説明

モデム

【目的】 自動車・携帯電話網等の移動通信網を介して、公衆電話網と接続不可能な場所でのデータ通信を可能にする。
【構成】 自動車・携帯電話網を介するデータ通信の場合、データ送信時には、出力系122から出力されるアナログ送信信号がインタフェース切換部220及び信号レベル調整部230を介し、携帯電話30のマイクジャック31aに出力される。一方、データ受信時には、携帯電話のイヤホンジャック31bから出力されるアナログ受信信号が、信号レベル調整部230及びインタフェース切換部220を介して入力系125に出力される。また、公衆電話網を介するデータ通信の場合、4線−2線変換部123及びNCU部124を介して加入者線を介したアナログ信号の送受が行われる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はモデムに係わり、特に4線方式による全二重通信が可能なモデムに関する。
【0002】
【従来の技術】最近、パーソナルコンピュータ(以下、パソコンと記述する)を用いたデータ通信、いわゆるパソコン通信が盛んになってきている。このパソコン通信においては、単なるパソコン間のデータ通信だけでなく、パソコンによるファクシミリ(FAX)から送信される文字・図形データの受信等、多様なニューメディア・サービスが受けられるようになってきている。
【0003】パソコン通信は、一般に公衆電話網(加入電話網)を介して行うようになっており、パソコンはモデムまたは音響カプラ等を介して公衆電話網に接続される。公衆電話網の加入者線は、双方向の伝送を同時に行う全二重通信であり、2本の電線を対にした2線式(より対線)となっている。従って、モデムにおける加入者線接続用の出力インタフェースは、上記2線式に対応した方式となっている。
【0004】一方、最近では、携帯電話や自動車電話等を用いたパーソナル移動通信システムの普及・開発も盛んになってきている。パーソナル移動の通信システムは、個人が1人1台、移動通信機(携帯電話や自動者電話等)を持つことにより、移動しながらでも通話(広義では通信)を可能にしたシステムであり、現在の携帯電話をより軽量・小型化した次世代の携帯電話の研究・開発も盛んである。
【0005】ところで、このような携帯電話や自動車電話を用いることによって、自動車・携帯電話網を介する公衆電話網との接続を行い、加入者線(電話回線)のモジュラージャックや電話の無い所でも、公衆電話網を介するパソコン通信を可能にする携帯電話用モデムアダプタ23(以後、単にモデムアダプタ23と略称する)が市販されている。
【0006】図6に、上記モデムアダプタ23を用いた携帯電話30を利用するパソコン通信システムの構成を示す。パソコン21は、RS−232Cケーブル25によりモデム22と接続され、モデム22は2線式入出力コード(モジュラーコード)26によりモデムアダプタ23に接続されている。そして、モデムアダプタ23は、4線式入出力コード(携帯電話接続コード)27により携帯電話30に接続されている。すなわち、モデムアダプタ23は、2線−4線変換器を内蔵しており、2線式によりデータの全二重通信を行うための2線式入出力端子を備えたモデム22と4線式入出力端子(マイク・イヤホンジャック31)を備えた携帯電話30とを接続させるためのアダプタである。
【0007】モデムアダプタ30は、モデム22の2線式入出力端子に接続された2線式入出力コード26からモデム22により変調出力されたパソコン21のアナログ送信信号を取り込み、そのアナログ送信信号を4線式入出力コード27を介し、携帯電話30のマイクジャック31aに出力する。また、モデムアダプタ23は、携帯電話24が受信したパソコン21宛のアナログ受信信号を携帯電話30のインホンジャック31bから入力し、2線式入出力コード26を介しモデム22へ出力する。
【0008】尚、図6においては、マイクジャック31aとインホンジャック31bは、別々のジャックのように示されているが、実際には、ヘッドフォンとマイクが一体化されたヘッドセットのプラグが接続される4端子を有する1個のジャック31である。このため、マイク・イヤホンジャック31に4線式入出力コード27を挿入・接続すると、マイクジャック31aはマイク153側に、イヤホンジャック31bはスピーカ154側に自動的に接続される機構となっている。一方、4線式入出力コード27がマイク・イヤホンジャック31に接続されていない状態では、入力アンプ142は内蔵マイク153に、出力アンプは内蔵スピーカ154に接続される。
