説明

モータ駆動回路

【課題】 高性能なCPUを複数必要とすることなく、冗長構成が可能なモータ駆動回路を提供する。
【解決手段】 監視IC1はメインCPU2の診断を行い、メインCPU2が正常に動作している場合は、メインCPU2がモータ8の駆動に必要な演算処理を行い、メインプリドライバ3から駆動信号を出力する。監視IC1がメインCPU2の異常を検出した場合は、バックアップCPU4へメインCPU2の異常を通知し、切り替え回路7でバックアッププリドライバ5からの駆動信号でモータ8を駆動するように切り替える。監視IC1からの通知を入力したバックアップCPU4は、モータ8の駆動に必要な演算処理を行い、バックアッププリドライバ5から駆動信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用電子制御システムのコンピュータユニット等における冗長構成のモータ駆動回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、自動車用電子制御システムにおいては、コンピュータユニットのモータ駆動回路を冗長構成とすることにより、片方のモータ駆動回路が故障しても、もう片方のモータ駆動回路でモータを正常に動作させる方法が知られている。(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
図4は、完全並列系の冗長構成を採用した、従来のモータ駆動回路を示した図である。図4において、モータ駆動回路は、IG1信号を一次電源とするA回路100とIG2信号を一次電源とするB回路200とで構成される。なお、IG1信号とは、運転者がIG(Ignition)スイッチを操作して「ON」の位置にあるときにHighとなる信号であり、IG2信号とは、エンジンが起動(運転)状態のときにHighとなる信号である。
【0004】
完全並列系の一方のA回路100は、IG1を一次電源とするA回路電源101と、A回路内の主制御を司るA回路CPU(Central Processing Unit)102と、モータドライバの前段で増幅を行うA回路プリドライバ103、モータ300を駆動する並列のFET(Field Effect Transistor)104、FET105とで構成される。完全並列系のもう片方のB回路200も同様の構成であり、A回路100及びB回路200の双方の回路によりモータ300への通電が行われる。
【0005】
A回路100とB回路200はそれぞれ独立に動作を行うが、互いに相手の回路を診断しており、相手の回路が異常であると判定した場合は相手の回路からの出力を止める必要がある。具体的には、例えば、A回路CPU102がB回路CPU202の監視を行い、B回路CPUの演算機能に異常があると判定した場合、A回路CPU102はB回路プリドライバ203からFET204、FET205への出力を止める処理を行う。
【非特許文献1】塩見 弘著、「改訂三版 信頼性工学入門」、丸善株式会社、1982年11月20日、p.106−120
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来のモータ駆動回路は、完全並列系の冗長構成であるために両方の回路が互いに相手の回路を診断する機能を備えている必要があり、また、両方の回路が共に全ての制御演算を行っていた。
【0007】
そのため、相手の回路の診断機能及び多くの制御演算を行うことが可能な高性能なCPUが冗長構成の回路毎に必要となるという課題があった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、高性能なCPUを複数必要とすることなく冗長構成が可能なモータ駆動回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、請求項1に記載の本発明のモータ駆動回路は、モータを駆動する駆動信号を出力するメイン駆動回路(例えば、実施の形態におけるメインCPU2及びメインプリドライバ3)と、前記メイン駆動回路の故障診断を行い、故障と診断した時に異常ステータス信号を出力するメイン監視回路(例えば、実施の形態における監視IC1)と、前記異常ステータス信号の入力時に前記モータを駆動する駆動信号を出力するバックアップ駆動回路(例えば、実施の形態におけるバックアップCPU4及びバックアッププリドライバ5)と、前記メイン駆動回路と前記バックアップ駆動回路のいずれかを前記異常ステータス信号に基づいて選択し、選択したモータ駆動回路から出力される前記駆動信号を前記モータへと出力する切り替え回路(例えば、実施の形態における切り替え回路7)とを有することを特徴とする。
【0009】
上記構成のモータ駆動回路によれば、切り替え回路による切り替え型の冗長構成であるため、バックアップ駆動回路はメイン回路で行う全ての処理を実行する必要がなく、モータを駆動するのに必要な処理のみを実行することが可能である。
【0010】
