説明

ヨウ化メチルの共沸性くん蒸剤組成物

ヨウ化メチルと、フルオロカーボンまたは1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)などのハイドロフルオロカーボンのうち少なくとも一種との共沸および共沸様組成物。この組成物は、約30℃以下の温度で、気体として存在する。本発明の組成物は、臭化メチルの替わりに、様々な用途において有用な非オゾン破壊性の気体状くん蒸剤として役立つ。これらの組成物は、気体状の臭化メチルのドロップイン代用品として役立ち、既存の臭化メチルの設備を利用すると同時に、ヨウ化メチルくん蒸剤の利点を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はくん蒸剤に関し、特定的には、オゾン破壊性を有さずに、臭化メチルと同様の性質を有するくん蒸剤組成物に関する。具体的には、本発明は、ヨウ化メチルと、フルオロカーボンまたは1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)などのハイドロフルオロカーボンのうち少なくとも一種との共沸および共沸様組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
臭化メチルは1900年代初頭から商業的に用いられてきた気体状のくん蒸剤であり、除草剤、殺線虫剤、殺虫剤、および殺菌剤として非常に有効であるとして知られている。臭化メチルは、土壌のくん蒸のため、数多くの作物につく多様な害虫を駆除するためだけでなく、輸入品や輸出品に対する検疫処理用品や、建物の表面などに適用する構造物くん蒸剤としても幅広く用いられている。しかし、臭化メチルは、その使用者に対する強烈な毒性のために、制限使用駆除剤(Restricted Use Pesticide)(RUP)である。臭化メチルは、オゾン破壊物質としても指定されており、それ故にその生産および使用はモントリオール議定書に従って厳しく制限されている。
【0003】
くん蒸剤としての臭化メチルに変わる代替品や代用品を開発するために、様々な努力がなされている。現在、伝統的な臭化メチル代替物としては、クロルピクリン、1,3−ジクロロプロペン、カーバムナトリウム塩(metham sodium)、およびヨウ化メチルなどわずかなもののみが存在する。臭化メチルに似た製品を生産するためには、これらの材料のうち二種またはそれより多くを一般的には混合物として適用する。しかし、これらの潜在的な代替品はいずれも、それらの物理的な運搬における要件、性能、または経済性に基づくと、臭化メチルに替わる適切な「ドロップイン(drop−in)代用品」ではない。「ドロップイン代用品」という用語は、代用材料を用いたときに、元の材料のやり方、設備、生産装置等を著しく変更する必要がなく、元の材料と同一の対象に用いるために相当量の代用材料を用いることが出来る場合に使用する。
【0004】
ヨウ化メチルを臭化メチルのドロップイン代用品として評価する際に、数多くの調査が実施されてきた。ヨウ化メチルは、雑草の駆除、線虫の駆除、および土壌の病原菌の駆除において、臭化メチルと同等か、それよりも良好であることが見出されている。更に、ヨウ化メチルはオゾンの破壊と関係が無く、有効な濃度で使用した場合でも、作物に毒性を生じない。しかし、臭化メチルは環境温度、環境圧力で気体であるのに対し、ヨウ化メチルは42.5℃(108°F)の沸点を有する低沸点の液体である。ヨウ化メチルは、臭化メチルよりも低蒸気圧、高密度を有する。それ故に、既存の臭化メチル装置においてヨウ化メチルを使用することにより、チューブの閉塞、装置のパイプ中における材料の残留、清掃のための長いラインパージ処理などの、いくつかの欠点が生ずる。その上、臭化メチルの設備は、気体状のくん蒸剤用途向けに設計されているので、ヨウ化メチルを使用することにより、苗床への適用に失敗するといった(missed bed application)問題が生じる。かかる苗床への適用の失敗により、土壌のくん蒸において、著しい作物の損失につながる可能性がある。それ故に、ヨウ化メチルは、くん蒸剤として良く役立つことが出来る一方で、臭化メチルの適切なドロップイン代用品ではない。
【0005】
ドロップイン代用品として役立つことができ、それにより既存の臭化メチルの設備や諸装置の使用を可能とする、臭化メチルに替わるくん蒸剤を提供することが望ましいであろう。本発明はこの問題の解決法を提供する。
【発明の概要】
【0006】