【0009】次に、図7に従来のモデム22及び携帯電話30の内部回路構成を示す。同図に示すように、モデム22は、パソコン21とRS−232C規格に沿ったデータの送受信を調歩同期方式等により行うRS−232Cインタフェース部121と、そのRS−232Cインタフェース部121から入力されるパソコン21のディジタル送信信号を電話回線伝送用の周波数帯域(音声周波数帯)のアナログ信号に変換して4線−2線変換部123へ出力する変調部122a並びに出力用バッファ122bから成る出力系122と、通常の電話機と同様の手順で公衆電話網との接続を制御するNCU部124と、パソコン21宛のアナログ送信信号をNCU部124、2線式回線126及び4線−2線変換部123を介して入力し、そのアナログ送信信号を元のディジタル信号に復調してRS−232Cインタフェース部121へ出力する入力用バッファ125a並びに復調部125bから成る入力系125と、上記出力系122から出力される変調されたパソコン21のアナログ送信信号を2線式回線126を介してNCU部124へ出力すると共に、NCU部124がモデムアダプタ23から2線式入出力コード26を介して受信するパソコン21宛の変調されたアナログ信号を、上記2線回線126から取り込み、入力系125の入力用バッファ125aに出力する4線/2線変換部123とを有している。また、更に上記各部を制御する制御部127、上記各部に動作電力を供給する電源部128も有している。そして、上記NCU部124の2線式入出力端子には、公衆電話網の加入者線のモジュラージャックに接続される2線式入出力コード26が接続されている。このように、モデム22は、パソコン21のRS−232Cポート接続用のRS−232Cインタフェース部121と、加入者線のモジュラージャックに挿入・接続されるプラグが先端に取り付けられた2線式入出力コード26を有している。
【0010】また、モデムアダプタ23は、上述したモデム22の2線式入出力コード26が挿入・接続されるモジュラージャックと、その2線式入出力コード26からモデム22から出力されるアナログ送信信号を取り込み4線式入出力コード27を介し携帯電話30のマイクジャック31aに送出すると共に、携帯電話30のイヤホンジャック31bから出力されるパソコン21宛のアナログ信号を4線式入出力コード27を介して入力し、そのアナログ信号を2線式入出力コード26に送出する2線/4線変換器131等を有している。
【0011】すなわち、モデムアダプタ23は、携帯電話30のマイク・イヤホンジャック31からの4線式入出力を2線式入出力に変換して2線式入出力コード26を介しモデム22に入出力する。
【0012】次に、上述のようにして、パソコン21をモデム22並びにモデムアダプタ23を介して携帯電話30に接続して、パソコン通信を行う方法を説明する。
■ まず、携帯電話30により、発呼信号並びに通信相手側のパソコンが接続されている加入者線のダイヤル番号を無線基地局に対し所定の制御チャネルの電波で無線により送出する。
■ 上記発呼信号並びに上記ダイヤル番号を受信した無線基地局は、それらを換・制御局(無線制御局→自動車交換局)に有線により送信する。
■ 交換・制御局は、受信する上記発呼を行った携帯電話30の番号から、そのホームメモリ局を見つけ出し、そのホームメモリ局に対し、携帯電話30が正規の加入者であるかどうか問い合わせる。
■ そして、正規の加入者であった場合、交換・制御局は、上記発呼信号を送信してきた無線基地局の空き通話チャネルを選択し、その通話チャネルを無線基地局を介して携帯電話30に知らせる。また同時に、受信したダイヤル信号に基づいて、公衆通信網を介し上記通信相手側のパソコンが接続されている加入者線との回線接続を行う。
【0013】上述のようにして、パソコン同士間の回線接続が完了すると、パソコン21から相手側パソコンへのデータ通信が可能となる。そして、パソコン21らかRS−232Cケーブル25を介して送信されるディジタル信号(送信データ)は、モデム22のRS−232Cインタフェース部121、出力系122、4線/2線変換部123、及びNCU部124を介し、音声周波数帯のアナログ信号に変換されて2線式入出力コード26からモデムアダプタ23に出力される。
【0014】モデムアダプタ23は、上記入力される変調されたパソコン21のアナログ送信信号を、4線式入出力コード27を介し携帯電話30のマイクジャック31aに出力する。
【0015】携帯電話30は、上記マイクジャック31aに入力されるパソコン21のアナログ送信信号を入力アンプ142により増幅した後、変調部143により前記無線基地局から割り当てられた通話チャネルのアナログ信号に変換した後、そのアナログ信号を送信ミキサ並びに送信電力増幅器等から成る送信部144、送信帯域通過フィルタ、受信帯域通過フィルタ並びにそれらの各フィルタの一端をアンテナ153側に供給するための結合回路から成る送受分波器149、及びアンテナ153を介して、前記通話チャネルの周波数帯の電波により無線基地局へ無線により送出する。
【0016】そして、上記無線基地局へ電波により送出されたパソコン21の送信データは、交換・制御局を中継して公衆電話網へ送信され、さらに公衆電話網を介して相手側パソコンが接続されている加入者線へ送信される。そして、通信相手側のパソコンは、上記加入者線に接続されたモデムを介して、パソコン21から送信されたディジタル信号を受信する。
