説明

ヤードクレーンの給電装置

【課題】クレーンの高所に設けてある運転室内の操縦者が、人手を借りずにケーブルを電源に接続するように構成することを目的とする。
【解決手段】タイヤ式門形クレーンの給電ケーブル用リールより給電ケーブルを案内する案内手段と、給電ケーブルの先端に設けたプラグ体と、コンテナ蔵置レーンの側部にプラグを受入れるソケット体とを有し、ソケット体には嵌合凹部が設けられ、この部分に減圧を作用させてプラグ体をこの嵌合凹部に確実に保持させ、給電電極と受電電極との接合を確実にしたヤードクレーンの給電装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンテナヤードにおいてコンテナを荷役するヤードクレーンにおける電源とクレーン側より延長されるケーブルとの接合が、距離をおいても極めて容易な給電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大量の貨物をまとめて輸送する手段としてコンテナ船が使用されていることは周知であるが、このコンテナが所定の配送先まで配送されるまでの各段階の荷役方法の概要は次の通りである。
【0003】
コンテナ船はコンテナヤードに設けてある岸壁に接岸した状態で、この岸壁に沿って設けてあるレール上を移動するコンテナクレーンに付設されている海上に突き出したガーダー上を移動するトロリーと連携作動する吊具によって前記コンテナ船上のコンテナが吊上げられ、次いでこのクレーンの本体の脚部の下方の荷降ろしスペースで待機しているシャシに載せられ、このシャシはコンテナヤードに配送先などで区別されている所定のレーンに移動し、このレーンで待機しているヤードクレーンによって多段に積み上げられる。そしてこの積上げられたコンテナは、再びヤードクレーンによってシャシに載せられて所定の配送先に配送される(図13参照)。
【0004】
ヤードクレーンは、門型に形成された本体の両側に伸びる脚部の下部にタイヤ式走行装置を固定し、この走行装置を中央に設けられた支持軸を中心として90°旋回するようになっており、また、地上15〜25mも上方に位置するガーダーに配置されたレール上を移動するトロリーより吊下げられた吊具によってコンテナを荷役するように構成されている。
【0005】
このヤードクレーンは、積上げられたコンテナ群のレーンを跨ぐように移動してコンテナを荷役する荷役操作と、他のレーンなどに移動して荷役の応援する操作、例えば、他のレーンの荷役が頻繁に行われるのでこれを応援する荷役操作とがある。
【0006】
従って、前者におけるヤードクレーンは、コンテナが積上げられレーンを跨いで移動する通常荷役操作であり、後者は他のレーンへ移動するためのレーン替え操作であり、後者のクレーンの動きは複雑かつヤード全体に広がることになる。
【0007】
通常のヤードクレーンの動力源は、クレーン本体の下部構造であるシルビーム上にディーゼルエンジン(以下、DEと称する)で発電機を駆動し、この発電機で発生した電力で荷役用の主モーターと走行装置のモーターをその電力で駆動するように構成されている。
【0008】
ヤードクレーンの荷役操作と走行操作とに必要な電力の全部を1台の大型DEで賄う場合は、大量の排気ガスと騒音が発生し、ヤード全体の環境衛生上に問題がある。そこで大きな動力を必要とする荷役用のモーターはヤードに設けた給電装置を使用し、走行装置のモーターの電力をシルビームに搭載された小型の補助DEを使用する方法が提案されている。
【0009】
(給電操作上の問題)
ヤードクレーンにおける荷役の動力源として電気モーターを使用する場合の電源電圧は440Vの交流電気が一般に使用される。この場合、地上に設置された交流の給電装置とクレーン側から延長される電源ケーブルとを接続するには、距離があるためその接続操作に問題がある。
【0010】
つまり、ヤードクレーンの運転室は、地上15m〜25mの位置に存在するガーダーの位置に設置されており、もし、運転者自身がこの電源と給電用コネクタとを接続しようとする場合は、運転者が高所にある運転室と地上にある電源装置との間を急勾配のタラップを利用して往復しなければならず、その結果、運転者の時間が無駄となる上に非効率で体力的に問題がある。更にこの給電操作には運転者自身が電気の取扱資格を取得する必要がある。
