ユーザ状態推定システム、ユーザ状態推定方法及びユーザ状態推定プログラム
【課題】ユーザの行動履歴に基づき、ユーザの心理状態を推定するユーザ状態推定システムを提供する。
【解決手段】ユーザの行動履歴情報を収集する行動履歴情報収集手段と、行動履歴情報収集手段により収集した行動履歴情報を記憶する行動履歴情報記憶手段と、行動履歴情報記憶手段に記憶されている行動履歴情報を読み出し、ユーザの心理状態を回帰分析により推定して、心理状態の推定値を出力する心理状態推定手段とを備えた。これにより、作業中におけるユーザの心理状態を推定することができる。
【解決手段】ユーザの行動履歴情報を収集する行動履歴情報収集手段と、行動履歴情報収集手段により収集した行動履歴情報を記憶する行動履歴情報記憶手段と、行動履歴情報記憶手段に記憶されている行動履歴情報を読み出し、ユーザの心理状態を回帰分析により推定して、心理状態の推定値を出力する心理状態推定手段とを備えた。これにより、作業中におけるユーザの心理状態を推定することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザの行動履歴に基づき、ユーザの状態を推定するユーザ状態推定システム、ユーザ状態推定方法及びユーザ状態推定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ユーザの嗜好や特徴を把握するため、あるいはユーザの未来の行動を予測し支援するためにユーザの行動の履歴を分析して、ユーザの心理状態を推定する手法が数多く提案されている。例えば、非特許文献1は、ユーザの電子商取引ウェブサイト内での行動の履歴を分析することで、ユーザの導線やウェブサイトのボトルネックとなっているページ(どのページでユーザがウェブサイトから離脱しているか)を推定するものである。また、非特許文献1がウェブサイト内での行動を分析対象としているのに対して、非特許文献2は携帯電話のGPS機能によりユーザの物理的な位置情報を取得し、それを分析することでユーザの次の行動に対するアドバイスを提示、あるいはユーザの行動特性を把握するサービスである。
【0003】
また、特許文献1は、非特許文献2と同様に携帯電話のGPS機能によって取得したユーザの位置情報と、ユーザがアプリケーションを利用したときの操作の内容からそのときのユーザの心理状態を推定するものである。さらに、特許文献2は、ユーザのWebサイト閲覧行動履歴や検索のために入力した文字列等を分析し、ユーザの特徴を推定し、ベクトル化するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−51601号公報
【特許文献2】特開2009−128937号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】SAS社「Customer Experience Analytics」 http://www.sas.com/offices/asiapacific/japan/solutitons/ci/cxa.html
【非特許文献2】NTTドコモ社「次ナビ」http://www.d.com0.b\zlhtml/service/tsuginavi/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献1及び特許文献2はWebブラウザ上でのユーザ、特に一般消費者の行動履歴を収集及び分析を行うことで、ユーザの特徴を分析するものであるが、これらは特定のアプリケーション(Webブラウザ)上での行動履歴のみを分析の対象としているため、分析対象となる行動の範囲が狭いという問題点がある。また、非特許文献1は一般消費者の購買活動に関する行動履歴を分析の対象としているため、分析結果(分析された心理状態)は購買に関するもののみであるという問題点もある。また、特許文献2はユーザを特定せずにユーザの特徴をベクトル化して分析結果として提示するため、個々のユーザの状態や特徴については特定することができない。
【0007】
また、非特許文献2、特許文献1は携帯電話端末のGPS機能を利用してユーザの行動履歴情報を特定しているが、心理状態を推定するために、携帯電話上の特定のアプリケーションの操作履歴を利用しているため、そのアプリケーションを使用しない限り推定ができないという問題点がある。さらに、各文献において、ユーザの行動履歴情報はユーザが特定の入力デバイス(Webブラウザや携帯電話)を利用した際の行動履歴を収集、管理するため、複数の入力デバイスからの行動履歴情報を統一的に管理することができないという問題もある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、ユーザの行動履歴に基づき、ユーザの状態を推定するユーザ状態推定システム、ユーザ状態推定方法及びユーザ状態推定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ユーザの行動履歴情報を収集する行動履歴情報収集手段と、前記行動履歴情報収集手段により収集した前記行動履歴情報を記憶する行動履歴情報記憶手段と、前記行動履歴情報記憶手段に記憶されている前記行動履歴情報を読み出し、前記ユーザの心理状態を回帰分析により推定して、心理状態の推定値を出力する心理状態推定手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明は、前記行動履歴情報収集手段を複数備え、前記行動履歴情報収集手段で収集された前記行動履歴情報の差異を吸収するために、収集した前記行動履歴情報を予め決められたルールに従って分類し、前記行動履歴情報記憶手段に記憶する行動履歴情報管理手段をさらに備えることを特徴とする。
【0011】
本発明は、前記ユーザに対して問い合わせを行い、現時点の前記ユーザの心理状態を実測することにより現時点の心理状態情報を入力する実測値入力手段をさらに備え、前記心理状態推定手段は、前記心理状態の推定精度を高めるために、前記入力した心理状態情報と、前記心理状態情報を入力した時点の前記行動履歴情報とに基づき、前記回帰分析に用いるパラメータを求め、該パラメータを用いて前記ユーザの心理状態を推定することを特徴とする。
【0012】
本発明は、前記行動履歴情報は、電子機器の操作情報、またはセンサによる前記ユーザの行動を示す情報であることを特徴とする。
【0013】
本発明は、前記心理状態の推定値は、多忙度、ストレス度、モチベーション度を示す値であることを特徴とする。
【0014】
本発明は、ユーザの行動履歴情報を収集する行動履歴情報収集手段と、前記行動履歴情報収集手段により収集した前記行動履歴情報を記憶する行動履歴情報記憶手段とを備えるユーザ状態推定システムにおけるユーザ状態推定方法であって、前記行動履歴情報記憶手段に記憶されている前記行動履歴情報を読み出し、前記ユーザの心理状態を回帰分析により推定して、心理状態の推定値を出力する心理状態推定ステップを有することを特徴とする。
【0015】
本発明は、ユーザの行動履歴情報を収集する行動履歴情報収集手段と、前記行動履歴情報収集手段により収集した前記行動履歴情報を記憶する行動履歴情報記憶手段とを備えるユーザ状態推定システム上のコンピュータにユーザ状態推定を行わせるユーザ状態推定プログラムであって、前記行動履歴情報記憶手段に記憶されている前記行動履歴情報を読み出し、前記ユーザの心理状態を回帰分析により推定して、心理状態の推定値を出力する心理状態推定ステップを前記コンピュータに行わせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、任意の種類の行動履歴取得デバイスによって収集された行動履歴情報を同一体系の下で管理することで、行動履歴利用者はデバイスの差異を意識する必要がなく、容易にデータを取り扱うことができるとともに、各ユーザの心理状態を推測することができるようになるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】ユーザに対して問い合わせを行う際の入力画面の一例を示す説明図である。
【図3】パソコン操作履歴及び対面情報、位置情報、加速度情報、音量情報を検知するセンサが取得する履歴情報の変換表の一例を示す説明図である。
【図4】行動履歴情報データベース31に管理される情報の例をER図により示した説明図である。
【図5】行動履歴情報データベース32に管理される情報の例をER図により示した説明図である。
【図6】図1に示すユーザ状態推定システムの処理動作を示すシーケンス図である。
【図7】図1に示すユーザ状態推定システムの処理動作を示すシーケンス図である。
【図8】図1に示すユーザ状態推定システムの処理動作を示すシーケンス図である。
【図9】図1に示すユーザ状態推定システムの処理動作を示すシーケンス図である。
【図10】アプリケーション毎の心理状態を推定するための非線形回帰モデルのイメージを示す説明図である。
【図11】ユーザの心理状態を推定するための非線形回帰モデルのイメージを示す説明図である。
【図12】過去の一定期間における心理状態の実測値を基に学習を行う例を示す説明図である。
【図13】決定係数を算出するにあたっての2変量X(t)、Y(t)を示す説明図である。
【図14】図1に示す行動履歴変換部23が行う行動履歴情報の変換処理を示す説明図である。
【図15】図1に示す行動履歴変換部23が行う行動履歴情報の変換処理を示す説明図である。
【図16】図1に示す行動履歴変換部23が行う行動履歴情報の変換処理を示す説明図である。
【図17】図1に示す行動履歴変換部23が行う行動履歴情報の変換処理を示す説明図である。
【図18】心理状態の計算例を示す説明図である。
【図19】心理状態の計算例を示す説明図である。
【図20】心理状態の計算例を示す説明図である。
【図21】心理状態の計算例を示す説明図である。
【図22】図1に示すユーザ状態推定システムが心理状態を推定する処理動作を示すフローチャートである。
【図23】図1に示すユーザ状態推定システムが心理状態を推定する処理動作を示すフローチャートである。
【図24】回帰係数の再設定の処理を示す説明図である。
【図25】回帰係数の再設定の処理を示す説明図である。
【図26】回帰係数の再設定の処理を示す説明図である。
【図27】回帰係数の再設定の処理を示す説明図である。
【図28】図1に示すユーザ状態推定システムが回帰係数を再設定する処理動作を示すフローチャートである。
【図29】図1に示すユーザ状態推定システムが回帰係数を再設定する処理動作を示すフローチャートである。
【図30】図1に示すユーザ状態推定システムが回帰係数を再設定する処理動作を示すフローチャートである。
【図31】図1に示すユーザ状態推定システムが回帰係数を再設定する処理動作を示すフローチャートである。
【図32】図1に示すユーザ状態推定システムが回帰係数を再設定する処理動作を示すフローチャートである。
【図33】図1に示すユーザ状態推定システムが回帰係数を再設定する処理動作を示すフローチャートである。
【図34】図1に示すユーザ状態推定システムが回帰係数を再設定する処理動作を示すフローチャートである。
【図35】図1に示すユーザ状態推定システムが回帰係数を再設定する処理動作を示すフローチャートである。
【図36】図1に示すユーザ状態推定システムが回帰係数を再設定する処理動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態によるユーザ状態推定システムを説明する。まず、本発明のユーザ状態推定システムの機能について簡単に説明する。第1の機能として、任意の複数デバイスからの行動履歴情報の統合的に管理する機能を備えている。これは、パソコンやセンサなどの任意の複数デバイスによって計測されたユーザの行動履歴の情報をそれぞれトランザクション(単位時間当りの行動に関する情報)、データソース(行動履歴を観測したデバイスに関する情報)、ターゲット(ユーザ行動の対象)、行動内容(具体的な行動内容)と4つの抽象的概念に分類し、その枠組みの下で統一的に管理する機能である。具体的には各概念毎に用意した同一データテーブル内で管理することで、データの利用者はデバイスの違いを意識することがなくなる。
【0019】
第2の機能として、ユーザの心理状態の推定を機能を備えている。これは、各種行動履歴情報を入力とし、非線形回帰分析を行うことである時点におけるユーザの心理的状態を推定するものである。例えば、ユーザがある特定のパソコン上での操作(ワードプロセッサアプリケーションを利用して特定の文書を編集している等)をしている場合には、ユーザの心理的負担が高い等の過去の傾向から、現在のそのユーザの心理的負担を数値化する。さらに新たに蓄積された行動履歴情報を元に傾向に関する情報を最新化する機構を用いることで、より精度の高い推定を実現するものである。
【0020】
次に、図面を参照して、本発明の一実施形態によるユーザ状態推定システムを説明する。図1は同実施形態の構成を示すブロック図である。この図において、符号1は、ユーザの行動履歴を収集する行動履歴収集装置である。例えば、携帯電話に含まれるGPS機能、ユーザが使用するパソコンに常駐し、ユーザのパソコン操作を監視するエージェントソフトウェア、ユーザが携帯し、対面情報や位置情報などを検知するセンサ、特定の場所に設置し、ユーザの動きを検知するカメラなどである。行動履歴収集装置は、これらが検知したユーザの行動履歴情報を行動履歴管理装置に送信する機能を持つ。また、行動履歴収集装置にはユーザのある時点での心理状態(以下、実測値と呼ぶ)を入力する仕組みを含んでもよく、その場合実測値を行動履歴管理装置に送信する機能も備える。各種情報の送信の契機は装置が常時ネットワークに接続されている場合は任意の契機で、不定期にネットワークに接続される場合には接続を契機として送ってもよい。
【0021】
符号2は、行動履歴収集装置からネットワークを介して送信された行動履歴情報や実測値を受信し、情報管理データベースに蓄積する行動履歴管理装置である。行動履歴管理装置は、各行動履歴収集装置間の差異を吸収するために行動履歴情報を、トランザクション(単位時間当りの行動に関する情報)、データソース(行動履歴を観測したデバイスに関する情報)、ターゲット(ユーザ行動の対象)、行動内容(具体的な行動内容)の4つの抽象的概念に予め決められたルールに従って分類し、情報管理データベースに格納する。
【0022】
符号3は、行動履歴情報及びユーザの心理状態に関する情報を格納する情報管理データベース(DB)である。符号4は、行動履歴管理装置2から行動履歴情報を取得し、各ユーザの心理状態を回帰分析により推定する心理状態推定装置である。心理状態推定装置4は、行動履歴情報と実測値から回帰分析の係数を再計算する学習を行う。心理状態の例としては、ユーザのある時点でのストレス度合いやモチベーション度合い、多忙度合いなどがある。
【0023】
符号11は、ユーザの行動履歴を収集する行動履歴収集部である。装置がセンサである場合、対面したセンサの情報や位置を特定するための情報などを含み、パソコンにインストールされたエージェントソフトウェアの場合は、ユーザが使用しているアプリケーション名やファイル名、ファイルに対する操作の情報であり、キータイプ数、マウス操作時間などが含まれる。
【0024】
符号12は、心理状態推定結果を学習する際の教師信号として利用するために、ユーザのある時点の心理状態を入力する実測値入力部である。実測値入力部12は、心理状態推定結果の学習を行う際の教師信号として利用するために、ユーザの現時点(入力する時点)の心理状態を入力するように促す画面を表示し、この画面に対して入力した値を実測値とする。図2にパソコンに表示される実測値入力画面例を示す。入力画面は予め設定された契機(何らかのイベントを契機にしてもよいし、一定間隔ごとでもよい)で表示される。その際、ユーザは実測値を入力するが、必ずしも毎回入力する必要はない。
【0025】
符号13は、行動履歴収集部11および実測値入力部12からの情報を行動履歴管理装置2へとネットワークを介して送信する情報送信部である。各種情報の送信の契機は装置が常時ネットワークに接続されている場合は任意の契機で、不定期にネットワークに接続される場合には接続を契機として送ってもよい。
【0026】
符号21は、行動履歴収集装置からの情報を受け付ける、また心理状態推定装置からの要求に応じて、データベースアクセス部を介して情報管理データベースなどから抽出した情報を送信する情報送受信部である。情報送受信部21は、心理状態推定装置4から送信された情報を情報管理データベース3に書き込む。符号22は、情報管理データベース3からデータを取り出しあるいはデータの書き込みを行うデータベース(DB)アクセス部である。