【0017】次に、公衆電話網に接続された相手側パソコンからパソコン21へのデータ送信動作を説明する。相手側パソコンは、通常の公衆電話網を介するパソコン通信と同様の手順で、モデムを介しパソコン21に対しディジタル信号(送信データ)を送信する。すなわち、送信するディジタル信号をモデムを介して音声周波数帯のアナログ信号に変換した後、加入者線を介し公衆通信網へ送信する。公衆電話網は、そのアナログ送信信号を、既に接続がなされている交換・制御局へ送信する。交換・制御局は、その受信する相手側パソコンからのアナログ送信信号を、有線伝送路を介してパソコン21が在るゾーン内の無線基地局へ送信する。無線基地局は、その受信するアナログ送信信号を前記割り当てられた通話チャネルの電波により、携帯電話30へ無線により送信する。
【0018】携帯電話30は、アンテナ153により上記電波を受信し、送受波器149、及び受信ミキサ並びに増幅器等から成る受信部145を介して復調部146に出力する。復調部146は、上記電波から音声周波数帯のアナログ信号を復調し出力アンプ147に出力する。出力アンプ147はそのアナログ信号を増幅してイヤホンジャック31bに出力し、そのアナログ送信信号は4線式入出力コード27を介してモデムアダプタ23に入力される。
【0019】モデムアダプ23は、内蔵している2線/4線変換回路131により、上記アナログ送信データを2線式入出力コード26に送出する。次に、その2線式入出力コード26に入力された上記アナログ信号は、モデム22内のNCU部124を介して2線式回線126へ送出される。続いて、この2線式回線126上の上記アナログ信号は、4線−2線変換部123により取り込まれて、入力系125へ出力され、入力系125の復調部125bにより、“1”,“0”のビット列から成る元のディジタル信号に復元され、RS−232Cインタフェース部121及びRS−232Cケーブル25を介して、パソコン21へ送信される。
【0020】尚、以上の説明は、パソコン21側(実際にはモデム及びモデムアダプタ13を介して接続される携帯電話14)から“発呼”を行うデータ通信の例であるが、相手側パソコンからのデータ送信要求を受けてデータ通信を行うことも可能である。この場合には、携帯電話30は、無線基地局からの一斉呼び出し信号を受けて、無線基地局に対し応答信号の電波を無線により返送する。すると、無線基地局は、交換・制御局により割り当てられた空き通話チャネルを携帯電話30に知らせてくる。そして、以後、携帯電話30は、その通話チャネルを用いて、無線基地局と通信することが可能となる。すなわち、携帯電話30は無線基地局から相手側パソコンのパソコン21宛の送信データを、上記割り当てられた通話チャネルの電波により受信することが可能となる。そして、パソコン21は、以後、上述した自己の方から“発呼”を行ったときと同様にして、自動車・携帯電話網及び公衆電話網を介して、相手側パソコンとデータ通信を行うことが可能となる。
【0021】また、双方のパソコンが、共に前記図7に示す構成を用意することにより、双方が自動車・携帯電話網をアクセスしてデータ通信を行うことも可能である。尚、図7に示す携帯電話30において、制御部151は、上述した無線基地局との接続制御の他に、通話中のチャネル切替、及び自動車・携帯電話網において必要な位置登録等の制御を行うものである。また、電源部152は、装着される2次電池から供給される電力により、携帯電話30内の各回路に電流を供給する。
【0022】ところで、上記モデムアダプタ23は、上記携帯電話のみならず、ショルダホンや自動車電話にも接続可能である。
【0023】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、従来においても、モデムアダプタ23を介してモデム22と携帯電話30または自動車電話を接続することにより、自動車・携帯電話網を利用したパソコン通信が可能であった。
【0024】ところで、このような携帯電話30を利用したパソコン通信は、例えば営業マンや保険の外交員が、外出先で営業所や本店に新規契約に関するデータの伝送を行ったり、逆に本店のデータベースから顧客情報や商品に関する情報を引き出すために利用される機会が多い。従って、利便性の観点からも、持ち歩く機器の数がより少ないことが望まれる。
【0025】してみれば、RS−232Cポートを有する情報処理機器と4線式の外部入出力インタフェースを有する携帯電話や自動車電話等の移動通信機間のデータ伝送をモデムのみを介して行うことができるようにすれば、モデムアダプタを持ち歩かなくても、情報処理機器を上記モデムを介して携帯電話や自動車電話等の移動通信機と接続することにより、電話回線接続用のモジュラージャックが無い所でも、自動車・携帯電話網等の移動通信網と公衆電話網、または上記移動通信網のみを介する情報処理機器間のデータ通信が可能になることは明らかである。
