説明

モルフィナンおよびその中間体の製造方法

本発明は、モルフィナン類の合成方法を対象とする。特に、Grewe 環化反応を使用してβ,γ−二環式ケトン化合物を環化し、ノルジヒドロテバイノン生成物を形成させる方法は、β,γ−二環式ケトン化合物、環化酸および水捕捉性環化添加物を含む反応混合物を形成させることにより改良される。ある実施態様では、Grewe 変換は、環化添加物としての酸無水物の存在下で行う。さらに、本発明は、α,β−二環式ケトン化合物(例えば、Grewe 環化反応の副生成物)をβ,γ−二環式ケトン化合物に変換する方法を対象とし、その方法では、β,γ−二環式ケトン化合物を回収し、さらに Grewe 環化させ、ノルジヒドロテバイノン生成物を形成させ得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は、一般的に、モルフィナン類、より具体的には、ノルジヒドロテバイノン(nordihydrothebainone)およびその類似体の合成方法を対象とする。
【背景技術】
【0002】
ノルジヒドロテバイノンおよびその誘導体は、ブルプレノルフィン(burprenorphine)、コデイン、エトルフィン、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、モルヒネ、ナルブフィン、ナルメフェン、ナロキソン、ナルトレキソン、オキシコドンおよびオキシモルフォンを含む多くのモルフィナン化合物への重要な合成中間体である。一般的に、これらの化合物は鎮痛剤であり、オピエート受容体アゴニストとしてのそれらの作用により、医療分野で除痛のために広範に使用される。しかしながら、ナルメフェン、ナロキソンおよびナルトレキソンはオピエート受容体アンタゴニストである;そして、オピエート受容体アゴニストによる麻薬性/呼吸性抑制の回復に使用される。
【0003】
ノルジヒドロテバイノンおよびその類似体の様々な合成方法が知られている。一般的に、Grewe 環化反応を使用してノルジヒドロテバイノンを得る。米国特許第4,368,326号では、Rice が、β,γ−ヘキサヒドロイソキノリノン(例えば、1−(2'−ブロモ−4'−メトキシ−5'−ヒドロキシベンジル)−2−ホルミル−1,3,4,5,7,8−ヘキサヒドロイソキノリン−6−オン)からの、超酸触媒単独またはフッ化アンモニウム錯体とトリフルオロメタンスルホン酸の組合せを使用して触媒される Grewe 環化による、ノルジヒドロテバイノン(例えば、1−ブロモ−N−ホルミルノルジヒドロテバイノン)の製造方法を開示している。
【0004】
Grewe 環化に使用される出発物質のβ,γ−ヘキサヒドロイソキノリノンの汚染は、再現性の問題と所望の環化生成物の低収率をもたらす。Grewe 環化工程の再現性および収量を高めるためのある既知の方法は、出発物質のβ,γ−ヘキサヒドロイソキノリノンを結晶化により精製することである。しかしながら、β,γ−ヘキサヒドロイソキノリノンは典型的には回転異性体の混合物からなるので、その結晶化は困難である。加えて、α,β−ヘキサヒドロイソキノリノンは、β,γ−ヘキサヒドロイソキノリノンの Grewe 環化の異性体の副生成物である。従来の条件下では、α,β−ヘキサヒドロイソキノリノンは、所望のノルジヒドロテバイノン生成物の形成を認め得る程には、Grewe 環化反応を受けない。従って、既知の Grewe 環化条件は、かなりの量のβ,γ−ヘキサヒドロイソキノリノン出発物質がα,β−ヘキサヒドロイソキノリノンに変換されるのが原因で、しばしばノルジヒドロテバイノン生成物の低収率をもたらす。
【0005】
水の存在は、Grewe 環化反応の再現性および収率に影響を及ぼす一要因である。反応混合物中の水は、β,γ−ヘキサヒドロイソキノリノン出発物質の望まれないα,β−ヘキサヒドロイソキノリノンへの変換に貢献することにより、選択性を低下させ得る。水は、出発物質のβ,γ−ヘキサヒドロイソキノリノンおよび使用する環化する酸の物質から、Grewe 環化反応媒体に導入され得る。一般的に、Grewe 環化を触媒するのに使用される購入できる酸には、それらの吸湿性のために、測定可能な量の水が存在する。Grewe 環化反応の収率に影響を及ぼすと知られている他の混入物は、アルコールおよび有機酸である。
【0006】
Grewe 環化反応中に産生される望まれないα,β−ヘキサヒドロイソキノリノン異性体副生成物は、分離が困難であり得、一度分離されると、典型的には廃棄される。この実施は、出発物質のβ,γ−ヘキサヒドロイソキノリノンを合成するのに多数の工程が必要であるため、生産性および効率にかなりの損失をもたらす;例えば、米国特許第4,368,326号で Rice により記載された通り、3−メトキシフェネチルアミンで出発する。β,γ−ヘキサヒドロイソキノリノン出発物質を再生できることは、廃棄物、資本設備、労働の量を有意に低減し、ノルジヒドロテバイノン生成物の合成の総合的収率を改善するであろう。
【0007】
故に、副生成物形成を阻害し、収率を高めることができる、ノルジヒドロテバイノンおよびその類似体の Grewe 環化を含む合成方法の必要性は存続している。
【発明の開示】
【0008】
発明の要旨
本発明の様々な態様には、様々なモルフィナン化合物の製造に有用な中間体(例えば、対応するβ,γ−二環式ケトン類から変換されるノルジヒドロテバイノン類)の改良された合成方法がある。
【0009】
本発明のある態様は、式10の構造を有するノルジヒドロテバイノンまたはその類似体を含むノルジヒドロテバイノン生成物の製造方法である:
【化1】

10
[式中、
Xは、酸素、硫黄、−S(O)−、−S(O)−、−C(R1819)−、−N(R17)−および−N(R17a17b)−からなる群から選択され;R、R、R、R、R18およびR19は、水素、置換および非置換アシル、アルケニル、アルコキシ、アルコキシアリール、アルキル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アルキニル、アミノ、アリール、アリールアルコキシ、カルボアルコキシ、カルボキシアルケニル、カルボキシアルキル、カルボキシル、シアノ、シアノアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルエーテル、ハロ、ハロアルコキシ、ハロアルキル、ヘテロアリール、複素環、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシルおよびニトロからなる群から独立して選択されるか、または、R18およびR19は、一体となってケトを形成しており;R17は、水素、アシル、アルケニル、アルコキシアリール、アルキル、アルキニル、アリール、カルボキシアルケニル、カルボキシアルキル、シアノアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ハロアルキル、ヘテロアリール、複素環、カルボキシル、カルボキシアミド、カルボキシエステル、ヒドロキシルおよびヒドロキシアルキルからなる群から選択され;そして、R17aおよびR17bは、水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリールおよびベンジルからなる群から独立して選択されるか、または、一体となってオキソを形成している]。
【0010】
本方法は、β,γ−二環式ケトン化合物、環化酸(cyclizing acid)および酸無水物を含む反応混合物を形成させてノルジヒドロテバイノン生成物を産生することを含み、該β,γ−二環式ケトン化合物は、式11の構造を有する:
【化2】

11
式中、X、R、R、R、R、R17、R18およびR19は、上記定義の通りである。
【0011】
本発明の他の態様は、式10の構造を有するノルジヒドロテバイノンまたはその類似体の製造方法である:
【化3】

10
[式中、
Xは、酸素、硫黄、−S(O)−、−S(O)−、−C(R1819)−、−N(R17)−および−N(R17a17b)−からなる群から選択され;R、R、R、R、R18およびR19は、水素、置換および非置換アシル、アルケニル、アルコキシ、アルコキシアリール、アルキル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アルキニル、アミノ、アリール、アリールアルコキシ、カルボアルコキシ、カルボキシアルケニル、カルボキシアルキル、カルボキシル、シアノ、シアノアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルエーテル、ハロ、ハロアルコキシ、ハロアルキル、ヘテロアリール、複素環、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシルおよびニトロからなる群から独立して選択されるか、または、R18およびR19は、一体となってケトを形成しており;R17は、水素、アシル、アルケニル、アルコキシアリール、アルキル、アルキニル、アリール、カルボキシアルケニル、カルボキシアルキル、シアノアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ハロアルキル、ヘテロアリール、複素環、カルボキシル、カルボキシアミド、カルボキシエステル、ヒドロキシルおよびヒドロキシアルキルからなる群から選択され;そして、R17aおよびR17bは、水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリールおよびベンジルからなる群から独立して選択されるか、または、一体となってオキソを形成している]。
【0012】
本方法は、β,γ−二環式ケトン化合物を、酸無水物の存在下で環化酸と接触させることを含み、該β,γ−二環式ケトン化合物は、式11の構造を有する:
【化4】

11
[式中、X、R、R、R、R、R17、R18およびR19は、上記定義の通りである]。
【0013】
本発明のまた他の態様は、式20の構造を有するβ,γ−二環式ケトン化合物の製造方法である:
【化5】

20
[式中、R21およびR22は、それらが結合している炭素と一体となって、シクロヘキセン環に縮合している5員、6員または7員の複素環式または炭素環式の環を形成している]。
【0014】
本方法は、α,β−二環式ケトン化合物をケトン保護化合物と反応させて保護β,γ−二環式ケトン化合物を形成させること、および、保護β,γ−二環式ケトン化合物を加水分解してβ,γ−二環式ケトン化合物を産生することを含み、該α,β−二環式ケトン化合物は、式21または22の構造を有し、保護β,γ−二環式ケトン化合物は、式23の構造を有する:
【化6】

[式中、R21およびR22は、上記定義の通りであり;そして、R61およびR62は、アルコキシおよびアルキルチオからなる群から独立して選択されるか、または、それらが結合している炭素と一体となって、ケタール、ジチオケタールまたはモノチオケタールを形成している]。
【0015】
本発明のさらなる態様は、式10の構造を有するノルジヒドロテバイノンまたはその類似体を含むノルジヒドロテバイノン生成物の製造方法である:
【化7】

10
[式中、
Xは、酸素、硫黄、−S(O)−、−S(O)−、−C(R1819)−、−N(R17)−および−N(R17a17b)−からなる群から選択され;R、R、R、R、R18およびR19は、水素、置換および非置換アシル、アルケニル、アルコキシ、アルコキシアリール、アルキル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アルキニル、アミノ、アリール、アリールアルコキシ、カルボアルコキシ、カルボキシアルケニル、カルボキシアルキル、カルボキシル、シアノ、シアノアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルエーテル、ハロ、ハロアルコキシ、ハロアルキル、ヘテロアリール、複素環、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシルおよびニトロからなる群から独立して選択されるか、または、R18およびR19は、一体となってケトを形成しており;R17は、水素、アシル、アルケニル、アルコキシアリール、アルキル、アルキニル、アリール、カルボキシアルケニル、カルボキシアルキル、シアノアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ハロアルキル、ヘテロアリール、複素環、カルボキシル、カルボキシアミド、カルボキシエステル、ヒドロキシルおよびヒドロキシアルキルからなる群から選択され;そして、R17aおよびR17bは、水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリールおよびベンジルからなる群から独立して選択されるか、または、一体となってオキソを形成している]。
【0016】
本方法は、
(i)Grewe 反応領域においてβ,γ−二環式ケトン化合物および環化酸を含む反応混合物を形成させ、ノルジヒドロテバイノン生成物およびα,β−二環式ケトン化合物副生成物を含む Grewe 反応生成混合物を産生すること、ここで、該β,γ−二環式ケトン化合物は、式11の構造を有する:
【化8】

11
[式中、X、R、R、R、R、R17、R18およびR19は、上記定義の通りである];
【0017】
(ii)Grewe 生成物混合物中に得られるα,β−二環式ケトン化合物副生成物を、ケトン保護化合物と、異性化反応領域において反応させ、保護β,γ−二環式ケトン化合物を形成させること、ここで、該α,β−二環式ケトン化合物副生成物は、式30または31の構造を有し、保護β,γ−二環式ケトン化合物は、式32の構造を有する:
【化9】

