説明

ユーザ視点空間映像提示装置、ユーザ視点空間映像提示方法及びプログラム

【課題】自動的に、ユーザが肉眼で目にしているものに応じた映像を表示することにより、ユーザが感じる違和感や混乱を軽減する。
【解決手段】ユーザ視点空間映像提示装置は、ユーザの眼球位置を計測する眼球位置計測部と、被写体を撮影する被写体撮影部と、被写体までの距離を計測する被写体距離計測部と、眼球位置計測部が計測した眼球位置と、被写体距離計測部が計測した被写体までの距離とに基づいて、表示範囲を算出する表示範囲算出部と、被写体撮影部が撮影した画像から、表示範囲算出部が算出した表示範囲を切り出して表示する表示部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザ視点空間映像提示装置、ユーザ視点空間映像提示方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、仮想現実感(VR:Virtual Reality)技術において、従来のヘッドマウントディスプレイだけではなく、タブレットPC(Personal Computer)などのハンドヘルドデバイスを利用して、ユーザ視点で表示された空間を提示するシステムが増えてきている。また、拡張現実感(AR:Augmented Reality)技術を利用し、スマートフォンなどの小型デバイスを経由してユーザ視点で表示された空間に付加情報を提示するサービスが注目を集めている。
【0003】
図7は、ハンドヘルドデバイス或いは小型デバイス(以下、総称してデバイスとする)において撮影した画像の表示例を表すイメージ図である。図7に示すように、通常デバイスでは、特にユーザが操作しない限り、デバイスが表示する被写体500は、ユーザが肉眼で目にしている被写体400のスケール(例えば、表示倍率等)とは異なるスケールにて表示される。
【0004】
特許文献1に記載の技術では、撮影された画像における特定のオブジェクトと、そのオブジェクトに重ね合わせて表示する画像との寸法的同一性を検証している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−142604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術では、図7に示すように、デバイスに表示される被写体500は、ユーザが肉眼で目にしている被写体400とは異なるスケールにて表示される。このため、拡張現実感技術を利用して付加情報等を表示する際等に、違和感や混乱を生じる場合があった。特許文献1に記載された技術では、特定のオブジェクトと重ね合わせて表示する画像との寸法的同一性については検証されているが、肉眼で目にする風景などの被写体とデバイスで表示する映像との連動については考慮されていない。このため、例えば、デバイスにより遮られてユーザから見えなくなる被写体の一部を、ユーザが肉眼で目にしている被写体とシームレスになって見えるように表示するためには、ユーザが手動で表示範囲や表示倍率を調整して、肉眼で目にする被写体のスケールにデバイスで表示する被写体のスケールを近づけなければならず、手間が掛かる、という問題がある。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、自動的に、ユーザが肉眼で目にしているものに応じた映像を表示することにより、ユーザが感じる違和感や混乱を軽減することができるユーザ視点空間映像提示装置、ユーザ視点空間映像提示方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、本発明の一態様は、ユーザの眼球位置を計測する眼球位置計測部と、被写体を撮影する被写体撮影部と、前記被写体までの距離を計測する被写体距離計測部と、前記眼球位置計測部が計測した眼球位置と、前記被写体距離計測部が計測した被写体までの距離とに基づいて、表示範囲を算出する表示範囲算出部と、前記被写体撮影部が撮影した画像から、前記表示範囲算出部が算出した表示範囲を切り出して表示する表示部と、を備えることを特徴とするユーザ視点空間映像提示装置である。
【0009】
この発明によれば、ユーザの眼球位置と被写体までの距離に基づいて表示範囲を決定している。これにより、ユーザが特に操作することなく、ユーザが肉眼で目にする被写体に応じた表示範囲に近づけて表示することができる。
【0010】
また、本発明の一態様は、上記のユーザ視点空間映像提示装置において、前記表示範囲算出部は、前記眼球位置から当該ユーザ視点空間映像提示装置までの距離に対する前記眼球位置から前記被写体までの距離を用いて、表示範囲を算出することを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、眼球位置までの距離に対する眼球位置から被写体までの距離を用いて表示範囲を算出している。これにより、ユーザが肉眼で目にしている被写体と表示する被写体とが一連の被写体であるかのように表示することができ、ユーザが表示されている被写体を見たときに感じる違和感や混乱を軽減することができる。
