モルタル下地材とその製造方法
【課題】 従来のメタルラスと比較して、施工性、作業性が良好であるとともに、塗装されたモルタルの強度を均一にすることが可能なモルタル下地材を提供する。また、従来のような規格寸法の単一体のモルタル下地材も、容易にロール形状に加工することができる長尺連続体のモルタル下地材も提供できる。
【解決手段】 それぞれの長手方向が、概ね平行になるように並べられた複数の長尺の縦ワイヤー3と、これらの複数の縦ワイヤー3に対してそれぞれの長手方向が、概ね直角になるように並べられ、縦ワイヤー3との交点が溶接された複数の横ワイヤー4とを備えている。
【解決手段】 それぞれの長手方向が、概ね平行になるように並べられた複数の長尺の縦ワイヤー3と、これらの複数の縦ワイヤー3に対してそれぞれの長手方向が、概ね直角になるように並べられ、縦ワイヤー3との交点が溶接された複数の横ワイヤー4とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モルタルの塗装工事に先立って施工されるモルタル下地材とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
モルタルの塗装工事に先立って建築物の壁面などの被施工面に施工されるモルタル下地材として、例えばメタルラスと呼ばれる菱形のモルタル下地材が知られている。図10は、従来のモルタル下地材であるメタルラス31の構成を示す平面図であり、図11は、図10の部分斜視図である。
【0003】
図10と図11とに示すように、従来のメタルラス31は、同じ方向(X方向)を向く直線状の多数の切れ目を千鳥状に入れた鋼板などの板材を、切れ目と直交する方向(Y方向)に引き伸ばして空隙を形成した網状の構造物である。このメタルラス31を壁面などの被施工面に施工する際は、被施工面の大きさ、形状に合わせて必要な枚数の規格品、あるいは必要な大きさに切ったものを力骨などで補強して取り纏め、施工面に取り付けて、その上からモルタルを必要な厚みだけ塗装していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の従来のメタルラス31は、市場に流通している規格寸法の単一体の大きさが、せいぜい長辺2m程度であり、長尺で連続体のモルタル下地材を実現することができなかった。
【0005】
また、従来のメタルラス31は、図11に示すような立体的な構造を有するためにカッティングやコーナー部分で曲げることが容易でないなど、施工性、作業性が悪かった。また、このように、従来のメタルラス31は曲げ難くいので、モルタル下地材をロール形状にするなどということはできなかった。
【0006】
また、切れ目を引き伸ばして空隙を形成したものであるので、切れ易く強度が十分でない場合があった。
【0007】
本発明は上記不具合に鑑みてなされたものであり、従来のような規格寸法の単一体だけでなく、長尺で連続体の網状のモルタル下地材も製作することができ、しかも、ワイヤーを巻き取るのと同等の容易さでこのモルタル下地材をロール形状に加工することもできるモルタル下地材とその製造方法を提供することを課題としている。
【0008】
また、従来のメタルラスと比較して、カッティングが容易で、コーナー部分で曲げることができるなど、施工性、作業性が良好であり、かつ切れ難く強度が十分なモルタル下地材とその製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明に係るモルタル下地材は、それぞれの長手方向が、概ね平行になるように並べられた複数の長尺の縦ワイヤーと、これらの複数の縦ワイヤーに対してそれぞれの長手方向が、概ね直角になるように並べられ、縦ワイヤーとの交点が溶接された複数の横ワイヤーとを備えたことを特徴とするモルタル下地材である。
【0010】
本発明によれば、概ね平行になるように並べられた複数の長尺の縦ワイヤーをベースとしてこれに複数の横ワイヤーを溶接してモルタル下地材を形成するので、従来のような規格寸法の単一体だけでなく、長尺で連続体の網状のモルタル下地材も製作することができる。
【0011】
しかも、複数の横ワイヤーは、それぞれが平行な状態で縦ワイヤーに溶接されるので、横ワイヤーが長尺の縦ワイヤーの曲げに対して影響することが少なく、縦ワイヤーを巻き取るのと同等の容易さで長尺のモルタル下地材をロール形状に加工することができる。
【0012】
また、このようにワイヤーを網状に形成したものであるので、建築物の壁面などの被施工面にモルタル下地材を施工する際、従来のメタルラスと比較して、カッティングが容易であり、コーナー部分で曲げることができるなど、施工性、作業性が良好である。
【0013】
また、切れ目がないので、切れ難く強度が高い。
【0014】
ここで、このモルタル下地材は、縦ワイヤーに対してそれぞれの長手方向が、概ね平行になるように上記縦ワイヤーの複数本おきに並べられ、上記横ワイヤーとの交点が溶接された縦ワイヤーより太い複数の力骨縦ワイヤーをさらに備えたものであることが好ましい。
【0015】
このようにすれば、縦ワイヤーより太い複数の力骨縦ワイヤーを縦ワイヤーの複数本おきに縦ワイヤーに平行に並べて横ワイヤーと溶接するので、縦ワイヤーの方向の剛性、引っ張り強度の優れたモルタル下地材とすることができる。
【0016】
また、このモルタル下地材は、上記横ワイヤーの複数本おきに、横ワイヤーに対してそれぞれの長手方向が、概ね平行になるように並べられ、上記縦ワイヤーとの交点が溶接された横ワイヤーより太い複数の力骨横ワイヤーをさらに備えたものであることが好ましい。
【0017】
このようにすれば、横ワイヤーより太い複数の力骨横ワイヤーを横ワイヤーの複数本おきに横ワイヤーに平行に並べて縦ワイヤーと溶接するので、横ワイヤーの方向の剛性、引っ張り強度の優れたモルタル下地材とすることができる。
【0018】
また、上記複数の縦ワイヤーは、上記力骨横ワイヤーとの交点の位置において概ね波状に湾曲して形成された湾曲部を有し、上記力骨横ワイヤーは、上記湾曲部の底部に溶接されていることが好ましい。
【0019】
このようにすれば、縦ワイヤーの湾曲部の底部に力骨横ワイヤーが溶接されているので、力骨横ワイヤーを建築物の壁面などの被施工面に固定すると、縦ワイヤーを被施工面から一定の距離に浮かせた状態にしてモルタルの中心付近に縦ワイヤーの大部分を配置することができる結果、モルタルの保持力がより優れたモルタル下地材とすることができる。
【0020】