さらに、請求項2に記載の本発明のモータ駆動回路は、請求項1に記載のモータ駆動回路において、前記メイン駆動回路は、前記バックアップ駆動回路の動作を指定する動作指定信号(例えば、実施の形態におけるMOT_req信号)を出力し、前記バックアップ駆動回路は、前記動作指定信号を入力し、入力した該動作指定信号に基づいて動作することを特徴としている。
【0011】
上記構成のモータ駆動回路によれば、メイン駆動回路の指示によりバックアップ駆動回路からの駆動信号でモータを駆動させることが可能である。
【0012】
さらに、請求項3に記載の本発明のモータ駆動回路は、請求項1または請求項2に記載のモータ駆動回路において、前記メイン監視回路から前記バックアップ駆動回路へ前記異常ステータス信号を出力する信号線(例えば、実施の形態におけるinh1端子及びinh2端子からバックアップCPU4へと接続される信号線)を複数有することを特徴としている。
【0013】
上記構成のモータ駆動回路によれば、異常ステータス信号を出力する信号線を複数とすることで、複数の信号線のうちの幾つかに故障が発生したとしても、メイン監視回路は正常に異常ステータス信号をバックアップ駆動回路へ出力することが可能である。
【0014】
さらに、請求項4に記載の本発明のモータ駆動回路は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のモータ駆動回路において、前記切り替え回路は、前記メイン駆動回路と前記バックアップ駆動回路のいずれかを前記異常ステータス信号と前記メイン回路からの切り替え信号(例えば、実施の形態におけるinh5端子から出力される信号)の論理和に基づいて選択し、選択したモータ駆動回路から出力される前記駆動信号を前記モータへと出力することを特徴としている。
【0015】
上記構成のモータ駆動回路によれば、切り替え回路による駆動回路の切り替えは、メイン監視回路が出力する異常ステータス信号とメイン駆動回路が出力する切り替え信号の双方において可能となる。
【0016】
さらに、請求項5に記載の本発明のモータ駆動回路は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のモータ駆動回路において、前記メイン駆動回路の電源電圧低下を検出するメイン電源低下検出手段(例えば、実施の形態におけるVCCA低下検出回路14)をさらに有し、前記切り替え回路は、前記メイン電源低下検出手段での電源電圧低下検出時に、強制的にバックアップ駆動回路を選択することを特徴としている。
【0017】
上記構成のモータ駆動回路によれば、メイン駆動回路の電源電圧低下を検出し、バックアップ駆動回路に切り替えることで、電源電圧の低下した状態でメイン駆動回路によるモータの駆動が継続することを防止可能である。
【0018】
さらに、請求項6に記載の本発明のモータ駆動回路は、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のモータ駆動回路において、前記バックアップ駆動回路の電源電圧低下を検出するバックアップ電源低下検出手段(例えば、実施の形態におけるVCCB低下検出回路15)をさらに有し、前記切り替え回路は、前記バックアップ電源低下検出手段での電源電圧低下検出時に、強制的にメイン駆動回路を選択することを特徴としている。
【0019】
上記構成のモータ駆動回路によれば、バックアップ駆動回路の電源電圧低下を検出し、メイン駆動回路に切り替えることで、電源電圧の低下した状態でバックアップ駆動回路によるモータの駆動が継続することを防止可能である。
【0020】
さらに、請求項7に記載の本発明のモータ駆動回路は、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のモータ駆動回路において、前記切り替え回路は、前記入力した異常ステータス信号(例えば、実施の形態におけるBKUP_ENB_FB端子へ入力される信号)を前記メイン駆動回路へと出力することを特徴としている。
【0021】
上記構成のモータ駆動回路によれば、メイン駆動回路において切り替え回路がメイン監視回路から入力した異常ステータス信号の状態を検出することで、異常ステータス信号が正常であるかを診断可能である。
【0022】
さらに、請求項8に記載の本発明のモータ駆動回路は、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のモータ駆動回路において、前記モータへ通電されているか否かを判定する判定手段を三以上の奇数有し、前記各判定手段の判定結果のうち過半数を占めた判定結果に基づいて前記メイン駆動回路または前記バックアップ駆動回路が正常に前記モータを駆動しているかを診断することを特徴としている。
【0023】