[式中、R61およびR62は、アルコキシおよびアルキルチオからなる群から独立して選択されるか、または、それらが結合している炭素と一体となって、ケタール、ジチオケタールまたはモノチオケタールを形成しており;そして、X、R、R、R、R、R17、R18およびR19は、上記定義の通りである];および、
(iii)保護β,γ−二環式ケトン化合物を加水分解し、式11のβ,γ−二環式ケトン化合物を形成させること、
を含む。
【0018】
好ましい実施態様の詳細な説明
本発明の様々な態様には、β,γ−二環式ケトン化合物(例えば、β,γ−ヘキサヒドロイソキノリノン)からの改良された Grewe 環化反応によるノルジヒドロテバイノンおよびその類似体の製造方法がある。ある実施態様では、β,γ−二環式ケトン化合物、環化酸および酸無水物を含む Grewe 環化反応混合物を形成させる。例えば、β,γ−二環式ケトン化合物の Grewe 変換は、環化酸および酸無水物の存在下で実施し得る。一般的に、本発明に従う無水物の使用は、ノルジヒドロテバイノン生成物の収率を改善する。
【0019】
理論により制限されないが、Grewe 反応混合物に無水物を添加することには、以下の1つまたはそれ以上の効果があり得ると考えられる。第1に、無水物は、Grewe 反応混合物中の水の濃度を低下させ得る。そうでなければ、水は望まれない特定の副反応を導き、所望のノルジヒドロテバイノン生成物の収率を低下させ、かつ/または、Grewe 反応媒体の酸性度に影響を及ぼすであろう。無水物が Grewe 環化反応媒体の酸性度に影響を及ぼすならば、ノルジヒドロテバイノン生成物の産生に有利に働くように影響を及ぼし得る。第2に、無水物は、何らかの態様でβ,γ−二環式ケトン化合物出発物質の官能基に作用または接近し、環化生成物の産生を助長し得る。第3に、無水物は、Grewe 環化反応混合物中の他の不純物と反応するか、または他の態様でその性質に影響し得る。
【0020】
より具体的には、無水物の添加は、ポリマーの副生成物の形成を有意に低減させ、α,β−二環式ケトン副生成物(例えば、α,β−ヘキサヒドロイソキノリノン)の形成を最小化すると見出された。α,β−二環式ケトン副生成物は、Grewe 変換の条件に付されるβ,γ−二環式ケトン出発物質の二重結合の酸触媒による移動により形成され、所望のノルジヒドロテバイノン生成物の産生を検知し得る程には Grewe 環化を受けない。故に、α,β−二環式ケトン化合物の形成は、Grewe 環化反応の収率および効率を低下させる。
【0021】
無水物を用いるか否かに拘わらず、Grewe 環化反応の実施において、いくらかのα,β−二環式ケトン副生成物の形成は、典型的には回避できない。本発明の他の実施態様に従って、そして、Grewe 環化によるβ,γ−二環式ケトン化合物から所望のノルジヒドロテバイノン生成物への変換の総合的な効率を改善するために、α,β−二環式ケトン副生成物を、望ましい出発物質のβ,γ−二環式ケトン化合物に異性化して戻す。逆異性化は、一般的に、α,β−二環式ケトン化合物をケトン保護化合物で保護することにより実施し、それは、二重結合をα,β−位から所望のβ,γ−位に移動させ、保護β,γ−二環式ケトン化合物を形成させる。次いで、保護β,γ−二環式ケトン化合物を加水分解して出発物質のβ,γ−二環式ケトン化合物を産生し、次いで、それを再利用し、Grewe 環化反応により所望のノルジヒドロテバイノン生成物に変換できる。
【0022】
Grewe 環化
Grewe 環化反応は、モルフィナンおよびその類似体の製造において重要な合成工程である。モルフィナンの製造の一般反応スキームは、米国特許第4,368,326号 (Rice) で開示されており、その開示の全体を出典明示により本明細書の一部とする。本発明の実施において関心のあるモルフィナンおよびその類似体(即ち、モルフィナンは、−N(R17)−または−N+(17a17b)−のX基を有し、モルフィナン類似体は、−N(R17)−または−N(R17a17b)−以外のX基を有する)は、オピエート受容体アゴニストまたはアンタゴニストであり、一般的に、式1の構造を有する化合物である:
【化10】


[式中、−A'−A−は、基
【化11】

を表し、
−D−D'−は、基
【化12】

を表し、
【0023】
−A−D−は、基−CHCH−または−CH=CH−または=CH−CH=を表し;
Xは、酸素、硫黄、−S(O)−、−S(O)−、−C(R1819)−、−N(R17)−および−N(R17a17b)−からなる群から選択され;
およびRは、水素、置換および非置換アシル、アルケニル、アルコキシ、アルコキシアリール、アルキル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アルキニル、アミノ、アリール、アリールアルコキシ、カルボアルコキシ、カルボニル、カルボキシアルケニル、カルボキシアルキル、カルボキシル、シアノ、シアノアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルエーテル、ハロ、ハロアルコキシ、ハロアルキル、ヘテロアリール、複素環、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシルおよびニトロからなる群から独立して選択され;
は、アルコキシ、ヒドロキシルおよびアセトキシからなる群から選択され;
は、アルコキシ、ヒドロキシルおよびアセトキシからなる群から選択され;
14は、水素、ヒドロキシルおよびアセトキシからなる群から選択され;
17は、低級アルキル、アルキレンシクロアルキル、アリルアルケニル、アシル、ホルミル、ホルミルエステル、ホルムアミドおよびベンジルからなる群から選択され;
17aおよびR17bは、水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリールおよびベンジルからなる群から独立して選択され;
18およびR19は、水素、置換および非置換アシル、アルケニル、アルコキシ、アルコキシアリール、アルキル、アルキルアミノ、アリールチオ、アルキルチオ、アルキニル、アミノ、アリール、アリールアルコキシ、カルボアルコキシ、カルボキシアルケニル、カルボキシアルキル、カルボキシル、シアノ、シアノアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ハロ、ハロアルコキシ、ハロアルキル、ヘテロアリール、複素環、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシルおよびニトロからなる群から独立して選択されるか、または、R18およびR19は、一体となってケトを形成しており;そして、
61およびR62は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリルおよびアリールから独立して選択され;
但し、−A−D−が−CH=CH−であるならば、−A'−A−は−C(R)=CH−以外であり、−D−D'−は
【化13】

以外である]。
【0024】
目下好ましいある実施態様では、本発明は、Xが−N(R17)−である式1のモルフィナン化合物の製造に有用である。
【0025】
本発明に従う Grewe 環化反応の改良は、β,γ−二環式ケトンをノルジヒドロテバイノン生成物に変換する際に使用できる。ノルジヒドロテバイノン生成物を形成するための、β,γ−二環式ケトンの Grewe 環化による変換の技法は、当分野で知られており(例えば、米国特許第4,368,326号、第4,410,700号、第4,521,601号、第4,556,712号、第4,613,668号および第4,727,146号参照、これらの開示の全体を出典明示により本明細書の一部とする)、一般的には、そのような従来の実務を、詳しく後述する変更をもって本発明の実施に適用できる。
【0026】
詳しく後述する方法の生成物を、当分野で知られている方法により式1の化合物に変換できる。例えば、ノルジヒドロテバイノン生成物またはその類似体は、ブルプレノルフィン、コデイン、エトルフィン、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、モルヒネ、ナルブフィン、ナルメフェン、ナロキソン、ナルトレキソン、オキシコドンおよびオキシモルフォンを含むモルフィナン化合物に変換できる。
【0027】
ある実施態様では、本発明の方法は、式10の構造を有するノルジヒドロテバイノンまたはその類似体の製造を対象とする:
【化14】

10
【0028】
[式中、
Xは、酸素、硫黄、−S(O)−、−S(O)−、−C(R1819)−、−N(R17)−および−N(R17a17b)−からなる群から選択され;
、R、R、R、R18およびR19は、水素、置換および非置換アシル、アルケニル、アルコキシ、アルコキシアリール、アルキル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アルキニル、アミノ、アリール、アリールアルコキシ、カルボアルコキシ、カルボキシアルケニル、カルボキシアルキル、カルボキシル、シアノ、シアノアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルエーテル、ハロ、ハロアルコキシ、ハロアルキル、ヘテロアリール、複素環、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシルおよびニトロからなる群から独立して選択されるか、または、R18およびR19は、一体となってケトを形成しており;
17は、水素、アシル、アルケニル、アリル、アルコキシアリール、アルキル、アルキニル、アリール、カルボキシアルケニル、カルボキシアルキル、シアノアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ハロアルキル、ヘテロアリール、複素環、カルボキシル、カルボキシアミド、カルボキシエステル、ヒドロキシルおよびヒドロキシアルキルからなる群から選択され;そして、
17aおよびR17bは、水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリールおよびベンジルからなる群から独立して選択されるか、または、一体となってオキソを形成している]。
【0029】
17が水素であるとき、第2級アミンの塩を形成させることができ、ここで、陰イオンは、塩化物、臭化物、酢酸塩、ギ酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、トリフレート、トリフルオロ酢酸塩、メタンスルホン酸塩などからなる群から選択される。Xが−N(R17a17b)−であるとき、対イオンは、塩化物、臭化物、ヨウ化物、トリフルオロ酢酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、酢酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、リン酸水素塩、リン酸二水素塩、フマル酸塩、マロン酸塩、シュウ酸塩、ギ酸塩、酒石酸塩、安息香酸塩などであり得る。
【0030】
本方法は、一般的に、環化酸および式11の構造を有するβ,γ−二環式ケトン化合物を含む Grewe 環化反応混合物を形成させることを含む:
【化15】

11
[式中、X、R、R、R、R、R17、R18およびR19は、上記定義の通りである]。ある好ましい実施態様では、β,γ−二環式ケトン出発物質およびノルジヒドロテバイノン生成物が各々式11および10に相当するとき、R、R、RおよびRは、独立して、ハロ、水素、ヒドロキシまたはメトキシであり、Xは−N(R17)−である。より好ましい実施態様では、Rはヒドロキシであり、Rはメトキシまたはヒドロキシであり、Rは水素であり、Rは臭素または塩素であり、Xは−N(R17)−であり、R17はホルミルまたは水素であるか、または、Xは−N(R17a17b)−であり、R17aおよびR17bは水素である。
【0031】
特に好ましい実施態様では、ノルジヒドロテバイノン生成物は、式10Aの構造を有し、β,γ−二環式ケトン出発物質は、式11Aの構造を有する:
【化16】