ヨウ化メチルと、フルオロカーボンまたはハイドロフルオロカーボンのうち少なくとも一種とを混合することにより、結果として生ずる共沸または共沸様組成物が約30℃より低い温度で気体として存在することを、目下のところ予期せずに見出した。結果として生じた気体状の組成物は臭化メチルのドロップイン代用品として役立ち、ヨウ化メチルくん蒸剤の利点を提供すると同時に、既存の臭化メチルの設備を利用することもできる。
【0007】
本発明は、ヨウ化メチルと、フルオロカーボンまたはハイドロフルオロカーボンのうち少なくとも一種との混合物を含み、約30℃以下の温度で気体である、共沸または共沸様組成物を提供する。
【0008】
本発明は更に、
a)ヨウ化メチルと、フルオロカーボンまたはハイドロフルオロカーボンのうち少なくとも一種との混合物を含み、約30℃以下の温度で気体である、共沸または共沸様組成物を含むくん蒸剤を提供し、そして、
b)そのくん蒸剤をくん蒸される材料に適用する
ことを含む、くん蒸方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、ヨウ化メチルと、フルオロカーボンまたはハイドロフルオロカーボンのうち少なくとも一種との混合物を含み、約30℃以下の温度で気体の形態として存在する、共沸または共沸様組成物に関する。
【0010】
本明細書中で使用するように、「共沸様」という用語は、その広い意味において、厳密に共沸性である組成物、および共沸混合物のような振る舞いをする組成物の両方を含むことを意図している。基本的な原理に基づくと、流体の熱力学的状態は、圧力、温度、液体組成、および気体組成によって定義される。共沸混合物は、二種類またはそれより多い成分の系であり、一定の圧力および温度において、その液体組成と気体組成は等しい。これは、実際には共沸混合物の各成分が定沸点であり、蒸留の間に分離されないことを意味する。
【0011】
共沸様組成物は、定沸点であるか、本質的に定沸点である。言い換えると、共沸様組成物に関して、(実質的に等圧の条件下での)沸騰または蒸発の間に形成された蒸気の組成は、元の液体組成と同じか、実質的に同じである。それ故に、沸騰または蒸発によりその液体組成がもし変化したとしても、ほんの最小限であるか、無視できる程度にしか変化しない。これは、非共沸様組成物において、液体組成が沸騰または蒸発の間に実質的な程度に変化するのとは対照的である。示唆されている範囲内における本発明の全ての共沸様組成物、ならびにこれらの範囲の外側にある若干の組成物は、共沸様である。
【0012】
異なる圧力において所与の共沸化合物の組成は、その組成の沸点が変化するのと同様に少なくともわずかに変化することが良く知られている。それ故に、AとBとの共沸化合物は独特なタイプの関係性を示すが、ここで、変化可能な組成は温度および/または圧力に依存する。これに加えて、共沸様組成物に関して、共沸様であるような色々な割合でこれらの成分を含有する、ある組成の範囲が存在する。全てのかかる組成を、本明細書中で用いられる共沸様という用語によって包含することを意図している。
【0013】
既に述べたとおり、本発明は、ヨウ化メチルと、フルオロカーボンまたはハイドロフルオロカーボンのうち少なくとも一種との混合物を含む、共沸および共沸様組成物を提供する。ヨウ化メチルはヨードメタンとしても知られており、一般的に「MeI」と省略して書かれ、式「CHI」を有する。ヨウ化メチルは、約42.5℃の沸点および約2.3g/ccの密度を有する。ヨウ化メチルは、有用なくん蒸剤として伝統的に知られており、本発明の組成物中でこの目的を満たす。ヨウ化メチルの更なる利点は、オゾンの破壊と関係が無いことである。
【0014】
本明細書において、フルオロカーボンは、付加フッ素基を少なくとも一つ有する任意の炭素分子として定義される。ハイドロフルオロカーボンは、本発明において特に有用である。本特許請求の範囲は、本発明の組成物がフルオロカーボンまたはハイドロフルオロカーボンのうち少なくとも一種を含むことを要求する。この少なくとも一種のフルオロカーボンまたはハイドロフルオロカーボンは、本発明の組成物の総体積を増加させて、この組成物の適用を容易にし、所与の体積のヨウ化メチルが接触対象の材料に暴露される時間を増加させる。更に、この少なくとも一種のフルオロカーボンまたはハイドロフルオロカーボンにより、本発明の組成物を、より均一かつ容易に管理可能なように適用することが可能となる。加えて、この少なくとも一種のフルオロカーボンまたはハイドロフルオロカーボンは、本組成物の非毒性部分として役立ち、労働者の毒性材料への暴露を減少させる。
【0015】
