説明

ラムサンガムを含有する局所用眼科用組成物

【発明の詳細な説明】
本発明は、皮膚或いは粘膜、特に結膜に対して活性成分が徐々に、かつ段階的に放出されるような製剤で、局所施用に使用される薬用及び/或いは化粧用組成物に関するものである。
眼科用の製剤における主要な滲透経路の1つは角膜である。角膜は実質的には非血管性であるが、すべての水溶性物質を滲透させ得る繊維性の膜である。
眼科用組成物が適用される結膜は粘膜によって保護されている。眼への薬剤施用から結膜への接触時間を長びかせるための、各種の方法が知られている。眼の外角部に眼洗浄薬を点滴する方法によって、涙液の排出を遅らせ得ることが長い間知られている。また、眼洗浄薬を眼の中に長くとどまらせておくために、種々の溶液、ゲル、眼科用軟膏、さらには眼への埋没などの方法を用いることが知られている。
眼科用組成物と結膜との接触時間を長びかせるために、特別の補助剤、たとえばガムやポリマーを使用することも推奨されている。例えば、シー・ローゼンブラム(C.Rosenblum)等(Arch Ophthal,77;234−237,1967)は、眼の組織によるデキサメタゾンの全身的な吸収を増加させる方法として、ヒドロキシエチルセルローズの使用について報告している。
ワイ・エフ・マイチャク(Y.F.Maichuk)(Am.J.Ophthal,74;694,1972)は、ポリビニルアルコールの使用が、エリスロシンプロピオネートやサルファピリダジンナトリウム塩のような薬剤の薬理学的効果を増強すると報告している。同様にグアーガムが、角膜を通してトロピカミドの吸収を増加させることを報告している[リー(Lee)等,J.Pharm.Sci.63;721,1974)。
ガムとポリマーを組み合わせて使用することも、とくに殺菌用洗浄剤、催滑剤、及び湿展剤などの場合について述べられている。従って、例えばドイツ特許第2,051,369号は、ポリエチレングリコール、ポリ(エチレンオキサイド)及び眼科用薬剤を含む溶液について記載している。同様に、英国特許第1,337,105号は、眼の洗浄に使用するための異なるポリマーの組合せについて記載しており、これはヒドロキシエチルセルローズトとポリビニルアルコールを含んでいる。
他の例は、英国特許第1,340,518号に関するものであり、眼科用薬剤、ポリアルキレングリコール、セルローズ誘導体或いはこれらの誘導体の混合物、好ましくはポリビニルピロリドンを含む眼科用組成物について記載している。
同様に、米国特許第3,944,427号及び第3,700,451号は、ゲル状、或いはゲル化可能の組成物について記載しており、これらは治療用溶液の賦形剤に用いられる液体媒質中に寒天、キサンサンガム及びカロブガムを含んでいる。米国特許第4,136,177号も、眼科用組成物中にキサンサンガムを使用することを記載している。
しかしながら、キサンサンガムは特に加熱条件下で変質するという欠点を有する;この種の不安定性は、眼科用洗浄剤の製剤に要求されるオートクレーブでの殺菌に対する適合性を得ることを困難ならしめる。
本発明はラムサンガムを含有することを特徴とする皮膚或いは粘膜に使用するための薬用及び/或いは化粧用組成物に関するものである。驚くべきことに、実際にラムサンガムは皮膚或いは粘膜に適用するように製剤された薬用及び/或いは化粧用組成物の作用時間を延長させることが認められている。
特に眼科用組成物の場合には、ラムサンガムはこの組成物の前角膜部、すなわち結膜部分における滞溜時間を、実質的に著しく延長させる。
したがって、薬剤の生体内利用性は大巾に改善され、それにともなって副作用の実質的、平行的な減少を可能ならしめる。
さらに、ラムサンガムは特異的な熱安定性を示す;この安定性により本発明による組成物はオートクレーブで殺菌することが可能である。
ラムサンガムは、本発明による組成物に高粘性或いは低粘性の粘稠性、あるいはゲルの粘稠性をも付与させるが、この粘稠性は本組成物中のポリマーの濃度に依存するものである。
ラムサンガムは、微生物ATCC31961によって細胞外に生産される陰イオン性のヘテロポリサッカライドである。
このポリマーはケルコ(Kelco)社が製造している。これはコード番号S−194或いはKIA112として知られている。これは米国特許第4,401,760号に記載されている。
その構造は、線状のテトラサッカライド骨格に、ジサッカライドの側鎖が付いたもので下記によって示される。