【0026】本発明の課題は、RS−232Cポートを有する情報処理機器と4線式の外部入出力インタフェースを有する携帯電話や自動車電話等の移動通信機間のデータ伝送をモデムのみを介して行うことができるようにすることである。
【0027】
【課題を解決するための手段】本発明の手段は次の通りである。請求項1記載の第1の発明は、以下の手段を有する。RS−232Cインタフェース1(図1のブロック図参照、以下同じ)は、RS−232C規格に沿って、データの送受信を制御する。変調部2は、RS−232Cインタフェース1を介して入力されるディジタル信号を対応する音声周波数帯のアナログ送信信号に変換する。復調部3は、入力される音声周波数帯のアナログ受信信号を対応するディジタル信号に変換して、RS−232Cインタフェース1に出力する。信号レベル調整部4は、変調部2から出力されるアナログ送信信号をレベル調整して出力端子から外部出力すると共に、入力端子から外部入力されるアナログ受信信号をレベル調整して復調部3に出力する。次に、請求項2記載の第2の発明の手段は次の通りである。この第2の発明は、上記第1の発明の同一名称の各手段と同様な機能を有するRS−232Cインタフェース11(図2のブロック図参照、以下同じ)、変調部12、復調部13、及び信号レベル調整部14を有し、さらに、以下の各手段を有する。網制御部15は、2線式の加入者線を介して電話網との接続制御を行うと共に、前記2線式の加入者線を介してアナログ送受信信号の送受を行う。4線−2線変換部16は、網制御部15を介して前記2線式の加入者線に変調部12から出力されるアナログ送信信号を送出すると共に、網制御部15を介して前記2線式の加入者線からアナログ受信信号を取り込み出力する。インタフェース切換部17は、変調部12から出力されるアナログ信号を信号レベル調整部14に出力させると共に信号レベル調整部14から出力されるアナログ受信信号を復調部13に入力させる第1の選択と、変調部12から出力されるアナログ送信信号を4線−2線変換部16に出力させると共に4線−2線変換部16から入力されるアナログ受信信号を復調部13に出力させる第2の選択との切換えを行う。
【0028】
【作用】本発明の手段の作用は、次の通りである。最初に、前記第1の発明の手段の作用を説明する。RS−232Cインタフェース1は、RS−232Cポートを有するパソコンやハンディターミナル、または電子手帳等の各種情報処理機器と、RS−232Cケーブルを介し、所定のデータ伝送手順に従って、ディジタル信号をシリアル方式で送受信する。変調部2は、RS−232Cインタフェース1により受信されるディジタル信号を、音声周波数帯の対応するアナログ信号に変換し信号レベル調整部4へ出力する。信号レベル調整部4は、そのアナログ信号をレベル調整した後、出力端子4aから外部出力する。一方、信号レベル調整部4は入力端子4bから入力される音声周波数帯のアナログ信号を、レベル調整した後、復調部3に出力する。復調部3は、上記アナログ信号を対応する“0”または“1”のビット列から成るディジタル信号に変換してRS−232Cインタフェース1に出力する。RS−232Cインタフェース1は、そのディジタル信号をRS−232Cケーブルを介し情報処理機器にシリアル伝送する。したがって、RS−232Cポートを有する情報処理機器と4線式の外部入出力インタフェースを有する携帯電話や自動車電話等の移動通信機間のデータ伝送を、上記第1の発明のモデムのみを介して行うことができる。次に、前記第2の発明の手段の作用は、次の通りである。インタフェース切換部17により、変調部12の出力が信号レベル調整部14に入力され、その信号レベル調整部14の出力が復調部13に入力されるような第1の切換選択を行った場合、第2の発明のモデムは、前記第1の発明のモデムと全く同様の回路構成となる。従って、前記第1の発明のモデムと同様に、RS−232Cポートを有する情報処理機器と4線式の外部入出力インタフェースを有する携帯電話や自動車電話等の移動通信機間のデータ伝送を、上記第2の発明のモデムのみを介して行うことができる。一方、インタフェース切換部17により、変調部12の出力が4線−2線変換部16に入力され、さらに4線−2線変換部16の出力が復調部13に入力されるような第2の切換選択を行った場合、以下に述べるような作用が行われる。まず、網制御部15は、RS−232C11から送信されてくるオートダイヤルコマンド及び通信相手側のダイヤル番号を受け取ると、公衆電話網を介して、自己に接続された情報処理機器と通信相手先の情報処理機器とを回線接続させる。続いて行われるRS−232C11および変調部12の作用は、前記第1の説明と同様であり、変調部12から出力されるアナログ信号は、インタフェース切換部17を介して4線−2線変換部16へ送られる。4線−2線変換部16は、その送られてくるアナログ信号を2線式の回線を介し網制御部15に出力する。