いくつかの異なるフルオロカーボンおよびハイドロフルオロカーボンが、この発明に従って形成された組成物において用いるために適している。本発明において用いるために適したフルオロカーボンの例としては、非排他的に、1−クロロ−3,3,3トリフルオロプロペン(HCFC−1233xd);2,2−ジクロロ−1,1,1−トリフルオロエタン(HCFC−123);1,1,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテル(HFE−245);およびシス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFC−1234ze)が挙げられる。本発明において用いるために適したハイドロフルオロカーボンの例としては、非排他的に、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa);1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365);1,2−ジフルオロエタン(HFC−152);1,2,2,3,3−ペンタフルオロプロパン(245ca);および1,2,2−トリフルオロエタン(HFC−143)が挙げられる。好ましいハイドロカーボンは1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)で、このハイドロカーボンは非燃焼性、非毒性の化合物であり、オゾン破壊係数がゼロである。ヨウ化メチルと1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)とが、比重や密度などのいくつかの点で、臭化メチルの物理的性質と非常に良く似た性質を持つ共沸混合物を形成することを、予期せずに見出した。ヨウ化メチルと1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365)とが、臭化メチルの各性質と似た共沸混合物を形成することも、また見出した。更に、ヨウ化メチルとシス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFC−1234ze)とが、臭化メチルの各性質と似た共沸混合物を形成することも、また見出した。ある好ましい実施形態において、少なくとも一種のフルオロカーボンまたはハイドロフルオロカーボンは、約0℃〜約50℃の沸点を有する。
【0016】
好ましい実施形態において、少なくとも一種のフルオロカーボンまたはハイドロフルオロカーボンは、約0.05以下の平均オゾン破壊係数(ODP)を有する。ある化学化合物のオゾン破壊係数(ODP)は、トリクロロフルオロメタン(R−11)のODPを1.0に固定したときに、その化合物が引き起こし得るオゾン層の破壊の相対量である。例えば、クロロジフルオロメタン(R−22)は0.05のODPを有する。
【0017】
更に好ましい実施形態において、少なくとも一種のフルオロカーボンまたはハイドロフルオロカーボンは、100年地球温暖化係数(GWP)が約1000以下である。地球温暖化係数(GWP)は、所与の質量の温室ガスが地球温暖化にどの程度寄与すると推定されるかについての指標である。この係数は、問題となっているガスと、定義によりGWPが1である同質量の二酸化炭素のガスとを比較した相対尺度である。GWPは特定の期間にわたって計算され、GWPを引用する場合にはいつでもこの値を述べなければならない。今日用いられている最も一般的な期間は100年である。
【0018】
本発明の組成物は、有効量のヨウ化メチルと、有効量の少なくとも一種のフルオロカーボンまたはハイドロフルオロカーボンとを含む。本明細書において用いられる「有効量」という用語は、他の成分または他の複数の成分と混合したときに、本特許請求の範囲で請求されている共沸または共沸様組成物の形成を生ずるような各成分の量を意味する。ヨウ化メチルは、好ましくは本発明の組成物中にその組成物の約5〜約70重量%、より好ましくは約15〜約60重量%、最も好ましくは約25〜約50重量%の量で存在する。少なくとも一種のフルオロカーボンまたはハイドロフルオロカーボンは、好ましくは本組成物中にその組成物の約30〜約95重量%、より好ましくはその組成物の約40〜約85重量%、最も好ましくはその組成物の約50〜約75重量%の量で存在する。
【0019】