上記構成のモータ駆動回路によれば、判定手段を三以上の奇数有するため、モータへ通電されていると判定した判定手段の数とモータへ通電されていないと判定した判定手段の数とを比較し、判定手段の数の多い方を判定結果として採用することで、より信頼性の高い判定を行うことができると共に、判定手段の故障が発生した時のシステムダウン(モータの駆動機能を停止)に対する耐性を向上させることができる(判定手段の故障が発生しても、即システムダウンには至らない)。(判定手段の数が一の場合には、その判定結果自体が正常であろうが、異常であろうがそれを信じるしかなく、また判定結果が通電異常となったときにはシステムをダウン(モータの駆動機能を停止)せざるを得ない。また、判定手段の数が二の場合には、各判定結果に不一致が生じた時にどちらの判定結果を信じてよいか分からないので、一方の判定結果が正常であるにもかかわらず、これもまたシステムをダウンせざるを得ない。)
【発明の効果】
【0024】
請求項1に記載の本発明のモータ駆動回路によれば、切り替え回路による切り替え型の冗長構成であるため、バックアップ駆動回路はメイン回路で行う全ての処理を実行する必要がなく、モータを駆動するのに最低限必要な処理のみを実行することが可能である。したがって、高性能なCPUを必要とするのはメイン駆動回路のみであり、従来の完全並列系の冗長構成のように高性能なCPUを複数必要としない。
【0025】
さらに、請求項2に記載の本発明のモータ駆動回路によれば、メイン駆動回路の指示によりバックアップ駆動回路からの駆動信号でモータを駆動させることが可能であるため、メイン駆動回路がバックアップ駆動回路の診断を行うことができる。
【0026】
さらに、請求項3に記載の本発明のモータ駆動回路によれば、異常ステータス信号を出力する信号線を複数とすることで、複数の信号線のうちの幾つかに故障が発生したとしても、メイン監視回路は正常に異常ステータス信号をバックアップ駆動回路へ出力することが可能であるため、信号線の故障に対する耐性を向上させることができる。
【0027】
さらに、請求項4に記載の本発明のモータ駆動回路によれば、メイン監視回路が出力する異常ステータス信号とメイン駆動回路が出力する切り替え信号の双方においてモータ駆動回路の切り替えが可能となるため、メイン駆動回路の正常動作時においてもモータ駆動回路の切り替えを行うことができる。
【0028】
さらに、請求項5に記載の本発明のモータ駆動回路によれば、メイン駆動回路の電源電圧低下を検出し、バックアップ駆動回路に切り替えることで、電源電圧の低下した状態でメイン駆動回路によるモータの駆動が継続することを防止可能である。したがって、メイン駆動回路の電源電圧が低下する故障が発生してもバックアップ駆動回路により正常にモータを駆動できる。
【0029】
さらに、請求項6に記載の本発明のモータ駆動回路によれば、バックアップ駆動回路の電源電圧低下を検出し、メイン駆動回路に切り替えることで、電源電圧の低下した状態でバックアップ駆動回路によるモータの駆動が継続することを防止可能である。したがって、バックアップ駆動回路の電源電圧が低下する故障が発生してもメイン駆動回路により正常にモータを駆動できる。
【0030】
さらに、請求項7に記載の本発明のモータ駆動回路によれば、メイン駆動回路において切り替え回路がメイン監視回路から入力した異常ステータス信号の状態を検出することで、異常ステータス信号が正常であるかを診断可能であるため、メイン駆動回路の故障発生時にはメイン監視回路から確実に異常ステータス信号を出力させることができる。
【0031】
さらに、請求項8に記載の本発明のモータ駆動回路によれば、判定手段を三以上の奇数有するため、モータへ通電されていると判定した判定手段の数とモータへ通電されていないと判定した判定手段の数とを比較し、判定手段の数の多い方を判定結果として採用することで、複数の判定手段の内幾つかが故障したとしてもモータへ通電されているかを正確に判定することが可能であるため、故障に対する耐性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の一実施形態に係るモータ駆動回路について図1から図3を参照しながら説明する。
図1および図2は本発明の一実施形態に係るモータ駆動回路の構成を示した構成図である。なお、図2は図1の切り替え回路7の構成を示した構成図であり、図2の破線で囲んだブロックが図1に示す切り替え回路7の枠内の同名の端子と接続される。
【0033】
図1において、監視IC1は、メインCPU2の診断を行うとともに、メインCPU2及びメインプリドライバ3の電源を供給するIC(Integrated Circuit)である。メインCPU2は、監視IC1及びバックアップCPU4の診断を行うとともに、メインプリドライバ3へ駆動信号の出力を指示する。
【0034】
メインプリドライバ3は、メインCPU2からの指示をDRI2端子から入力し、その指示に従ってDRO2a端子及びDRO2b端子から駆動信号を出力する。なお、メインプリドライバ3は、DRO2a端子及びDRO2b端子からそれぞれ別々に駆動信号を出力することも、双方から同時に駆動信号を出力することも可能である。
【0035】
