説明

ラゲージの内張り構造

【課題】マットの製造コストを低減することができるとともに、ラゲージ内へのマットの組み付けを容易に行うことができるラゲージの内張り構造を提供する。
【解決手段】ラゲージの両側に位置する一対のサイドトリム11と、ラゲージの床面に位置するマット12とを備える。両サイドトリム11を、側壁14aを有する第1部分14と、底壁15aを有する第2部分15とに分割して構成する。マット12を両サイドトリム11の第2部分15間に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車のトランク等のラゲージスペース(以下、単にラゲージという)の内張り構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のラゲージの内張り構造としては、例えば図5に示すような構成や、特許文献1に記載された構成が実施または提案されている。図5に示す従来構成においては、ラゲージ内の両側に配置される一対のサイドトリム31と、ラゲージの床面に敷設されるマット32と、ラゲージの後部開口の下縁に配置されるリヤプレート33とが装備されている。両サイドトリム31には、側壁31a及び後壁31bが湾曲凹部31cを介して一体に形成されている。マット32の後部両側には、両サイドトリム31の湾曲凹部31cに対応する一対の凸部32aが一体に形成されている。そして、ラゲージの床面にマット32が配置されたとき、サイドトリム31の湾曲凹部31cと対応する床面部分がマット32の両凸部32aによって覆われるようになっている。前記特許文献1には、図5のリヤプレート33に相当する部材を除いて図5とほぼ同様な構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−233556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、図5の従来構成においては、マット32の後部両側に一対の凸部32aが一体に形成されている。このため、シート材からマット32を切り出し成形する際の歩留まりが悪くなって、製造コストが高くなるという問題があった。また、マット32の後部両側に形成された両凸部32aの先端間の左右幅がラゲージの後部または上部の開口の幅よりも大きくなっているため、マット32をラゲージの開口からラゲージの底面に組み付けたり、ラゲージから取り外したりする際に、両凸部32aが邪魔になって作業性の悪化を招くという問題もあった。
【0005】
このような作業性の悪化を抑制するために、例えば図5に鎖線で示すように、マット32における両凸部32aの基端部に薄肉ヒンジ部32bを形成し、ラゲージの開口からのマット32の組み付け及び取り外し時に、薄肉ヒンジ部32bを介して両凸部32aを折り畳むようにした構成も従来から提案されている。しかしながら、このように構成した場合には、薄肉ヒンジ部32bの形成が面倒で、製造コストが一層高くなるとともに、マット32の組み付け及び取り外し時に、両凸部32aを折り畳みや展開の必要があるため、組み付けや取り外し作業が煩雑になるという問題は解消できなかった。
【0006】
前記の従来構成以外に、サイドトリム31とマット32の凸部32aを一体にしたものも存在するが、この場合は、サイドトリム31の側壁31aや湾曲凹部31c等がアンダーカットになるため、成形型の構成が複雑になる。従って、アンダーカットを避けるために、側壁31aや湾曲凹部31c、あるいはそれらの近傍部分をラゲージ中央側に位置させて傾斜部を形成しない形状が採用されることもあるが、このようにすれば、大きなデッドスペースが形成されて、ラゲージ容量が小さくなり、ラゲージ機能が低下する。
【0007】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、マットの製造コストを低減することができるとともに、ラゲージ内に対するマットの組み付けを容易に行うことができるラゲージの内張り構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、この発明は、ラゲージの両側に位置する一対のサイドトリムと、ラゲージの床面に位置するマットとを備えたラゲージの内張り構造において、前記両サイドトリムを、側壁を有する第1部分と、底壁を有する第2部分とに分割して構成するとともに、前記側壁には車両中央側に向かって膨出状に湾曲するタイヤハウス対応部と、そのタイヤハウス対応部の後ろ側に位置し、車両側部のリヤフェンダに向かって凹むリヤフェンダ対応部とを形成し、前記第2部分には前記リヤフェンダ対応部の底部内に位置するフェンダ側底部を形成し、前記マットを両サイドトリムの第2部分間に配置したことを特徴としている。
【0009】
従って、この発明のラゲージの内張り構造においては、マットをシート材から切り出し成形する際に、マットの後部両側に凸部を形成する必要がない。このため、マット材料の歩留まりを高めることができて、製造コストを低減することができる。また、マットの両側に凸部が形成されていないため、マットをラゲージの開口からその内底面に組み付ける際に、両凸部が邪魔になるおそれがなく、マットの組み付けや取り外し作業を容易に行うことができる。さらに、サイドトリムを側壁を有する第1部分と底壁を有する第2部分とに分割しているため、アンダーカット部分の形成を避けることができる。
【0010】
前記の構成において、前記第2部分には、底壁とラゲージ開口との間に位置する後壁を設けるとよい。
前記の構成において、前記第1部分と第2部分とを連結手段によって連結するとよい。
【0011】