さらに、このモルタル下地材は、上記複数の縦ワイヤーの湾曲部の頂部に当接する平板状の断熱板を備え、上記力骨横ワイヤーは、縦ワイヤーの湾曲部の頂部を断熱板の面に固定するように、楔状のステープル部材で断熱板の面に取り付けられていることが好ましい。
【0021】
このようにすれば、壁面などの被施工面に対して一度に断熱施工とモルタル下地施工の両方を行うことができるモルタル下地材を実現することができる。
【0022】
また、このモルタル下地材において、上記ワイヤーおよびワイヤー同士の溶接箇所は、耐腐食性のメッキ加工が施されていることが好ましい。
【0023】
このようにすれば、ワイヤーおよびワイヤー同士の溶接箇所が耐腐食性のメッキ加工を施されているので、モルタルに染み込む雨水などに対してより耐腐食性を有する長寿命のモルタル下地材を実現することができる(従来のメタルラスでは、メッキした板材を用いていても、切れ目の部分は、地肌が露出して耐腐食性が低い)。
【0024】
また、上記課題を解決するための本発明に係るモルタル下地材の製造方法は、それぞれの長手方向が、概ね平行になるように複数の縦ワイヤーを並べるとともに、これらの複数の縦ワイヤーに対してそれぞれの長手方向が、概ね直角になるように複数の横ワイヤーを並べ、上記複数の縦ワイヤーと複数の横ワイヤーの交点を溶接することを特徴とするモルタル下地材の製造方法である。
【0025】
本発明によれば、概ね平行になるように並べられた複数の長尺の縦ワイヤーをベースとしてこれに複数の横ワイヤーを溶接してモルタル下地材を形成するので、長尺で連続体の網状のモルタル下地材を実現することができる。
【0026】
しかも、複数の横ワイヤーは、それぞれが平行な状態で縦ワイヤーに溶接されるので、横ワイヤーが長尺の縦ワイヤーの曲げに対して影響することが少なく、縦ワイヤーを巻き取るのと同等の容易さで長尺のモルタル下地材をロール形状に加工することができる。
【0027】
また、このようにワイヤーを網状に形成したものであるので、建築物の壁面などの被施工面にモルタル下地材を施工する際、従来のメタルラスと比較して、カッティングが容易であり、コーナー部分で曲げることができるなど、施工性、作業性が良好である。
【0028】
ここで、このモルタル下地材の製造方法は、上記縦ワイヤーの複数本おきに、縦ワイヤーに対してそれぞれの長手方向が、概ね平行になるように縦ワイヤーより太い複数の力骨縦ワイヤーをさらに並べ、この力骨縦ワイヤーと上記横ワイヤーとの交点を溶接するものであることが好ましい。
【0029】
このようにすれば、縦ワイヤーより太い複数の力骨縦ワイヤーを縦ワイヤーの複数本おきに縦ワイヤーに平行に並べて横ワイヤーと溶接するので、縦ワイヤーの方向の剛性、引っ張り強度の優れたモルタル下地材とすることができる。
【0030】
さらに、このモルタル下地材の製造方法は、上記横ワイヤーの複数本おきに、横ワイヤーに対してそれぞれの長手方向が、概ね平行になるように横ワイヤーより太い複数の力骨横ワイヤーをさらに並べ、上記縦ワイヤーとの交点を溶接するものであることが好ましい。
【0031】
このようにすれば、横ワイヤーより太い複数の力骨横ワイヤーを横ワイヤーの複数本おきに横ワイヤーに平行に並べて縦ワイヤーと溶接するので、横ワイヤーの方向の剛性、引っ張り強度の優れたモルタル下地材とすることができる。
【0032】
また、このモルタル下地材の製造方法は、上記ワイヤーおよびワイヤー同士の溶接箇所に対して、耐腐食性のメッキ加工を施すことが好ましい。
【0033】
このようにすれば、ワイヤーおよびワイヤー同士の溶接箇所に対して耐腐食性のメッキ加工を施すので、モルタルに染み込む雨水などに対してより耐腐食性を有する長寿命のモルタル下地材を実現することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明は上記不具合に鑑みてなされたものであり、従来のような規格寸法の単一体も、長尺で連続体の網状のモルタル下地材も製作することができ、しかも、ワイヤーを巻き取るのと同等の容易さでこのモルタル下地材をロール形状に加工することもできるモルタル下地材とその製造方法を提供することができる。
【0035】
また、従来のメタルラスと比較して、カッティングが容易で、コーナー部分で曲げることができるなど、施工性、作業性が良好であり、かつ切れ難く強度が十分なモルタル下地材とその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の一形態について詳述する。図1は、本発明の第1の実施の形態に係るモルタル下地材1の概略の構成を示す全体図であり、図2は、モルタル下地材1の概略の構成を示す部分平面図である。また、図3は、図2の正面図であり、図4は、図2の側面図である。
【0037】
図1〜図4を参照して、図示の本発明の第1の実施の形態に係るモルタル下地材1は、モルタルの塗装工事に先立って被施工面2(図2、図3)に施工されるものであり、複数の縦ワイヤー3と、複数の横ワイヤー4と、力骨縦ワイヤー5と、力骨横ワイヤー6とを備え、それぞれワイヤー3、4、5、6同士の交点は溶接されている。また、それぞれのワイヤー3、4、5、6およびワイヤー3、4、5、6同士の溶接箇所は、耐腐食性のメッキ加工が施され、モルタル下地材1の全体は、ステープル部材7(図2、図3)で、被施工面2に取り付けられている。
【0038】
なお、図1〜図4は、モルタルの塗装工事の前の状態を示しており、このモルタル下地材1は、図5に示すように、巻き取り機15にロール形状に巻き取られた状態のものを必要な長さだけ展開して端部をカッターなどでカッティングしたものである。
【0039】
そして、このモルタル下地材1の上から図略のモルタルを必要な厚みだけ塗装してモルタル下地材1を覆うことにより被施工面2におけるモルタル構造が完成するようになっている。
【0040】
上記被施工面2は、本実施形態では、建築物の壁面を想定している。
【0041】
上記複数の縦ワイヤー3は、外径が0.8mmの長尺の鉄製ワイヤー部材であり、モルタル下地材1の長尺方向に、それぞれの長手方向が、概ね平行になるように並べられている。
【0042】
また、この縦ワイヤー3は、モルタル下地材1の面が被施工面2から一定の距離だけ間隔をとるようにするために、それぞれ力骨横ワイヤー6との交点の位置において概ね波状に湾曲して形成された波高さ5〜7mmの湾曲部3a(図3、図4)を有している。
【0043】
上記力骨縦ワイヤー5は、縦ワイヤー3より太い外径1.6mmの長尺の鉄製ワイヤー部材であり、縦ワイヤー3に対してそれぞれの長手方向が、概ね平行になるように縦ワイヤー3の複数本おきに並べられる。この力骨縦ワイヤー5も、本実施形態では、力骨横ワイヤー6との交点の位置において概ね波状に湾曲して形成された波高さ7mmの湾曲部5a(図3、図4)を有している。
