説明

ラドンミスト発生装置

【課題】閉鎖された空間内に設置するだけでラドンミストサウナ浴施設を実現することができ、コンパクトながらも必要量のラドンミストを連続的に得ることができるラドンミスト発生装置を提供すること。
【解決手段】外部から供給される原料水の加熱手段3を備えた蒸気槽1と、放射性物質を担持させた多孔質セラミックスパネル4を備えたラドン放出槽2とからなり、蒸気槽1から導出した水蒸気を含む湿潤空気をラドン放出槽2内の多孔質セラミックスパネル4に透過させた後にラドン放出槽2外へ噴出させるようにしたラドンミスト発生装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弱放射線を放出するラドン線源を原料水に溶出させて、生活習慣病の対処療法などに利用するラドンミスト発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ラドン等の放射性壊変生成物を含有する温泉などの限られた天然施設に、各種疾病に対する治癒効果があることが知られている。そこで、こうした天然施設と同等の効果を簡易に得るために、放射性壊変生成物を含有する水溶液を人工的に生成する装置が提案されている。例えば、特許文献1では、抽出槽内の温水溶液中に沈設した撹拌槽内を上下フィルター板で区画し、当該区画内に顆粒状の放射性物質含有鉱石を収容して、抽出槽上部に存在する気体を前記下部フィルターの底部側に圧送して撹拌槽中に噴射させることにより顆粒状鉱石を撹拌する一方、抽出槽底部より導出した温水溶液を抽出槽の上方から噴霧することによって抽出槽上部の気体中に溶出したガス状の放射性壊変生成物を温水溶液中に溶融させることとした装置が提案されている。
【0003】
前記装置では、放射性物質含有鉱石を顆粒状にすることで温水溶液との接触面積を広く確保しつつ気泡で撹拌しながら効果的な溶出を促進することが企図されていたが、顆粒状鉱石の粒径を小さくすると必然的に上下フィルター板の開孔径も細かくせざるをえないところ、上下フィルター板の開孔径が小さくなればなるほど気泡が通過しづらくなるという欠点があった。
【0004】
一方、ラドン線源であるラジウムは水溶液にはほとんど溶けないが、ラドンには水によく溶け空気中にも気化発散しやすい性質があるため、ミスト(霧状)にして利用する方法も提案されている。ラドンが溶出した温水蒸気をミストサウナとして浴びることで、ラドンが溶出した温水溶液中に身体を浸ける場合に比べて弱放射能が希薄されないし、身体表面のみならず呼吸器系にもラドンが到達しやすいという利点がある。例えば、特許文献2では、遠赤外線ヒーターで加温する大型箱状本体内に、座席とミスト発生器を設けたサウナ風呂が提案されている。また、特許文献3では、密閉室内に設置したマットと上乗せマット間に患者を仰臥させて、両マット内部にラドン温泉湯を通水しつつ、密閉室内にラドン温泉湯をミスト状にして充満させることにより、ラドン温泉湯の波動によるマッサージ効果とともに呼吸器系からラドンミストを吸入させることができるとした弱放射能温泉療法施設が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特公平6−48320号公報(特許請求の範囲、第5欄25行目〜第6欄1行目、第1図)
【特許文献2】実開昭63−38539号公報(実用新案登録請求の範囲、第2図)
【特許文献3】特開平11−128375号公報(特許請求の範囲、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記従来のラドンミスト発生器のようにラドンが溶出した温水溶液を加熱することによって水蒸気を含む湿潤空気化(ミスト化)を図る場合は、必要なラドン濃度を確保するためにラドンの溶出工程に長時間を要してしまうので、設備の使用に備えて一時的に相当量の温水溶液を貯留しておく必要があった。また、貯留しておいた温水溶液を使い切ってしまうと設備の使用中止を余儀なくされるという欠点があった。
【0007】
