説明

ユニット形コンデンサ装置

【課題】 装置全体の小型化およびコスト低減を図り得るユニット形コンデンサ装置を提供する。
【解決手段】 直列リアクトル3と進相コンデンサ4とを一体化したユニット形コンデンサ装置であって、直列リアクトル3を支持体5で保持し、その支持体5の直列リアクトル下方に位置する枠部8の内部に、コンデンサ素子を樹脂でモールドした進相コンデンサ4を収容した構造を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧受電設備などに使用され、直列リアクトルと進相コンデンサとを一体化したユニット形コンデンサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、高圧受電設備などにおいて、受電電力の力率を100%近くに保持することが望ましい。一般的に、負荷固有の力率は、遅れ電流で60〜70%程度のものが多いことから、この力率を95〜100%に改善するために、進み電流を流す進相コンデンサが使用されている。
【0003】
一方、近年では負荷の特性が非線形のものが比重を占めるようになり、負荷電流の波形が正弦波から歪む、つまり、負荷電流に含まれる高調波の割合が増加する傾向にある。この高調波の増加により、進相コンデンサが過熱する等の問題が発生することから、その対策として、進相コンデンサに直列リアクトルを接続するようにしている。
【0004】
この種、直列リアクトルと進相コンデンサとを一体化したユニット形コンデンサ装置には、進相コンデンサを収納し絶縁油が充填されたコンデンサ容器と、そのコンデンサ容器の上に取り付けられ、直列リアクトルを収納し絶縁油が充填されたリアクトル容器と、コンデンサ容器とリアクトル容器との間に設けられ、進相コンデンサと直列リアクトルとを接続する中間接続部とで構成されたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、他のコンデンサ装置としては、一つのコンデンサ容器内で、上部に直列リアクトル部を、下部に進相コンデンサ部を収容配置した構造のものがある(例えば、特許文献2参照)。このように、一つのコンデンサ容器に直列リアクトル部と進相コンデンサ部とを収容することにより、直列リアクトルと進相コンデンサとを別体とした場合よりも設置面積を減らし、ブッシング(絶縁碍子)の本数を削減することにより、設置面積およびコストの低減を図るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実公昭59−32108号公報
【特許文献2】実用新案登録第3127927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前述の特許文献1に開示された従来のコンデンサ装置では、コンデンサ容器に進相コンデンサを収納すると共に、リアクトル容器に直列リアクトルを収納した構造、つまり、外部容器を備えた油浸絶縁方式を採用した構造であるため、装置全体が大型化する。増してや、コンデンサ容器とそのコンデンサ容器の上に配置されたリアクトル容器との間に、ブッシング(絶縁碍子)等からなる中間接続部が位置することから、装置のコンパクト化を困難なものにしていた。
【0008】
また、特許文献2に開示された従来のコンデンサ装置では、直列リアクトルと進相コンデンサとを別体とする場合よりも設置面積を減らし、ブッシングの本数を削減することにより、設置面積およびコストを低減することが可能である。しかしながら、直列リアクトル部および進相コンデンサ部のそれぞれについてコンデンサ容器内で対地絶縁をとる必要があり、装置全体が大型化する。また、直列リアクトル部が進相コンデンサ部と共にコンデンサ容器に収容した構造であることから、直列リアクトル部の放熱構造を必要とするためにも装置全体が大型化するという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は前述した問題点に鑑みて提案されたもので、その目的とするところは、装置全体の小型化およびコスト低減を図り得るユニット形コンデンサ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述の目的を達成するための技術的手段として、本発明は、直列リアクトルと進相コンデンサとを一体化したユニット形コンデンサ装置であって、直列リアクトルを支持体で保持し、その支持体の直列リアクトル下方に位置する枠部の内部に、コンデンサ素子を樹脂でモールドした進相コンデンサを収容したことを特徴とする。