【0044】
上記複数の横ワイヤー4は、外径が0.8mmの鉄製ワイヤー部材であり、複数の縦ワイヤー3と複数の力骨縦ワイヤー5とに対してそれぞれの長手方向が、概ね直角になるように並べられ、縦ワイヤー3との交点と力骨縦ワイヤー5との交点とが溶接されている。
【0045】
上記力骨横ワイヤー6は、横ワイヤー4より太い外径1.6mmの長尺の鉄製ワイヤー部材であり、横ワイヤー4の複数本おきに、横ワイヤー4に対してそれぞれの長手方向が、概ね平行になるように並べられており、この力骨横ワイヤー6は、縦ワイヤー3の湾曲部3aの底部において、縦ワイヤー3との交点が溶接されている。また、力骨縦ワイヤー5の湾曲部5aの底部において、力骨縦ワイヤー5との交点が溶接されている。
【0046】
上記ステープル部材7は、門型の楔状部材であり、このステープル部材7を力骨横ワイヤー6ともどもエアータッカー等を用いて被施工面2に打ち付けることにより、モルタル下地材1の全体を被施工面2に取り付けるようになっている。
【0047】
ここで、図5、図6を参照して、本発明の第1の実施の形態に係るモルタル下地材1の製造方法について説明する。図5は、本発明の第1の実施の形態に係るモルタル下地材1の製造装置8の概略の構成を示す平面図であり、図6は、モルタル下地材1の製造装置8の概略の構成を示す側面図である。
【0048】
これらの図に示すように、本発明の第1の実施の形態に係るモルタル下地材1の製造方法は、縦ワイヤー位置決め装置9により、それぞれの長手方向が概ね平行になるように複数の縦ワイヤー3を並べる工程と、同じ縦ワイヤー位置決め装置9により縦ワイヤー3の複数本おきに、縦ワイヤー3に対してそれぞれの長手方向が、概ね平行になるように複数の力骨縦ワイヤー5をさらに並べる工程と、縦ワイヤー送り装置11により、縦ワイヤー3および力骨縦ワイヤー5を溶接機12に送る工程とを含んでいる。
【0049】
また、この製造方法は、溶接機12により、複数の縦ワイヤー3に対してそれぞれの長手方向が概ね直角になるように、コイル4bから繰り出される複数の横ワイヤー4を並べ、縦ワイヤー3と横ワイヤー4との交点、および力骨縦ワイヤー5と横ワイヤー4との交点を溶接する工程を含んでいる。
【0050】
さらに、この製造方法は、溶接機12のワイヤー供給装置12aを切り替えることにより、横ワイヤー4の複数本おきに、横ワイヤー4に対してそれぞれの長手方向が、概ね平行になるように、コイル6bから繰り出される横ワイヤー4より太い複数の力骨横ワイヤー6を並べる工程と、縦ワイヤー3と力骨横ワイヤー6との交点、および力骨縦ワイヤー5と力骨横ワイヤー6との交点を溶接する工程を含んでいる。
【0051】
また、この製造方法は、ワイヤー送り装置13により溶接されたワイヤーを波付け機14に送る工程と、波付け機14により縦ワイヤー3および力骨縦ワイヤー5にそれぞれ湾曲部3a、5aをプレス形成する工程と、巻き取り機15でロール形状に巻き取る工程と、切断機16でモルタル下地材1の端部を切断する工程とを含んでいる。
【0052】
なお、溶接が完了したモルタル下地材1は、必要に応じて、図略のメッキ工程により、全体すなわち、それぞれのワイヤー3、4、5、6およびワイヤー3、4、5、6同士の溶接箇所が、酸洗いされ、耐腐食性のメッキで加工される。
【0053】
以上説明したように、第1の実施形態に係るモルタル下地材1と、製造装置8を用いたモルタル下地材1の製造方法によれば、概ね平行になるように並べられた複数の長尺の縦ワイヤー3をベースとしてこれに複数の横ワイヤー4を溶接してモルタル下地材1を形成するので、従来のような規格寸法の単一体だけでなく、長尺で連続体の網状のモルタル下地材1を実現することができる。
【0054】
しかも、複数の横ワイヤー4は、それぞれが平行な状態で縦ワイヤー3に溶接されるので、横ワイヤー4が長尺の縦ワイヤー3の曲げに対して影響することが少なく、縦ワイヤー3を巻き取るのと同等の容易さで長尺のモルタル下地材1をロール形状に加工することができる。
【0055】
また、このようにワイヤー3、4、5、6を網状に形成したものであるので、建築物の壁面などの被施工面2にモルタル下地材1を施工する際、従来のメタルラスと比較して、カッティングが容易であり、コーナー部分で曲げることができるなど、施工性、作業性が良好である。
【0056】
また、切れ目がないので、切れ難く強度が高い。
【0057】
さらに、縦ワイヤー3より太い複数の力骨縦ワイヤー5を縦ワイヤー3の複数本おきに縦ワイヤー3に平行に並べて横ワイヤー4と溶接するので、縦ワイヤー3の方向の剛性、引っ張り強度の優れたモルタル下地材1とすることができる。
【0058】
また、同様に、横ワイヤー4より太い複数の力骨横ワイヤー6を横ワイヤー4の複数本おきに横ワイヤー4に平行に並べて縦ワイヤー3と溶接するので、横ワイヤー4の方向の剛性、引っ張り強度の優れたモルタル下地材1とすることができる。
【0059】
さらに、縦ワイヤー3の湾曲部3aの底部に力骨横ワイヤー6が溶接されているので、力骨横ワイヤー6を建築物の壁面などの被施工面2に固定すると、縦ワイヤー3を被施工面2から一定の距離に浮かせた状態にしてモルタルの中心付近に縦ワイヤー3の大部分を配置することができる結果、モルタルの保持力がより優れたモルタル下地材1とすることができる。
【0060】
そして、ワイヤー3、4、5、6およびワイヤー3、4、5、6同士の溶接箇所が耐腐食性のメッキ加工を施されているので、モルタルに染み込む雨水などに対してより耐腐食性を有する長寿命のモルタル下地材1を実現することができる(従来のメタルラスでは、メッキした板材を用いても、切れ目を入れて引き伸ばした多くの部分は、地肌が露出して耐腐食性がない)。
【0061】
次に、図7〜図9を参照して、本発明の第2の実施の形態に係るモルタル下地材21について説明する。図7は、本発明の第2の実施の形態に係るモルタル下地材21の概略の構成を示す部分平面図であり、図8は、図7の正面図である。図9は、図7の側面図である。なお、第1の実施形態に係るモルタル下地材1と同様の構成については同じ符号を付し、説明の重複を避けるものとする。また、本発明の第1の実施の形態に係るモルタル下地材1の概略の構成を示す全体平面図は図1と同様である。
【0062】
図7〜図9に示すように、本発明の第2の実施の形態に係るモルタル下地材21は、複数の縦ワイヤー3の湾曲部3aの頂部に当接するように配置された平板状の断熱板22を備えている。
【0063】
