説明

ラベル嵌挿装置の異常診断システム

【課題】この種のラベル嵌挿装置におけるラベルの嵌挿不良等の異常原因を簡単かつ迅速に診断することのできる異常診断システムを提供する。
【解決手段】ラベル嵌挿装置のラベル嵌挿ヘッドの移動経路に設定された診断位置において、その診断位置を通過する時点におけるラベル嵌挿ヘッドの処理状態を検出する状態検出手段11と、診断位置を通過するラベル嵌挿ヘッドを識別するヘッド識別手段12と、状態検出手段11によって検出されたラベル嵌挿ヘッドの処理状態に基づいて、そのラベル嵌挿ヘッドの処理状態に異常が発生しているか否かを診断する異常診断手段13と、異常診断手段13による診断結果を出力する表示手段14とから構成されており、表示手段14には、各ラベル嵌挿ヘッドの異常検出回数が、ヘッド番号毎に表示されるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、一周する間に、筒状のラベル及びこのラベルが嵌挿されるボトル等の被嵌挿体を受け取って、被嵌挿体にラベルを嵌挿するようになっている複数のラベル嵌挿ヘッドを備えたロータリ式のラベル嵌挿装置の異常診断システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、シュリンクフィルムによって形成された筒状のラベルをPETボトルの胴部に嵌挿するラベル嵌挿装置としては、一周する間に、シート状に折り畳まれた状態のラベル及びPETボトルを受け取って、そのラベルを開口しながらPETボトルに嵌挿する複数のラベル嵌挿ヘッドを有するロータリ型のラベル嵌挿ユニットを搭載したものがあり、各ラベル嵌挿ヘッドは、シート状に折り畳まれた状態のラベルを筒状に開口するラベルオープナーと、このラベルオープナーによって筒状に開口されたラベルをPETボトルの胴部より大きく拡開するマンドレルと、マンドレルによって拡開されたラベルを、マンドレルから押し下げることによって、マンドレルの直下に位置しているPETボトルにラベルを嵌挿するラベル押込板とを備えている。
【0003】
ところで、こういったラベル嵌挿装置の運転中に、PETボトルに対するラベルの嵌挿不良が発生した場合は、ラベルの嵌挿不良が発生する原因となる異常箇所を早急に見つけ出して、その異常箇所を修理または交換することにより正常な状態に復旧する必要があるが、ラベル嵌挿装置を運転しながら、作業者が目視によって異常箇所を見つけ出すことは、熟練者であっても必ずしも容易なことではない。
【0004】
従って、従来は、ラベル嵌挿装置を超低速で運転しながら、作業者が目視によって異常箇所を見つけ出すといった方法や、ラベル嵌挿装置の運転中に、異常が発生し易い箇所をビデオテープに撮影し、ラベル嵌挿装置の運転状態が撮影されたビデオテープをスロー再生しながら、異常箇所を見つけ出すといった方法が採用されている。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−249114号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ラベル嵌挿装置を超低速で運転しながら、作業者が目視で異常箇所を見つけ出す場合、作業者が異常箇所を見つけ出すまでの間はラベル嵌挿装置が超低速で運転されることになるので、生産性が著しく低下するといった問題がある。
【0007】
また、ラベル嵌挿装置を通常速度で運転したときにだけラベルの嵌挿不良が発生するような場合もあり、そのような場合は、上述したように、ラベル嵌挿装置を超低速で運転すると、ラベルの嵌挿不良が発生しないので、こういった方法では、異常箇所を確実に発見することができないといった問題もある。
【0008】
一方、ラベル嵌挿装置における異常が発生し易い箇所をビデオテープに撮影し、そのビデオテープをスロー再生しながら、異常箇所を見つけ出す場合は、上述したような問題は発生しないが、やはり手間と時間のかかる作業であることには変わりなく、効率よく、異常箇所を見つけ出すことができなかった。
【0009】
特に、ラベル嵌挿ヘッドに搭載されているラベルオープナーやマンドレル等に異常箇所が存在するような場合は、各ラベル嵌挿ヘッドに対して異常箇所があるか否かを順次点検していかなければならないので、ラベル嵌挿ヘッドの数が多いラベル嵌挿装置では、大変手間のかかる作業となっていた。
