説明

ラック装置、ラックシステム及び筐体構造

【課題】筐体の内部温度を制御できるラック装置を提供する。
【解決手段】ラック装置1は、電子機器8を搭載する筐体2と、各開口部22側の筐体2の端部に開閉自在に取り付けられ、施錠によりロックする機構を備えた通常扉4とを有する。更に、ラック装置1は、電子機器8の取込み口8Aと対向する通常扉4の面部に形成され、当該筐体2への外気を流通する流通口23側の筐体2の端部に開閉自在に取り付けられた非常扉5を有する。更に、ラック装置1は、筐体2の内部温度が設定温度を超えた場合に、通常扉4を施錠したまま、非常扉5を自動開放する制御部17を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラック装置、ラックシステム及び筐体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器を搭載するラック装置には空調機能を備えた技術がある。ラック装置の空調機能は、ラック装置の内部温度を安定化させることで、搭載された電子機器の動作を安定化できる。しかしながら、ラック装置は、停電等で空調機能が停止した場合、当該ラック装置の内部温度が上昇し、搭載された電子機器の限界温度が超える場合も想定される。この場合、ラック装置内に搭載された電子機器は、限界温度を超えてしまうことで、その動作機能が不安定になる場合が考えられる。
【0003】
そこで、このような事態に対処すべく、ラック装置に無停電電源を搭載した技術がある。無停電電源を搭載したラック装置は、停電時でも、無停電電源の給電による空調機能の運転を継続して内部温度を安定化できる。その結果、搭載された電子機器は、限界温度までの温度上昇が抑制されるため、その動作が安定化する。
【0004】
しかしながら、このように全てのラック装置に無停電電源を搭載することは、製品コストの上昇に繋がる。しかも、無停電電源を搭載したラック装置は、停電が長期化した場合には空調機能への給電が途絶えてしまうため、内部温度が上昇してしまうことになる。また、無停電電源が搭載されたとしても、空調機能自体が故障した場合には、内部温度が上昇する。
【0005】
そこで、空調機能が搭載されたラック装置では、停電等で内部温度が上昇した場合に、ラック装置の扉を手動で開操作することも考えられる。この場合、ラック装置は、扉が開放されることにより内部に外気が取り込まれることになるため、ラック装置の内部温度の上昇を抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2010−524074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、夜間や休日等の勤務時間帯によって管理者が常駐しているとは限らない。しかも、昨今では、ラック装置に搭載される電子機器に対するセキュリティ性を確保することも求められるため、管理者以外の第三者が無断でラック装置の扉を開放する事態も避けられるべきである。
【0008】
また、サーバ等の電子機器を搭載するラック装置が配置されるデータセンタでは、配置されるラック装置の数も膨大になるため、ラック装置毎に管理者が扉を開放する作業に多大な時間を要する。従って、ラック装置では、筐体の内部温度を制御できなくなるおそれが大である。
【0009】
一つの側面は、筐体の内部温度を制御できるラック装置、ラックシステム及び筐体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
開示の装置は一つの態様において、電子機器が搭載される筐体と、前記筐体に前記電子機器の設置及び操作を行う場合のアクセス面に対向する面に取り付けられ、施錠によりロックする機構を有する第一の扉とを有する。更に、開示の装置は、前記第一の扉の内側面部に形成した、前記電子機器の外気取込み用の第二の扉と、前記筐体内部の状態が所定状態となったときに、前記第一の扉が施錠された状態で前記第二の扉を開放するように制御する制御部とを有する。
【発明の効果】
【0011】