この断熱板22は、発泡スチロールなどからなる発泡性合成樹脂材の平板部材であり、モルタル下地材1の力骨横ワイヤー6が、縦ワイヤー3の湾曲部3aの頂部を断熱板22の面に固定するように、本発明の第1の実施の形態に係るモルタル下地材1と同様の楔状のステープル部材7で断熱板22の面に取り付けられている。
【0064】
このようにすれば、壁面などの被施工面2に対して一度に断熱施工とモルタル下地施工の両方を行うことができるモルタル下地材21を実現することができる。
【0065】
上述した実施の形態は本発明の好ましい具体例を例示したものに過ぎず、本発明は上述した実施の形態に限定されない。
【0066】
例えば、モルタル下地材1、21の被施工面2は、建築物の壁面に限定されない。室内の壁面や天井など、モルタルの塗装工事が適用されるその他の被施工面にも適用可能である。
【0067】
縦ワイヤー3と横ワイヤー4は、必ずしも外径が0.8mmの長尺の鉄製ワイヤー部材である必要はなく、また、力骨縦ワイヤー5と力骨横ワイヤー6も、外径1.6mmの長尺の鉄製ワイヤー部材である必要はない。これらワイヤーの材質、寸法は、力骨縦ワイヤー5と力骨横ワイヤー6とがそれぞれ縦ワイヤー3と横ワイヤー4よりも太い外径を有しているならば、種々の設計変更が可能である。
【0068】
また、同様に、波状に湾曲して形成された湾曲部3a、5aの波高さも必ずしも5〜7mmに限定されない。種々の設計変更が可能である。
【0069】
ステープル部材7は、モルタル下地材1においてもモルタル下地材21においても、門型だけに限定されず、V形、U形など、力骨横ワイヤー6を被施工面2に取り付けることができるものであれば、種々の設計変更が可能である。
【0070】
また、モルタル下地材1、21の製造方法において、縦ワイヤー位置決め装置9、縦ワイヤー送り装置11、溶接機12、ワイヤー送り装置13、波付け機14、巻き取り機15、切断機16などは、必ずしも図示のように個別である必要はなく、一つの架台に組み付けてもよいなど、種々の設計変更が可能である。
【0071】
また、モルタル下地材1は、ロールの状態でメッキ加工されてもよいし、平型の単一体でメッキ加工されるように製造方法が構成されてもよい。
【0072】
さらに、モルタル下地材21において、断熱板22は、発泡スチロールの平板部材に限定されない。被施工面2に対して断熱施工を行うのに用いられるものであれば、断熱板22の材質、形状、寸法などは、種々の設計変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るモルタル下地材の概略の構成を示す全体図である。
【図2】モルタル下地材の概略の構成を示す部分平面図である。
【図3】図2の正面図である。
【図4】図2の側面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係るモルタル下地材の製造装置の概略の構成を示す平面図である。
【図6】モルタル下地材の製造装置の概略の構成を示す側面図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係るモルタル下地材の概略の構成を示す部分平面図である。
【図8】図7の正面図である。
【図9】図7の側面図である。
【図10】従来のモルタル下地材であるメタルラスの構成を示す平面図である。
【図11】図10の部分斜視図である。
【符号の説明】
【0074】
1、21 モルタル下地材
3 縦ワイヤー
3a 縦ワイヤーの湾曲部
4 横ワイヤー
5 力骨縦ワイヤー
5a 力骨縦ワイヤーの湾曲部
6 力骨横ワイヤー
7 ステープル部材
22 断熱板
【技術分野】
【0001】
本発明は、モルタルの塗装工事に先立って施工されるモルタル下地材とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
モルタルの塗装工事に先立って建築物の壁面などの被施工面に施工されるモルタル下地材として、例えばメタルラスと呼ばれる菱形のモルタル下地材が知られている。図10は、従来のモルタル下地材であるメタルラス31の構成を示す平面図であり、図11は、図10の部分斜視図である。
【0003】
図10と図11とに示すように、従来のメタルラス31は、同じ方向(X方向)を向く直線状の多数の切れ目を千鳥状に入れた鋼板などの板材を、切れ目と直交する方向(Y方向)に引き伸ばして空隙を形成した網状の構造物である。このメタルラス31を壁面などの被施工面に施工する際は、被施工面の大きさ、形状に合わせて必要な枚数の規格品、あるいは必要な大きさに切ったものを力骨などで補強して取り纏め、施工面に取り付けて、その上からモルタルを必要な厚みだけ塗装していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の従来のメタルラス31は、市場に流通している規格寸法の単一体の大きさが、せいぜい長辺2m程度であり、長尺で連続体のモルタル下地材を実現することができなかった。
【0005】
また、従来のメタルラス31は、図11に示すような立体的な構造を有するためにカッティングやコーナー部分で曲げることが容易でないなど、施工性、作業性が悪かった。また、このように、従来のメタルラス31は曲げ難くいので、モルタル下地材をロール形状にするなどということはできなかった。
【0006】
また、切れ目を引き伸ばして空隙を形成したものであるので、切れ易く強度が十分でない場合があった。
【0007】
本発明は上記不具合に鑑みてなされたものであり、従来のような規格寸法の単一体だけでなく、長尺で連続体の網状のモルタル下地材も製作することができ、しかも、ワイヤーを巻き取るのと同等の容易さでこのモルタル下地材をロール形状に加工することもできるモルタル下地材とその製造方法を提供することを課題としている。
【0008】
また、従来のメタルラスと比較して、カッティングが容易で、コーナー部分で曲げることができるなど、施工性、作業性が良好であり、かつ切れ難く強度が十分なモルタル下地材とその製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明に係るモルタル下地材は、それぞれの長手方向が、概ね平行になるように並べられた複数の長尺の縦ワイヤーと、これらの複数の縦ワイヤーに対してそれぞれの長手方向が、概ね直角になるように並べられ、縦ワイヤーとの交点が溶接された複数の横ワイヤーとを備えたことを特徴とするモルタル下地材である。
【0010】