本発明は叙上の事情に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、浴室などの閉鎖された空間内に設置するだけでラドンミストサウナ浴施設を実現することができ、コンパクトながらも必要量のラドンミストを連続的に得ることができるラドンミスト発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記所期の課題解決を図るため、本発明に係るラドンミスト発生装置は、外部から供給される原料水の加熱手段を備えた蒸気槽と、放射性物質を担持させた多孔質セラミックスパネルを備えたラドン放出槽とから構成し、蒸気槽から導出した水蒸気を含む湿潤空気をラドン放出槽内の多孔質セラミックスパネルに透過させた後にラドン放出槽外へ噴出させるようにした。
【0009】
ここで、ラドン放出槽内に収納する多孔質セラミックスパネルは、濾紙等の多孔質有機物基体に対してセラミックス前駆体である無機高分子を含浸させ、これを焼成する方法や、セラミックス粉末と粉末バインダとを適当な割合で均一に混合し、型枠内でパネル形状に加圧成形したり、あるいは溶剤で溶解した有機バインダにセラミックス粉末を均一に混合・分散させてセラミックススラリーとし、これを押出成形等によりパネル形状に成形して、乾燥後に焼成する方法といった、常法により得られるものを用いる。例えば、アルミナ/コージェライトを用いた80%以上の空孔率を有する軽量セラミック多孔体(セラミックフォーム)などが好適に用いられる。
【0010】
また、多孔質セラミックスパネルに放射性物質を担持させるには、シリカ微粉末や低融点ガラス微粉末などをポリビニルアルコールに分散させたものに、バドガシュタイン鉱石などの天然ラジウム鉱石の粉末を混合してスラリー状とし、このスラリー溶液を多孔質セラミックスパネルに塗布したり、あるいは多孔質セラミックスパネルをスラリー溶液中に浸漬させた後、乾燥を経て、200℃程度で加熱焼結させる方法等が例示される。
【0011】
以上のようにして得られる、放射性物質を担持させた多孔質セラミックスパネルには、パネル最表面層にラジウム(Ra)が化学結合されて安定担持されている一方、パネル内を透過する空気の相対湿度が高ければ高いほど、ラジウムの崩壊生成核種であるラドン(Rn)の放出量が多くなるという特徴がある。そこで、本発明では、原料水を加熱手段により水蒸気とし、該水蒸気を含む湿潤空気(Wet Air)を多孔質セラミックパネルを透過させることでラドンミストの効果的な生成を図ったのである。
【0012】
ラドン放出槽内に収容される多孔質セラミックスパネルは、単位質量あたりのラジウム担持量に法的規制があることから、法規制内のパネルを用いる必要がある。そこで、パネル1枚あたりのラドン放出量を法規制内に抑制しつつ、装置全体として必要なラドン放出量を確保するために複数枚のパネルを用いることとした。とくに多くのラドン放出量を確保するためには、複数枚を離隔しながら積層して用いるとよい。
【0013】
一方、前記のような放射性物質を担持させた多孔質セラミックスパネルでは、パネル表面が完全に結露してしまうと、透過する湿潤空気中へのラドン放出量がむしろ減少するという特徴がある。そこで、本発明に係るラドンミスト発生装置では、多孔質セラミックスパネルを透過する湿潤空気の湿度を計測し、加熱手段を用いて湿度制御を行うこととした。
【0014】
具体的には、ラドン放出槽内に湿度センサを配置して、多孔質セラミックスパネルを透過する湿潤空気の湿度に応じて蒸気槽内の加熱手段の温度制御を行ったり、あるいは、ラドン放出槽下部への導入経路中にヒーターを設けて、通過する湿潤空気の湿度制御を可能とすることができる。このように通過する湿潤空気をシリコンラバーヒーター等によって加熱すると、湿度100%に近い状態にある湿潤空気の湿度を例えば80%程度に抑制したうえで多孔質セラミックスパネルに透過させることができるのである。
【0015】
また、本発明に係るラドンミスト発生装置では、蒸気槽から導出される水蒸気を含む湿潤空気を2系統に分割し、第1系統ではラドン放出槽下部へと導入して多孔質セラミックスパネルを透過させる一方、第2系統ではダクトを介して装置外へ直接噴出させるよう構成した。本発明者らの研究結果によれば、室内湿度70%以上において人体におけるラドン吸収率がよいことが実証されているので、加熱手段によって蒸気槽から発生する水蒸気を含む湿潤空気の一部を装置が設置された室内へと直接噴出させるようにしたのである。