【0011】
本発明では、直列リアクトルの支持体の枠部の内部に、コンデンサ素子を樹脂でモールドした進相コンデンサを収容した構造を採用したことにより、従来のような外部容器を持たない構造であることから、装置全体のコンパクト化が実現容易である。なお、外部容器を備えた油浸絶縁方式を採用しない完全な乾式であるため、油漏れの懸念がない。
【0012】
本発明において、直列リアクトルと進相コンデンサとの電気的接続は、コンデンサ素子と電気的に接続された絶縁被覆電線を進相コンデンサの外装モールド部から導出し、その導出された絶縁被覆電線の先端部を直列リアクトルの端子部に接続した構造が望ましい。このような接続構造を採用すれば、進相コンデンサの端子部としてブッシング(絶縁碍子)が不要となることから、ブッシングの本数を削減できてコスト低減が図れる。
【0013】
本発明における進相コンデンサは、コンデンサ素子の樹脂モールド後に支持体の枠部に挿入されているか、あるいは、コンデンサ素子を支持体の枠部で樹脂モールドされていることが望ましい。前者の場合、コンデンサ素子を樹脂でモールドすることにより進相コンデンサを製作し、その製作後に進相コンデンサを直列リアクトルの支持体の枠部に組み付けることになる。また、後者の場合、直列リアクトルの支持体の枠部を金型として利用し、その支持体の枠部でコンデンサ素子を樹脂モールドすることにより、進相コンデンサの製作と組み付けを同時に行うことになる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、直列リアクトルを支持体で保持し、その支持体の直列リアクトル下方に位置する枠部の内部に、コンデンサ素子を樹脂でモールドした進相コンデンサを収容した構造を採用したことにより、従来のような外部容器を持たない構造であることから、装置全体のコンパクト化が実現容易である。このように、装置全体のコンパクト化により、このコンデンサ装置を盤内に収納するに際してもスペースの制約を受けることなく、盤内への設置も容易となってその実用的価値も大きい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態で、ユニット形コンデンサ装置を示す斜視図である。
【図2】図1のユニット形コンデンサ装置を示す断面図である。
【図3】コンデンサ素子の樹脂モールド後に支持体の枠部に組み付けられた進相コンデンサを示す断面図である。
【図4】コンデンサ素子の樹脂モールドと同時に支持体の枠部に組み付けられた進相コンデンサを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係るユニット形コンデンサ装置の実施形態を以下に詳述する。なお、以下の実施形態では、高圧受電設備などに使用され、直列リアクトルと進相コンデンサとを一体化したユニット形コンデンサ装置を例示する。
【0017】
この実施形態におけるユニット形コンデンサ装置は、図1および図2に示すように、環状のコイル部1の中央に鉄心部2を貫通させた直列リアクトル3と、コンデンサ素子(図示せず)を樹脂でモールドした進相コンデンサ4とを一体化したもので、直列リアクトル3を保持する支持体5を備えている。この支持体5は、直列リアクトル3の鉄心部2の上部に取り付けられた断面L字状の上取付部6と、直列リアクトル3の鉄心部2の下部に取り付けられた断面コ字状の下取付部7と、直列リアクトル3の下方に位置し、直列リアクトル3の下取付部7が固定された枠部8とで構成されている。この直列リアクトル3の下方に位置する枠部8の内部に進相コンデンサ4を収容する。
【0018】
この実施形態では、枠部8の内部に進相コンデンサ4を収容した構造を採用したことにより、従来のような外部容器を持たない構造であることから、装置全体のコンパクト化が実現容易となる。なお、外部容器を備えた油浸絶縁方式を採用しない完全な乾式であるため、油漏れの懸念がない。このように、装置全体のコンパクト化により、このコンデンサ装置を盤内に収納するに際してもスペースの制約を受けることなく、盤内への設置も容易となってその実用的価値も大きい。また、直列リアクトル3は、支持体5の下取付部7で進相コンデンサ4と一体化することにより露呈した構造となっているので放熱し易く、その直列リアクトル3の発熱が進相コンデンサ4に影響することも抑制できる。
