説明

ヤエン収納ケース

【課題】ヤエンを複数本そのまま収納してもヤエンの釣り針同士が絡むことが無いようなヤエン用の収納ケースを低コストで提供する。
【解決手段】矩形状で両端面が開閉自在な開口部3となるケース本体1と、それに収納される中仕切り部材2とからなるヤエン収納ケースであって、中仕切り部材2が、両側辺を90°の山折りとした複数の斜面形成部と、斜面形成部の間で一の斜面形成部の一方端から隣の斜面形成部の他方端まで達する直線上を180°の谷折りとすることで、斜面形成部がその傾斜方向を交互に違えて並んだ第1部材に対し、斜面形成部と同じ幅の帯状の天面とその両側辺を90°の山折りとして縦壁面を形成した第2部材の縦壁面を、第1部材の180°の谷折り部分に嵌め込んで形成されているヤエン収納ケース。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、イカ釣りに使用する釣具のヤエンを複数本収納できるヤエン収納ケースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
イカ釣りには種々の技法があり、その中にヤエン釣りというものがあり、この技法は、ヤエンと呼ばれる釣り針を有する道具を道糸に沿って滑らせてイカに引っかけて釣り上げるものである。
【0003】
図9は、ヤエン30を示すものであり、針金、ステンレス等の金属からなり、約30〜50cm程度の長さのシャフト31の一方側先端及び少し内側に本体側に反り返った釣り針32が多数本取り付けられており、また、シャフト31の中間及び後端部に、本体と垂直方向に伸びる支柱33の先に道糸を横から掛けて通すフック34が設けられており、支柱33は後端部に行くほど長くなっており、このヤエン30は全体として、シャフト31の先端の釣り針32の部分、シャフト1の後端の支柱33との交点部分、及び、当該支柱33の先端のフック34の部分を頂点とする直角三角形の形状をしている。
【0004】
図10は、ヤエン30を用いるイカ釣りの仕掛けの概要を簡単に示すものであり、道糸35の先端にアジ等の生餌36を結び付けて海中に泳がしておき、イカが生餌36に取り付いてアタリがあれば、適宜なタイミングで道糸35の根元側にてヤエン30のフック34を道糸35に引っかけて、道糸35に沿ってヤエン30を生餌36に取り付いたイカまで滑り落とし、ヤエン30の釣り針32にイカを引っかけて釣り上げるようにする。
【0005】
ところで、ヤエン30は長さが30〜50cmと比較的長く、金属製で全体を折り畳んだりすることができないものであり、小さめの釣り道具箱には入らず、また、大きめの釣り道具箱や釣り竿ケースに入るとしても、他の物と一緒にすると釣り針32の部分で他の道具や竿に傷をつけてしまうことがある。
【0006】
そこで、ヤエン30のみを他の物と分けて収納するヤエン専用ケースが用いられてきており、専用ケースにヤエンのみを入れることで、他の釣り道具や釣り竿を傷付けることは無くなるが、1回のイカ釣りでは、ヤエン30を予備等を含めて複数本を用意するのが一般的であり、複数本のヤエン30を1つの容器に同時に収納すると、釣り針32同士が絡まり、ヤエン30の容器からの取り出しが困難になったりすることがある。
【0007】
また、ヤエン30のケースから出し入れの際は、釣り針32の部分に気をつけながら手で取り出したり収納したりするのであるが、複数本のヤエン30を収納していた場合は、取り出しや収納の際に他のヤエン30の釣り針32に不用意に触ってしまい手に怪我を負うおそれがあった。
【0008】
そこで、ヤエン全体のうち、特に釣り針32の部分のみを覆うことによって、怪我を生じないようにし、ケース内に複数本収納しても他のヤエンと絡むことを防止したヤエン専用のヤエン収納容器も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−171885号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献1の容器はあくまでヤエンの釣り針部分のみを覆う容器であり、ヤエンの大部分が露出しているので、別途ヤエンの複数本を収納する専用ケースが必要となり、専用ケースと共に、ヤエン毎にこの特許文献1の容器を用意する必要があり、そのためのコストもかかってくる問題があった。