[式中、YはFまたはClであり;そして、R17は式10について上記で定義した通りである]。より好ましい実施態様では、R17は、水素、アルキル、アリール、ホルミル、アシル、アルコキシカルボニル、ベンジルおよびスルホンアミドからなる群から選択される。
【0032】
例えば、式11Aに相当する特定のβ,γ−二環式ケトン化合物は、
1−(2−クロロ−4,5−ジヒドロキシベンジル)−1,2,3,4,7,8−ヘキサヒドロイソキノリン−6(5H)−オン;
(R)−1−(2−クロロ−4,5−ジヒドロキシベンジル)−1,2,3,4,7,8−ヘキサヒドロイソキノリン−6(5H)−オン;
(S)−1−(2−クロロ−4,5−ジヒドロキシベンジル)−1,2,3,4,7,8−ヘキサヒドロイソキノリン−6(5H)−オン;
1−(2−クロロ−4,5−ジヒドロキシベンジル)−3,4,5,6,7,8−ヘキサヒドロ−6−オキソイソキノリン−2(1H)カルボアルデヒド;
(R)−1−(2−クロロ−4,5−ジヒドロキシベンジル)−3,4,5,6,7,8−ヘキサヒドロ−6−オキソイソキノリン−2(1H)カルボアルデヒド;
(S)−1−(2−クロロ−4,5−ジヒドロキシベンジル)−3,4,5,6,7,8−ヘキサヒドロ−6−オキソイソキノリン−2(1H)カルボアルデヒド;
1−(2−ブロモ−4,5−ジヒドロキシベンジル)−1,2,3,4,7,8−ヘキサヒドロイソキノリン−6(5H)−オン;
(R)−1−(2−ブロモ−4,5−ジヒドロキシベンジル)−1,2,3,4,7,8−ヘキサヒドロイソキノリン−6(5H)−オン;
(S)−1−(2−ブロモ−4,5−ジヒドロキシベンジル)−1,2,3,4,7,8−ヘキサヒドロイソキノリン−6(5H)−オン;
1−(2−ブロモ−4,5−ジヒドロキシベンジル)−3,4,5,6,7,8−ヘキサヒドロ−6−オキソイソキノリン−2(1H)カルボアルデヒド;
(R)−1−(2−ブロモ−4,5−ジヒドロキシベンジル)−3,4,5,6,7,8−ヘキサヒドロ−6−オキソイソキノリン−2(1H)カルボアルデヒド;および
(S)−1−(2−ブロモ−4,5−ジヒドロキシベンジル)−3,4,5,6,7,8−ヘキサヒドロ−6−オキソイソキノリン−2(1H)カルボアルデヒド
である。
【0033】
Grewe 環化反応の収率に影響を及ぼす他の要因には、反応媒体の酸性度がある。Grewe 環化反応の速度を有利に最大化し、β,γ−ヘキサヒドロイソキノリノン出発物質の望まれないα,β−ヘキサヒドロイソキノリノンへの異性化の速度を最小化する最適酸性度範囲がある。環化と異性化反応の相対速度は、反応媒体の酸性度に影響される。酸性度は、酸触媒、酸触媒の共役塩基、溶媒、基質、不純物および反応混合物への添加物の特性に影響される。
【0034】
Grewe 環化は、反応を触媒する環化酸を利用する。環化酸は、強酸、超酸またはこれらの組合せを含み得る。酸触媒は、好ましい環化の程度をもたらすのに十分な酸性度を有する混合物を提供する。酸触媒の十分な酸性度は、主として式11のβ,γ−二環式ケトン化合物の芳香環置換基R、R、RおよびRにより決定される。一般に、電子供与基は、迅速な環化に酸性の低い媒体の使用を容認し、1つまたはそれ以上の中性または電子吸引基は、超酸の使用を必要とする。適する強酸は、溶液(プロトン酸の場合、通常は水)中で完全に電離するものである。例示的な強酸は、ベンゼンスルホン酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、メタンスルホン酸、硝酸、リン酸、ポリリン酸、硫酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、p−トルエンスルホン酸およびこれらの組合せからなる群から選択され得る。好ましい環化強酸は、メタンスルホン酸または硫酸を含む。
【0035】
典型的には、β,γ−二環式ケトン化合物の環化の所望の程度および速度を得るために、環化酸として超酸を用いるのが好ましい。超酸は、100%硫酸よりも強い全てのプロトン酸を含む。適する超酸には、無水フッ化水素、フルオロスルホン酸、過塩素酸、ペルフルオロアルキルスルホン酸(例えば、ペルフルオロ−1−オクタンスルホン酸およびトリフルオロメタンスルホン酸)およびこれらの組合せ、または、五フッ化アンチモン、三フッ化ホウ素、五フッ化リンおよびフッ化タンタル(V)などの1種またはそれ以上のルイス酸との組合せが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの強酸と超酸の組合せも、好ましい環化の程度をもたらすのに十分な酸性度の混合物を提供し得、これには、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸および/またはフルオロスルホン酸と組み合わせた硫酸またはポリリン酸が含まれる。シリカおよび/またはアルミナ基板に支持されていることもある、ジルコニウム(IV)、チタン(IV)、鉄、モリブデン、タングステン、スズ(IV)、ランタンの硫酸化オキシド(sulfated oxide)およびこれらの組合せなどの一般式Mのある種の無機固体を、超酸として Grewe 反応を触媒するのに用いることも可能であり得る。全フッ素置換されたイオン交換ポリマー(例えば、DuPont Co. から入手可能な NAFION 酸性樹脂)などのポリマー性の結合酸を、場合により他の超酸と組み合わせて、使用できる。好ましくは、環化酸は超酸であり、トリフルオロメタンスルホン酸を含む。
【0036】
Grewe 環化反応混合物における超酸の濃度または強酸の濃度は、使用する酸の個性に応じて変動する。例えば、酸の濃度範囲は、β,γ−二環式ケトン出発物質の濃度に基づき、約2当量ないし約12当量;好ましくは、約6当量ないし約10当量であり得る。
【0037】
β,γ−二環式ケトンの Grewe 環化は、有機溶媒中で適当に実施する。典型的には、β,γ−二環式ケトン出発物質を、環化酸と接触させる前に有機溶媒と合わせ、Grewe 反応混合物を形成させる。適する有機溶媒は、クロロホルム、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、メチルスルホン、テトラメチレンスルホンおよびそれらの組合せからなる群から選択される。好ましくは、有機溶媒は、クロロホルムを含む。
【0038】
高い反応温度はより多くの副反応の副生成物およびより少ない所望のノルジヒドロテバイノン生成物をもたらす傾向があるので、好ましくは、Grewe 環化は不活性雰囲気(例えば、アルゴンまたは窒素気体)下で実施し、反応混合物を冷却し、環化酸の導入の間は低温で維持する。好ましくは、環化酸とβ,γ−二環式ケトンの溶液を下記の溶媒中で混合しているとき、Grewe 反応混合物の温度は、約15℃より低く、より好ましくは約−10℃ないし約15℃、より一層好ましくは約−5℃ないし約5℃に維持する。
【0039】
Grewe 反応の収率および再現性は、Grewe 環化反応混合物の特性に影響を及ぼす選択された環化添加物を利用することにより、本発明の方法において改善される。例えば、環化添加物は、β,γ−二環式ケトンがノルジヒドロテバイノン生成物に変換されるときに、環化反応混合物中の水の濃度を低下させ得る。水の減少または排除は、全体的な反応媒体の酸性度を効果的に高める。一般的に、本発明のある態様では、本方法は、β,γ−二環式ケトン化合物、環化酸および環化添加物を含む反応混合物を形成させることを含む。最も好ましくは、環化添加物は、共存する水と反応し、後に Grewe 反応を触媒するのに利用され得る酸を形成させるように、選択される。適する環化添加物は、一般的に、気体状三酸化硫黄および固体状五酸化リンおよびこれらの組合せを含む酸無水物を含む。超酸媒体と適合する無水モレキュラー・シーブも使用し得る。
【0040】
本発明の好ましい実施態様によると、β,γ−二環式ケトン化合物を環化添加物としての酸無水物の存在下で環化酸と接触させることにより、ノルジヒドロテバイノン生成物を製造する。使用する酸無水物は、上記の環化強酸および超酸のいかなる無水物も含み得る。例えば、酸無水物は、メタンスルホン酸無水物、三酸化硫黄または硫酸中の溶液(即ち、発煙硫酸またはオレウム)、五酸化リンまたはリン酸中の五酸化リンの混合物(即ち、ポリリン酸)、トリフルオロ酢酸無水物、トリフルオロメタンスルホン酸無水物およびこれらの組合せからなる群から選択できる。気体状無水物を使用するとき(例えば、SO)、発煙硫酸を反応媒体に添加する。ある好ましい実施態様によると、酸無水物は、環化酸として使用される強酸または超酸に対応する。対応する酸無水物の使用は、望まれない副反応を導き得る Grewe 反応混合物中の水の濃度を低下させるのに役立つのみならず、その酸無水物が共存する水と反応し、さらなる強酸または超酸を産生し、それにより環化酸の必要量を低下させる。好ましい実施態様によると、環化酸および酸無水物は、各々トリフルオロメタンスルホン酸およびトリフルオロメタンスルホン酸無水物である。
【0041】
酸無水物などの環化添加物を使用して、環化反応混合物中の水の濃度を低下させ、収率を下げる可能性のある副反応を阻害する。水は、環化酸触媒、β,γ−二環式ケトンの供給源およびそこで反応が起こる有機溶媒を含む数種の供給源から、Grewe 反応混合物に導入され得る。
【0042】
好ましくは、β,γ−二環式ケトン化合物を、(例えば、約60℃より低い温度で)真空下に数日間加熱し、存在する水の濃度を低下させる。付加的または代替的に、β,γ−二環式ケトン化合物を、Grewe 反応に適する有機溶媒(例えば、クロロホルム)に溶解し得、そして、さらに溶液を乾燥させるために、無水硫酸マグネシウムなどの乾燥剤を添加し得る。適する有機溶媒が水と共沸混合物を形成するならば、溶媒の一部または全部を水と共に、蒸留により除去し得る。さらに、エタノールの存在は、水と同様に Grewe 反応の選択性に有害な影響を有すると考えられるので、クロロホルムまたはエーテルの有機溶媒は、安定化剤としてエタノールを含まない等級のものを好ましくは選択する。
【0043】
ある実施態様では、環化酸中に存在する水の含有量を低下させ、かくしてα,β−ケトン副生成物の形成および他の望まれない副反応を減少させるために、環化酸を、β,γ−二環式ケトン化合物の Grewe 環化に使用するのに先立ち、酸無水物と合わせる。酸の中に存在する実質的に全ての水が酸無水物と反応し、処理された酸の中に残っているさらなる酸無水物が、β,γ−二環式ケトン溶液と合わせたときに Grewe 反応混合物中に導入されるいかなる水との反応にも利用可能であるように、好ましくは、環化酸の処理に使用する酸無水物の量は、水の濃度に対して僅かに過剰である。
【0044】
酸無水物を環化添加物として使用するとき、典型的には、それは対応する環化酸よりも大幅に低い沸点を有する。例えば、トリフルオロメタンスルホン酸無水物の沸点は約81−83℃であり、一方、トリフルオロメタンスルホン酸の融点は約167−170℃である。従って、そのような実施態様では、酸無水物を環化酸に添加し、混合物の蒸気温度を監視しながら、混合物を継続的に還流する。酸無水物を環化酸に添加するとき、共存する水は、無水物と反応して対応する酸を形成させる。還流混合物の蒸気温度の顕著な低下が観察されるまで酸無水物を添加する。このことは、混合物に添加した酸無水物の量が、実質的にいかなる水とも反応し、過剰の無水物が混合物中に存在することを示す。典型的には、還流している酸と無水物の混合物の蒸気温度が、酸無水物を添加する前の還流している酸の当初の蒸気温度より少なくとも約20℃低くなるまで、酸無水物を添加する。この処理中に還流している混合物から蒸留されるいかなる酸無水物も、再使用のために回収し得る。
【0045】
一般的に、Grewe 環化反応混合物中に存在する過剰の酸無水物の量は、β,γ−二環式ケトン化合物、環化酸、酸無水物および溶媒の総重量に基づき、約1重量%ないし約20重量%である。
【0046】
上記で論じた通り、β,γ−二環式ケトン化合物の Grewe 変換の間に所望の反応温度を維持するために、環化酸と過剰の酸無水物の混合物を、有機溶媒に希釈したβ,γ−二環式ケトン化合物と合わせて Grewe 反応混合物を形成させる前に、好ましくは典型的には約15℃より低く(例えば、約−5℃ないし約−10℃)冷却する。典型的には、β,γ−二環式ケトン出発物質を含有する有機溶媒を、途切れなく、環化酸および残っている酸無水物の冷却混合物に、Grewe 反応混合物を撹拌しながら添加する。例えば、有機溶媒中のβ,γ−二環式ケトン出発物質の溶液を、環化酸と酸無水物の混合物に、約10ないし約60分間かけて添加し得る。
【0047】
環化酸中に存在する過剰の無水物または他の環化添加物は、Grewe 反応混合物を形成させるために合わせるときにβ,γ−二環式ケトン溶液中に共存する水を低減または除去するために、利用可能である。酸無水物または他の環化添加物は、最初に、または、付加的に、Grewe 環化反応混合物に導入し得る。環化酸とβ,γ−二環式ケトン化合物を最初に合わせるときに、酸無水物が存在するのが好ましい。いずれにせよ、水と酸無水物または他の環化添加物の反応は、非常に発熱性であり得るので、酸に触媒されるβ,γ−二環式ケトン化合物の変換の間に、所望の反応温度を維持する必要に応じて、適切な手段を取り Grewe 反応混合物を冷却するべきである。
【0048】
一度、有機溶媒中のβ,γ−二環式ケトン化合物の溶液の環化酸への添加が完了したら、Grewe 反応混合物の撹拌を継続する。反応混合物は、典型的には僅かに、例えば、約10℃ないし約25℃の温度に温まる。例えば薄層クロマトグラフィー(TLC)または他の適する方法により測定される通り、実質的に全てのβ,γ−二環式ケトン化合物が所望のノルジヒドロテバイノン生成物およびα,β−二環式ケトン副生成物に変換するのに十分な時間、酸に触媒される Grewe 変換を継続させる。典型的には、β,γ−二環式ケトン化合物および環化酸の物質を合わせた後の Grewe 環化反応の期間は、約6ないし約16時間である。
【0049】
Grewe 環化反応の終わりに、反応混合物をクエンチし得る。例えば、冷却した(例えば、約−10℃ないし約10℃)水性溶媒を反応混合物に添加して、水捕捉剤として使用されるいかなる酸無水物も確実に酸に変換することにより、Grewe 反応混合物をクエンチし得る。好ましくは、冷却した水性溶媒は、約5ないし約9のpHを有し、より好ましくは、冷却した水性溶媒は約7のpHを有する。
【0050】
ノルジヒドロテバイノン生成物は、当分野で知られている技法を使用して、クエンチされた Grewe 反応混合物から容易に回収および単離し得る。例えば、ノルジヒドロテバイノン生成物は、その中で Grewe 反応を実施した有機溶媒(例えば、クロロホルム)を使用して、反応混合物から抽出し得る。好ましくは、クエンチされた Grewe 環化反応物を、有機溶媒を使用して複数回抽出し、得られるノルジヒドロテバイノン生成物の回収量を最大化する。ノルジヒドロテバイノン生成物、α,β−二環式ケトン副生成物、未反応のβ,γ−二環式ケトン出発化合物(残存すれば)および Grewe 反応混合物の他の有機性成分を含有する有機層を合わせ、詳しく後述する通りに処理し、ノルジヒドロテバイノン生成物を単離し、二環式ケトン化合物を回収する。
【0051】
異性化
上記の通り、Grewe 環化反応条件下でα,β−二環式ケトン化合物と環化酸の反応性が低いことは、所望のノルジヒドロテバイノン生成物の収率を下げる。有利には、本発明は、α,β−二環式ケトン副生成物(通常は廃棄される)のβ,γ−二環式ケトン出発物質への変換または異性化も対象とし、それは、再利用されて Grewe 環化を受け所望のノルジヒドロテバイノン生成物を形成できる。
【0052】
従って、他の実施態様では、本発明の方法は、式20を有するβ,γ−二環式ケトン化合物の製造を対象とする:
【化17】