そして、網制御部15は、そのアナログ信号を2線式の加入者線に出力する。一方、網制御部15は、2線式の加入者線を介して送信されてくるアナログ信号を、上記2線式の回線へ送出する。4線−2線変換部16は、その2線式の回線から上記アナログ信号を取り込み、インタフェース切換部17を介して復調部13へ出力する。そして、復調部13及びRS−232Cインタフェース11により、前記第1の発明の復調部3及びRS−232Cインタフェース1と同様の動作が行われ、RS−232Cケーブルを介し復調されたディジタル信号が情報処理機器へシリアル伝送される。従って、この第2の発明のモデムは、従来のモデムと同様に、直接、公衆電話網と接続されたデータ通信も可能である。
【0029】
【実施例】以下、図3〜図5を参照して実施例を説明する。図3は、自動車・携帯電話網を利用してパソコン通信を行うシステムの構成を示す図であり、図4はそのシステムで用いられるモデム200の詳細な回路構成を示す図である。尚、同図においてパソコン21、RS−232Cケーブル25、及び携帯電話30は、前述した図7R>7に示す同一符号が付与されたものと同一である。
【0030】同図に示すモデム200は、従来のモデムと同様に加入者回線接続用の2線式モジュラプラグ201が先端に取り付けられた外部入出力インタフェースの他に、携帯電話30のマイク・イヤホンジャック31に接続可能なプラグが先端に取り付けられた4線式入出力コード210が接続され4線式対応の外部入出力インタフェースを備えている。このように、従来のモデムとは異なり、2線式入出力コード以外に、4線式入出力コード210も備えているために、図4に示すように、モデム200は、従来のモデム(図7参照)が有するRS−232Cインタフェース121、出力系122、4線−2線変換部123、NCU部124以外に、インタフェース切換部202及び信号レベル調整部203も備えている。また、上記インタフェース切換部202及び信号レベル調整部203が新たに付加されているため、制御部204の回路構成も従来のモデム22の制御部127とは若干異なっている。
【0031】インタフェース切換部220は、2線式外部入出力インタフェース(NCU部124の入出力)または4線式外部入出力インタフェース(信号レベル調整部203の入出力)のいずれか一方を有効する回路であり、その外部入出力インタフェースの切換制御は、制御部204が4線式入出力コード210が携帯電話30のマイク・イヤホンジャック31に接続されているか否かを自動的に検出して行う。このインタフェース切換部220は、アナログスイッチである2つの切換スイッチ221,222から成っており、4線式入出力コード210が携帯電話30のマイン・イヤホンジャック31に接続されているときは、切換スイッチ221,222は、制御部204により共に、端子A側に接続制御される。そして、このことにより、出力系122の出力(変調されたパソコン21の送信したアナログ信号)が信号レベル調整部230の出力用バッファ231に出力され、また信号レベル調整部230の入力バッファ236から出力される相手側パソコンから送信されてくる変調されたアナログ信号(アナログ受信信号)が入力系125の入力用バッファ125aに入力される。一方、4線式入出力コード210が携帯電話30のマイク・イヤホンジャック31a,31bに接続されていないときには、切換スイッチ211,212は、共に制御部204により端子B側に接続される。そして、このことにより出力系122の出力(上記変調されたパソコン21の送信したアナログ信号)が4線−2線変換部123に出力され、また4線−2線変換部123により取り込まれた加入者線を介して送信されてきた相手側パソコンからの変調されたアナログ信号が入力系125の入力用バッファ125aに入力される。
【0032】信号レベル調整部230は、出力用バッファ231、可変抵抗器VRO1 ,VRO2 、及び信号レベル切換スイッチ232等から成る出力系と、信号レベル切換スイッチ237、可変抵抗器VRI1 ,VRI2 、及び入力用バッファ236等から成る入力系とから成っている。
【0033】信号レベル切換スイッチ232及び信号レベル切換スイッチ237は、携帯電話30の機種によって、マイクジャック31a及びイヤホンジャック31bから入・出力される信号レベルが異なることに対応して設けられたものであり、上記信号レベルが相対的に低い機種に対しては、信号レベル切換スイッチ232及び信号レベル切換スイッチ237を、それぞれ端子LI1 ,LO1 側に切り換える。一方、上記信号レベルが相対的に高い機種に対しては、信号レベル切換スイッチ232及び信号レベル切換スイッチ237を、それぞれ端子LI2 ,LO2 側に切り換える。以上のようにして、レベル切換を行った入・出力信号のレベルは、上記各端子LI1 ,LI2 及びLI3 ,LI4 に接続される可変抵抗器VRI1 ,VRI2 ,VRO1,VRO2 の抵抗値を調整することによって、さらに微調整される。