説明

ランプ用高效率水銀放出ゲッター組成物

【課題】水銀型冷陰極蛍光ランプまたは水銀型外部電極蛍光ランプに水銀を效率的に注入するための水銀放出ゲッター組成物を提供する。
【解決手段】水銀放出ゲッター組成物において、質量比でチタン10〜40%、銅10〜40%、水銀20〜60%、及び、アルミニウム、ジルコニウム、ニッケルから選ばれる少なくとも一つ以上の元素を0.1〜20%含んでなる水銀放出組成物Aと、質量比で、ジルコニウム70〜90%及びアルミニウム10〜30%、又は、質量比でジルコニウム65〜85%及び鉄15〜35%からなるゲッター組成物Bとからなり、A:Bの質量比がX:10−X(但し、Xは5〜9の範囲)の混合物で構成されることを特徴とする水銀放出ゲッター組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はLCD TV、モニター等にBack Lightで使われる水銀型と無水銀型ランプの中で特に、水銀型冷陰極蛍光ランプ(CCFL、Cold Cathode Fluorescent Lamp)または水銀型外部電極蛍光ランプ(EEFL、External Electrode Fluorescent Lamp)に水銀を效率的に注入するための水銀放出ゲッター組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記組成物は酸化防止及び熱伝導度向上のためにニッケル処理された鉄板材に圧入加工されてランプ生産工程に適用され、この時組成物内の水銀を活性化させるために、高周波加熱装置等が使われる。従来の水銀放出ゲッターはこのような水銀の活性化工程の時、約900℃位の活性化温度が要求され、これはランプの料としてGlassが使われるほとんど大部分のランプ製造工程の時にランプの損傷が誘発されるため、高価なHard Glassを使用しなければならない。
【0003】
上記ランプは駆動の時、輝度維持と寿命延長のためにランプの内の残留ガスを少なくして発光ソースの役目をする水銀を用いて、従来はランプの内に水銀を注入するために液状水銀を用いた多様な方法が適用されていた(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかし、水銀の毒性による国際規制が強化されることによって、ランプの製造時にも水銀の使用量を数mg以下にしなければならない。従来の技術である液状水銀を利用した方法では、数mg以下の定量的なランプ内への水銀の注入が難しいため、多様な造成の水銀アマルガム形態での製造方法が用いられ、現在はより效率的な技術が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】英国特許出願公開第2056490号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、LCD Back Light用水銀型ランプの発光ソースで使われる水銀を、他の金属元素と安定的な金属化合物形態で製造して、水銀放出組成物と不純ガス吸着能が優秀な金属元素で構成されるゲッター組成物にし、本発明の水銀放出ゲッター組成物が従来の水銀放出ゲッター組成物の活性化温度である700〜900℃より低い活性化温度である約700℃以下で水銀をほぼ完全に放出し、すなわちランプ内部へのほぼ完全な水銀注入ができるものである。
【0007】
相対的に低い活性化温度でランプ内部への水銀注入が容易になることによって、本発明の結果物である水銀放出ゲッター組成物をランプ生産に適用する場合、高価なハードガラス(Hard Glass)を使わなくてもランプを生産することができるという利点がある。
【0008】
ランプ生産工程の時、高周波加熱装置等を利用したゲッターの活性化、すなわち水銀の放出過程で活性化温度がとても高くなると、電極酸化を誘発し、ランプの性能維持が難しい短所があるだけではなく、大容量の高周波加熱装置が要求されて不必要な電力消費が発生するようになる。
【0009】
