説明

モーターサイクルの付属品、特に風防の固定装置

【課題】モーターサイクルからの付属品、特に風防の偶発的な離脱を阻止する。
【解決手段】モーターサイクルの付属品、特に風防用の固定器具10は、ハンドルバー16に締結可能なスリーブ要素18内に挿入できるシャフト12を有する。シャフトの一部分が、スリーブ要素内に挿入可能であり且つ可逆式接合手段30によってスリーブ要素内に嵌まり込む拡張位置とスリーブ要素から引き抜き可能な休止位置との間で作動可能な弾性スペーサ要素20を含む。シャフトには軸方向ロック要素34が固定され、これは可逆式接合手段が弛んだ場合でもシャフトがスリーブ要素内に軸方向に保持されるようにすると共にシャフトの軸線回りの所定角度に従うその回転後にのみシャフトをスリーブ要素から引っ込めることができるように対応の軸方向ロック要素38と嵌合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モーターサイクルの付属品を固定する器具、特に風防用固定器具に関する。現時点において、モーターサイクルという一般的カテゴリに属する車両に関してモデルの相当な多様化が提案され、これらのうちで、簡便性という観点によりモーターサイクルの特色と四輪車の安定性を組み合わせた「ハイブリッド」車が見受けられている。かかる「ハイブリッド」車は、モーターバイクとして駆動可能である(即ち、カーブを曲がる際に側方に傾いた状態になる)一方で、四輪車の通常の安定性を提供する2つのフロント操舵輪(操舵前輪)を備えた三輪車によって表される。したがって、以下の説明において、「モーターサイクル」という用語は、伝統的な二輪車と上述の「ハイブリッド」車の両方を意味している。
【背景技術】
【0002】
付属品、例えば風防をモーターサイクルのボード上に位置決めするために種々の形式の固定器具が用いられている。公知形式のこれら固定器具は、通常、一方の側がモーターサイクルの一部分、例えばハンドルバーに植込みボルト又は他のボルトにより関連づけられると共に他方の側がこれ又ボルトにより拘束可能なスリーブ要素によって風防に関連付けられる円錐形のカップリングから成っている。また、風防以外の付属品、例えば荷物レール、バックミラーその他の組み立ての場合、1本又は複数本のボルトによって関連付け可能な複数個の構成部品から成る固定器具が用いられている。
【0003】
これら固定器具は、厳密に言えば適正な作動を得るうえで必要ではなく、又は、いずれの場合においても、モーターサイクルそれ自体に対する保守作業を実施するために取り外し可能でなければならないモーターサイクル付属品に取り付けられる場合が多いので、関連の固定器具に対して操作を行うことによりかかる付属品を取り外す可能性が保証されなければならない。その結果、固定器具は、一般に、可逆式接合手段、例えばナット、レバーその他を備えており、かかる可逆式接合手段により、付属品をモーターサイクルから容易に取り外したりこれを必要に応じてモーターサイクルに取り付けて再び戻したりすることが可能である。所要の締め付けトルクが上述の可逆式接合手段に加えられない場合、付属品は、モーターサイクルから偶発的に離脱する場合があり、これは、安全性の面で明らかに問題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の目的は、モーターサイクルの付属品、特に風防用の固定器具であって、固定器具に弛みが生じた場合でもモーターサイクルからの付属品の偶発的な離脱を阻止することができる固定器具を提供することにある。
【0005】
本発明の別の目的は、モーターサイクルにおける付属品用の固定器具であって、モーターサイクルに対する固定器具の美的インパクトを最小限に抑えることができる固定器具を提供することにある。
【0006】
本発明の更に別の目的は、モーターサイクルにおける付属品用の固定器具であって、その組み立て作業が先行技術の固定器具について行う場合と同じほど単純且つ迅速である固定器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のこれら目的は、請求項1に記載されているモーターサイクルにおける付属品を固定する器具であって、特に風防用固定器具を提供することにより達成される。