【0027】
符号23は、行動履歴情報を変換する行動履歴変換部である。行動履歴変換部23は、行動履歴収集装置1から送られた行動履歴情報を情報管理データベース3に書き込む前に、デバイス間(センサ、パソコン、携帯電話等)の差異を吸収するために情報を、トランザクション(単位時間当りの行動に関する情報)、データソース(行動履歴を観測したデバイスに関する情報)、ターゲット(ユーザ行動の対象)、行動内容(具体的な行動内容)と4つの抽象的概念に分類する。この変換には予め用意された変換テーブルが利用される。変換テーブルの例として、パソコン操作履歴及び対面情報、位置情報、加速度情報、音量情報を検知するセンサが取得する履歴情報の変換表を図3に示す。
【0028】
符号31は、各ユーザの行動履歴を管理する行動履歴情報データベース(DB)である。図4に行動履歴情報データベース31に管理される情報の例をER図により示す。符号32は、各ユーザの心理状態に関する情報を管理する心理状態管理データベース(DB)である。これには心理状態推定装置4によって推定された推定値、行動履歴収集装置1から送られた実測値、推定値を算出するために必要な回帰係数情報などが含まれる。図5に、行動履歴情報データベース32に管理される情報の例をER図により示す。
【0029】
符号41は、行動履歴管理装置2と各種データの送受信を行う情報送受信部である。符号42は、情報管理データベース3に蓄積された行動履歴から各ユーザの心理状態を推定する心理状態推定部である。以下の説明において、この推定された値を推定値と呼ぶ。推定アルゴリズムは各データソース(パソコンであれば操作中のアプリケーション)ごとに、その行動履歴を元に推定値を非線形回帰分析を行いアプリケーションごとの推定値を求め、さらにアプリケーションごとの推定値を入力として非線形回帰分析を行って最終的な推定値を算出する。
【0030】
符号43は、心理状態推定値の心理状態の推定結果の精度を向上させるために一定の頻度で学習を行う心理状態推定学習部である。この学習には遺伝的アルゴリズムを用いて、心理状態推定アルゴリズムで利用される非線形回帰モデルの回帰係数(非線形回帰モデルの各説明変数に対する重み)を更新するものである。
【0031】
次に、図6〜図9を参照して、図1に示すユーザ状態推定システムの処理動作を説明する。始めに、図6を参照して、行動履歴収集動作を説明する。まず、ユーザが、収集対象の行動を起こすと、行動履歴収集部11は、行動を検知し(ステップS1)、行動内容を収集する(ステップS2)。そして、情報送信部13は、収集した行動履歴情報を行動履歴管理装置2へ送信する(ステップS3)。
【0032】
この情報を情報送受信部21により受信し、行動履歴変換部23は、行動履歴情報の変換を行う(ステップS4)。そして、行動履歴変換部23は、データベースアクセス部22を介して、情報管理データベース3に対して行動履歴蓄積要求を送信する(ステップS5)。これを受けて、行動履歴情報データベース31は、行動履歴情報を蓄積する(ステップS6)。この処理は行動履歴収集装置1を利用するユーザが行動履歴収集装置1の検知対象となっている何らかの行動を行うたびに実行される。
【0033】
次に、図7を参照して、実測値入力動作を説明する。まず、実測値入力部12は、ユーザに対して、入力画面(図2参照)を表示する(ステップS11)。これを受けて、ユーザは、入力画面に対して、実測値を投入する(ステップS12)。実測値入力部12は、この実測値を情報送信部13を介して行動履歴管理装置2へ送信する(ステップS13)。
【0034】
この情報を情報送受信部21により受信し、データベースアクセス部22は、情報管理データベース3に対して行動履歴蓄積要求を送信する(ステップS14)。これを受けて、行動履歴情報データベース31は、行動履歴情報を蓄積する(ステップS15)。この処理は、予め設定された契機(何らかのイベントを契機にしてもよいし、一定間隔ごとでもよい)に実行される。
【0035】
次に、図8を参照して、心理状態推定動作を説明する。まず、心理状態推定部42は、行動履歴管理装置2に対して、情報取得要求を送信する(ステップS21)。これを受けて、データベースアクセス部22は、情報管理データベース3に対して、情報取得要求を送信する(ステップS22)。行動履歴情報データベース31は、この情報取得要求に対して、行動履歴情報と回帰係数情報とを行動履歴管理装置2へ送信する(ステップS23)。
【0036】
データベースアクセス22は、この行動履歴情報と回帰係数情報とを心理状態推定装置4へ送信する(ステップS24)。心理状態推定部42は、受信した行動履歴情報と回帰係数情報とに基づき、心理状態を推定する(ステップS25)。そして、心理状態推定部42は、推定によって得られた推定値の蓄積要求を行動履歴管理装置2へ送信する(ステップS26)。データベースアクセス部22は、この推定値の蓄積要求を情報管理データベース3へ送信する(ステップS27)。これを受けて、心理状態管理データベース32は、この推定値を蓄積する(ステップS28)。この処理は、予め設定された契機(何らかのイベントを契機にしてもよいし、一定間隔ごとでもよい)に実行される。
【0037】
次に、図9を参照して、心理状態推定学習動作を説明する。まず、心理状態推定学習部43は、行動履歴管理装置2に対して、情報取得要求を送信する(ステップS31)。これを受けて、データベースアクセス部22は、情報管理データベース3に対して、情報取得要求を送信する(ステップS32)。心理状態管理情報データベース32は、この情報取得要求に対して、推定値情報と回帰係数情報とを行動履歴管理装置2へ送信する(ステップS33)。
【0038】
データベースアクセス22は、この推定値情報と回帰係数情報とを心理状態推定装置4へ送信する(ステップS34)。心理状態推定学習部43は、受信した推定値情報と回帰係数情報とに基づき、心理状態を推定結果の学習を行う(ステップS35)。そして、心理状態推定学習部43は、学習によって得られた回帰係数の蓄積要求を行動履歴管理装置2へ送信する(ステップS36)。データベースアクセス部22は、この推定値の蓄積要求を情報管理データベース3へ送信する(ステップS37)。これを受けて、心理状態管理データベース32は、この回帰係数情報を蓄積する(ステップS38)。この処理は、予め設定された契機(何らかのイベントを契機にしてもよいし、一定間隔ごとでもよい)に実行される。
【0039】
次に、心理状態を推定する手法について説明する。求める心理状態としては、任意の時点における個人の忙しさを示す「多忙度」、任意の時点における個人の心理的負荷(ストレス)を示す「ストレス度」、任意の時点における個人の遂行中の業務に対する意欲(モチベーション)を示す「モチベーション度」である。そして、ユーザ心理状態は以下に示すアプリケーションの操作情報、センサから取得する情報を基に算出を行う。対象のアプリケーションソフトは、ワードプロセッサソフト、表計算ソフト、プレゼンテーションソフト、インターネット閲覧ソフト、メール送受信ソフトである。また、センサから取得する情報として、対面情報、位置情報が対象である。なお、心理状態を表す指標として、「多忙度」、「ストレス度」、「モチベーション度」を例に挙げたが、その他の指標を用いるようにしてもよい。
【0040】
本実施形態においては、アプリケーションソフトから取得する操作情報として以下の情報を用いる。ワードプロセッサソフト、表計算ソフト、プレゼンテーションソフトにおいては、ファイル(アプリケーション)オープン、ファイル(アプリケーション)クローズ、編集、印刷のいずれかの操作を行ったことを示す情報である。操作情報の属性情報として、ファイル(アプリケーション)オープン、ファイル(アプリケーション)クローズの操作情報には、ファイル名が付与される。また、編集の操作情報には、編集箇所(ページ)、編集箇所の詳細位置(段落番号等)が付与される。印刷の操作情報には、プリンタ名と印刷したページ数が付与される。
【0041】
また、インターネット閲覧ソフトにおいては、ページ遷移、入力、印刷のいずれかの操作を行ったことを示す情報が操作情報となる。ページ遷移の操作情報には、URLの属性情報、入力の操作情報には対象オブジェクト名の属性情報、印刷の操作情報には、プリンタ名と印刷したページ数の属性情報がそれぞれ付与される。
【0042】
また、メール送受信ソフトにおいては、メール受信、メール閲覧、メール送信、メール作成、印刷のいずれかの操作を行ったことを示す情報が操作情報となる。メール受信の操作情報には、受信数の属性情報、メール閲覧の操作情報には、サブジェクト、送信元、送信先、メッセージID、添付ファイルの属性情報、メール送信の操作情報には、サブジェクト、送信先、添付ファイル名の属性情報、印刷の操作情報には、プリンタ名と印刷したページ数の属性情報がそれぞれ付与される。
【0043】
また、共通する情報として、操作時間(msec)、キータッチ数、マウス操作時間(msec)の操作情報を用いる。また、センサから取得する情報としては単位時間当たりの他人との対面回数、単位時間あたりの在室時間が一番大きな場所に関する情報を用いる。
【0044】
心理状態推定は、一定期間におけるユーザ心理状態を、アプリケーション毎の心理状態算出することにより行うものであり、心理状態推定手法については非線形回帰モデルを用いる。心理状態推定後には、推定値と実際の値との比較を行い、両者の間に一定以上の誤差があれば、回帰係数の再設定を行う。
【0045】
次に、アプリケーション毎の心理状態推定手法について説明する。アプリケーション毎の心理状態を推定するための非線形回帰モデルを表現する回帰式を示すにあたり使用するパラメータを以下のように定義する。
(1)回帰係数行列
回帰係数行列はアプリケーション毎に設定されるn個の回帰係数ベクトルにより構成される。回帰係数ベクトルはアプリケーションの操作ログ項目より構成されることからm個の要素を持つ。但し、アプリケーション毎に扱う要素は異なるため、要素数は最大の要素を持つアプリケーションに依存し、不要な要素については0を設定する。ここで回帰係数行列はユーザ毎に設定するものとし、あるユーザに対して設定される回帰係数行列を(1)式のように定義する。
【数1】
【0046】
(2)アプリケーションベクトル
アプリケーションベクトルは回帰係数行列より推定対象となるアプリケーションの回帰係数ベクトルを抽出するのに使用するベクトルである。本ベクトルの要素数はアプリケーション数と等しく、n個の要素を持ち(2)式のように定義する。
【数2】
【0047】
(3)回帰係数ベクトル
ユーザiのアプリケーションjに設定される回帰係数ベクトルは上記に定義した回帰係数行列からアプリケーションベクトルを用いて(3)式のように抽出できる。ここで、回帰係数ベクトルの要素の和は1とする。
【数3】
【0048】
(4)ライフログベクトル
ユーザiの時刻tにおけるアプリケーションjに関するライフログを(4)式のベクトルで表現する。
【数4】
【0049】
(5)ライフログ行列
ユーザiの一定期間におけるアプリケーションjに関するライフログを、ライフログベクトルを用いて(5)式のように表現する。
【数5】
【0050】
次に、非線形回帰モデルについて説明する。ユーザの各アプリケーションに対する心理状態は非線形回帰モデルを用いて推定する。ここでは非線形回帰モデルの回帰式を表現するための説明変数、回帰係数について説明する。
【0051】
まず、説明変数について説明する。ユーザの各アプリケーションに対する心理状態を算出するには前述した操作情報を非線形回帰モデルの回帰式を表現する説明変数として使用する。ここで、アプリケーションに対する操作については、ある操作を行ったか否かで表現できることから2値情報とする。また、操作時間、キータッチ数等の実測値情報については、これらの間に高い相関性があることから多重共線性があり回帰係数の推定が正確に行われなくなるという問題が発生する。これを回避するために、一定数以上キータッチ数が発生した場合には作業状態、そうでない場合は閲覧状態といった形式で実測値を2値情報へと変換を行う。説明変数には前述したライフログベクトルを使用する。また、センサに関する心理状態推定のために使用する説明変数としては、単位時間当たりの他人との対面回数、単位時間当たりに最も多く在室した場所の情報(2値情報)を用いる。
【0052】
次に、回帰係数について説明する。回帰係数は各ユーザの操作するアプリケーション毎に設定され、前述した回帰係数ベクトルを使用する。すなわち、回帰係数は各説明変数が心理状態にどの程度の影響を与えるかを示す「重み」の役割を果たすものである。
【0053】
次に、心理状態推定式について説明する。図10にアプリケーション毎の心理状態を推定するための非線形回帰モデルのイメージを示す。図10に示した線形回帰モデルを用いて、ユーザiのアプリケーションjにおける心理状態は回帰式により推定する。また、センサに関する心理状態を推定するための非線形回帰モデルは、図10に示すモデルと同様であり、説明変数がセンサ情報となる。ここでは一つの心理状態を算出する式のみを示すが、その他の心理状態についても同様の回帰式で表現できる。
【0054】
次に、一定期間における心理状態について説明する。(6)式で作成される心理状態ベクトルの要素は操作ログ収集時刻におけるユーザiのアプリケーションjにおける心理状態値である。ここで、心理状態ベクトルの要素数は一定期間におけるログ収集回数である。
【数6】
【0055】
一定期間における心理状態値は、(6)式で作成した心理状態ベクトルを用いて(7)式により算出する。
【数7】
すなわち、ユーザiの一定期間における心理状態は心理状態ベクトルにおけるユークリッドノルムと同値とする。
【0056】
次に、ユーザの心理状態推定について説明する。ユーザの心理状態を推定するには、推定した一定期間におけるアプリケーション毎の心理状態値を基に非線形回帰モデルを用いて推定する。回帰式で使用する変数は、以下のように定義する。
(6)心理状態ベクトル
求めたユーザのアプリケーション毎の心理状態値をベクトル化したものとして、(8)式のように定義する。
【数8】
【0057】
(7)回帰係数ベクトル
ユーザのアプリケーション毎の重み付けを回帰係数とし、(9)式のように定義する。
【数9】
【0058】
次に、非線形回帰モデルについて説明する。ユーザの心理状態は線形回帰モデルを用いて推定する。ここでは非線形回帰モデルの回帰式を表現するための説明変数、回帰係数について説明する。
(9)説明変数
ユーザの心理状態を算出するには、算出したアプリケーション毎の心理状態値を非線形回帰モデルの回帰式を表現する説明変数として使用する。
【0059】
(10)回帰係数
回帰係数は各ユーザの操作するアプリケーション毎(センサについては2つ)に設定され、前述した回帰係数ベクトルを使用する。
【0060】
(11)心理状態推定式
図11にユーザの心理状態を推定するための非線形回帰モデルのイメージを示す。図11に示した非線形回帰モデルを用いて、ユーザiの心理状態は(10)式の回帰式により推定する。ここでは一つの心理状態を算出する式のみを示すが、その他の心理状態についても同様の回帰式で表現できる。
【数10】
【0061】
次に、回帰係数の再設定について説明する。一定期間におけるユーザの心理状態を推定した際にその推定値が正しいか否かの検証を行うため、推定後各ユーザに対しアンケートを行う。推定値と実際値の間の誤差が一定以下であれば、設定されている回帰係数は信頼性があるとし、引き続き使用する。一方、両者の間の誤差が一定以上であればその回帰係数は信頼性に欠けるとし再設定を行う(学習を行う)。再設定は、予め設定された契機(例えば、1日1回決められたタイミング)に行ったり、何らかのイベントを契機にして行う。
【0062】
心理状態推定を行うために使用する回帰係数の信頼性は(11)式により判定する。すなわち、信頼性の判定は実測値と推定値の相対誤差が一定範囲内に収まるか否かにより判定を行う。一定範囲以内であれば、回帰モデルを表現する回帰係数は信頼性があるとし、その後の推定も同じ回帰係数を使用する。それに対し、一定範囲内に収まらない場合は回帰モデルを表現する回帰係数は信頼性が無いとし、過去のデータをもとに学習を行い回帰係数の再設定を行う。
【数11】
【0063】