上記の短所はランプ製造の時、製造単価の上昇を惹起させる主な原因であり、本発明の結果物であるランプ用高效率水銀放出ゲッター組成物はこのような課題を解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の水銀放出ゲッター組成物は水銀放出組成物Aとゲッター組成物Bで構成されて、A:Bの質量比がX:10−X(但し、Xは5〜9の範囲)の混合物で構成される。この中、水銀放出組成物Aはチタン、銅以外にアルミニウム、ジルコニウム、ニッケルの中、一つ以上の元素またはアルミニウム、クロムを溶解して金属化合物を製造した後、これを破砕及び粉砕工程を通じて106μm以下の粉末で篩に濾した後、最適温度及び条件下で液状水銀とのアマルガム化を通じて製造することができるし、最後の工程で破砕及び粉砕工程を通じて106μm以下の粉末で篩に濾して得ることができる。ゲッター組成物Bはジルコニウム、アルミニウムまたはジルコニウム、鉄を溶解して金属化合物を製造し、これを破砕及び粉砕工程を通じて150μm以下の粉末で篩に濾して得ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明はLCD用Back Light Lampの製造工程の中、ランプ内部で水銀を效率的に注入するための水銀放出ゲッター組成物に関するものである。
本発明の水銀放出ゲッター組成物は従来の水銀放出ゲッター組成物に比べて、熱伝導率が高い金属元素を組み合わせて水銀放出ゲッター組成物内の水銀活性化温度を200℃以上下げながらもほとんど大部分の水銀を放出させることができる特徴がある。
これにより高周波加熱装置等の熱源をより效率的に使用できるだけではなく、ランプ電極及びガラス管の損傷を最小化して最適のランプの生産を可能にでき、ランプ材料選択の時、高価のハードガラスのような材料の選択を避けることができて究極的にはランプ製造単価を低めることができる長所がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の水銀放出ゲッター組成物の圧入加工時、使われられる容器の代表形状の例を図示したものである。
【図2】本発明の水銀放出ゲッター組成物を含む水銀放出ゲッターの温度による水銀放出率を比較図示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上記水銀放出組成物粉末とゲッター組成物粉末を適切な割合で混合した水銀放出ゲッター組成物粉末は、図1のような金属鉄板材に圧入加工して水銀放出ゲッターを製造することができるし、図1以外にも多様なタイプの容器に適用が可能である。
一般的に水銀型冷陰極蛍光ランプ(CCFL,Cold Cathode Fluorescent Lamp)または水銀型外部電極蛍光ランプ(EEFL,External Electrode Fluorescent Lamp)に水銀を效率的に注入するために使われる水銀放出ゲッターは、水銀放出組成物であるTi−Hg化合物にゲッター組成物であるZr−Al化合物を混合して構成され、使われる条件によってさまざまな金属成分を合金、金属間化合物、化合物の状態で製造することができる。
【0014】
このような金属元素の中で相対的に熱伝導率が高い金属元素であるアルミニウム、ジルコニウム、ニッケル、クロム等を適切に添加すれば水銀放出組成物の中で水銀の活性化温度を低下させて、より效果的にランプ生産工程に適用が可能な水銀放出組成物を得ることができるし、一般的な水銀放出組成物に上記金属元素を添加した時、それぞれ次のような效果を期待できる。
【0015】
アルミニウムとニッケルは、相対的に原材料費用が低く熱伝導率が高くて、ランプ内の水銀注入のための高周波加熱工程の時、水銀放出效率を高めることだけではなく、脆性を強くて水銀との合金の前段階である予備合金の粉末化工程の時に利点を作用させることができるし、ジルコニウムはガス吸着能が優秀で一般的に広くゲッター物質で適用される金属元素であるだけでなく、予備合金の耐食性向上を期待することができるし、クロムは窒素、炭素等との反応性が良いのでジルコニウムと一緒にゲッター物質への適用が可能なだけではなくアルミニウムと同様に脆性の強い金属元素という利点がある。
【実施例】
【0016】
−本発明の水銀放出ゲッター組成物の水銀放出效果比較実験−
本発明による水銀放出ゲッター組成物12個のサンプルを、それぞれ図1に図示する五角形断面を持つワイヤ形態で製造して、一定な形態で切断して分析試料を準備した。
この分析試料は側面が1.13×0.9mmであり、4.5mmの長さを持つ。