20
式中、R21およびR22は、それらが結合している炭素と一体となって、シクロヘキセン環に縮合している5員、6員または7員の複素環式または炭素環式の環を形成している。本方法は、α,β−二環式ケトンをケトン保護化合物と反応させて保護β,γ−二環式ケトン化合物を形成させ、保護β,γ−二環式ケトン化合物を加水分解してβ,γ−二環式ケトン化合物を産生することを含む。一般的に、α,β−二環式ケトン化合物は、式21または22の構造を有し、保護β,γ−二環式ケトン化合物は、式23の構造を有する:
【化18】

[式中、
21およびR22は、上記定義の通りであり、そして、
63およびR64は、アルコキシおよびアルキルチオからなる群から独立して選択されるか、または、それらが結合している炭素と一体となって、ケタール、ジチオケタールまたはモノチオケタールを形成している]。
【0053】
シクロヘキセン環に縮合している複素環式または炭素環式環は、ピロリジル、ピペリジル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオフェニル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチルおよびシクロヘプテニルからなる群から選択され得る。目下好ましい実施態様では、シクロヘキセン環に縮合している複素環式環は、ピペリジルである。
【0054】
ある好ましい実施態様では、式20のβ,γ−二環式ケトン化合物は、式25の構造を有する:
【化19】

25
[式中、
Xは、酸素、硫黄、−S(O)−、−S(O)−、−C(R1819)−、−N(R17)−および−N(R17a17b)−からなる群から選択され;
25、R26、R27、R28、R18およびR19は、水素、アシル、アルケニル、アレニル、アルコキシ、アルコキシアリール、アルキル、アルキルアミノ、アリールチオ、アルキルチオ、アルキニル、アミノ、アリール、アリールアルコキシ、ベンジル、置換ベンジル、シアノ、カルボアルコキシ、カルボニル、カルボキシアルケニル、カルボキシアルキル、カルボキシル、シアノアルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ハロ、ハロアルコキシ、ハロアルキル、ヘテロアリール、複素環、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシルおよびニトロからなる群から独立して選択され;
17は、水素、アシル、アルケニル、アルコキシアリール、アルキル、アリル、アルキニル、アリール、カルボキシアルキル、カルボキシアルケニル、シアノアルキル、シクロアルキルアルキル、ハロアルキル、ヘテロアリール、複素環、カルボキシル、カルボキシアミド、カルボキシエステル、ヒドロキシルおよびヒドロキシアルキルからなる群から選択され;
17aおよびR17bは、水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリールおよびベンジルからなる群から独立して選択されるか、または、一体となってオキソを形成しており;そして、
nは、0、1または2である]。
【0055】
17が水素であるとき、第2級アミンの塩を形成させることができる。アミン塩のための例示的陰イオンは、塩化物、臭化物、酢酸塩、安息香酸塩、ギ酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、トリフレート、フマル酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、酒石酸塩、トリフルオロ酢酸塩またはメタンスルホン酸塩である。
【0056】
この好ましい実施態様では、式21および22のα,β−二環式ケトン化合物は、式26および27の構造を有し、式23の保護β,γ−二環式ケトン化合物は、式28の構造を有する:
【化20】

[式中、n、X、R25、R26、R27、R28、R17、R18、R19、R63およびR64は、上記定義の通りである]。
【0057】
ある好ましい実施態様では、出発物質および生成物が各々式26または27および式28に相当するとき、R25およびR26は水素であり、R27およびR28は、独立して水素または置換ベンジルであり、Xは−N(R17)−であり、R63およびR64は、それらが結合している炭素と一体となって、5員または6員環のケタールを形成しており、nは1である。より好ましい実施態様では、出発物質および生成物が各々式26または27および式28に相当するとき、R25およびR26は水素であり、R27およびR28は独立して水素または2−ブロモ−5−ヒドロキシ−4−メトキシベンジルであり、Xは−N(R17)−であり、R17は−C(O)Hであり、R63およびR64は、それらが結合している炭素と一体となって5員環のケタールを形成しており、nは1である。
【0058】
より好ましい実施態様では、式20のβ,γ−二環式ケトン化合物は、上記式11の構造を有し、式21および22のα,β−二環式ケトン化合物は、式30および31の構造を有し、式23の保護β,γ−二環式ケトン化合物は、式32の構造を有する:
【化21】

[式中、X、R、R、R、R、R17、R18およびR19は、式10について上記で定義した通りであり、R63およびR64は、式23について上記で定義した通りである]。
【0059】
より好ましい実施態様では、式30および31のα,β−二環式ケトン化合物は、式30Aおよび31Aの構造を有し、式32の保護β,γ−二環式ケトン化合物は、式32Aの構造を有する:
【化22】

[式中、R33およびR34は、独立してヒドロキシルおよびアルコキシであり;Yはハロであり;R17は式10について上記で定義した通りであり、そして、R63およびR64は、式23について上記で定義した通りである]。
【0060】
この目的で有用な特定のα,β−二環式ケトン化合物は、以下のものである。
1−(2−クロロ−4,5−ジヒドロキシベンジル)−1,4,4a,5,6,8a−ヘキサヒドロ−6−オキソイソキノリン−2(3H)−カルボアルデヒド;
(1R)−1−(2−クロロ−4,5−ジヒドロキシベンジル)−1,4,4a,5,6,8a−ヘキサヒドロ−6−オキソイソキノリン−2(3H)−カルボアルデヒド;
(1S)−1−(2−クロロ−4,5−ジヒドロキシベンジル)−1,4,4a,5,6,8a−ヘキサヒドロ−6−オキソイソキノリン−2(3H)−カルボアルデヒド;
1−(2−クロロ−4,5−ジヒドロキシベンジル)−1,2,3,4,4a,5−ヘキサヒドロイソキノリン−6(8aH)−オン;
(1R)−1−(2−クロロ−4,5−ジヒドロキシベンジル)−1,2,3,4,4a,5−ヘキサヒドロイソキノリン−6(8aH)−オン;
(1S)−1−(2−クロロ−4,5−ジヒドロキシベンジル)−1,2,3,4,4a,5−ヘキサヒドロイソキノリン−6(8aH)−オン;
1−(2−クロロ−4,5−ジヒドロキシベンジル)−1,2,3,4,8,8a−ヘキサヒドロイソキノリン−6(7H)−オン;
(1R)−1−(2−クロロ−4,5−ジヒドロキシベンジル)−1,2,3,4,8,8a−ヘキサヒドロイソキノリン−6(7H)−オン;
(1S)−1−(2−クロロ−4,5−ジヒドロキシベンジル)−1,2,3,4,8,8a−ヘキサヒドロイソキノリン−6(7H)−オン;
【0061】
1−(2−ブロモ−4,5−ジヒドロキシベンジル)−1,4,4a,5,6,8a−ヘキサヒドロ−6−オキソイソキノリン−2(3H)−カルボアルデヒド;
(1R)−1−(2−ブロモ−4,5−ジヒドロキシベンジル)−1,4,4a,5,6,8a−ヘキサヒドロ−6−オキソイソキノリン−2(3H)−カルボアルデヒド;
(1S)−1−(2−ブロモ−4,5−ジヒドロキシベンジル)−1,4,4a,5,6,8a−ヘキサヒドロ−6−オキソイソキノリン−2(3H)−カルボアルデヒド;
1−(2−ブロモ−4,5−ジヒドロキシベンジル)−1,2,3,4,4a,5−ヘキサヒドロイソキノリン−6(8aH)−オン;
(1R)−1−(2−ブロモ−4,5−ジヒドロキシベンジル)−1,2,3,4,4a,5−ヘキサヒドロイソキノリン−6(8aH)−オン;
(1S)−1−(2−ブロモ−4,5−ジヒドロキシベンジル)−1,2,3,4,4a,5−ヘキサヒドロイソキノリン−6(8aH)−オン;
1−(2−ブロモ−4,5−ジヒドロキシベンジル)−1,2,3,4,8,8a−ヘキサヒドロイソキノリン−6(7H)−オン;
(1R)−1−(2−ブロモ−4,5−ジヒドロキシベンジル)−1,2,3,4,8,8a−ヘキサヒドロイソキノリン−6(7H)−オン;および
(1S)−1−(2−ブロモ−4,5−ジヒドロキシベンジル)−1,2,3,4,8,8a−ヘキサヒドロイソキノリン−6(7H)−オン。
【0062】
本発明の方法により製造される特定の保護α,β−およびβ,γ−二環式ケトン化合物は、以下のものである;
4−クロロ−5−((スピロ−6,6−ジオキソラン−1,2,3,4,6,7,8,8a−オクタヒドロイソキノリン−1−イル)メチル)ベンゼン−1,2−ジオール;
4−クロロ−5−(((1S)−スピロ−6,6−ジオキソラン−1,2,3,4,6,7,8,8a−オクタヒドロイソキノリン−1−イル)メチル)ベンゼン−1,2−ジオール;
4−クロロ−5−(((1R)−スピロ−6,6−ジオキソラン−1,2,3,4,6,7,8,8a−オクタヒドロイソキノリン−1−イル)メチル)ベンゼン−1,2−ジオール;
1−(2−クロロ−4,5−ジヒドロキシベンジル)−スピロ−6,6−ジオキソラン−3,4,6,7,8,8a−ヘキサヒドロイソキノリン−2(1H)−カルボアルデヒド;
(1S)−1−(2−クロロ−4,5−ジヒドロキシベンジル)−スピロ−6,6−ジオキソラン−3,4,6,7,8,8a−ヘキサヒドロイソキノリン−2(1H)−カルボアルデヒド;
(1R)−1−(2−クロロ−4,5−ジヒドロキシベンジル)−スピロ−6,6−ジオキソラン−3,4,6,7,8,8a−ヘキサヒドロイソキノリン−2(1H)−カルボアルデヒド;
1−(2−クロロ−4,5−ジヒドロキシベンジル)−スピロ−6,6−ジオキソラン−3,4,5,6,7.8−ヘキサヒドロイソキノリン−2(1H)−カルボアルデヒド;
(S)−1−(2−クロロ−4,5−ジヒドロキシベンジル)−スピロ−6,6−ジオキソラン−3,4,5,6,7,8−ヘキサヒドロイソキノリン−2(1H)−カルボアルデヒド;
【0063】
(R)−1−(2−クロロ−4,5−ジヒドロキシベンジル)−スピロ−6,6−ジオキソラン−3,4,5,6,7,8−ヘキサヒドロイソキノリン−2(1H)−カルボアルデヒド;
4−クロロ−5−((スピロ−6,6−ジオキソラン−1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロイソキノリン−1−イル)メチル)ベンゼン−1,2−ジオール;
(S)−4−クロロ−5−((スピロ−6,6−ジオキソラン−1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロイソキノリン−1−イル)メチル)ベンゼン−1,2−ジオール;
(R)−4−クロロ−5−((スピロ−6,6−ジオキソラン−1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロイソキノリン−1−イル)メチル)ベンゼン−1,2−ジオール;
4−クロロ−5−((スピロ−6,6−ジオキソラン−1,2,3,4,4a,5,6,8a−オクタヒドロイソキノリン−1−イル)メチル)ベンゼン−1,2−ジオール;
4−クロロ−5−(((1S)−スピロ−6,6−ジオキソラン−1,2,3,4,4a,5,6,8a−オクタヒドロイソキノリン−1−イル)メチル)ベンゼン−1,2−ジオール;
4−クロロ−5−(((1R)−スピロ−6,6−ジオキソラン−1,2,3,4,4a,5,6,8a−オクタヒドロイソキノリン−1−イル)メチル)ベンゼン−1,2−ジオール;
1−(2−クロロ−4,5−ジヒドロキシベンジル)−スピロ−6,6−ジオキソラン−1,4,4a,5,6,8a−ヘキサヒドロイソキノリン−2(3H)−カルボアルデヒド;
(1S)−1−(2−クロロ−4,5−ジヒドロキシベンジル)−スピロ−6,6−ジオキソラン−1,4,4a,5,6,8a−ヘキサヒドロイソキノリン−2(3H)−カルボアルデヒド;および
(1R)−1−(2−クロロ−4,5−ジヒドロキシベンジル)−スピロ−6,6−ジオキソラン−1,4,4a,5,6,8a−ヘキサヒドロイソキノリン−2(3H)−カルボアルデヒド。
【0064】
本発明の方法により形成される特に好ましい保護α,β-二環式ケトン化合物は、以下のものである。
【化23】