【0011】
更に、ヤード上にクレーンのケーブルと、給電装置とを接続する専属の要員をヤード上に配置した場合は、人件費が高額となる上に無駄な作業が多く、かつ危険性があるという問題がある。
【0012】
(公知技術)
門型クレーン本体の両脚の下端に設けた複数の走行用タイヤにより、クレーンの走行路(レーン)に沿って移動するタイヤ走行クレーンにおいて、走行路に沿って適宜間隔をおいて複数の支柱(電柱)を植立し、これの上部に給電用トロリー線を設け、クレーン側に前記トロリー線に接触する集電装置(パンタグラフ)を備えた装置が提案されている(特許文献1)。
【0013】
また、レーンの中央部に複数のコネクタ機構を設けた電源装置を配置し、ヤードクレーンに設けたケーブルリールより繰出す電源ケーブルの先端のコネクタを前記電源装置の接続具に挿入して接続するタイヤクレーン式給電装置が提案されている(特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平5−319777号公報
【特許文献2】特開2003−137493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
特許文献1に記載された発明は、ヤードに沿って電源ケーブル用の支柱と立て、この支柱の上部に横桁を設け、これの下方にケーブルを支持する構成とすることが必要であり、この給電方式を採用した場合はヤード全体に支柱を林立させるような状態となり、これに伴ってレーンの間隔を広くとらなければならず、また、クレーンを横移動させる際には、そのレーンの端部に限定され途中から行うことができないという欠点がある。
【0016】
特許文献2には、タイヤ式走行装置を使用し、クレーンに小型のDEを搭載して発電機を駆動し、その電力で前記走行装置のモーターを駆動して異なるレーンへのレーン替え操作を行うことを教示しており、本発明はこの発明の技術的思想を利用することができる。
【0017】
本発明は、クレーンに搭載された小型DEを使用して発電し、その電力で走行装置を駆動し、ヤードに固定された給電装置よりケーブルで受電して電動モーターを作動して荷役を行う方法において、前記給電装置の送電側と受電側のケーブルとの接合を、例えば前記のように、クレーンの高所に設けられた運転室にいる操縦者がその操作ができる給電装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記目的を達成するための本発明に係るクレーンの給電装置は次のように構成されている。
1.門型クレーン本体と、この本体を構成する二組の脚部材の下端に操向可能に設けタイヤ式走行装置を有するクレーンであって、前記本体に搭載された給電ケーブル用リールと、該リールに巻回される給電ケーブルと、ヤードに沿ってクレーンの走行方向を案内する案内手段と、
前記給電ケーブルの先端に設けたプラグ体と、前記レーン上に固定したソケット体を有し、前記ソケット体は側面視で下方が縮小した多角形であり、クレーンの移動方向における一面が傾斜面で形成され、他方の面に受電電極が配置されており、前記ソケット体は上面の中央部に前記プラグ体を受入れる嵌合凹部が開口され、更に前記嵌合凹部内に空気を吸引する手段を有し、前記嵌合凹部内に給電電極を、これに対応するプラグト体に受電電極を設け、前記プラグ体が前記嵌合凹部に滑って収容されて前記給電電極に対して受電電極が電気的に接合するように構成されていることを特徴としている。
2.前記プラグ体は、クレーンの前進方向の面に傾斜面を、この面と反対側の面を略縦方向の面に形成し、全体として下側が薄くなった多角形に形成されており、前記ソケット体に上面に開口されている嵌合凹部に前記プラグ体が落し込まれると、前記嵌合凹部に嵌合状態となり、前記嵌合凹部内に作用する減圧によって吸着され、その結果、前記給電電極と受電電極が電気的に接触するように構成したことを特徴としている。
3.前記ソケット体は、その上面にプラグ体を受止め、嵌合凹部内に案内する受け止め面と、これに続いて嵌合凹部を構成する面が形成されていることを特徴としている。