次に、学習について説明する。前述したように、心理状態の実測値と推定値の間における相対誤差が一定以上の場合は過去の心理状態データを基に学習を行い、回帰モデルを表現する回帰係数の再設定を行う。学習は過去の一定期間における心理状態の実測値を基に行う。図12にそのイメージを示す。過去一定期間における心理状態の実測値の変化に連動する様な推定値を算出する非線形回帰モデルを表現する回帰係数の再設定を行う。次に再設定した回帰係数を基に、各アプリケーションの操作に対して設定される回帰係数の再設定を行う。連動性の指標は決定係数を用いて行い、回帰係数の再設定については遺伝的アルゴリズムを用いて行う。遺伝的アルゴリズムについて公知であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0064】
次に、ユーザ心理状態推定における回帰係数の設定方法について説明する。ユーザ心理状態を推定するための非線形回帰モデルを表現する回帰係数の再設定は、前述したように過去一定期間における心理状態の実測値に連動するような推定値を算出するものを選択する。そして、遺伝的アルゴリズムを用いて回帰係数の再設定を行う。以下、遺伝的アルゴリズムの処理に従って設定方法について述べる。
【0065】
始めに、母集団の初期化について説明する。母集団とは回帰係数ベクトルの集合でありユーザiの母集団行列を(12)式のように定義する。ここで、母集団サイズは100とし、要素数はアプリケーション数に依存するものとする。
【数12】
ここで、回帰係数ベクトルは(13)式のような条件下においての範囲でランダムに設定される。
【数13】
【0066】
次に、交叉について説明する。交叉の発生は(14)式の条件を満たした場合とする。
Pj≦Pc ・・・(14)
ここでPcを交叉確率、Pjを染色体jに対する交叉確率とし[0,1]の範囲でランダムに設定される。この条件を満たした場合には、交叉の相手をランダムに設定し、その後交叉する遺伝子の範囲をランダムに設定し交叉を行う。交叉により生成される2つの染色体は母集団行列の末尾に追加する。従って、交叉がk回行われた場合には母集団のサイズは、100+2kとなる。
【0067】
次に、突然変異について説明する。突然変異の発生は(15)式の条件を満たした場合とする。
Pj≦Pm ・・・(15)
ここでPmを突然変異確率、Pjを染色体jに対する突然変異確率としの範囲でランダムに設定される。この条件を満たした場合には、該当する染色体において突然変異を行う遺伝子の位置をランダムに選択し、その範囲内において逆位を行う。突然変異において生成された染色体は母集団の末尾に追加する。従って、突然変異がl回行われた場合の母集団のサイズは100+lになる。また、突然変異、交叉の全ての操作が終了した場合の母集団のサイズは100+2k+lになる。
【0068】
次に、評価について説明する。評価するに際しての指標として決定係数を採用する。決定係数(Coefficient of Determination)とは重相関係数の2乗であり、寄与率とも呼ばれる。これは総変動(予測値による変動と残差による変動の和)に対する予測値による変動の比であり、総変動のうち回帰式で説明できる変動の割合を表す。この値が低いということは得られた重回帰式の予測能力が低いことを意味する。一般に時点t=1 ̄Tにおける2変量の決定係数は(16)式のように定義される。
【数14】
【0069】
決定係数を算出するにあたっての2変量X(t)、Y(t)については、図13に示すものを使用する。図13に示すように2変量はそれぞれ、任意の時点における心理状態実測値の変動率、推定値の変動率を表す。このとき、2変量の決定係数が1に近いほど、推定値の変動は実測値の変動に連動している。この決定係数の値が1に近くなるような推定値を算出する遺伝子を回帰係数ベクトルとして設定する。
【0070】
次に、選択について説明する。母集団サイズを100と固定することから、交叉、突然変異の操作で増殖した個の遺伝子を100個に絞る必要がある。そのための操作として、ルーレット法、エリート法を行う。ルーレット法では、評価の処理において算出した決定係数を各染色体に対する重み付けとしルーレットを作成し、j番目の染色体の決定係数をR2jとしたとき、重み付けWjは(17)式のように算出される。
【数15】
また、重み付けの合計値は(18)式のように設定される。
【数16】
【0071】
この式に示す通り、ルーレットの各的の大きさは[0,1]の範囲であることから、この範囲において一様に乱数を発生させ、その後次の規則に従って選択を行う。発生させた乱数値をrとし、0<r≦W1の場合は、1番目の固体を選択する。そして、W1<r≦W2の場合は、2番目の固体を選択し、Wj−1<r≦Wjの場合は、j番目の固体を選択する。母集団サイズは100個であることから、乱数を100+2k+l個発生させ、選択を行う。但し、100+2k+l個乱数を発生する前に100個まで染色体の絞り込みが完了した際にはそこで処理を終了させる。
【0072】
エリート法は適合度の最も高い染色体を次世代に残す方法である。ここでは、ルーレット法で絞り込んだ100個の染色体のうち適合度の最も低い染色体を削除し、100+2k+l個の染色体のうち適合度の最も高い染色体を代わりに追加するという方法を用いる。
【0073】
次に、終了判定について説明する。終了条件は各染色体の適合度によらず、世代数が100となった際に終了する。この終了時に最も高い決定係数を持つ染色体を回帰係数ベクトルの候補とする。以上の遺伝的アルゴリズムの処理を20回行い、そこで生成された20個の染色体のうち最も適合度の高い染色体を回帰係数ベクトルとして採用する。また、アプリケーション毎の回帰係数を算出する準備として同様の操作を算出した回帰係数を固定値として説明変数に対しても行い、設定した回帰係数ベクトルに対するアプリケーション毎の心理状態値の設定を行う。
【0074】
次に、アプリケーション毎の心理状態推定における回帰係数の設定方法について説明する。アプリケーション毎の心理状態を推定する非線形回帰モデルにおける回帰係数の設定は、一定期間における心理状態値が前節で求めた心理状態値に近似するような値を算出する回帰係数の設定を行うことと同様であり、非線形方程式における解の探索問題に帰着する。以下、非線形方程式の解法の手順について遺伝的アルゴリズムの処理に従って説明する。
【0075】
始めに、非線形方程式について説明する。算出したユーザiのアプリケーションjの心理状態値をS’i,j、一定期間におけるライフログベクトルをli,j,m、求めるべき回帰係数ベクトルをr’i,j,mとすると、対象となる非線形方程式は(19)式のように表現できる。
【数17】
(19)式を満たすような回帰係数ベクトルの組み合わせを遺伝的アルゴリズムを用いて設定する。
【0076】
次に、母集団の初期化について説明する。母集団とは回帰係数ベクトルの集合でありユーザiの母集団行列を(20)式のように定義する。ここで、母集団サイズは100とし、要素数はアプリケーションの操作項目に依存するものとする。
【数18】
ここで、回帰係数ベクトルは(21)式のような条件下においての範囲でランダムに設定される。
【数19】
【0077】
交叉、突然変異については、ユーザ心理状態推定における回帰係数の設定方法において説明したものと同様であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0078】
次に、評価について説明する。評価指標として、設定した心理状態値と遺伝的アルゴリズムにより設定した心理状態値の相対誤差の逆数を適合度関数とみなして用いる。算出したユーザiのアプリケーションjの心理状態値をS’i,j、遺伝的アルゴリズムにより設定した心理状態値をS''i,jとしたとき、適合度関数は(22)式のように表現される。
【数20】
【0079】
選択、終了判定については、ユーザ心理状態推定における回帰係数の設定方法において説明したものと同様であるので、ここでは詳細な説明を省略する。以上の遺伝的アルゴリズムの処理を20回行い、そこで生成された20個の染色体のうち最も適合度の高い染色体を回帰係数ベクトルとして採用する。
【0080】
次に、図14〜図17を参照して、図1に示す行動履歴変換部23が行う行動履歴情報の変換処理について説明する。図14は、パソコン操作の行動履歴情報の一例である。例えば、パソコンの操作情報は、ユーザrd¥tateの端末pf00での60秒間の行動履歴を示す情報が先頭にあり、続いて、ワードプロセッサアプリケーションを使ってmemo.docを25678msec開き、93回キータッチを行い、12345msecマウス操作を行ったことが記憶される。そして、memo.docをファイルオープンして、1ページ目の「1.はじめに」の項を編集したことが記憶される。また、表計算アプリケーションを使って心理状態推定ロジック.xlsを9852 msec開き、20回キータッチを行い、1051msecマウス操作を行った後、ファイルをオープンを行ったことが記憶される。そして、PC操作履歴例.xlsを7842msec開き、2回キータッチを行い、542msecマウス操作を行い、「シート1」を編集したことが記憶される。
【0081】
図15は、センサによる行動履歴情報の一例である。例えば、センサによる行動履歴情報は、ユーザrd¥tateのセンサ213が検知した60秒間の行動履歴を示しており、対面情報IRを示し、センサID:125を持つ人と12回向き合い、センサID:60を持つ人と5回向き合ったことを示す情報が記憶される。また、位置情報NWを示し、会議室に設置された受信用センサと50回交信を行ったことを示す情報、60秒間の加速度情報、運動量50.2、分散値12.5であったことを示す情報、60秒間の音量情報で音量12、音量分散値が5.6であったことを示す情報が記憶される。
【0082】
図16は、行動履歴変換部23が、図14に示すパソコン操作情報を変換をした後の行動履歴情報である。図17は、行動履歴変換部23が、図15に示すセンサによる行動履歴情報を変換をした後の行動履歴情報である。図16、図17に示すように、デバイス間(センサ、パソコン、携帯電話等)の差異を吸収するために、収集した行動履歴情報をトランザクション(単位時間当りの行動に関する情報)、データソース(行動履歴を観測したデバイスに関する情報)、ターゲット(ユーザ行動の対象)、行動内容(具体的な行動内容)と4つの抽象的概念に分類して記憶する。
【0083】
次に、図18〜図20を参照して、心理状態の計算例を説明する。まず、図18、図19を参照して、アプリケーション毎の心理状態を算出する計算例を説明する。アプリケーション毎の回帰係数行列(回帰係数ベクトル)Riは、(23)式により定義する。ここで、iはユーザを表し、Riは、ユーザiの回帰係数行列を表す。(23)式の行は操作の種類を表し、列は、アプリケーションの種類を表す。例えば、2行3列の0.4は、アプリケーション(AP)3の操作2の重みを表している。各値は、初期値として適当に設定しておき、その後は遺伝的アルゴリズムにより設定し直されることになる。アプリケーションベクトルAは(24)式による定義される。(24)式は、アプリケーション1について計算するときの例を示しており、アプリケーション2のときは、{0,1…0}となり、アプリケーション3のときは{0,0,1,…0}となる。
【0084】
説明変数(ライフログ行列)Li,jは、(25)式により定義される。(25)式は、ユーザiのアプリケーションjの説明変数である。(25)式の行は操作の種類を表し、列は情報取得のタイミング(時刻)を表している。例えば、情報を時刻10:30,10:31,…10:59まで取得した場合、1行1列は時刻10:30に操作1を実施、2行3列は10:32に操作2を未実施であることを表している。心理状態ベクトルは、図19に示すように、回帰係数行列Riと、アプリケーションベクトルAと、説明変数(ライフログ行列Li,jを(26)式によって計算して求める。
【0085】
次に、図20を参照して、ユーザの心理状態を算出するの計算例を説明する。ユーザiの心理状態ベクトル→STi(→はSの頭に付く)は、(27)式によって定義される。(27)式において、Si,1は、ユーザiのアプリケーション1の心理状態ベクトル、Si,nは、ユーザiのアプリケーションnの心理状態ベクトルを表している。回帰係数ベクトルxTiは、(28)式によって定義される。ユーザiの心理状態y^i(^はyの頭に付く)は、(29)式によって算出する。心理状態推定の計算方法を図に示すと図21に示すようになる。すなわち、各アプリケーション毎の操作情報を入力し、ノルムを計算して、アプリケーション毎の重み係数Xiを乗算することにより心理状態が推定されることになる。
【0086】
次に、図22、図23を参照して、図1に示すユーザ状態推定システムが心理状態を推定する処理動作を説明する。まず、心理状態推定部42は、行動履歴情報データベース3からデータを取得する(ステップS41)。このとき、心理状態推定部42は、行動履歴情報データベース3から一定時間(例:15分)の間のすべてのユーザのすべての行動履歴に関する情報を取得する。次に、心理状態推定部42は、説明変数(ライフログ行列)を算出する(ステップS42)。そして、心理状態推定部42は、心理状態管理データベース32から対象アプリケーションのRi(回帰係数行列)を取得し(ステップS43)、アプリケーション毎の心理状態ベクトル(Si,j)を算出する(ステップS44)。続いて、心理状態推定部42は、アプリケーション毎の心理状態を算出(Si,jのノルム計算)する(ステップS45)。そして、ステップS43〜S45を各種心理状態の数(3回;モチベーション度、多忙度、ストレス度)だけ繰り返す(ループ3)。この繰り返しが終わると、さらに、ステップS42〜S45に処理をアプリケーションの数だけ繰り返す(ループ2)。
【0087】
次に、心理状態推定部42は、情報管理データベース3から回帰係数ベクトルXiを取得し(ステップS46)、心理状態を算出する(ステップS47)。そして、ステップS46、S47の処理を各種心理状態の数だけ繰り返す(ループ4)。さらに、ステップS42〜S47の処理をユーザの人数分繰り返し(ループ1)、全ての処理が終了した時点で、アプリケーション毎の心理状態の値及び最終的な心理状態の値を情報管理データベース3へ格納する(ステップS48)。なお、心理状態推定部42は、図22に示す処理動作を定期的(例えば15分毎)に起動して心理状態の推定処理を実行する。
【0088】
次に、図23を参照して、図22に示す説明変数算出(ステップS42)処理の詳細動作を説明する。まず、心理状態推定部42は、取得したデータがパソコン操作情報であるか否かを判定し(ステップS51)、パソコン操作情報であれば、操作情報の値から該当フラグを1に設定する(ステップS52)処理を行動内容数だけ繰り返す(ループ3)。そして、心理状態推定部42は、キータッチ数の合計値を算出する(ステップS53)。
【0089】
一方、パソコン操作情報でない場合、心理状態推定部42は、データソースが対面情報IRで有るか否かを判定する(ステップS54)。そして、対面情報IRであればセンサIDから該当フラグ(個人n)に受信回数(比率)を設定し(ステップS55)、対面情報IRでなければ通信回数から該当フラグ(居室n)に受信回数(比率)を設定する(ステップS56)。そして、ステップS51〜S56の処理をターゲット情報数だけ繰り返す(ループ2)。
【0090】
次に、心理状態推定部42は、パソコン操作情報であるか否かを判定し(ステップS57)、パソコン操作情報であれば、さらに、キータッチ数の合計が所定のしきい値Y以上であるか否かを判定する(ステップS58)。一定期間(例;1分)内のキータッチ数が一定数(Y)を超えた場合に、その時間は編集していたとして作業状態フラグを1に設定する。一方、キータッチ数の合計が、Y以上であれば作業状態フラグを1に設定し、Yより小さければ閲覧状態フラグを1に設定する(ステップS60)。そして、全ての処理をトランザクション数だけ繰り返す(ループ1)。
【0091】
次に、図24〜図27を参照して、回帰係数の再設定について説明する。始めに図24を参照して、回帰係数再設定の処理概要を説明する。心理状態推定のための回帰係数ベクトルxi,ri,jを再設定するために3回の遺伝的アルゴリズム(GA)を適用する。アプリケーション毎の心理状態に基づき、回帰係数ベクトルxの再計算(GA1;1回目の遺伝的アルゴリズム)を行い、アプリケーション毎の心理状態xの再計算(GA2;2回目の遺伝的アルゴリズム)を行い、回帰係数ベクトルrの再計算に使用する。そして、アプリケーションjの回帰係数ベクトルrの再計算(GA3;3回目の遺伝的アルゴリズム)を行うことにより回帰係数の再設定を行う。
【0092】