DRO2a端子から出力された駆動信号は、図2のスイッチPri1−1及びダイオードD1を介して図1のFET1のゲートへと入力される。一方、DRO2b端子から出力された駆動信号は、スイッチPri1−2及びダイオードD2を介してFET2のゲートへと入力される。なお、スイッチPri1−1、Pri1−2は切り替え信号がHighレベルの時にONとなり、Lowレベルの時にOFFとなるスイッチである。
【0036】
また、メインCPU2は、バックアッププリドライバ5から駆動信号を出力させるときに、MOT_req_out端子からMOT_req信号を出力する。バックアップCPU4は、メインCPU2からのMOT_req信号をMOT_req_in端子から入力すると、OUT1端子及びOUT2端子からバックアッププリドライバ5へ駆動信号の出力を指示する。
【0037】
バックアッププリドライバ5は、バックアップCPU4からの指示をIN1端子及びIN2端子で入力し、その指示に従ってVGS1端子及びVGS2端子から駆動信号を出力する。
【0038】
VGS1端子から出力された駆動信号は切り替え回路7へと入力され、図2のスイッチPri2−1及びダイオードD3を介して図1のFET1のゲートへと入力される。一方、VGS2端子から出力された駆動信号は、スイッチPri2−2及びダイオードD4を介してFET2のゲートへと入力される。なお、スイッチPri2−1及びPri2−2は切り替え信号がHighレベルの時にONとなり、Lowレベルの時にOFFとなるスイッチである。
【0039】
Paccセンサ6はモータ8を駆動するトリガを発生する圧力センサであり、メインCPU2及びバックアップCPU4はPaccセンサ6の出力に基づいて演算処理を行い、モータ8を駆動する。
【0040】
なお、バックアップCPU4は、メインCPU2の正常動作時にはMOT_req信号に基づいてメインCPU2の要求どおりの動作を行い、メインCPU2に異常があるときにはPaccセンサ6の出力に基づいてモータ8を駆動する演算処理を独自に行う。バックアップCPU4は、モータ8の駆動に必要となる演算処理以外の演算処理やメインCPU2の診断は行わない。
【0041】
メインCPU2はMCK端子、MOT_COMP1端子及びMOT_COMP2端子の三つの端子でモータ8の上流側にあたるX点の電圧を監視する。上述した各駆動信号の入力により、FET1またはFET2がONになると、X点における電圧がHighレベルの電圧となり、モータ8へ通電されていることがメインCPU2で確認できる。一方、FET1及びFET2の双方がOFFになると、X点における電圧はLowとなり、モータ8へ通電されていないことがメインCPU2で確認できる。
【0042】
メインCPU2のMCK端子は内部でA/D変換が可能な端子であり、MCK端子の電圧を直接監視してHighかLowかを判定する。一方、MOT_COMP1端子及びMOT_COMP2端子は、コンパレータCMP1及びコンパレータCMP2でHigh、Lowの判定後の信号を入力する。
【0043】
メインCPU2は、X点の電圧がHighかLowかを判定する際、上記三つの端子への入力に基づく判定が一致しない場合はHighと判定した端子数とLowと判定した端子数とを比較し、端子数の多い方の判定を採用する。
【0044】
例えば、メインCPU2がMCK端子とMOT_COMP1端子への入力ではHighと判定し、MOT_COMP2端子への入力ではLowと判定した場合、Highと判定した端子数の方が多いため、X点の電圧はHighであるとし、モータ8への通電が行われていると判定する。
【0045】
このように、モータ8へ正常に通電が行われているかを判定する判定手段を三つ設けることにより、判定手段のうちの一つが故障した場合においても正確に判定を行うことが可能であり、故障に対する耐性を向上させることができる。なお、判定手段の個数は三に限られることはなく、三以上の奇数でも同等の効果を得ることができる。
【0046】
本実施形態においては、メインCPU2とバックアップCPU4との関係は完全並列系の冗長構成ではなく、切り替え回路7による切り替え型の冗長構成であるため、バックアップCPU4はメインCPU2で実行する全ての機能を備える必要はなく、モータ8を駆動するために最低限必要な演算処理のみを行えばよい。そのため、バックアップCPU4としては、高性能なCPUを用いる必要がない。
【0047】
続いて、メインCPU2に異常が発生したときにバックアップ側の回路へと切り替える手順について詳細に説明する。
まず、メインCPU2に異常が発生すると、その異常が監視IC1により検出される。メインCPU2の異常検出後、監視IC1はinh1端子〜inh4端子を全てHighにセットして出力する(異常ステータス信号)。なお、メインCPUの正常時にはinh1端子〜inh4端子は全てLowにセットされる。
【0048】
inh1端子及びinh2端子は共にバックアップCPU4へと接続される。バックアップCPU4がinh1端子又はinh端子2のいずれか一方がHighになったことを検出すると、Paccセンサ6からの出力に基づいて演算処理を行い、バックアッププリドライバ5へ駆動信号の出力を指示する。
【0049】