筐体の内部温度を制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本実施例のラック装置の一例を示す斜視図である。
【図2】図2は、正面側の通常扉及び非常扉の正面図である。
【図3】図3は、正面側の通常扉及び非常扉の平面図である。
【図4】図4は、正面側の通常扉の側面図である。
【図5】図5は、背面側の通常扉及び非常扉の正面図である。
【図6】図6は、ラック装置の制御ボックスの構成を示すブロック図である。
【図7】図7は、通常扉開放時のラック装置の斜視図である。
【図8】図8は、停電開放処理に関わる制御部の処理動作の一例を示すフローチャートである。
【図9】図9は、非常扉開放に関わる動作遷移の一例を示す説明図である。
【図10】図10は、非常扉開放に関わるエアフローの一例を示す説明図である。
【図11】図11は、空調故障開放処理に関わる制御部の処理動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づいて、本願の開示するラック装置、ラックシステム及び筐体構造の実施例を詳細に説明する。尚、本実施例により、開示技術が限定されるものではない。
【実施例】
【0014】
図1は、本実施例のラック装置の一例を示す斜視図である。図1に示すラック装置1は、筐体2と、空調部3と、通常扉4と、非常扉5と、表示ランプ6と、制御ボックス7と、サーモスタット9とを有する。筐体2は、搭載部21と、開口部22と、流通口23とを有する。筐体2は、密閉型である。搭載部21は、筐体2内部に複数段配置され、段毎にサーバ等の電子機器8を搭載するものである。尚、電子機器8の外気の取込み口8Aは、例えば、電子機器8の正面部に設けてある。また、搭載部21は、筐体2の正面側の面部と電子機器8の取込み口8Aとが対向するように、各電子機器8を搭載するものである。
【0015】
開口部22は、筐体2の正面側の面部に形成された正面側の開口部22Aと、筐体2の背面側の面部に形成された背面側の開口部(図示せず)とを有する。通常扉4は、開口部22側の筐体2の端部に開閉自在に取り付けられ、筐体2内の電子機器8を取り出し可能にするものである。更に、通常扉4は、筐体2内の電子機器8に対する操作を可能とするものである。
【0016】
また、通常扉4は、管理者の施錠で開閉動作をロックする機構を有する。尚、通常扉4は、開口部22A側の端部に開閉自在に取り付けられた正面側の通常扉4Aと、背面側の開口部側の端部に開閉自在に取り付けられた背面側の通常扉4B(図5参照)とを有する。
【0017】
流通口23は、筐体2内部に搭載される電子機器8の取込み口8Aと対向する通常扉4の内側面部に形成される。尚、流通口23は、通常扉4Aの面部に形成された正面側の流通口23Aと、通常扉4Bの面部に形成された背面側の流通口(図示せず)とを有する。尚、流通口23の開口面積は、通常扉4に対して、通常扉4の所定の強度が維持される程度の面積比、例えば、通常扉4の面積の40%〜50%程度の面積を有する。
【0018】
非常扉5は、流通口23側の通常扉4の端部に開閉自在に取り付けられ、流通口23から筐体2内部への外気の流通を可能にするものである。尚、非常扉5は、流通口23A側の通常扉4Aの端部に開閉自在に取り付けられた正面側の非常扉5Aと、流通口23B側の通常扉4Bの端部に開閉自在に取り付けられた背面側の非常扉5Bとを有する。尚、流通口23は、通常扉4を閉めたまま、非常扉5A及び非常扉5Bのみを開放した場合でも、筐体2の内部に搭載された電子機器8を取り出すことができない寸法構成となっている。更に、非常扉5の大きさは、外気が搭載された電子機器8に均等に吸気されるよう高さ方向に搭載電子機器8に全てにかかる大きさで、幅方向には電子機器8の幅より狭い大きさとする。また、図示はしていないが、非常扉5は、外気の導入による冷却が目的であり、防犯のため開口部が外気のみが通過可能な多数の小開口部(例えば、網や格子構造等)で構成しても良い。
【0019】