本発明の組成物は、ヨウ化メチルと、少なくとも一種のフルオロカーボンまたはハイドロフルオロカーボンとから本質的になる二元系の共沸化合物の形態で存在しても良い。本発明の共沸様組成物は、任意に追加の成分または添加物を含んでも良い。本発明の組成物に適した添加物としては、非排他的に、クロルピクリン、アクロレイン、1,3−ジクロロプロペン、ジメチルジサルファイド、フルフラール、および酸化プロピレンが挙げられる。一つの好ましい添加物としては、クロルピクリンが挙げられる。例えば、好ましい一実施形態において、本発明の共沸または共沸様組成物は、33%のヨウ化メチル、33%のHFC−245fa、および33%のクロルピクリンを含む。
【0020】
ヨウ化メチル、少なくとも一種のフルオロカーボンまたはハイドロフルオロカーボン、および任意の添加物は、全ての成分の実質的に均一な混合物を生ずる任意の伝統的な手段を用いて混合することが出来る。本発明の混合物は、混合した場合には、約30℃以下の温度で気体の形態で存在する共沸または共沸様組成物を形成する。
【0021】
本発明の組成物は、室温で気体状の状態で適用可能であり、気体状用途のために設計された臭化メチルの機器装置を利用できるように、約30℃以下の温度で気体の形態で存在し、ある実施形態においては、好ましくは約20℃以下の温度で気体の形態で存在する。ある好ましい実施形態において、本発明の組成物は約8℃〜約14.5℃、より好ましくは約8℃〜約13.8℃、最も好ましくは約8℃〜約12.7℃の範囲の沸点を有する。
【0022】
本発明の組成物は、好ましくは、目詰まりなどを起こさずに臭化メチルの機器装置において本組成物を用いることが出来るような特定の密度を示す。ある好ましい実施形態においては、本発明の組成物は約1.5g/cc〜約2.4g/cc、より好ましくは約1.6g/cc〜約2.0g/cc、最も好ましくは約1.6g/cc〜約1.8g/ccの密度を有する。
【0023】
本発明の組成物は、様々な用途において用いることが出来る。これらの組成物は、くん蒸剤、またはくん蒸剤の成分として用いるのに特に適している。本発明の組成物のためのくん蒸用途の例としては、非排他的に、虫の駆除、シロアリの駆除、げっ歯類の駆除、雑草の駆除、線虫の駆除、および土壌伝染病の治療が挙げられる。本組成物は更に、農業用品、穀物倉庫、製粉機、船、布、備品、温室をくん蒸するためや、建物における害虫の駆除(構造物くん蒸)等のために用いることが出来る。
【0024】
本発明の組成物は、好ましくは、臭化メチル用に設計された既存のくん蒸パイプやくん蒸装置を通してくみ上げる。本発明の気体状の組成物は、配管の目詰まりや、化学薬品の沈殿堆積といった、液体のヨウ化メチルに典型的に関連する問題を除去し、装置から容易にパージすることが出来る。実際、本発明の共沸または共沸様組成物は、臭化メチルと同様に、室温で気体として存在し、既存の臭化メチルの装置の配管を利用して容易に移動するので、ヨウ化メチルに特有の困難性である苗床への適用の失敗は、もはや問題ではない。更に、本発明の共沸または共沸様組成物は、オゾンを破壊する可能性が低い一方で、臭化メチルに良く類似した環境効果と活性の範囲を有する。それ故に、本発明の組成物は、臭化メチルのドロップイン代用品として効果的に役立つ。
【0025】
本発明は更に、くん蒸方法に関する。この方法に従って、ヨウ化メチルと、フルオロカーボンまたはハイドロフルオロカーボンのうち少なくとも一種との混合物を含み、約30℃以下の温度で気体である共沸または共沸様組成物、を含むくん蒸剤を提供する。このくん蒸剤は、好ましくは、既に詳細に記載した共沸または共沸様組成物を含むか、またはその組成物から本質的になる。このくん蒸剤を、次いでくん蒸されるための材料に適用し、好ましくは気体の形態として適用する。ある好ましい実施形態においては、このくん蒸剤の適用を、約0℃〜約50℃の周囲温度で実施する。このくん蒸剤を、既に述べたような様々なくん蒸用途において、くん蒸されるための様々な異なる材料に適用することができる。好ましい一実施形態においては、くん蒸剤を土壌に適用する。ある更に好ましい実施形態においては、くん蒸剤を木に適用する。更に別の好ましい実施形態においては、くん蒸剤を建物の表面に適用する。
【0026】
以下の非限定的な実施例により、本発明を説明する。本発明の成分の割合の変更や、成分の構成要素の代替物は、当業者には明らかであり、そしてそれは本発明の範囲に含まれることが理解されるだろう。
【実施例】
【0027】
実施例1