4.門型のクレーン本体と、この本体を構成する二組の脚部材の下端に操向可能に設けたタイヤ式走行装置を有するクレーンであって、前記本体に搭載された給電ケーブル用リールに巻回された給電ケーブルと、前記給電ケーブルを前記走行装置の近傍に案内するガイド装置を設けており、前記ガイド装置は、前記ケーブルをクレーンの走行速度に対応させて前記ケーブルを送出して前記プラグ体をソケット体に案内する装置であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
ア.本発明は、前記のように構成されているので、ヤードクレーンは搭載されている補助のDEを駆動して発電し、この電気によって走行装置の電気モーターを駆動し、所定の位置に設置されている給電装置とクレーン本体側から延長される給電ケーブルとを、かなりの距離がありながら自動的に接続することができる。
【0020】
従って、クレーンの運転者は従来のように運転室より地上に一々降りて給電操作することも、地上に給電のための電気の取扱い資格を持つ作業員を配置する必要もない。更にヤード上に作業員を配置しなくて良いので作業員の危険性を排除できる。
イ.ソケット体がプラグ体の嵌合凹部内に収容される時、或いは所定の位置に収容された時に、ソケット体側に減圧が作用しているのでプラグ体がソケット体に確実に嵌合され、保持されて強力な電気的な接合が行われる。
ウ.また、クレーンの運転者は高所に居ながら、ヤード上で作業する他のクレーンの動きに注意してクレーンが属しているレーンにおける荷役操作をすれば良いので、安全かつ効率的に、荷役操作やレーン替え操作を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】ヤードクレーンの荷役状態を示す正面図である。
【図2】同上側面図である。
【図3】給電ケーブルのガイド装置の他の例を示す正面図である。
【図4】ソケット体とプラグ体との接合状態の説明用横断面図である。
【図5】同上横断面図である。
【図6】ソケット体の平面図である。
【図7】ソケット体に設置される給電盤の正面図である。
【図8】別の実施例に係るソケット体とプラグ体との嵌合状態を示す断面図である。
【図9】図8に示すソケット体の平面図である。
【図10】図8のX―X線断面図である。
【図11】給電装置の作用説明図である。
【図12】(A)はプラグ体が係合したソケット体の断面図、(B)はプラグ体のストッパーの断面図、(C)は受電電極配置盤の正面図をそれぞれ示す。
【図13】コンテナヤードにおける荷役状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明に係るヤードクレーンの給電装置の詳細を説明するが、説明の便宜上、前段でヤードクレーンの構成について、後段で給電装置を構成するプラグ体とソケット体とされらの機能について説明する。
【0023】
図1の正面図と図2の側面図に示すように、ヤードクレーン1は、門型クレーンであって、間隔をあけて配置された脚部2、2aの上端をガーダー3で結んで全体を門型に形成している。そしてガーダー3の両縁に設けたレールによってトロリー4を前後に移動できるように支持している。このトロリー4には運転室5が設けてあり、このトロリー4より繰り出されるロープ7によって吊具6を吊っており、この吊具6の下部構造であるスプレッダー6aによってコンテナCの荷役操作を行うように構成されている。
【0024】
また、図2に示すように脚部2,2aの下部にはヤード上の走行に便利なようにタイヤ式走行装置8が、中心軸を支点として片側が90°の範囲で操向機構により操向できるように構成されている。脚部2の下部を結ぶ梁材であるシルビーム2sの上に小型DEと、これで駆動される発電機などからなる電源装置が設置されており(不図示)、これで得られた電力でタイヤ式の走行装置8の車輪8aのモーターを個々に駆動するように構成されている。
【0025】