空調部3は、筐体2本体の上部に配置され、例えば、筐体2の正面側の上方から下方へ冷却風を流し、更に、その冷却風を筐体2の背面側の下方から上方へと流し、筐体2内部に冷却風を循環させることで(図10(A)参照)、筐体2の内部温度を安定化できる。尚、空調部3による冷却風を巡回させる場合に、電子機器8が搭載されていない開口部22には背面側への冷却風の通過を抑制する遮蔽版を設置することで冷却風が筐体2の本体内に偏り無く循環させることができる。これにより、電子機器8は、取り込み口8Aから必要な冷却風を取り込み、背面側に排気することで各電子装置8の冷却が行えることとなる。また、サーモスタット9は、筐体2内部の正面側の上部にある、空調部3の冷却風が通過する通路に配置してある。サーモスタット9は、筐体2の内部温度、例えば、通路内の内部温度が設定温度を超えた場合に検知信号を出力するものである。また、表示ランプ6は、ラック装置1に関わる各種情報を報知出力するものである。
【0020】
図2は、正面側の通常扉4A及び非常扉5Aの正面図、図3は、正面側の通常扉4A及び非常扉5Aの平面図、図4は、正面側の通常扉4Aの側面図である。図2及び図4に示す正面側の通常扉4Aは、ハンドル41と、ロック機構42とを有する。ハンドル41は、通常扉4Aの開閉操作、ロック操作及びロック解除操作に使用する。ロック機構42は、ハンドル41の操作に連動して通常扉4Aの上下方向に移動する上下のロッド棒42Aを有する。ロック機構42は、通常扉4Aが完全に閉まった閉位置でハンドル41のロック操作に連動して、そのロッド棒42Aの先端が開口部22A側の筐体2の内側端部に干渉するように移動する。その結果、ロッド棒42Aの先端は、筐体2の内側端部に干渉することで、通常扉4Aの閉位置で通常扉4Aをロックする。また、ロック機構42は、閉位置で通常扉4Aがロックされたまま、管理者の施錠操作でハンドル41の操作自体をロックする。その結果、管理者の施錠操作でハンドル41操作自体がロックされるため、通常扉4の開閉動作はロックされたことになる。また、管理者は、ハンドル41の開錠操作に応じてハンドル41操作自体のロックを解除できる。
【0021】
また、ロック機構42は、ハンドル41のロック解除操作に連動して、ロッド棒42Aの先端が筐体2の内側端部に干渉しないように元の位置に戻る。その結果、ロッド棒42Aの先端は、筐体2の内側端部に干渉しなくなるため、通常扉4Aの開動作が可能になる。そして、管理者は、図7に示すように、通常扉4Aを開放して筐体2内部に搭載された電子機器8の出し入れが可能になる。
【0022】
また、非常扉5Aの面部には、筐体2内部の状態が視認できるように透明なアクリル材の視認窓51が設けてある。また、非常扉5Aは、流通口23A側の通常扉4Aの端部に対して、例えば、2個のヒンジ機構52で開閉自在に取り付けられている。ヒンジ機構52は、非常扉5Aをバネ復帰力で開方向に付勢するバネ部52Aを有する。また、バネ部52Aは、例えば、非常扉5Aが約12kgの場合、図3に示すように、その開角度が0度から90度程度へ、約2.5秒〜約5秒の範囲内で到達できるように非常扉5Aが開くように、バネ復帰力を有する。更に、バネ部52Aは、非常扉5Aの開角度が90度を超えて180度程度へ、約4秒〜約10秒の範囲内で到達できるように非常扉5Aが開くように、バネ復帰力を有する。このような非常扉5Aの90度迄の開放時間又は90度から180度迄の開放時間は、急激な開放によりラック装置1付近で作業している人物に対して危険が及ばないように設定した時間である。よって、本来的な温度調節だけの目的からすると、上記設定時間に関係なく、90度以上の開放ができれば良い。
【0023】
また、通常扉4Aの背面部には、非常扉5Aが完全に閉まった閉位置で、非常扉5Aの開閉動作をロックするロック機構53が設けてある。ロック機構53は、作動部53Aと、ベース部53Bとを有する。ベース部53Bは、非常扉5Aの背面部の上部及び下部に夫々取り付けられ、作動部53Aのロック片531と嵌合するロック孔532を夫々有する。更に、作動部53Aは、通常扉4Aの背面部の上部及び下部に夫々取り付けられ、通電による電磁作用に応じてロック片531を通常扉4の上下方向に作動する。ロック機構53は、作動部53Aへの通電がなく、すなわち電磁作用がない状態では、ロック片531がロック孔532に嵌合した状態であるため、閉位置で非常扉5をロックする。
