説明

ライタプラグ及びその製造方法

【課題】組立て工程におけるセット時にヒータエレメントの巻き状態を調整できるシガレットライタ用のライタプラグ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ノブ210を有するプラグボディ220の一端に設けられるヒータケース252と、ヒータケース252に立設され、ヒータケース252内に軸部254bが突出して設けられたヒータリベット254と、一端が軸部254bに回転可能に嵌合して圧入される内周端部250aであり、他端がヒータケース252に溶接される外周端部250bである渦巻状に形成されたヒータエレメント250と、を有してライタプラグ200を構成する。これにより、ヒータエレメントの巻き状態を調整しながら組み立てることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シガレットライタ用のライタプラグ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シガレットライタ用のライタプラグは、ライタプラグの先端部にプラグボディに一体化されたヒータケースを備え、このヒータケース内にヒータエレメントが巻回収容されている。ヒータエレメントの内周端部は、ヒータケースの中心に立設されたヒータリベットのすり割りに噛み込むと共にヒータリベットの先端部に溶接される。ヒータエレメントを巻き込んだ小径状態にしてカップ状のヒータケース内に収容し、その後、巻き込み状態を解除する事によりヒータエレメントの外周部が弾性力によって拡がり、ヒータケース側壁の内面に当接するので、その外側先端部をヒータケースの側壁にレーザ溶接している(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1のシガレットライタ用のライタプラグによれば、ヒータエレメントをヒータケースの外側壁に直接レーザ溶接する事により、従来スポット溶接時に必要とされていた被膜取りの工程が不要になるため、生産性が向上すると共に、ホルダも必要としないので部品点数を削減することができ、シガレットライタそのものを廉価に提供できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−105523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の構成によると、ヒータエレメントの巻き径はヒータケースの内径に対して小径にする必要があり、組立て工程におけるセット時にヒータエレメントを巻き戻しておく必要があった。したがって、この巻き戻しはセット前の作業となり、組立て作業での余裕も必要となるという問題があった。
【0006】
従って、本発明の目的は、組立て工程におけるセット時にヒータエレメントの巻き状態を調整できるシガレットライタ用のライタプラグ及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]本発明は、上記目的を達成するため、プラグボディの一端に設けられるヒータケースと、前記ヒータケースに立設され、前記ヒータケース内に軸部が突出して設けられたヒータリベットと、一端が前記軸部に回転可能に嵌合して圧入される内周端部であり、他端が前記ヒータケースに溶接される外周端部である渦巻状に形成されたヒータエレメントと、を有することを特徴とするシガレットライタ用のライタプラグを提供する。
【0008】
[2]前記内周端部は、前記軸部に回転可能に嵌合して圧入された後、溶接により前記軸部に固定されることを特徴とする上記[1]に記載のシガレットライタ用のライタプラグであってもよい。
【0009】
[3]また、前記ヒータエレメントは、前記圧入された後、渦巻状の巻き状態を調整された後に、溶接により前記軸部に固定されることを特徴とする上記[2]に記載のシガレットライタ用のライタプラグであってもよい。
【0010】
[4]本発明は、上記目的を達成するため、渦巻状のヒータエレメントの内周端部をヒータケースに立設された軸部に回転可能に嵌合して圧入する圧入工程と、前記ヒータエレメントの外周端部を前記ヒータケースに溶接する第1溶接工程と、前記渦巻状の巻き状態を調整する調整工程と、前記内周端部を前記軸部に溶接する第2溶接工程と、を有することを特徴とするシガレットライタ用のライタプラグの製造方法を提供する。
【0011】
[5]前記調整工程は、前記ヒータエレメントの巻き締め、又は巻き戻しにより前記渦巻状の巻き状態を調整することを特徴とする上記[4]に記載のシガレットライタ用のライタプラグの製造方法であってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、組立て工程におけるセット時にヒータエレメントの巻き状態を調整できるシガレットライタ用のライタプラグ及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1(a)は、本発明の実施の形態に係るシガレットライタ用のライタプラグの縦断面図であり、図1(b)は、図1(a)の右側面図である。