次に、図25を参照して、母集団の初期化について説明する。母集団の初期化では、計算後の新たな候補となる一定個数(この例では100個)の染色体を生成する。この染色体を元に一定世代(今回は20世代)の進化を繰り返し、最適解を求める。このベクトルの一つ一つが進化対象となる。各遺伝的アルゴリズム処理で求める最終的な最適解は以下のベクトルである。1回目の遺伝的アルゴリズムでは、実測値に最も適合する回帰係数ベクトルを求める。2回目の遺伝的アルゴリズムは、1回目の遺伝的アルゴリズムで求めた回帰係数ベクトルを利用し算出した心理状態の値が、実測値に最も適合するようなアプリケーション毎の心理状態の組み合わせ(ベクトル)を求める。そして、3回目の遺伝的アルゴリズムは、2回目の遺伝的アルゴリズムで求めたアプリケーション毎の心理状態の値に最も適合するアプリケーション毎の回帰係数ベクトルを求める。
【0093】
次に、図26を参照して、交叉処理と突然変異について説明する。交叉処理は、次世代の染色体を生成するための処理の一つであり、ある一定の確率で、母集団の中の2つの染色体gn,gmの中の要素を入れ替えるものである。突然変異は、次世代の染色体を生成するための処理の一つであり、ある一定の確率で、母集団の中の2つの染色体gnの中の要素の順序を入れ替えるものである。ランダムに選ばれたgn,gmの交叉結果g’n,g’mあるいは突然変異結果g’lを次世代の染色体候補に追加する。このとき、交叉回数k回、突然変異回数l回とすると候補数は100+2k+l個となる。
【0094】
次に、図27を参照して、評価処理について説明する。評価処理は、100+2k+l個の次世代の染色体の候補から、次世代に残す優秀(より正しい)な染色体を選択するために各染色体の評価を行うものである。正しさの評価は各染色体を回帰係数ベクトルとして、一定期間の心理状態を算出し、実際のその期間の実測値とどの程度、適合しているかをスコアリングするによって評価する。
【0095】
次に、図28〜図36を参照して、図1に示すユーザ状態推定システムが回帰係数を再設定する処理動作を説明する。まず、心理状態推定学習部43は、心理状態管理データベース32から実測値を読み込み(ステップS61)、母集団を初期化する(ステップS62)。そして、心理状態推定学習部43は、交叉処理を行う(ステップS63)。交叉処理では、交叉確立Pj≦Pc(0.9)ならば、交叉の相手をランダムに設定し、その後交叉する範囲をランダムに設定し交叉を行う。
【0096】
次に、心理状態推定学習部43は、突然変異処理を行う(ステップS64)。突然変異処理では、突然変異確立Pj≦Pc(0.05)ならば、突然変異を行う遺伝子の位置をランダムに選択し、その範囲内で逆位を行う。続いて、心理状態推定学習部43は、評価処理を行う(ステップS65)。評価処理では、一定期間(例;30分毎)の心理状態変動率(X(t))、推定変動率(Y(t))を算出し、決定係数(R2)を算出する。そして、心理状態推定学習部43は、選択処理を行う(ステップS66)。選択処理では、重み付け(Wj)を算出し、ルーレット法により、染色体を一定個数まで選択する。その後、ルーレット法により絞り込んだ中で最も低い決定係数と母集団の中で最も高い決定係数を入れ替える。心理状態推定学習部43は、ステップS63からS66の処理を世代数だけ繰り返す(ループ4)。
【0097】
次に、心理状態推定学習部43は、世代数繰返し結果から、最も高い決定係数を選択することにより最も高い決定係数の算出処理を行う(ステップS67)。心理状態推定学習部43は、ステップS62からS67の処理を予め決められた回数だけ繰り返す(ループ3)。そして、心理状態推定学習部43は、遺伝的アルゴリズムの繰返し結果から、最も適合度の高い染色体を回帰係数ベクトルとすることにより、最も高い回帰係数ベクトルの算出処理を行う(ステップS68)。
【0098】
次に、心理状態推定学習部43は、母集団を初期化する(ステップS69)。そして、心理状態推定学習部43は、交叉処理を行う(ステップS69)。次に、心理状態推定学習部43は、突然変異処理を行い(ステップS70)、続いて、評価処理を行う(ステップS71)。そして、心理状態推定学習部43は、選択処理を行う(ステップS72)。心理状態推定学習部43は、ステップS69からS72の処理を世代数だけ繰り返す(ループ6)。
【0099】
次に、心理状態推定学習部43は、世代数繰返し結果から、最も高い決定係数を選択することにより最も高い決定係数の算出処理を行う(ステップS73)。心理状態推定学習部43は、ステップS69からS73の処理を予め決められた回数だけ繰り返す(ループ5)。そして、心理状態推定学習部43は、遺伝的アルゴリズムの繰返し結果から、最も適合度の高い染色体をアプリケーション毎の心理状態とすることにより、最も高い回帰係数ベクトルの算出処理を行う(ステップS74)。
【0100】
次に、心理状態推定学習部43は、母集団を初期化する(ステップS75)。そして、心理状態推定学習部43は、交叉処理を行う(ステップS76)。次に、心理状態推定学習部43は、突然変異処理を行い(ステップS77)、続いて、評価処理を行う(ステップS78)。そして、心理状態推定学習部43は、選択処理を行う(ステップS79)。心理状態推定学習部43は、ステップS76からS79の処理を世代数だけ繰り返す(ループ9)。
【0101】
次に、心理状態推定学習部43は、世代数繰返し結果から、最も高い決定係数を選択することにより最も高い決定係数の算出処理を行う(ステップS80)。心理状態推定学習部43は、ステップS75からS80の処理を予め決められた回数だけ繰り返す(ループ8)。そして、心理状態推定学習部43は、遺伝的アルゴリズムの繰返し結果から、最も適合度の高い染色体を回帰係数ベクトルとすることにより、最も高い回帰係数ベクトル(アプリケーション)の算出処理を行う(ステップS81)。続いて、心理状態推定学習部43は、ステップS75からS81の処理をアプリケーションの数だけ繰り返し、さらに、ステップS62からS81の処理を心理状態の数だけ繰り返す(ループ2)。そして、心理状態推定学習部43は、ステップS62からS81の処理をユーザ数だけ繰り返し(ループ1)、最後に、得られた結果を情報管理データベース3へ書き込む(ステップS82)。なお、心理状態推定学習部43は、図28、図29に示す処理動作を予め決められた契機に実行する。
【0102】
次に、図30を参照して、図28に示す母集団の初期化(ステップS62)の詳細動作を説明する。まず、心理状態推定学習部43は、1〜10000の乱数を発生させ(ステップS91)、その乱数の合計値を算出する(ステップS92)。そして、心理状態推定学習部43は、ステップS91、S92の処理をアプリケーション数だけ繰り返す(ループ2)。次に、心理状態推定学習部43は、gi,j=乱数j/乱数合計値とすることにより回帰係数ベクトルの初期値を設定する(ステップS93)。そして、心理状態推定学習部43は、ステップS93の処理をアプリケーション数だけ繰り返し(ループ3)、さらに、ステップS91からS93の処理を母集団の数だけ繰り返す(ループ1)。これにより、Gi={g1・・・gm}が得られる。
【0103】
次に、図31を参照して、図28に示す交叉処理(ステップS63)の詳細動作を説明する。まず、心理状態推定学習部43は、初期母集団Gi={g1・・・gm}を入力し、1〜100の乱数を発生させ(ステップS101)、その乱数が0〜90であるか否かを判定する(ステップS102)。そして、0〜90であれば、心理状態推定学習部43は、交叉相手を選択し(ステップS103)、さらに交叉範囲を選択する(ステップS104)。次に、心理状態推定学習部43は、交叉を行い(ステップS105)、補正処理を行う(ステップS106)。心理状態推定学習部43は、ステップS101からS106の処理を母集団の数だけ繰り返す(ループ1)。
【0104】
次に、図32を参照して、図28に示す突然変異処理(ステップS64)の詳細動作を説明する。まず、心理状態推定学習部43は、1〜100の乱数を発生させ(ステップS111)、その乱数が0〜5であるか否かを判定する(ステップS112)。そして、0〜5であれば、心理状態推定学習部43は、突然変異範囲を選択し(ステップS113)、突然変異処理を行う(ステップS114)。心理状態推定学習部43は、ステップS111からS114の処理を母集団の数だけ繰り返す(ループ1)。
【0105】
次に、図33を参照して、図28に示す評価処理(ステップS65)の詳細動作を説明する。まず、心理状態推定学習部43は、初期母集団Gi={g1・・・gm}を入力し、行動履歴情報データベース31から行動履歴を、心理状態管理データベース32から実測値を取得し(ステップS121)、ある一定期間の実測値変動率(X(1〜T))を算出する(ステップS122)。続いて、心理状態推定学習部43は、各染色体を回帰係数ベクトルとして心理状態推定値を算出し(ステップS123)、ある一定期間の推定値変動率(Y(1〜T))を算出する(ステップS124)。そして、心理状態推定学習部43は、決定係数R2を算出する(ステップS125)。心理状態推定学習部43は、ステップS123からS125の処理を母集団の数だけ繰り返す(ループ1)。これにより、決定係数R21〜R2nが得られる。
【0106】
次に、図34を参照して、図28に示す選択処理(ステップS66)の詳細動作を説明する。まず、心理状態推定学習部43は、初期母集団Gi={g1・・・gm}と決定係数R21〜R2nを入力し、決定係数合計値(ΣR2j)を算出し(ステップS131)、母集団の数だけ繰り返す(ループ1)。そして、心理状態推定学習部43は、重み付け(Wj=R2j/ΣR2j)を算出し(ステップS132)、母集団の数だけ繰り返す(ループ2)。続いて、心理状態推定学習部43は、r(乱数)を発生させ(ステップS133)、Wj−1<r≦Wjを抽出する(ステップS134)。心理状態推定学習部43は、ステップS133、S134の処理を母集団の数だけ繰り返す(ループ3)。そして、心理状態推定学習部43は、絞り込んだの中の重み係数最小値ベクトルと母集団の中の重み係数最大値ベクトルとを交換する(ステップS135)。これにより、選択処理後母集団Gi={g1・・・gm}が得られる。
【0107】
次に、図35を参照して、図28に示す評価処理(ステップS71)の詳細動作を説明する。まず、心理状態推定学習部43は、母集団Gi={g1・・・gm}を入力し、心理状態管理データベース32から実測値を取得し(ステップS141)、ユーザの心理状態推定値を算出する(ステップS142)。そして、心理状態推定学習部43は、決定係数R2を算出する(ステップS143)。心理状態推定学習部43は、ステップS142、S143の処理を母集団の数だけ繰り返す(ループ1)。これにより、決定係数R21〜R2nが得られる。
【0108】
次に、図36を参照して、図29に示す評価処理(ステップS78)の詳細動作を説明する。まず、心理状態推定学習部43は、母集団Gi={g1・・・gm}を入力し、心理状態管理データベース32から算出したアプリケーションjの心理状態値S’i,jを取得し(ステップS151)、アプリケーションjの心理状態値S''i,jを算出する(ステップS152)。そして、心理状態推定学習部43は、決定係数R2を算出する(ステップS153)。心理状態推定学習部43は、ステップS142、S143の処理を母集団の数だけ繰り返す(ループ1)。これにより、決定係数R21〜R2nが得られる。
【0109】
なお、前述した説明においては、パソコンの操作情報を行動履歴情報として収集する例を説明したが、収集する操作情報は、パソコンの操作情報に限らず、操作情報を取得できる電子機器の操作情報であれば何でもよい。
【0110】
以上説明したように、任意の種類の行動履歴取得デバイスによって収集された行動履歴情報を同一体系の下で管理することで、行動履歴利用者はデバイスの差異を意識する必要がなく、容易にデータを取り扱うことができるため、各ユーザの心理状態を推測することができるようになる。例えば応用例として、企業の社員の心理状態を把握することで、業務が適切に遂行されるための支援を行うことが可能となる。その結果として企業の生産性の向上に寄与することができる。
【0111】
なお、図1における各処理部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによりユーザの状態推定処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)を備えたWWWシステムも含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0112】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0113】
行動履歴情報を使用して、ユーザの心理状態などのユーザ状態を推定することが不可欠な用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0114】
1・・・行動履歴収集装置、11・・・行動履歴収集部、12・・・実測値入力部、13・・・情報送信部、2・・・行動履歴管理装置、21・・・情報送受信部、22・・・DB(データベース)アクセス部、23・・・行動履歴変換部、3・・・情報管理データベース、31・・・行動履歴情報DB(データベース)、32・・・心理状態管理DB(データベース)、4・・・心理状態推定装置、41・・・情報送受信部、42・・・心理状態推定部、43・・・心理状態推定学習部
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザの行動履歴に基づき、ユーザの状態を推定するユーザ状態推定システム、ユーザ状態推定方法及びユーザ状態推定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ユーザの嗜好や特徴を把握するため、あるいはユーザの未来の行動を予測し支援するためにユーザの行動の履歴を分析して、ユーザの心理状態を推定する手法が数多く提案されている。例えば、非特許文献1は、ユーザの電子商取引ウェブサイト内での行動の履歴を分析することで、ユーザの導線やウェブサイトのボトルネックとなっているページ(どのページでユーザがウェブサイトから離脱しているか)を推定するものである。また、非特許文献1がウェブサイト内での行動を分析対象としているのに対して、非特許文献2は携帯電話のGPS機能によりユーザの物理的な位置情報を取得し、それを分析することでユーザの次の行動に対するアドバイスを提示、あるいはユーザの行動特性を把握するサービスである。
【0003】
また、特許文献1は、非特許文献2と同様に携帯電話のGPS機能によって取得したユーザの位置情報と、ユーザがアプリケーションを利用したときの操作の内容からそのときのユーザの心理状態を推定するものである。さらに、特許文献2は、ユーザのWebサイト閲覧行動履歴や検索のために入力した文字列等を分析し、ユーザの特徴を推定し、ベクトル化するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−51601号公報
【特許文献2】特開2009−128937号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】SAS社「Customer Experience Analytics」 http://www.sas.com/offices/asiapacific/japan/solutitons/ci/cxa.html
【非特許文献2】NTTドコモ社「次ナビ」http://www.d.com0.b\zlhtml/service/tsuginavi/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献1及び特許文献2はWebブラウザ上でのユーザ、特に一般消費者の行動履歴を収集及び分析を行うことで、ユーザの特徴を分析するものであるが、これらは特定のアプリケーション(Webブラウザ)上での行動履歴のみを分析の対象としているため、分析対象となる行動の範囲が狭いという問題点がある。また、非特許文献1は一般消費者の購買活動に関する行動履歴を分析の対象としているため、分析結果(分析された心理状態)は購買に関するもののみであるという問題点もある。また、特許文献2はユーザを特定せずにユーザの特徴をベクトル化して分析結果として提示するため、個々のユーザの状態や特徴については特定することができない。
【0007】