【0012】
また、本発明の一態様は、上記のユーザ視点空間映像提示装置において、ユーザを撮影するユーザ撮影部を更に備え、前記眼球位置計測部は、前記ユーザ撮影部が撮影した画像から前記ユーザの眼球位置を計測することを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、撮影した画像からユーザの眼球位置を計測するため、例えば赤外線等を用いる測距センサ等が不要となり、ユーザ視点空間映像提示装置の構成を簡略化することができる。
【0014】
また、本発明の一態様は、上記のユーザ視点空間映像提示装置において、前記眼球位置計測部は、前記ユーザ撮影部が撮影した画像における眼球間隔を用いて、前記ユーザの眼球位置を計測することを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、眼球間隔を用いてユーザの眼球位置を計測するため、より簡易的にユーザの眼球位置を計測することができる。
【0016】
また、本発明の一態様は、眼球位置計測部が、ユーザの眼球位置を計測するステップと、被写体撮影部が、被写体を撮影するステップと、被写体距離計測部が、前記被写体までの距離を計測するステップと、表示範囲算出部が、前記眼球位置計測部が計測した眼球位置と、前記被写体距離計測部が計測した被写体までの距離とに基づいて、表示範囲を算出するステップと、表示部が、前記被写体撮影部が撮影した画像から、前記表示範囲算出部が算出した表示範囲を切り出して表示するステップと、を有することを特徴とするユーザ視点空間映像提示方法である。
【0017】
また、本発明の一態様は、コンピュータに、ユーザの眼球位置を計測するステップと、被写体を撮影するステップと、前記被写体までの距離を計測するステップと、計測した眼球位置と、計測した被写体までの距離とに基づいて、表示範囲を算出するステップと、撮影した画像から、算出した表示範囲を切り出して表示するステップと、を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ユーザの眼球位置と被写体までの距離に基づいて表示範囲を決定している。これにより、ユーザが手動で表示範囲や表示倍率を調整せずとも、ユーザが肉眼で目にする被写体に応じた表示範囲に近づけて表示することができる。このため、ユーザが表示されている被写体を見たときに感じる違和感や混乱を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態によるユーザ視点空間映像提示装置の外観構成等を示す概略図である。
【図2】本実施形態によるユーザ視点空間映像提示装置の機能構成を示すブロック図である。
【図3】本実施形態による映像表示処理の手順を示すフローチャートである。
【図4】本実施形態による眼球位置計測方法を説明するための概略図である。
【図5】本実施形態による表示範囲算出方法を説明するための概略図である。
【図6】本実施形態によるユーザ視点空間映像提示装置の表示例を表すイメージ図である。
【図7】従来技術によるデバイスにおいて撮影した画像の表示例を表すイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
図1は、本発明の一実施形態によるユーザ視点空間映像提示装置10の外観構成等を示す概略図である。
ユーザ視点空間映像提示装置10は、スマートフォンや携帯電話機等の小型デバイス或いはタブレットPC等のハンドヘルドデバイスであり、インカメラ11と、ディスプレイ12と、アウトカメラ13とを含んで構成される。インカメラ(ユーザ撮影部)11は、ユーザ視点空間映像提示装置10を操作するユーザAを撮影するカメラである。アウトカメラ(被写体撮影部)13は、物や景色等の被写体を撮影するカメラである。ディスプレイ12は、アウトカメラ13が撮影した被写体を表示する、例えば液晶ディスプレイ等である。また、図1において、撮影範囲S1は、アウトカメラ13の撮影範囲である。また、表示範囲S2は、撮影範囲S1のうちディスプレイ12に表示する範囲である。図1に示すように、ユーザ視点空間映像提示装置10は、ユーザAとユーザ視点空間映像提示装置10との位置関係に基づいて、ユーザAが肉眼で目にする被写体とディスプレイ12に表示する被写体とがシームレスになるように映像を表示する。これにより、ユーザAはディスプレイ12に表示されている映像の空間を直感的に把握しやすくなり、違和感や混乱を軽減することができる。
【0021】
図2は、本実施形態によるユーザ視点空間映像提示装置10の機能構成を示すブロック図である。
ユーザ視点空間映像提示装置10は、インカメラ11と、ディスプレイ12と、アウトカメラ13と、眼球位置計測部14と、表示範囲算出部15と、実空間撮影部16と、被写体距離計測部17と、映像切出し部18と、映像表示部19とを含んで構成される。