1−(2−ブロモ−5−ヒドロキシ−4−メトキシベンジル)−スピロ−6,6−ジオキソラン−3,4,6,7,8,8a−ヘキサヒドロイソキノリン−2(1H)−カルボアルデヒド;
【0065】
【化24】

4−ブロモ−5−((スピロ−6,6−ジオキソラン−1,2,3,4,6,7,8,8a−オクタヒドロイソキノリン−1−イル)メチル)−2−メトキシフェノール;
【0066】
【化25】

4−ブロモ−5−((スピロ−6,6−ジオキソラン−1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロイソキノリン−1−イル)メチル)−2−メトキシフェノール;
【0067】
【化26】

4−ブロモ−5−((スピロ−6,6−ジオキソラン−1,2,3,4,4a,5,6,8a−オクタヒドロイソキノリン−1−イル)メチル)−2−メトキシフェノール;および
【0068】
【化27】

1−(2−ブロモ−5−ヒドロキシ−4−メトキシベンジル)−スピロ−6,6−ジオキソラン−1,4,4a,5,6,8a−ヘキサヒドロイソキノリン−2(3H)−カルボアルデヒド。
【0069】
1. α,β−二環式ケトン化合物の保護
一般的に、保護β,γ−二環式ケトン化合物を形成させるために、α,β−二環式ケトン化合物を、有機媒体中で保護化合物と反応させる。典型的には、この保護反応は、保護酸触媒の存在下で実施する。保護化合物はジオールまたはジチオールを含み、それは、ケトンと反応して、R63、R64およびそれらが結合している炭素を含むケタールを形成する。ある好ましい実施態様では、ケトン保護化合物はジオールである。例えば、ケトン保護化合物は、1,2−エタンジオール、1,2−エタンジチオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジチオール、1,3−プロパンジチオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,4−ジメチル−2,4−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、1,2−デカンジオール、1,2−ドデカンジオール、cis−1,2−シクロペンタンジオール、trans−1,2−シクロペンタンジオール、cis−1,2−シクロオクタンジオール、trans−1,2−シクロオクタンジオール、(+)−ピナンジオール、(−)−ピナンジオールおよびカテコール;エナンチオマーおよびこれらの組合せからなる群から選択され得る。
【0070】
α,β−二環式ケトン化合物の保護は、有機媒体中で実施する。好ましくは、有機溶媒は、クロロホルム、ジクロロメタン、トルエン、クロロベンゼン、キシレン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、当該ケトン保護化合物およびそれらの組合せからなる群から選択される。より好ましくは、有機媒体は、当該ケトン保護化合物を含む。
【0071】
保護酸触媒は、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、硫酸、リン酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、シュウ酸、三フッ化ホウ素およびこれらの組合せからなる群から選択され得るが、これらに限定されない。いくつかの場合では、マグネシウムトリフレートまたはリチウムヘキサフルオロホスフェートなどのリチウムまたはマグネシウム塩を使用し得る。
【0072】
α,β−二環式ケトン化合物を保護する工程の反応温度は、典型的には約0℃ないし約50℃、好ましくは約10℃ないし約30℃、例えば約20℃である。
α,β−二環式ケトン保護工程の期間は、一般的に約30分間ないし約3時間、好ましくは約1時間である。
【0073】
ある実施態様では、式23または28により表される保護β,γ−二環式ケトン生成物を形成させる反応を、アルカリ性水性溶液を添加して保護酸触媒を中和することによりクエンチする。アルカリ性水性溶液は、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素ナトリウムおよびリン酸水素カリウムおよびそれらの組合せからなる群から選択される。
【0074】
保護β,γ−二環式ケトン生成物は、抽出により反応混合物から単離し得る。例えば、保護β,γ−二環式ケトン生成物を含有するクエンチした反応混合物は、有機溶媒を使用して抽出できる。好ましくは、有機溶媒は、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジエチルエーテル、酢酸エチルおよびこれらの組合せからなる群から選択される。より好ましくは、有機溶媒は、クロロホルムを含む。クエンチした反応混合物の抽出を複数回実施し、保護β,γ−二環式ケトン生成物の回収を最大化できる。
【0075】
さらに、抽出して合わせた有機層を洗浄できる。例えば、抽出して合わせた有機層を、水性溶液で洗浄できる。好ましくは、水性溶液は水である。有機層を複数回洗浄し、水に溶解できる化合物(例えば、中和した保護酸、クエンチする水性塩基など)の除去を最大化する。
【0076】
最後に、洗浄して合わせた有機層を、無水塩、モレキュラー・シーブまたは水の共沸的除去を用いる処理により乾燥することができる。脱水後、いかなる揮発性物質も、蒸留し、続いて真空乾燥することにより、合わせた有機層から除去できる。
【0077】
代替的実施態様では、下記の通りに脱保護酸を用いて保護β,γ−二環式ケトン化合物を加水分解し、脱保護β,γ−二環式ケトン化合物を形成する前に、保護β,γ−二環式ケトン化合物を乾燥しない。
【0078】
2. 保護β,γ−二環式ケトン化合物の加水分解
β,γ−二環式ケトン化合物を産生させるために、式23または28の構造を有する保護β,γ−二環式ケトン化合物を、脱保護酸を使用して注意深く加水分解し、対応する式20または25の構造を有する脱保護β,γ−二環式ケトン化合物を形成させる。
【0079】
ある好ましい実施態様では、保護β,γ−二環式ケトン化合物が式28に対応し、脱保護β,γ−二環式ケトン化合物が式25に対応するとき、R25およびR26は水素であり、R27およびR28は、独立して水素および置換ベンジルであり、Xは−N(R17)−であり、R63およびR64は、それらが結合している炭素と一体となって、5員または6員環のケタールを構成しており、nは1である。より好ましい実施態様では、保護および脱保護β,γ−二環式ケトン化合物について、R25およびR26は水素であり、R27およびR28は独立して水素および2−ブロモ−5−ヒドロキシ−4−メトキシベンジルであり、Xは−N(R17)−であり、R17はホルミル(即ち、−C(O)H)であり、R63およびR64は、それらが結合している炭素と一体となって5員環(エチレン)ケタールを形成しており、nは1である。
【0080】
保護β,γ−二環式ケトンの加水分解は、水性、酸性の脱保護媒体中で保護β,γ−二環式ケトンを反応させることにより実施する。多数の脱保護酸を使用して保護β,γ−二環式ケトンの加水分解を実施できる。好ましくは、脱保護酸は、酢酸、シュウ酸、ギ酸、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、臭化水素酸、トリフルオロ酢酸およびこれらの組合せからなる群から選択される。目下好ましい実施態様では、脱保護酸はギ酸を含む。好ましくは、保護β,γ−二環式ケトンの加水分解は、少なくとも約7より低いpHで実施する。より好ましくは、保護β,γ−二環式ケトン化合物の加水分解は、約3ないし約6のpHで実施する。
【0081】
加水分解反応の温度は、適当には、約0℃ないし約50℃である。好ましくは、加水分解反応の温度は、約10℃ないし約30℃、より好ましくは約20℃である。
保護β,γ−二環式ケトン化合物は、一般的に、脱保護酸と約30分間ないし約3時間、好ましくは約1時間接触させる。
【0082】
ある実施態様では、加水分解反応のβ,γ−二環式ケトン生成物は、当分野で知られている抽出技法により得られる。例えば、加水分解反応混合物を水で希釈し、次いで、有機溶媒を使用してβ,γ−二環式ケトン生成物を加水分解反応混合物から抽出する。好ましくは、有機溶媒は、クロロホルム、トルエン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロエタン、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、酢酸エチルおよびこれらの組合せからなる群から選択される。より好ましくは、有機溶媒はクロロホルムを含む。β,γ−二環式ケトン生成物の抽出を複数回実施し、β,γ−二環式ケトン生成物の回収を最大化できる。
【0083】
さらに、合わせた有機層を洗浄し、水溶性成分を除去できる。例えば、合わせた有機層の洗浄方法は、合わせた有機層を酸性水性溶液で洗浄することを含む。好ましくは、酸性水性溶液は、酢酸、ギ酸、塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸、メタンスルホン酸およびこれらの組合せからなる群から選択される。より好ましくは、水性溶液はギ酸を含む。場合により、酸性緩衝溶液を使用し得る。水溶性化合物の除去を最大化するために、合わせた有機層を洗浄する方法を複数回実施できる。
【0084】
洗浄して合わせた有機層を、当分野で知られている技法により乾燥できる。例えば、洗浄して合わせた有機層を、いかなる揮発性溶媒も通常は蒸留により除去した後、真空下で乾燥する。
【0085】
Grewe 環化と異性化の統合
本発明の他の態様は、Grewe 工程で再利用および変換するために、β,γ−二環式ケトンの Grewe 環化を、α,β−二環式ケトン副生成物の出発物質のβ,γ−二環式ケトン化合物への変換と、統合することを対象とする。
【0086】
β,γ−二環式ケトンの Grewe 環化は、典型的には、上記および Rice により米国特許第4,368,326で開示された通り、望まれないα,β−二環式ケトン副生成物の形成をもたらす。過去には、このα,β−二環式ケトン副生成物は、典型的には、所望のノルジヒドロテバイノン生成物から分離され、廃棄された。本発明の方法のある実施態様では、α,β−二環式ケトン副生成物を、対応する出発物質のβ,γ−二環式ケトン化合物に変換し、Grewe 環化工程に再利用できる。α,β−からβ,γ−二環式ケトンへの相互変換を Grewe 環化反応と統合することにより、ノルジヒドロテバイノンおよびその類似体の合成の総合的収率を改善し得る。
【0087】
本発明の好ましい実施態様では、環化添加物を組み込む改善された Grewe 環化工程を、α,β−からβ,γ−二環式ケトン化合物への変換と統合する。目下好ましい実施態様では、Grewe 環化反応は、酸無水物の存在下で行う。Grewe 環化の反応条件は、上記の通りである。改良された高反応収率の Grewe 環化工程およびα,β−からβ,γ−二環式ケトンへの変換方法の使用と、それを Grewe 工程に再利用することの組合せは、ノルジヒドロテバイノン生成物の総合的収率を最大化する。
【0088】
例えば、本発明の方法は、式10を有するノルジヒドロテバイノンまたはその類似体の製造を対象とし、その方法は、Grewe 反応領域でノルジヒドロテバイノン生成物およびα,β−二環式ケトン副生成物(式30または31)を形成させるために、式11の構造を有するβ,γ−二環式ケトン化合物の酸に触媒される環化を含む。異性化反応領域では、Grewe 変換のα,β−二環式ケトン副生成物をケトン保護化合物と反応させて保護β,γ−二環式ケトン化合物(式32)および保護β,γ−二環式ケトン化合物を形成し、加水分解して式11のβ,γ−二環式ケトン化合物を形成させる。式10、11、30、31および32に相当する化合物の好ましい実施態様は、上記のものである。