脚部2の側方には給電ケーブル9を案内するガイド装置10が設けてあり、その下端より繰り出される給電ケーブル9をコンテナヤードY上のレーンLa〜Lnに沿って設けた溝11に嵌入するように案内する。詳細は後述するが、給電ケーブル9の先端に電源用プラグ体22が設けられ、このプラグ体22はヤードY上に固定されているソケット体25と嵌合して両者の電極が接触して通電するように構成されている。
【0026】
図3に示すように給電装置30を構成する部材であるガイド装置10は、上部に漏斗状に開口して給電ケーブル9の受け部材10aとしてパイプ10bに設け、このパイプ10bの下方の部分はジョイント10cで上下に分離され、下部のパイプにシリンダ装置などで構成される駆動装置10dを設け、下部のパイプの下端にケーブル繰出装置10eを設けている。このケーブル繰出装置10eはケーブル9の周囲をピンチローラーで挟んでクレーン1の走行速度に合わせてケーブル9を繰出して、レーンの側部に設けてある溝11内(また、ソケット体25とプラグ体22との係合操作)に正確に収容するように構成されている。
【0027】
クレーン1の走行は“自動走行式”であって、レーンLnの側部に設けてある磁気誘導手段15の位置を磁気検出器16で感知し、信号処理装置17によって制御信号Sを作成してクレーン1の走行方向を制御して走行し、また、この信号Sを駆動装置10dに入力してケーブル繰出装置10eの繰出方向(前後左右の首振り運動)及びケーブルの送り出し量など)を制御してケーブル9がヤードYに設けた溝11に収容されるように送りだす。また、このケーブル繰出装置10eの首振り運動は、下記するプラグ体22をソケット体25に案内して給電状態とする場合の案内装置の機能も持っている。
【0028】
(ソケット体25とプラグ体22の構造)
次に本発明に係る給電装置30の主要部材を構成するプラグ体22とソケット体25の構造とその作用について説明する。
【0029】
図4は、ソケット体25の嵌合凹部25eにプラグ体22が係合する直前の断面図(プラグ体22の横断面は長方形)を、更に図6にソケット体25の平面図をそれぞれ示している。
【0030】
プラグ体22は側面視で一面(例えば、クレーンの走行方向前方の面)の下方に傾斜面22aを形成し、他面を縦面22b(傾斜面22aより立っているとの意味)として全体が先細りの三角形に形成し、この縦面22bの下側に受電電極22cを、上部に感知電極22dをそれぞれ配置している。
【0031】
一方、ソケット体25は、上面の中央部に傾斜面25aとこれに続いて形成されたプラグ体22を受入れて嵌合凹部25eを配置し、図において左側(例えばクレーンの進行方向)に小高い丘からなる止め部25fを、右側に前記止め部25fより高さが低い案内部25gを形成し、更に前記嵌合凹部25eの縦面にプラグ体22の受電電極22cと接触する送電電極25hと、プラグ体22との嵌合状態を感知する感知電極25iを配置している。更に、このソケット体25は図6に示すように嵌合凹部25eの周囲にこの部分の一部を囲むように土手部25nが形成されて嵌入したプラグ体22が外れないように保護するように形成されている。
【0032】
図7は、ソケット体25の嵌合凹部25eの縦面に設けられた絶縁材料ならなる電極盤25tを示しており、これには送電電極25hと感知電極25iと、左右に吸引口25Kが設けてある。更にこの電極盤25tの周囲にゴム状物からなる額縁部25wを設けておくことによって、この電極盤25tの表面にプラグ体22の受電電極22cを設けた縦面22bを確実に吸着して通電を確実に実行できるように構成している。
【0033】
前記嵌合凹部25cの底部に吸引管25jを、また縦面25yをそれぞれは位置し、これらの配管に排気ブロワー(図11参照)あるいは真空ラインが接続している。従って、排気ブロワーが作動すると嵌合凹部25e内は排気されて減圧状態を保持することとなり、その結果、プラグ体22が接近すると、これを積極的に気流で誘導することになる。更に前記額縁部25wの枠内が減圧状態となると、電極盤25tの内部の面積でプラグ体22の縦面22bを強力に吸着するように作用する。
【0034】
つまり、嵌合凹部25e内に吸込み作用を発生させることでプラグ体22の受電電極22cとソケット体25の送電電極25hが確実に接触するように作用するのである。
