説明

ユーカリ・グロブラスの挿し木採穂母樹の育苗方法

【課題】ユーカリ・グロブラスの効率的なクローン増殖技術を提供する。
【解決手段】ユーカリ・グロブラスの挿し木採穂母樹の育成方法において、有効成分としてパクロブトラゾールを含む植物成長調整剤を、挿し木採穂母樹の培土量1Lあたりの有効成分量が1.25mg以上土壌散布することを特徴とするユーカリ・グロブラス挿し木母樹の育苗方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、挿し穂からの発根率を最大限向上させることのできるユーカリ・グロブラス(Eucalyptus globulus)の挿し木採穂母樹の育苗方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、植物の生育調整に使用されている薬剤は、植物成長調整剤として、植物の発根・活着促進、健苗化、植え傷み防止、側芽発生促進、腋芽抑制、開花・着果・肥大・着色・熟期促進、伸長抑制(矮化)、落下防止、摘果、さび果防止、薬害防止、癒合促進等をその効能としている。これらの内、植物の伸長抑制(矮化)に使用される植物成長調整剤として、アンシミドール剤、ジケグラック剤、ダミノジット剤、メフルイジド剤、クロルメコート液剤、パクロブトラゾール粒剤、イナベンフィド粒剤等があり、作物の収量や生産物の品質向上に貢献している。その使用は、花卉、庭木、果樹、芝、小麦、稲に限られ、使用濃度に依存する薬効成分であるため、薬害の回避方法や使用時期の選定等に知識と経験が必要とされている。
【0003】
植物にとって、根は、生育に必要な水分や養分を吸収する、地上部を支持し倒伏を防止する等多岐にわたっており、農業分野において植物の根を十分に発達させることの重要性は以前から指摘されてきた(例えば、非特許文献1及び2参照)。
【0004】
しかしながら、根の発達を促進する植物成長調整剤は、その数が少なく、効果も十分でなく、更に好ましくない作用を有する場合が多かった。例えば、現在、発根剤として広く用いられているオーキシン系化合物は植物の種類や状態、施用する濃度によっては、葉の上偏成長(epinastic bending)、茎の捻転や茎割れ、根こぶの誘導、更には枯死などといった好ましくない効果を及ぼすことがある。このため、使用方法、使用量等が制限を受け、また根の発達を促進する作用も十分満足できるものではなかった。
【0005】
殺菌活性を有する植物成長調整剤の一種パクロブトラゾールは、植物体内のジベレリン生合成を阻害して、ジベレリンの主要作用である細胞の伸長、すなわち草丈の伸長を抑制する作用を有するために、稲、果樹、園芸作物の矮化、倒伏軽減などに用いられている。
【0006】
ところで、ユーカリ・グロブラスはオセアニア地域に生育し、成長性に優れ、それに加えて、容積重やパルプ収率が高く、産業的に木材生産、パルプ材に適しており、世界各地で植林されている。このユーカリ・グロブラスの優れた形質(成長性、樹形等)をクローン苗生産させることは、産業上の利益になり、効率よくクローン増殖させる技術が世界的に求められている。
【0007】
ゆえに挿し木発根能は、クローン苗生産性に大きな影響を与え、その向上は重要な課題である。成長調整剤を使用する方法が種々検討され、菌株を使用した矮化技術により効率的な育苗管理を行う方法(例えば、特許文献1参照)、植物花芽形成促進剤、又は休眠打破、発根、開花促進、着花促進、草・茎伸長促進等の性能を発現する植物賦活剤等の用途を含む植物成長調整剤としてα−ケトール不飽和脂肪酸誘導体の提供(例えば、特許文献2参照)、ラクトン誘導体、並びに、これを有効成分とする植物成長調整剤および発根誘導剤の提供(例えば、特許文献3参照)、植物の発根促進活性が高く、副作用を実質的に持たないアミド誘導体及び該アミド誘導体を有効成分とする植物成長調整剤の提供(例えば、特許文献4参照)、オーキシン、サイトカイニン、ペプチド、クエン酸シルデナフィルを混合した、植物成長調整剤の製造及び使用方法(例えば、特許文献5参照)などがある。
【0008】