【0017】
水銀放出率テストは水銀分析測定器の真空チャンバ内部にそれぞれのサンプルを入れて常温から700℃まで誘導加熱する方式で進行し、700℃から30秒間維持した時の累積放出率を最終放出率とした。
上記の実験結果を、表1に水銀放出率を%単位で示す。
【0018】
[比較例1]
水銀放出ゲッターは[表1]に記載する質量組成比のチタンと水銀を含む水銀放出組成物Aと、ジルコニウムとアルミニウムを含むゲッター組成物Bとを含む水銀放出ゲッター組成物であり、水銀放出組成物(A)とゲッター組成物(B)の混合質量比A:Bが4:1になるように混合して構成した。
【0019】
[実施例 1〜9]
水銀放出ゲッターは[表1]に記載する元素の質量組成比でアルミニウム、ジルコニウム、ニッケルの中、一つ以上の元素とチタン、銅、水銀で構成される水銀放出組成物A、またはアルミニウム、クロムとチタン、銅、水銀で構成される水銀放出組成物Aとジルコニウムとアルミニウムを含むゲッター組成物Bとを含む水銀放出ゲッターであって、水銀放出組成物(A)とゲッター組成物(B)の混合質量比がA:Bが4:1になるように混合して構成した。
【0020】
[参考例 1]
水銀放出ゲッターは[表1]に記載する元素の質量組成比で構成される水銀放出組成物のみにより構成した。
【0021】
[実施例 10〜11]
水銀放出ゲッターは[表1]に記載する元素の質量組成比で構成される水銀放出組成物Aと、ジルコニウムと鉄を含むゲッター組成物Bとを含む水銀放出ゲッターであり、水銀放出組成物(A)とゲッター組成物(B)の混合質量比はA:Bが4:1になるように混合して構成した。
【0022】
【表1】

【0023】
上記表1によって、比較例1はTi−Hg化合物のみにより構成された水銀放出組成物AとZr−Alで構成されたゲッター組成物Bを混合して図1のような形態の5角ワイヤ形態で水銀放出ゲッターを製造し、実施例1は比較例1の水銀放出組成物からTiの含量を25.5%減らしながら、Cuを25%、Alを0.5%添加して、水銀放出ゲッター組成物を製造した後、水銀放出率を確認した時、比較例1に比べて水銀放出率が28%増加したことを見ることができる。
【0024】
実施例2は比較例1の水銀放出組成物からTiの含量を30%減らしながら、Cuを25%、Alを5%添加した実施例である。比較例1に比べて、水銀放出率が25%増加したことを見ることができる。
【0025】
実施例3は比較例1の水銀放出組成物からTiの含量を26%減らしながら、Cuを25%、Zrを1%添加した実施例である。比較例1に比べて、水銀放出率が26%増加したことを見ることができる。
【0026】
実施例4は比較例1の水銀放出組成物からTiの含量を30%減らしながら、Cuを20%、Zrを10%添加した実施例である。比較例1に比べて、水銀放出率が30%増加したことを見ることができる。
【0027】
実施例5は比較例1の水銀放出組成物からTiの含量を27%減らしながら、Cuを25%、Niを2%添加した実施例である。比較例1に比べて、水銀放出率が29%増加したことを見ることができる。
【0028】
実施例6は比較例1の水銀放出組成物からTiの含量を33%減らしながら、Cuを25%、Niを8%添加した実施例である。比較例1に比べて、水銀放出率が28%増加したことを見ることができる。
【0029】
実施例7は比較例1の水銀放出組成物からTiの含量を30.5%減らしながら、Cuを25%、Alを0.5%、Zrを5%添加した実施例である。比較例1に比べて、水銀放出率が31%増加したことを見ることができる。
【0030】
実施例8は比較例1の水銀放出組成物からでTiの含量を29.5%減らしながら、Cuを25%、Alを0.5%、Niを4%添加した実施例である。比較例1に比べて、水銀放出率が19%増加したことを見ることができる。
【0031】
実施例9は比較例1の水銀放出組成物からTiの含量を29.5%減らしながら、Cuを25%、Alを0.5%、Crを4%添加した実施例である。比較例1に比べて、水銀放出率が27%増加したことを見ることができる。
【0032】
参考例1は比較例1の水銀放出組成物からTiの含量を35%減らしながら、Cuを15%、Alを3%、Zrを17%添加した参考例である。比較例1に比べて、水銀放出率が24%増加したことを見ることができる。