【0035】
前記吸引管25j、25kに作用する減圧は、クレーン1側からの信号によって排気ブロアを駆動するのが好ましく、常時排気ブロワ55(図11)を作動させる必要がない。そこで、この嵌合凹部25eが常時開口状態であると、その中に塵や雨水が浸入することになるので、これを防止する意味で、自動開閉型の蓋(図11)と、逆止弁を設けた排水管を連結しておくと、電極の接触不良などの欠点が発生することを防止できる。
【0036】
また、プラグ体22とソケット体25はプラスッチックやガイシなどの絶縁物で構成し、一体的あるいは複数に分割されたものを組立てるように構成することによって組立てや修理や検査を容易に行うことができる点で有利である。
【0037】
さて、再びプラグ体22の構成であるが、前記止め部25fは小高い方がプラグ体22を受止める効果があるので、点線で示すように案内付加部25m(プラスッチック成形体やゴム状物など柔軟な材料や線材を使用しておけば、これがクッシヨンとして作用してクレーンの走行に伴うプラグ体22の動きを和らげる効果がある。
【0038】
(第2の実施例)
図8ないし図12は、前記実施例の構成を現実的に変形させたものであるが機能的には同一である。
【0039】
図8は、ソケット体40をプラスチックなどの絶縁性材料を使用して形成し、側面視で断面が漏斗状の、プラグ体35を受入れる嵌合凹部41を形成し、傾斜が大きな前面を傾斜面41aとし、後面を前記傾斜面41aより傾斜角が少ない縦面42に形成し、この縦面42に図12(C)(図7を参照)で示した構成の電極盤43を配置し、この電極盤43の背面に減圧ボックス44を配置している。なお、43aは給電電極、43bは感知電極、43は排気口である。
【0040】
更に、前記嵌合凹部41の底部に減圧部45を形成し、この減圧部45と減圧ボックス44とは排気管46と枝管46aとによって排気ブロア55(図11)や排気管などに接続されて嵌合凹部41内を減圧状態に保持すると共に、減圧ボックス44内も同時に減圧して排気口43cより排気することによって図12(C)に示す電極盤43にプラグ体35をぴったりと吸着して電極同士を強く、しかも脱落しないように接触させる作用を奏するように構成している。
【0041】
この実施例においては、ソケット体40の上部に硬質ゴムなどの柔軟材で成形されたガイド部材49を配置した点にも特徴がある。つまり、プラグ体35が強くこのガイド部材49に衝突しても、これを柔らかく受けて嵌合凹部41内に誘導することができる。また、プラグ体35が振れながら衝突したときには、前方に位置するガイド部材49の一部が曲がってプラグ体35を逃がす機能もある。
【0042】
図8、9、11を参照して理解できるように、ガイド部材49はプラグ体35を受け易いようにU形に後方が開口されており、クレーン1の操縦者は安心して給電装置30を、距離をおいて連結することができる。
【0043】
図12(A)と(B)に示すように、プラグ体35の前面に凹部35aを形成し、嵌合凹部41の対応する位置に係止体50を設けており、この係止体50はバネ51で押圧する構成のストッパー52を設けたものである。この構造を採用すると、例えば、プラグ体35の減圧吸着状態が解除されてもこのプラグ体50を保持しておくことができる。
【0044】
図11は、本発明に係る給電装置30(図2)の作動状態の説明図であって、この装置には排気ブロア55と作用させて嵌合凹部41内と減圧ボックス44内を減圧状態に保持でき、給電状態でない時には、この嵌合凹部41内に溜まった水を逆止弁56を介在させた配水管54より排出してソケット体40の機能を保持するように構成されている。
【0045】
(クレーンの操縦方法)
図13は、コンテナCの荷役操作の説明図であり、これを利用して本発明の荷役方法
を説明する。
【0046】
コンテナヤードYの海側に設けられた岸壁Wにコンテナ船100を接岸させ、このコンテナ船100に積載されているコンテナCをコンテナクレーン101によって吊上げ、このクレーン101の下方で待機しているシャシ103に載せ、このコンテナCの搬送先毎に指定されているレーンLa〜Lnの内、選定されているレーン(例えばLa)に搬送され、そのレーンLaで待機しているヤードクレーンKaのコンテナ吊上げ位置で停止し、コンテナCを吊上げ、レーンLaに積まれているコンテナCの所定の場所に荷役されることになる。
