説明

ラムエアファン装置およびその冷却方法

【課題】航空機の環境制御システムにおけるラムエアファン(RAF)モータ20の冷却性を改善する。
【解決手段】航空機が地上にあるときなどにラムエアを補うためのラムエアファン装置10は、ファン入口14に配置されたRAF12と、RAFシャフト22を介して接続されたRAFモータ20と、を含む。入口ヘッダとファン入口14との間の圧力差によって、RAFモータ20を通過して冷却流32が流れ、RAFモータ20のベアリングやステータ巻線28を冷却する。RAFハブ38とキャップ44との間に、複数のブロワブレード50からなるブロワ46が配置されており、RAFハブ38の冷却用開口部42を通過した軸方向の冷却流32を半径方向外側へ向かうブロワ流52に方向変換する。これにより、冷却流32の流量が増加し、RAFモータ20の冷却が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、航空機の環境制御システムに関し、より詳しくは、航空機の環境制御システムにおけるラムエアファンモータの冷却に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の形式の航空機において、ラムエアの流れが様々な目的のために用いられ、例えば、航空機の冷却システム内で用いられる。例えば、航空機の種々の潤滑システムや電気システムから熱を除去したり、航空機のキャビン空気を調和するために、ラムエアの流れが用いられる。航空機の飛行中は、航空機の動きによって十分な空気流源が生成され、得られたラムエアの流れを上述したような目的で使用することができる。しかし、航空機が地上にあるとき、あるいは低速で動作しているときには、冷却システムへの空気流を増大させるために、一般にファンが用いられる。このようなファンは電気モータで駆動されるが、このモータには、内部を通る空気流を用いた冷却が必要となる。冷却流は、熱交換器の入口から引き出され、電気モータの内部を横切って、ラムファン入口へと流れる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような冷却空気の流れ、ひいては電気モータの性能ならびにラムエアファンの性能は、一般に、熱交換器入口からラムファン入口への圧力低下によって制限されてしまう。つまり、このような制限によって、ラムエア流システムの性能が低減する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一つの態様によれば、本発明に係るラムエアファン装置は、ファン入口に配置されたラムエアファンと、このラムエアファンに機能的に接続されたラムエアファンモータと、を備える。ブロワが上記ラムエアファンに機能的に接続されており、このブロワは、ラムエアファンモータを通過した冷却流を実質的に軸方向の流れから実質的に半径方向の流れに方向変換するように構成され、これによりラムエアファンモータを通過する冷却流を増加させる。
【0005】
本発明の他の一つの態様によれば、本発明に係るラムエアファン装置の冷却方法は、ファン入口に配置されるラムエアファンと、該ラムエアファンに機能的に接続されるラムエアファンモータと、を提供することを含む。ラムエアファンモータへ向けて冷却流が付勢され、この冷却流は、上記ラムエアファンモータを通過するように案内され、これによって上記ラムエアファンモータから熱エネルギが除去される。上記冷却流は、上記ラムエアファンモータに機能的に接続されたブロワを横切って進み、これによって上記冷却流は上記ファン入口へ向けて実質的に半径方向外側へ案内される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】この発明に係るラムエアファン装置の一実施例を示す断面図。
【図2】このラムエアファン装置の要部を拡大して示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1は、航空機の環境制御システム(ECS)におけるラムエアファン装置10を示している。このラムエアファン装置10は、ファン入口14に配置されたラムエアファン(以下、RAFと略記する)12を含む。ラムエア流16は、ファン入口14に流入し、かつファン通路54を通って、図示せぬ熱交換器あるいは外部へと流れる。
【0008】
RAF12は、RAFシャフト22を介してRAFモータ20に機能的に接続されている。RAFモータ20は、モータハウジング56内に配置された電気モータであって、RAFシャフト22とともに回転するロータ24と、このロータ24の外周側に配置された複数個のステータ巻線28を有するステータ26と、から構成されている。RAFモータ20は、さらに、RAFシャフト22を支持するように配置された1つあるいは複数のベアリング30を備えている。RAF12およびRAFモータ20は、ファン入口14に流入する自然な空気流16が航空機の要求を十分に満たし得ないときに、空気流16を補うように付勢するために用いられる。RAFモータ20の過熱、特にステータ巻線28およびベアリング30の過熱を防止するために、冷却流32がモータハウジング56を通して引き込まれ、RAFモータ20を横切って流れる。冷却流32は、入口ヘッダ36を通して引き込まれる。この冷却流32は、RAFモータ20を横切って流れ、ステータ巻線28およびベアリング30を通過してこれらから熱エネルギを除去し、かつ、ファン入口14へと流出する。この冷却流32は、基本的に、入口ヘッダ36とファン入口14との間の圧力差によって駆動される。
【0009】
