説明

ランセット

本発明は、頂面1cと底面1bとを有する平坦柄部1であって、該柄部1は前端2にて、尖端2において終端するブレード1aを形成し、上記ブレード1aは上記底面1bにて、上記尖端2において収束する2つの切断用縁部4を有する平坦柄部1を備えて成るランセットであって、上記柄部1は、その底面1b上に、サンプルを採取するための少なくとも1つの凹所3を有するランセットに関する。本発明に依れば、上記柄部1は、その頂面1cにて、頂点6において収束する2つの縁部5にて上記ブレード1aへと遷移し、且つ、上記ブレード1aの上記頂面1cは、横断面で見て、上記頂点6と上記前端2との間において凸状に湾曲される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に示された特徴を有するランセットに基づいている。
【背景技術】
【0002】
斯かるランセットは、特許文献1から知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2005/084545号
【特許文献2】欧州特許出願公開第1 709 906号
【特許文献3】米国特許出願公開第2008/0262388号
【特許文献4】国際公開第2008/083844号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ランセットの開発における不断の目的は、可及的に痛覚を最小限とし乍らサンプルを採取することを許容することである。本発明の課題は、この目的が更に良好に実現され得る様式を示すことである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、請求項1において示された特徴を有するランセットにより解決される。本発明の好適な改善例は、従属請求項の主題である。
【0006】
本発明に係るランセットは、頂面と底面とを備えて成る平坦柄部を有し、これらの2つの面は、上記柄部の長手方向に延在する各狭幅側面を介して相互に接続される。斯かる柄部は、例えば、少ない労力及び費用を以て、板金で作成され得る。前端にて、本発明に係るランセットの柄部は、尖端にて終端するブレードを形成する。該ブレードは、その底面において、上記尖端において収束する2つの切断用縁部を有する。上記底面上に、上記柄部は、サンプルを採取するための少なくとも1つの凹所を備えて成る。好適には、この凹所は溝として構成される。溝の代わりに、又は、それに加え、上記柄部の底面上には、例えば盲孔などの、他の形状を有する凹所が配置され得る。
【0007】
本発明に係るランセットにおいて、上記ブレードは、上記頂面にて、頂点において収束する2つの縁部により境界決定される。横断面で見て、上記ブレードの上記頂面は、上記頂点と上記前端との間において凸状である。このことは、上記長手方向を横切る方向から見て、上記ブレードは上記頂点と上記前端との間において凸状の頂面を有することを意味している。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るブレードの特別の形状に依れば、特許文献1から知られるランセットであって、そのブレードは、複数の平面的な表面と、当該柄部の長手方向に対して直交して延在する単一の上縁部とにより境界決定されるランセットにより可能であるよりも少ない痛覚を以て、穿刺することが許容される。
【0009】
本発明に係るランセットの驚異的に好適な特性は、おそらく、穿刺の間において、痛覚的な圧力波の形成が可能的な最大限まで回避され得るという事実に起因し得る。本発明に係るランセットが患者の身体組織内へと貫通するとき、上記ブレードの凸状の頂面により、上記ランセット柄部の厚みまで穏やかに拡大される穿刺チャネルが生成される。上記ブレードは、上記頂面上で収束する2つの縁部により境界決定されると共に、横断面で見て、該ブレードの頂面は上記頂点と上記前端との間において凸状であることから、上記穿刺チャネルは、先ず、上記ランセット柄部の幅の一部分に亙ってのみ、該ランセット柄部の全厚まで拡大される。上記ランセットが更に貫通する間、上記穿刺チャネルはその後、上記ランセット柄部の幅の次第に増大する部分に亙り、該ランセット柄部の全厚まで拡大される。このことは、全厚に到達したときに、穿刺チャネルは同時に全幅までも拡大される、という特許文献1から知られるランセットと比較したときの本質的な改良点である。
【0010】