前記の構成において、前記第2部分の車両中央側の端縁に段差部を設け、その段差部にマットの端縁を載置するとよい。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、この発明によれば、マットの製造コストを低減することができるとともに、ラゲージ内に対するマットの組み付け及びラゲージからの取り外しを容易に行うことができるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】一実施形態のラゲージの内張り構造を示す斜視図。
【図2】図1のラゲージの内張り構造を分解して示す斜視図。
【図3】図1の3-3線における部分拡大断面図。
【図4】図1の4-4線における部分拡大断面図。
【図5】従来のラゲージの内張り構造を示す分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、この発明を具体化したラゲージの内張り構造の一実施形態を、図1〜図4に従って説明する。
図1及び図2に示すように、この実施形態のラゲージの内張り構造では、自動車Cの後部のラゲージL内の左右両側に配置される一対のサイドトリム11と、ラゲージLの床面に配置されるラゲージマット(以下、単にマットという)12と、ラゲージLの後部開口の下縁に配置されるリヤプレート13とが装備されている。前記サイドトリム11及びマット12は比較的軟質の撓みやすい合成樹脂によって構成され、リヤプレート13は硬質合成樹脂によって構成されている。前記マット12は、シート材により平面ほぼ長方形状をなすように形成されている。リヤプレート13の上端外側には、フランジ部13aが形成されている。
【0015】
前記両サイドトリム11は、側壁14aを有する第1部分14と、底壁15aを有する第2部分15とに分割して構成されている。第1部分14の側壁14aは、後輪のタイヤハウス(図示しない)の前後方向中間部から後部の形状に従うように車両中央側に向かって膨出状に湾曲するタイヤハウス対応部14bと、タイヤハウスの後ろ側のリヤフェンダCrの形状に従って車両外側に向かって凹むように湾曲するリヤフェンダ対応部14cとを有する。第2部分15の底壁15aの後部外側には、凸状のフェンダ側底部15bが形成されている。このフェンダ側底部15bは前記サイドトリム11のリヤフェンダ対応部14cの下部の凹んだ形状に対して凹凸の関係で対応した形状に形成されている。第2部分15の底壁15aの後端上部には、ラゲージLの後部開口の両側縁部との間に配置される後壁15cが一体に折曲げ形成されている。後壁15cの上端外側には、前記リヤプレート13のフランジ部13aに連なるフランジ部15dが形成されている。
【0016】
図4に示すように、前記各サイドトリム11における第1部分14の側壁14aの下端縁と第2部分15の底壁15aの外側端縁とは、連結手段としてのタッカ16によって連結されている。また、図3に示すように、第1部分14の側壁14aの後端縁と第2部分15の後壁15cの外側端縁とは、連結手段としてのタッカ17によって連結されている。これらの連結により、第1部分14と第2部分15とが一体的に結合されて、側壁14a、底壁15a及び後壁15cを有するサイドトリム11が構成されている。
【0017】
そして、図1に示すように、このサイドトリム11が複数の割りピン等の止め具18により、ボディパネルの一部(図示しない)に止着されて、ラゲージL内の両側に配置されている。また、リヤプレート13が図示しない複数のボルト等の止め具により、ボディパネルの一部に締め付け固定されて、ラゲージLの後面開口の下縁に固定されている。このリヤプレート13は、重量物や硬い物から前記開口の下縁を保護する。さらに、図3及び図4に示すように、このサイドトリム11及びリヤプレート13の取付状態で、ラゲージLの開口縁に装着されたウェザストリップ19の一部が、サイドトリム11及びリヤプレート13のフランジ部15d,13aに掛止されている。
【0018】
図2及び図4に示すように、前記各サイドトリム11における第2部分15の底壁15aの内側端縁には、段差部15eが形成されている。そして、図1及び図4に示すように、マット12がラゲージL内に組み付けられて、その床面上に敷設されたとき、マット12の両側縁が両サイドトリム11の第2部分15の段差部15e上に重ねられる。このため、マット12が両サイドトリム11の第2部分15間に位置決め配置される。
【0019】
以上のように構成された内張り構造の作用及び機能を説明する。
ラゲージL内に内張構造を設置するためには、はじめに、サイドトリム11の第1部分14を止め具18により取り付けた後に、第2部分15をラゲージLの床面の左右両側に敷設する。このようにすれば、第2部分15のフェンダ側底部15bが第1部分14のリヤフェンダ対応部14cの底部内に位置する。そして、マット12をラゲージLの底面に敷設し、マット12の両端縁を第2部分15の底壁15aの段差部15e上に重ねればよい。このようにすれば、ラゲージLの内面が被覆される。また、清掃や点検・修理等のためにラゲージLの内面から内張り構造を取り外す際には、前記と逆順に作業すればよい。なお、リヤプレート13は、一旦組み付けられた後、取り外されることはほとんどない。そして、これらの作業において、マット12には、両側に張り出す凸部が存在しないため、前記の作業をラゲージ開口を介して容易に行なうことができる。
【0020】