また、ユーカリ属植物およびアカシア属植物の挿し木苗生産にジベレリン生合成経路の阻害剤を用いることを検討しているものもある(例えば、特許文献6参照)。モモやオリーブの採穂母樹を予めパクロブトラゾールで処理しておいてから挿し穂を採取し、採取した挿し穂を挿し付ける前に発根促進剤であるインドール酪酸(IBA)で処理してから挿し付けると生存率や発根率が向上することが知られている(例えば、非特許文献3及び4参照)。
【0009】
しかし、これらの知見の中で、樹種の成長特性を把握し、植物成長調整剤の効果持続性との相関で発根率の向上を目指しているものは皆無である。パクロブトラゾール等の添加によって、発根率の向上は認められるものの、最も発根率が向上するポイントというのは、植物種によりまちまちであり、同一属内であっても種類が変われば、その効果の効き目も変わる。薬剤を植物に投与してから挿し木をするまでの育苗期間、植物体の成長性に着目することなく発根率向上を検討しても、ユーカリ・グロブラスへの発根率の最大向上の最適な条件を見出すことはできないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平10−287520号公報
【特許文献2】特開2006−151830号公報
【特許文献3】特開2003−055366号公報
【特許文献4】特開2001−139405号公報
【特許文献5】特開2001−058912号公報
【特許文献6】特開2001−231355号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Booteら編、Physiology and Determination of Crop Yield、p.65−93、1994
【非特許文献2】根の事典編集委員会編、根の事典、p.261−289、1998
【非特許文献3】Wiesman、Z.、Riov、J.、Epistein、E.、HortScience、24(6)、p.908−909、1989
【非特許文献4】Wiesman、Z.、Lavee、S.、Plant Growth Regulation 14、p.83−90、1994
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
植物への成長調整処理を行う時期は、植物の成長を見ながら何度か処理をしなければならないため、多くの労力を必要とし、容易には成長調整を行うことができなかった。また、挿し木によるクローン増殖をする際、挿し穂材料は多量に必要であるため、生育初期に矮化処理を行ってしまうと、採取できる材料が少なくなってしまう。すなわち、ある程度の大きさに育ってからの矮化処理が必要となる。
【0013】
植物成長調整剤の種類や濃度などは、処理の目的や、植物の種類によって異なるため、その植物に適合した植物成長調整剤や濃度で行う必要がある。増殖に際し、材料の成長抑制と発根率の向上の相関は、樹種間、あるいは同一属内の植物であっても種類が異なれば、その薬品の使用方法は、千差万別となる。
【0014】
本発明は、成長調整剤を用いて、パルプ材の早生樹種として多用されているユーカリ・グロブラスのクローン苗増殖をするための、母樹の育成技術を提供することを目的とするものであり、これにより、挿し木発根率が向上することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、ユーカリ・グロブラスへの矮化処理を行う時期から採穂の時期の最適化を図り、鋭意検討の結果、薬剤量、矮化処理後の育苗期間、母樹の成長性に着目し、発根率が最も向上する最適点を苗の伸びとの相関の下で見出し、本発明を完成させた。
【0016】