本発明によれば、概ね平行になるように並べられた複数の長尺の縦ワイヤーをベースとしてこれに複数の横ワイヤーを溶接してモルタル下地材を形成するので、従来のような規格寸法の単一体だけでなく、長尺で連続体の網状のモルタル下地材も製作することができる。
【0011】
しかも、複数の横ワイヤーは、それぞれが平行な状態で縦ワイヤーに溶接されるので、横ワイヤーが長尺の縦ワイヤーの曲げに対して影響することが少なく、縦ワイヤーを巻き取るのと同等の容易さで長尺のモルタル下地材をロール形状に加工することができる。
【0012】
また、このようにワイヤーを網状に形成したものであるので、建築物の壁面などの被施工面にモルタル下地材を施工する際、従来のメタルラスと比較して、カッティングが容易であり、コーナー部分で曲げることができるなど、施工性、作業性が良好である。
【0013】
また、切れ目がないので、切れ難く強度が高い。
【0014】
ここで、このモルタル下地材は、縦ワイヤーに対してそれぞれの長手方向が、概ね平行になるように上記縦ワイヤーの複数本おきに並べられ、上記横ワイヤーとの交点が溶接された縦ワイヤーより太い複数の力骨縦ワイヤーをさらに備えたものであることが好ましい。
【0015】
このようにすれば、縦ワイヤーより太い複数の力骨縦ワイヤーを縦ワイヤーの複数本おきに縦ワイヤーに平行に並べて横ワイヤーと溶接するので、縦ワイヤーの方向の剛性、引っ張り強度の優れたモルタル下地材とすることができる。
【0016】
また、このモルタル下地材は、上記横ワイヤーの複数本おきに、横ワイヤーに対してそれぞれの長手方向が、概ね平行になるように並べられ、上記縦ワイヤーとの交点が溶接された横ワイヤーより太い複数の力骨横ワイヤーをさらに備えたものであることが好ましい。
【0017】
このようにすれば、横ワイヤーより太い複数の力骨横ワイヤーを横ワイヤーの複数本おきに横ワイヤーに平行に並べて縦ワイヤーと溶接するので、横ワイヤーの方向の剛性、引っ張り強度の優れたモルタル下地材とすることができる。
【0018】
また、上記複数の縦ワイヤーは、上記力骨横ワイヤーとの交点の位置において概ね波状に湾曲して形成された湾曲部を有し、上記力骨横ワイヤーは、上記湾曲部の底部に溶接されていることが好ましい。
【0019】
このようにすれば、縦ワイヤーの湾曲部の底部に力骨横ワイヤーが溶接されているので、力骨横ワイヤーを建築物の壁面などの被施工面に固定すると、縦ワイヤーを被施工面から一定の距離に浮かせた状態にしてモルタルの中心付近に縦ワイヤーの大部分を配置することができる結果、モルタルの保持力がより優れたモルタル下地材とすることができる。
【0020】
さらに、このモルタル下地材は、上記複数の縦ワイヤーの湾曲部の頂部に当接する平板状の断熱板を備え、上記力骨横ワイヤーは、縦ワイヤーの湾曲部の頂部を断熱板の面に固定するように、楔状のステープル部材で断熱板の面に取り付けられていることが好ましい。
【0021】
このようにすれば、壁面などの被施工面に対して一度に断熱施工とモルタル下地施工の両方を行うことができるモルタル下地材を実現することができる。
【0022】
また、このモルタル下地材において、上記ワイヤーおよびワイヤー同士の溶接箇所は、耐腐食性のメッキ加工が施されていることが好ましい。
【0023】
このようにすれば、ワイヤーおよびワイヤー同士の溶接箇所が耐腐食性のメッキ加工を施されているので、モルタルに染み込む雨水などに対してより耐腐食性を有する長寿命のモルタル下地材を実現することができる(従来のメタルラスでは、メッキした板材を用いていても、切れ目の部分は、地肌が露出して耐腐食性が低い)。
【0024】
また、上記課題を解決するための本発明に係るモルタル下地材の製造方法は、それぞれの長手方向が、概ね平行になるように複数の縦ワイヤーを並べるとともに、これらの複数の縦ワイヤーに対してそれぞれの長手方向が、概ね直角になるように複数の横ワイヤーを並べ、上記複数の縦ワイヤーと複数の横ワイヤーの交点を溶接することを特徴とするモルタル下地材の製造方法である。
【0025】
本発明によれば、概ね平行になるように並べられた複数の長尺の縦ワイヤーをベースとしてこれに複数の横ワイヤーを溶接してモルタル下地材を形成するので、長尺で連続体の網状のモルタル下地材を実現することができる。
【0026】
しかも、複数の横ワイヤーは、それぞれが平行な状態で縦ワイヤーに溶接されるので、横ワイヤーが長尺の縦ワイヤーの曲げに対して影響することが少なく、縦ワイヤーを巻き取るのと同等の容易さで長尺のモルタル下地材をロール形状に加工することができる。
【0027】
また、このようにワイヤーを網状に形成したものであるので、建築物の壁面などの被施工面にモルタル下地材を施工する際、従来のメタルラスと比較して、カッティングが容易であり、コーナー部分で曲げることができるなど、施工性、作業性が良好である。
【0028】
ここで、このモルタル下地材の製造方法は、上記縦ワイヤーの複数本おきに、縦ワイヤーに対してそれぞれの長手方向が、概ね平行になるように縦ワイヤーより太い複数の力骨縦ワイヤーをさらに並べ、この力骨縦ワイヤーと上記横ワイヤーとの交点を溶接するものであることが好ましい。
【0029】
このようにすれば、縦ワイヤーより太い複数の力骨縦ワイヤーを縦ワイヤーの複数本おきに縦ワイヤーに平行に並べて横ワイヤーと溶接するので、縦ワイヤーの方向の剛性、引っ張り強度の優れたモルタル下地材とすることができる。
【0030】
さらに、このモルタル下地材の製造方法は、上記横ワイヤーの複数本おきに、横ワイヤーに対してそれぞれの長手方向が、概ね平行になるように横ワイヤーより太い複数の力骨横ワイヤーをさらに並べ、上記縦ワイヤーとの交点を溶接するものであることが好ましい。
【0031】
このようにすれば、横ワイヤーより太い複数の力骨横ワイヤーを横ワイヤーの複数本おきに横ワイヤーに平行に並べて縦ワイヤーと溶接するので、横ワイヤーの方向の剛性、引っ張り強度の優れたモルタル下地材とすることができる。
【0032】
また、このモルタル下地材の製造方法は、上記ワイヤーおよびワイヤー同士の溶接箇所に対して、耐腐食性のメッキ加工を施すことが好ましい。
【0033】
このようにすれば、ワイヤーおよびワイヤー同士の溶接箇所に対して耐腐食性のメッキ加工を施すので、モルタルに染み込む雨水などに対してより耐腐食性を有する長寿命のモルタル下地材を実現することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明は上記不具合に鑑みてなされたものであり、従来のような規格寸法の単一体も、長尺で連続体の網状のモルタル下地材も製作することができ、しかも、ワイヤーを巻き取るのと同等の容易さでこのモルタル下地材をロール形状に加工することもできるモルタル下地材とその製造方法を提供することができる。