【0047】
さて、ヤードYにはレーンLa〜Lnが決められており、このレーンに沿ってケーブル9が収用される溝11が設けてあり、レーンの両端部と中央部にソケット体25が配置されている。
【0048】
前記のようにヤードクレーンKa〜Knには図2〜5に示すようにシルビーム2sの上にケーブルリール9Aが配置され、これより繰出されるケーブル9は上下方向に設置されたガイド装置10によって案内されながらケーブル9の先端に取付けられているプラグ体22を、ソケット体25に、特別に止むを得ない場合を除いて、手操作によることなく自動的に嵌合させる。そしてソケット体25(電源側)よりプラグ体22(受電側)とケーブル9を通じてヤードクレーンKa〜Knの荷役用モーターを駆動してコンテナCの荷役を行うのは前記の通りである。
【0049】
レーンに沿ってヤードクレーンKa〜Knが移動しながら荷役する“通常の荷役操作”の場合は、前記給電装置30(図1、給電ケーブルリール9A、ガイド装置10、プラグ体22、ソケット体25で構成)からによって給電によって電気モーターを駆動して荷役を行う。
【0050】
(レーン替え操作)
次にクレーンKa〜Knをレーン替え操作の場合には、前記ソケット体25とプラグ体22の係合による電力の供給を断ち、脚部2のシルビーム2s上に設置されている小型DEによって発電機で発電し、その電力でレーンの端部まで移動し、そこで走行装置8の操向機構を操作して走行装置8の向きを90°の範囲で操向することによって荷役するレーンの端部まで移動する。
【0051】
例えば、レーンLfで荷役していたクレーンKfをレーンLaで作業中のクレーンKaの応援荷役する場合は、ア.前記方法によってレーンKfの給電装置30の給電状態を絶ち、そのレーンLfで荷役していたクレーンKfをレーンLfの右端にまで移動する。イ.そこで走行装置5の向きを90°操向する。ウ.次いで、矢印のように、このクレーンKfを応援で荷役するレーンLaの左側まで前進させて停止する。エ.そしてクレーンKfの操向操作によって走行装置8の向きをレーンLaに合わせる。オ.次にクレーンKfをレーンKaの左側より右に走行させて点線で示すKfの位置へ移動する。この状態になるとレーンLaに対してクレーンが元のクレーンKaと、応援クレーンKfの2台となり、このレーンLaの荷役操作は二倍の能力となる。
【0052】
次にレーンLbに二台のクレーンKxとKyが配置されて荷役している時に、このレーンLbの仕事量が減少し、二台のクレーンKx、Kyとでは余裕が出来た時、移動し易いと考えられる1台のクレーンKy(別のクレーンKxでも良い)をレーンLaの応援クレーンとしたい時は、クレーンKyをこのレーンLbの右端に移動する。
【0053】
ここで走行装置8を90°操向する。そして矢印で示すように目的とするレーンLaの右縁側に移動する。レーンLaの右端で再び操向装置を直角に操向して走行装置8の向きをレーンKa側に向け、この状態でクレーンKyを左方向に横移動させてレーンLaに進入する。この状態になると、元のクレーンKaと応援のクレーンKyの二台のクレーンでレーンLaの荷役をすることになる。
【0054】
以上説明したように、レーンLa〜Ln上の荷役操作は該当するレーンに属するソケット体25とクレーン側のケーブル9の先端に取り付けたプラグ体22からなる“給電装置30”の電気的な接合状態を、目的に応じて“給電状態あるいは非給電状態”としてクレーンを移動させたり、目的とするレーンにおいて荷役作業をさせたりすることができる。
【0055】
そして、荷役を行ったレーンより他のレーンなどに移動する“レーン替え”の時には、クレーンに搭載した小型DEにより発電した電力によって走行装置8のモーターを駆動して行うことができる。この小型DEをに使用したクレーンのレーン替えは、小動力を必要とする時にしかDEを使用しないので、排気ガスの発生を最小に抑制することができ、環境汚染を最小に限定する、清潔なクレーンの荷役作業を行うことができる。
