説明

ラインストーン装飾シート

【課題】ラインストーンを確実に接着固定することができ、しかも接着作業やその準備が煩雑でなくデザインの変更にも即時に対応できるようにラインストーンが装飾されているラインストーン装飾シートにする。
【解決手段】被装飾シート1の表面に紡績糸で複数のステッチ2、3を線状に並列させて設け、これら並列する複数のステッチ2、3を跨いでラインストーン4を載置すると共に、このラインストーン4をステッチ2、3に接着剤5で接着固定したラインストーン装飾シートとする。ラインストーン4が複数のステッチ2、3に跨がって安定支持されるようになり、しかも確実に接着固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ラインストーンを接着固定して設けたラインストーン装飾シートおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ラインストーン(rhinestone)は、ファセット・カットされたガラス、アクリル樹脂などの裏面に金属を真空蒸着(フォイルバック)した模造宝石の一種であり、裏面を平らに形成したものに接着剤を塗布して貼り付けて装飾でき(特許文献1)、またフォイルバック面に熱接着剤層を重ねて設け、アイロンや超音波などによって要所に熱を加えて接着できるものがある。
【0003】
図5、6に示すように、このようなラインストーン4は、フォイルバック面に重ねて設けた熱接着剤5を、被装飾シート1に重ねて載置し、これをデザインに合わせて所要の複数個を配置し、これに被装飾シート1の裏面などからアイロンや超音波などによって熱を加えると共に、被装飾シート1に適度の加圧力で押し当てて、図6に示す状態に接着固定される。
【0004】
また、ラインストーンの接着固定作業をできるだけ容易にして作業労力の軽減を図るために、ラインストーンを配置するための孔を有しかつ接着テープを重ねて設けた接着保持用の型と、位置決めしたラインストーンを接着するための超音波接着機を案内するガイドなどを設けることが知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3153361号公報
【特許文献2】特開2006−124891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、装飾に用いるラインストーンは、接着のために利用できる裏面の面積が小さい粒状であり、できるだけ広い角度から光を入・反射させるように被装飾物の表面に突出するように取り付けられるものであるから、外力を受けやすく、しかも剥れやすいものである。特に、ラインストーンは、柔らかく曲がりやすい平滑面、例えば合成皮革や人工皮革などの樹脂製表面を有する曲り易く柔軟な被装飾物に対しては接着力を充分に発揮できないという問題点がある。
【0007】
また、特許文献2に記載されているように、ラインストーンの接着固定のための作業を容易にするため、ガイドや型を設けることは、却って接着の準備が煩雑になり、またラインストーンの配置の変更、すなわちデザインの変更に即時に対応できないという問題点がある。
【0008】
そこで、この発明の課題は、上記した問題点を解決して、人工皮革などの樹脂製表面を有する接着の容易でない被装飾物に対しても接着力を充分に発揮するように、ラインストーンを確実に接着固定することができ、しかも接着作業やその準備が煩雑でなくデザインの変更にも即時に対応できるようにラインストーンが装飾されているラインストーン装飾シートとし、またはそれを効率よく製造できる方法としたのである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、この発明においては、被装飾シートの表面に紡績糸で複数のステッチを線状に並列させて設け、これら並列する複数のステッチを跨いでラインストーンを載置すると共に、このラインストーンを前記ステッチに接着剤で接着固定してなるラインストーン装飾シートとしたのである。
【0010】
上記したように構成されるこの発明のラインストーン装飾シートは、ステッチが曲り易く柔軟な被装飾物に一体に縫製されたものであり、かつ紡績加工された繊維製の紡績糸からなるので、接着剤は紡績糸に染み込んで強く接着され、かつラインストーンとは比較的広い底面で接着するから、ラインストーンはステッチと接着剤を介して強い接着力で固定され、被装飾シートの表面から剥れ難く確実に固定される。
【0011】
また、ラインストーンを並列する複数の線状に並列するステッチを跨いで載置することにより、ラインストーンは、少なくとも2本以上、すなわち複数のステッチに接着固定されることにより、安定した姿勢を維持して遊動しないように、すなわちグラつかないようにしっかりと固定することができる。
【0012】
ラインストーンが、被装飾シート上で1本の線状のステッチに接着固定されただけでは、被装飾シートの表面から突出する線状ステッチの高さの分だけラインストーンは傾斜するので、安定した姿勢を維持できずに遊動する可能性も高くなってしまうが、前記のように複数の線状ステッチに接着固定されることにより、この状態を回避できる。
【0013】
被装飾シート上で、上述のような効果的な接着力が発揮されるのは、上記被装飾シートが、樹脂で表面を形成した合成皮革または人工皮革からなる被装飾シートである場合である。
【0014】