ランセットは有限の厚み及び幅を有することから、穿刺が行われるときに、穿刺方向を横切る方向においては、周囲組織に対しても圧力が及ぼされる。しかし、本発明に係るランセットにおいて、この圧力は好適には、実用的には専ら、上記ブレードの凸状の頂面、及び、それに隣接して配置された上記柄部の頂面から及ぼされる。このことはおそらく、上記柄部の底面に当接して着座している組織は更に少ない程度だけ圧縮される結果となり、この故に、体液は、上記柄部の底面に当接して着座している上記組織から特に容易に漏出し得ると共に、該体液は、サンプルを採取する目的で上記柄部の底面上に配備された上記凹所を充填し得る。
【0011】
本発明の好適な改善例によれば、上記ブレードは、上記頂点から上記前端まで延在するラインに沿い、凹状である。この措置は、穿刺に関連する痛覚の更なる減少に寄与する。すなわち、この様にして、上記尖端から見て上記ブレードの厚みは、最初は比較的に穏やかにのみ増大し、引き続き、更に急速に増大する。故に、上記ブレードの厚みは前部領域において減少される。上記ランセットの穿刺の場合、身体組織は最初に大きな抵抗を呈するが、上記ランセットが前進する間に該抵抗は低減することが想定される。本発明に係る形状を有するブレードに依れば、ランセットが身体組織内へと貫通するために必要とする力は、好適に低減されることから、痛みの感覚も低減される。好適には、本発明に係るランセットのブレードは、長手方向において凹状であり、且つ、横方向において凸状である。
【0012】
まさに上記尖端による場合と同様に、上記頂点は好適には、上記柄部の幅の中央に配設される。但し、上記頂点及び/又は上記尖端は上記中央からオフセットして配置される結果、上記ブレードの2つの切断用縁部又は2つの上縁部が異なる長さを備えて成ることも可能である。斯かる場合、上記頂点から上記前端までの上記ラインは、厳密に上記柄部の長手方向ではなく、それに関して僅かに傾斜された角度にて延在する。
【0013】
本発明の更に好適な改善例によれば、上記ブレードの上記上縁部は、各切断用縁部よりも後方まで延在する。この様にして、穿刺に関する痛覚は更に低減され得る。その場合、上記ブレードは好適には、切断用縁部の後端部を、各上縁部の内の一方の上縁部の後端部に対して接続する各側縁部により境界決定される。好適には、上記各側縁部は、上記ブレードの背後に延在する上記柄部の底縁部に対して鋭角を画成し、その場合に該角度は例えば、10°〜60°、特に15°〜35°に亙り得る。
【0014】
本発明の更に好適な改善例に依れば、サンプルを採取するために配備された上記凹所は、溝として構成される。好適には、この溝は、上記柄部の前端から所定距離にて終端し、特に上記頂点と上記柄部の前端との間にて終端する。最も好適には、上記溝は、上記各切断用縁部間に配置された区画を有し、該区画において上記溝の断面積は上記前端に向けて減少する。上記溝の断面積は、上記ブレードの領域において、該溝の幅又は深度、好適には幅及び深度の両方における減少により減少し得る。好適には、上記断面積、すなわち上記幅及び/又は深度は、上記溝の最大幅を超える長さに沿い減少する。この様にして、上記溝は、上記ブレードの機械的安定性が阻害されることなく、該ブレードの前端の近傍まで到達し得る。
【0015】
上記溝の端部にて、上記ブレードの厚みは好適には、上記柄部の厚みの2/3未満、特に半分以下である。上記溝の端部にて、上記ブレードの幅は最も好適には、上記柄部の幅の2/3未満、特に半分以下である。上記ブレードの背後にて、上記溝の深度は好適には、上記柄部の厚みの半分以下である。
【0016】
通常、毛管力により流体を搬送するためには、毛管の断面が増大しないことが必要である、と言うのも、増大する毛管内への流体の浸透は、流体と空気との間の境界面が増大することから、エネルギ的な観点からは不都合だからである。この故に、上記溝の先細状区画は、サンプルの採取に寄与し得ないことが想定され得る。しかし驚くべきことに、これは事実ではない。上記溝が、上記ブレードの端部に向けて減少する断面積を有する場合、サンプルを採取するために必要とされる穿刺深度は、減少され得る。この故に、本発明に係るランセットによるサンプルの採取には好適には、関連する痛覚が少ない。
【0017】
故に、上記ランセットの底面上に、上記前端に向けて断面積が減少する溝を配備する本発明の態様もまた、独立的な重要性を有する。この故に本発明は、頂面と底面とを有する平坦柄部であって、該柄部は前端にて、尖端にて終端するブレードを形成し、上記ブレードは上記底面にて、上記尖端において収束する2つの切断用縁部を有する平坦柄部を備えて成るランセットであって、上記柄部は、その底面上に、サンプルを採取するための少なくとも1つの溝を備えて成るランセットにおいて、上記溝は、各切断用縁部間に配置された区画を備えて成り、その区画において上記溝の断面積は上記前端に向けて減少するランセットにも関する。好適には、上記断面積は、上記溝の幅を超え、更に好適には上記柄部の厚みを超え、特に上記柄部の幅を超える長さに沿い減少する。