【0010】
そこで、この発明の課題は、上述した問題点に鑑み、この種のラベル嵌挿装置におけるラベルの嵌挿不良等の異常原因を簡単かつ迅速に診断することのできるラベル嵌挿装置の異常診断システムを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段及びその効果】
上記の課題を解決するため、請求項1にかかる発明は、筒状のラベル及びこのラベルが嵌挿される被嵌挿体を受け取って、前記被嵌挿体に前記ラベルを嵌挿するようになっている複数のラベル嵌挿ヘッドを備えたロータリ式のラベル嵌挿装置の異常診断システムであって、前記ラベル嵌挿ヘッドの移動経路に設定された診断位置において、その診断位置を通過する時点における前記ラベル嵌挿ヘッドの処理状態を検出する状態検出手段と、前記診断位置を通過する前記ラベル嵌挿ヘッドを識別するヘッド識別手段と、前記状態検出手段によって検出された前記ラベル嵌挿ヘッドの処理状態に基づいて、前記診断位置を通過したラベル嵌挿ヘッドの処理状態に異常が発生しているか否かを診断する異常診断手段と、複数の前記ラベル嵌挿ヘッドのうち、どのラベル嵌挿ヘッドの処理状態に異常が発生しているのかを報知する報知手段とを備えていることを特徴とするラベル嵌挿装置の異常診断システムを提供するものである。
【0012】
以上のように、この異常診断システムでは、診断位置を通過するラベル嵌挿ヘッドの処理状態に異常が発生していることが検出されると、どのラベル嵌挿ヘッドの処理状態に異常が発生しているのかを報知するようになっているので、従来のように、ラベル嵌挿装置を超低速で運転しながら異常箇所を見つけ出したり、ラベル嵌挿装置の運転状態をビデオテープに撮影し、そのビデオテープをスロー再生しながら、異常箇所を見つけ出したりするといった面倒で手間のかかる作業が不要となる。
【0013】
従って、ラベル嵌挿装置の運転を停止して、異常が発生していることを報知しているラベル嵌挿ヘッドだけを点検すれば、異常箇所を即座に発見することができ、その異常箇所を修理または交換すればよいので、ラベル嵌挿装置の運転停止時間を最小限に抑えつつ、ラベル嵌挿装置を迅速に正常な状態に復旧させることができる。
【0014】
また、請求項2にかかる発明の異常診断システムのように、前記異常診断手段が、前記ラベル嵌挿ヘッド毎に、それぞれの異常検出回数を集計する集計部を有し、前記報知手段が、前記ラベル嵌挿ヘッド毎に集計された異常検出回数を報知するようになっているものにあっては、異常が検出されているラベル嵌挿ヘッドであっても、その異常検出回数によって、点検して異常発生の原因となる箇所を修理または交換しなければならない本来の異常なのか、偶然に発生した、本来は異常として取り扱わないような異常なのかを的確に判断することができ、異常発生の原因となる箇所を修理または交換しなければならない本来の異常だけを効率よく解消することができる。
【0015】
また、どのラベル嵌挿ヘッドの異常検出回数が多いかを検討することによって、例えば、ある特定のラベル嵌挿ヘッドの異常検出回数だけが多い場合は、そのラベル嵌挿ヘッドに異常発生の原因となる箇所が存在している可能性が高く、複数の特定のラベル嵌挿ヘッドの異常検出回数だけが多い場合は、それらのラベル嵌挿ヘッドに対して選択的に所定の処理を実行している部位に異常発生の原因となる箇所が存在している可能性が高く、全てのラベル嵌挿ヘッドの異常検出回数が全体的に多い場合は、全てのラベル嵌挿ヘッドに対して所定の処理を実行している部位に異常発生の原因となる箇所が存在している可能性が高いといった具合に、異常検出回数が多いラベル嵌挿ヘッドにどういった傾向があるのかを検討することによって、ラベル嵌挿装置におけるどの部分を点検すればよいのかを推定することができるので、効率よく、異常の発生原因を解消することができる。
【0016】