従って、この実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1) このラゲージの内張り構造においては、ラゲージLの両側に位置する両サイドトリム11が、側壁14aを有する第1部分14と、底壁15aを有する第2部分15とに分割して構成されている。そして、マット12が両サイドトリム11の第2部分15間に配置されている。このため、従来構成においてマット12の後部両側に形成されていた一対の凸部を、両サイドトリム11の第2部分15のフェンダ側底部15bとして設けることができる。よって、マット12の形状がほぼ四角形状に単純化されるため、マット12をシートの材料から成形する際の歩留まりを高めることができて、マット12の製造コストを低減することができる。また、マット12の両側に凸部が形成されていないため、マット12をラゲージLの開口を介してその内底面に組み付けたり、ラゲージLから取り外したりする際に、両凸部が邪魔になるというおそれがなく、マット12の組み付け及び取り外し作業を容易に行うことができる。
【0021】
(2) このラゲージの内張り構造においては、前記サイドトリム11の第2部分15に、その底壁15aの後端とラゲージLの開口との間に位置する後壁15cが一体に設けられている。このため、部品点数を少なくすることができて、構成を簡略化することができる。
【0022】
(3) このラゲージの内張り構造においては、前記サイドトリム11の第1部分14と第2部分15とが連結手段としてのタッカ16,17によって連結されている。このため、サイドトリム11の第1部分14と第2部分15とを連結して一体化した状態で、ラゲージL内に容易に組み付けることができる。
【0023】
(4) このラゲージの内張り構造においては、前記第2部分15の車両中央側の端縁に段差部15eが設けられているため、その段差部15eにマット12の端縁を載置すれば、第2部分15の上面及びマット12上面が同一平面を形成する。従って、外観に優れるとともに、使い易いラゲージLになる。
【0024】
(5)このラゲージの内張り構造においては、マット12に図5に示すようなヒンジが不要になるため、ヒンジ加工の工数が不要になり、しかもマット12の剛性がアップして、マット12の耐久性を向上できるとともに、変形を防止できる。
【0025】
(6)このラゲージの内張り構造においては、例えばサイドトリム11の上部側が下部側よりもラゲージ中央側に張り出す形状であっても、サイドトリム11には底壁が存在しないため、アンダーカットは形成されない。従って、サイドトリム11の成形が容易になるばかりでなく、サイドトリム11を車両のボディパネルPに沿わせることができて、デッドスペースがほとんど形成されず、ラゲージ容量を大きくすることが可能になる。
【0026】
(変更例)
なお、この実施形態は、以下のように変更して具体化することも可能である。
・ 第2部分15の後壁15cを、図2に示す1点鎖線L1の位置から切り離して、その切り離し部分をタッカ等の連結手段により第1部分14及び第2部分15に連結するように構成すること。このようにすれば、第2部分15をシート材を切り抜いて成形することが可能になる。
【0027】
・ 第2部分15を図2に示す1点鎖線L2の位置から切り離して、第2部分15としてフェンダ側底部15bのみの形状とするとともに、マット12を2点鎖線で示すように、第1部分14間の間隔に対応する広幅を有するものとすること。このようにすれば、第2部分15の形状がシンプルになり、成形が容易になり、シート材を切り抜いて成形することが可能になって、成形型が不要になる。
【0028】
・ 第1部分14と第2部分15と等を連結するタッカの代りに、接着剤を用いたり、溶着構造を用いたりすること。
【符号の説明】
【0029】
11…サイドトリム、12…マット、14…第1部分、14a…側壁、14b…タイヤハウス対応部、14c…リヤフェンダ対応部、15…第2部分、15a…底壁、15b…フェンダ側底部、15c…後壁、15e…段差部、16,17…連結手段としてのタッカ、Cr…リヤフェンダ、L…ラゲージ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラゲージの両側に位置する一対のサイドトリムと、ラゲージの床面に位置するマットとを備えたラゲージの内張り構造において、
前記両サイドトリムを、側壁を有する第1部分と、底壁を有する第2部分とに分割して構成するとともに、前記側壁には車両中央側に向かって膨出状に湾曲するタイヤハウス対応部と、そのタイヤハウス対応部の後ろ側に位置し、車両側部のリヤフェンダに向かって凹むリヤフェンダ対応部とを形成し、前記第2部分には前記リヤフェンダ対応部の底部内に位置するフェンダ側底部を形成し、前記マットを両サイドトリムの第2部分間に配置したことを特徴とするラゲージの内張り構造。
【請求項2】
前記第2部分には、底壁とラゲージ開口との間に位置する後壁を設けたことを特徴とする請求項1に記載のラゲージの内張り構造。
【請求項3】
前記第1部分と第2部分とを連結手段によって連結したことを特徴とする請求項1または2に記載のラゲージの内張り構造。
【請求項4】
前記第2部分の車両中央側の端縁に段差部を設け、その段差部にマットの端縁を載置したことを特徴とする請求項1に記載のラゲージの内張り構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−171543(P2012−171543A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37106(P2011−37106)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)