コンデンサーを頂部に備え、更に石英温度計を備えた真空被覆チューブからなる沸点測定装置を用いた。約22gのHFC−245faを沸点測定装置に充填し、次いでヨウ化メチルを少しずつ測り入れた。ヨウ化メチルをHFC−245faに添加した際に温度低下が観察され、これは二元系の極小沸点共沸化合物が形成されたことを示唆していた。雰囲気圧は14.50psia(1.00×10Pa)と測定された。ヨウ化メチルが約0重量%より多く約60重量%までの範囲において、その組成物の沸点の変化は約3℃以下だった。以下の表1に示した二元系の混合物を調査し、10〜約60重量%のCHIの組成物の沸点の変化は、約0.5℃未満だった。これらの組成物は、この範囲にわたって共沸および/または共沸様の性質を示した。
【0028】
【表1】

【0029】
実施例2
実施例1において用いたものに類似した、コンデンサーを頂部に備えた真空被覆チューブからなる沸点測定装置を用いた。約10gのHFC−365を沸点測定装置に充填し、次いでヨウ化メチルを少しずつ測り入れた。ヨウ化メチルをHFC−365に添加した際に、温度低下と、純粋なヨウ化メチルおよび純粋なHFC−365の沸点よりも低い極小沸点とが観察され、これは二元系の極小沸点共沸化合物が形成されたことを示唆していた。雰囲気圧は14.29psia(9.85×10Pa)と測定された。HFC−365が約80重量%〜約45重量%までの範囲において、その組成物の沸点の変化は約2℃以下だった。以下の表2に示した二元系の混合物を調査し、35〜約65重量%のCHIの組成物の沸点の変化は、約0.5℃未満だった。これらの組成物は、この範囲にわたって共沸および/または共沸様の性質を示した。
【0030】
【表2】

【0031】
【表3】

【0032】
【表4】

【0033】
実施例3
コンデンサーを頂部に備え、更に石英温度計を備えた真空被覆チューブからなる沸点測定装置を用いた。約19.5gの1,3,3,3−テトラフルオロプロペンのシス異性体(シス−HFC−1234ze)を沸点測定装置に充填した。このシス異性体は、不純物としておよそ9%のHFC−245faを含有していた。次いで、ヨウ化メチルを少しずつ測り入れた。ヨウ化メチルをシス−HFC−1234zeに添加した際に温度低下が観察され、これは二元系の極小沸点共沸化合物が形成されたことを示唆していた。雰囲気圧は14.42psia(9.95×10Pa)と測定された。ヨウ化メチルが約0重量%より多く約55重量%までの範囲において、その組成物の沸点の変化は約1℃以下だった。以下の表3に示した二元系の混合物を調査し、5〜約55重量%のCHIの組成物の沸点の変化は、約0.5℃未満だった。これらの組成物は、この範囲にわたって共沸および/または共沸様の性質を示した。
【0034】
【表5】

【0035】
実施例4
本発明に従い、ヨウ化メチルおよびHFC−245faを混合して、共沸または共沸様組成物を形成する。この組成物を、土壌に植え込みを行う前に、土壌から引き出された複数のシャンクマウントされた(shank−mounted)チューブを通して注入し、次いでその土壌をプラスチックフィルムで覆うことによって、土地へのくん蒸剤として適用する。このくん蒸剤を、土壌中に見られるあらゆる病気や害虫を土壌から取り除くのに十分な散布量で適用する。このくん蒸剤を適用した後、土壌を、くん蒸剤が全ての有害な生物を土壌から取り除いていられる十分な時間、荒らされない状態で保つ。土壌への適用は、高い水分含量、20cm/8inchの深さで13℃/55°Fより低い土壌温度、および/または砕土された土壌の高い植物/雑草含量といった、土壌の諸条件に注意を払うことを伴う。種植えの休止期間の経過後に、治療された土地に植え込みを行うことが出来る。
【0036】
実施例5
本発明に従い、ヨウ化メチル、HFC−245fa、およびクロルピクリンを混合して、共沸または共沸様組成物を形成する。この組成物を、土壌に植え込みを行う前に、土壌から引き出された複数のシャンクマウントされた(shank−mounted)チューブを通して注入し、次いでその土壌をプラスチックフィルムで覆うことによって、土地へのくん蒸剤として適用する。このくん蒸剤を、土壌中に見られるあらゆる病気や害虫を土壌から取り除くのに十分な散布量で適用する。このくん蒸剤を適用した後、土壌を、くん蒸剤が全ての有害な生物を土壌から取り除いていられる十分な時間、荒らされない状態で保つ。土壌への適用は、高い水分含量、20cm/8inchの深さで13℃/55°Fより低い土壌温度、および/または砕土された土壌の高い植物/雑草含量といった、土壌の諸条件に注意を払うことを伴う。種植えの休止期間の経過後に、治療された土地に植え込みを行うことが出来る。
【0037】
実施例6