眼球位置計測部14は、インカメラ11が撮影した映像(画像)からユーザAの眼球位置を計測し、計測結果を表示範囲算出部15に出力する。眼球位置の計測方法の詳細については後述する。被写体距離計測部17は、アウトカメラ13に備えられている測距センサを用いて被写体までの距離を計測し、計測結果を表示範囲算出部15に出力する。具体的には、被写体距離計測部17は、測距センサから被写体に赤外線を照射し、その反射波が戻るまでの時間及び照射角度により被写体までの距離を検出する。表示範囲算出部15は、眼球位置と被写体までの距離に基づいて、ディスプレイ12に表示する映像(画像)の表示範囲を算出し、算出した表示範囲を映像切出し部18に出力する。表示範囲の算出方法の詳細については後述する。
【0022】
実空間撮影部16は、アウトカメラ13を用いて被写体の映像(画像)を撮影し、撮影した映像(画像)を映像切出し部18に出力する。映像切出し部18は、実空間撮影部16が撮影した映像(画像)から、表示範囲算出部15が算出した表示範囲を切り出し、切り出した映像(画像)を映像表示部19に出力する。映像表示部19は、映像切出し部18が切り出した映像(画像)をディスプレイ12に表示する。なお、映像切出し部18、映像表示部19及びディスプレイ12は、本願の表示部を構成する。
【0023】
次に、図3を参照して、ユーザ視点空間映像提示装置10による映像表示処理について説明する。図3は、本実施形態による映像表示処理の手順を示すフローチャートである。
[ステップS101:眼球位置計測]
まず、ステップS101において、眼球位置計測部14が、ユーザAの眼球位置を計測する。ここで、図4を参照して眼球位置計測方法を詳しく説明する。図4は、本実施形態による眼球位置計測方法を説明するための概略図である。図4において、インカメラ11を原点(0,0,0)、インカメラ11に対して横方向をx軸方向、縦方向をy軸方向、奥行方向をz軸としてインカメラ11におけるxyz座標系を定める。つまり、x軸はインカメラ11とユーザAの眼球位置との水平方向の相対距離を表す。また、y軸はインカメラ11とユーザAの眼球位置との垂直方向の相対距離を表す。また、z軸はインカメラ11とユーザAの眼球位置との距離を表す。
【0024】
まず、眼球位置計測部14は、インカメラ11が撮影した映像である撮影映像IからユーザAの眼球を検出する。具体的には、眼球位置計測部14は、例えば顔認識を用いた画像処理技術を用いて、目、鼻、口などの顔を構成するパーツからユーザAの顔を検出し、検出した顔の撮像画像Iにおける左目眼球の位置(i,j)及び右目眼球の位置(i,j)を算出する。
【0025】
次に、眼球位置計測部14は、実空間における、ユーザAの眼球位置(x,y,z)を算出する。眼球位置(x,y,z)は、ユーザAの左目眼球の位置(x,y,z)と右目眼球の位置(x,y,z)の中間座標である。まず、眼球位置計測部14は、撮影映像I上で検出した左目眼球と右目眼球との距離lを次の式(1)により算出する。
【0026】
【数1】

【0027】
そして、眼球位置計測部14は、次の式(2)により、インカメラ11のCCD(固体撮像素子:Charge Coupled Device)に写りこんだ眼球間の距離lを実空間における距離lに変換する。ここで、αは、撮影映像Iにおける1ピクセルに対する実空間での大きさ(例えば、単位はメートル)を表す係数、つまりピクセルをメートル座標に変換する係数である。
【0028】
=α×l …(2)
【0029】
次に、眼球位置計測部14は、インカメラ11から眼球までの距離zを次の式(3)により算出する。ここで、f1はインカメラ11の焦点距離である。また、ΔEは、眼球間幅であり、定数(例えば、眼球間幅の一般的な平均値である6.5cm)である。なお、眼球間幅ΔEは、ユーザ毎に設定してもよい。式(3)が示すように、眼球位置計測部14は、インカメラ11が撮影した画像における眼球間の距離lを用いて、ユーザAの眼球位置を計測する。つまり、眼球位置計測部14は、距離lの実空間における距離lに対する眼球間幅ΔEを用いて、ユーザAの眼球までの距離を計測する。
【0030】
z=(f1×ΔE)/l …(3)
【0031】
次に、眼球位置計測部14は、x軸方向における眼球位置xを次の式(4)により算出する。ここで、iは、iとiの中間座標であり、i=(i+i)/2である。
【0032】
x=(z×f1)/(α×i) …(4)
【0033】
次に、眼球位置計測部14は、y軸方向における眼球位置yを次の式(5)により算出する。ここで、jは、jとjの中間座標であり、j=(j+j)/2である。
【0034】
y=(z×f1)/(α×j) …(5)
【0035】
なお、本実施形態では、撮影映像Iを用いて眼球位置を計測しているが、例えば、赤外線や超音波等を被写体に照射して被写体までの距離を計測する測距センサ等を用いてユーザAの眼球位置を計測してもよい。
【0036】
[ステップS102:被写体距離計測]
次に、ステップS102において、被写体距離計測部17が、アウトカメラ13から被写体までの距離Zobjを計測する。
