(ST206)、作成したメッセージをメッセージ格納部244またはRAM104から所定長ずつ読み出して送信バッファーに収容することにより、メッセージをメールサーバに送信する(ST207)。最後にメールサーバからログオフして(ST208)、一連の処理を終了する
【0057】
上記メッセージを取得する動作によれば、新着メッセージの合計サイズが所定値以上と大きい場合には、取得したメッセージをRAM104上に保持することなくフラッシュメモリ105のメッセージ格納部244に格納するので、新着メッセージによってメモリ不足となりプログラムの動作が不安定になることを防止することができる。一方、新着メッセージの合計サイズが所定値に満たない場合には、取得したメッセージをRAM104上に保持するので、低速なフラッシュメモリ105を利用することの不利益を抑制することができる。
【0058】
また、上記メッセージを送信する動作によれば、作成したメッセージの合計サイズが所定値以上と大きい場合には、取得したメッセージをRAM104上に保持することなくフラッシュメモリ105のメッセージ格納部244に格納するので、作成したメッセージによってメモリ不足となりプログラムの動作が不安定になることを防止することができる。一方、作成したメッセージのサイズが所定値に満たない場合には、メッセージをRAM104上に保持して高速なフラッシュメモリ105を利用することの不利益を抑制することができる。
【0059】
本発明は上記実施の形態に限られるものではなく、種々変形が可能である。例えば、上記実施形態では、新着メッセージのサイズが所定値以上の場合および作成したメッセージのサイズが所定値以上の場合のみフラッシュメモリ105に格納する場合を示したが、そのような判断を行わずに取得したメッセージおよび作成したメッセージは全てフラッシュメモリ105に格納する構成としても良い。その場合には低速なフラッシュメモリ105を利用する頻度は増大するものの、メッセージの保存先に関する条件判断のオーバーヘッドを軽減することが可能である。
【0060】
また、上記実施形態ではメッセージの作成後にサイズが所定値以上であるかを判断する場合を示したが、このような判断はメッセージ作成中に行っても良いし、メッセージを作成する動作と同時並行的に行うようにしても構わない。
【符号の説明】
【0061】
104 RAM
105 フラッシュメモリ
205 データベース管理システム
221 フォルダ一覧表示部
223 アドレス管理部
224 アドレス一覧表示部
225 アドレス個別表示部
226 アドレス追加修正部
227 メッセージ管理部
228 メッセージ表示部
229 メッセージ作成編集部
230 メッセージ送信部
231 メッセージ受信部
232 受信バッファー
233 送信バッファー
234 キャッシュ管理部
241 アカウント情報部
242 アドレスデータ部
243 メールボックス
244 メッセージ格納部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定サイズのバッファーを有する揮発性メモリと、
書き込み可能な不揮発性メモリと、
処理部とを備えたメール端末装置において、
前記処理部は、メッセージのデータを固定長ずつ前記バッファーに受信するステップと、前記固定長ずつ受信したデータを不揮発性メモリ上のファイルに逐次格納するステップとを繰り返してメッセージを取得することを特徴とするメール端末装置。
【請求項2】
前記処理部は、受信するメッセージのサイズが所定値以下の場合には、メッセージのデータを固定長ずつ前記バッファーに受信するステップと、前記固定長ずつ受信したデータを揮発性メモリ上のオブジェクトに逐次格納するステップとを繰り返してメッセージを取得することを特徴とする請求項1に記載のメール端末装置。
【請求項3】
所定サイズのバッファーを有する揮発性メモリと、
書き込み可能な不揮発性メモリと、
処理部とを備えたメール端末装置において、
前記処理部は、作成したメッセージのデータを不揮発性メモリ上のファイルに格納するステップと、当該ファイルからデータを固定長ずつ読み出して前記バッファーに格納して逐次データを送信するステップとを繰り返してメッセージを送信することを特徴とするメール端末装置。
【請求項4】