【0018】
サンプルを採取すべく上記柄部の底面上に配置された溝を有する本発明に係るランセットもまた格別の利点を有する、と言うのも、上記溝の閉塞の虞れ、又は、該溝内に収容された親水的な被覆の阻害の虞れが低減されるからである。
【0019】
好適には、本発明に係るランセットは、金属、好適には鋼鉄から作製される。その場合、上記ランセットの上記柄部に対しては、板金の帯片が使用される。上記ブレード、及び、サンプルを採取する1つ又は複数の凹所は、エッチング、好適には湿式化学エッチングにより形成され得る。これを達成するために、板金の帯片は、全ての側面上でフォトレジストにより被覆され得る。適切な様式で露光すると共に、上記フォトレジストを洗浄することにより、後者は、サンプルを採取する上記少なくとも1つの凹所を形成することが意図された箇所にて、上記底面から除去され得る。上記頂面にて、上記フォトレジストは、後時的に上記ブレードの各上縁部を形成する2つのV形状ラインの前方の領域全体において除去され得る。これに加え、上記フォトレジストは、頂部から底部まで延在するラインであって、後時的に上記ブレードの側方の境界決定縁部を形成するラインの前方の領域における各狭幅側面において、除去され得る。引き続くエッチング剤の作用により、本発明に係る上記ブレードの形状が生成され得る。但し代替策として、本発明に係るランセットは、例えば、レーザ光切断により作製され得る。
【0020】
好適には、本発明に係るランセットに依れば、皮膚の下方からサンプルを採取することが許容される。故に、皮膚表面における汚染の虞れは回避され得る。このことは、特にグルコース濃度の決定において重要な利点である、と言うのも、例えば甘いデザートを食べた後、皮膚上に糖質が見出されることが多いからである。皮下的なサンプルの採取を可能とするために、ランセットの後退運動が前進運動よりも低速に行われる穿刺デバイスが好適に使用され得る。適切な穿刺駆動器を備えたデバイスは、特許文献2及び特許文献3に記述されている。
【0021】
故に、本発明の1つの態様は、本発明に係るランセットと、穿刺の間における上記ランセットの前進運動を、且つ、引き続き後退運動を引き起こす穿刺デバイスであって、上記後退運動は上記前進運動よりも低速である穿刺デバイスとを備えて成る、穿刺システムに関する。上記後退運動の最初の区画において、上記ランセットは好適には、引き続く第2の区画におけるよりも高速に引抜かれる。この様にして、上記ランセットは、痛覚に敏感な身体組織内には可及的に短い時間だけ留まるが、例えば表皮の角質層などの痛覚に敏感でない身体組織には、サンプルを採取する目的で長時間に亙り留まる。
【0022】
本発明に係るランセットは、身体組織を通る穿刺の場合、そのブレードが、穿刺方向を横切る方向に偏向され、その底面に向けて屈曲される如く形成され得る。次に、上記後退運動の間において、上記ブレードの底面と上記組織との間にはキャビティが形成され、該キャビティは体液により迅速に充填される。低速の後退運動の間、又は、上記後退運動の低速な区画の間において、上記ランセットの底面上に配置された上記凹所は好適に、サンプルを採取し得る。上記ブレードの底面と周囲の身体組織との間におけるキャビティの形成は、穿刺の間に生ずる組織の移動又は圧縮によっても引き起こされ得る。
【0023】
この故に、穿刺の間において屈曲されるランセットであって、その底面上にサンプルを採取するための凹所を備えて成るランセットに依れば、更に良好な様式でサンプルを採取することが許容される。故に、独立的な重要性も有し得る本発明の1つの態様は、頂面と底面とを有する平坦柄部であって、該柄部は前端にて、尖端にて終端するブレードを形成し、上記ブレードは上記底面にて、上記尖端において収束する2つの切断用縁部を有する平坦柄部を備えて成るランセットであって、上記柄部は、その底面上に、サンプルを採取するための少なくとも1つの凹所を有するランセットにおいて、上記柄部は、0.1kNmm2(キロニュートンと平方ミリメートルとの積)未満、好適には0.05kNmm2未満、特に0.03〜0.001kNmm2未満の曲げ剛性を有するランセットに関する。
【0024】
上記曲げ剛性は、材料の弾性率と、ランセット柄部の断面二次モーメントとの積である。矩形状の横断面を有する柄部において、断面二次モーメントは、aを柄部厚み、且つ、bを柄部幅として、I=a3b/12である。矩形状の横断面を有する平坦なランセットにおいて、断面二次モーメントは、故に曲げ剛性は、上記溝の故に幾分か減少される。