【0016】
別な構成としては、蒸気槽から導出される水蒸気を含む湿潤空気をダクトを介して装置外へ直接噴出させる一方、装置外から導入した湿潤空気をラドン放出槽下部へと導入して多孔質セラミックスパネルを透過させるようにすることもできる。
【0017】
ところで、例えば療養施設のように、複数の患者が断続的に使用するような場合、装置の運転を一時的に中止してしまうと再びラドンを充満させるまでにある程度の待機時間を要してしまう一方、装置を連続的に運転することにしたのでは発生するラドンミストの無駄が生じてしまう。そこで、本発明に係るラドンミスト発生装置では、ラドン放出槽におけるラドン噴出口を開閉可能とし、多孔質セラミックスパネルを挟んでラドン放出槽を上下に区画する一方、これら上部と下部とをラドン放出槽外において配管連結することにより、前記ラドン噴出口を閉鎖したときにはラドン放出槽上部に滞留したラドンミストをラドン放出槽下部に導いて再び多孔質セラミックスパネルを透過させながら循環させるようにした。
【0018】
単独で、あるいは複数枚を離隔積層した多孔質セラミックスパネルの上下に空間を確保し、ラドン放出槽に導入された湿潤空気を外部循環させることによって、ラドン放出槽上部にて高濃度のラドンミストを貯留させておき、一時中断後に別な患者がラドンミストサウナ浴を行う際にはラドン噴出口を開放することにより、装置が設置された閉鎖空間内のラドン濃度を瞬時に上昇させるようにした。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るラドンミスト発生装置は、主として蒸気槽とラドン放出槽のみからなるコンパクトな構成とすることができるうえ、蒸気槽内の加熱手段により発生する水蒸気を含む湿潤空気を、ラドン放出槽内に収容した、放射性物質を担持させた多孔質セラミックスパネルに透過させることによってラドンミストを連続的に得ることができる。
【0020】
また、放射性物質を担持させた多孔質セラミックスパネルの収容枚数を選択することで、装置を設置した閉鎖空間の大きさに合わせながら、所望のラドン濃度が得られるよう簡易に調整することができる。
【0021】
そして、ラドン放出槽上部に設けた温度センサによって蒸気槽内の加熱手段の温度制御を図ったり、ラドン放出槽下部への湿潤空気の導入経路中に設けたヒーターによって通過する湿潤空気の湿度制御を可能としたので、湿潤空気の湿度が高いほどラドン放出量が大となる一方、表面が結露してしまうと逆にラドン放出量が減少するという前記多孔質セラミックスパネルの特徴を活かすことができる。
【0022】
また、蒸気槽で発生する水蒸気を含んだ湿潤空気を直接装置外へ噴出させることによって、装置が設置されている閉鎖空間内の湿度を急速に高めて人体へのラドン吸収の効率化を図ることができるし、ラドンミストをラドン放出槽で外部循環させながら濃縮させることで、ラドンミストサウナ浴を一時中断した後の再開時には閉鎖空間内のラドン濃度を瞬時に上昇させられるなど、効果的で利便性の高い弱放射能療法施設を簡易に得ることができるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面にもとづいて本発明に係るラドンミスト発生装置につき詳細に説明する。図1は本発明に係るラドンミスト発生装置の一例を示した正面視概略縦断面図であり、図2は図1におけるA−A’概略横断面図である。図示されるように、本例のラドンミスト発生装置では、外部から給水された原料水を加熱して水蒸気とし、この水蒸気を多孔質セラミックスパネルに透過させることにより得られるラドンミストを噴出するまでの全過程を単一のコンパクトな装置内で実現できるように、各作動部分を略直方体形状をした筐体内に格納しつつ、左右4箇所に突出させた取付片10によって、装置が設置される浴室等の壁に対して固定可能に形成されている。
【0024】