【0024】
これに対して、ロック機構53は、作動部53Aへの通電による電磁作用に応じて、ロック片531を引き込むことで、ロック片531がロック孔532から外れて、閉位置での非常扉5Aのロックを解除する。その結果、非常扉5Aは、ロック解除に応じて、ヒンジ機構52のバネ部52Aのバネ復帰作用で自動開放される。
【0025】
図5は、背面側の通常扉4B及び非常扉5Bの正面図である。尚、図2乃至図4の通常扉4A及び非常扉5Aと同一の構成には同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。図5に示す背面側の非常扉5Bには、視認窓51が設けていないため、その重量も重くなる。例えば、非常扉5Aの重量が12kg程度であるのに対し、非常扉5Bの重量は14kg程度である。更に、図5に示す背面側の通常扉4Bも、正面側の通常扉4Aに対して重量が重くなる。例えば、通常扉4Aの重量が約23kg程度であるのに対し、通常扉4Bの重量は約25kg程度である。
【0026】
また、非常扉5Bのバネ部52Aは、非常扉5Aのバネ部52Bと比較して、そのバネ復帰力も異なる。非常扉5Bのバネ部52Aは、例えば、非常扉5Bが約15kg程度の場合でも、その開角度が0度から90度程度へ、約2.5秒〜約5秒の範囲内で到達できるように非常扉5Bが開くバネ復帰力を有する。更に、非常扉5Bのバネ部52Aは、非常扉5Bの開角度が90度を超えて180度程度へ、約4秒〜約10秒の範囲内で到達できるように非常扉5Bが開くバネ復帰力を有する。
【0027】
図6は、ラック装置1の制御ボックス7の構成を示すブロック図である。図6に示す制御ボックス7は、操作部11と、空調制御部12と、ロック制御部13と、停電検出部14と、外部報知部15と、メモリ16と、制御部17とを有する。操作部11は、ユーザ操作に応じて、後述する設定時間及び設定温度を変更するものである。ユーザは、操作部11を通じて、瞬停防止タイマの設定時間、サーモスタット9の異常温度検知の設定温度、空調部3の安定温度等を設定変更できる。尚、異常温度検知の設定温度は、例えば32℃とする。
【0028】
空調制御部12は、筐体2の内部温度を安定温度に調整すべく、空調部3を制御するものである。ロック制御部13は、非常扉5のロック機構53を制御するものである。停電検出部14は、停電を検出するものである。外部報知部15は、停電や空調故障等の各種アラームを図示せぬ外部機器に報知出力するものである。尚、外部報知部15は、外部機器に対してアラームを報知出力すると共に、アラームに応じて表示ランプ6を表示制御するものである。メモリ16は、設定時間や設定温度等の各種情報を記憶するものである。制御部17は、制御ボックス7全体を制御するものである。
【0029】
制御部17は、停電検出部14にて停電を検出すると、瞬停防止タイマを起動する。制御部17は、瞬停防止タイマの設定時間を経過すると、外部報知部15を通じて、停電発生のアラームを外部機器に報知出力する。制御部17は、停電検出後、筐体2内に配置したサーモスタット9の検知信号を検出したか否かを判定する。尚、サーモスタット9は、筐体2の内部温度が設定温度を超えた場合に検知信号を制御部17に通知するものである。
【0030】
制御部17は、サーモスタット9の検知信号を検出した場合に、外部報知部15を通じて、筐体2内部の温度異常のアラームを外部機器に報知出力するものである。また、制御部17は、サーモスタット9の検知信号を検出した場合、ロック制御部13に対して非常扉5のロック解除を指示する。ロック制御部13は、ロック解除の指示に応じてロック機構53の作動部53Aに通電する。そして、作動部53Aは、通電による電磁作用に応じてロック片531を引き込み、ロック片531がロック孔532から外れて閉位置での非常扉5のロックを解除する。その結果、非常扉5は、ロック解除に応じてヒンジ機構52のバネ部52Aのバネ復帰作用で自動開放される。