【0025】
好適には上記柄部は、金属、更に好適には鋼鉄で作成される。但し代替策として、プラスチックも使用され得る。好適には上記柄部は、0.5mm未満、例えば0.2mm〜0.4mmの幅を有する。好適には上記柄部の厚みは、0.3mm未満、更に好適には0.2mm〜0.05mm、最も好適には0.20mm〜0.08mmである。
【0026】
本発明の更なる詳細及び利点は、添付図面を参照して好適実施形態により例証される。その場合、等しい対応部材は一貫した記号により表される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係るランセットの好適実施形態の底面図である。
【図2】図1の側面図である。
【図3】図1に示されたランセットの平面図である。
【図4】上記ランセットの斜視図である。
【図5】図3の横断線AAによる断面図である。
【図6】図3の横断線BBによる断面図である。
【図7】図3の横断線CCによる断面図である。
【図8】図3の横断線DDによる断面図である。
【図9】図3の横断線EEによる断面図である。
【図10】図3の横断線FFによる断面図である。
【図11】図3の横断線GGによる断面図である。
【図12】無菌保護箔体を穿刺している本発明に係るランセットの好適実施形態を示す図である。
【図13】担体テープ上における本発明に係るランセットの好適実施形態を示す図である。
【図14】本発明に係るランセットの更なる好適実施形態を示す図である。
【図15】図14の断面図である。
【図16】本発明に係るランセットの更なる好適実施形態を示す図である。
【図17】図16の断面図である。
【図18】本発明に係るランセットの更なる好適実施形態を示す図である。
【図19】図18の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1乃至図11に概略的に示されるランセットは、尖端2にて終端するブレード1aを自身の前端にて形成する平坦な柄部1を有している。柄部1は、図1に示された底面1bと、図3に示された頂面1cとを有している。底面1b及び頂面1cは、柄部1の長手方向に延在する各狭幅側面1dを介して相互に接続される。
【0029】
その底面1b上にて、柄部1は、サンプルを採取するための凹所3を備えて成る。好適には、この凹所3は溝として構成される。但し、例えば、底面1b上に刳られた盲孔として配置された複数の凹所を使用することも可能である。
【0030】
ブレード1aは、尖端2において収束する2つの下縁部を有する。これらの下縁部は、切断用縁部4として構成される。示された好適実施形態において各切断用縁部4は、楔状に収束すると共に、鋭角を画成する。好適には、各切断用縁部4は、60°未満、好適には45°未満、更に好適には40°未満の角度を画成する。好適には、2つの切断用縁部4の間に画成される上記角度は、少なくとも20°、更に好適には少なくとも25°である。
【0031】
2つの切断用縁部4に加え、ブレード1aは、頂点6において収束する2つの上縁部5を有する。故にブレード1aは、頂面1cにては、楔状に収束する2つの上縁部5により、且つ、底面1bにては、楔状に収束する各切断用縁部4により、境界決定される。示された好適実施形態において、各上縁部5及び各切断用縁部4は平行に延在するが、夫々、異なる角度を画成することも可能である。好適には、各上縁部5は鋭角を画成する。示された好適実施形態において、この角度は60°未満であり、例えば、10°〜50°、特に20°〜45°である。
【0032】
好適には、頂点6は、柄部1の厚みよりも大きい距離だけ、尖端2の背後に配置される。故に、頂点6と、尖端2、すなわち上記ランセットの前端尖端との間の距離の成分であって、柄部1の長手方向において測定される成分は、好適には柄部1の厚みよりも大きい。示された好適実施形態による場合と同様に、頂点6は好適には、柄部1の厚みの2倍よりも大きい距離だけ、尖端2の背後に配置される。好適には、柄部1の幅は、その厚みの2〜3倍である。
【0033】
上縁部5は更に、各切断用縁部4よりも後方まで延在する。その側面の各々上にて、ブレード1aは、切断用縁部4の後端部を上縁部5の後縁部に対して接続する縁部7により側方に境界決定される。好適には、縁部7は、その側方に配置された狭幅側面1dの下縁部に対し、例えば10°〜60°、より詳細には15°〜35°の角度などの鋭角を画成する。縁部7は、その側方に配置された切断用縁部4に対しては、鈍角を画成し得る。
【0034】