前記処理部は、作成したメッセージのサイズが所定値以下の場合には、メッセージのデータを揮発性メモリ上に保持するステップと、当該揮発性メモリ上に保持されたデータを固定長ずつ前記バッファーに格納して逐次データを送信するステップとを繰り返してメッセージを送信することを特徴とする請求項3に記載のメール端末装置。
【請求項5】
所定サイズのバッファーを有する揮発性メモリと、書き込み可能な不揮発性メモリと、処理部とを備えたメール端末装置でメッセージを取得する方法において、
メッセージのデータを固定長ずつ前記バッファーに受信するステップと、前記固定長ずつ受信したデータを不揮発性メモリ上のファイルに逐次格納するステップとを繰り返してメッセージを取得することを特徴とするメッセージ取得方法。
【請求項6】
受信するメッセージのサイズが所定値以下の場合には、メッセージのデータを固定長ずつ前記バッファーに受信するステップと、前記固定長ずつ受信したデータを揮発性メモリ上のオブジェクトに逐次格納するステップとを繰り返してメッセージを取得することを特徴とする請求項5に記載のメール取得方法。
【請求項7】
所定サイズのバッファーを有する揮発性メモリと、書き込み可能な不揮発性メモリと、処理部とを備えたメール端末装置でメッセージを送信する方法において、
作成したメッセージのデータを不揮発性メモリ上のファイルに格納するステップと、当該ファイルからデータを固定長ずつ読み出して前記バッファーに格納して逐次データを送信するステップとを繰り返してメッセージを送信することを特徴とするメール送信方法。
【請求項8】
成したメッセージのサイズが所定値以下の場合には、メッセージのデータを揮発性メモリ上に保持するステップと、当該揮発性メモリ上に保持されたデータを固定長ずつ前記バッファーに格納して逐次データを送信するステップとを繰り返してメッセージを送信することを特徴とする請求項7に記載のメール送信方法。
【請求項9】
所定サイズのバッファーを有する揮発性メモリと、書き込み可能な不揮発性メモリと、処理部とを備えたメール端末装置で実行されるメールクライアントプログラムにおいて、
前記処理装置で実行することにより、メッセージのデータを固定長ずつ前記バッファーに受信するステップと、前記固定長ずつ受信したデータを不揮発性メモリ上のファイルに逐次格納するステップとを繰り返してメッセージを取得する処理を実現することを特徴とするメールクライアントプログラム。
【請求項10】
前記処理装置で実行することにより、さらに受信するメッセージのサイズが所定値以下の場合には、メッセージのデータを固定長ずつ前記バッファーに受信するステップと、前記固定長ずつ受信したデータを揮発性メモリ上のオブジェクトに逐次格納するステップとを繰り返してメッセージを取得する処理を実現することを特徴とする請求項9に記載のメールクライアントプログラム。
【請求項11】
所定サイズのバッファーを有する揮発性メモリと、書き込み可能な不揮発性メモリと、処理部とを備えたメール端末装置で実行されるメールクライアントプログラムにおいて、
前記処理装置で実行することにより、作成したメッセージのデータを不揮発性メモリ上のファイルに格納するステップと、当該ファイルからデータを固定長ずつ読み出して前記バッファーに格納して逐次データを送信するステップとを繰り返してメッセージを送信することを特徴とするメールクライアントプログラム。
【請求項12】
前記処理装置で実行することにより、さらに作成したメッセージのサイズが所定値以下の場合には、メッセージのデータを揮発性メモリ上に保持するステップと、当該揮発性メモリ上に保持されたデータを固定長ずつ前記バッファーに格納して逐次データを送信するステップとを繰り返してメッセージを送信する処理を実現することを特徴とする請求項11に記載のメールクライアントプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−160153(P2012−160153A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32575(P2011−32575)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
2.UNIX
【出願人】(394020376)ガイアホールディングス株式会社 (51)
【Fターム(参考)】