また、非特許文献2、特許文献1は携帯電話端末のGPS機能を利用してユーザの行動履歴情報を特定しているが、心理状態を推定するために、携帯電話上の特定のアプリケーションの操作履歴を利用しているため、そのアプリケーションを使用しない限り推定ができないという問題点がある。さらに、各文献において、ユーザの行動履歴情報はユーザが特定の入力デバイス(Webブラウザや携帯電話)を利用した際の行動履歴を収集、管理するため、複数の入力デバイスからの行動履歴情報を統一的に管理することができないという問題もある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、ユーザの行動履歴に基づき、ユーザの状態を推定するユーザ状態推定システム、ユーザ状態推定方法及びユーザ状態推定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ユーザの行動履歴情報を収集する行動履歴情報収集手段と、前記行動履歴情報収集手段により収集した前記行動履歴情報を記憶する行動履歴情報記憶手段と、前記行動履歴情報記憶手段に記憶されている前記行動履歴情報を読み出し、前記ユーザの心理状態を回帰分析により推定して、心理状態の推定値を出力する心理状態推定手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明は、前記行動履歴情報収集手段を複数備え、前記行動履歴情報収集手段で収集された前記行動履歴情報の差異を吸収するために、収集した前記行動履歴情報を予め決められたルールに従って分類し、前記行動履歴情報記憶手段に記憶する行動履歴情報管理手段をさらに備えることを特徴とする。
【0011】
本発明は、前記ユーザに対して問い合わせを行い、現時点の前記ユーザの心理状態を実測することにより現時点の心理状態情報を入力する実測値入力手段をさらに備え、前記心理状態推定手段は、前記心理状態の推定精度を高めるために、前記入力した心理状態情報と、前記心理状態情報を入力した時点の前記行動履歴情報とに基づき、前記回帰分析に用いるパラメータを求め、該パラメータを用いて前記ユーザの心理状態を推定することを特徴とする。
【0012】
本発明は、前記行動履歴情報は、電子機器の操作情報、またはセンサによる前記ユーザの行動を示す情報であることを特徴とする。
【0013】
本発明は、前記心理状態の推定値は、多忙度、ストレス度、モチベーション度を示す値であることを特徴とする。
【0014】
本発明は、ユーザの行動履歴情報を収集する行動履歴情報収集手段と、前記行動履歴情報収集手段により収集した前記行動履歴情報を記憶する行動履歴情報記憶手段とを備えるユーザ状態推定システムにおけるユーザ状態推定方法であって、前記行動履歴情報記憶手段に記憶されている前記行動履歴情報を読み出し、前記ユーザの心理状態を回帰分析により推定して、心理状態の推定値を出力する心理状態推定ステップを有することを特徴とする。
【0015】
本発明は、ユーザの行動履歴情報を収集する行動履歴情報収集手段と、前記行動履歴情報収集手段により収集した前記行動履歴情報を記憶する行動履歴情報記憶手段とを備えるユーザ状態推定システム上のコンピュータにユーザ状態推定を行わせるユーザ状態推定プログラムであって、前記行動履歴情報記憶手段に記憶されている前記行動履歴情報を読み出し、前記ユーザの心理状態を回帰分析により推定して、心理状態の推定値を出力する心理状態推定ステップを前記コンピュータに行わせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、任意の種類の行動履歴取得デバイスによって収集された行動履歴情報を同一体系の下で管理することで、行動履歴利用者はデバイスの差異を意識する必要がなく、容易にデータを取り扱うことができるとともに、各ユーザの心理状態を推測することができるようになるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】ユーザに対して問い合わせを行う際の入力画面の一例を示す説明図である。
【図3】パソコン操作履歴及び対面情報、位置情報、加速度情報、音量情報を検知するセンサが取得する履歴情報の変換表の一例を示す説明図である。
【図4】行動履歴情報データベース31に管理される情報の例をER図により示した説明図である。
【図5】行動履歴情報データベース32に管理される情報の例をER図により示した説明図である。
【図6】図1に示すユーザ状態推定システムの処理動作を示すシーケンス図である。
【図7】図1に示すユーザ状態推定システムの処理動作を示すシーケンス図である。
【図8】図1に示すユーザ状態推定システムの処理動作を示すシーケンス図である。
【図9】図1に示すユーザ状態推定システムの処理動作を示すシーケンス図である。
【図10】アプリケーション毎の心理状態を推定するための非線形回帰モデルのイメージを示す説明図である。
【図11】ユーザの心理状態を推定するための非線形回帰モデルのイメージを示す説明図である。
【図12】過去の一定期間における心理状態の実測値を基に学習を行う例を示す説明図である。
【図13】決定係数を算出するにあたっての2変量X(t)、Y(t)を示す説明図である。
【図14】図1に示す行動履歴変換部23が行う行動履歴情報の変換処理を示す説明図である。
【図15】図1に示す行動履歴変換部23が行う行動履歴情報の変換処理を示す説明図である。
【図16】図1に示す行動履歴変換部23が行う行動履歴情報の変換処理を示す説明図である。
【図17】図1に示す行動履歴変換部23が行う行動履歴情報の変換処理を示す説明図である。
【図18】心理状態の計算例を示す説明図である。
【図19】心理状態の計算例を示す説明図である。
【図20】心理状態の計算例を示す説明図である。
【図21】心理状態の計算例を示す説明図である。
【図22】図1に示すユーザ状態推定システムが心理状態を推定する処理動作を示すフローチャートである。
【図23】図1に示すユーザ状態推定システムが心理状態を推定する処理動作を示すフローチャートである。
【図24】回帰係数の再設定の処理を示す説明図である。
【図25】回帰係数の再設定の処理を示す説明図である。
【図26】回帰係数の再設定の処理を示す説明図である。
【図27】回帰係数の再設定の処理を示す説明図である。
【図28】図1に示すユーザ状態推定システムが回帰係数を再設定する処理動作を示すフローチャートである。
【図29】図1に示すユーザ状態推定システムが回帰係数を再設定する処理動作を示すフローチャートである。
【図30】図1に示すユーザ状態推定システムが回帰係数を再設定する処理動作を示すフローチャートである。
【図31】図1に示すユーザ状態推定システムが回帰係数を再設定する処理動作を示すフローチャートである。
【図32】図1に示すユーザ状態推定システムが回帰係数を再設定する処理動作を示すフローチャートである。
【図33】図1に示すユーザ状態推定システムが回帰係数を再設定する処理動作を示すフローチャートである。
【図34】図1に示すユーザ状態推定システムが回帰係数を再設定する処理動作を示すフローチャートである。
【図35】図1に示すユーザ状態推定システムが回帰係数を再設定する処理動作を示すフローチャートである。
【図36】図1に示すユーザ状態推定システムが回帰係数を再設定する処理動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態によるユーザ状態推定システムを説明する。まず、本発明のユーザ状態推定システムの機能について簡単に説明する。第1の機能として、任意の複数デバイスからの行動履歴情報の統合的に管理する機能を備えている。これは、パソコンやセンサなどの任意の複数デバイスによって計測されたユーザの行動履歴の情報をそれぞれトランザクション(単位時間当りの行動に関する情報)、データソース(行動履歴を観測したデバイスに関する情報)、ターゲット(ユーザ行動の対象)、行動内容(具体的な行動内容)と4つの抽象的概念に分類し、その枠組みの下で統一的に管理する機能である。具体的には各概念毎に用意した同一データテーブル内で管理することで、データの利用者はデバイスの違いを意識することがなくなる。
【0019】
第2の機能として、ユーザの心理状態の推定を機能を備えている。これは、各種行動履歴情報を入力とし、非線形回帰分析を行うことである時点におけるユーザの心理的状態を推定するものである。例えば、ユーザがある特定のパソコン上での操作(ワードプロセッサアプリケーションを利用して特定の文書を編集している等)をしている場合には、ユーザの心理的負担が高い等の過去の傾向から、現在のそのユーザの心理的負担を数値化する。さらに新たに蓄積された行動履歴情報を元に傾向に関する情報を最新化する機構を用いることで、より精度の高い推定を実現するものである。
【0020】
次に、図面を参照して、本発明の一実施形態によるユーザ状態推定システムを説明する。図1は同実施形態の構成を示すブロック図である。この図において、符号1は、ユーザの行動履歴を収集する行動履歴収集装置である。例えば、携帯電話に含まれるGPS機能、ユーザが使用するパソコンに常駐し、ユーザのパソコン操作を監視するエージェントソフトウェア、ユーザが携帯し、対面情報や位置情報などを検知するセンサ、特定の場所に設置し、ユーザの動きを検知するカメラなどである。行動履歴収集装置は、これらが検知したユーザの行動履歴情報を行動履歴管理装置に送信する機能を持つ。また、行動履歴収集装置にはユーザのある時点での心理状態(以下、実測値と呼ぶ)を入力する仕組みを含んでもよく、その場合実測値を行動履歴管理装置に送信する機能も備える。各種情報の送信の契機は装置が常時ネットワークに接続されている場合は任意の契機で、不定期にネットワークに接続される場合には接続を契機として送ってもよい。
【0021】
符号2は、行動履歴収集装置からネットワークを介して送信された行動履歴情報や実測値を受信し、情報管理データベースに蓄積する行動履歴管理装置である。行動履歴管理装置は、各行動履歴収集装置間の差異を吸収するために行動履歴情報を、トランザクション(単位時間当りの行動に関する情報)、データソース(行動履歴を観測したデバイスに関する情報)、ターゲット(ユーザ行動の対象)、行動内容(具体的な行動内容)の4つの抽象的概念に予め決められたルールに従って分類し、情報管理データベースに格納する。
【0022】
符号3は、行動履歴情報及びユーザの心理状態に関する情報を格納する情報管理データベース(DB)である。符号4は、行動履歴管理装置2から行動履歴情報を取得し、各ユーザの心理状態を回帰分析により推定する心理状態推定装置である。心理状態推定装置4は、行動履歴情報と実測値から回帰分析の係数を再計算する学習を行う。心理状態の例としては、ユーザのある時点でのストレス度合いやモチベーション度合い、多忙度合いなどがある。
【0023】
符号11は、ユーザの行動履歴を収集する行動履歴収集部である。装置がセンサである場合、対面したセンサの情報や位置を特定するための情報などを含み、パソコンにインストールされたエージェントソフトウェアの場合は、ユーザが使用しているアプリケーション名やファイル名、ファイルに対する操作の情報であり、キータイプ数、マウス操作時間などが含まれる。
【0024】
符号12は、心理状態推定結果を学習する際の教師信号として利用するために、ユーザのある時点の心理状態を入力する実測値入力部である。実測値入力部12は、心理状態推定結果の学習を行う際の教師信号として利用するために、ユーザの現時点(入力する時点)の心理状態を入力するように促す画面を表示し、この画面に対して入力した値を実測値とする。図2にパソコンに表示される実測値入力画面例を示す。入力画面は予め設定された契機(何らかのイベントを契機にしてもよいし、一定間隔ごとでもよい)で表示される。その際、ユーザは実測値を入力するが、必ずしも毎回入力する必要はない。
【0025】
符号13は、行動履歴収集部11および実測値入力部12からの情報を行動履歴管理装置2へとネットワークを介して送信する情報送信部である。各種情報の送信の契機は装置が常時ネットワークに接続されている場合は任意の契機で、不定期にネットワークに接続される場合には接続を契機として送ってもよい。
【0026】
符号21は、行動履歴収集装置からの情報を受け付ける、また心理状態推定装置からの要求に応じて、データベースアクセス部を介して情報管理データベースなどから抽出した情報を送信する情報送受信部である。情報送受信部21は、心理状態推定装置4から送信された情報を情報管理データベース3に書き込む。符号22は、情報管理データベース3からデータを取り出しあるいはデータの書き込みを行うデータベース(DB)アクセス部である。
【0027】
符号23は、行動履歴情報を変換する行動履歴変換部である。行動履歴変換部23は、行動履歴収集装置1から送られた行動履歴情報を情報管理データベース3に書き込む前に、デバイス間(センサ、パソコン、携帯電話等)の差異を吸収するために情報を、トランザクション(単位時間当りの行動に関する情報)、データソース(行動履歴を観測したデバイスに関する情報)、ターゲット(ユーザ行動の対象)、行動内容(具体的な行動内容)と4つの抽象的概念に分類する。この変換には予め用意された変換テーブルが利用される。変換テーブルの例として、パソコン操作履歴及び対面情報、位置情報、加速度情報、音量情報を検知するセンサが取得する履歴情報の変換表を図3に示す。
【0028】
符号31は、各ユーザの行動履歴を管理する行動履歴情報データベース(DB)である。図4に行動履歴情報データベース31に管理される情報の例をER図により示す。符号32は、各ユーザの心理状態に関する情報を管理する心理状態管理データベース(DB)である。これには心理状態推定装置4によって推定された推定値、行動履歴収集装置1から送られた実測値、推定値を算出するために必要な回帰係数情報などが含まれる。図5に、行動履歴情報データベース32に管理される情報の例をER図により示す。
【0029】
符号41は、行動履歴管理装置2と各種データの送受信を行う情報送受信部である。符号42は、情報管理データベース3に蓄積された行動履歴から各ユーザの心理状態を推定する心理状態推定部である。以下の説明において、この推定された値を推定値と呼ぶ。推定アルゴリズムは各データソース(パソコンであれば操作中のアプリケーション)ごとに、その行動履歴を元に推定値を非線形回帰分析を行いアプリケーションごとの推定値を求め、さらにアプリケーションごとの推定値を入力として非線形回帰分析を行って最終的な推定値を算出する。
【0030】
符号43は、心理状態推定値の心理状態の推定結果の精度を向上させるために一定の頻度で学習を行う心理状態推定学習部である。この学習には遺伝的アルゴリズムを用いて、心理状態推定アルゴリズムで利用される非線形回帰モデルの回帰係数(非線形回帰モデルの各説明変数に対する重み)を更新するものである。
【0031】
次に、図6〜図9を参照して、図1に示すユーザ状態推定システムの処理動作を説明する。始めに、図6を参照して、行動履歴収集動作を説明する。まず、ユーザが、収集対象の行動を起こすと、行動履歴収集部11は、行動を検知し(ステップS1)、行動内容を収集する(ステップS2)。そして、情報送信部13は、収集した行動履歴情報を行動履歴管理装置2へ送信する(ステップS3)。
【0032】
この情報を情報送受信部21により受信し、行動履歴変換部23は、行動履歴情報の変換を行う(ステップS4)。そして、行動履歴変換部23は、データベースアクセス部22を介して、情報管理データベース3に対して行動履歴蓄積要求を送信する(ステップS5)。これを受けて、行動履歴情報データベース31は、行動履歴情報を蓄積する(ステップS6)。この処理は行動履歴収集装置1を利用するユーザが行動履歴収集装置1の検知対象となっている何らかの行動を行うたびに実行される。
【0033】
次に、図7を参照して、実測値入力動作を説明する。まず、実測値入力部12は、ユーザに対して、入力画面(図2参照)を表示する(ステップS11)。これを受けて、ユーザは、入力画面に対して、実測値を投入する(ステップS12)。実測値入力部12は、この実測値を情報送信部13を介して行動履歴管理装置2へ送信する(ステップS13)。
【0034】
この情報を情報送受信部21により受信し、データベースアクセス部22は、情報管理データベース3に対して行動履歴蓄積要求を送信する(ステップS14)。これを受けて、行動履歴情報データベース31は、行動履歴情報を蓄積する(ステップS15)。この処理は、予め設定された契機(何らかのイベントを契機にしてもよいし、一定間隔ごとでもよい)に実行される。