本発明は、挿し木採穂母樹の培土量1Lあたり、植物成長調整剤中の有効成分であるパクロブトラゾールが1.25mg以上となるように土壌散布することを特徴とするユーカリ・グロブラスの挿し木採穂母樹の育成方法である。植物成長調整剤の土壌散布後から挿し木作業までの挿し木採穂母樹の育苗期間を1カ月以内、又は、挿し木採穂母樹の伸びが20cm以内に抑制される期間とすることが好ましい。また、挿し木採穂母樹の高さが90〜140cmであることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、挿し木採穂母樹に対する有効成分(パクロブトラゾール)量を特定することにより、発根能力を最大限に促すことが可能となる。また、挿し木採穂母樹の樹高、薬剤投入後の育苗期間を特定することによって、更に発根率を向上させることができ、効率的な苗生産が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の植物成長調整剤の利用は、その効果として、植物の矮化を主目的とするものではなく、ユーカリ・グロブラスのクローン増殖に課題を限定した上で、植物体の樹高の抑制効果の持続性と発根能の相関を得ながら、発根率が向上する最適な条件を探索し、生産性の向上を図ることに着目している。以下、本発明について詳細に説明する。
【0019】
ユーカリ・グロブラスの挿し穂を採取する挿し木採穂母樹の形態としては、ポット苗・露地植栽苗のいずれでもよく、剪定をして萌芽枝を育成したものよりも、自然樹形のものが好ましい。これは、矮化処理をした際、その矮化効果の指標として、樹高の伸び及び腋芽の伸びを測定する必要があり、後者の腋芽の伸びを測定する際は、選定をしたものの方は測定数が多くなり、煩雑であるためである。
【0020】
挿し木採穂母樹の種類として、実生苗だけでなく、挿し木や接ぎ木あるいは組織培養などの方法で、親木を若返らせたクローン苗のいずれを用いてもよい。挿し木採穂母樹の樹齢は特に問わないが、若い方が挿し穂の発根能力が高く好ましい。
【0021】
次に、挿し木採穂母樹を予め植物成長調整剤により処理する方法について説明する。植物成長調整剤により処理する方法には、粒剤あるいは複合肥料で挿し木採穂母樹の周辺土壌を処理する方法、水和剤で挿し木採穂母樹の周辺土壌を処理する方法等がある。処理時期は、夏前の植物の新梢が伸長成長を開始する頃がより好ましいが、伸長成長を行っていれば特に限定されない。
【0022】
植物成長調整剤の種類として、ジベレリン生合成経路の阻害剤は、大別すると、トリアゾール系(パクロブトラゾール、ウニコナゾール)、ピリミジン系(アンシミドール、フルルプリミドール)、イソニコチンアミド系(イナベンフィド)、4級アミン系(クロルメコート)とその他(ダミノジッド、プロヘキサジオン)に分けられる。特に発根を促すために多用される種類として、トリアゾール系のパクロブトラゾールが好ましく、本発明ではこれを使用する。
【0023】
植物成長調整剤の量としては、用いる薬剤により異なり、一概に言えないが、各薬剤の従来の使用目的である節間伸長調節による伸長抑制(矮化)に使用される使用量に準じるとよい。しかし、その効果の効き目は、挿し木採穂母樹の高さや成長性との相関であるため、対象とする植物体の成長特性に合わせ、試薬量を精査する必要がある。本発明では、挿し木採穂母樹の培土量1Lに対し、有効成分としてパクロブトラゾールを含む植物成長調整剤のその有効成分量が1.25mg以上を土壌散布する。パクロブトラゾールを含む植物成長調整剤の量が1.25mg未満の場合、植物は矮化するけれど、発根困難種では発根率が向上しないという問題が生じる。また、薬害が出ない範囲内で、かつ発根向上を確実に行うという理由から、好ましい上限値は6.25mg以下である。
【0024】
植物成長調整剤により処理されたユーカリ・グロブラスは、処理後2週間頃から伸長成長が抑制されて矮化する。矮化体では、節間が短くなり、葉が小さくなるなどの形態変化を示す。このように形態変化を起こした挿し穂が挿し木苗生産に好適である。よって、植物成長調整剤の土壌散布後から2週間以上育苗することが好ましい。
【0025】
植物成長調整剤の土壌散布後から挿し木作業までの挿し木採穂母樹の育苗期間は、1カ月以内とすることが好ましい。1カ月以内とすることで、短期間の母樹管理で挿し木を実行でき、挿し木後、同様の挿し木採穂母樹を用い、すばやく次の挿し木材料である枝を育てることができるという利点がある。
【0026】
また、別の目安として、植物成長調整剤の土壌散布後から挿し木作業までの挿し木採穂母樹の育苗期間を、挿し木採穂母樹の伸びが20cm以内に抑制されている期間とすることが好ましい。挿し木採穂母樹の伸びが20cmを超えた場合、発根率が低下するという問題が生じる場合がある。また、植物体が矮化しすぎると、材料である挿し穂が多量に確保できないという理由から、挿し木採穂母樹の伸びは10cm以上であることが好ましい。