【0010】
勿論、特許文献1のような釣り針部分を覆う容器を用いずに、専用ケースに収納することもできるが、複数本収納時の取り出しや収納の際の、ヤエン同士の絡みや手に怪我をするという問題を解決する適当なケースは無かった。
【0011】
この発明は上記のような課題を解決し、ヤエンを複数本収納可能でありつつ、ヤエンをそのまま収納してもヤエンの釣り針同士が絡むことが無いようなヤエン用の収納ケースを低コストで提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記のような課題を解決するため、請求項1の発明は、矩形状で長さ方向の両端面の全面が開閉自在な開口部となるケース本体と、ケース本体内に収納される中仕切り部材とからなるヤエン収納ケースであって、ケース本体の開口部が中仕切り部材により横方向に並んだ複数の収納部に区切られ、各収納部がケース本体の他方端面に向かうほど上下幅が狭まるくさび形状をしている構成を採用したヤエン収納ケースである。
【0013】
ここでケース本体は長さ方向の両端部の面が全面、開閉自在となり、この開口部に中仕切り部材で仕切られた複数の収納部が開口しており、各収納部に1つずつヤエンを収納することで、複数のヤエン同士が絡まったりするのを防止する。
【0014】
また、各収納部はケース本体の他方端面に向かうほど上下幅が狭まるくさび形をしているのであるが、図9のヤエン30の釣り針32側を奥にして、最外側の支柱33を開口部側とすることで、このくさび形状の収納部にヤエン30を効率よく収納できる。よって、ケース本体の全長はヤエン30のシャフト31の長さより若干長くし、開口部の上下寸法を最外側の支柱33より若干大きくしておく。
【0015】
特に、ケース本体の両端部を開口部とし、両側からくさび形状の複数の収納部を配置して全体として矩形状のケースを構成しているので、各収納部は、自然とケース外側に面した面と開口部の面が直角となる直角三角形になり、ここに収納する図9で示すヤエン30の形状も、シャフト31と最後端側の支柱33とが直角となった直角三角形であるので、シャフト31をケースの外側に向けて、最後端側の支柱33を開口部にくるように収納すれば、収納部の大きさにぴったりのヤエンを収納することができる。
【0016】
なお、中仕切り部材の構成としては、例えば、ケース本体の長さと同じ長さを有し、長手方向の一方端を絞り込んだくさび形状で、他方端部を開口して1の収納部を形成するくさび状部材を複数個用意し、これらくさび状部材の2つを開口部が反対側となるように重ねたものを更に横に並べてくさび状部材の集合体を矩形状に形成し、この集合体を中仕切り部材として用いることができ、この中仕切り部材をケース本体の開口部から内部に収納することでヤエン収納ケースが完成する。
【0017】
請求項2の発明は、上記請求項1に記載のヤエン収納ケースにおいて、上記中仕切り部材が、折り曲げを保持可能な板状体からなり、長さ方向両端部に達する複数本の帯状の斜面形成部が、その間に縦壁面形成部を挟んで形成され、斜面形成部の両側辺を90°の山折りとし、縦壁面形成部内で一の斜面形成部の一方端から隣の斜面形成部の他方端まで達する直線上を180°の谷折りとすることで、斜面形成部がその傾斜方向を交互に違えて並んだ第1部材と、同じく折り曲げを保持可能な板状体からなり、前記斜面形成部と同じ幅の帯状の天面とその両側辺を90°の山折りとして縦壁面を形成した1又は2以上の第2部材とからなり、第1部材の一部の縦壁面形成部の180°の谷折り部分に第2部材の縦壁面を嵌め込んだ状態で形成されている構成を採用したものである。
【0018】
折り曲げを保持可能は板状体とは、金属、紙、合成樹脂等が考えられ、特定の材料に限定されるものではないが、その重量や耐久性、及び加工の容易さを考慮すれば合成樹脂製で折り曲げた時にその形状を保持できるものが好ましく、折り曲げ角度も180°の折り返しにも切断されずに耐える材質であればよい。また、折り曲げの際、前もって折り曲げ部分を凹溝に形成したり折り曲げ線上に沿って凹部や貫通孔を連続して形成して折り曲げ易くしておいてもよい。