【0035】
また、従来のメタルラスと比較して、カッティングが容易で、コーナー部分で曲げることができるなど、施工性、作業性が良好であり、かつ切れ難く強度が十分なモルタル下地材とその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の一形態について詳述する。図1は、本発明の第1の実施の形態に係るモルタル下地材1の概略の構成を示す全体図であり、図2は、モルタル下地材1の概略の構成を示す部分平面図である。また、図3は、図2の正面図であり、図4は、図2の側面図である。
【0037】
図1〜図4を参照して、図示の本発明の第1の実施の形態に係るモルタル下地材1は、モルタルの塗装工事に先立って被施工面2(図2、図3)に施工されるものであり、複数の縦ワイヤー3と、複数の横ワイヤー4と、力骨縦ワイヤー5と、力骨横ワイヤー6とを備え、それぞれワイヤー3、4、5、6同士の交点は溶接されている。また、それぞれのワイヤー3、4、5、6およびワイヤー3、4、5、6同士の溶接箇所は、耐腐食性のメッキ加工が施され、モルタル下地材1の全体は、ステープル部材7(図2、図3)で、被施工面2に取り付けられている。
【0038】
なお、図1〜図4は、モルタルの塗装工事の前の状態を示しており、このモルタル下地材1は、図5に示すように、巻き取り機15にロール形状に巻き取られた状態のものを必要な長さだけ展開して端部をカッターなどでカッティングしたものである。
【0039】
そして、このモルタル下地材1の上から図略のモルタルを必要な厚みだけ塗装してモルタル下地材1を覆うことにより被施工面2におけるモルタル構造が完成するようになっている。
【0040】
上記被施工面2は、本実施形態では、建築物の壁面を想定している。
【0041】
上記複数の縦ワイヤー3は、外径が0.8mmの長尺の鉄製ワイヤー部材であり、モルタル下地材1の長尺方向に、それぞれの長手方向が、概ね平行になるように並べられている。
【0042】
また、この縦ワイヤー3は、モルタル下地材1の面が被施工面2から一定の距離だけ間隔をとるようにするために、それぞれ力骨横ワイヤー6との交点の位置において概ね波状に湾曲して形成された波高さ5〜7mmの湾曲部3a(図3、図4)を有している。
【0043】
上記力骨縦ワイヤー5は、縦ワイヤー3より太い外径1.6mmの長尺の鉄製ワイヤー部材であり、縦ワイヤー3に対してそれぞれの長手方向が、概ね平行になるように縦ワイヤー3の複数本おきに並べられる。この力骨縦ワイヤー5も、本実施形態では、力骨横ワイヤー6との交点の位置において概ね波状に湾曲して形成された波高さ7mmの湾曲部5a(図3、図4)を有している。
【0044】
上記複数の横ワイヤー4は、外径が0.8mmの鉄製ワイヤー部材であり、複数の縦ワイヤー3と複数の力骨縦ワイヤー5とに対してそれぞれの長手方向が、概ね直角になるように並べられ、縦ワイヤー3との交点と力骨縦ワイヤー5との交点とが溶接されている。
【0045】
上記力骨横ワイヤー6は、横ワイヤー4より太い外径1.6mmの長尺の鉄製ワイヤー部材であり、横ワイヤー4の複数本おきに、横ワイヤー4に対してそれぞれの長手方向が、概ね平行になるように並べられており、この力骨横ワイヤー6は、縦ワイヤー3の湾曲部3aの底部において、縦ワイヤー3との交点が溶接されている。また、力骨縦ワイヤー5の湾曲部5aの底部において、力骨縦ワイヤー5との交点が溶接されている。
【0046】
上記ステープル部材7は、門型の楔状部材であり、このステープル部材7を力骨横ワイヤー6ともどもエアータッカー等を用いて被施工面2に打ち付けることにより、モルタル下地材1の全体を被施工面2に取り付けるようになっている。
【0047】
ここで、図5、図6を参照して、本発明の第1の実施の形態に係るモルタル下地材1の製造方法について説明する。図5は、本発明の第1の実施の形態に係るモルタル下地材1の製造装置8の概略の構成を示す平面図であり、図6は、モルタル下地材1の製造装置8の概略の構成を示す側面図である。
【0048】
これらの図に示すように、本発明の第1の実施の形態に係るモルタル下地材1の製造方法は、縦ワイヤー位置決め装置9により、それぞれの長手方向が概ね平行になるように複数の縦ワイヤー3を並べる工程と、同じ縦ワイヤー位置決め装置9により縦ワイヤー3の複数本おきに、縦ワイヤー3に対してそれぞれの長手方向が、概ね平行になるように複数の力骨縦ワイヤー5をさらに並べる工程と、縦ワイヤー送り装置11により、縦ワイヤー3および力骨縦ワイヤー5を溶接機12に送る工程とを含んでいる。
【0049】
また、この製造方法は、溶接機12により、複数の縦ワイヤー3に対してそれぞれの長手方向が概ね直角になるように、コイル4bから繰り出される複数の横ワイヤー4を並べ、縦ワイヤー3と横ワイヤー4との交点、および力骨縦ワイヤー5と横ワイヤー4との交点を溶接する工程を含んでいる。
【0050】
さらに、この製造方法は、溶接機12のワイヤー供給装置12aを切り替えることにより、横ワイヤー4の複数本おきに、横ワイヤー4に対してそれぞれの長手方向が、概ね平行になるように、コイル6bから繰り出される横ワイヤー4より太い複数の力骨横ワイヤー6を並べる工程と、縦ワイヤー3と力骨横ワイヤー6との交点、および力骨縦ワイヤー5と力骨横ワイヤー6との交点を溶接する工程を含んでいる。
【0051】
また、この製造方法は、ワイヤー送り装置13により溶接されたワイヤーを波付け機14に送る工程と、波付け機14により縦ワイヤー3および力骨縦ワイヤー5にそれぞれ湾曲部3a、5aをプレス形成する工程と、巻き取り機15でロール形状に巻き取る工程と、切断機16でモルタル下地材1の端部を切断する工程とを含んでいる。
【0052】
なお、溶接が完了したモルタル下地材1は、必要に応じて、図略のメッキ工程により、全体すなわち、それぞれのワイヤー3、4、5、6およびワイヤー3、4、5、6同士の溶接箇所が、酸洗いされ、耐腐食性のメッキで加工される。
【0053】
以上説明したように、第1の実施形態に係るモルタル下地材1と、製造装置8を用いたモルタル下地材1の製造方法によれば、概ね平行になるように並べられた複数の長尺の縦ワイヤー3をベースとしてこれに複数の横ワイヤー4を溶接してモルタル下地材1を形成するので、従来のような規格寸法の単一体だけでなく、長尺で連続体の網状のモルタル下地材1を実現することができる。
【0054】