その場合に図2は、頂点6から前端2まで延在するラインに沿いブレード1aが凹状であることを示している。頂面1bは、頂点6においてアンダカット(undercut)を有している。
【0035】
図5乃至図11は夫々、図3に示された各横断線に沿う上記ランセットの一連の横断面を示している。その場合、図5は横断線AAによる断面図であり、図6は横断線BBにより、図7は横断線CCにより、図8は横断線DDにより、図9は横断線EEにより、図10は横断線FFにより、且つ、図11は横断線GGによる。
【0036】
図5乃至図7は、横断面において視認される如くブレード1aの頂面は、頂点6と前端尖端2との間において凸状であることを示している。その場合に図5乃至図7は、各切断用縁部4は前端2に向けて減少する切断角を構成することも示している。その場合、上記切断角は、前端2に向けて連続的に減少する。結果として、ランセット穿刺の場合おいて患者の身体組織内に生成される穿刺チャネルは連続的な様式で厚く又は広幅となり、このことは少ない痛覚による穿刺のための利点である。
【0037】
図8乃至図10は、ブレード1aが、頂点6の背後に、特に、該頂点6と各切断用縁部4の後端部との間に、凹状の側部表面8を有することを示している。
【0038】
柄部1の底面1bは、平面的又は凹状である。その場合、図5乃至図11は、柄部1の底面1b、特にブレード1aの底面は、各側部における周縁領域において平面的であることを示している。サンプルを採取するための凹所3を除き、柄部1の底面1b全体が平面的である。凹所3の結果として、対応領域において柄部1の底面1bは凹状である。
【0039】
本発明に係るランセットにおいて、前端2と頂点6との間の底面1b、又は、ブレード1aの底面全体でさえも、サンプルを採取するための凹所3から解放され得る。但し好適には、凹所3は、ブレード1aの領域内へも延在する。サンプルを獲得するために必要とされる穿刺深度を最小限とするために、通常は、凹所3が底面1b上で、頂点6と前端2との間の領域内へと延在することが好適である。ブレード1aの機械的安定性を阻害しないためには、概略的に、溝3が前端2から所定距離にて終端することが好適である。上記柄部の底面1b上に配置された斯かる溝3は好適である、と言うのも、それは、無菌保護箔体が穿刺されたときに該無菌保護箔体の材料により閉塞されないからである。
【0040】
示された好適実施形態において、溝3は頂点6を越えて延在する。その場合に図1は、溝3がブレード1aの領域における区画にて連続的に先細状であることを示している。その場合、先細状区画の長さは、溝3の最大幅を超えている。上記先細状区画全体において、溝3の深度は前端に向けて連続的に減少する。換言すると、溝3の断面積は、各切断用縁部4の間に配置された区画において減少する。
【0041】
好適には、溝3の最大幅、すなわちブレード1aの背後における溝幅は、柄部幅の半分よりも小さい。好適には、上記溝の最大深度、すなわちブレード1aの背後における溝深度は、柄部厚みの半分を超過する。上記柄部厚みは、0.3mm未満とされねばならず、且つ、好適には80μm〜200μm、更に好適には80μm〜180μmである。例えば、上記柄部幅は、0.2mm〜0.5mm、好適には250μm〜400μmとされ得る。
【0042】
好適な材料は、鋼鉄、特にステンレス鋼である。上記ランセット柄部の曲げ剛性は、0.1kNmm2を超えてはならず、好適には0.05kNmm2未満、更に好適には0.02kNmm2未満とされるべきである。好適な値は特に、0.01〜0.001kNmm2の範囲である。
【0043】
斯かる低い曲げ剛性を有するランセットは、身体組織を穿刺するときに弾性的に屈曲される。その場合、溝3を備えて成るランセットの底面は屈曲の内側面である結果、ランセットが引抜かれるときに上記底面上にはキャビティが形成されることから、溝3の近傍において上記キャビティは体液により充填される。この故に、サンプルの採取は上記ランセットの屈曲により促進される。
【0044】
図12は、無菌保護箔体10が穿刺される間における本発明に係るランセットの好適実施形態を示している。無菌保護箔体10は、例えば、金属箔、特にアルミニウム箔、又は、プラスチック箔体、又は、プラスチックにより被覆された金属箔、又は、金属被覆されたプラスチック箔体とされ得る。例えば、ランセット・マガジンのチャンバは、その内部に配置されたランセットを有害な環境の影響から保護するために、斯かる無菌保護箔体10により閉じられ得る。本発明に係るランセットにおいて、サンプルを採取するための溝3は上記柄部の底面上に配置されることから、無菌保護箔体10が穿刺されるときに該溝3は阻害されない。すなわち、上記ランセットの各切断用縁部4によれば、無菌保護箔体10は、上記柄部の底面上で上記柄部の底面と平行に切り開かれる結果、溝3を遮断し得る箔体残留物の形成が阻止される。好適には、穿刺された無菌保護箔体10の各部分が穿刺の間において溝3の内部領域内へと突出することも阻止されると共に、好適に其処に存在する親水的な被覆の阻害は、上記各部分が溝3の表面に沿い摺動することにより阻止される。