【0019】
斜面形成部の両側辺を90°の山折りとすることで、斜面形成部の下方に両側を縦壁形成部で囲まれた収納部が形成される。また、縦壁面形成部内で一の斜面形成部の一方端から隣の斜面形成部の他方端まで達する直線上、即ち、2つの斜面形成部に挟まれた長方形状となっている縦壁面形成部の1つの対角線上を180°の谷折りとすることで、谷折り部分を下辺として、両側に傾斜角度を交互にした三角形の縦壁が形成され、隣り合う斜面形成部はその傾斜角度は同じでその傾斜方向が交互になる。
【0020】
なお、斜面形成部が3つ以上の場合、1つの斜面形成部の両側の180°谷折り部分により形成される三角形が対照形状となるようにしてゆけば、複数の斜面形成部がその傾斜を交互に違えて横に並ぶことになる。
【0021】
前述のように斜面形成部の下方には上を斜面形成部、横を三角形の縦壁面形成部で囲まれた空間が生じており、ケース本体に入れれば下方がケース本体の内壁に囲まれた閉鎖空間が生じるが、斜面形成部の上方はケース本体に入れた場合、ケース本体の内壁により上面及び一番外側の側面は閉鎖されるが、隣り合う横の斜面形成部との仕切りは無く、閉鎖空間にはならない。そこで、斜面形成部と同じ幅の天面とその両側を90°山折りとして縦壁面を形成した第2部材を、所定の斜面形成部に被せて、縦壁面を第1部材の180°谷折り部分に挿入して嵌め込む。
【0022】
この第2部材の目的は、上方で隣り合う斜面形成部の間に縦壁面を形成するためのもので、斜面形成部の数によって必要な数が変わってくる。斜面形成部が2つの場合は1つの第2部材をどちらかの斜面形成部に被せ、斜面形成部が3つの場合は、中央の斜面形成部に被せ、斜面形成部が4つの場合は、2つの第2部材を端から2つ目と3つ目、又は2つ目と4つ目の斜面形成部に被せ、斜面形成部が5つの場合は、端から2つ目と4つ目の斜面形成部に被せればよく、要するに、隣り合う斜面形成部の間に第2部材の縦壁面が1つでも介在するようにすればよい。
【0023】
第1部材と第2部材からなる中仕切り部材において、その長さをケース本体の長さと一致させ、複数の斜面形成部の幅の合計をケース本体の開口部における幅と一致させ、傾斜面の高さ(折り曲げた縦壁面形成部の高さ)や第2部材の縦壁面の高さをケース本体の開口部における高さと一致させれば、中仕切り部材はケース本体内に嵌め込まれた際に中仕切り部材の縦壁面形成部や天面がケース本体の内壁との摩擦力によりケース本体の内部に固定されることになる。
【0024】
請求項3の発明は、上記請求項2に記載のヤエン収納ケースにおいて、上記中仕切り部材が、斜面形成部が3本形成された第1部材と、1つの第2部材とからなり、ケース本体両端の各開口部にて収納部が3つずつ設けられている構成を採用したものである。
【0025】
ヤエンを用いたイカ釣りの際、通常1回の釣りで予備も含めてヤエンは4〜5本が必要とされ、傾斜面を3つ設けて収納部が6つのヤエン収納ケースは、釣りの時にヤエンを収納して持ち運ぶケースとして必要十分な大きさとなる。
【発明の効果】
【0026】
以上のように、請求項1の発明によると、1つのケースにてヤエンを複数本収納可能となると共に、各ヤエンは独立した収納部に収納されるので、ヤエンの収納時と取り出し時に、他のヤエンと絡まることがないと共に、各収納部がくさび形状をしているので、硬質で三角形状のスペースを要するヤエンの収納に最適となると共に、くさび形状の収納部をケース両端から向かい合わせに配置することで、矩形状のケース本体内に効率よく収納部が配置される。
【0027】
また、各収納部を奥になるほど狭くなるくさび形状とし、ケース本体の両方の端部を開口部として配置することで、ヤエンの釣り針は収納部の奥側にしまい込まれ、ヤエンの収納や取り出しの際は、自然にヤエンの釣り針と反対側の支柱を手で摘むことになり、ヤエンの釣り針で手に怪我を負うおそれがない。
【0028】
請求項2の発明によると、板状体を所定の部分で折り曲げて組み合わせるだけでくさび形状の収納部を得られる中仕切り部材を構成でき、複雑な金型や製造工程を必要とせずに、低コストでヤエン収納ケースを得ることができる。