【図2】図2は、ヒータエレメントとヒータリベットを示す外観斜視図である。
【図3】図3は、ヒータエレメントを溶接するための溶接装置の概略構成図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態に係るシガレットライタ用のライタプラグの製造方法を示す工程図である。
【図5】図5(a)〜(d)は、ヒータリベットに対するヒータエレメントのそれぞれの製造工程における巻き状態を示す、図2のA方向から見た平面図である。 なお、断面図において、断面の奥にある線は、図示しない場合がある。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(本発明の実施の形態)
本発明の実施の形態に係るシガレットライタ用のライタプラグ200は、車両側に備えられたライタソケットに着脱して使用される。ライタソケットに挿入されることで、車両側から電源を供給され、ヒータエレメント250が発熱することによりシガレットライタとして機能する。
【0015】
図1(a)は、本発明の実施の形態に係るシガレットライタ用のライタプラグ200の縦断面図であり、図1(b)は、図1(a)の右側面図である。ライタプラグ200は、把持部であるノブ210を有するプラグボディ220と、このプラグボディ220のノブ210と反対側の一端に設けられるヒータケース252と、ヒータケース252内に軸部254bが突出して立設されプラグインシュレータ256を介してプラグボディ220ヒータケース252をカシメ加工により固定するヒータリベット254と、一端が軸部254bに回転可能に嵌合して圧入される内周端部250aであり他端がヒータケース252に溶接される外周端部250bである渦巻状に形成されたヒータエレメント250と、を有して概略構成されている。
【0016】
(ライタプラグ200)
ライタプラグ200は、ノブ210、プラグボディ220、スプリング222、スライドリング230、アッシュガード240、ヒータエレメント250、ヒータリベット254等により構成されている。スライドリング230とアッシュガード240は、一体的に、図示省略する車両側に設けられたライタソケットに嵌合して挿入される。さらに、ノブ210、プラグボディ220、ヒータエレメント250等は、スプリング222に抗してライタソケットの奥まで押し込まれることにより、ヒータエレメント250が通電して着火動作を行なう構成とされている。
【0017】
プラグボディ220は、鍔つきの有底の円筒形状であり、開口部側の鍔部220aはノブ210に当て付けられ、円筒部220bが取付ボス部210bに嵌合して、カシメ部220cをノブ210側へカシメることによりノブ210に一体的に固定される。円筒部220bは、スライドリング230の内環部230aとスライド可能に嵌合している。また、ノブ210の外周部210aとスライドリング230の外環部230bは、スライド可能に嵌合している。したがって、ノブ210及びプラグボディ220は、一体としてスライドリング230に対してスライド可能とされている。また、プラグボディ220の底部220dには、リベット取付け穴220eが形成されている。
【0018】
図1に示すように、ノブ210及びプラグボディ220とスライドリング230の間にはノブ210とスライドリング230が離間する方向に所定の付勢力を付与する状態でスプリング222が装着され、スライドリング230からの反力をノブ210及びプラグボディ220に作用させている。なお、図示は省略したが、ノブ210とスライドリング230が、図1に示す位置からさらに離間しないように、抜け止め部が互いに形成されている。
【0019】
スライドリング230の外周部には、アッシュガード240が外嵌されている。アッシュガード240は、鍔部240aが形成された円筒状の部材であって、外周部にはライタソケット側のソケット爪が係止される凹部である係合凹部240bが1周に亘って形成されている。アッシュガード240とスライドリング230は一体としてソケットボディの内周部をスライドでき、鍔部240aがライタソケットに当接するまでライタプラグ200を押し込むことができる。また、この状態から、さらにノブ210、プラグボディ220、及びヒータエレメント250等を着火動作として押し込むことができる。
【0020】
プラグボディ220の底部220dのリベット取付け穴220eには、ヒータリベット254のカシメ軸254cが挿入され、図1に示すように、プラグインシュレータ256を挟んでプラグボディ220とヒータケース252がカシメにより一体的に固定される。なお、図1は、ヒータリベット254のカシメ軸254cがカシメ加工により塑性変形している状態を示している。
【0021】
図2は、ヒータエレメント250とヒータリベット254を示す外観斜視図である。ヒータリベット254は、大径部であるフランジ部254a、フランジ部254aから一端側に伸設されヒータエレメント250の内周端部250aが圧入される軸部254b、他端部に伸設されプラグインシュレータ256を挟んでプラグボディ220の底部220dのリベット取付け穴220eに挿入された状態でカシメ加工されるカシメ軸254c、からなる段付軸である。