ここで、監視IC1からバックアップCPU4への通知にinh1端子とinh2端子の二端子を割り当てることで、どちらか一方の端子による接続に異常が発生したとしても、他方の端子により正常に通知を行うことが可能であり、故障に対する耐性を向上させることができる。なお、通知に用いる端子の個数は二に限られることはなく、二以上であれば同等の効果を得ることができる。
【0050】
一方、inh3端子及びinh4端子は共にOR回路9の一方の入力端子へと接続される。OR回路9の入力端子の他方の入力端子にはメインCPU2のinh5端子が接続され、このinh5端子はメインCPU2がバックアッププリドライバ5からの駆動信号により正常にモータ8を駆動可能であるかの診断を行うときに用いられる。
【0051】
ここで、監視IC1からOR回路9への接続にinh3端子とinh4端子の二端子を割り当てることで、どちらか一方の端子による接続に異常が発生したとしても、他方の端子により正常に信号を送信することが可能であり、故障に対する耐性を向上させることができる。なお、送信に用いる端子の個数は二に限られることはなく、二以上であれば同等の効果を得ることができる。
【0052】
OR回路9の出力(以下では、inh信号と呼ぶ)は、切り替え回路7へと入力されて図2のAND回路10及びOR回路12の入力端子に接続されると共に、メインCPU2のBKUP_ENB_FB端子へと接続される。
【0053】
BKUP_ENB_FB端子は、例えば、システム起動時の初期診断において、メインCPU2が正常に動作しているときにinh信号が正常に出力されるかどうかの確認で用いる。以下、初期診断時に監視IC1及びメインCPU2で行う処理の一例を示す。
【0054】
まず、メインCPU2が初期診断時に、メインCPU2に異常が発生したことを意味する信号を監視IC1に対して送信する。監視IC1がメインCPU2からの信号を受信すると、inh1端子〜inh4端子をHighにセットし出力する。
【0055】
この出力がOR回路9を介して切り替え回路7へと入力され、BKUP_ENB_FB端子へとフィードバックされるため、inh信号が正常に出力されていれば、メインCPU2はBKUP_ENB_FB端子でHighを検出する。切り替え回路の故障等でinh信号がHighにならない場合は、メインCPU2はBKUP_ENB_FB端子で異常を検出できる。
【0056】
図2に戻って、AND回路10及びOR回路11の一方の入力端子にはinh信号が入力されるが、他方の入力端子にはVCCA低下検出回路14の出力が入力される。VCCA低下検出回路14は、メインCPU2及びメインプリドライバ3の電源である電源VCCAが正常であるときにはLowを出力し、電源VCCAが低下したときにHighを出力する。
【0057】
AND回路10の出力はOR回路11の一方の入力端子に接続され、OR回路11の他方の入力端子にはVCCB低下検出回路15の出力が入力される。OR回路12の出力はAND回路13の一方の入力端子へと接続され、AND回路13のもう一方の入力端子にはVCCB低下検出回路15の出力が入力される。
【0058】
VCCB低下検出回路15は、バックアップCPU4及びバックアッププリドライバ5の電源である電源VCCBが正常であるときにはLowを出力し、電源VCCBが低下したときにHighを出力する。
【0059】
電源VCCBが低下した場合には、inh信号の論理値によらずOR回路11の出力はHigh、AND回路13の出力はLowとなり、スイッチPri1−1、Pri1−2がON、スイッチPri2−1、Pri2−2がOFFとなる。すなわち、電源VCCBが低下した場合には強制的にメインプリドライバ3からの駆動信号が選択されてFET1及びFET2へと出力される。
【0060】
同様に、電源VCCAが低下した場合には、inh信号の論理値によらずAND回路10の出力はLow、OR回路12の出力はHighとなり、電源VCCBが正常であればOR回路11の出力はLow、AND回路13の出力はHighとなり、スイッチPri1−1、Pri1−2がOFF、スイッチPri2−1、Pri2−2がONとなる。すなわち、電源VCCAが低下した場合には強制的にバックアッププリドライバ3からの駆動信号が選択されてFET1及びFET2へと出力される。
【0061】
図3は、VCCA低下検出回路14及びVCCB低下検出回路15の回路構成の一例を示した図である。図3において、電源VCCAが低下すると、トランジスタTr2、Tr3、Tr6がON、トランジスタTr5がOFFとなり、図3のY点の電圧がHighとなる。Y点の電圧は、図2のVCCA低下検出回路14の出力となる。
【0062】
一方、電源VCCBが低下すると、トランジスタTr5がON、トランジスタTr6がOFFとなり、図3のZ点の電圧がHighとなる。Z点の電圧は、図2のVCCB低下検出回路15の出力となる。
【0063】
電源VCCA及び電源VCCBの電圧低下を検出し、検出結果に基づいてスイッチPri1−1、Pri1−2、Pri2−2、Pri2−2を切り替えることで、メインプリドライバ3及びバックアッププリドライバ5から電源電圧が正常な回路を選択し、常に正常な駆動信号をFET1及びFET2へと出力することが可能である。