【0029】
請求項3の発明によると、1つのケースにてヤエンの収納部が6つ得られ、通常1回の釣りで予備も含めて4〜5本が必要とされるヤエンを十分に収納でき、ケースの大きさも適度となり、釣りに持って行くヤエン収納ケースとしても最適となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、この発明のヤエン収納ケースの実施形態を、図1乃至図8に基づいて説明する。
図1は、この発明のヤエン収納ケースの一実施形態を示すものであり、ヤエン(図示しない)を収納可能なように、収納すべきヤエンの長さより若干大きな寸法Lを有する長尺状で、長さ方向両端面が全面開放と閉鎖とに開閉自在となる矩形状のケース本体1と、このケース本体1内に収納される中仕切り部材2とからなる。
【0031】
このケース本体1と中仕切り部材2は、例えばPE、PP、PET等の合成樹脂のうち、比較的硬質な板状の合成樹脂製部材を折り曲げ成型して構成してあり、特に合成樹脂に限定されるものではないが、折り曲げ加工が容易であり折り曲げ後にその形状が保持できるものが好ましく、本実施形態では、硬質の合成樹脂製シート体に折り曲げ予定線に沿って凹溝、又は微小な孔や凹部を連続させて罫線を形成し、それに沿って折り曲げるようにしてある。
【0032】
また、ケース本体1や中仕切り部材2の色彩については、透明なものから、半透明、又は色彩が施された不透明なものであってもよいが、特にケース本体1が透明や半透明であればヤエンの収納の有無が開口部を開けずに確認できるという利点がある。
【0033】
ケース本体1は板状体を折り曲げて箱形に形成したもので、その長さ方向両端面は、全面が開口する縦の寸法H、横の寸法Wの開口部3,3となり、開口部3の左右に閉鎖片4,4と、開口部4の下辺から先端に面ファスナー5を有する係止片6とが設けられており、左右の閉鎖片4,4を開口部3に重ねて、更に、係止片6を重ねて、係止片6の先端の面ファスナー5をケース本体1の上面に設けた面ファスナー7と係止することで、ケース本体1の端部開口部3の閉鎖を行う。
【0034】
図2は、中仕切り部材2を構成する主要部材の第1部材10の展開平面図である。
図示のものは台形状をしており、長さ方向はケース本体1の長さLとほぼ同じ寸法であり、長さ方向端部側は、まず図示上方の短い辺がケース本体1の端面開口部3の横方向の寸法Wに、縦方向の寸法Hを2倍したものを加えた寸法で、図示下方の長い辺が同じくケース本体1の端面の横方向の寸法Wに、縦方向の寸法Hを4倍したものを加えた寸法となっている。
【0035】
この第1部材の長さ方向に沿って両端に達する3つの帯状の斜面形成部11,12,13が形成されている。各斜面形成部11,12,13の幅は、ケース本体1の開口部3の横方向の寸法Wの約1/3の幅となっており、これら各斜面形成部11と12、及び12と13間の距離は、ケース本体1の開口部3の縦方向の寸法Hとほぼ同じ長さの距離を保っている。
【0036】
各斜面形成部11,12,13の両側辺は、後で90°の角度の山折りとなる山折り線aが形成されており、更に、各斜面形成部間において、斜面形成部11の一方端部から、斜面形成部12の他方端部へ、及び斜面形成部12の他方端部から斜面形成部13の一方端部へと、後に180°の角度に谷折りに折り返す予定の谷折り線bが形成されている。
【0037】
そして、これら谷折り線15により区分けされた三角形の部分が形成され、この部分を縦壁面形成部14,15,16,17とする。更に、斜面形成部11と13の外側の三角形の部分も縦壁面形成部18,19とする。
【0038】
図3における第1部材10は、図2に示した第1部材10の前記山折り線aと谷折り線bをそれぞれ90°の山折りと180°の谷折りにして形成して構成されており、斜面形成部10,11,12がその傾斜方向を交互にして隣り合うように形成され、縦壁面形成部14乃至19は全て垂直方向となっている。
【0039】
この第1部材10に対して、第2部材20を組み合わせることで中仕切り部材2が完成する。