まず図1において、ほぼ中心位置で左右に区画された装置内部の右下位置には、加熱手段としての電気式ヒーター3を底面近くに備えた蒸気槽1が配設されている。蒸気槽1は断熱材で覆われた底深の水槽状をしているが、給水・運転時の規制水位は深さ方向中間位置以下に設定されており、最高水位(図1中Hのライン)と最低水位(図1中Lのライン)間の監視用として水位感知棒11が垂下されている。そして、最高水位より上方位置となる外壁には、水位感知棒11が機能しなかった場合を想定したオーバーフロー管を兼ねる外気導入口12が穿設されている一方、対向する内壁には蒸気送出管61が接続されている。なお、槽内の点検・保守のために全開口された蒸気槽1の上面は、取手付きで四周をゴムシールされた2枚の蓋13で閉塞されており、蒸気槽1の底面にはコック付の排水管14が設けられている。
【0025】
装置の左側は機械室となっている。その左下隅位置には、給水電磁弁5を備えた給水口51が設けられており、前記給水電磁弁5から延設された給水管52が蒸気槽1内の注水口53と連結されている。また、蒸気槽1から機械室内の蒸気用電磁弁6へと接続された蒸気送出管61とは別に、蒸気槽1における機械室側の内壁からは、前記蒸気送出管61を挟むように2本の角筒形のダクト7が垂直に立設され、装置外へと連通している。
【0026】
蒸気槽1の上方となる装置の右上位置には、底面側が開口しているのみで最上面も閉塞された密閉空間をなしているラドン放出槽2が配設されている。ラドン放出槽2内には、放射性物質が担持された多孔質セラミックスパネル4が計5枚、各パネル間に隙間を確保しつつ上下方向に積層配置されているが、使用されるパネルの枚数は所望のラドン放出量に合わせて選択されることになる。最上段のパネルより上方にはラドンミストの滞留空間21が確保されており、ラドン放出槽2外に設けられたハンドル22を回動することによって前記滞留空間21を閉塞していた噴出口シャッタ23が傾動し、スリット状の開口窓が露出することによって前記滞留空間21と装置外とが連通することになる。なお、滞留空間21内には湿度センサ24が配設されている。
【0027】
ラドン放出槽2の上部となる前記滞留空間21には、その機械室側の内壁より蒸気用電磁弁6に至るミスト送出管63が接続されている。また、蒸気用電磁弁6とラドン放出槽2の下部も蒸気導入管62により接続されており、該蒸気導入管62の途中には送風ファン8とシリコンラバーヒータ9が配設されている。
【0028】
以上のように構成された本発明に係るラドンミスト発生装置を運転するには、まず、水道管に接続する等して給水口51から原料水を蒸気槽1内へと給水する。給水量は水位感知棒11によって監視されているので、最高水位に至ると給水電磁弁52が作用して給水停止となる一方、加熱蒸発により最低水位に至ると給水電磁弁52が作用して再給水が行われることになる。
【0029】
所定量給水された原料水は、電気式ヒーター3により加熱され、水蒸気が発生する。蒸気槽1内に充満した水蒸気は、外気導入口12から流入する空気と混合して湿潤空気となり、第1系統として蒸気送出管61から蒸気用電磁弁6を経て、蒸気導入管62内の送風ファン8によりラドン放出槽2の下部へと導入される。このとき、蒸気導入管62内に配設されたシリコンラバーヒーター9によって湿潤空気を加熱することにより、湿潤空気の湿度は、例えば80%など、多孔質セラミックスパネル4の能力を最大限にできるレベルに調整される。その後、ラドン放出槽2内を上昇する湿潤空気は、多孔質セラミックスパネル4を透過し、ラドンミストとなってラドン放出槽2の滞留空間21へと至るので、ハンドル22操作により噴出口シャッタ23を開放すると装置外へラドンミストが噴出されることになる。
【0030】
なお、滞留空間21内に設けられた湿度センサ24によって、ラドンミストの湿度は自動制御される。例えば、前述のように湿度80%において最もラドン放出量が多くなる多孔質セラミックスパネル4を用いる場合、湿度センサ24により計測されるラドンミストの湿度が85%になると蒸気槽2内の電気式ヒーター3への電気供給を断ち、ラドンミストの湿度が75%になると電気式ヒーター3への電気供給を再開するとった具合である。
【0031】
一方、蒸気槽1内に充満した水蒸気を伴う湿潤空気は、第2系統としての2本のダクト7から装置外へと直接噴出され、装置が設置された浴室等の閉鎖的な室内の湿度上昇に寄与する。
【0032】