【0037】
[ステップS103:表示範囲算出]
次に、ステップS103において、表示範囲算出部15が、ディスプレイ12に表示する表示範囲を算出する。ここで、図5を参照して表示範囲算出方法を詳しく説明する。図5は、本実施形態による表示範囲算出方法を説明するための概略図である。図5において、アウトカメラ13を原点(0,0,0)、アウトカメラ13に対して横方向をx軸方向、縦方向をy軸方向、奥行方向をz軸としてアウトカメラ13におけるxyz座標系を定める。ここで、y軸方向におけるディスプレイ12の上端位置はyupperであり、下端位置はybottomである。また、x軸方向におけるディスプレイ12の左端位置はxleftであり、右端位置はxrightである。また、アウトカメラ13からディスプレイ12までの距離はΔZである。
【0038】
まず、表示範囲算出部15は、ステップS101において算出した眼球位置(x,y,z)をアウトカメラ13における座標系(xpos,ypos,zpos)に変換する。ここで、インカメラ11の位置(x,y,z)から、xpos=x+xであり、ypos=y+yであり、zpos=z+zである。
【0039】
次に、表示範囲算出部15は、表示範囲S2におけるy軸方向の上端yobj_upperを次の式(6)により算出する。表示範囲S2は、ディスプレイ12に表示する被写体の範囲である。
【0040】
obj_upper=ypos−(ypos−yupper)×(zpos+Zobj)/(zpos−ΔZ) …(6)
【0041】
また、表示範囲算出部15は、表示範囲S2におけるy軸方向の下端yobj_bottomを次の式(7)により算出する。
【0042】
obj_bottom=ypos−(ypos−ybottom)×(zpos+Zobj)/(zpos−ΔZ) …(7)
【0043】
次に、表示範囲算出部15は、表示範囲S2におけるx軸方向の左端xobj_leftを次の式(8)により算出する。
【0044】
obj_left=xpos−(xpos−xleft)×(zpos+Zobj)/(zpos−ΔZ) …(8)
【0045】
また、表示範囲算出部15は、表示範囲S2におけるx軸方向の右端xobj_rightを次の式(9)により算出する。
【0046】
obj_right=xpos−(xpos−xright)×(zpos+Zobj)/(zpos−ΔZ) …(9)
【0047】
式(6)、(7)、(8)、(9)に示すように、表示範囲算出部15は、眼球位置からディスプレイ12(ユーザ視点空間映像提示装置10)までの距離に対する眼球位置から被写体までの距離を用いて表示範囲を算出する。
【0048】
次に、表示範囲算出部15は、実空間における表示範囲S2をアウトカメラ13が撮影した映像である撮影映像Oにおける表示範囲aに変換する。まず、表示範囲算出部15は、表示範囲aのy軸方向における上端jを次の式(10)により算出する。ここで、βは、撮影映像Oにおける1ピクセルに対する実空間での大きさ(例えば、単位はメートル)を表す係数、つまりピクセルをメートル座標に変換する係数である。また、f2は、アウトカメラ13の焦点距離である。
【0049】
=f2×yobj_upper/β×Zobj …(10)
【0050】
続いて、表示範囲算出部15は、撮影映像Oにおける表示範囲aのy軸方向における下端jを次の式(11)により算出する。
【0051】
=f2×yobj_bottom/β×Zobj …(11)
【0052】
次に、表示範囲算出部15は、撮影映像Oにおける表示範囲aのx軸方向における左端iを次の式(12)により算出する。
【0053】
=f2×xobj_left/β×Zobj …(12)
【0054】
続いて、表示範囲算出部15は、撮影映像Oにおける表示範囲aのy軸方向における右端iを次の式(13)により算出する。
【0055】
=f2×xobj_right/β×Zobj …(13)
【0056】
これにより、表示範囲算出部15は、四角形の表示範囲aにおける頂点(i,j)、(i,j)、(i,j)、(i,j)を算出する。
【0057】
[ステップS104:映像切出し]
次に、ステップS104において、映像切出し部18が、撮影映像Oから表示範囲aを切り出す。
【0058】
[ステップS105:映像表示]
最後に、ステップ105において、映像表示部19が、映像切出し部18が切り出した映像をディスプレイ12のサイズに合わせて、ディスプレイ12に表示する。つまり、映像表示部19は、切り出した映像がディスプレイ12の画面全体に表示されるように、切り出した映像の表示倍率を調整(拡大又は縮小)して、ディスプレイ12に表示する。
【0059】