第2部材20は、ケース本体1や第1部材10とほぼ同じ長さを有する長方形で、第1部材10の斜面形成部11乃至13とほぼ同じ幅を有する天面21と、90°の山折り線aにより下方へ連なる高さがケース本体1の開口面3の縦方向の寸法Hとほぼ同じ寸法の縦壁面22,23とからなり、一方の縦壁面22を折り曲げ形成された第1部材の斜面形成部12の横の、縦壁面形成部14と15が接している隙間に挿入し、他方の縦壁面23を縦壁面形成部16と17が接している隙間に挿入する。
【0040】
この第2部材20の役割は、第1部材10のみでは中仕切り部材2により形成される複数の収納部のそれぞれの密閉性が不十分となるからである。即ち、第1部材10により仕切られる部分のうち、各斜面形成部11,12,13を底面としてこれらより上に形成される収納部において、斜面形成部11と12、及び、12と13は長さ方向中央部付近で隣の斜面形成部と仕切りなしに隣り合い、仮にヤエンを収納しようとする場合、隣の収納部のヤエンと接触したりして収納及び取り出しに支障が生じるおそれがあるからであり、第2部材の縦壁面22と23が、これら斜面形成部11乃至13の上面に形成される収納部の横方向の縦壁となる。
【0041】
図4は、第1部材10と第2部材20を組み合わせて形成した中仕切り部材2を示すものであり、図5はそれを下側から見たものである。
【0042】
この中仕切り部材2を図1に示すようにケース本体1にその一方の開口部3から挿入して収納することにより、ケース本体1内は、他と遮蔽された6つの独立の空間となった収納部に分割される。図6は中仕切り部材2の収納後の一方開口部3付近の断面図である。
【0043】
中仕切り部材2の長さはケース本体の長さLと略等しく、幅は開口部3の横幅Wと略等しく、高さは開口部の高さHと略等しいため、中仕切り部材2をケース本体1内に収納すれば、きっちり嵌め込まれて中で中仕切り部材2が動くことが無く、また、各山折り線aや谷折り線bの部分で折り曲げ部が広がって元に戻ろうとする力でケース本体1の内壁を押し、更に、天面21や縦壁面形成部18や19がケース本体1と面接触しているので、それらの要因による摩擦力により、中仕切り部材2は別途固定手段を設けなくても、ケース本体1内に固定されることになる。
【0044】
なお、中仕切り部材2を構成する材料の寸法のうち、図2で示す斜め方向に走る180°の谷折り線bの全長が折り曲げ後の第1部材10の長さとなり、これをケース本体1の長さLと一致させるのがよいが、傾斜角がゆるやかであるので、折り曲げ前の台形形状の高さ(90°山折り線aの全長)をケース本体1の長さLと一致させてもよい。なぜなら収納されるのが硬質のヤエンであり、各収納部内で多少の誤差による隙間が生じても問題は生じない。
【0045】
中仕切り部材2によりケース本体1内に形成される6つの収納部を、一方の端部側からS1,S2,S3とし、他方端部側から形成されるものをS4,S5,S6として説明する。なお、図4、図5のケース本体1への収納前の状態の中仕切り部材2において、各収納部S1〜S6となる部分の空間を同じ符号で表示しておく。
【0046】
収納部S1は、上面を斜面形成部11とし、両側面を縦壁面形成部18と14に囲まれており、下面をケース本体1の内壁とした空間であり、奥に行くほど斜面形成部11が下がっていくことで狭くなっている。
【0047】
収納部S2は、下面を斜面形成部12とし、両側面を第2部材の縦壁面22と23に囲まれ、上面を第2部材の天面21とした空間であり、奥に行くほど斜面形成部12が上がっていくことで狭くなっている。
【0048】
収納部S3は、上面を斜面形成部13とし、両側面を縦壁面形成部17と19に囲まれ、下面をケース本体1の内壁とした空間であり、奥に行くほど斜面形成部13が下がることで狭くなっている。
【0049】
収納部S4は、下面を斜面形成部11とし、両側面をケース本体1の内壁と第2部材の縦壁面22に囲まれ、上面をケース本体1の内壁とした空間であり、奥に行くほど斜面形成部11が上がっていくことで狭くなっている。
【0050】
収納部S5は、上面を斜面形成部12とし、両側面を縦壁面形成部15と16に囲まれ、下面をケース本体1の内壁とした空間で、奥に行くほど斜面形成部12が下がっていくことで狭くなっている。
【0051】