図2は、RAF12の詳細を示している。RAF12は、RAFシャフト22上に配置されたRAFハブ38と、このRAFハブ38に固定された複数のRAFブレード40と、を備え、上記RAFブレード40は、ファン入口14を横切るように延びている。RAFハブ38は、該RAFハブ38を貫通した複数の冷却用開口部42を有し、RAFモータ20からファン入口14へ向かって流れる冷却流32が流れ出るようになっている。ファン入口14のRAF12の上流側には、キャップ44が配置されており、流入してくるラムエア流16をファン入口14へ向かって案内している。RAFシャフト22上において、軸方向でRAFハブ38とキャップ44との間には、ブロワ46が配置されている。このブロワ46は、複数のブロワブレード50が設けられたブロワハブ48を有し、上記ブロワブレード50は、ブロワハブ48の周囲の回りに配置されている。このブロワブレード50は、RAFハブ38から流れてくる実質的に軸方向の冷却流32を、ファン入口14へ向かう実質的に半径方向外側を指向したブロワ流52に再方向変換するように構成されている。ブロワ流52がファン入口14へ向かって案内されると、RAFブレード40がこのブロワ流52を付勢し、ファン通路54を通して図示せぬ熱交換器あるいは外部へと送る。このようにブロワ46をRAF12内に備えることで、入口ヘッダ36とファン入口14との間の圧力差が増加し、RAFモータ20を横切って流れる冷却流32の質量流量が増加する。そして、このように圧力差および質量流量が増加することにより、RAFモータ20の冷却が向上し、さらにRAF12および環境制御システムの性能が向上する。
【0010】
以上、この発明の一実施例を説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファン入口に配置されたラムエアファンと、
このラムエアファンに機能的に接続されたラムエアファンモータと、
上記ラムエアファンに機能的に接続され、ラムエアファンモータを通過した冷却流を実質的に軸方向の流れから実質的に半径方向の流れに方向変換し、これによりラムエアファンモータを通過する冷却流を増加させるように構成されたブロワと、
を備えたことを特徴とするラムエアファン装置。
【請求項2】
上記ブロワは、上記ラムエアファンに固定されたブロワハブと、このブロワハブから延びた複数のブロワブレードと、を有し、上記複数のブロワブレードが上記冷却流を方向変換するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のラムエアファン装置。
【請求項3】
上記ファン入口において上記ラムエアファンの上流側に配置されたキャップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のラムエアファン装置。
【請求項4】
上記ブロワは、軸方向で上記ラムエアファンと上記キャップとの間に配置されていることを特徴とする請求項3に記載のラムエアファン装置。
【請求項5】
上記ラムエアファンモータはモータハウジング内に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のラムエアファン装置。
【請求項6】
上記冷却流は上記モータハウジング内を通して案内されることを特徴とする請求項5に記載のラムエアファン装置。
【請求項7】
上記ラムエアファンはラムエアファンシャフトを介して上記ラムエアファンモータに機能的に接続されていることを特徴とする請求項1に記載のラムエアファン装置。
【請求項8】
上記ラムエアファンは、
ラムエアファンシャフトと、
このラムエアファンシャフトに配置されたラムエアファンハブと、
このラムエアファンハブから延び、少なくとも部分的に上記ファン入口を横切る複数のラムエアファンブレードと、
を備えてなる請求項1に記載のラムエアファン装置。
【請求項9】
上記ラムエアファンモータからの冷却流が通過できるように上記ラムエアファンハブを貫通した複数の冷却用開口部をさらに備えることを特徴とする請求項8に記載のラムエアファン装置。
【請求項10】
ファン入口に配置されるラムエアファンおよび該ラムエアファンに機能的に接続されるラムエアファンモータを提供し、
上記ラムエアファンモータへ向けて冷却流を付勢し、
上記ラムエアファンモータを通過するように冷却流を案内し、この冷却流を介して上記ラムエアファンモータから熱エネルギを除去し、
上記ラムエアファンモータに機能的に接続されたブロワを横切って上記冷却流を流し、これによって上記冷却流を上記ファン入口へ向けて実質的に半径方向外側へ案内する、
ことを特徴とするラムエアファン装置の冷却方法。
【請求項11】
上記のブロワを横切って冷却流を流すことは、ブロワハブに配置された複数のブロワブレードを横切って冷却流を流すことからなり、これによって冷却流を実質的に半径方向外側へ案内することを特徴とする請求項10に記載のラムエアファン装置の冷却方法。
【請求項12】
上記ラムエアファンモータのステータを横切って流れるように冷却流を付勢し、この冷却流を介してステータから熱エネルギを除去する、ことをさらに含む請求項10に記載のラムエアファン装置の冷却方法。
【請求項13】
上記ラムエアファンに設けられた複数の冷却用開口部を通して冷却流を上記ブロワへ向けて付勢することをさらに含む請求項10に記載のラムエアファン装置の冷却方法。
【請求項14】
上記冷却流を上記ファン入口へと付勢することをさらに含む請求項10に記載のラムエアファン装置の冷却方法。
【請求項15】
上記冷却流は上記ラムエアファンによって付勢されることを特徴とする請求項10に記載のラムエアファン装置の冷却方法。
【請求項16】
入口ヘッダを介して上記冷却流を上記ラムエアファンモータへ向けて案内することをさらに含む請求項10に記載のラムエアファン装置の冷却方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−25382(P2012−25382A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150542(P2011−150542)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(500107762)ハミルトン・サンドストランド・コーポレイション (165)
【氏名又は名称原語表記】HAMILTON SUNDSTRAND CORPORATION
【住所又は居所原語表記】One Hamilton Road, Windsor Locks, CT 06096−1010, U.S.A.