【0033】
実施例10は比較例1の水銀放出組成物からTiの含量を30.5%減らしながら、Cuを25%、Alを0.5%、Zrを5%添加した実施例である。比較例1に比べて、水銀放出率が27%増加したことを見ることができる。
【0034】
実施例11は比較例1の水銀放出組成物からTiの含量を38.5%減らしながら、Cuを25%、Alを0.5%、Zrを5%、Niを4%、Crを4%添加した実施例である。比較例1に比べて、水銀放出率が26%増加したことを見ることができる。
【0035】
また、図2で確認することができるように従来の水銀放出ゲッターである比較例1に比べて実施例の場合にはすべて400〜700℃の間での水銀放出率が高い長所があり、700℃以前に水銀放出ゲッター組成物内のほとんど大部分の水銀が完全に放出されたことを見ることができる。
実施例の中でもTi,Hg,Cu以外にAlを0.5%、Zrを5%添加した実施例7が一番優秀な水銀放出特性を現した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水銀放出ゲッター組成物において、
質量比でチタン10〜40%、銅10〜40%、水銀20〜60%、及び、アルミニウム、ジルコニウム、ニッケルから選ばれる少なくとも一つ以上の元素を0.1〜20%含んでなる水銀放出組成物Aと、
質量比で、ジルコニウム70〜90%及びアルミニウム10〜30%、又は、質量比でジルコニウム65〜85%及び鉄15〜35%からなるゲッター組成物Bとからなり、
A:Bの質量比がX:10−X(但し、Xは5〜9の範囲)の混合物で構成される
ことを特徴とする水銀放出ゲッター組成物。
【請求項2】
第1項の水銀放出ゲッター組成物において、
上記水銀放出組成物Aは、質量比でチタン10〜40%、銅10〜40%、水銀20〜60%、及び、アルミニウム0.1〜5%からなることを特徴とする水銀放出ゲッター組成物。
【請求項3】
第1項の水銀放出ゲッター組成物において、
上記水銀放出組成物Aは、質量比でチタン10〜40%、銅10〜40%、水銀20〜60%、及び、ジルコニウム0.1〜20%からなることを特徴とする水銀放出ゲッター組成物。
【請求項4】
第1項の水銀放出ゲッター組成物において、
上記水銀放出組成物Aは、質量比でチタン10〜40%、銅10〜40%、水銀20〜60%、及び、ニッケル0.1〜20%からなることを特徴とする水銀放出ゲッター組成物。
【請求項5】
第1項の水銀放出ゲッター組成物において、
上記水銀放出組成物Aは、質量比でチタン10〜40%、銅10〜40%、水銀20〜60%、アルミニウム0.1〜5%、及び、ジルコニウム0.1〜20%からなることを特徴とする水銀放出ゲッター組成物。
【請求項6】
第1項の水銀放出ゲッター組成物において、
上記水銀放出組成物Aは、質量比でチタン10〜40%、銅10〜40%、水銀20〜60%、アルミニウム0.1〜5%、及び、ニッケル0.1〜20%からなることを特徴とする水銀放出ゲッター組成物。
【請求項7】
水銀放出ゲッター組成物において、
質量比で、チタン10〜40%、銅10〜40%、水銀20〜60%、アルミニウム0.1〜10%、及び、クロム0.1〜10%からなる水銀放出組成物Aと、
質量比で、ジルコニウム70〜90%及びアルミニウム10〜30%、又は、質量比で、ジルコニウム65〜85%及び鉄15〜35%からなるゲッター組成物Bとからなり、
A:Bの質量比がX:10−X(但し、Xは5〜9の範囲)の混合物で構成される
ことを特徴とする水銀放出ゲッター組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−180475(P2010−180475A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−176925(P2009−176925)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【出願人】(505344524)ヒースング マテリアル リミテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】HEESUNG MATERIAL LTD.