【0035】
次に、図8を参照して、心理状態推定動作を説明する。まず、心理状態推定部42は、行動履歴管理装置2に対して、情報取得要求を送信する(ステップS21)。これを受けて、データベースアクセス部22は、情報管理データベース3に対して、情報取得要求を送信する(ステップS22)。行動履歴情報データベース31は、この情報取得要求に対して、行動履歴情報と回帰係数情報とを行動履歴管理装置2へ送信する(ステップS23)。
【0036】
データベースアクセス22は、この行動履歴情報と回帰係数情報とを心理状態推定装置4へ送信する(ステップS24)。心理状態推定部42は、受信した行動履歴情報と回帰係数情報とに基づき、心理状態を推定する(ステップS25)。そして、心理状態推定部42は、推定によって得られた推定値の蓄積要求を行動履歴管理装置2へ送信する(ステップS26)。データベースアクセス部22は、この推定値の蓄積要求を情報管理データベース3へ送信する(ステップS27)。これを受けて、心理状態管理データベース32は、この推定値を蓄積する(ステップS28)。この処理は、予め設定された契機(何らかのイベントを契機にしてもよいし、一定間隔ごとでもよい)に実行される。
【0037】
次に、図9を参照して、心理状態推定学習動作を説明する。まず、心理状態推定学習部43は、行動履歴管理装置2に対して、情報取得要求を送信する(ステップS31)。これを受けて、データベースアクセス部22は、情報管理データベース3に対して、情報取得要求を送信する(ステップS32)。心理状態管理情報データベース32は、この情報取得要求に対して、推定値情報と回帰係数情報とを行動履歴管理装置2へ送信する(ステップS33)。
【0038】
データベースアクセス22は、この推定値情報と回帰係数情報とを心理状態推定装置4へ送信する(ステップS34)。心理状態推定学習部43は、受信した推定値情報と回帰係数情報とに基づき、心理状態を推定結果の学習を行う(ステップS35)。そして、心理状態推定学習部43は、学習によって得られた回帰係数の蓄積要求を行動履歴管理装置2へ送信する(ステップS36)。データベースアクセス部22は、この推定値の蓄積要求を情報管理データベース3へ送信する(ステップS37)。これを受けて、心理状態管理データベース32は、この回帰係数情報を蓄積する(ステップS38)。この処理は、予め設定された契機(何らかのイベントを契機にしてもよいし、一定間隔ごとでもよい)に実行される。
【0039】
次に、心理状態を推定する手法について説明する。求める心理状態としては、任意の時点における個人の忙しさを示す「多忙度」、任意の時点における個人の心理的負荷(ストレス)を示す「ストレス度」、任意の時点における個人の遂行中の業務に対する意欲(モチベーション)を示す「モチベーション度」である。そして、ユーザ心理状態は以下に示すアプリケーションの操作情報、センサから取得する情報を基に算出を行う。対象のアプリケーションソフトは、ワードプロセッサソフト、表計算ソフト、プレゼンテーションソフト、インターネット閲覧ソフト、メール送受信ソフトである。また、センサから取得する情報として、対面情報、位置情報が対象である。なお、心理状態を表す指標として、「多忙度」、「ストレス度」、「モチベーション度」を例に挙げたが、その他の指標を用いるようにしてもよい。
【0040】
本実施形態においては、アプリケーションソフトから取得する操作情報として以下の情報を用いる。ワードプロセッサソフト、表計算ソフト、プレゼンテーションソフトにおいては、ファイル(アプリケーション)オープン、ファイル(アプリケーション)クローズ、編集、印刷のいずれかの操作を行ったことを示す情報である。操作情報の属性情報として、ファイル(アプリケーション)オープン、ファイル(アプリケーション)クローズの操作情報には、ファイル名が付与される。また、編集の操作情報には、編集箇所(ページ)、編集箇所の詳細位置(段落番号等)が付与される。印刷の操作情報には、プリンタ名と印刷したページ数が付与される。
【0041】
また、インターネット閲覧ソフトにおいては、ページ遷移、入力、印刷のいずれかの操作を行ったことを示す情報が操作情報となる。ページ遷移の操作情報には、URLの属性情報、入力の操作情報には対象オブジェクト名の属性情報、印刷の操作情報には、プリンタ名と印刷したページ数の属性情報がそれぞれ付与される。
【0042】
また、メール送受信ソフトにおいては、メール受信、メール閲覧、メール送信、メール作成、印刷のいずれかの操作を行ったことを示す情報が操作情報となる。メール受信の操作情報には、受信数の属性情報、メール閲覧の操作情報には、サブジェクト、送信元、送信先、メッセージID、添付ファイルの属性情報、メール送信の操作情報には、サブジェクト、送信先、添付ファイル名の属性情報、印刷の操作情報には、プリンタ名と印刷したページ数の属性情報がそれぞれ付与される。
【0043】
また、共通する情報として、操作時間(msec)、キータッチ数、マウス操作時間(msec)の操作情報を用いる。また、センサから取得する情報としては単位時間当たりの他人との対面回数、単位時間あたりの在室時間が一番大きな場所に関する情報を用いる。
【0044】
心理状態推定は、一定期間におけるユーザ心理状態を、アプリケーション毎の心理状態算出することにより行うものであり、心理状態推定手法については非線形回帰モデルを用いる。心理状態推定後には、推定値と実際の値との比較を行い、両者の間に一定以上の誤差があれば、回帰係数の再設定を行う。
【0045】
次に、アプリケーション毎の心理状態推定手法について説明する。アプリケーション毎の心理状態を推定するための非線形回帰モデルを表現する回帰式を示すにあたり使用するパラメータを以下のように定義する。
(1)回帰係数行列
回帰係数行列はアプリケーション毎に設定されるn個の回帰係数ベクトルにより構成される。回帰係数ベクトルはアプリケーションの操作ログ項目より構成されることからm個の要素を持つ。但し、アプリケーション毎に扱う要素は異なるため、要素数は最大の要素を持つアプリケーションに依存し、不要な要素については0を設定する。ここで回帰係数行列はユーザ毎に設定するものとし、あるユーザに対して設定される回帰係数行列を(1)式のように定義する。
【数1】
【0046】
(2)アプリケーションベクトル
アプリケーションベクトルは回帰係数行列より推定対象となるアプリケーションの回帰係数ベクトルを抽出するのに使用するベクトルである。本ベクトルの要素数はアプリケーション数と等しく、n個の要素を持ち(2)式のように定義する。
【数2】
【0047】
(3)回帰係数ベクトル
ユーザiのアプリケーションjに設定される回帰係数ベクトルは上記に定義した回帰係数行列からアプリケーションベクトルを用いて(3)式のように抽出できる。ここで、回帰係数ベクトルの要素の和は1とする。
【数3】
【0048】
(4)ライフログベクトル
ユーザiの時刻tにおけるアプリケーションjに関するライフログを(4)式のベクトルで表現する。
【数4】
【0049】
(5)ライフログ行列
ユーザiの一定期間におけるアプリケーションjに関するライフログを、ライフログベクトルを用いて(5)式のように表現する。
【数5】
【0050】
次に、非線形回帰モデルについて説明する。ユーザの各アプリケーションに対する心理状態は非線形回帰モデルを用いて推定する。ここでは非線形回帰モデルの回帰式を表現するための説明変数、回帰係数について説明する。
【0051】
まず、説明変数について説明する。ユーザの各アプリケーションに対する心理状態を算出するには前述した操作情報を非線形回帰モデルの回帰式を表現する説明変数として使用する。ここで、アプリケーションに対する操作については、ある操作を行ったか否かで表現できることから2値情報とする。また、操作時間、キータッチ数等の実測値情報については、これらの間に高い相関性があることから多重共線性があり回帰係数の推定が正確に行われなくなるという問題が発生する。これを回避するために、一定数以上キータッチ数が発生した場合には作業状態、そうでない場合は閲覧状態といった形式で実測値を2値情報へと変換を行う。説明変数には前述したライフログベクトルを使用する。また、センサに関する心理状態推定のために使用する説明変数としては、単位時間当たりの他人との対面回数、単位時間当たりに最も多く在室した場所の情報(2値情報)を用いる。
【0052】
次に、回帰係数について説明する。回帰係数は各ユーザの操作するアプリケーション毎に設定され、前述した回帰係数ベクトルを使用する。すなわち、回帰係数は各説明変数が心理状態にどの程度の影響を与えるかを示す「重み」の役割を果たすものである。
【0053】
次に、心理状態推定式について説明する。図10にアプリケーション毎の心理状態を推定するための非線形回帰モデルのイメージを示す。図10に示した線形回帰モデルを用いて、ユーザiのアプリケーションjにおける心理状態は回帰式により推定する。また、センサに関する心理状態を推定するための非線形回帰モデルは、図10に示すモデルと同様であり、説明変数がセンサ情報となる。ここでは一つの心理状態を算出する式のみを示すが、その他の心理状態についても同様の回帰式で表現できる。
【0054】
次に、一定期間における心理状態について説明する。(6)式で作成される心理状態ベクトルの要素は操作ログ収集時刻におけるユーザiのアプリケーションjにおける心理状態値である。ここで、心理状態ベクトルの要素数は一定期間におけるログ収集回数である。
【数6】
【0055】
一定期間における心理状態値は、(6)式で作成した心理状態ベクトルを用いて(7)式により算出する。
【数7】
すなわち、ユーザiの一定期間における心理状態は心理状態ベクトルにおけるユークリッドノルムと同値とする。
【0056】
次に、ユーザの心理状態推定について説明する。ユーザの心理状態を推定するには、推定した一定期間におけるアプリケーション毎の心理状態値を基に非線形回帰モデルを用いて推定する。回帰式で使用する変数は、以下のように定義する。
(6)心理状態ベクトル
求めたユーザのアプリケーション毎の心理状態値をベクトル化したものとして、(8)式のように定義する。
【数8】
【0057】
(7)回帰係数ベクトル
ユーザのアプリケーション毎の重み付けを回帰係数とし、(9)式のように定義する。
【数9】
【0058】
次に、非線形回帰モデルについて説明する。ユーザの心理状態は線形回帰モデルを用いて推定する。ここでは非線形回帰モデルの回帰式を表現するための説明変数、回帰係数について説明する。
(9)説明変数
ユーザの心理状態を算出するには、算出したアプリケーション毎の心理状態値を非線形回帰モデルの回帰式を表現する説明変数として使用する。
【0059】
(10)回帰係数
回帰係数は各ユーザの操作するアプリケーション毎(センサについては2つ)に設定され、前述した回帰係数ベクトルを使用する。
【0060】
(11)心理状態推定式
図11にユーザの心理状態を推定するための非線形回帰モデルのイメージを示す。図11に示した非線形回帰モデルを用いて、ユーザiの心理状態は(10)式の回帰式により推定する。ここでは一つの心理状態を算出する式のみを示すが、その他の心理状態についても同様の回帰式で表現できる。
【数10】
【0061】
次に、回帰係数の再設定について説明する。一定期間におけるユーザの心理状態を推定した際にその推定値が正しいか否かの検証を行うため、推定後各ユーザに対しアンケートを行う。推定値と実際値の間の誤差が一定以下であれば、設定されている回帰係数は信頼性があるとし、引き続き使用する。一方、両者の間の誤差が一定以上であればその回帰係数は信頼性に欠けるとし再設定を行う(学習を行う)。再設定は、予め設定された契機(例えば、1日1回決められたタイミング)に行ったり、何らかのイベントを契機にして行う。
【0062】
心理状態推定を行うために使用する回帰係数の信頼性は(11)式により判定する。すなわち、信頼性の判定は実測値と推定値の相対誤差が一定範囲内に収まるか否かにより判定を行う。一定範囲以内であれば、回帰モデルを表現する回帰係数は信頼性があるとし、その後の推定も同じ回帰係数を使用する。それに対し、一定範囲内に収まらない場合は回帰モデルを表現する回帰係数は信頼性が無いとし、過去のデータをもとに学習を行い回帰係数の再設定を行う。
【数11】
【0063】
次に、学習について説明する。前述したように、心理状態の実測値と推定値の間における相対誤差が一定以上の場合は過去の心理状態データを基に学習を行い、回帰モデルを表現する回帰係数の再設定を行う。学習は過去の一定期間における心理状態の実測値を基に行う。図12にそのイメージを示す。過去一定期間における心理状態の実測値の変化に連動する様な推定値を算出する非線形回帰モデルを表現する回帰係数の再設定を行う。次に再設定した回帰係数を基に、各アプリケーションの操作に対して設定される回帰係数の再設定を行う。連動性の指標は決定係数を用いて行い、回帰係数の再設定については遺伝的アルゴリズムを用いて行う。遺伝的アルゴリズムについて公知であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0064】
次に、ユーザ心理状態推定における回帰係数の設定方法について説明する。ユーザ心理状態を推定するための非線形回帰モデルを表現する回帰係数の再設定は、前述したように過去一定期間における心理状態の実測値に連動するような推定値を算出するものを選択する。そして、遺伝的アルゴリズムを用いて回帰係数の再設定を行う。以下、遺伝的アルゴリズムの処理に従って設定方法について述べる。
【0065】
始めに、母集団の初期化について説明する。母集団とは回帰係数ベクトルの集合でありユーザiの母集団行列を(12)式のように定義する。ここで、母集団サイズは100とし、要素数はアプリケーション数に依存するものとする。
【数12】
ここで、回帰係数ベクトルは(13)式のような条件下においての範囲でランダムに設定される。
【数13】
【0066】
次に、交叉について説明する。交叉の発生は(14)式の条件を満たした場合とする。
Pj≦Pc ・・・(14)
ここでPcを交叉確率、Pjを染色体jに対する交叉確率とし[0,1]の範囲でランダムに設定される。この条件を満たした場合には、交叉の相手をランダムに設定し、その後交叉する遺伝子の範囲をランダムに設定し交叉を行う。交叉により生成される2つの染色体は母集団行列の末尾に追加する。従って、交叉がk回行われた場合には母集団のサイズは、100+2kとなる。
【0067】
次に、突然変異について説明する。突然変異の発生は(15)式の条件を満たした場合とする。
Pj≦Pm ・・・(15)
ここでPmを突然変異確率、Pjを染色体jに対する突然変異確率としの範囲でランダムに設定される。この条件を満たした場合には、該当する染色体において突然変異を行う遺伝子の位置をランダムに選択し、その範囲内において逆位を行う。突然変異において生成された染色体は母集団の末尾に追加する。従って、突然変異がl回行われた場合の母集団のサイズは100+lになる。また、突然変異、交叉の全ての操作が終了した場合の母集団のサイズは100+2k+lになる。
【0068】
次に、評価について説明する。評価するに際しての指標として決定係数を採用する。決定係数(Coefficient of Determination)とは重相関係数の2乗であり、寄与率とも呼ばれる。これは総変動(予測値による変動と残差による変動の和)に対する予測値による変動の比であり、総変動のうち回帰式で説明できる変動の割合を表す。この値が低いということは得られた重回帰式の予測能力が低いことを意味する。一般に時点t=1 ̄Tにおける2変量の決定係数は(16)式のように定義される。
【数14】
【0069】
決定係数を算出するにあたっての2変量X(t)、Y(t)については、図13に示すものを使用する。図13に示すように2変量はそれぞれ、任意の時点における心理状態実測値の変動率、推定値の変動率を表す。このとき、2変量の決定係数が1に近いほど、推定値の変動は実測値の変動に連動している。この決定係数の値が1に近くなるような推定値を算出する遺伝子を回帰係数ベクトルとして設定する。
【0070】
次に、選択について説明する。母集団サイズを100と固定することから、交叉、突然変異の操作で増殖した個の遺伝子を100個に絞る必要がある。そのための操作として、ルーレット法、エリート法を行う。ルーレット法では、評価の処理において算出した決定係数を各染色体に対する重み付けとしルーレットを作成し、j番目の染色体の決定係数をR2jとしたとき、重み付けWjは(17)式のように算出される。