【0022】
ヒータエレメント250は、図2に示すように、一端が軸部254bに回転可能に嵌合して圧入される内周端部250aであり、他端がヒータケース252に溶接される外周端部250bである渦巻状に形成されている。ヒータエレメント250は、例えば、ニクロム帯材、Fe−Cr−Al合金の帯材等から形成され、通電により発熱する。図2に示すように、軸部254bに圧入される内周端部250aから外周方向に巻回され、ヒータケース252に溶接される外周端部250bへ向って渦巻状とされている。内周端部250aから折り返して渦巻が開始される領域は治具スペース250cとして所定の間隙が形成されている。後述する治具300による巻き締め、巻き戻し調整を行なうために治具を挿入する間隙である。治具スペース250cから外周端部250bまでは、互いに接触しない程度の間隙を保持しつつ渦巻状に巻回されている。
【0023】
ヒータリベット254の軸部254bにはヒータエレメント250の内周端部250aがプラズマ溶接され、外周端部250bはヒータケース252の側壁252aにレーザ溶接されている。ヒータケース252の外周部252bは、着火動作のためにノブ210が奥に押し込まれたときにライタソケット側に設けられたバイメタルの係合部が保持できるように突出形状とされている。ライタプラグ200が着火動作のためにライタソケットの奥に押し込まれると、ライタソケットのプラス電源から、ヒータケース252、ヒータエレメント250、ヒータリベット254、プラグボディ220、スライドリング230、アッシュガード240を介してライタソケットのアース側(マイナス電源)に電気的に接続される。これにより、ヒータエレメント250は通電されて発熱する。
【0024】
図3は、ヒータエレメントを溶接するための溶接装置の概略構成図である。ヒータエレメント250を収容したライタプラグ200を溶接装置30の回転支持台32に設置し、ヒータエレメント250の内周端部250aをヒータケース252に立設された軸部254bに回転可能に嵌合して圧入する圧入工程(P1)、渦巻状のヒータエレメント250の外周端部250bをヒータケース252の側壁252aに溶接する第1溶接工程(P2)、渦巻状の巻き状態を調整する調整工程(P3)、内周端部250aを軸部254bに溶接する第2溶接工程(P4)を順次行なう。
【0025】
ここで、溶接装置30は、ライタプラグ200を回転自在に支持するための回転支持台32と、集光レンズ36を有するレーザ照射部34と、アーク電極42を有するプラズマ発生部40と、レーザ照射又はプラズマ発生を制御するコントロール部44と、これらを接続する接続ケーブル46と、を備えている。第1溶接工程(P2)は、レーザ照射部34として、例えば、YAGレーザ光(波長:1.06μm)、COレーザ光(波長:10.6μm)を使用するレーザ溶接である。また、第2溶接工程(P4)は、プラズマ発生部40によりアーク電極42と母材との間に発生させるトランスファアークを利用して行うプラズマ溶接である。
【0026】
図4は、本発明の実施の形態に係るシガレットライタ用のライタプラグの製造方法を示す工程図である。以下、この工程図に基づいて工程順に説明する。
【0027】
(圧入工程P1)
ヒータエレメント250の内周端部250aをヒータケース252に立設された軸部254bに回転可能に嵌合して圧入する。このとき、渦巻状のヒータエレメント250の全体がヒータケース252内に収容される。
【0028】
(第1溶接工程P2)
ヒータエレメント250を収容したライタプラグ200を溶接装置30の回転支持台に設置する。レーザ照射部34は、回転支持台32の側方に設置されており、集光レンズ36によりレーザ光を設定時間だけ発光して集光させ、ヒータエレメント250の外周端部250bをヒータケース252の側壁252aに溶接する。
【0029】
(調整工程P3)
図5(a)〜(d)は、ヒータリベットに対するヒータエレメントのそれぞれの製造工程における巻き状態を示す、図2のA方向から見た平面図である。図5(a)は、圧入工程(P1)により、ヒータエレメント250の内周端部250aがヒータケース252に立設された軸部254bに回転可能に嵌合して圧入された状態である。この状態では、ヒータエレメント250の巻き状態は調整されていない。
【0030】
図5(b)に示すように、断面が略C形状の治具300を治具スペース250cに差し込む。ここで、図5(c)に示すように、左方向(反時計方向)に治具300を回転させることで巻き締め、ヒータエレメント250の渦巻状の巻き状態を調整する。また、図5(d)に示すように、右方向(時計方向)に治具300を回転させることで巻き戻し、ヒータエレメント250の渦巻状の巻き状態を調整する。上記の調整は、例えば、最初に完全に巻き締め状態にしておき、所定の巻回数、例えば、3回だけ巻き戻し調整を行なうことで、一定の渦巻状の巻き状態とすることが可能である。また、巻き締め、巻き戻し調整を行ないながら、渦巻状の巻き状態を目視により確認しながら調整を行なうことも可能である。調整工程P3で巻き状態を調整した後に、治具300をヒータエレメント250から引き抜く。ヒータエレメント250の内周端部250aとヒータリベット254の軸部254bは、圧入されているので、治具300の無い状態でも、調整された巻き状態は維持されている。