そして、これらの可変抵抗器VRI1 ,VRI2 及びVRO1 ,VRO2 は、それぞれ入力用バッファ236の入力端子、出力用バッファ237の出力端子に接続されている。入力バッファ235は、上記可変抵抗器VRI1 、もしくはVRI2 を介して入力される相手側パソコンの送信してきたアナログ信号を増幅して前記インタフェース切換部220の切換スイッチ221の端子Aに出力する。また、出力用バッファ231は、インタフェース切換部220の切換スイッチ222の端子Aから入力されるパソコン21の変調されたアナログ送信信号を増幅して上記可変抵抗器VRO1 もしくはVRO2 に出力する。
【0034】続いて、上記構成のモデム200を用いたパソコン21によるデータ通信の動作を説明する。まず、パソコン21が、携帯電話30を用いて、自動車・携帯電話網を介するデータ通信を行う方法を説明する。
【0035】この場合には、パソコン21のRS−232Cポートとモデム200のRS−232Cインタフェース部121とをRS−232ケーブル25により接続する。そして、モデム200の信号レベル調整部230と携帯電話30のマイク・イヤホンジャック31とを4線式入力コード210により接続する。
【0036】そして、以上のような接続を行った後、モデム200の電源部128をオンにすると、制御部204が、4線式入出力コード210が携帯電話30のマイクジャック・イヤホンジャック31に接続されていることを自動的に検出し、インタフェース切換部220の切換スイッチ221及び切換スイッチ222を共に端子A側に接続する。
【0037】続いて、携帯電話30を操作して、無線基地局に対して、発呼信号並びに通信相手側のパソコンが接続されている加入者線回線のダイヤル番号を、所定の制御チャネルの電波で無線により送出する。
【0038】そして、無線基地局及び交換・制御局により前述したような一連の動作が行われ、通信相手側のパソコンが公衆電話回線網に回線接続されると共に、交換局(自動交換局)が公衆電話網に接続される。そして携帯電話30が無線基地局から通話チャネルを受け取ると、パソコン間のデータ通信(パソコン通信)が可能になる。
【0039】このパソコン通信において、パソコン21から送信するデータは、モデム200内において、以下に示すような経路で携帯電話30に送信される。まず、RS−232Cインタフェース部121により受信されたパソコン21のディジタル送信信号(送信データ)は、出力系122により音声周波数帯のアナログ送信信号に変換された後、増幅されてインタフェース切換部220の切換スイッチ221に入力される。そして、上記アナログ送信信号(パソコン21の送信データ)は、切換スイッチ221を介して信号レベル調整部230の出力用バッファ231に入力されて増幅された後、可変抵抗器VRO1 (またはVRO2 )及び信号レベル切換スイッチ232を介して所定のレベルに調整される。そして、そのレベル調整がなされたアナログ送信信号は、4線式入出力コード210を介して携帯電話30のマイクジャック31aに入力される。
【0040】そして、上記アナログ送信信号は、前述したように、携帯電話30内で無線基地局から割り当てられた前記通話チャネルの無線周波数帯域の電波に変換され、アンテナ153を介して無線基地局に送出される。そして、前述したように、無線基地局、交換・制御局、及び公衆電話網を介して、パソコン21の送信したデータが相手側のパソコンに受信される。
【0041】一方、相手側パソコンが送信するデータは、以下に述べるような過程を経てパソコン21に受信される。相手側パソコンの送信するデータは、モデムにより音声周波数帯のアナログ信号に変換された後、公衆電話網を介し、交換・制御局に送信される。そして、上記アナログ信号は、所定の有線伝送路を介し交換・制御局からパソコン21が存在するゾーンを管理している無線基地局へ送出される。
【0042】次に、無線基地局は、携帯電話20に割り当てた前記通話チャネルの電波により、相手側パソコンの送信したデータを、携帯電話30に送出する。携帯電話30は、その電波をアンテナ153により受信して、前述したように、内部で音声周波数帯のアナログ信号に変換してイヤホンジャック31bから出力する。このイヤホンジャック31bから出力されるアナログ信号は、4線式入出力コード210を介して、モデム200の信号レベル調整部230の信号レベル切換スイッチ237に入力され、信号レベル切換スイッチ237及び可変抵抗器VRI1 (またはVRI2 )を介して、適切なレベルに調整される。そして、そのレベル調整がなされたアナログ信号は入力用バッファ236により増幅された後、切換スイッチ222を介して入力系125に入力され、元のディジタル送信データに復元される。そして、そのディジタル送信データは、RS−232Cインタフェース121及びRS−232Cケーブル25を介して、パソコン21に受信される。