【0031】
また、制御部17は、空調制御部12を通じて空調部3の故障を検出すると、外部報知部15を通じて、空調故障のアラームを外部機器に報知出力するものである。制御部17は、空調部3の故障を検出した後、サーモスタット9の検知信号を検出したか否かを判定するものである。
【0032】
次に、本実施例のラック装置1の動作について説明する。図7は、通常扉開放時のラック装置1の斜視図である。管理者は、開錠操作に応じてハンドル41自体の施錠を開錠し、ハンドル41を使用して通常扉4のロック解除を操作する。ロック機構42は、ハンドル41のロック解除操作に連動して上下のロッド棒42Aの先端が筐体2の内側端部に干渉しなくなるため、通常扉4の閉位置でのロックを解除して開動作が可能になる。その結果、管理者は、図7に示すように、通常扉4、すなわち正面側の通常扉4A又は背面側の通常扉4Bを開放できる。そして、管理者は、通常扉4A又は通常扉4Bが開放されると、筐体2内部から電子機器8を出し入れできる。
【0033】
図8は、停電開放処理に関わる制御部17の処理動作の一例を示すフローチャートである。図9は、非常扉開放に関わる動作遷移の一例を示す説明図である。図8に示す停電開放処理では、停電時に筐体2の内部温度の異常を検出した場合に、非常扉5を自動開放する処理である。図8に示す制御部17は、図9(A)に示すように通常扉4及び非常扉5が完全に閉まった閉位置で、停電検出部14を通じて停電を検出したか否かを判定する(ステップS11)。制御部17は、停電を検出した場合(ステップS11肯定)、図示せぬ停電用バッテリを使用し、瞬停防止タイマを起動する(ステップS12)。制御部17は、瞬停防止タイマの設定時間を経過すると、外部報知部15を通じて、停電発生のアラームを外部機器に報知出力する(ステップS13)。その結果、外部機器の管理者は、アラームに応じて停電発生を認識できる。
【0034】
制御部17は、サーモスタット9から筐体2の内部温度が設定温度を超えたことを示す検知信号を検出したか否かを判定する(ステップS14)。制御部17は、サーモスタット9からの検知信号を検出した場合(ステップS14肯定)、筐体2の内部温度が温度異常と判断する。そして、制御部17は、停電用バッテリを使用して、外部報知部15を通じて、温度異常発生のアラームを外部機器に報知出力する(ステップS15)。その結果、外部機器の管理者は、アラームに応じて筐体2内部の温度異常発生を認識できる。
【0035】
更に、制御部17は、ロック制御部13に対して非常扉5のロック解除を指示し(ステップS16)、図8に示す処理動作を終了する。つまり、ロック制御部13は、停電用バッテリを使用して、ロック解除指示に応じてロック機構53の作動部53Aに通電する。作動部53Aは、通電による電磁作用に応じてロック片531を引き込み、ロック片531がロック孔532から外れて閉位置での非常扉5のロックを解除する。その結果、非常扉5、すなわち正面側の非常扉5A及び背面側の非常扉5Bは、通常扉4を施錠したまま、ロック解除に応じてヒンジ機構52のバネ部52Aのバネ復帰作用で自動開放される。
【0036】
この際、ヒンジ機構52のバネ部52Aは、そのバネ復帰作用で、図9(B)に示すように開角度0度から90度程度まで、約2.5秒〜5秒の範囲内で非常扉5を開放する。更に、バネ部52Aは、そのバネ復帰作用で、図9(C)に示すように開角度90度を超えて180度程度まで、約4秒〜約10秒の範囲内で非常扉5を開放する。この結果、非常扉5、すなわち正面側の非常扉5A及び背面側の非常扉5Bは、安全かつスムーズな自動開放を実現できる。
【0037】
また、ロック解除指示に応じてロック機構53の作動部53Aに通電する電源は、停電用バッテリとは別に設ける事も可能である。この場合、停電用バッテリによる上記の動作とサーモスタット9による非常扉5のロック解除の制御が連動せず(筐体2内の温度の上昇が徐々に上昇する事により停電制御から遅れて検出されることも考えられる。)、バラバラに機能する場合も両方の機能を別々の電源で制御できるため、電子機器8の温度管理をより確実に行う事が可能である。