図6は、本実施形態によるユーザ視点空間映像提示装置10の表示例を表すイメージ図である。図6(a)は、アウトカメラ13の撮像映像Oをディスプレイ12に表示した場合の表示例である。図6(b)は、撮像映像Oから表示範囲aを切り出した映像をディスプレイ12に表示した場合の表示例である。図6(a)に示すように、撮影画像Oにおける被写体200のスケールは、ユーザが肉眼で目にする被写体100のスケールと異なる。ユーザ視点空間映像提示装置10は、ユーザが肉眼で見ている被写体100と、ディスプレイ12に表示する映像がシームレスになるように、撮像映像Oから表示範囲aを切り出して表示する。このため、図6(b)に示すように、本実施形態によるユーザ視点空間映像提示装置10では、ユーザAが手動で表示倍率や表示範囲を調整せずとも、例えばユーザAが肉眼で目視している橋101とディスプレイ13に表示されている橋301とがあたかも繋がっているかのように表示される。つまり、ユーザが肉眼で見ている被写体100のスケールとディスプレイ12に表示する被写体300のスケールとがほぼ同一である。
【0060】
このように、本実施形態によれば、ユーザ視点空間映像提示装置10は、ユーザの眼球位置と被写体までの距離に基づいて、ディスプレイ12に表示する被写体の表示範囲を決定している。これにより、ユーザが手動で表示範囲や表示倍率を調整せずとも、ユーザが肉眼で目にしている被写体と表示する被写体とが一連の被写体であるかのように表示することができる。このため、ユーザは、ディスプレイ12があたかもガラス窓で、ディスプレイ12上に表示された映像がガラス窓を通してみえる実際の映像であるかのように感じることができる。そのため、ユーザが表示されている被写体を見たときに感じる違和感や混乱を軽減することができる。
また、ディスプレイ12上にCG(Computer Graphics)を追加した場合には、そのCGが現実と同じような倍率で見えるため、あたかもそのCGが現実に存在するかのごとく、拡張現実感を得ることができる。
【0061】
また、図3に示す各ステップを実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、映像表示処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0062】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【0063】
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【符号の説明】
【0064】
10…ユーザ視点空間映像提示装置 11…インカメラ 12…ディスプレイ 13…アウトカメラ 14…眼球位置計測部 15…表示範囲算出部 16…実空間撮影部 17…被写体距離計測部 18…映像切出し部 19…映像表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの眼球位置を計測する眼球位置計測部と、
被写体を撮影する被写体撮影部と、
前記被写体までの距離を計測する被写体距離計測部と、
前記眼球位置計測部が計測した眼球位置と、前記被写体距離計測部が計測した被写体までの距離とに基づいて、表示範囲を算出する表示範囲算出部と、
前記被写体撮影部が撮影した画像から、前記表示範囲算出部が算出した表示範囲を切り出して表示する表示部と、
を備えることを特徴とするユーザ視点空間映像提示装置。
【請求項2】
前記表示範囲算出部は、前記眼球位置から当該ユーザ視点空間映像提示装置までの距離に対する前記眼球位置から前記被写体までの距離を用いて、表示範囲を算出することを特徴とする請求項1に記載のユーザ視点空間映像提示装置。
【請求項3】
ユーザを撮影するユーザ撮影部を更に備え、
前記眼球位置計測部は、前記ユーザ撮影部が撮影した画像から前記ユーザの眼球位置を計測する
ことを特徴とする請求項1または2に記載のユーザ視点空間映像提示装置。
【請求項4】
前記眼球位置計測部は、前記ユーザ撮影部が撮影した画像における眼球間隔を用いて、前記ユーザの眼球位置を計測することを特徴とする請求項3に記載のユーザ視点空間映像提示装置。
【請求項5】
眼球位置計測部が、ユーザの眼球位置を計測するステップと、
被写体撮影部が、被写体を撮影するステップと、
被写体距離計測部が、前記被写体までの距離を計測するステップと、
表示範囲算出部が、前記眼球位置計測部が計測した眼球位置と、前記被写体距離計測部が計測した被写体までの距離とに基づいて、表示範囲を算出するステップと、
表示部が、前記被写体撮影部が撮影した画像から、前記表示範囲算出部が算出した表示範囲を切り出して表示するステップと、
を有することを特徴とするユーザ視点空間映像提示方法。
【請求項6】
コンピュータに、
ユーザの眼球位置を計測するステップと、
被写体を撮影するステップと、
前記被写体までの距離を計測するステップと、
計測した眼球位置と、計測した被写体までの距離とに基づいて、表示範囲を算出するステップと、
撮影した画像から、算出した表示範囲を切り出して表示するステップと、
を実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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