【0043】一方、パソコン21が、直接、公衆電話網を介してデータ通信を行う場合には、4線式入出力コード210を無接続の状態にしたままで、2線式入出力コード26のプラグ201を電話回線(加入回線)のモジュラジャックに接続する。このような接続を行うことにより、公衆電話回線網を介するパソコン通信が可能となる。
【0044】尚、以上の説明は、一方のパソコンが携帯電話・自動車電話網、他方のパソコンが公衆電話網に接続される場合のパソコン通信の例であるが、双方のパソコンが図4に示すモデム200並びに携帯電話30を用意することにより、双方が携帯電話・自動車電話網のみを介してパソコン通信を行うことも可能である。また、パソコン同士のみならず、RS−232Cポートを有する通信機能を備えた電子手帳とパソコン(またはホストコンピュータ)、上記電子手帳同士、さらにはハンディターミナルとパソコン(ホストコンピュータ)等、各種情報処理機器間での携帯電話・自動車電話網を介するデータ通信も、モデム200並びに携帯電話30を用いることにより可能である。
【0045】また、上記データ通信は、モデムアダプタを使わないので、S/N比が良く、さらに、データのエラー発生率も低いので、信頼性が高い。次に、上記モデム200を利用したパソコン21によるデータ通信の他の応用例を図5に示す。
【0046】同図は、モデム200をPBX(構内交換機;Private Branch Exchage)500に接続されるディジタル電話機400にハンドセット/モデム切換スイッチ300(以下、単に切換スイッチ300と記述する)を介して接続して、パソコン21がデータ通信を行うシステムの構成例である。
【0047】ハンドセット/モデム切換スイッチ300は、モデム120に接続された4線式入出力コード210が接続されるモジュラジャック310、ディジタル電話機400のPBX500接続用のモジュラコネクタ410に接続されるモジュラジャック320、及びディジタル電話機400のハンドセット420のモジュラコネクタ423に接続されるモジュラジャック330を備えており、モデム200またはハンドセット420のいずれか一方を、ディジタル電話機400のモジュラコネクタ410に切換選択して接続するものである。そして、その切換選択は上記切換スイッチ300の内部に設けられた2つの内部スイッチ340,350により行われるようになっている。これらの切換スイッチ340,350は、外部操作により自由に設定できるようになっており、モデム200をディジタル電話機400のモジュラコネクタ410に接続する際には、上記内部スイッチ340,350を、共に端子A側に接続されるように設定する。一方、ディジタル電話機400のハンドセット420のモジュラコネクタ423をモジュラコネクタ410に接続する際には、上記内部スイッチ340,350を共に端子B側に接続されるように設定する。
【0048】ディジタル電話機400は、音声、データの送受信が可能な特殊回線600によりPBX500と接続されており、通話の送受を行うためのハンドセット420、通常はPBX500に接続される音声信号並びに制御信号の入出力用のモジュラコネクタ410、及び特に符号を記していない「0」〜「9」,「*」,「#」のダイヤルキーや各種機能キー、及びLCD(液晶表示装置)等を備えている。ハンドセット420は、受話用のスピーカ421と送話用のマイク(マイクロホン)422を内蔵しており、これらスピーカ421並びにマイク422は、モジュラコネクタ423を介して4線式入出力コード700により、上記切換スイッチ300のモジュラジャック330に接続される。また、モジュラコネクタ410は、4線式入出力コード800により切換スイッチ300のモジュラジャック320に接続される。
【0049】ユーザは、ディジタル電話機400により外線もしくは内線の通話を行う場合には、切換スイッチ300を操作して、内部スイッチ340,350を共に端子B側に設定する。このことにより、ハンドセット420を介して、外線通話もしくはPBX500に接続されている他の電話機との内線通話が可能になる。
【0050】一方、ユーザはパソコン21によりデータ通信を行う場合には、切換スイッチ300の内部スイッチ340,350を共に端子A側に設定する。このことにより、モデム200は、切換スイッチ300、ディジタル電話機400、及び特殊回線600を介してPBX500と接続され、さらにPBX500を介して公衆電話網と回線接続が可能となる。従って、パソコン21は、他のパソコンやホストコンピュータ、さらにはRS−232Cポートを有し通信機能を備えたハンディターミナルや電子手帳等の各種情報処理機器と、公衆電話網を介するデータ通信を行うことができる。
【0051】ところで、上記実施例ではディジタル電話機400を用いているが、各種ボタン電話システムのボタン電話機を用いても同様なデータ通信が可能である。この場合には、PBX500の代わりにボタン電話システムの主装置が用いられる。