ところで、ラドン放出槽2における噴出口シャッタ23を開放しなければ、発生したラドンミストはラドン放出槽2上部の滞留空間21内にとどまることになる。そこで、蒸気電磁弁6の操作により、ミスト送出管63からラドンミストを蒸気導入管62を経てラドン放出槽1の下部へと導入し、再び多孔質セラミックスパネル4を透過させるように循環させることで高濃度のラドンミストを生成し、滞留空間21内に溜め置きすることができるのである。滞留空間21の気密性を高めるべく、多孔質セラミックスパネル4の載置部分や噴出口シャッタ23のフィン端部にはゴムシールを施しておくとよい。
【0033】
図3は、本発明に係るラドンミスト発生装置の別な例を示した正面視概略縦断面図である。先の例の装置と比較すると、蒸気槽1とラドン放出槽2とが装置内において連結されておらず、ラドン放出槽2下部には装置外の空気が直接導入されるよう構成されている点が最も大きな相違点となっている。
【0034】
すなわち、水道水等の原料水は、その給水量を高低2本の水位感知棒11,11によって監視されつつ、給水口51から給水電磁弁52を介して給水管53を経て蒸気槽1内へと給水され、電気式ヒーター3により加熱されることにより水蒸気となる点は先の例の装置と概略同一構成であるが、本例の装置では外気導入口12に送風ファン15が設けられており、その送風圧によって蒸気槽1内にあって水蒸気を含んだ湿潤空気の全量を2本のダクト7から装置外へと直接噴出させる点が異なっている。蒸気槽1は、専ら装置が設置された浴室等の閉鎖的な室内の湿度上昇を図るためのみに用いることとし、ラドン放出槽2におけるラドンミスト発生・制御機能と切り離したのである。
【0035】
したがって、装置が設置された室内の湿度が十分に上昇すると、送風ファン8を作動させることにより、装置外の湿潤空気はガラリ64から蒸気導入管62を通してラドン放出槽2の下部へと導入される。このとき、蒸気導入管62内に配設されたシリコンラバーヒーター9によって湿潤空気を加熱することにより、湿潤空気の湿度は多孔質セラミックスパネル4の能力を最大限にできるレベルに調整される。
【0036】
本例の装置における多孔質セラミックスパネル4は合計4つのブロックに分離区画されており、各ブロックの上端部分に接続されたフレキシブルホース41の他端が、ラドン放出槽2の側壁面に装着された噴出ファン43(又はエアーポンプ)に対して接続されている。各ブロックの側面及び多孔質セラミックスパネル4の載置部分はゴムシール等により密閉状態となっているので、湿潤空気は確実に多孔質セラミックスパネル4内を通過する。噴出ファン43の下部にはさらにフレキシブルホース42が延設されており、その他端がミスト送出管63に対して接続されている。
【0037】
前記噴出ファン43は、図示されていない噴出シャッタを備えたラドン噴出口を介して装置外と連通しているが、アクチュエータ44によって噴出シャッタの開閉とフレキシブルホース42側への流路の開閉とが切り替えられるよう構成されている。つまり、噴出シャッタを開放したときにはフレキシブルホース42側への連通路を閉鎖することで、フレキシブルホース41より吸引したラドンミストを装置外へと噴出することができる一方、噴出シャッタを閉鎖したときにはフレキシブルホース42側への流路を開放することで、フレキシブルホース41より吸引したラドンミストをミスト送出管63へと送出することができる。
【0038】
一方、ミスト送出管63と蒸気導入管62の連結部分には、アクチュエータ31の動作によって水平位置と垂直位置間で回動する切替シャッタ32が設けられており、ラドン放出槽2下部へ至る流路を、装置外の湿潤空気を導入する蒸気導入管62とするか、ラドン放出槽2上部の噴出ファン43を介してラドンミストが送られるミスト送出管63とするかを切り替え可能としている。
【0039】
したがって、通常運転状態であれば、切替シャッタ32は水平位置に保持されて、送風ファン8の作用によって装置外の湿潤空気(予め蒸気槽1において生じた水蒸気をダクト7より噴出させて室内に充満させておいたものである)がガラリ64から蒸気導入管62を介してラドン放出槽2下部へと導入される。シリコンラバーヒーター9によって湿度調整された湿潤空気は多孔質セラミックスパネル4を通過することによりラドンミストとなって、噴出ファン43によってフレキシブルホース41より強制吸引されながら、開放された噴出シャッタより装置外へと噴出されることになる。このように、装置が設置された閉鎖空間では湿潤空気が装置の内外を循環し、多孔質セラミックスパネル4を幾度も通過してラドン濃度の高いラドンミストが噴出されることになるのである。