【0027】
挿し木採穂母樹の高さは90〜140cmであることが好ましく、95cm〜130cmであることがより好ましく、100〜120cmであることが更に好ましい。挿し木採穂母樹の高さが90cm未満の場合、その母樹から得られる挿し木材料の絶対数が少なくなってしまうこと、また、節間の短い枝を作り出してしまい、挿し木作業の効率性が低下するという問題が生じる場合がある。また、140cmを超えた場合、添加する量によっては、矮化の効果が見られず、発根向上が確認できないという問題が生じる場合がある。
【0028】
次に、以上のように成長を調節された挿し木採穂母樹から採取した挿し穂を、挿し木培土に挿し付けて育成する方法について説明する。挿し木苗に使用する挿し穂は、当年枝までの若い枝又はそこから発生した側枝で、材料となる枝を選択、採取する。採取した枝は、用意している水にただちに浸漬する。採取した枝又は側枝は、2枚の葉をつけた状態で、1節ごとの長さに切り分けていき、これを挿し穂とする。殺菌剤に浸漬させた後、挿し穂の切削基部に、インドール酪酸(IBA)等のホルモン剤を塗布し、挿し木培土に挿し付ける。
【0029】
挿し床としては、市販の人工培土(オアシス(登録商標)、ロックウール等)の他、赤土、鹿沼土、ピートモス、バーミキュライト、パーライト等、一般的な培養土を単独で、又は、適宜配合したものを用いることができる。挿し木苗は、乾きすぎないように1日1〜2回程度の潅水管理を行い、6週間から8週間、静置する。
【実施例】
【0030】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
【0031】
(実験例1)
ユーカリ・グロブラスのクローン苗の内、樹高100cmから110cmの母樹クローンA、樹高100cmから120cmの母樹クローンB、樹高100cmから120cmの母樹クローンCにスマレクト(登録商標)粒剤(有効成分0.6%;石原産業製)を培養土壌1L中にその有効成分量が1.25mg、6.25mgになるように、培養土壌表面にばら撒き散布した。土壌散布後4週間の時点で挿し穂を調製し、2枚の葉を含む長さ約3cm前後の挿し穂を調製した。切削基部をナイフで切り返し、殺菌剤溶液に5秒間浸漬した後、インドール酪酸(IBA)/タルク粉末8000ppmを塗布し、それを成型培土に挿し、ピート/バーミキュライト=1:1(v/v)で満たしたトレー内に、この成型培土を入れて挿し木苗とした。一つの実験区に3株を使用した。温度26℃、湿度80%の温室にて静置させ、6週間後、発根率を確認した。土壌散布後4週間での樹高の伸びと発根率の結果を表1に示す。
【0032】
【表1】

【0033】
表1に示すように、クローンA、B、Cにおいて、無処理と比較して、土壌1L中の矮化有効成分量が1.25mg以上の試薬を散布した挿し木採穂母樹において、その樹高の伸びは、それぞれ無処理の母樹の伸びが約30〜50cmに対し、約10〜20cmに抑制された。同時に、矮化した母樹から得られた挿し穂は、薬剤処理しない母樹に対し、いずれも高い発根率を示した。
【0034】
薬剤散布する母樹の高さが100〜120cmのとき、土壌1L中の矮化有効成分量が1.25mg以上、散布後1カ月以内又は挿し木採穂母樹の伸びが20cm以内の育苗期間で、充分に矮化され、その状況を再現した挿し木採穂母樹より採取した挿し穂の発根率が、最も高くなるということが確認された。
【0035】
(実験例2)
挿し木で増殖したユーカリ・グロブラスのクローンポット苗の内、樹高90cmから140cmの挿し木採穂母樹クローンAを用いて、スマレクト(登録商標)粒剤(有効成分0.6%;石原産業製)を培養土壌1L中にその有効成分量が6.25mgとなるようにポット培養土壌表面にばら撒き散布した。処理後2週間、4週間、8週間、12週間の時点で、挿し穂を調製し、2枚の葉を含む長さ約3cm前後の挿し穂を調製した。切削基部をナイフで切り返し、殺菌剤溶液に5秒間浸漬した後、インドール酪酸(IBA)/タルク粉末8000ppmを塗布し、それを成型培土に挿し、ピート/バーミキュライト=1:1(v/v)で満たしたトレー内に、この成型培土を入れて挿し木苗とした。一つの実験区に3株を使用した。温度26℃、湿度80%の温室にて静置させ、6週間後、発根率を確認した。各処理期間での樹高の伸びと発根率の結果を表2に示す。