【0056】
また、本発明においては、クレーンへKa〜Knの給電操作を自動的に行うことができるので、クレーンの操縦者は担当しているクレーンの運転室5(図1)に乗ったままで給電操作を、遠隔的に行うことが出来るのである。
【0057】
(変形態様)
本発明は、プラグ体の形状と、これを受けるソケット体の嵌合凹部との形状と、この嵌合凹部内の減圧機能が重要である。従って、プラグ体と嵌合凹部との形状は、実施例に限定されることなく、例えばプラグ体の傾斜面は逆の面であっても構わないし、また、下が縮小した二等辺三角形であっても良く、このプラグ体がソケット体の嵌合凹部内に降下して嵌合する機能を持つ物であれば、他の形状の物であっても構わない。
【符号の説明】
【0058】
1、Ka・・Kn ヤードクレーン
2s シルビーム
8 タイヤ式走行装置
9 ケーブル
10 ガイド装置
10e ケーブル繰出し装置
11 ケーブル収用溝
15 案内手段(磁気誘導手段)
22 プラグ体
22c 受電電極
25 ソケット体
25a 傾斜面
25e 嵌合凹部
25f 止め部
25g 案内部
25h 送電電極
25k 排気管
25j 排気管
25K 吸引口
30 給電装置
Y コンテナヤード
C コンテナ
W 岸壁
ヤードクレーン Ka〜Kn
コンテナレーン La〜Ln

【特許請求の範囲】
【請求項1】
門型クレーン本体と、この本体を構成する二組の脚部材の下端に操向可能に設けタイヤ式走行装置を有するクレーンであって、前記本体に搭載された給電ケーブル用リールと、該リールに巻回される給電ケーブルと、ヤードに沿ってクレーンの走行方向を案内する案内手段と、前記給電ケーブルの先端に設けたプラグ体と、前記レーン上に固定したソケット体を有し、
前記ソケット体は側面視で下方が縮小した略多角形であり、クレーンの移動方向における一面が傾斜面で形成され、他方の面に受電電極が配置されており、前記ソケット体は上面の中央部に前記プラグ体を受入れる嵌合凹部が開口され、更に前記嵌合凹部内に空気を吸引する手段を有し、
前記嵌合凹部内に給電電極を、これに対応するプラグト体に受電電極を設け、前記プラグ体が前記嵌合凹部に降下収容されて前記給電電極に対して受電電極が電気的に接合するように構成されていることを特徴とする給電装置。
【請求項2】
前記プラグ体は、クレーンの前進方向の面に傾斜面を、この面と反対側の面を略縦方向の面に形成し、全体として下側が薄くなった多角形に形成されており、
前記ソケット体に上面に開口されている嵌合凹部に前記プラグ体が降下して前記嵌合凹部に嵌合状態となり、更に前記嵌合凹部内に作用する減圧によって吸着され、前記給電電極と受電電極が電気的に接触するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の給電装置。
【請求項3】
前記ソケット体は、その上面にプラグ体を受止め、嵌合凹部内に案内する止め部と、これに続いて嵌合凹部を構成する面が形成されていることを特徴としている請求項1及び2の何れかに記載の給電装置。
【請求項4】
門型のクレーン本体と、この本体を構成する二組の脚部材の下端に操向可能に設けたタイヤ式走行装置を有するクレーンであって、
前記本体に搭載された給電ケーブル用リールに巻回された給電ケーブルと、前記給電ケーブルを前記走行装置の近傍に案内するガイド装置を設けており、前記ガイド装置は、前記ケーブルをクレーンの走行速度に対応させて前記ケーブルを送出して前記プラグ体をソケット体に案内するように構成された装置であることを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載の給電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−206853(P2012−206853A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75860(P2011−75860)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)