【0045】
本発明に係るランセットを、無菌保護箔体10により閉じられたマガジン・チャンバ内に配置する代わりに、本発明に係るランセットの複数個を、例えば特許文献4から知られるのと同様に、担体テープ上に並置して配置することも可能である。好適には、本発明に係るランセットは、その頂面を以て担体テープ上に配置される一方、その底面は無菌保護箔体により覆われる。図13は、担体テープ11と、ランセットと、無菌保護箔体10とを備えた適切な好適実施形態の断面図である。
【0046】
無菌保護箔体10は、担体テープ11よりも薄寸であり、好適には後者の厚みの半分以下である。無菌保護箔体10は、上記ランセット上に無拘束的に着座すると共に、担体テープ11に対しては、例えば接着又は溶着されるなど、物質間結合様式で接続される。ランセット柄部1は、担体テープ11に対し、ブレード1aから離間した後部領域において接着され得る。前部領域において、ランセット柄部1は好適には担体テープ11上に無拘束的に着座する結果、穿刺を行うために、ブレード1aは、特許文献4に記述されたのと同様に、担体テープ11を屈曲させることにより、上記無菌保護箔体から解放され得る。
【0047】
図14はランセットの更なる好適実施形態を示し、且つ、図15は横断線HHによる関連断面図である。このランセットは、サンプルを採取するための凹所3が幾分か広幅である溝として構成されるという点において、図1乃至図11に示されたランセットと異なる。これにより、大きなサンプル体積を採取することが許容される。
【0048】
図16はランセットの更なる好適実施形態を示し、且つ、図17は横断線KKによる関連断面図である。このランセットは、溝として構成された単一の凹所3の代わりに、平行に延在し且つ溝として構成された2つの凹所3が在るという点において、図14及び図15の好適実施形態と異なる。2つの凹所3の間における分割壁部12は、2つの凹所3の総体積を僅かな程度までしか減少しないが、相当に増大された毛管力に帰着する。この故に、図16に示された好適実施形態の2つの凹所3は、図14及び図15に示された好適実施形態の単一の凹所よりも高速に、体液により充填される。
【0049】
図18はランセットの更なる好適実施形態を示し、且つ、図19は横断線LLによる関連断面図である。このランセットは、2つの凹所3の間の分割壁部12が減少されるという点において、図18の好適実施形態と異なる。この故に、2つの凹所3は、表面上にて接続されるが、内部領域においては分割壁部12により2つの平行なチャネルへと細分される。分割壁部12はまた、毛管力の増大も引き起こすことから、凹所3の更に高速な充填も引き起こす。
【符号の説明】
【0050】
1 柄部
1a ブレード
1b 底面
1c 頂面
1d 狭幅側面
2 尖端
3 凹所
4 切断用縁部
5 上縁部
6 頂点
7 縁部
8 側部表面
10 無菌保護箔体
11 担体テープ
12 分割壁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
頂面(1c)と底面(1b)とを有する平坦な柄部(1)であって、該柄部(1)は前端(2)にて、尖端(2)において終端するブレード(1a)を形成し、前記ブレード(1a)は前記底面(1b)にて、前記尖端(2)において収束する2つの切断用縁部(4)を有する平坦な柄部(1)を具備し、
前記柄部(1)が、その底面(1b)上に、サンプルを採取するための少なくとも1つの凹所(3)を有するランセットにおいて、
前記柄部(1)が、その頂面(1c)にて、頂点(6)において収束する2つの縁部(5)にて前記ブレード(1a)へと遷移し、且つ、
前記ブレード(1a)の前記頂面(1c)が、横断面で見て、前記頂点(6)と前記前端(2)との間において凸状に湾曲されることを特徴とするランセット。
【請求項2】
前記ブレード(1a)が、前記頂点(6)から前記前端(2)まで延在するラインに沿い、凹状に形成されることを特徴とする請求項1に記載のランセット。
【請求項3】
前記頂面(1c)が、前記頂点(6)にてアンダカットを有することを特徴とする請求項1又は2に記載のランセット。
【請求項4】