特に、請求項3にかかる発明の異常診断システムのように、前記異常診断手段が、前記ラベル嵌挿ヘッド毎に集計された異常検出回数に基づいて、異常発生の原因となる部位を判定する判定部を有し、前記報知手段が、前記判定部によって判定された異常発生の原因となる部位を報知するようになっているものにあっては、ラベル嵌挿ヘッド毎に集計された異常検出回数に基づいて、ラベル嵌挿装置におけるどの部分を点検すればよいのかを推定することができないようなメンテナンスマンであっても、効率よく、異常の発生原因を迅速に解消することができるという効果が得られる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、図3に示すように、ボトルBの胴部にシュリンクフィルムによって形成された筒状のラベルLを嵌挿するためのラベル嵌挿装置2の異常診断システム1を示している。
【0018】
前記ラベル嵌挿装置2は、図3に示すように、ベルトコンベア21、スクリュー22及びスターホイール23からなるボトル供給ユニット20と、基材繰出部31によって基材ロールから繰り出された長尺のラベル形成基材Mを順次切断しながらラベルLを形成し、そのラベルLを第1受渡位置αに順次供給するラベル供給ユニット30と、このラベル供給ユニット30によって第1受渡位置αに供給されたラベルLを受け取って第2受渡位置βに搬送するラベル受渡ユニット40と、ボトル供給位置γにおいて前記ボトル供給ユニット20から供給されたボトルBを受け取り、ボトル送出位置δまで搬送すると共に、前記ラベル受渡ユニット40によって搬送されてきたラベルLを第2受渡位置βにおいて受け取り、ボトルBをボトル供給位置γからボトル送出位置δまで搬送する間にラベルLをボトルBに嵌挿するロータリ型のラベル嵌挿ユニット50と、ボトルBに嵌挿されたラベルLを熱収縮させるための加熱ユニット(図示せず)にラベルLが嵌挿されたボトルBを搬送する、スターホイール61、スクリュー62及びベルトコンベア21からなるボトル搬送ユニット60とから構成されており、各ユニットの動作は、駆動源に接続されたメインシャフトに取り付けた位置検出器(ロータリエンコーダ)から出力される回転角度信号に基づいて、メインシャフトの回転角度に応じたカム出力が得られる電子式ロータリカムスイッチによって制御されている。
【0019】
前記ラベル供給ユニット30は、図3及び図4に示すように、前記基材繰出部31から繰り出された長尺のラベル形成基材Mを所定の速度で連続的に送り出す基材供給手段(図示せず)と、この基材供給手段によって一定速度で送り出されたラベル形成基材Mを所定長さに順次切断する、固定刃32a及び回転刃32bからなる基材切断手段32と、この基材切断手段32によって切断されることにより形成されたラベルLを第1受渡位置αに順次搬送するラベル搬送手段33とから構成されている。
【0020】
前記ラベル搬送手段33は、基材切断位置近傍及び第1受渡位置αにそれぞれ設けられたガイドローラ33aと駆動プーリ33bとに掛け渡される、幅方向の中央部に長手方向に沿って多数の吸引孔が一定間隔でそれぞれ形成された2本の搬送ベルト34と、この搬送ベルト34にラベルLを吸引保持させる吸引機構35と、ラベルLをその下端から上端にわたって前記搬送ベルト34に順次密着させることで前記吸引機構35による搬送ベルト34へのラベルLの吸引保持動作を補助する吸引補助手段36とから構成されている。
【0021】
従って、基材切断手段32によって順次切断されることで形成されたラベルLは、その下端部から上端部にわたって、吸引補助手段36によって順次搬送ベルト34に押圧されることで、常時一定の姿勢で搬送ベルト34に吸引保持され、この搬送ベルト34によって第1受渡位置αに確実に搬送される。
【0022】
前記ラベル受渡ユニット40は、図4及び図5に示すように、第1受渡位置αと第2受渡位置βとを通るように一定の回転速度で回転する複数本のテイクアップ部材41を備えており、シート状に折り畳まれた状態で第1受渡位置αに供給されるラベルLを、テイクアップ部材41が吸引保持することによって受け取って、第2受渡位置βまで搬送するようになっている。
【0023】
前記ラベル嵌挿ユニット50は、図5に示すように、回転軸51から放射状に張り出した複数の支持アーム52を介して、回転軸51を中心とした同心円上に一定間隔で取り付けられた多数のラベル嵌挿ヘッド53を備えており、各ラベル嵌挿ヘッド53によって、第2のラベル受渡位置βにおいて受け取ったシート状に折り畳まれた筒状のラベルLが、ボトルBの外径より大きく拡開され、この拡開されたラベルLが、ボトル供給位置γにおいて受け取ったボトルBがボトル送出位置δまで搬送される途中で、ボトルBの胴部に嵌挿されるようになっている。