また、このような作用を有するラインストーン装飾シートを製造するには、先ず、被装飾シートのラインストーンの配置予定位置に紡績糸製のステッチを複数線状に並列するように縫製する。この縫製は、底面径の異なる複数のラインストーンが前記複数のステッチに跨がって安定支持されるように前記ステッチ同士の間隔調整を伴なう縫製である。次いで、前記並列する複数のステッチを跨いでラインストーンを載置すると共に、このラインストーンを前記ステッチに接着剤で接着固定する。以上の工程を含むラインストーン装飾シートの製造方法とすることが好ましい。
【0015】
このようにラインストーン装飾シートを製造すると、様々なデザインに対応するように、ラインストーンの配置予定位置に応じて紡績糸製のステッチを複数並列するように縫製するだけで、ラインストーンのデザインの変更にも即時に対応できる。
【0016】
すなわち、底面径の異なる複数のラインストーンが、前記複数のステッチに跨がって安定支持されるように前記線状のステッチ同士の間隔調整を伴なう縫製を様々なデザインで行なうことにより、複数のラインストーンが大径から小径まで連続的にまたは段階的に径を変化させながら様々なデザインの直線や曲線に配置することができる。
【0017】
そして、このように配置されるラインストーンは、前述のような接着状態でステッチと共に確実に被装飾シートと一体に接着固定されるので、人工皮革などの樹脂製表面を有する接着の容易でない被装飾物に対しても接着力を充分に発揮される。
【発明の効果】
【0018】
この発明は、被装飾シートの表面に紡績糸で設けた並列する複数の線状のステッチを跨いでラインストーンを載置し、前記線状ステッチに接着剤で接着固定したので、ラインストーンを確実に被装飾シートに接着固定することができ、しかも接着作業やその準備が煩雑でなくデザインの変更にも即時に対応できるようにラインストーンが装飾されているラインストーン装飾シートとし、またはそれを効率よく製造できる方法となる利点がある。
【0019】
このような利点は、特に人工皮革などの樹脂製表面を有する接着の容易でない被装飾物に対しても接着力を充分に発揮させる場合に顕著に現れる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態のラインストーン装飾シートの平面図
【図2】実施形態のラインストーン装飾シートの要部拡大断面図
【図3】図1のIII-III線の拡大断面図
【図4】実施形態の製造工程を示し、線状ステッチを縫製した被装飾シートの平面図
【図5】従来例のラインストーン装飾シートの平面図
【図6】従来例のラインストーン装飾シートの要部拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1〜3に示すように、実施形態は、被装飾シート1の表面に紡績糸で複数の線状のステッチ2、3を並列させて設け、これら並列する複数のステッチ2、3を跨いでラインストーン4を載置すると共に、このラインストーン4をステッチ2、3に接着剤5で接着固定したラインストーン装飾シートである。
【0022】
この発明に用いる被装飾シート1は、その材質や厚みとして、刺繍針を用いてミシンまたは手作業で縫製可能な柔らかさのあるシート素材であればよく、皮革、合成皮革、人工皮革、合成樹脂シート、ゴムシート、またはこのような素材を複合した積層シートからなるものなどが挙げられる。
【0023】
なお、上記した合成皮革は、天然の布地を基材とし、ポリウレタンやポリ塩化ビニルなどの合成樹脂を塗布したものであり、人工皮革は、不織布などのマイクロファイバーなどからなる布地に合成樹脂を含浸させたもの、またはそれを基材として前記合成樹脂を塗布したものといえる。
【0024】
ステッチ2、3を形成する紡績糸は、特に限定することなく周知のものを採用できるが、例えば綿花、羊毛、麻、絹、合成繊維などの繊維を紡績加工して製した糸であり、使用する接着剤との接着性ができるだけ良好なものを採用することが好ましい。
【0025】
ステッチの種類は、線状に並列させて設けた場合に、ラインストーンの底面を安定支持でき、しかも外部からできるだけ見えないようにラインストーンの底面内に収まる刺繍であればよく、特に刺し方の種類を限定するものではないが、例えば、底面の粒径が1〜3mm程度のラインストーンを複数本で支持するために適当なステッチとして、ランニングステッチ、巻きつけランニングステッチ、ステッドランニングステッチ、ホルベインステッチ、バックステッチなどの線(ライン)状のステッチを採用することが好ましい。
また、直線や曲線状の部分ばかりでなく、ラインストーンを密集させる場合など、デザイン上その他の必要に応じてジグザグステッチ、凹凸形状のステッチやクロスステッチなどの周知のステッチを線状に配置して採用し、または併用してもよい。
【0026】
この発明に用いる接着剤5は、できるだけ少量または適正な塗布量でラインストーンを接着できるものであればよく、中でも予めラインストーンのフォイルバック面に熱接着剤層を重ねて設けておけば、アイロンや超音波などによって要所に熱を加えて接着することができるので、塗布作業を省略できかつ適正な塗布量でラインストーンを接着できるので好ましいものである。
【0027】
具体的には、ラインストーンの裏面に塗布される熱接着性の接着剤として用いることが可能なものとしては、例えば、非水溶性熱接着性樹脂として、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂、変性エチレン酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアマイド、アイオノマー、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、あるいはこれらの誘導体、またはこれらの混合物が挙げられる。また水溶性熱接着性樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール系の水溶性ホットメルト型樹脂などが挙げられる。