【0031】
(第2溶接工程P4)
調整工程P3で巻き状態を調整した状態のまま、ヒータエレメント250の内周端部250a及びヒータリベット254の軸部254bとアーク電極42との間にアークを発生させて溶接を行なう。
【0032】
(本発明の実施の形態の効果)
本発明の実施の形態によれば、次のような効果を有する。
(1)本発明の実施の形態に係るシガレットライタ用のライタプラグは、ヒータエレメント250は、一端が軸部254bに回転可能に嵌合して圧入される内周端部250aであり、他端がヒータケース252に溶接される外周端部250bである渦巻状に形成されている。そして、内周端部250aは、ヒータリベット254の軸部254bに回転可能に圧入される。したがって、組立て工程において、ヒータエレメントの巻き状態を調整することができる。
(2)特に、ヒータリベット254の軸部254bに内周端部250aを圧入後、完全に巻き締め、予め決めた回数だけ巻き戻すことにより渦巻状の巻き状態を調整する。治具300をヒータエレメント250から引き抜いた後に、プラズマ溶接により軸部254bと内周端部250aを溶接する。これら一連の工程は、渦巻状の巻き状態の調整が、所定のの手順で可能となることから、ライタプラグの組立工程を自動化することが可能となる。これにより、組立て工程におけるセット時にヒータエレメントの巻き状態を調整できるシガレットライタ用のライタプラグ及びその製造方法を提供することができる。
(3)自動化しない状態でも、ハンディな治具でヒータエレメント250を手持ちしなくてもヒータリベット254へ装着可能で、その状態で巻き状態の調整が可能である。
【0033】
以上、シガレットライタを上記の実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である。
【符号の説明】
【0034】
30…溶接装置、32…回転支持台、34…レーザ照射部、36…集光レンズ、40…プラズマ発生部、42アーク電極、44…コントロール部、46…接続ケーブル
200…ライタプラグ、210…ノブ、210a…外周部、210b…取付ボス部、220…プラグボディ、220a…鍔部、220b…円筒部、220c…カシメ部、220d…底部、220e…リベット取付け穴、222…スプリング、230…スライドリング、230a…内環部、230b…外環部、240…アッシュガード、240a…鍔部、240b…係合凹部、250…ヒータエレメント、250a…内周端部、250b…外周端部、250c…治具スペース、252…ヒータケース、252a…側壁、252b…外周部、254…ヒータリベット、254a…フランジ部、254b…軸部、254c…カシメ軸、256…プラグインシュレータ
300…治具


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラグボディの一端に設けられるヒータケースと、
前記ヒータケースに立設され、前記ヒータケース内に軸部が突出して設けられたヒータリベットと、
一端が前記軸部に回転可能に嵌合して圧入される内周端部であり、他端が前記ヒータケースに溶接される外周端部である渦巻状に形成されたヒータエレメントと、
を有することを特徴とするシガレットライタ用のライタプラグ。
【請求項2】
前記内周端部は、前記軸部に回転可能に嵌合して圧入された後、溶接により前記軸部に固定されることを特徴とする請求項1に記載のシガレットライタ用のライタプラグ。
【請求項3】
前記ヒータエレメントは、前記圧入された後、渦巻状の巻き状態を調整された後に、溶接により前記軸部に固定されることを特徴とする請求項2に記載のシガレットライタ用のライタプラグ。
【請求項4】
渦巻状のヒータエレメントの内周端部をヒータケースに立設された軸部に回転可能に嵌合して圧入する圧入工程と、
前記ヒータエレメントの外周端部を前記ヒータケースに溶接する第1溶接工程と、
前記渦巻状の巻き状態を調整する調整工程と、
前記内周端部を前記軸部に溶接する第2溶接工程と、
を有することを特徴とするシガレットライタ用のライタプラグの製造方法。
【請求項5】
前記調整工程は、前記ヒータエレメントの巻き締め、又は巻き戻しにより前記渦巻状の巻き状態を調整することを特徴とする請求項4に記載のシガレットライタ用のライタプラグの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−92264(P2013−92264A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232601(P2011−232601)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】