本発明に従い、ヨウ化メチルおよびHFC−245faを混合して、共沸または共沸様組成物を形成する。この組成物を、土壌に植え込みを行う前に、プラスチックのタープの下でドリップ灌漑装置を通る水の中に、土地へのくん蒸剤として適用する。このくん蒸剤を、土壌中に見られるあらゆる病気や害虫を土壌から取り除いて治療するのに十分な散布量で適用する。このくん蒸剤を適用した後、土壌を、くん蒸剤が全ての有害な生物を土壌から取り除いていられる十分な時間、荒らされない状態で保つ。土壌への適用は、高い水分含量、20cm/8inchの深さで13℃/55°Fより低い土壌温度、および/または砕土された土壌の高い植物/雑草含量といった、土壌の諸条件に注意を払うことを伴う。種植えの休止期間の経過後に、治療された土地に植え込みを行うことが出来る。
【0038】
実施例7
本発明に従い、ヨウ化メチル、HFC−245fa、およびクロルピクリンを混合して、共沸または共沸様組成物を形成する。この組成物を、土壌に植え込みを行う前に、プラスチックのタープの下でドリップ灌漑装置を通る水の中に、土地へのくん蒸剤として適用する。このくん蒸剤を、土壌中に見られるあらゆる病気や害虫を土壌から取り除いて治療するのに十分な散布量で適用する。このくん蒸剤を適用した後、土壌を、くん蒸剤が全ての有害な生物を土壌から取り除いていられる十分な時間、荒らされない状態で保つ。土壌への適用は、高い水分含量、20cm/8inchの深さで13℃/55°Fより低い土壌温度、および/または砕土された土壌の高い植物/雑草含量といった、土壌の諸条件に注意を払うことを伴う。種植えの休止期間の経過後に、治療された土地に植え込みを行うことが出来る。
【0039】
実施例8
この実施例は、構造物のくん蒸方法に関する。構造物をくん蒸する前に、全ての直火と白熱フィラメントの電源を切るか、ブレーカーを落とす。本発明に従い、ヨウ化メチルおよびHFC−245faを混合して、共沸または共沸様組成物を形成する。この組成物を、全ての有害な生物を構造物から取り除くために必要な暴露期間と、それに続く、使用されなかったくん蒸剤および任意の警報ガスを構造物から飛ばすために十分な程度長い通気期間で、タープがかけられているか、または封止されている構造物にくん蒸剤として適用する。ヨウ化メチル/245fa混合物は無臭であり、目や肌を刺激しないので、微量の警告剤(例えばクロルピクリン)をくん蒸の前に構造物に導入して、警告剤として作用させる。このくん蒸剤の必要な用量は、害虫のいる場所の温度、暴露する期間の長さ、気密性または構造物からくん蒸剤が失われる速度、および駆除される害虫の感受性に影響される。
【0040】
本発明を、好ましい実施形態を参照して特定的に示し、記載してきたが、本発明の精神および範囲から逸脱すること無く、様々な変更および修飾を行うことが可能であることが、当業者に容易に理解されるだろう。特許請求の範囲が、開示された実施形態、これまでに述べたそれらの代替物、およびそれらの全ての均等物を含むように解釈されることを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨウ化メチルと、フルオロカーボンまたはハイドロフルオロカーボンのうち少なくとも一種との混合物を含み、約30℃以下の温度で気体である、共沸または共沸様組成物。
【請求項2】
少なくとも一種のフルオロカーボンまたはハイドロフルオロカーボンが、約0℃〜約50℃の沸点を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
少なくとも一種のフルオロカーボンまたはハイドロフルオロカーボンが、約0.05以下の平均オゾン破壊係数を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
少なくとも一種のフルオロカーボンまたはハイドロフルオロカーボンが、約1000以下の100年地球温暖化係数を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
少なくとも一種のフルオロカーボンまたはハイドロフルオロカーボンが、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも一種のフルオロカーボンまたはハイドロフルオロカーボンが、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
少なくとも一種のフルオロカーボンまたはハイドロフルオロカーボンが、シス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