【0038】
図10は、非常扉開放に関わるエアフローの一例を示す説明図である。図10に示すラック装置1は、非常扉5A及び非常扉5Bを180度開放したことで、正面側の流通口23A及び背面側の流通口23Bを通じて外気を筐体2内部に流通できる。その結果、ラック装置1は、停電で空調部3が使用できず、筐体2の内部温度が異常になった場合でも、図10(B)に示すように、正面側の流通口23Aから外気(太い矢印)を取込むことで、内部温度の上昇を抑制できる。
【0039】
また、図11は、空調故障開放処理に関わる制御部17の処理動作の一例を示すフローチャートである。図11に示す空調故障開放処理では、空調部3の故障時に筐体2の内部温度の異常を検出した場合に、非常扉5を自動開放する処理である。図11に示す制御部17は、図9(A)に示す通常扉4及び非常扉5が完全に閉まった閉位置で、空調制御部12を通じて空調部3の故障を検出したか否かを判定する(ステップS21)。制御部17は、空調部3の故障を検出した場合(ステップS21肯定)、外部報知部15を通じて、空調部3の故障発生のアラームを外部機器に報知出力する(ステップS22)。その結果、外部機器の管理者は、アラームに応じて空調部3の故障発生を認識できる。また、制御部17は、空調部3の故障を検出した場合、表示ランプ6を青色から赤色に点灯する。
【0040】
更に、制御部17は、サーモスタット9から筐体2の内部温度が設定温度を超えたことを示す検知信号を検出したか否かを判定する(ステップS23)。制御部17は、サーモスタット9からの検知信号を検出した場合(ステップS23肯定)、筐体2の内部温度が異常と判断し、外部報知部15を通じて、当該温度異常の発生のアラームを外部機器に報知出力する(ステップS24)。その結果、外部機器の管理者は、アラームに応じて筐体2内部の温度異常発生を認識できる。
【0041】
更に、制御部17は、ロック制御部13に対して非常扉5のロック解除を指示し(ステップS25)、図11に示す処理動作を終了する。つまり、ロック制御部13は、ロック解除指示に応じてロック機構53の作動部53Aに通電する。作動部53Aは、通電による電磁作用に応じてロック片531を引き込み、ロック片531がロック孔532から外れて非常扉5の閉位置でのロックを解除する。その結果、非常扉5、すなわち正面側の非常扉5A及び背面側の非常扉5Bは、通常扉4を施錠したまま、ロック解除に応じてヒンジ機構52のバネ部52Aのバネ復帰作用で自動開放される。
【0042】
従って、ラック装置1は、空調部3の故障で筐体2の内部温度が異常になった場合でも、図10(B)に示すように、正面側の流通口23Aから外気(太い矢印)を取込むことで、内部温度の上昇を抑制できる。
【0043】
実施例では、例えば、停電や空調故障等で筐体2の内部温度が設定温度を超えた場合でも、通常扉4を施錠したまま、非常扉5(5A,5B)を自動開放して、非常扉5(5A,5B)の開放で流通口23に外気を取込むことで、筐体2の内部温度を制御できる。その結果、ラック装置1は、停電や空調故障時でも、内部に搭載された電子機器8の安定稼動を継続できる。
【0044】
しかも、上記実施例では、通常扉4を施錠したまま、非常扉5のみを自動開放するため、筐体2内部に搭載された電子機器8が持ち出すことができないため、セキュリティ性を確保しながら、筐体2の内部温度を制御できる。
【0045】
更に、上記実施例では、ヒンジ機構52のバネ部52Aのバネ復帰力で非常扉5を開方向に常時付勢しながら、非常扉5の閉位置で非常扉5の開閉動作をロック機構53でロックした。そして、上記実施例では、筐体2の内部温度が設定温度を超えた場合、ロック機構53の作動部53Aの電磁作用でロック解除し、その非常扉5がバネ部52Aのバネ復帰作用で自動開放される。その結果、非常扉5の閉位置でのロックを解除するだけで、非常扉5を簡単に開放できる。
【0046】