【0024】
前記ラベル嵌挿ヘッド53は、ボトル供給位置γにおいてボトル供給ユニット20から供給されるボトルBを載置するボトル載置台54と、ラベル受渡ユニット40によって第2受渡位置βに搬送されてきたシート状に折り畳まれたラベルLを受け取って筒状に開口するラベルオープナー55と、このラベルオープナー55によって筒状に開口されたラベルLを、ボトルBの外径より大きく拡開する4本の開閉杆からなるマンドレル56と、このマンドレル56によって拡開されたラベルLを押し下げることによって、ボトル載置台54に載置されたボトルBに嵌挿するラベル押込板57とを備えており、図6(a)に示すように、第2受渡位置βにおいて受け取ったシート状に折り畳まれた状態のラベルLが、同図(b)に示すように、ラベルオープナー55によって筒状に開口された後、同図(c)に示すように、その開口されたラベルLに閉じた状態のマンドレル56が挿入され、続いて、同図(d)に示すように、マンドレル56が開くことによってラベルLがボトルBの外径より大きく拡開され、その後、同図(e)〜(g)に示すように、ボトル供給位置γにおいて受け取ったボトルBがボトル載置台54に保持された状態でボトル送出位置δまで搬送される途中で、マンドレル56によって拡開されたラベルLが、ラベル押込板57によって、ボトルBの胴部に嵌挿されるようになっている。
【0025】
このラベル嵌挿装置2の異常診断システム1は、図1に示すように、ラベル嵌挿装置2のラベル嵌挿ヘッド53の移動経路に設定された診断位置ωにおいて、その診断位置ωを通過する時点におけるラベル嵌挿ヘッド53の処理状態を検出する状態検出手段11と、診断位置ωを通過するラベル嵌挿ヘッド53を識別するヘッド識別手段12と、状態検出手段11によって検出されたラベル嵌挿ヘッド53の処理状態に基づいて、診断位置ωを通過する際にラベル嵌挿ヘッド53の処理状態に異常が発生しているか否かを診断する異常診断手段13と、この異常診断手段13による診断結果を出力する表示手段14とから構成されている。
【0026】
前記状態検出手段11は、図6(c)に示すように、ラベルオープナー55によって筒状に開口され、閉じた状態のマンドレル56が挿入されたラベルL及びボトル載置台54に載置されたボトルBをそれぞれ検出する、光電管等からなるラベル検出センサ11a及びボトル検出センサ11bによって構成されており、ラベル検出センサ11a及びボトル検出センサ11bから出力されるラベル検出信号及びボトル検出信号が異常診断手段13に入力されるようになっている。
【0027】
前記ヘッド識別手段12は、ラベル嵌挿ヘッド53の回転軸51の回転変位を回転角度信号として出力するロータリエンコーダによって構成されており、このロータリエンコーダから出力される回転角度信号が異常診断手段13に入力されるようになっている。
【0028】
ラベル嵌挿ヘッド53の回転軸51が1回転すると、ロータリエンコーダの回転軸が1回転するように設定されており、例えば、ラベル嵌挿ヘッド53の数が30の場合、1番ヘッドは0゜以上12゜未満、2番ヘッドは12゜以上24゜未満…29番ヘッドは336゜以上348゜未満、30番ヘッドは348゜以上360゜未満といった具合に、各ラベル嵌挿ヘッド53毎に回転角度が予め割り付けられている。
【0029】
そして、1番のラベル嵌挿ヘッド53が機械原点を通過する際に、ロータリエンコーダから出力される回転角度信号が1゜になるように、初期設定されており、機械原点を基準とした診断位置ωの相対角度が、機械原点と診断位置ωとの間のヘッド数として予め設定されているので、ラベル嵌挿ヘッド53が診断位置ωを通過する際にロータリエンコーダから出力される回転角度信号に基づいて、どのラベル嵌挿ヘッド53が診断位置ωを通過したのかを識別することができる。
【0030】