【0064】
以上、本発明の実施形態を詳述してきたが、具体的な構成は本実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、自動車用電子制御システムのコンピュータユニットにおける冗長構成のモータ駆動回路に用いて好適である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の一実施形態にかかるモータ駆動回路の構成を示す構成図である。
【図2】図1の切り替え回路7の構成を示す構成図である。
【図3】図2のVCCA低下検出回路14及びVCCB低下検出回路15の回路構成の一例を示す図である。
【図4】従来技術における完全並列系の冗長構成モータ駆動回路の構成を示す構成図である。
【符号の説明】
【0067】
1 … 監視IC(メイン監視回路)
2 … メインCPU
3 … メインプリドライバ
4 … バックアップCPU
5 … バックアッププリドライバ
7 … 切り替え回路
8 … モータ
14 … VCCA低下検出回路(メイン電源低下検出手段)
15 … VCCB低下検出回路(バックアップ電源低下検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータを駆動する駆動信号を出力するメイン駆動回路と、
前記メイン駆動回路の故障診断を行い、故障と診断した時に異常ステータス信号を出力するメイン監視回路と、
前記異常ステータス信号の入力時に前記モータを駆動する駆動信号を出力するバックアップ駆動回路と、
前記メイン駆動回路と前記バックアップ駆動回路のいずれかを前記異常ステータス信号に基づいて選択し、選択したモータ駆動回路から出力される前記駆動信号を前記モータへと出力する切り替え回路と、
を有することを特徴とするモータ駆動回路。
【請求項2】
前記メイン駆動回路は、前記バックアップ駆動回路の動作を指定する動作指定信号を出力し、
前記バックアップ駆動回路は、前記動作指定信号を入力し、入力した該動作指定信号に基づいて動作することを特徴とする請求項1に記載のモータ駆動回路。
【請求項3】
前記メイン監視回路から前記バックアップ駆動回路へ前記異常ステータス信号を出力する信号線を複数有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のモータ駆動回路。
【請求項4】
前記切り替え回路は、前記メイン駆動回路と前記バックアップ駆動回路のいずれかを前記異常ステータス信号と前記メイン回路からの切り替え信号の論理和に基づいて選択し、選択したモータ駆動回路から出力される前記駆動信号を前記モータへと出力することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のモータ駆動回路。
【請求項5】
前記メイン駆動回路の電源電圧低下を検出するメイン電源低下検出手段をさらに有し、
前記切り替え回路は、前記メイン電源低下検出手段での電源電圧低下検出時に、強制的にバックアップ駆動回路を選択することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のモータ駆動回路。
【請求項6】
前記バックアップ駆動回路の電源電圧低下を検出するバックアップ電源低下検出手段をさらに有し、
前記切り替え回路は、前記バックアップ電源低下検出手段での電源電圧低下検出時に、強制的にメイン駆動回路を選択することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のモータ駆動回路。
【請求項7】
前記切り替え回路は、前記入力した異常ステータス信号を前記メイン駆動回路へと出力することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のモータ駆動回路。
【請求項8】
前記モータへ通電されているか否かを判定する判定手段を三以上の奇数有し、前記各判定手段の判定結果のうち過半数を占めた判定結果に基づいて前記メイン駆動回路または前記バックアップ駆動回路が正常に前記モータを駆動しているかを診断することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のモータ駆動回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−83887(P2007−83887A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−275611(P2005−275611)
【出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(300052246)株式会社ホンダエレシス (105)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)