【0040】
一方、閉鎖空間内の湿度を高めるべく準備運転を行う際や、利用者が一時的に途絶えたためにラドンミストを噴出させる必要はないが次なる利用再開時に備えた運転を行う際には、切替シャッタ32を垂直状態に保持するとともに、噴出シャッタを閉鎖してフレキシブルホース42への流路を開放することによって、噴出ファン43を介して多孔質セラミックスパネル4を通過したラドンミストを装置内において強制循環させながら、高濃度のラドンミストを生成することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係るラドンミスト発生装置の一例を示した正面視概略縦断面図である。
【図2】図1におけるA−A’概略横断面図である。
【図3】本発明に係るラドンミスト発生装置の他の例を示した正面視概略縦断面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 蒸気槽
2 ラドン放出槽
3 電気式ヒーター
4 多孔質セラミックスパネル
5 給水電磁弁
6 蒸気用電磁弁
7 ダクト
8、15 送風ファン
9 シリコンラバーヒーター
10 取付片
11 水位感知棒
12 外気導入口
13 蓋
14 排水管
21 滞留空間
22 ハンドル
23 噴出口シャッタ
24 温度センサ
31 アクチュエータ
32 切替シャッタ
41、42 フレキシブルホース
43 噴出ファン
51 給水口
52 給水電磁弁
53 給水管
54 注水口
61 蒸気送出管
62 蒸気導入管
63 ミスト送出管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から供給される原料水の加熱手段を備えた蒸気槽と、放射性物質を担持させた多孔質セラミックスパネルを備えるラドン放出槽とからなり、蒸気槽から導出した水蒸気を含む湿潤空気をラドン放出槽内の多孔質セラミックスパネルに透過させた後にラドン放出槽外へ噴出させるようにしたラドンミスト発生装置。
【請求項2】
ラドン放出槽内に収容される多孔質セラミックスパネルが、複数枚を離隔しながら積層されたものである請求項1記載のラドンミスト発生装置。
【請求項3】
多孔質セラミックスパネルを透過する湿潤空気の湿度を計測し、加熱手段により湿度制御を行うこととした請求項1又は2いずれか記載のラドンミスト発生装置。
【請求項4】
蒸気槽から導出される水蒸気を含む湿潤空気を2系統に分割し、第1系統ではラドン放出槽下部へと導入して多孔質セラミックスパネルを透過させる一方、第2系統ではダクトを介して装置外へ直接噴出させるようにした請求項1ないし3いずれか記載のラドンミスト発生装置。
【請求項5】
蒸気槽から導出される水蒸気を含む湿潤空気をダクトを介して装置外へ直接噴出させる一方、装置外から導入した湿潤空気をラドン放出槽下部へと導入して多孔質セラミックスパネルを透過させるようにした請求項1ないし3いずれか記載のラドンミスト発生装置。
【請求項6】
ラドン放出槽におけるラドン噴出口を開閉可能とし、多孔質セラミックスパネルを挟んでラドン放出槽を上下に区画する一方、これら上部と下部とをラドン放出槽外において配管連結することにより、前記ラドン噴出口を閉鎖したときにはラドン放出槽上部に滞留したラドンミストをラドン放出槽下部に導いて再び多孔質セラミックスパネルを透過させながら循環させるようにした請求項1ないし5いずれか記載のラドンミスト発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−142326(P2008−142326A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−333387(P2006−333387)
【出願日】平成18年12月11日(2006.12.11)
【出願人】(306001817)株式会社尾図計画 (2)
【出願人】(504147243)国立大学法人 岡山大学 (444)
【Fターム(参考)】