約5〜約70重量%のヨウ化メチルと、約30〜約95重量%の少なくとも一種のフルオロカーボンまたはハイドロフルオロカーボンとを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
約8℃〜約14.5℃の沸点を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
約1.5g/cc〜約2.4g/ccの密度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
請求項1の組成物を含む、くん蒸剤。
【請求項12】
請求項5の組成物を含む、くん蒸剤。
【請求項13】
請求項6の組成物を含む、くん蒸剤。
【請求項14】
請求項7の組成物を含む、くん蒸剤。
【請求項15】
約5〜約70重量%のヨウ化メチルと、約30〜約95重量%の少なくとも一種のフルオロカーボンまたはハイドロフルオロカーボンとを含み、密度が約1.5g/cc〜約2.4g/ccである組成物であって、該組成物の該少なくとも一種のフルオロカーボンまたはハイドロフルオロカーボンが、約0.05以下の平均オゾン破壊係数と、約1000以下の100年地球温暖化係数とを有する、請求項1に記載の組成物を含むくん蒸剤。
【請求項16】
少なくとも一種のフルオロカーボンまたはハイドロフルオロカーボンが、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンを含む、請求項15に記載のくん蒸剤。
【請求項17】
少なくとも一種のフルオロカーボンまたはハイドロフルオロカーボンが、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタンを含む、請求項15に記載のくん蒸剤。
【請求項18】
少なくとも一種のフルオロカーボンまたはハイドロフルオロカーボンが、シス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFC−1234ze)を含む、請求項15に記載のくん蒸剤。
【請求項19】
a)ヨウ化メチルと、フルオロカーボンまたはハイドロフルオロカーボンのうち少なくとも一種との混合物を含み、約30℃以下の温度で気体である、共沸または共沸様組成物を含むくん蒸剤を提供すること;および
b)該くん蒸剤をくん蒸されるための材料に適用すること
を含む、くん蒸方法。
【請求項20】
くん蒸剤が工程b)において気体として適用される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
約0℃〜約50℃の周囲温度で工程b)が実施される、請求項19に記載のくん蒸方法。
【請求項22】
少なくとも一種のフルオロカーボンまたはハイドロフルオロカーボンが、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
少なくとも一種のフルオロカーボンまたはハイドロフルオロカーボンが、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタンを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
少なくとも一種のフルオロカーボンまたはハイドロフルオロカーボンが、シス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFC−1234ze)を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
くん蒸剤が、工程b)において土壌に適用される、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
くん蒸剤が、工程b)において木に適用される、請求項19に記載の方法。
【請求項27】
くん蒸剤が、工程b)において建物の表面に適用される、請求項19に記載の方法。

【公表番号】特表2010−519210(P2010−519210A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549713(P2009−549713)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際出願番号】PCT/US2008/053921
【国際公開番号】WO2008/101054
【国際公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】