前記異常診断手段13は、シーケンスコントローラによって構成されており、各ヘッド番号毎に、そのラベル嵌挿ヘッド53の処理状態に異常が検出された回数(異常検出回数)を記憶する記憶部13aと、ラベル検出センサ11a及びボトル検出センサ11bから出力されるラベル検出信号及びボトル検出信号に基づいて、診断位置ωを通過したラベル嵌挿ヘッド53の処理状態に異常が発生しているか否かを判断し(具体的には、ボトルBが検出されているにも拘わらず、ラベルLを検出することができない場合を異常と判断する)、ラベル嵌挿ヘッド53の処理状態に異常が発生している場合は、その異常が検出された時点、即ち、ラベル嵌挿ヘッド53が診断位置ωを通過する時点において、ヘッド識別手段12であるロータリエンコーダから出力される回転角度信号に基づいて、その処理状態に異常が発生しているラベル嵌挿ヘッド53のヘッド番号を特定する制御部13bと、この制御部13bによって、処理状態に異常が発生したラベル嵌挿ヘッド53のヘッド番号が特定されると、記憶部13aに記憶されている、そのヘッド番号に対応する異常検出回数に1を加算することによって、記憶部13aに記憶されている異常検出回数を更新する集計部13cとを備えており、制御部13bは、各ヘッド番号毎に記憶部13aに記憶されているラベル嵌挿ヘッド53の異常検出回数が更新される度毎に、各ヘッド番号に対応する異常検出回数を表示手段14に出力するようになっている。
【0031】
前記表示手段14は、CRTによって構成されており、この表示手段14には、図2(a)に示すように、ヘッド番号毎に、そのラベル嵌挿ヘッド53の異常検出回数を表示する「異常診断表示画面」が出力されるようになっている。なお、この「異常診断表示画面」の「リセットボタン」を押すと、記憶部13aに各ヘッド番号毎に記憶されているラベル嵌挿ヘッド53の異常検出回数が「0」にリセットされるようになっている。
【0032】
また、前記表示手段14には、同図(b)に示すように、機械原点を基準とした診断位置ωを設定するための「診断位置設定画面」が出力されるようになっている。この「診断位置設定画面」は、同図に示すように、機械原点を通過するラベル嵌挿ヘッド53のヘッド番号が順次反転表示されると共に、そのときにロータリエンコーダから出力される回転角度信号がデジタル表示されるモニタ領域Xと、診断位置ωの変更を設定する設定領域Yとに分割されており、例えば、診断位置ω、即ち、ラベル検出センサ11aによるラベルLの検出位置やボトル検出センサ11bによるボトルBの検出位置を変更したような場合は、変更後の診断位置ωが機械原点から何ヘッド目に相当するのかを、設定領域Yのボタン(1〜16)によって設定するだけで、診断位置ωの変更を簡単に認識させることができる。
【0033】
以上のように、この異常診断システム1では、診断位置ωを通過するラベル嵌挿ヘッド53の処理状態に異常が発生していることが検出されると、そのラベル嵌挿ヘッド53のヘッド番号が特定され、各ラベル嵌挿ヘッド53の異常検出回数が、ヘッド番号毎に表示されるようになっているので、ラベル嵌挿装置2の運転を停止して、異常検出回数の多いラベル嵌挿ヘッド53やそれに関連する箇所だけを点検すれば、異常箇所を即座に発見することができる。
【0034】
従って、従来のように、ラベル嵌挿装置を超低速で運転しながら異常箇所を見つけ出したり、ラベル嵌挿装置の運転状態をビデオテープに撮影し、そのビデオテープをスロー再生しながら、異常箇所を見つけ出すといった面倒で手間のかかる作業が不要となり、ラベル嵌挿装置2の運転停止時間を最小限に抑えつつ、ラベル嵌挿装置2を迅速に正常な状態に復旧させることができる。
【0035】
特に、この異常診断システム1では、各ラベル嵌挿ヘッド53の異常検出回数が、ヘッド番号毎に表示されるようになっているので、異常が検出されているラベル嵌挿ヘッド53であっても、その異常検出回数によって、点検して異常発生の原因となる箇所を修理または交換しなければならない本来の異常なのか、偶然に発生した、本来は異常として取り扱わないような異常なのかを的確に判断することができ、異常発生の原因となる箇所を修理または交換しなければならない本来の異常だけを効率よく解消することができる。
【0036】
また、異常検出回数が少ないため、現時点では本来の異常であると断定することはできないが、その異常検出回数が徐々に増加しているようなラベル嵌挿ヘッド53については、近い将来、致命的な異常に移行することが予測されるので、ラベル嵌挿装置2の運転を正常に停止させたときに、併せて点検し、オーバーホールしておくことによって、致命的な異常の発生を未然に防止することができるという効果も得られる。