【0008】
本発明の別の特徴は、本明細書の一体部分である特許請求の範囲の従属形式の請求項に記載されている。
【0009】
本発明によるモーターサイクルの付属品を固定する器具、特に風防用の固定器具の特徴及び利点は、添付の図面を参照して非限定的な例により行われる以下の詳細な説明から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】風防を支持するためのモーターサイクルのハンドルバーに取り付けられる本発明に従って構成された一対の固定器具の斜視図である。
【図2】本発明の固定器具の幾つかのコンポーネントの分解組立て図である。
【図3】図2に示されている固定器具のコンポーネントの組み立て状態であるが非作動形態の切除図である。
【図4】本発明に従って構成された一対の固定器具の斜視図であり、モーターサイクルのハンドルバーへの取り付け方を示す図である。
【図5】図4の細部の詳細図である。
【図6】図4の細部の別の詳細図であり、固定器具が組み立て且つ作動形態にある状態を示す図である。
【図7】図4に示されている固定器具の各々のコンポーネントの組み立て且つ作動形態の切除図である。
【図8】本発明に従って構成された一対の固定器具の斜視図であり、モーターサイクルのハンドルバーからのその取り外しステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図を参照すると、全体が参照符号10で示された本発明のモーターサイクルにおける付属品を固定する器具が示されている。特に、図1に示されているように、固定器具10は、風防14用のシャフト12のうちの1本をモーターサイクルの固定部品、例えばハンドルバー16に対してロックするのに適しているのが良い。
【0012】
少なくとも1つの管状要素又はスリーブ18が、例えば、溶接によりハンドルバー16に安定的に取り付けられている。シャフト12の自由端部、即ち、風防14が取り付けられていない端部が、少なくとも1つの弾性スペーサ要素20の介在によりスリーブ18内に挿入可能である。
【0013】
より詳細に説明すると、図示の例示の実施形態に基づくと、弾性スペーサ要素20はスリーブとしても作られ、これは、その第1の端部(シャフト12の自由端部に向いた端部)が、六角形の頭を備えたねじ22と、関連の弾性ワッシャ24とから成る締結要素により軸方向に摺動しないようになっている。ねじ22は、シャフト12の自由端部に軸方向に設けられたねじ山付き止まり穴26内に挿入されるよう形作られている。
【0014】
したがって、弾性スペーサ要素20は、シャフト12の自由端部に向いた端部とは反対側の端部が切頭円錐形ワッシャ28と接触状態に配置され、この切頭円錐形ワッシャは、スラスト手段として働く。雌ねじを備えたスリーブとして形作られている専用ナット30が、切頭円錐形ワッシャ28を動かしてこれを弾性スペーサ要素20に当接させるためのシャフト12のねじ山付き部分32と噛み合っており、かくして、以下に良好に規定されるようにハンドルバー16のスリーブ18に対するシャフト12の固定を可能にする可逆式接合手段を形成している。
【0015】
本発明によれば、少なくとも1つの軸方向ロック要素34が、シャフト12に一体に取り付けられ、かかる軸方向ロック要素は、好ましくは、少なくとも1つの平坦な溝付き部分36を備えた円筒形ブッシュとして作られ、この軸方向ロック要素は、例えばスリーブ18(図7)に形成された専用切欠き40内への挿入によりハンドルバー16のスリーブ18に取り付けられた好ましくは金属クリップばねとして構成された対応の軸方向ロック要素38と嵌合する。このように、スリーブ18中へのシャフト12の軸方向における保持は、ナット30及び弾性スペーサ要素20が弛んだ場合でも保証され、他方、かかるスリーブ18からのかかるシャフト12の取り出しは、かかるシャフト12の軸線回りの所定角度に従うその回転後にのみ可能である。
【0016】