【0089】
上記の通り、環化反応媒体をクエンチし、有機溶媒で抽出し、かくして、ノルジヒドロテバイノン生成物、α,β−二環式ケトン副生成物および未反応のβ,γ−二環式ケトン出発物質を含有する抽出された有機層を産生させる。Grewe 環化工程由来の合わせた有機層を、塩基性水性溶液で洗浄する。有機層の洗浄の結果、ノルジヒドロテバイノン生成物が有機層に残り、一方、式21、22、26、27、30、30A、31および31Aで表されるα,β−二環式ケトン副生成物および式11、20および25で表される未反応のβ,γ−二環式ケトン出発物質は、塩基性水性溶液に移動する。
【0090】
所望のノルジヒドロテバイノン生成物を単離するための固有の条件は、β,γ−二環式ケトン出発物質および生成物の特定の置換パターンに固有であり得るが、当業者は本明細書で詳述した一般的操作を改変する方法を知っているであろう。一般的に、塩基性水性溶液のpHを、約11ないし約13に調節する。塩基性水性溶液は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、リン酸ナトリウムおよびこれらの組合せからなる群から選択できる。より好ましくは、塩基性水性溶液は、リン酸ナトリウムを含む。好ましくは、有機層を塩基性水性溶液で複数回洗浄し、所望のノルジヒドロテバイノン生成物のα,β−二環式ケトン副生成物および未反応のβ,γ−二環式ケトン出発物質からの分離を最大化する。
【0091】
塩基性水性溶液で洗浄した有機層は、酸性水性溶液で洗浄することにより中和できる。酸性水性溶液は、酢酸、ギ酸、塩酸、硫酸、臭化水素酸、リン酸およびこれらの組合せからなる群から選択できる。より好ましくは、酸性水性溶液は、ギ酸を含む。好ましくは、有機層を酸性水性溶液で複数回洗浄する。
【0092】
さらに、(例えば、塩基性水性溶液で、酸性水性溶液で、または両方で)洗浄した後の有機層を濾過し、余分な固体物質を除去できる。例えば、合わせた有機層を、粉末を通して濾過する。好ましくは、濾過粉末は、炭酸カリウム、硫酸カリウム、セライト、砂、アルミナおよびこれらの組合せからなる群から選択される。より好ましくは、濾過粉末は硫酸カリウムを含む。
【0093】
次いで、洗浄および濾過した有機層を、当分野で知られている技法により乾燥し、固体のノルジヒドロテバイノン生成物を得ることができる。例えば、洗浄および濾過した有機層の揮発性成分を蒸留または減圧蒸留により除去し、残っている固体を真空下で乾燥し得る。
【0094】
塩基性水性溶液を最初に酸性化し、有機溶媒を添加することにより、α,β−二環式ケトン副生成物および未反応のβ,γ−二環式ケトン出発物質を、合わせた塩基性水性溶液層から回収できる。
【0095】
塩基性水性溶液を酸性化した後、α,β−二環式ケトン副生成物および未反応のβ,γ−二環式ケトン出発物質が有機層中に存在し、これを分離する。有機層のいかなる揮発性成分も、蒸留により除去し、残っている固体を場合により真空下で乾燥する。好ましくは、酸性化する酸は、酢酸、ギ酸、塩酸、硫酸、リン酸およびこれらの組合せからなる群から選択される。一般に、溶液のpHは、約1ないし5である。抽出に使用される有機溶媒は、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、トルエン、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、酢酸エチルおよびこれらの組合せからなる群から選択される。より好ましくは、有機溶媒はクロロホルムを含む。酸性化して合わせた塩基性水性層の有機溶媒を使用する抽出を複数回実施して、α,β−二環式ケトン副生成物および未反応のβ,γ−二環式ケトン出発物質の回収を最大化できる。
【0096】
単離および回収されたα,β−二環式ケトン副生成物および未反応のβ,γ−二環式ケトン出発物質を有機溶媒中に含有する溶液は、上記の通り、保護酸触媒の存在下でケトン保護化合物と反応させることができる。一度保護および加水分解反応を実施したら、得られる生成物溶液を上記の通りに後処理できる。加水分解反応混合物の後処理で得られるβ,γ−二環式ケトン出発物質の有機溶液を、Grewe 反応領域に再利用し、さらなるノルジヒドロテバイノン生成物を産生できる。
【0097】
定義
本明細書で使用されるとき、用語「アルキル」は、好ましくは主鎖に1個ないし8個の炭素原子を含有し、20個までの炭素原子を含有する低級アルキルである基を示す。それらは、直鎖または分枝鎖または環状であり得、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ヘキシルなどを含む。
【0098】
本明細書で使用されるとき、用語「アルケニル」は、好ましくは主鎖に2個ないし8個の炭素原子を含有し、20個までの炭素原子を含有する低級アルケニルである基を示す。それらは、直鎖または分枝鎖または環状であり得、エテニル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、イソブテニル、ヘキセニルなどを含む。
【0099】
本明細書で使用されるとき、用語「アルキニル」は、好ましくは主鎖に2個ないし8個の炭素原子を含有し、20個までの炭素原子を含有する低級アルキニルである基を示す。それらは、直鎖または分枝鎖であり得、エチニル、プロピニル、ブチニル、イソブチニル、ヘキシニルなどを含む。
【0100】
用語「芳香族性」は、単独で、または他の基の一部として本明細書で使用されるとき、置換されていることもある芳香族基または複素芳香族基を示す。これらの芳香族基は、好ましくは、6個ないし14個の原子を環部分に含有する、単環式、二環式または三環式の基である。用語「芳香族性」は、下記で定義する「アリール」および「ヘテロアリール」基を包含する。
【0101】
用語「アリール」は、単独で、または他の基の一部として本明細書で使用されるとき、置換されていることもある異項原子を含まない芳香族性基、好ましくは、フェニル、ビフェニル、ナフチル、置換フェニル、置換ビフェニルまたは置換ナフチルなどの、6個ないし12個の炭素を環部分に含有する単環式または二環式の基を示す。フェニルおよび置換フェニルがより好ましいアリールである。
【0102】
用語「ハロゲン」または「ハロ」は、単独で、または他の基の一部として本明細書で使用されるとき、塩素、臭素、フッ素およびヨウ素を表す。
用語「ヘテロ原子」は、炭素および水素以外の原子を意味する。
【0103】
用語「ヘテロシクロ」または「複素環」は、単独で、または他の基の一部として本明細書で使用されるとき、少なくとも1個のヘテロ原子を少なくとも1つの環中に有し、好ましくは各環中に5個または6個の原子を有する、置換されていることもある、完全飽和または不飽和、単環式または二環式、芳香族性または非芳香族性の基を示す。ヘテロシクロ基は、好ましくは、1個または2個の酸素原子および/または1個ないし4個の窒素原子を環中に有し、その分子の残りの部分に炭素またはヘテロ原子を介して結合している。例示的ヘテロシクロ基には、フリル、ピリジル、オキサゾリル、ピロリル、インドリル、キノリニルまたはイソキノリニルなどの複素芳香族が含まれる。例示的置換基には、以下の基の1つまたはそれ以上が含まれる:ヒドロカルビル(hydrocarbyl)、置換ヒドロカルビル、ヒドロキシ、保護ヒドロキシ、アシル、アシルオキシ、アルコキシ、アルケンオキシ、アルキンオキシ、アリールオキシ、ハロゲン、アミド、アミノ、シアノ、ケタール、アセタール、エステルおよびエーテル。
【0104】
用語「ヘテロアリール」は、単独で、または他の基の一部として本明細書で使用されるとき、少なくとも1個のヘテロ原子を少なくとも1つの環中に有し、好ましくは各環中に5個または6個の原子を有し、置換されていることもある芳香族基を示す。ヘテロアリール基は、好ましくは、環中に1個または2個の酸素原子および/または1個ないし4個の窒素原子を有し、炭素を介して分子の残りの部分に結合している。例示的ヘテロアリールには、フリル、ベンゾフリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピリミジル、ピラジニル、ピリダジニル、インドリル、イソインドリル、インドリジニル、ベンゾイミダゾリル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリル、テトラゾロピリダジニル、カルバゾリル、プリニル、キノリニル、イソキノリニル、イミダゾピリジルなどが含まれる。例示的置換基には、以下の基の1個またはそれ以上が含まれる:ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヒドロキシ、保護ヒドロキシ、アシル、アシルオキシ、アルコキシ、アルケンオキシ、アルキンオキシ、アリールオキシ、ハロゲン、アミド、アミノ、シアノ、ケタール、アセタール、エステルおよびエーテル。
【0105】
用語「炭化水素」および「ヒドロカルビル」は、本明細書で使用されるとき、炭素および水素の元素のみからなる有機化合物またはラジカルを表す。これらの部分には、アルキル、アルケニル、アルキニルおよびアリール部分が含まれる。これらの部分は、また、アルカリール(alkaryl)、アルケンアリールおよびアルキンアリールなどの、他の脂肪族または環式炭化水素基で置換されているアルキル、アルケニル、アルキニルおよびアリール部分を含む。断りのない限り、これらの部分は、好ましくは、1個ないし20個の炭素原子を含む。
【0106】
本明細書で記載される「置換ヒドロカルビル」部分は、炭素以外の少なくとも1個の原子で置換されているヒドロカルビル部分であり、炭素鎖の原子が、窒素、酸素、ケイ素、リン、ホウ素、硫黄またはハロゲン原子などのヘテロ原子で置換されている部分を含む。これらの置換基には、ハロゲン、ヘテロシクロ、アルコキシ、アルケンオキシ、アリールオキシ、ヒドロキシ、保護ヒドロキシ、アシル、アシルオキシ、ニトロ、アミノ、アミド、ニトロ、シアノ、ケタール、アセタール、エステルおよびエーテルが含まれる。
【実施例】
【0107】
実施例
以下の実施例は、本発明をさらに例示説明および説明することを明快に意図する。従って、本発明は、これらの実施例のいずれの詳細にも限定されるべきではない。
【0108】
実施例1
α,β−ヘキサヒドロイソキノリノンの保護β,γ−ヘキサヒドロイソキノリノンへの変換
【化28】

【0109】
クロロホルム溶媒中の異性体1−(2'−ブロモ−4'−メトキシ−5'−ヒドロキシベンジル)−2−ホルミル−1,3,4,7,8−ヘキサヒドロイソキノリン−6−オンおよび1−(2'−ブロモ−4'−メトキシ−5'−ヒドロキシベンジル)−2−ホルミル−1,3,4,5−ヘキサヒドロイソキノリン−6−オンの溶液を、エチレングリコール(例えば、ケトン保護化合物)に1時間かけて添加し、1−(2'−ブロモ−4'−メトキシ−5'−ヒドロキシベンジル)−2−ホルミル−6−ケタール−1,3,4,5,7,8−ヘキサヒドロイソキノリン(HPLC分析により、>90%面積/面積)の溶液を形成させた。溶液を5%NHOH(200mL)に添加して懸濁液を形成させ、それをクロロホルム(3x40mL)で抽出した。合わせた有機層を水(3x100mL)で洗浄し、乾燥するまで真空下に置き、生成物を白色固体(1.03g、80%面積/面積および70%w/w/HPLCアッセイによる)として得た。
【0110】
実施例2
保護β,γ−ヘキサヒドロイソキノリノンの脱保護β,γ−ヘキサヒドロイソキノリノンへの加水分解
【化29】