本発明によって使用されるラムサンガムは、精製品グレードのものを用いるのが好ましい。
本発明による組成物は、望ましくはラムサンガムを重量比で0.05%から3%の範囲で含有する。
これらの組成物の粘度は、ガムの含量比によって増加し、最高の濃度ではゲルとなる。
本発明による好ましい組成物は、眼科用組成物である。これらの眼科用組成物は、非常に広い範囲の適用場面に使用されるが、特に眼への十分な水分補給(眼の乾燥症状の処置)の維持に用いられる。本発明による眼科用組成物は、特に治療用或いは診断用のための薬理学的活性物質の適用に好適である。
本発明は、特に少なくとも1種の薬理学的活性物質を重量比で、0.001%から5%の範囲で含有する眼科用組成物に関するものである。薬理学的活性物質としては、1種或いはそれ以上の薬剤があることは云うまでもない。
本発明にかかる組成物には水溶性の物質が好適であるが、しかし、油溶性の活性物質も適用することができ、特に本発明のポリサッカライド水溶液中への懸濁液、或いは乳濁液の形として適用される。
水溶性物質のうち、ある種のものは本発明にかかわるポリサッカライドの水溶液により容易に溶解されるので、これらの物質の使用は特に好適である。
本発明による組成物は、主として眼科用組成物に関するものであるが、本発明はラムサンガムを含む他のすべての薬用組成物にも関する。したがって、本発明による有効成分の放出に関する薬剤施用は、内部的及び/或いは外部的に、特に局所的、経口的、鼻及び頬を通じて適用することができる。
下記の参考例によって、さらに特徴と有用性を説明する:実施例 1カーボネートデヒドラターゼ抑制剤の放出用組成物 グラム当たりL 651,465−00X 20.6 mgラムサン 6.00 mg酢酸ナトリウム・3水塩 8.98 mgナトリウムエデテート 0.50 mg塩化ベンザルコニウム 0.011mg塩酸(0.1規定液) 4.760mg注射用水 1gとする量 L−650,719(活性化された代謝物)の濃度は、増粘剤として広く使用されているヒドロキシエチルセルローズQP52000Hの0.5%を含む及びラムサンガム0.6%を含むL−651,465の2%濃度の各製剤50μ■を、無麻酔のアルビノラットに1回点注した後、眼房水中濃度として測定する。下記の結果は、ラムサンガムを用いることによって薬剤の生体内利用性が有意に増加していることを示している。


実施例 2溶液中にチモロールを含む組成物チモロール(マレイン酸塩) 0.250gラムサンガム 0.600g一塩基性燐酸ナトリウム 0.721g二塩基性燐酸ナトリウム 1.158g塩化ベンザルコニウム 0.010g蒸 留 水 100mlとする量実施例 3ゲル状のチモロール放出用薬剤チモロール(マレイン酸塩) 0.250gラムサンガム 3.000g一塩基性燐酸ナトリウム 0.721g二塩基性燐酸ナトリウム 1.158g塩化ベンザルコニウム 0.010g蒸 留 水 100gとする量実施例 4ゲル状のノルフロキサシンを含有する組成物ノルフロキサシン 0.300 gラムサン 3.000 gEDTA・2ナトリウム 0.010 g酢酸ナトリウム・3水塩 0.0025g塩化ザルコニウム 0.0272g塩化ナトリウム 0.742 g塩酸を用いてpH5.2−6に調整蒸 溜 水 100gとする量 上記の実施例、特に表に示された結果は、本発明によるラムサンガムを含有する組成物における薬理学的効果の延長を明らかに立証している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】ラムサンガムを含有する眼科用組成物。
【請求項2】ラムサンガムを重量比で0.05%から3%の範囲で含むことを特徴とする請求項1に記載の眼科用組成物。
【請求項3】少なくとも1つの薬理学的な活性を有する有効成分を重量比で0.001%から5%の範囲で含有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。

【特許番号】第2634436号
【登録日】平成9年(1997)4月25日
【発行日】平成9年(1997)7月23日
【国際特許分類】
【出願番号】特願昭63−178292
【出願日】昭和63年(1988)7月19日
【公開番号】特開平1−34926
【公開日】平成1年(1989)2月6日
【出願人】(999999999)
【参考文献】
【文献】特開 昭58−78597(JP,A)