収納部S6は、下面を斜面形成部13とし、両側面をケース本体1の内壁と第2部材の縦壁面23に囲まれ、上面をケース本体1の内壁とした空間で、奥に行くほど斜面形成部13が上がっていくことで狭くなっている。
【0052】
収納部S1〜S6については、以上の通り、各収納部がケース本体1の内壁面や中仕切り部材2を構成する斜面形成部11乃至13、縦壁面形成部14乃至19、天面21、縦壁面22,23により囲まれて他の収納部から閉鎖され、かつ、全ての収納部が奥に行くほど狭くなるくさび形の形状をしているので、硬質の三角形状であるヤエンの収納部として最適となる。
【0053】
以上説明したように、この実施形態のヤエン収納ケースは、ケース全体を合成樹脂製として折り曲げて形成したので、コストのかかる材料が要らず、複雑な工程を経ずに低コストで有用なヤエン収納ケースを得られるものであるが、この発明のヤエン収納ケースは、実施形態のものに限定されず、この発明の範囲内において適宜設計変更して実施することができる。
【0054】
例えば、中仕切り部材2を構成する第1部材は、実施形態では図2のように台形形状のものを使用したが、台形ではなく上辺も下辺と同じ寸法の長方形としておいてもよい。その場合、図2における縦壁面形成部18と19の外側の部分を180°谷折り線bとして折り曲げればよい。
【0055】
そのような実施形態を取る場合、前もって材料の板状体を長方形に切断するだけでよく台形に切り取る手間がかからないと共に、縦壁面形成部18と19の外側の三角形部分がケース本体1の内壁に当接して谷折り線bの折り曲げのバネ力でケース本体1の内壁を押し固定する力を強力にすると共に、この三角形部分の存在により斜面形成部11や13の下方端部がケース内で動いて浮き上がるのを防止するといった利点がある。
【0056】
また、斜面形成部の数は実施形態のように3つ(収納部は6つ)とするのが、ヤエン収納ケースとしては適しているが、数もこれに限定されるものではなく、使用用途等により適宜変更して実施できる。
【0057】
その他、この実施形態では、ケース本体1と中仕切り部材2を合成樹脂製の板状体で構成したが、ケース本体1は特に実施形態と同じものに限定されず、一体成形の合成樹脂やその他の材質のもの(金属、防水性の紙、木製等)であってもよく、要するに中仕切り部材2を収納可能で、両端部が開閉自在としたものであればよい。
【0058】
図7は、この発明のヤエン収納ケースの他の実施形態を示すものであり、図1乃至図6で示した実施形態と同一部分は同一の符号を付して説明する。
【0059】
この実施形態についても、ケース本体1は先の実施形態と同様に板状体を折り曲げて箱形に形成したもので、長さがLで、長さ方向両端面は、全面が開口する縦の寸法H、横の寸法Wの開口部3,3となり、閉鎖片4,4と、面ファスナー5を有する係止片6とにより開口部3を開閉自在に閉鎖している点も同じである。
【0060】
この実施形態では、ケース本体1に収納する中仕切り部材8を、内部に1つの収納部を形成したくさび状部材9を複数個集合させて形成した点が、前の実施形態と相違する。
【0061】
図8は、中仕切り部材8を示すもので、図8(A)は中仕切り部材8を構成するくさび状部材9の斜視図で、図8(B)はくさび状部材9を集合させて構成した中仕切り部材8の斜視図である。
【0062】
図8(A)に示すように、くさび状部材9は、ケース本体の長さLと同じ長さを有し、長手方向の一方端部を絞り込んだくさび形状で、他方端部を開口して内部空間を1つの収納部としている。
【0063】
図8(B)のように、くさび状部材9を複数個(図示では6つ)用意し、これらくさび状部材9の2つを開口部が反対側となるように重ね、更に横に並べてくさび状部材9の集合体を中仕切り部材8として用いることができ、この中仕切り部材8を構成する各くさび状部材9の個々の内部空間が、ヤエンの収納部S1〜S6を形成することになる。
【0064】
なお、くさび状部材9の配置は、先の実施形態のように隣り合う傾斜面が交互になるようにしてもよいし、隣り合う傾斜面を揃えるようにしても、どちらでもよい。
【0065】