【0037】
さらに、どのラベル嵌挿ヘッド53の異常検出回数が多いかを検討することによって、即ち、ある特定のラベル嵌挿ヘッド53の異常検出回数だけが多い場合は、そのラベル嵌挿ヘッド53に異常発生の原因となる箇所が存在している可能性が高く、複数の特定のラベル嵌挿ヘッド53の異常検出回数だけが多い場合、例えば、ラベル受渡ユニット40のテイクアップ部材41の数が10で、ラベル嵌挿ヘッド53の数が20である場合であって、5番ヘッドや15番ヘッドの異常検出回数だけが高い場合は、それらのラベル嵌挿ヘッドに対して選択的に所定の処理を実行している部位、例えば、ラベル受渡ユニット40における、5番ヘッドや15番ヘッドにラベルLを引き渡している特定のテイクアップ部材41等に異常発生の原因となる箇所が存在している可能性が高く、全てのラベル嵌挿ヘッド53の異常検出回数が全体的に多い場合は、全てのラベル嵌挿ヘッド53に対して所定の処理を実行している部位、例えば、ラベル供給ユニット30における基材切断手段32等に異常発生の原因となる箇所が存在している可能性が高いといった具合に、異常検出回数が多いラベル嵌挿ヘッド53にどういった傾向があるのかを検討することによって、ラベル嵌挿装置2におけるどの部分を点検すればよいのかを推定することができるので、効率よく、異常の発生原因を解消することができる。
【0038】
なお、上述した実施形態では、各ラベル嵌挿ヘッド53の異常検出回数を集計して、ヘッド番号毎に表示するようになっているが、これに限定されるものではなく、処理状態に異常が発生しているラベル嵌挿ヘッド53が検出されると、その都度、異常の発生しているラベル嵌挿ヘッド53のヘッド番号を表示するようにしてもよい。
【0039】
また、上述した実施形態では、診断位置ωにおいて、ボトル検出センサ11bによってボトルBが検出されているにも拘わらず、ラベル検出センサ11aによってラベルLを検出することができない場合、そのラベル嵌挿ヘッド53の処理状態に異常が発生していると判断するようになっているが、これに限定されるものではなく、例えば、ラベル嵌挿装置2の運転中に、診断位置ωを通過するラベル嵌挿ヘッド53の処理状態をCCDカメラ等を用いて順次撮影することによって得た画像パターンと、予め、ラベル嵌挿ヘッド53における正常な処理状態を撮影することによって作成しておいた基準画像パターンとを比較し、両者が相違する場合は、そのラベル嵌挿ヘッド53の処理状態に異常が発生していると判断することも可能であり、こういった異常検出方法を採用すると、さらに、細かい異常を検出することが可能となる。
【0040】
また、上述した実施形態では、一つのラベル嵌挿ヘッド53に発生した異常を全て集計するようになっているが、検出センサを増設する等によって、複数の異常項目を個別に検出することができる場合は、それぞれの異常項目毎に異常検出回数を個別に集計することも可能であり、こういった集計方法を採用することによって、さらに、詳細な異常診断を行うことが可能になる。
【0041】
また、上述した実施形態では、各ラベル嵌挿ヘッド53の異常検出回数を集計して、ヘッド番号毎に表示するだけであるが、上述したように、異常検出回数が多いラベル嵌挿ヘッド53にどういった傾向があるのかを検討することによって、ラベル嵌挿装置2におけるどの部分を点検すればよいのかを推定することができるので、異常診断手段13に、ヘッド番号毎に集計された各ラベル嵌挿ヘッド53の異常検出回数に基づいて、異常発生の原因となる部位を判定する判定部を設け、この判定部によって判定された異常発生の原因となる部位を表示手段14に表示するようにしておくと、ラベル嵌挿ヘッド毎に集計された異常検出回数に基づいて、ラベル嵌挿装置におけるどの部分を点検すればよいのかを判断することができないようなメンテナンスマンであっても、効率よく、異常の発生原因を迅速に解消することができるという効果が得られる。
【0042】