【数15】
また、重み付けの合計値は(18)式のように設定される。
【数16】
【0071】
この式に示す通り、ルーレットの各的の大きさは[0,1]の範囲であることから、この範囲において一様に乱数を発生させ、その後次の規則に従って選択を行う。発生させた乱数値をrとし、0<r≦W1の場合は、1番目の固体を選択する。そして、W1<r≦W2の場合は、2番目の固体を選択し、Wj−1<r≦Wjの場合は、j番目の固体を選択する。母集団サイズは100個であることから、乱数を100+2k+l個発生させ、選択を行う。但し、100+2k+l個乱数を発生する前に100個まで染色体の絞り込みが完了した際にはそこで処理を終了させる。
【0072】
エリート法は適合度の最も高い染色体を次世代に残す方法である。ここでは、ルーレット法で絞り込んだ100個の染色体のうち適合度の最も低い染色体を削除し、100+2k+l個の染色体のうち適合度の最も高い染色体を代わりに追加するという方法を用いる。
【0073】
次に、終了判定について説明する。終了条件は各染色体の適合度によらず、世代数が100となった際に終了する。この終了時に最も高い決定係数を持つ染色体を回帰係数ベクトルの候補とする。以上の遺伝的アルゴリズムの処理を20回行い、そこで生成された20個の染色体のうち最も適合度の高い染色体を回帰係数ベクトルとして採用する。また、アプリケーション毎の回帰係数を算出する準備として同様の操作を算出した回帰係数を固定値として説明変数に対しても行い、設定した回帰係数ベクトルに対するアプリケーション毎の心理状態値の設定を行う。
【0074】
次に、アプリケーション毎の心理状態推定における回帰係数の設定方法について説明する。アプリケーション毎の心理状態を推定する非線形回帰モデルにおける回帰係数の設定は、一定期間における心理状態値が前節で求めた心理状態値に近似するような値を算出する回帰係数の設定を行うことと同様であり、非線形方程式における解の探索問題に帰着する。以下、非線形方程式の解法の手順について遺伝的アルゴリズムの処理に従って説明する。
【0075】
始めに、非線形方程式について説明する。算出したユーザiのアプリケーションjの心理状態値をS’i,j、一定期間におけるライフログベクトルをli,j,m、求めるべき回帰係数ベクトルをr’i,j,mとすると、対象となる非線形方程式は(19)式のように表現できる。
【数17】
(19)式を満たすような回帰係数ベクトルの組み合わせを遺伝的アルゴリズムを用いて設定する。
【0076】
次に、母集団の初期化について説明する。母集団とは回帰係数ベクトルの集合でありユーザiの母集団行列を(20)式のように定義する。ここで、母集団サイズは100とし、要素数はアプリケーションの操作項目に依存するものとする。
【数18】
ここで、回帰係数ベクトルは(21)式のような条件下においての範囲でランダムに設定される。
【数19】
【0077】
交叉、突然変異については、ユーザ心理状態推定における回帰係数の設定方法において説明したものと同様であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0078】
次に、評価について説明する。評価指標として、設定した心理状態値と遺伝的アルゴリズムにより設定した心理状態値の相対誤差の逆数を適合度関数とみなして用いる。算出したユーザiのアプリケーションjの心理状態値をS’i,j、遺伝的アルゴリズムにより設定した心理状態値をS''i,jとしたとき、適合度関数は(22)式のように表現される。
【数20】
【0079】
選択、終了判定については、ユーザ心理状態推定における回帰係数の設定方法において説明したものと同様であるので、ここでは詳細な説明を省略する。以上の遺伝的アルゴリズムの処理を20回行い、そこで生成された20個の染色体のうち最も適合度の高い染色体を回帰係数ベクトルとして採用する。
【0080】
次に、図14〜図17を参照して、図1に示す行動履歴変換部23が行う行動履歴情報の変換処理について説明する。図14は、パソコン操作の行動履歴情報の一例である。例えば、パソコンの操作情報は、ユーザrd¥tateの端末pf00での60秒間の行動履歴を示す情報が先頭にあり、続いて、ワードプロセッサアプリケーションを使ってmemo.docを25678msec開き、93回キータッチを行い、12345msecマウス操作を行ったことが記憶される。そして、memo.docをファイルオープンして、1ページ目の「1.はじめに」の項を編集したことが記憶される。また、表計算アプリケーションを使って心理状態推定ロジック.xlsを9852 msec開き、20回キータッチを行い、1051msecマウス操作を行った後、ファイルをオープンを行ったことが記憶される。そして、PC操作履歴例.xlsを7842msec開き、2回キータッチを行い、542msecマウス操作を行い、「シート1」を編集したことが記憶される。
【0081】
図15は、センサによる行動履歴情報の一例である。例えば、センサによる行動履歴情報は、ユーザrd¥tateのセンサ213が検知した60秒間の行動履歴を示しており、対面情報IRを示し、センサID:125を持つ人と12回向き合い、センサID:60を持つ人と5回向き合ったことを示す情報が記憶される。また、位置情報NWを示し、会議室に設置された受信用センサと50回交信を行ったことを示す情報、60秒間の加速度情報、運動量50.2、分散値12.5であったことを示す情報、60秒間の音量情報で音量12、音量分散値が5.6であったことを示す情報が記憶される。
【0082】
図16は、行動履歴変換部23が、図14に示すパソコン操作情報を変換をした後の行動履歴情報である。図17は、行動履歴変換部23が、図15に示すセンサによる行動履歴情報を変換をした後の行動履歴情報である。図16、図17に示すように、デバイス間(センサ、パソコン、携帯電話等)の差異を吸収するために、収集した行動履歴情報をトランザクション(単位時間当りの行動に関する情報)、データソース(行動履歴を観測したデバイスに関する情報)、ターゲット(ユーザ行動の対象)、行動内容(具体的な行動内容)と4つの抽象的概念に分類して記憶する。
【0083】
次に、図18〜図20を参照して、心理状態の計算例を説明する。まず、図18、図19を参照して、アプリケーション毎の心理状態を算出する計算例を説明する。アプリケーション毎の回帰係数行列(回帰係数ベクトル)Riは、(23)式により定義する。ここで、iはユーザを表し、Riは、ユーザiの回帰係数行列を表す。(23)式の行は操作の種類を表し、列は、アプリケーションの種類を表す。例えば、2行3列の0.4は、アプリケーション(AP)3の操作2の重みを表している。各値は、初期値として適当に設定しておき、その後は遺伝的アルゴリズムにより設定し直されることになる。アプリケーションベクトルAは(24)式による定義される。(24)式は、アプリケーション1について計算するときの例を示しており、アプリケーション2のときは、{0,1…0}となり、アプリケーション3のときは{0,0,1,…0}となる。
【0084】
説明変数(ライフログ行列)Li,jは、(25)式により定義される。(25)式は、ユーザiのアプリケーションjの説明変数である。(25)式の行は操作の種類を表し、列は情報取得のタイミング(時刻)を表している。例えば、情報を時刻10:30,10:31,…10:59まで取得した場合、1行1列は時刻10:30に操作1を実施、2行3列は10:32に操作2を未実施であることを表している。心理状態ベクトルは、図19に示すように、回帰係数行列Riと、アプリケーションベクトルAと、説明変数(ライフログ行列Li,jを(26)式によって計算して求める。
【0085】
次に、図20を参照して、ユーザの心理状態を算出するの計算例を説明する。ユーザiの心理状態ベクトル→STi(→はSの頭に付く)は、(27)式によって定義される。(27)式において、Si,1は、ユーザiのアプリケーション1の心理状態ベクトル、Si,nは、ユーザiのアプリケーションnの心理状態ベクトルを表している。回帰係数ベクトルxTiは、(28)式によって定義される。ユーザiの心理状態y^i(^はyの頭に付く)は、(29)式によって算出する。心理状態推定の計算方法を図に示すと図21に示すようになる。すなわち、各アプリケーション毎の操作情報を入力し、ノルムを計算して、アプリケーション毎の重み係数Xiを乗算することにより心理状態が推定されることになる。
【0086】
次に、図22、図23を参照して、図1に示すユーザ状態推定システムが心理状態を推定する処理動作を説明する。まず、心理状態推定部42は、行動履歴情報データベース3からデータを取得する(ステップS41)。このとき、心理状態推定部42は、行動履歴情報データベース3から一定時間(例:15分)の間のすべてのユーザのすべての行動履歴に関する情報を取得する。次に、心理状態推定部42は、説明変数(ライフログ行列)を算出する(ステップS42)。そして、心理状態推定部42は、心理状態管理データベース32から対象アプリケーションのRi(回帰係数行列)を取得し(ステップS43)、アプリケーション毎の心理状態ベクトル(Si,j)を算出する(ステップS44)。続いて、心理状態推定部42は、アプリケーション毎の心理状態を算出(Si,jのノルム計算)する(ステップS45)。そして、ステップS43〜S45を各種心理状態の数(3回;モチベーション度、多忙度、ストレス度)だけ繰り返す(ループ3)。この繰り返しが終わると、さらに、ステップS42〜S45に処理をアプリケーションの数だけ繰り返す(ループ2)。
【0087】
次に、心理状態推定部42は、情報管理データベース3から回帰係数ベクトルXiを取得し(ステップS46)、心理状態を算出する(ステップS47)。そして、ステップS46、S47の処理を各種心理状態の数だけ繰り返す(ループ4)。さらに、ステップS42〜S47の処理をユーザの人数分繰り返し(ループ1)、全ての処理が終了した時点で、アプリケーション毎の心理状態の値及び最終的な心理状態の値を情報管理データベース3へ格納する(ステップS48)。なお、心理状態推定部42は、図22に示す処理動作を定期的(例えば15分毎)に起動して心理状態の推定処理を実行する。
【0088】
次に、図23を参照して、図22に示す説明変数算出(ステップS42)処理の詳細動作を説明する。まず、心理状態推定部42は、取得したデータがパソコン操作情報であるか否かを判定し(ステップS51)、パソコン操作情報であれば、操作情報の値から該当フラグを1に設定する(ステップS52)処理を行動内容数だけ繰り返す(ループ3)。そして、心理状態推定部42は、キータッチ数の合計値を算出する(ステップS53)。
【0089】
一方、パソコン操作情報でない場合、心理状態推定部42は、データソースが対面情報IRで有るか否かを判定する(ステップS54)。そして、対面情報IRであればセンサIDから該当フラグ(個人n)に受信回数(比率)を設定し(ステップS55)、対面情報IRでなければ通信回数から該当フラグ(居室n)に受信回数(比率)を設定する(ステップS56)。そして、ステップS51〜S56の処理をターゲット情報数だけ繰り返す(ループ2)。
【0090】
次に、心理状態推定部42は、パソコン操作情報であるか否かを判定し(ステップS57)、パソコン操作情報であれば、さらに、キータッチ数の合計が所定のしきい値Y以上であるか否かを判定する(ステップS58)。一定期間(例;1分)内のキータッチ数が一定数(Y)を超えた場合に、その時間は編集していたとして作業状態フラグを1に設定する。一方、キータッチ数の合計が、Y以上であれば作業状態フラグを1に設定し、Yより小さければ閲覧状態フラグを1に設定する(ステップS60)。そして、全ての処理をトランザクション数だけ繰り返す(ループ1)。
【0091】
次に、図24〜図27を参照して、回帰係数の再設定について説明する。始めに図24を参照して、回帰係数再設定の処理概要を説明する。心理状態推定のための回帰係数ベクトルxi,ri,jを再設定するために3回の遺伝的アルゴリズム(GA)を適用する。アプリケーション毎の心理状態に基づき、回帰係数ベクトルxの再計算(GA1;1回目の遺伝的アルゴリズム)を行い、アプリケーション毎の心理状態xの再計算(GA2;2回目の遺伝的アルゴリズム)を行い、回帰係数ベクトルrの再計算に使用する。そして、アプリケーションjの回帰係数ベクトルrの再計算(GA3;3回目の遺伝的アルゴリズム)を行うことにより回帰係数の再設定を行う。
【0092】
次に、図25を参照して、母集団の初期化について説明する。母集団の初期化では、計算後の新たな候補となる一定個数(この例では100個)の染色体を生成する。この染色体を元に一定世代(今回は20世代)の進化を繰り返し、最適解を求める。このベクトルの一つ一つが進化対象となる。各遺伝的アルゴリズム処理で求める最終的な最適解は以下のベクトルである。1回目の遺伝的アルゴリズムでは、実測値に最も適合する回帰係数ベクトルを求める。2回目の遺伝的アルゴリズムは、1回目の遺伝的アルゴリズムで求めた回帰係数ベクトルを利用し算出した心理状態の値が、実測値に最も適合するようなアプリケーション毎の心理状態の組み合わせ(ベクトル)を求める。そして、3回目の遺伝的アルゴリズムは、2回目の遺伝的アルゴリズムで求めたアプリケーション毎の心理状態の値に最も適合するアプリケーション毎の回帰係数ベクトルを求める。
【0093】
次に、図26を参照して、交叉処理と突然変異について説明する。交叉処理は、次世代の染色体を生成するための処理の一つであり、ある一定の確率で、母集団の中の2つの染色体gn,gmの中の要素を入れ替えるものである。突然変異は、次世代の染色体を生成するための処理の一つであり、ある一定の確率で、母集団の中の2つの染色体gnの中の要素の順序を入れ替えるものである。ランダムに選ばれたgn,gmの交叉結果g’n,g’mあるいは突然変異結果g’lを次世代の染色体候補に追加する。このとき、交叉回数k回、突然変異回数l回とすると候補数は100+2k+l個となる。
【0094】
次に、図27を参照して、評価処理について説明する。評価処理は、100+2k+l個の次世代の染色体の候補から、次世代に残す優秀(より正しい)な染色体を選択するために各染色体の評価を行うものである。正しさの評価は各染色体を回帰係数ベクトルとして、一定期間の心理状態を算出し、実際のその期間の実測値とどの程度、適合しているかをスコアリングするによって評価する。
【0095】
次に、図28〜図36を参照して、図1に示すユーザ状態推定システムが回帰係数を再設定する処理動作を説明する。まず、心理状態推定学習部43は、心理状態管理データベース32から実測値を読み込み(ステップS61)、母集団を初期化する(ステップS62)。そして、心理状態推定学習部43は、交叉処理を行う(ステップS63)。交叉処理では、交叉確立Pj≦Pc(0.9)ならば、交叉の相手をランダムに設定し、その後交叉する範囲をランダムに設定し交叉を行う。
【0096】
次に、心理状態推定学習部43は、突然変異処理を行う(ステップS64)。突然変異処理では、突然変異確立Pj≦Pc(0.05)ならば、突然変異を行う遺伝子の位置をランダムに選択し、その範囲内で逆位を行う。続いて、心理状態推定学習部43は、評価処理を行う(ステップS65)。評価処理では、一定期間(例;30分毎)の心理状態変動率(X(t))、推定変動率(Y(t))を算出し、決定係数(R2)を算出する。そして、心理状態推定学習部43は、選択処理を行う(ステップS66)。選択処理では、重み付け(Wj)を算出し、ルーレット法により、染色体を一定個数まで選択する。その後、ルーレット法により絞り込んだ中で最も低い決定係数と母集団の中で最も高い決定係数を入れ替える。心理状態推定学習部43は、ステップS63からS66の処理を世代数だけ繰り返す(ループ4)。
【0097】
次に、心理状態推定学習部43は、世代数繰返し結果から、最も高い決定係数を選択することにより最も高い決定係数の算出処理を行う(ステップS67)。心理状態推定学習部43は、ステップS62からS67の処理を予め決められた回数だけ繰り返す(ループ3)。そして、心理状態推定学習部43は、遺伝的アルゴリズムの繰返し結果から、最も適合度の高い染色体を回帰係数ベクトルとすることにより、最も高い回帰係数ベクトルの算出処理を行う(ステップS68)。
【0098】
次に、心理状態推定学習部43は、母集団を初期化する(ステップS69)。そして、心理状態推定学習部43は、交叉処理を行う(ステップS69)。次に、心理状態推定学習部43は、突然変異処理を行い(ステップS70)、続いて、評価処理を行う(ステップS71)。そして、心理状態推定学習部43は、選択処理を行う(ステップS72)。心理状態推定学習部43は、ステップS69からS72の処理を世代数だけ繰り返す(ループ6)。