しかも、複数の横ワイヤー4は、それぞれが平行な状態で縦ワイヤー3に溶接されるので、横ワイヤー4が長尺の縦ワイヤー3の曲げに対して影響することが少なく、縦ワイヤー3を巻き取るのと同等の容易さで長尺のモルタル下地材1をロール形状に加工することができる。
【0055】
また、このようにワイヤー3、4、5、6を網状に形成したものであるので、建築物の壁面などの被施工面2にモルタル下地材1を施工する際、従来のメタルラスと比較して、カッティングが容易であり、コーナー部分で曲げることができるなど、施工性、作業性が良好である。
【0056】
また、切れ目がないので、切れ難く強度が高い。
【0057】
さらに、縦ワイヤー3より太い複数の力骨縦ワイヤー5を縦ワイヤー3の複数本おきに縦ワイヤー3に平行に並べて横ワイヤー4と溶接するので、縦ワイヤー3の方向の剛性、引っ張り強度の優れたモルタル下地材1とすることができる。
【0058】
また、同様に、横ワイヤー4より太い複数の力骨横ワイヤー6を横ワイヤー4の複数本おきに横ワイヤー4に平行に並べて縦ワイヤー3と溶接するので、横ワイヤー4の方向の剛性、引っ張り強度の優れたモルタル下地材1とすることができる。
【0059】
さらに、縦ワイヤー3の湾曲部3aの底部に力骨横ワイヤー6が溶接されているので、力骨横ワイヤー6を建築物の壁面などの被施工面2に固定すると、縦ワイヤー3を被施工面2から一定の距離に浮かせた状態にしてモルタルの中心付近に縦ワイヤー3の大部分を配置することができる結果、モルタルの保持力がより優れたモルタル下地材1とすることができる。
【0060】
そして、ワイヤー3、4、5、6およびワイヤー3、4、5、6同士の溶接箇所が耐腐食性のメッキ加工を施されているので、モルタルに染み込む雨水などに対してより耐腐食性を有する長寿命のモルタル下地材1を実現することができる(従来のメタルラスでは、メッキした板材を用いても、切れ目を入れて引き伸ばした多くの部分は、地肌が露出して耐腐食性がない)。
【0061】
次に、図7〜図9を参照して、本発明の第2の実施の形態に係るモルタル下地材21について説明する。図7は、本発明の第2の実施の形態に係るモルタル下地材21の概略の構成を示す部分平面図であり、図8は、図7の正面図である。図9は、図7の側面図である。なお、第1の実施形態に係るモルタル下地材1と同様の構成については同じ符号を付し、説明の重複を避けるものとする。また、本発明の第1の実施の形態に係るモルタル下地材1の概略の構成を示す全体平面図は図1と同様である。
【0062】
図7〜図9に示すように、本発明の第2の実施の形態に係るモルタル下地材21は、複数の縦ワイヤー3の湾曲部3aの頂部に当接するように配置された平板状の断熱板22を備えている。
【0063】
この断熱板22は、発泡スチロールなどからなる発泡性合成樹脂材の平板部材であり、モルタル下地材1の力骨横ワイヤー6が、縦ワイヤー3の湾曲部3aの頂部を断熱板22の面に固定するように、本発明の第1の実施の形態に係るモルタル下地材1と同様の楔状のステープル部材7で断熱板22の面に取り付けられている。
【0064】
このようにすれば、壁面などの被施工面2に対して一度に断熱施工とモルタル下地施工の両方を行うことができるモルタル下地材21を実現することができる。
【0065】
上述した実施の形態は本発明の好ましい具体例を例示したものに過ぎず、本発明は上述した実施の形態に限定されない。
【0066】
例えば、モルタル下地材1、21の被施工面2は、建築物の壁面に限定されない。室内の壁面や天井など、モルタルの塗装工事が適用されるその他の被施工面にも適用可能である。
【0067】
縦ワイヤー3と横ワイヤー4は、必ずしも外径が0.8mmの長尺の鉄製ワイヤー部材である必要はなく、また、力骨縦ワイヤー5と力骨横ワイヤー6も、外径1.6mmの長尺の鉄製ワイヤー部材である必要はない。これらワイヤーの材質、寸法は、力骨縦ワイヤー5と力骨横ワイヤー6とがそれぞれ縦ワイヤー3と横ワイヤー4よりも太い外径を有しているならば、種々の設計変更が可能である。
【0068】
また、同様に、波状に湾曲して形成された湾曲部3a、5aの波高さも必ずしも5〜7mmに限定されない。種々の設計変更が可能である。
【0069】
ステープル部材7は、モルタル下地材1においてもモルタル下地材21においても、門型だけに限定されず、V形、U形など、力骨横ワイヤー6を被施工面2に取り付けることができるものであれば、種々の設計変更が可能である。
【0070】
また、モルタル下地材1、21の製造方法において、縦ワイヤー位置決め装置9、縦ワイヤー送り装置11、溶接機12、ワイヤー送り装置13、波付け機14、巻き取り機15、切断機16などは、必ずしも図示のように個別である必要はなく、一つの架台に組み付けてもよいなど、種々の設計変更が可能である。
【0071】
また、モルタル下地材1は、ロールの状態でメッキ加工されてもよいし、平型の単一体でメッキ加工されるように製造方法が構成されてもよい。
【0072】
さらに、モルタル下地材21において、断熱板22は、発泡スチロールの平板部材に限定されない。被施工面2に対して断熱施工を行うのに用いられるものであれば、断熱板22の材質、形状、寸法などは、種々の設計変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るモルタル下地材の概略の構成を示す全体図である。
【図2】モルタル下地材の概略の構成を示す部分平面図である。
【図3】図2の正面図である。
【図4】図2の側面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係るモルタル下地材の製造装置の概略の構成を示す平面図である。
【図6】モルタル下地材の製造装置の概略の構成を示す側面図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係るモルタル下地材の概略の構成を示す部分平面図である。
【図8】図7の正面図である。
【図9】図7の側面図である。
【図10】従来のモルタル下地材であるメタルラスの構成を示す平面図である。
【図11】図10の部分斜視図である。
【符号の説明】
【0074】
1、21 モルタル下地材
3 縦ワイヤー
3a 縦ワイヤーの湾曲部
4 横ワイヤー
5 力骨縦ワイヤー
5a 力骨縦ワイヤーの湾曲部
6 力骨横ワイヤー
7 ステープル部材
22 断熱板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれの長手方向が、概ね平行になるように並べられた長尺の複数の縦ワイヤーと、
これらの複数の縦ワイヤーに対してそれぞれの長手方向が、概ね直角になるように並べられ、縦ワイヤーとの交点が溶接された複数の横ワイヤーと、