【0019】
直列リアクトル3と進相コンデンサ4との電気的接続は、コンデンサ素子と電気的に接続された絶縁被覆電線9を進相コンデンサ4の外装モールド部10から導出し、その導出された絶縁被覆電線9の先端部を、直列リアクトル3のコイル部1に設けられた端子部11に接続する。なお、進相コンデンサ4の外装モールド部10から絶縁被覆電線9を導出するため、枠部8の対応部位には絶縁被覆電線9を挿通させる開口部12が設けられている。この絶縁被覆電線9は、コンデンサ素子を樹脂でモールドする進相コンデンサ4の製作時に、コンデンサ素子と電気的に接続しておくことになる。図2の符号13は、コンデンサ装置を系統に接続するために、直列リアクトル3のコイル部1の端子部14に接続された引き出し電線である。
【0020】
この実施形態では、コンデンサ素子と電気的に接続された絶縁被覆電線9を進相コンデンサ4の外装モールド部10から導出し、その絶縁被覆電線9の先端部を直列リアクトル3の端子部11に接続した構造を採用したことにより、進相コンデンサ4の端子部としてブッシング(絶縁碍子)が不要となることから、ブッシングの本数を削減できてコスト低減が図れる。また、進相コンデンサ4の外装モールド部10から絶縁被覆電線9を導出していることから、充電部が露出することはない。
【0021】
前述した進相コンデンサ4は、以下のような手段でもって支持体5の枠部8の内部に収容される。
【0022】
まず、第一の手段としては、図3に示すように、コンデンサ素子を樹脂でモールドした後、その樹脂モールドにより製作された進相コンデンサ4を支持体5の枠部8の内部に挿入配置する。つまり、コンデンサ素子を樹脂でモールドすることにより進相コンデンサ4を製作し、その製作後に進相コンデンサ4を直列リアクトル3の支持体5の枠部8に組み付けることになる。この構造の場合、進相コンデンサ4と枠部8とは別体であるため、その進相コンデンサ4の外装モールド部10と枠部8の内周面との間には若干の隙間tが形成される。
【0023】
第二の手段としては、図4に示すように、コンデンサ素子を支持体5の枠部8で樹脂モールドすることにより進相コンデンサ4を製作する。つまり、支持体5の枠部8を金型として利用し、その枠部8でコンデンサ素子を樹脂モールドすることにより、進相コンデンサ4の製作と組み付けを同時に行うことになる。この構造の場合、進相コンデンサ4と枠部8とは一体物になるため、その進相コンデンサ4の外装モールド部10と枠部8の内周面との間は、隙間が存在せずに密着した状態となっている。
【0024】
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0025】
3 直列リアクトル
4 進相コンデンサ
5 支持体
8 枠部
9 絶縁被覆電線
10 外装モールド部
11 端子部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列リアクトルと進相コンデンサとを一体化したユニット形コンデンサ装置であって、前記直列リアクトルを支持体で保持し、前記支持体の直列リアクトル下方に位置する枠部の内部に、コンデンサ素子を樹脂でモールドした進相コンデンサを収容配置したことを特徴とするユニット形コンデンサ装置。
【請求項2】
前記直列リアクトルと進相コンデンサとの電気的接続は、コンデンサ素子と電気的に接続された絶縁被覆電線を進相コンデンサの外装モールド部から導出し、その導出された絶縁被覆電線の先端部を直列リアクトルの端子部に接続した請求項1に記載のユニット形コンデンサ装置。
【請求項3】
前記進相コンデンサは、コンデンサ素子の樹脂モールド後に支持体の前記枠部に挿入されている請求項1又は2に記載のユニット形コンデンサ装置。
【請求項4】
前記進相コンデンサは、コンデンサ素子を支持体の前記枠部で樹脂モールドされている請求項1又は2に記載のユニット形コンデンサ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−195487(P2012−195487A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59207(P2011−59207)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000003942)日新電機株式会社 (328)