より詳細に説明すると、本発明の固定器具10は、次のように作動可能である。例えば図3に示されている器具10の休止位置では、ナット30は、切頭円錐形ワッシャ28のテーパ付き部分を弾性スペーサ要素20に押しつけないようシャフト12のねじ山付き部分32の周りに位置決めされ、弾性スペーサ要素は、従って、休止状態にある。注目されるべきこととして、弾性スペーサ要素20並びに切頭円錐形ワッシャ28のテーパ付き部分及び円筒形ブッシュ34は、管状要素又はスリーブ18の内側周長よりも短い外側周長を備える。このようにかかるコンポーネントは、器具10の上述の休止位置において、管状要素18内に自由に挿入可能であったりこれから自由に取り外し可能であったりする。
【0017】
付属品14を取り付けるため、シャフト12の自由端部をこれに関連付けられたコンポーネントと共に上述の弛緩又は休止形態で図4の矢印F1によって指示された軸方向においてスリーブ18内に挿入する。シャフト12をスリーブ18内に挿入すると、クリップばね38は、円筒形ブッシュ34の平坦な溝付き部分36にスナップ嵌め方式で引っ掛かり、かくして、かかるシャフト12の軸方向保持が保証される。
【0018】
1つの器具10又は多数回の使用のための形態が望ましい場合には複数個の器具10を定位置に安定的にロックするために、ナット30をシャフト12の関連のねじ山付き部分32上でねじ込み方向に回転させる。かかる動作は、弾性スペーサ要素20に対する切頭円錐形ワッシャ28のスラスト作用を定め、弾性スペーサ要素20は、ねじ22及び関連のワッシャ24によって定位置に保持されている円筒形ブッシュ34によって保持された状態で、拡張してスリーブ18内にロックし、かくしてシャフト12をモーターサイクル構造体と一体にする。
【0019】
他方、オプションとして器具10によって支持された風防14又は他の付属品を取り外した後、各シャフト12を取り外すためには、まず最初に、弾性スペーサ要素20を休止位置に戻すためにそれぞれのナット30を弛める必要がある。しかしながら、器具10のかかる「弛め」形態では、クリップばね38と円筒形ブッシュ34の平坦な溝付き部分36との間には依然として係合状態が存在し、これは、スリーブ18からのシャフト12の偶発的な取り出しを阻止するための安全システムとして働く。
【0020】
かくして、図8の矢印F3によって指示されているようにハンドルバー16に対して各シャフト12を例えば90°だけ外方に回転させる必要があり、その結果、ブッシュ34の円筒形部分は、クリップばね38を広げ、かくして、図8の矢印F2によって指示されている軸方向におけるかかるシャフト12の軸方向解除、即ち取り出しを可能にする。
【0021】
かくして、本発明のモーターサイクルにおける付属品を固定する器具、特に、風防用の固定器具が上述の目的を達成していることが分かる。各固定器具は、事実、かかる器具の標準型接合手段が弛んだ場合でも軸方向保持を保証する安全システムを備えている。さらに、固定器具は、目に見えるコンポーネントを備えておらず、かくして、モーターサイクルの美感を不変のままにする。
【0022】
最後に、本発明の固定器具の組み立ては、公知の固定器具、即ち、上述の安全システムを備えていない器具について行う場合と同じほど依然として簡単且つ迅速なままである。
【0023】
このように成された本発明のモーターサイクルにおける付属品を固定する器具、特に風防用固定器具の幾つかの変更及び変形を実施することができ、これらは全て、同一の本発明の範囲に含まれ、更に、全ての細部は、技術的に均等な要素で置き換え可能である。実際、用いられる材料並びに寸法形状は、技術上の要件に従ってどのようなものであっても良い。
【0024】
したがって、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲の記載に基づいて定められる。
【符号の説明】
【0025】
10 付属品固定器具
12 シャフト
14 風防又はウインドシールド
16 ハンドルバー又は固定部品
18 スリーブ要素
20 スペーサ要素
28 ワッシャ
30 専用ナット
34,38 軸方向ロック要素
36 溝付き部分
40 専用切欠き