また、上記実施例では、非常扉5のヒンジ機構52のバネ部52Aのバネ復帰作用で非常扉5の開角度が0度から90度程度に約2.5秒〜約5秒の範囲内で到達するように非常扉5が開く。更に、バネ復帰作用で、開角度が90度を超えて180度程度に約4秒〜約10秒の範囲内で到達するように非常扉5が開く。その結果、非常扉5は、安全かつスムーズな自動開放を実現できる。
【0047】
尚、上記実施例では、筐体2の内部にサーモスタット9を配置し、サーモスタット9の検知信号の検出有無に基づき、制御部17は、内部温度の設定温度を超えたか否かを判定した。しかしながら、制御部17は、筐体2内部に温度センサを配置し、温度センサを通じて筐体2の内部温度を計測し、その計測された内部温度が設定温度を超えたか否かを判定しても良い。
【0048】
また、制御部17は、筐体2の内部温度が32℃を超えて非常扉5の自動開放後、筐体2の内部温度が、例えば、30.5℃以下になるまで、ロック片531を引き込んだまま、非常扉5の閉位置でのロックができないようにロック機構53を制御しても良い。
【0049】
また、上記実施例では、非常扉5A及び非常扉5Bを2個としたが、これらに限定されるものではなく、筐体2内に搭載される電子機器8の取込み口8Aに対向する場合には、非常扉5を1個若しくは3個以上設けても良い。
【0050】
また、本実施例では、通常扉4のロック機構42及び非常扉5のロック機構53を例示したが、これらロック機構に限定されるものではなく、通常扉4を施錠したまま、筐体2の内部温度が設定温度を超えた場合に非常扉5を自動開放できる構成であれば良い。
【0051】
また、上記実施例では、非常扉5A及び非常扉5Bが自動開放するが、これら非常扉5A及び非常扉5Bが同時又は時間差を置いて自動開放するようにしても良い。
【0052】
また、上記実施例では、非常扉5を自動開放するのにヒンジ機構52のバネ部52Aのバネ復帰作用を使用したが、バネ以外の弾性復帰力を使用しても良い。更に、上記実施例では、無停電電源の給電で非常扉5を自動開放させるようにしても良い。
【0053】
また、上記実施例では、非常扉5のロック機構53として非常扉5の背面にベース部53B、通常扉4の背面に作動部53Aを取り付けたが、非常扉5の背面に作動部53A、通常扉4の背面にベース部53Bを取り付けても良い。
【0054】
また、上記実施例では、操作部11を使用してサーモスタット9の設定温度を変更するようにしたが、サーモスタット9の図示せぬ温度調整ツマミを使用して設定温度を調整するようにしても良い。
【0055】
また、上記実施例では、停電及び空調故障等で筐体2の内部温度が設定温度を超えた場合に非常扉5を自動開放するようにしたが、停電及び空調故障等に関係なく、筐体2の内部温度が設定温度を超えた場合でも、非常扉5を自動開放するようにしても良い。
【0056】
また、図示した各部の各構成要素は、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各部の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。
【0057】
更に、各装置で行われる各種処理機能は、CPU(Central Processing Unit)(又はMPU(Micro Processing Unit)、MCU(Micro Controller Unit)等のマイクロ・コンピュータ)上で、その全部又は任意の一部を実行するようにしても良い。また、各種処理機能は、CPU(又はMPU、MCU等のマイクロ・コンピュータ)で解析実行するプログラム上、又はワイヤードロジックによるハードウェア上で、その全部又は任意の一部を実行するようにしても良いことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0058】
1 ラック装置
2 筐体
4,4A,4B 通常扉
5,5A,5B 非常扉
8 電子機器
8A 取込み口
17 制御部
52 ヒンジ機構
52A バネ部
53 ロック機構
53A 作動部