【0111】
1−(2'−ブロモ−4'−メトキシ−5'−ヒドロキシベンジル)−2−ホルミル−6−ケタール−1,3,4,5,7,8−ヘキサヒドロイソキノリン(0.97g)のサンプルを、88%酢酸10mLに溶解した。得られた溶液を室温で1時間撹拌した。溶液を1時間撹拌した後、HO50mLおよびクロロホルム40mLで溶液を希釈し、攪拌し、次いで、500mLの分液漏斗に注いだ。混合物を混合し、有機層を排出分離した。さらに40mLのクロロホルムを水層に添加した。溶液を繰り返し混合し、排出し、有機層を再度分離し、水層を分液漏斗中に残した。再度クロロホルム40mLを水層に添加した。溶液を再度振盪し、有機層を再度分離し、水層を分液漏斗中に残した。500mLの分液漏斗を使用して、有機層を1%ギ酸100mLで再度洗浄した。有機層を分離し、次いで、さらに100mLの1%ギ酸を有機層に添加し、この溶液を500mLの分液漏斗に入れた。溶液を混合し、排出し、次いで有機層を分離した。次いで、有機層をHO100mLに添加し、500mLの分液漏斗に入れた。次いで、有機層を分離し、250mLのフラスコに入れ、真空下に置いた。得られる生成物は、重量0.77gの黄色の固体であり、HPLC分析により測定して、94%面積/面積の1−(2'−ブロモ−4'−メトキシ−5'−ヒドロキシベンジル)−2−ホルミル−1,3,4,5,7,8−ヘキサヒドロイソキノリン−6−オン(例えば、β,γ−ヘキサヒドロイソキノリノン)であった。
【0112】
実施例3
Grewe 環化工程
【化30】

【0113】
98%トリフルオロメタンスルホン酸270mLおよび99%トリフルオロメタンスルホン酸無水物60mLの混合物を、2Lの丸底フラスコに添加した。混合物を還流に加熱した。蒸気温度は88℃ないし130℃に達した。溶液を5℃ないし10℃にN下で冷却した。CHCl750mLに溶解した1−(2'−ブロモ−4'−メトキシ−5'−ヒドロキシベンジル)−2−ホルミル−1,3,4,5,7,8−ヘキサヒドロイソキノリン−6−オン(例えば、β,γ−ヘキサヒドロイソキノリノン)100gの溶液を、1Lの丸底フラスコに入れ、窒素下に置いた。β,γ−ヘキサヒドロイソキノリノン溶液をトリフルオロメタンスルホン酸溶液に一定速度で30分間かけて添加し、一定に撹拌した。β,γ−ヘキサヒドロイソキノリノンの添加の間に溶液の温度を15℃より低く保つために、トリフルオロメタンスルホン酸溶液を氷浴で囲んだ。溶液を合わせることが完了した後、反応を室温に温まらせ、約12時間撹拌した。室温での撹拌に続き、反応混合物をHO600mLおよび氷300gの混合物に添加し、撹拌した。混合物を2Lの分液漏斗に入れ、混合し、排出した。生成物を含有する有機層を分離し、保持した。水層を、分液漏斗を使用して、混合および排出後、クロロホルム100mLで抽出した。有機層を合わせ、3%NaPO600mLで洗浄した。1N NaOHを使用して、各洗浄液のpHを12に調節した。次いで、有機層を分離し、上述のNaPOによる洗浄操作を使用してもう3回洗浄し、未反応のβ,γ−ヘキサヒドロイソキノリノンおよびα,β−ヘキサヒドロイソキノリノン副生成物を除去した。次いで、得られるノルジヒドロテバイノン生成物を含有する有機層を、3%HCOH600mLで、両溶液を2Lの分液漏斗に添加し、次いで混合し、排出することにより、洗浄した。次いで、有機層を分離し、KSO粉末50gのベッドを通して濾過した。次いで、KSO粉末をCHCl25mLで2回洗浄した。有機層を合わせ、真空下で乾燥させ、60℃で3時間維持し、固体96gを得た。生成物は、HPLC分析により測定して、95%面積/面積の1−ブロモ−N−ホルミルノルジヒドロテバイノンであった。
【0114】
本発明は、上記の実施態様に限定されず、多様に改変できる。上記の好ましい実施態様の説明は、他の当業者が本発明を特定の使用の要件に最適であるように多数の形態で本発明を改作および適用し得るように、他の当業者に本発明、その原理およびその実際の適用を知らせることのみを意図する。
【0115】
「含む」または「含み」または「含んでいる」という言葉の使用に関して、この明細書(特許請求の範囲を含む)全体において、文脈がそうではないことを要求しない限り、これらの言葉は、それらが排他的よりも包含的に解釈されるべきであるという基礎および明確な理解において使用され、これらの言葉の各々は、この明細書全体の解釈においてそのように解釈されると意図することが留意される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式10の構造:
【化1】

10
[式中、
Xは、酸素、硫黄、−S(O)−、−S(O)−、−C(R1819)−、−N(R17)−および−N(R17a17b)−からなる群から選択され;
、R、R、R、R18およびR19は、水素、置換および非置換アシル、アルケニル、アルコキシ、アルコキシアリール、アルキル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アルキニル、アミノ、アリール、アリールアルコキシ、カルボアルコキシ、カルボキシアルケニル、カルボキシアルキル、カルボキシル、シアノ、シアノアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルエーテル、ハロ、ハロアルコキシ、ハロアルキル、ヘテロアリール、複素環、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシルおよびニトロからなる群から独立して選択されるか、または、R18およびR19は、一体となってケトを形成しており;
17は、水素、アシル、アルケニル、アルコキシアリール、アルキル、アルキニル、アリール、カルボキシアルケニル、カルボキシアルキル、シアノアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ハロアルキル、ヘテロアリール、複素環、カルボキシル、カルボキシアミド、カルボキシエステル、ヒドロキシルおよびヒドロキシアルキルからなる群から選択され;そして、
17aおよびR17bは、水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリールおよびベンジルからなる群から独立して選択されるか、または、一体となってオキソを形成している]
を有するノルジヒドロテバイノンまたはその類似体を含むノルジヒドロテバイノン生成物の製造方法であって、
β,γ−二環式ケトン化合物、環化酸および酸無水物を含む反応混合物を形成させて、ノルジヒドロテバイノン生成物を生成させることを含み、該β,γ−二環式ケトン化合物が、式11の構造:
【化2】

11
[式中、X、R、R、R、R、R17、R18およびR19は、上記定義の通りである]
を有するものである、方法。
【請求項2】
環化酸が、無水フッ化水素、フルオロスルホン酸、過塩素酸、ペルフルオロアルキルスルホン酸、ペルフルオロエタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸およびこれらの組合せからなる群から選択される超酸または1種もしくはそれ以上のルイス酸との組合せを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
酸無水物が強酸または超酸の無水物を含み、該酸無水物が環化酸として使用する強酸または超酸に相当する、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
酸無水物および超酸が、各々トリフルオロメタンスルホン酸無水物およびトリフルオロメタンスルホン酸である、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
Xが−N(R17)−である、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
β,γ−二環式ケトン化合物が1−(2'−ブロモ−4'−メトキシ−5'−ヒドロキシベンジル)−2−ホルミル−6−オキソ−1,3,4,5,7,8−ヘキサヒドロイソキノリンであり、環化酸が超酸であり、酸無水物が該超酸に相当し、ノルジヒドロテバイノン生成物が1−ブロモ−N−ホルミルノルジヒドロテバイノンを含む、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
式10のノルジヒドロテバイノン生成物を、
【化3】


[式中、−A'−A−は、基
【化4】

を表し、
−D−D'−は、基
【化5】

を表し、
−A−D−は、基−CHCH−または−CH=CH−または=CH−CH=を表し;
Xは、酸素、硫黄、−S(O)−、−S(O)−、−C(R1819)−、−N(R17)−および−N(R17a17b)−からなる群から選択され;
およびRは、水素、置換および非置換アシル、アルケニル、アルコキシ、アルコキシアリール、アルキル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アルキニル、アミノ、アリール、アリールアルコキシ、カルボアルコキシ、カルボニル、カルボキシアルケニル、カルボキシアルキル、カルボキシル、シアノ、シアノアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルエーテル、ハロ、ハロアルコキシ、ハロアルキル、ヘテロアリール、複素環、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシルおよびニトロからなる群から独立して選択され;
は、アルコキシ、ヒドロキシルおよびアセトキシからなる群から選択され;
は、アルコキシ、ヒドロキシルおよびアセトキシからなる群から選択され;
14は、水素、ヒドロキシルおよびアセトキシからなる群から選択され;
17は、低級アルキル、アルキレンシクロアルキル、アリルアルケニル、アシル、ホルミル、ホルミルエステル、ホルムアミドおよびベンジルからなる群から選択され;
17aおよびR17bは、水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリールおよびベンジルからなる群から独立して選択され;
18およびR19は、水素、置換および非置換アシル、アルケニル、アルコキシ、アルコキシアリール、アルキル、アルキルアミノ、アリールチオ、アルキルチオ、アルキニル、アミノ、アリール、アリールアルコキシ、カルボアルコキシ、カルボキシアルケニル、カルボキシアルキル、カルボキシル、シアノ、シアノアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ハロ、ハロアルコキシ、ハロアルキル、ヘテロアリール、複素環、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシルおよびニトロからなる群から独立して選択されるか、または、R18およびR19は、一体となってケトを形成しており;そして、
61およびR62は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニルおよびアリールから独立して選択され;
但し、−A−D−が−CH=CH−であるならば、−A'−A−は−C(R)=CH−以外であり、−D−D'−は
【化6】

以外である]
の構造を有する式1の化合物に変換することをさらに含む、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
式20の構造:
【化7】

20
[式中、
21およびR22は、それらが結合している炭素と一体となって、シクロヘキセン環に縮合している5員、6員または7員の複素環式または炭素環式の環を形成している]
を有するβ,γ−二環式ケトン化合物の製造方法であって、
α,β−二環式ケトン化合物をケトン保護化合物と反応させて保護β,γ−二環式ケトン化合物を形成させること、および、保護β,γ−二環式ケトン化合物を加水分解してβ,γ−二環式ケトン化合物を産生させることを含み;
該α,β−二環式ケトン化合物は、式21または22の構造を有し、保護β,γ−二環式ケトン化合物は、式23の構造を有する:
【化8】

[式中、
21およびR22は、上記定義の通りであり;そして、
63およびR64は、アルコキシおよびアルキルチオからなる群から独立して選択されるか、または、それらが結合している炭素と一体となって、ケタール、ジチオケタールまたはモノチオケタールを形成している]
ものである、方法。
【請求項9】
β,γ−二環式ケトン化合物が、式25の構造:
【化9】

25
[式中、
Xは、酸素、硫黄、−S(O)−、−S(O)−、−C(R1819)−、−N(R17)−および−N(R17a17b)−からなる群から選択され;
25、R26、R27、R28、R18およびR19は、水素、アシル、アルケニル、アレニル、アルコキシ、アルコキシアリール、アルキル、アルキルアミノ、アリールチオ、アルキルチオ、アルキニル、アミノ、アリール、アリールアルコキシ、ベンジル、置換ベンジル、シアノ、カルボアルコキシ、カルボニル、カルボキシアルケニル、カルボキシアルキル、カルボキシル、シアノアルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ハロ、ハロアルコキシ、ハロアルキル、ヘテロアリール、複素環、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシルおよびニトロからなる群から独立して選択され;
17は、水素、アシル、アルケニル、アルコキシアリール、アルキル、アルキニル、アリール、カルボキシアルキル、カルボキシアルケニル、シアノアルキル、シクロアルキルアルキル、ハロアルキル、ヘテロアリール、複素環、カルボキシル、カルボキシアミド、カルボキシエステル、ヒドロキシルおよびヒドロキシアルキルからなる群から選択され;
17aおよびR17bは、水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリールおよびベンジルからなる群から独立して選択されるか、または、一体となってオキソを形成しており;
nは、0、1または2である]
を有するものであり、そして、
α,β−二環式ケトン化合物が式26または27の構造を有し、保護β,γ−二環式ケトン化合物が、式28の構造を有する:
【化10】