前記ブレード(1a)が、前記頂点(6)と前記切断用縁部(4)の後端部との間において、凹状の側部表面(8)を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のランセット。
【請求項5】
前記頂面(1c)上で前記ブレード(1a)を境界決定する両方の縁部(5)が、前記各切断用縁部(4)に対して平行に延在することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のランセット。
【請求項6】
前記頂点(6)が、前記柄部(1)の厚みよりも大きい距離だけ、前記尖端(2)の背後に配置されることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のランセット。
【請求項7】
前記頂面(1c)上で前記ブレード(1a)を境界決定する前記2つの縁部(5)が、鋭角を画成することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のランセット。
【請求項8】
前記各切断用縁部(4)が、前記前端(2)に向けて減少する切断角を有することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のランセット
【請求項9】
前記ブレード(1a)の前記底面(1b)が、少なくとも、前記各切断用縁部(4)に沿う周縁領域において平面的であることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のランセット。
【請求項10】
前記柄部(1)の前記底面(1b)が、サンプルを採取するための前記凹所(3)を除き、平面的であることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載のランセット。
【請求項11】
前記各上縁部(5)が、前記切断用縁部(4)よりも更に後方に延在することを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載のランセット。
【請求項12】
前記凹所(3)が、前記頂点(6)を越えて延在し且つ前記各切断用縁部(4)間に配置された区画を有する溝であり、該区画において前記溝(3)の断面積は前記前端(2)に向けて減少することを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載のランセット。
【請求項13】
頂面(1c)と底面(1b)とを有する平坦な柄部(1)であって、該柄部(1)は前端(2)にて、尖端(2)において終端するブレード(1a)を形成し、前記ブレード(1a)は前記底面(1b)にて、前記尖端(2)において収束する複数の切断用縁部(4)を有する平坦な柄部(1)を具備し、
前記柄部(1)が、その底面(1b)上に、サンプルを採取するための少なくとも1つの溝(3)を有するランセットにおいて、
前記溝(3)が、各切断用縁部(4)間に配置された区画を有し、該区画において前記溝(3)の断面積は前記前端(2)に向けて減少することを特徴とするランセット。
【請求項14】
頂面(1c)と底面(1b)とを有する平坦な柄部(1)であって、該柄部(1)は前端(2)にて、尖端(2)において終端するブレード(1a)を形成し、前記ブレード(1a)は前記底面(1b)にて、前記尖端(2)において収束する2つの切断用縁部(4)を有する平坦柄部(1)を具備し、
前記柄部(1)が、その底面(1b)上に、サンプルを採取するための少なくとも1つの凹所(3)を有するランセットにおいて、
前記柄部(1)が、0.1kNmm2未満、好適には0.05kNmm2未満、特に0.03〜0.001kNmm2未満の曲げ剛性を有することを特徴とするランセット。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載のランセットと、
穿刺の間における前記ランセットの前進運動を、且つ、引き続き後退運動を引き起こし、前記後退運動が前記前進運動よりも低速である穿刺デバイスと、
を具備する穿刺システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2012−531983(P2012−531983A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518771(P2012−518771)
【出願日】平成22年6月12日(2010.6.12)
【国際出願番号】PCT/EP2010/003548
【国際公開番号】WO2011/003499
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】