また、上述した実施形態では、ラベル検出センサ11a及びボトル検出センサ11bから出力されるラベル検出信号及びボトル検出信号に基づいて、制御部13bが、診断位置ωを通過したラベル嵌挿ヘッド53の処理状態に異常が発生しているか否かを判断しているが、こういった異常判定を行う異常判定部をセンサ側に設け、この異常判定部から制御部13bに異常判定信号を出力するようにしてもよい。ただし、その場合は、上述した記憶部13a、制御部13b、集計部13c及び異常判定部によって、異常診断手段が構成されることになる。
【0043】
また、上述した実施形態では、表示手段14に異常検出回数を表示することで診断結果を報知するようにしているが、これに限定されるものではなく、音声によって報知したり、紙等の記録媒体等に診断結果を出力することによって報知することも可能である。また、診断結果を、通信回線等を利用して送信し、離れた場所(例えば、メンテナンス会社等)に表示させて報知するようにしておくと、遠隔地の技術者等が異常解消に対処することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明にかかる異常診断システムの一実施形態を示すブロック図である。
【図2】(a)は同上の異常診断システムにおける表示手段に表示される異常診断表示画面を示す図、(b)は同上の表示手段に表示される診断位置設定画面を示す図である。
【図3】同上の異常診断システムによって異常診断を行うラベル嵌挿装置を示す概略構成図である。
【図4】同上のラベル嵌挿装置におけるラベル供給ユニットを示す概略図である。
【図5】同上のラベル嵌挿装置におけるラベル受渡ユニット及びラベル嵌挿ユニットを示す概略図である。
【図6】(a)〜(g)は同上のラベル嵌挿装置におけるラベル嵌挿ヘッドの動作を示す動作説明図である。
【符号の説明】
1 異常診断システム
2 ラベル嵌挿装置
11 状態検出手段
11a ラベル検出センサ
11b ボトル検出センサ
12 ヘッド識別手段
13 異常診断手段
13a 記憶部
13b 制御部
13c 集計部
14 表示手段
20 ボトル供給ユニット
30 ラベル供給ユニット
40 ラベル受渡ユニット
50 ラベル嵌挿ユニット
53 ラベル嵌挿ヘッド
54 ボトル載置台
55 ラベルオープナー
56 マンドレル
57 ラベル押込板
ω 診断位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のラベル及びこのラベルが嵌挿される被嵌挿体を受け取って、前記被嵌挿体に前記ラベルを嵌挿するようになっている複数のラベル嵌挿ヘッドを備えたロータリ式のラベル嵌挿装置の異常診断システムであって、
前記ラベル嵌挿ヘッドの移動経路に設定された診断位置において、その診断位置を通過する時点における前記ラベル嵌挿ヘッドの処理状態を検出する状態検出手段と、
前記診断位置を通過する前記ラベル嵌挿ヘッドを識別するヘッド識別手段と、
前記状態検出手段によって検出された前記ラベル嵌挿ヘッドの処理状態に基づいて、前記診断位置を通過したラベル嵌挿ヘッドの処理状態に異常が発生しているか否かを診断する異常診断手段と、
複数の前記ラベル嵌挿ヘッドのうち、どのラベル嵌挿ヘッドの処理状態に異常が発生しているのかを報知する報知手段と
を備えていることを特徴とするラベル嵌挿装置の異常診断システム。
【請求項2】
前記異常診断手段は、前記ラベル嵌挿ヘッド毎に、それぞれの異常検出回数を集計する集計部を有し、
前記報知手段は、前記ラベル嵌挿ヘッド毎に集計された異常検出回数を報知するようになっている請求項1に記載のラベル嵌挿装置の異常診断システム。
【請求項3】
前記異常診断手段は、前記ラベル嵌挿ヘッド毎に集計された異常検出回数に基づいて、異常発生の原因となる部位を判定する判定部を有し、
前記報知手段は、前記判定部によって判定された異常発生の原因となる部位を報知するようになっている請求項2に記載のラベル嵌挿装置の異常診断システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2004−142754(P2004−142754A)
【公開日】平成16年5月20日(2004.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−307211(P2002−307211)
【出願日】平成14年10月22日(2002.10.22)
【出願人】(000238005)株式会社フジシール (641)