[式中、n、X、R25、R26、R27、R28、R17、R18、R19、R63およびR64は、上記定義の通りである]
ものである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
β,γ−二環式ケトン化合物が式11の構造を有し、α,β−二環式ケトン化合物が式30または31の構造を有し、保護β,γ−二環式ケトン化合物が式32の構造を有する:
【化11】

11
【化12】

[式中、
Xは、酸素、硫黄、−S(O)−、−S(O)−、−C(R1819)−、−N(R17)−および−N(R17a17b)−からなる群から選択され;
、R、R、R、R18およびR19が、水素、置換および非置換アシル、アルケニル、アルコキシ、アルコキシアリール、アルキル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アルキニル、アミノ、アリール、アリールアルコキシ、カルボアルコキシ、カルボキシアルケニル、カルボキシアルキル、カルボキシル、シアノ、シアノアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルエーテル、ハロ、ハロアルコキシ、ハロアルキル、ヘテロアリール、複素環、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシルおよびニトロからなる群から独立して選択されるか、または、R18およびR19は、一体となってケトを形成しており;
17は、水素、アシル、アルケニル、アルコキシアリール、アルキル、アルキニル、アリール、カルボキシアルケニル、カルボキシアルキル、シアノアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ハロアルキル、ヘテロアリール、複素環、カルボキシル、カルボキシアミド、カルボキシエステル、ヒドロキシルおよびヒドロキシアルキルからなる群から選択され;
17aおよびR17bは、水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリールおよびベンジルからなる群から独立して選択されるか、または、一体となってオキソを形成しており;そして、
63およびR64は、アルコキシおよびアルキルチオからなる群から独立して選択されるか、または、それらが結合している炭素と一体となって、ケタール、ジチオケタールまたはモノチオケタールを形成している]
ものである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
α,β−二環式ケトン化合物を、ケトン保護化合物と保護酸の存在下で反応させ、該保護酸が、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、硫酸、リン酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、シュウ酸、三フッ化ホウ素およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項8ないし請求項10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
ケトン保護化合物が、1,2−エタンジオール、1,2−エタンジチオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジチオール、1,3−プロパンジチオール、2−メルカプトエタノール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,4−ジメチル−2,4−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、1,2−デカンジオール、1,2−ドデカンジオール、cis−1,2−シクロペンタンジオール、trans−1,2−シクロペンタンジオール、cis−1,2−シクロオクタンジオール、trans−1,2−シクロオクタンジオール、(+)−ピナンジオール、(−)−ピナンジオール、カテコール、1,2−ジヒドロキシベンゼンおよびエナンチオマーおよびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項8ないし請求項10のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
保護β,γ−二環式ケトンの加水分解が、保護β,γ−二環式ケトンを脱保護酸と接触させることにより実施され、脱保護酸が、酢酸、シュウ酸、ギ酸、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、臭化水素酸、トリフルオロ酢酸およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項8ないし請求項12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
Xが−N(R17)−であり、R17がアシルである、請求項8ないし請求項13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
α,β−二環式ケトン化合物が、1−(2'−ブロモ−4'−メトキシ−5'−ヒドロキシベンジル)−2−ホルミル−1,3,4,7,8−ヘキサヒドロイソキノリン−6−オンおよび1−(2'−ブロモ−4'−メトキシ−5'−ヒドロキシベンジル)−2−ホルミル−1,3,4,5−ヘキサヒドロイソキノリン−6−オンから選択され、そして、保護β,γ−二環式ケトン化合物が、1−(2'−ブロモ−4'−メトキシ−5'−ヒドロキシベンジル)−2−ホルミル−6−ケタール−1,3,4,5,7,8−ヘキサヒドロイソキノリンである、請求項8ないし請求項14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
該α,β−二環式ケトン化合物が、β,γ−二環式ケトンを環化酸と接触させることにより形成される、請求項8ないし請求項15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
式10の構造:
【化13】

10
[式中、
Xは、酸素、硫黄、−S(O)−、−S(O)−、−C(R1819)−、−N(R17)−および−N(R17a17b)−からなる群から選択され;
、R、R、R、R18およびR19は、水素、置換および非置換アシル、アルケニル、アルコキシ、アルコキシアリール、アルキル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アルキニル、アミノ、アリール、アリールアルコキシ、カルボアルコキシ、カルボキシアルケニル、カルボキシアルキル、カルボキシル、シアノ、シアノアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルエーテル、ハロ、ハロアルコキシ、ハロアルキル、ヘテロアリール、複素環、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシルおよびニトロからなる群から独立して選択されるか、または、R18およびR19は、一体となってケトを形成しており;
17は、水素、アシル、アルケニル、アルコキシアリール、アルキル、アルキニル、アリール、カルボキシアルケニル、カルボキシアルキル、シアノアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ハロアルキル、ヘテロアリール、複素環、カルボキシル、カルボキシアミド、カルボキシエステル、ヒドロキシルおよびヒドロキシアルキルからなる群から選択され;そして、
17aおよびR17bは、水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリールおよびベンジルからなる群から独立して選択されるか、または、一体となってオキソを形成している]
を有するノルジヒドロテバイノンまたはその類似体を含むノルジヒドロテバイノン生成物の製造方法であって、
Grewe 反応領域においてβ,γ−二環式ケトン化合物および環化酸を含む反応混合物を形成させ、ノルジヒドロテバイノン生成物およびα,β−二環式ケトン化合物副生成物を含む Grewe 生成物混合物を産生させること、該β,γ−二環式ケトン化合物は、式11の構造:
【化14】

11
[式中、X、R、R、R、R、R17、R18およびR19は、上記定義の通りである]
を有するものである;
Grewe 反応生成混合物中に得られるα,β−二環式ケトン化合物副生成物を、ケトン保護化合物と、異性化反応領域において反応させ、保護β,γ−二環式ケトン化合物を形成させること、ここで、α,β−二環式ケトン化合物副生成物は式30または31の構造を有し、保護β,γ−二環式ケトン化合物は、式32の構造を有する:
【化15】

[式中、
63およびR64は、アルコキシおよびアルキルチオからなる群から独立して選択されるか、または、それらが結合している炭素と一体となって、ケタール、ジチオケタールまたはモノチオケタールを形成しており;そして、
X、R、R、R、R、R17、R18およびR19は、上記定義の通りである]
ものである;および、
保護β,γ−二環式ケトン化合物を加水分解し、式11のβ,γ−二環式ケトン化合物を形成させること、
を含む、方法。
【請求項18】
保護β,γ−二環式ケトン化合物を加水分解することにより形成されるβ,γ−二環式ケトン化合物を、Grewe 反応領域に導入することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ケトン保護化合物が、1,2−エタンジオール、1,2−エタンジチオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジチオール、1,3−プロパンジチオール、2−メルカプトエタノール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,4−ジメチル−2,4−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、1,2−デカンジオール、1,2−ドデカンジオール、cis−1,2−シクロペンタンジオール、trans−1,2−シクロペンタンジオール、cis−1,2−シクロオクタンジオール、trans−1,2−シクロオクタンジオール、(+)−ピナンジオール、(−)−ピナンジオール、カテコール並びにこれらのエナンチオマーおよび組合せからなる群から選択される、請求項17または請求項18に記載の方法。
【請求項20】
β,γ−二環式ケトン化合物のノルジヒドロテバイノン生成物への環化反応を、環化酸および酸無水物の存在下で実施する、請求項17ないし請求項19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
環化酸が、強酸、超酸およびこれらの組合せからなる群から選択され、酸無水物が、環化酸として使用される強酸または超酸に対応するものである、請求項17ないし請求項20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
α,β−二環式ケトン化合物が、1−(2'−ブロモ−4'−メトキシ−5'−ヒドロキシベンジル)−2−ホルミル−1,3,4,7,8−ヘキサヒドロイソキノリン−6−オンおよび1−(2'−ブロモ−4'−メトキシ−5'−ヒドロキシベンジル)−2−ホルミル−1,3,4,5−ヘキサヒドロイソキノリン−6−オンから選択され、ノルジヒドロテバイノン生成物が1−ブロモ−N−ホルミルノルジヒドロテバイノンまたはその類似体を含む、請求項17ないし請求項21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
式10のノルジヒドロテバイノン生成物を、構造:
【化16】


[式中、−A'−A−は、基
【化17】

を表し、
−D−D'−は、基
【化18】

を表し、
−A−D−は、基−CHCH−または−CH=CH−または=CH−CH=を表し;
Xは、酸素、硫黄、−S(O)−、−S(O)−、−C(R1819)−、−N(R17)−および−N(R17a17b)−からなる群から選択され;
およびRは、水素、置換および非置換アシル、アルケニル、アルコキシ、アルコキシアリール、アルキル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アルキニル、アミノ、アリール、アリールアルコキシ、カルボアルコキシ、カルボニル、カルボキシアルケニル、カルボキシアルキル、カルボキシル、シアノ、シアノアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルエーテル、ハロ、ハロアルコキシ、ハロアルキル、ヘテロアリール、複素環、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシルおよびニトロからなる群から独立して選択され;
は、アルコキシ、ヒドロキシルおよびアセトキシからなる群から選択され;
は、アルコキシ、ヒドロキシルおよびアセトキシからなる群から選択され;
14は、水素、ヒドロキシルおよびアセトキシからなる群から選択され;
17は、低級アルキル、アルキレンシクロアルキル、アリルアルケニル、アシル、ホルミル、ホルミルエステル、ホルムアミドおよびベンジルからなる群から選択され;
17aおよびR17bは、水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリールおよびベンジルからなる群から独立して選択され;
18およびR19は、水素、置換および非置換アシル、アルケニル、アルコキシ、アルコキシアリール、アルキル、アルキルアミノ、アリールチオ、アルキルチオ、アルキニル、アミノ、アリール、アリールアルコキシ、カルボアルコキシ、カルボキシアルケニル、カルボキシアルキル、カルボキシル、シアノ、シアノアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ハロ、ハロアルコキシ、ハロアルキル、ヘテロアリール、複素環、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシルおよびニトロからなる群から独立して選択されるか、または、R18およびR19は、一体となってケトを形成しており;そして、
61およびR62は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニルおよびアリールから独立して選択され;
但し、−A−D−が−CH=CH−であるならば、−A'−A−は−C(R)=CH−以外であり、−D−D'−は
【化19】

以外である]
を有する式1の化合物に変換することをさらに含む、請求項17ないし請求項22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
式32A
【化20】

32A
[式中、
17は、低級アルキル、アルキレンシクロアルキル、アリルアルケニル、アシル、ホルミル、ホルミルエステル、ホルムアミドおよびベンジルからなる群から選択され;
33およびR34は、ヒドロキシルおよびアルコキシからなる群から独立して選択され;
63およびR64は、アルコキシおよびアルキルチオからなる群から独立して選択されるか、または、それらが結合している炭素と一体となって、ケタール、ジチオケタールまたはモノチオケタールを形成しており;そして、
Yはハロである]
の化合物。
【請求項25】
34がヒドロキシルである、請求項24に記載の化合物。
【請求項26】
33がメトキシである、請求項24または請求項25に記載の化合物。
【請求項27】
Yがブロモである、請求項24ないし請求項26のいずれかに記載の化合物。
【請求項28】
17が水素である、請求項24ないし請求項27のいずれかに記載の化合物。
【請求項29】
63およびR64が、それらが結合している炭素と一体となってケタールを形成している、請求項24ないし請求項28のいずれかに記載の化合物。

【公表番号】特表2008−533008(P2008−533008A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−500735(P2008−500735)
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際出願番号】PCT/US2006/006285
【国際公開番号】WO2006/098855
【国際公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(595181003)マリンクロッド・インコーポレイテッド (203)
【氏名又は名称原語表記】Mallinckrodt INC.
【Fターム(参考)】