【0036】
【表2】

【0037】
表2に示すように、育苗2週間の処理区で、無処理区に対し、若干の樹高の伸びが抑制されたが、発根率も若干向上した。育苗期間8週間から12週間では、樹高の伸びは約25cm以上となり、これらの挿し木採穂母樹から得られた挿し穂は、無処理に対して、発根率の向上が確認されなかった。一方、育苗期間4週間では、樹高の伸びは約14cmから19cmと、20cm以内に抑制され、発根率が大幅に向上することが確認された。
【0038】
(実験例3)
挿し木で増殖したユーカリ・グロブラスのクローンポット苗の内、樹高90cmから110cmの母樹クローンDを用いて、パクロブトラゾール製剤であるスマレクト(登録商標)粒剤(有効成分0.6%;石原産業製)1、2、3、5gの各量をポット土壌表面にばら撒き散布した。土壌1Lあたりの有効成分量は0.25mg、0.50mg、0.75mg、1.25mgである。
【0039】
処理後1カ月間の時点で、2枚の葉を含む長さ約3cm前後の挿し穂を調製した。切削基部をナイフで切り返し、殺菌剤溶液に5秒間浸漬した後、インドール酪酸(IBA)/タルク粉末8000ppmを塗布し、それを成型培土に挿し、ピート/バーミキュライト=1:1(v/v)で満たしたトレー内に、この成型培土を入れて挿し木苗とした。一つの実験区に3株を使用した。温度26℃、湿度80%の温室にて静置させ、6週間後、発根率を確認した。処理後1カ月間での樹高の伸びと発根率の結果を表3に示す。
【0040】
【表3】

【0041】
表3に示すように、土壌1L中の有効成分量が0.25mg処理区で、無処理区に対し、樹高の伸びが抑制され、若干の矮化効果が見られるものの、発根率の向上は確認されなかった。一方、0.50mg処理区、0.75mg処理区で矮化効果は認められず、発根率の向上も確認されなかった。これに対し、1.25mg処理区では、挿し木採穂母樹の伸びが20cm以下となり、矮化効果が確認され、発根率の向上が確認された。すなわち、挿し木採穂母樹のある樹高に対して、土壌1L中のパクロブトラゾールの有効成分量が1.25mg以上という最適な試薬量を用いることによって、充分な矮化効果を得ることができ、発根率が向上することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、ユーカリ・グロブラスの増殖方法に関し、高効率でクローン増殖、苗化する方法に関する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーカリ・グロブラスの挿し木採穂母樹の育成方法において、有効成分としてパクロブトラゾールを含む植物成長調整剤を、挿し木採穂母樹の培土量1Lあたりの有効成分量1.25mg以上土壌散布することを特徴とするユーカリ・グロブラス挿し木母樹の育苗方法。
【請求項2】
植物成長調整剤の土壌散布後から挿し木作業までの挿し木採穂母樹の育苗期間を1カ月以内とする請求項1記載のユーカリ・グロブラス挿し木採穂母樹の育苗方法。
【請求項3】
植物成長調整剤の土壌散布後から挿し木作業までの挿し木採穂母樹の育苗期間を、挿し木採穂母樹の伸びが20cm以内に抑制されている期間とする請求項1記載のユーカリ・グロブラス挿し木採穂母樹の育苗方法。
【請求項4】
挿し木採穂母樹の高さが90〜140cmである請求項1〜3のいずれかに記載のユーカリ・グロブラス挿し木採穂母樹の育苗方法。

【公開番号】特開2012−105594(P2012−105594A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257414(P2010−257414)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】