【0099】
次に、心理状態推定学習部43は、世代数繰返し結果から、最も高い決定係数を選択することにより最も高い決定係数の算出処理を行う(ステップS73)。心理状態推定学習部43は、ステップS69からS73の処理を予め決められた回数だけ繰り返す(ループ5)。そして、心理状態推定学習部43は、遺伝的アルゴリズムの繰返し結果から、最も適合度の高い染色体をアプリケーション毎の心理状態とすることにより、最も高い回帰係数ベクトルの算出処理を行う(ステップS74)。
【0100】
次に、心理状態推定学習部43は、母集団を初期化する(ステップS75)。そして、心理状態推定学習部43は、交叉処理を行う(ステップS76)。次に、心理状態推定学習部43は、突然変異処理を行い(ステップS77)、続いて、評価処理を行う(ステップS78)。そして、心理状態推定学習部43は、選択処理を行う(ステップS79)。心理状態推定学習部43は、ステップS76からS79の処理を世代数だけ繰り返す(ループ9)。
【0101】
次に、心理状態推定学習部43は、世代数繰返し結果から、最も高い決定係数を選択することにより最も高い決定係数の算出処理を行う(ステップS80)。心理状態推定学習部43は、ステップS75からS80の処理を予め決められた回数だけ繰り返す(ループ8)。そして、心理状態推定学習部43は、遺伝的アルゴリズムの繰返し結果から、最も適合度の高い染色体を回帰係数ベクトルとすることにより、最も高い回帰係数ベクトル(アプリケーション)の算出処理を行う(ステップS81)。続いて、心理状態推定学習部43は、ステップS75からS81の処理をアプリケーションの数だけ繰り返し、さらに、ステップS62からS81の処理を心理状態の数だけ繰り返す(ループ2)。そして、心理状態推定学習部43は、ステップS62からS81の処理をユーザ数だけ繰り返し(ループ1)、最後に、得られた結果を情報管理データベース3へ書き込む(ステップS82)。なお、心理状態推定学習部43は、図28、図29に示す処理動作を予め決められた契機に実行する。
【0102】
次に、図30を参照して、図28に示す母集団の初期化(ステップS62)の詳細動作を説明する。まず、心理状態推定学習部43は、1〜10000の乱数を発生させ(ステップS91)、その乱数の合計値を算出する(ステップS92)。そして、心理状態推定学習部43は、ステップS91、S92の処理をアプリケーション数だけ繰り返す(ループ2)。次に、心理状態推定学習部43は、gi,j=乱数j/乱数合計値とすることにより回帰係数ベクトルの初期値を設定する(ステップS93)。そして、心理状態推定学習部43は、ステップS93の処理をアプリケーション数だけ繰り返し(ループ3)、さらに、ステップS91からS93の処理を母集団の数だけ繰り返す(ループ1)。これにより、Gi={g1・・・gm}が得られる。
【0103】
次に、図31を参照して、図28に示す交叉処理(ステップS63)の詳細動作を説明する。まず、心理状態推定学習部43は、初期母集団Gi={g1・・・gm}を入力し、1〜100の乱数を発生させ(ステップS101)、その乱数が0〜90であるか否かを判定する(ステップS102)。そして、0〜90であれば、心理状態推定学習部43は、交叉相手を選択し(ステップS103)、さらに交叉範囲を選択する(ステップS104)。次に、心理状態推定学習部43は、交叉を行い(ステップS105)、補正処理を行う(ステップS106)。心理状態推定学習部43は、ステップS101からS106の処理を母集団の数だけ繰り返す(ループ1)。
【0104】
次に、図32を参照して、図28に示す突然変異処理(ステップS64)の詳細動作を説明する。まず、心理状態推定学習部43は、1〜100の乱数を発生させ(ステップS111)、その乱数が0〜5であるか否かを判定する(ステップS112)。そして、0〜5であれば、心理状態推定学習部43は、突然変異範囲を選択し(ステップS113)、突然変異処理を行う(ステップS114)。心理状態推定学習部43は、ステップS111からS114の処理を母集団の数だけ繰り返す(ループ1)。
【0105】
次に、図33を参照して、図28に示す評価処理(ステップS65)の詳細動作を説明する。まず、心理状態推定学習部43は、初期母集団Gi={g1・・・gm}を入力し、行動履歴情報データベース31から行動履歴を、心理状態管理データベース32から実測値を取得し(ステップS121)、ある一定期間の実測値変動率(X(1〜T))を算出する(ステップS122)。続いて、心理状態推定学習部43は、各染色体を回帰係数ベクトルとして心理状態推定値を算出し(ステップS123)、ある一定期間の推定値変動率(Y(1〜T))を算出する(ステップS124)。そして、心理状態推定学習部43は、決定係数R2を算出する(ステップS125)。心理状態推定学習部43は、ステップS123からS125の処理を母集団の数だけ繰り返す(ループ1)。これにより、決定係数R21〜R2nが得られる。
【0106】
次に、図34を参照して、図28に示す選択処理(ステップS66)の詳細動作を説明する。まず、心理状態推定学習部43は、初期母集団Gi={g1・・・gm}と決定係数R21〜R2nを入力し、決定係数合計値(ΣR2j)を算出し(ステップS131)、母集団の数だけ繰り返す(ループ1)。そして、心理状態推定学習部43は、重み付け(Wj=R2j/ΣR2j)を算出し(ステップS132)、母集団の数だけ繰り返す(ループ2)。続いて、心理状態推定学習部43は、r(乱数)を発生させ(ステップS133)、Wj−1<r≦Wjを抽出する(ステップS134)。心理状態推定学習部43は、ステップS133、S134の処理を母集団の数だけ繰り返す(ループ3)。そして、心理状態推定学習部43は、絞り込んだの中の重み係数最小値ベクトルと母集団の中の重み係数最大値ベクトルとを交換する(ステップS135)。これにより、選択処理後母集団Gi={g1・・・gm}が得られる。
【0107】
次に、図35を参照して、図28に示す評価処理(ステップS71)の詳細動作を説明する。まず、心理状態推定学習部43は、母集団Gi={g1・・・gm}を入力し、心理状態管理データベース32から実測値を取得し(ステップS141)、ユーザの心理状態推定値を算出する(ステップS142)。そして、心理状態推定学習部43は、決定係数R2を算出する(ステップS143)。心理状態推定学習部43は、ステップS142、S143の処理を母集団の数だけ繰り返す(ループ1)。これにより、決定係数R21〜R2nが得られる。
【0108】
次に、図36を参照して、図29に示す評価処理(ステップS78)の詳細動作を説明する。まず、心理状態推定学習部43は、母集団Gi={g1・・・gm}を入力し、心理状態管理データベース32から算出したアプリケーションjの心理状態値S’i,jを取得し(ステップS151)、アプリケーションjの心理状態値S''i,jを算出する(ステップS152)。そして、心理状態推定学習部43は、決定係数R2を算出する(ステップS153)。心理状態推定学習部43は、ステップS142、S143の処理を母集団の数だけ繰り返す(ループ1)。これにより、決定係数R21〜R2nが得られる。
【0109】
なお、前述した説明においては、パソコンの操作情報を行動履歴情報として収集する例を説明したが、収集する操作情報は、パソコンの操作情報に限らず、操作情報を取得できる電子機器の操作情報であれば何でもよい。
【0110】
以上説明したように、任意の種類の行動履歴取得デバイスによって収集された行動履歴情報を同一体系の下で管理することで、行動履歴利用者はデバイスの差異を意識する必要がなく、容易にデータを取り扱うことができるため、各ユーザの心理状態を推測することができるようになる。例えば応用例として、企業の社員の心理状態を把握することで、業務が適切に遂行されるための支援を行うことが可能となる。その結果として企業の生産性の向上に寄与することができる。
【0111】
なお、図1における各処理部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによりユーザの状態推定処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)を備えたWWWシステムも含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0112】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0113】
行動履歴情報を使用して、ユーザの心理状態などのユーザ状態を推定することが不可欠な用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0114】
1・・・行動履歴収集装置、11・・・行動履歴収集部、12・・・実測値入力部、13・・・情報送信部、2・・・行動履歴管理装置、21・・・情報送受信部、22・・・DB(データベース)アクセス部、23・・・行動履歴変換部、3・・・情報管理データベース、31・・・行動履歴情報DB(データベース)、32・・・心理状態管理DB(データベース)、4・・・心理状態推定装置、41・・・情報送受信部、42・・・心理状態推定部、43・・・心理状態推定学習部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの行動履歴情報を収集する行動履歴情報収集手段と、
前記行動履歴情報収集手段により収集した前記行動履歴情報を記憶する行動履歴情報記憶手段と、
前記行動履歴情報記憶手段に記憶されている前記行動履歴情報を読み出し、前記ユーザの心理状態を回帰分析により推定して、心理状態の推定値を出力する心理状態推定手段と
を備えたことを特徴とするユーザ状態推定システム。
【請求項2】
前記行動履歴情報収集手段を複数備え、
前記行動履歴情報収集手段で収集された前記行動履歴情報の差異を吸収するために、収集した前記行動履歴情報を予め決められたルールに従って分類し、前記行動履歴情報記憶手段に記憶する行動履歴情報管理手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のユーザ状態推定システム。
【請求項3】
前記ユーザに対して問い合わせを行い、現時点の前記ユーザの心理状態を実測することにより現時点の心理状態情報を入力する実測値入力手段をさらに備え、
前記心理状態推定手段は、前記心理状態の推定精度を高めるために、前記入力した心理状態情報と、前記心理状態情報を入力した時点の前記行動履歴情報とに基づき、前記回帰分析に用いるパラメータを求め、該パラメータを用いて前記ユーザの心理状態を推定することを特徴とする請求項1または2に記載のユーザ状態推定システム。
【請求項4】
前記行動履歴情報は、電子機器の操作情報、またはセンサによる前記ユーザの行動を示す情報であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のユーザ状態推定システム。
【請求項5】
前記心理状態の推定値は、多忙度、ストレス度、モチベーション度を示す値であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のユーザ状態推定システム。
【請求項6】
ユーザの行動履歴情報を収集する行動履歴情報収集手段と、前記行動履歴情報収集手段により収集した前記行動履歴情報を記憶する行動履歴情報記憶手段とを備えるユーザ状態推定システムにおけるユーザ状態推定方法であって、
前記行動履歴情報記憶手段に記憶されている前記行動履歴情報を読み出し、前記ユーザの心理状態を回帰分析により推定して、心理状態の推定値を出力する心理状態推定ステップを有することを特徴とするユーザ状態推定方法。
【請求項7】
ユーザの行動履歴情報を収集する行動履歴情報収集手段と、前記行動履歴情報収集手段により収集した前記行動履歴情報を記憶する行動履歴情報記憶手段とを備えるユーザ状態推定システム上のコンピュータにユーザ状態推定を行わせるユーザ状態推定プログラムであって、
前記行動履歴情報記憶手段に記憶されている前記行動履歴情報を読み出し、前記ユーザの心理状態を回帰分析により推定して、心理状態の推定値を出力する心理状態推定ステップを前記コンピュータに行わせることを特徴とするユーザ状態推定プログラム。
【請求項1】
ユーザの行動履歴情報を収集する行動履歴情報収集手段と、
前記行動履歴情報収集手段により収集した前記行動履歴情報を記憶する行動履歴情報記憶手段と、
前記行動履歴情報記憶手段に記憶されている前記行動履歴情報を読み出し、前記ユーザの心理状態を回帰分析により推定して、心理状態の推定値を出力する心理状態推定手段と
を備えたことを特徴とするユーザ状態推定システム。
【請求項2】
前記行動履歴情報収集手段を複数備え、
前記行動履歴情報収集手段で収集された前記行動履歴情報の差異を吸収するために、収集した前記行動履歴情報を予め決められたルールに従って分類し、前記行動履歴情報記憶手段に記憶する行動履歴情報管理手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のユーザ状態推定システム。
【請求項3】
前記ユーザに対して問い合わせを行い、現時点の前記ユーザの心理状態を実測することにより現時点の心理状態情報を入力する実測値入力手段をさらに備え、
前記心理状態推定手段は、前記心理状態の推定精度を高めるために、前記入力した心理状態情報と、前記心理状態情報を入力した時点の前記行動履歴情報とに基づき、前記回帰分析に用いるパラメータを求め、該パラメータを用いて前記ユーザの心理状態を推定することを特徴とする請求項1または2に記載のユーザ状態推定システム。
【請求項4】
前記行動履歴情報は、電子機器の操作情報、またはセンサによる前記ユーザの行動を示す情報であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のユーザ状態推定システム。
【請求項5】
前記心理状態の推定値は、多忙度、ストレス度、モチベーション度を示す値であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のユーザ状態推定システム。
【請求項6】
ユーザの行動履歴情報を収集する行動履歴情報収集手段と、前記行動履歴情報収集手段により収集した前記行動履歴情報を記憶する行動履歴情報記憶手段とを備えるユーザ状態推定システムにおけるユーザ状態推定方法であって、
前記行動履歴情報記憶手段に記憶されている前記行動履歴情報を読み出し、前記ユーザの心理状態を回帰分析により推定して、心理状態の推定値を出力する心理状態推定ステップを有することを特徴とするユーザ状態推定方法。
【請求項7】
ユーザの行動履歴情報を収集する行動履歴情報収集手段と、前記行動履歴情報収集手段により収集した前記行動履歴情報を記憶する行動履歴情報記憶手段とを備えるユーザ状態推定システム上のコンピュータにユーザ状態推定を行わせるユーザ状態推定プログラムであって、
前記行動履歴情報記憶手段に記憶されている前記行動履歴情報を読み出し、前記ユーザの心理状態を回帰分析により推定して、心理状態の推定値を出力する心理状態推定ステップを前記コンピュータに行わせることを特徴とするユーザ状態推定プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
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【図5】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【公開番号】特開2012−94056(P2012−94056A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242359(P2010−242359)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(397065480)エヌ・ティ・ティ・コムウェア株式会社 (187)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(397065480)エヌ・ティ・ティ・コムウェア株式会社 (187)
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