を備えたことを特徴とするモルタル下地材。
【請求項2】
縦ワイヤーに対してそれぞれの長手方向が、概ね平行になるように上記縦ワイヤーの複数本おきに並べられ、上記横ワイヤーとの交点が溶接された縦ワイヤーより太い複数の力骨縦ワイヤーをさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載のモルタル下地材。
【請求項3】
上記横ワイヤーの複数本おきに、横ワイヤーに対してそれぞれの長手方向が、概ね平行になるように並べられ、上記縦ワイヤーとの交点が溶接された横ワイヤーより太い複数の力骨横ワイヤーをさらに備えたことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載のモルタル下地材。
【請求項4】
上記複数の縦ワイヤーが、上記力骨横ワイヤーとの交点の位置において概ね波状に湾曲して形成された湾曲部を有し、
上記力骨横ワイヤーは、上記湾曲部の底部に溶接されていることを特徴とする請求項3に記載のモルタル下地材。
【請求項5】
上記複数の縦ワイヤーの湾曲部の頂部に当接する平板状の断熱板を備え、
上記力骨横ワイヤーは、縦ワイヤーの湾曲部の頂部を断熱板の面に固定するように、楔状のステープル部材で断熱板の面に取り付けられていることを特徴とする請求項4に記載のモルタル下地材。
【請求項6】
上記ワイヤーおよびワイヤー同士の溶接箇所が、耐腐食性のメッキ加工を施されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のモルタル下地材。
【請求項7】
それぞれの長手方向が、概ね平行になるように複数の縦ワイヤーを並べるとともに、
これらの複数の縦ワイヤーに対してそれぞれの長手方向が、概ね直角になるように複数の横ワイヤーを並べ、
上記複数の縦ワイヤーと複数の横ワイヤーの交点を溶接することを特徴とするモルタル下地材の製造方法。
【請求項8】
上記縦ワイヤーの複数本おきに、縦ワイヤーに対してそれぞれの長手方向が、概ね平行になるように縦ワイヤーより太い複数の力骨縦ワイヤーをさらに並べ、
この力骨縦ワイヤーと上記横ワイヤーとの交点を溶接することを特徴とする請求項7に記載のモルタル下地材の製造方法。
【請求項9】
上記横ワイヤーの複数本おきに、横ワイヤーに対してそれぞれの長手方向が、概ね平行になるように横ワイヤーより太い複数の力骨横ワイヤーをさらに並べ、上記縦ワイヤーとの交点を溶接することを特徴とする請求項7または請求項8のいずれかに記載のモルタル下地材の製造方法。
【請求項10】
上記ワイヤーおよびワイヤー同士の溶接箇所に対して、耐腐食性のメッキ加工を施すことを特徴とする請求項7ないし請求項9のいずれかに記載のモルタル下地材の製造方法。
【請求項1】
それぞれの長手方向が、概ね平行になるように並べられた長尺の複数の縦ワイヤーと、
これらの複数の縦ワイヤーに対してそれぞれの長手方向が、概ね直角になるように並べられ、縦ワイヤーとの交点が溶接された複数の横ワイヤーと、
を備えたことを特徴とするモルタル下地材。
【請求項2】
縦ワイヤーに対してそれぞれの長手方向が、概ね平行になるように上記縦ワイヤーの複数本おきに並べられ、上記横ワイヤーとの交点が溶接された縦ワイヤーより太い複数の力骨縦ワイヤーをさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載のモルタル下地材。
【請求項3】
上記横ワイヤーの複数本おきに、横ワイヤーに対してそれぞれの長手方向が、概ね平行になるように並べられ、上記縦ワイヤーとの交点が溶接された横ワイヤーより太い複数の力骨横ワイヤーをさらに備えたことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載のモルタル下地材。
【請求項4】
上記複数の縦ワイヤーが、上記力骨横ワイヤーとの交点の位置において概ね波状に湾曲して形成された湾曲部を有し、
上記力骨横ワイヤーは、上記湾曲部の底部に溶接されていることを特徴とする請求項3に記載のモルタル下地材。
【請求項5】
上記複数の縦ワイヤーの湾曲部の頂部に当接する平板状の断熱板を備え、
上記力骨横ワイヤーは、縦ワイヤーの湾曲部の頂部を断熱板の面に固定するように、楔状のステープル部材で断熱板の面に取り付けられていることを特徴とする請求項4に記載のモルタル下地材。
【請求項6】
上記ワイヤーおよびワイヤー同士の溶接箇所が、耐腐食性のメッキ加工を施されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のモルタル下地材。
【請求項7】
それぞれの長手方向が、概ね平行になるように複数の縦ワイヤーを並べるとともに、
これらの複数の縦ワイヤーに対してそれぞれの長手方向が、概ね直角になるように複数の横ワイヤーを並べ、
上記複数の縦ワイヤーと複数の横ワイヤーの交点を溶接することを特徴とするモルタル下地材の製造方法。
【請求項8】
上記縦ワイヤーの複数本おきに、縦ワイヤーに対してそれぞれの長手方向が、概ね平行になるように縦ワイヤーより太い複数の力骨縦ワイヤーをさらに並べ、
この力骨縦ワイヤーと上記横ワイヤーとの交点を溶接することを特徴とする請求項7に記載のモルタル下地材の製造方法。
【請求項9】
上記横ワイヤーの複数本おきに、横ワイヤーに対してそれぞれの長手方向が、概ね平行になるように横ワイヤーより太い複数の力骨横ワイヤーをさらに並べ、上記縦ワイヤーとの交点を溶接することを特徴とする請求項7または請求項8のいずれかに記載のモルタル下地材の製造方法。
【請求項10】
上記ワイヤーおよびワイヤー同士の溶接箇所に対して、耐腐食性のメッキ加工を施すことを特徴とする請求項7ないし請求項9のいずれかに記載のモルタル下地材の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−63835(P2007−63835A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−250659(P2005−250659)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(592125949)神鋼商事株式会社 (2)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(592125949)神鋼商事株式会社 (2)
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