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モーターサイクルの付属品を固定する器具(10)、特に風防(14)用の器具(10)であって、前記モーターサイクルの固定部品(16)に締結可能なスリーブ要素(18)内に挿入できる少なくとも1本のシャフト(12)を有し、前記シャフト(12)の一部分が、前記スリーブ要素(18)内に挿入可能であり且つ可逆式接合手段(30)によって前記スリーブ要素(18)内に嵌まり込む拡張位置と前記スリーブ要素(18)から引き抜き可能な休止位置との間で作動可能な少なくとも1つの弾性スペーサ要素(20)を含む、器具において、前記シャフト(12)には少なくとも1つの軸方向ロック要素(34)が固定的に取り付けられ、前記軸方向ロック要素(34)は、前記可逆式接合手段(30)が弛んだ場合でも前記シャフト(12)が前記スリーブ要素(18)内に軸方向に保持されるようにすると共に前記シャフト(12)の軸線回りの所定角度に従うその回転後にのみ前記シャフト(12)を前記スリーブ要素(18)から引っ込めることができるように、前記スリーブ要素(18)に対して拘束された対応する軸方向ロック要素(38)と嵌合する、器具(10)。
【請求項2】
前記シャフト(12)の前記軸方向ロック要素(34)は、円筒形ブッシュの形態に作られ、前記スリーブ要素(18)の前記軸方向ロック要素(38)は、クリップ形の金属ばねの形態に作られている、請求項1記載の器具(10)。
【請求項3】
前記金属ばね(38)は、前記スリーブ要素(18)に形成された切欠き(40)中への挿入により前記スリーブ要素(18)に対して拘束されている、請求項2記載の器具(10)。
【請求項4】
前記円筒形ブッシュ(34)は、前記金属ばね(38)が前記スリーブ要素(18)中への前記シャフト(12)の挿入時にスナップ嵌入され、かくしてシャフト(12)が軸方向に保持されるようにする少なくとも1つの平坦な溝付き部分(36)を備え、他方において、前記円筒形ブッシュ(34)の円筒形部分は、前記シャフト(12)自体の軸線回りのその回転後に前記金属ばね(38)を開き、前記シャフト(12)の軸方向離脱を可能にする、請求項2又は3記載の器具(10)。
【請求項5】
前記弾性スペーサ要素(20)は、スリーブの形態に作られ、前記スペーサ要素は、その第1の端部のところが軸方向摺動を抑制する要素(22,24)により前記シャフト(12)の自由端部の方に向いた状態で保持される、請求項2〜4のうちいずれか一に記載の器具(10)。
【請求項6】
軸方向摺動を抑制する前記要素は、ねじ(22)と、比較的弾性のワッシャ(24)とから成り、前記ねじ(22)は、前記シャフト(12)の前記自由端部に軸方向に作られたねじ山付き止まり穴(26)内に挿入されるよう形作られている、請求項5記載の器具(10)。
【請求項7】
前記弾性スペーサ要素(20)は、前記シャフト(12)の前記自由端部に向いた一端部とは反対側の端部が切頭円錐形スラストワッシャ(28)と接触状態に配置され、前記切頭円錐形スラストワッシャは、前記可逆式接合手段(30)によって作動可能であり、前記切頭円錐形ワッシャ(28)のテーパ付き部分を、前記弾性スペーサ要素(20)に当てて配置される、請求項5又は6記載の器具(10)。
【請求項8】
前記弾性スペーサ要素(20)、前記切頭円錐形ワッシャ(28)の前記テーパ付き部分、及び前記円筒形ブッシュ(34)は、前記器具(10)の前記休止位置において前記スリーブ要素(18)内に自由に挿入できると共に前記スリーブ要素(18)から自由に引き出し可能であるように前記スリーブ要素(18)の内側周長よりも短い外側周長を有する、請求項7記載の器具(10)。
【請求項9】
前記可逆式接合手段(30)は、前記シャフト(12)のねじ山付き部分(32)と噛み合う雌ねじを備えたスリーブ形ナットから成る、請求項1〜8のうちいずれか一に記載の器具(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−57206(P2011−57206A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−170612(P2010−170612)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(501441773)ピアジオ アンド コンパニア ソシエタ ペル アチオニ (15)