【0052】このように、モデム200を用いることにより、特殊なアダプタを用いることなく、PBXや、ボタン電話システムに接続される各種電話機を利用した公衆電話網を介するデータ通信も可能となる。
【0053】尚、上記モデム200は、公衆電話網に接続するためにNCU部124を内蔵しているが、4線式外部入出力インタフェースのみを有する構成としてもよい。この場合には、図4に示すモデム200において、インタフェース切換部220、4線−2線変換部123、及びNCU部124を取り除き、出力系122の出力用バッファ122b及び入力系125の入力用バッファ125aを、それぞれ信号レベル調整部230の入力用バッファ236及び出力用バッファ231に接続する構成にすればよい。
【0054】
【発明の効果】この発明は、RS−232Cポートを有する情報処理機器と4線式の外部入出力インタフェースを有する携帯電話や自動車電話等の移動通信機間のデータ伝送をモデムのみを介して行うことができるので、モデムアダプタを持ち歩かなくても、情報処理機器を上記モデムを介して携帯電話や自動車電話等の移動通信機と接続することにより、電話回線接続用のモジュラージャックが無い所でも、自動車・携帯電話網等の移動通信網と公衆電話網、または上記移動通信網のみを介する情報処理機器間のデータ通信が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のブロック図(その1)である。
【図2】本発明のブロック図(その2)である。
【図3】本発明の一実施例のモデムを用いたパソコン通信システムの概略構成を示す全体図である。
【図4】上記一実施例のモデムの詳細な回路構成を示す図である。
【図5】上記一実施例のモデムの他の応用例を示す図である。
【図6】従来の携帯電話を用いたパソコン通信システムの概略構成を示す全体図である。
【図7】従来のモデムの詳細な回路構成を示す図である。
【符号の説明】
1,11 RS−232Cインタフェース
2,12 変調部
3,13 復調部
4,14 信号レベル調整部
15 網制御部
16 4線−2線切換部
17 インタフェース切換部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 RS−232Cインタフェースと、該RS−232Cインタフェースを介して入力されるディジタル信号を対応する音声周波数帯のアナログ送信信号に変換する変調部と、入力される音声周波数帯のアナログ受信信号を対応するディジタル信号に変換して、前記RS232Cインタフェースに出力する復調部と、前記変調部から出力されるアナログ送信信号をレベル調整して出力端子から外部出力すると共に、入力端子から外部入力されるアナログ受信信号をレベル調整して前記復調部に出力する信号レベル調整部と、を有することを特徴とするモデム。
【請求項2】 RS−232Cインタフェースと、該RS−232Cインタフェースから入力されるディジタル信号を対応する音声周波数帯のアナログ送信信号に変換する変調部と、入力される音声周波数帯のアナログ受信信号を対応するディジタル信号に変換して、前記RS−232Cインタフェースに出力する復調部と、入力されるアナログ送信信号をレベル調整して出力端子から出力すると共に、入力端子から外部入力されるアナログ受信信号をレベル調整して出力する信号レベル調整部と、2線式の加入者線を介して電話網との接続制御を行うと共に、前記2線式の加入者の線を介してアナログ送受信信号の送受を行う網制御部と、該網制御部を介して前記2線式の加入者線に前記変換部から出力されるアナログ送信信号を送出すると共に、前記網制御部を介して前記2線式の加入者線からアナログ受信信号を取り込み出力する4線−2線変換部と、入力されるアナログ送信信号をレベル調整して出力端子から出力すると共に、入力端子から外部入力されるアナログ受信信号をレベル調整して出力する信号レベル調整部と、前記変調部から出力されるアナログ信号を前記信号レベル調整部に出力させると共に、前記信号レベル調整部から出力されるアナログ受信信号を前記復調部に入力させる第1の選択と、前記変調部から出力されるアナログ送信信号を前記4線−2線変換部に出力させると共に、前記4線−2線変換部から出力されるアナログ受信信号を前記復調部に入力させる第2の選択との切換えを行うインタフェース切換部と、を有することを特徴とするモデム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開平5−110718
【公開日】平成5年(1993)4月30日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−271516
【出願日】平成3年(1991)10月18日
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)