【0028】
上記の素材を用いてラインストーン装飾シートを製造するには、図4に示すように、先ず、合成皮革などからなる被装飾シート1の表面に予めラインストーンの配置デザインに応じて、市販のコンピュータミシンなどを用いて2本以上に複数平行する紡績糸製ミシン糸からなる複線のステッチ2、3を形成する。
【0029】
図示した複線のステッチの形状は、コンピュータミシンなどを用いて被装飾シート1のラインストーンの配置予定位置をハート型に設定し、ランニングステッチによる2本のステッチ2、3同士の間隔を、その中央部aから左右に遠い部分ほど広げて縫製したものである。
【0030】
次に、図1に示すように、ステッチ2、3のハート型の上下の中央部分aには底面径の小さく、全体としても粒径の小さなラインストーン4aを配置し、中央から左右に遠い部分には底面径の大きなラインストーン4bを配置する。
【0031】
図3に示すように、ラインストーン4の配置は、並列する2本のステッチ2、3を跨いでラインストーン4a、4bが水平(被装飾シート1の表面に平行)になって傾かないようにしており、できれば2本のステッチ2、3の中央が、ラインストーン4a、4bの各重心に一致するように配置することが、ラインストーン4をより安定した姿勢で支持するために好ましい。
【0032】
この実施形態では、使用するラインストーン4には、予めフォイルバック面に重ねて裏面に、例えばポリウレタン樹脂ホットメルト接着剤5を皮膜状に重ねて塗布乾燥して設けている。
【0033】
そして、上記のラインストーンの裏面側から、被装飾シート1を介してアイロンまたは超音波接着機を用いて熱を加えてホットメルト接着剤を溶解し、その後、放熱により自然冷却させて接着することができる。
【0034】
このようにすると図2に示すように、接着剤5は紡績糸からなるステッチ2、3に染み込んで強く接着され、かつ接着剤5はラインストーン4と予め底面で接着しているから、ラインストーン4はステッチ2、3と接着剤5によって強い接着力で固定され、被装飾シートの表面から剥れ難く確実に固定される。
なお、接着剤5は、適宜に適量を塗布してラインストーン4の底面に層状に設けてもよいのは勿論である。
【0035】
以上のようにして粒径や底面径の異なる複数のラインストーン4を用いると、複数の線状ステッチ2、3に跨がって確実に、しかも安定支持されるように接着固定され、かつ柔らかな曲線を活かしたデザインで美しいラインストーン装飾シートを構成することができる。
【実施例】
【0036】
[実施例1]
ウレタン樹脂の被覆されている合成皮革(厚さ約1mm)に図1に示すハート型(横3cm、縦2.5cm)の配置予定位置に綿糸製の2本の線状のステッチを並列するように縫製し、粒径1.5mmの6個と粒径2mmの26個の合計32個のラインストーン(フォイルバック面に重ねて裏面にポリウレタン樹脂ホットメルト接着剤が被覆されているもの)を組み合わせて2本の線状ステッチを跨いで熱接着し、図示したラインストーン装飾シートを製造した。
【0037】
[比較例1]
線状ステッチを設けなかったこと以外は、実施例1と全く同様にしてラインストーン装飾シートを製造した。
得られた実施例1と比較例1のラインストーン装飾シートに対して、以下のように剥離強さ試験を行なった。
剥離強さ試験:JIS L 1076 準用 TO形(研磨紙:Cw−C−P800、回転数 1200rpm、時間5分)
【0038】
上記試験の結果、比較例1のものは、32個のラインストーン中の粒径2mmのものが6個剥離した。
一方、実施例1のものは、剥離したラインストーンはなく、接着力は充分に発揮された。
【符号の説明】
【0039】
1 被装飾シート
2、3 線状ステッチ
4、4a、4b ラインストーン
5 接着剤
a 中央部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被装飾シートの表面に紡績糸で複数のステッチを線状に並列させて設け、これら並列する複数のステッチを跨いでラインストーンを載置すると共に、このラインストーンを前記ステッチに接着剤で接着固定してなるラインストーン装飾シート。
【請求項2】
上記被装飾シートが、樹脂で表面を形成した合成皮革または人工皮革からなる被装飾シートである請求項1に記載のラインストーン装飾シート。
【請求項3】
被装飾シートのラインストーンの配置予定位置に紡績糸製のステッチを線状に複数並列するように縫製し、この縫製は、底面径の異なる複数のラインストーンが前記複数のステッチに跨がって安定支持されるように前記ステッチ同士の間隔調整を伴なう縫製であり、次いで前記並列する複数のステッチを跨いでラインストーンを載置すると共に、このラインストーンを前記ステッチに接着剤で接着固定することからなるラインストーン装飾シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−104146(P2013−104146A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248594(P2011−248594)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【特許番号】特許第4981189号(P4981189)
【特許公報発行日】平成24年7月18日(2012.7.18)
【出願人】(511225239)株式会社山神 (1)
【Fターム(参考)】