53B ベース部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器が搭載される筐体と、
前記筐体に前記電子機器の設置及び操作を行う場合のアクセス面に対向する面に取り付けられ、施錠によりロックする機構を有する第一の扉と、
前記第一の扉の内側面部に形成した、前記電子機器の外気取込み用の第二の扉と、
前記筐体内部の状態が所定状態となったときに、前記第一の扉が施錠された状態で前記第二の扉を開放するように制御する制御部と
を有することを特徴とするラック装置。
【請求項2】
前記第二の扉は、前記筐体に搭載された電子機器に対して、高さ方向に搭載電子機器に全てにかかる大きさで、幅方向には電子機器の幅より狭い寸法で形成されることを特徴とする請求項1に記載のラック装置。
【請求項3】
前記電子機器の排気方向の面に前記第二の扉と同形状の第三の扉を更に設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載のラック装置。
【請求項4】
前記第二の扉をバネ復帰力で開方向に常時付勢するバネ部と、
前記第二の扉の閉位置で当該第二の扉の開閉動作をロックするロック部と
をさらに有し、
前記制御部は、
所定の条件を満たした場合に、前記ロック部のロック解除に応じて、前記バネ部のバネ復帰力で当該第二の扉を開放することを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載のラック装置。
【請求項5】
前記バネ部は、
前記第二の扉の開角度が0度から90度に2.5秒から5秒の範囲内で到達するように当該第二の扉が開き、当該第二の扉の開角度が90度を超えて180度に4秒から10秒の範囲内で到達するように当該第二の扉が開く弾性復帰力を有することを特徴とする請求項4に記載のラック装置。
【請求項6】
電子機器が搭載される筐体と、前記筐体の所定面に取り付けられ、施錠によりロックする機構を有する第一の扉と、前記筺体の内部温度を調整する空調部とを有するラックシステムであって、
前記筐体の、前記電子機器の外気取込み口に対向する面に取り付けられた第二の扉と、
前記第二の扉をバネ復帰力で開方向に常時付勢するバネ部と、
前記第二の扉の閉位置で当該第二の扉の開閉動作をロックするロック部と、
前記内部温度が所定温度を超えた場合に、前記ロック部のロック解除に応じて、前記バネ部のバネ復帰力で当該第二の扉を開放する制御部と
を有することを特徴とするラックシステム。
【請求項7】
機器が搭載される筐体と、
前記筐体の所定面に取り付けられ、施錠によりロックする機構を有する第一の扉と、
前記第一の扉の内側面部に形成した、前記機器の外気取込み用の第二の扉と
を有し、
前記第二の扉は、密閉型の筐体内部の状態が所定状態となったときに、前記第一の扉が施錠された状態で開放可能にすることを特徴とする筐体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−234364(P2012−234364A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102507(P2011−102507)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り http://jp.fujitsu.com/group/fnets/ http://jp.fujitsu.com/group/fnets/services/eco/facilitycube.html 掲載日 平成23年2月16日 〔刊行物等〕 川崎国際環境技術展2011,川崎市(川崎国際環境技術展実行委員会)主催,開催日 平成23年2月16日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第3項適用申請有り 川崎国際環境技術展2011,川崎市(川崎国際環境技術展実行委員会)主催,開催日 平成23年2月16日
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)