この中仕切り部材8を、図7に示すようにケース本体1にその一方の開口部3から挿入して収納することにより、ケース本体1の両端の開口部3から、それぞれ3つの収納部にアクセス可能なヤエン収納ケースが形成される。
【0066】
なお、くさび状部材9が複数個集合した中仕切り部材8は矩形状であるので、この矩形状の寸法をケース本体1の内部寸法と一致させておけば、中仕切り部材8や各くさび状部材9はケース本体1内部で動かず、更に、ケース本体1の内部壁面とくさび状部材9の外壁面との摩擦力で固定さるので、くさび状部材9相互を接着したりすることは行わなくてもよい。
【0067】
この図7及び図8に示す実施形態についても、図示のものに限定されるものではなく、この発明の範囲内において適宜設計変更して実施することができ、くさび状部材9も6つに限定されるものではなく、使用用途等により適宜変更して実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】この発明のヤエン収納ケースの一実施形態の分解斜視図である。
【図2】中仕切り部材を構成する第1部材を展開した状態の平面図である。
【図3】中仕切り部材の分解斜視図である。
【図4】中仕切り部材の斜視図である。
【図5】中仕切り部材を下方から見た斜視図である。
【図6】ヤエン収納ケースの開口部付近の断面図である。
【図7】この発明のヤエン収納ケースの他の実施形態の分解斜視図である。
【図8】(A)は中仕切り部材を構成するくさび状部材の斜視図、(B)はくさび状部材を集合させた中仕切り部材全体の斜視図である。
【図9】ヤエンの正面図である。
【図10】ヤエンを用いたイカ釣りの仕掛けを示す概略図である。
【符号の説明】
【0069】
1 ケース本体
2 中仕切り部材
3 開口部
4 閉鎖片
5,7 面ファスナー
6 係止片
8 中仕切り部材
9 くさび状部材
10 第1部材
11,12,13 斜面形成部
14,15,16,17,18,19 縦壁面形成部
20 第2部材
21 天面
22 縦壁面
30 ヤエン
31 シャフト
32 釣り針
33 支柱
34 フック
a 90°山折り線
b 180°谷折り線
S1,S2,S3,S4,S5,S6 収納部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形状で長さ方向の両端面の全面が開閉自在な開口部となるケース本体と、ケース本体内に収納される中仕切り部材とからなるヤエン収納ケースであって、ケース本体の開口部が中仕切り部材により横方向に並んだ複数の収納部に区切られ、各収納部がケース本体の他方端面に向かうほど上下幅が狭まるくさび形状をしていることを特徴とするヤエン収納ケース。
【請求項2】
上記中仕切り部材が、折り曲げを保持可能な板状体からなり、長さ方向両端部に達する複数本の帯状の斜面形成部が、その間に縦壁面形成部を挟んで形成され、斜面形成部の両側辺を90°の山折りとし、縦壁面形成部内で一の斜面形成部の一方端から隣の斜面形成部の他方端まで達する直線上を180°の谷折りとすることで、斜面形成部がその傾斜方向を交互に違えて並んだ第1部材と、同じく折り曲げを保持可能な板状体からなり、前記斜面形成部と同じ幅の帯状の天面とその両側辺を90°の山折りとして縦壁面を形成した1又は2以上の第2部材とからなり、第1部材の一部の縦壁面形成部の180°の谷折り部分に第2部材の縦壁面を嵌め込んだ状態で形成されていることを特徴とする請求項1に記載のヤエン収納ケース。
【請求項3】
上記中仕切り部材が、斜面形成部が3本形成された第1部材と、1つの第2部材とからなり、ケース本体両端の各開口部にて収納部が3つずつ設けられていることを特徴とする請求項2に記載のヤエン収納ケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−17152(P2010−17152A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−181922(P2008−181922)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【出願人】(592258524)大原商事株式會社 (1)
【Fターム(参考)】