説明

ランプ

本発明は、夜間視の用途のための、乗物用ヘッドランプ内のランプ(1)に関する。このランプ(1)は、可視光および赤外光を発生させる、バルブ(5、6)を有する。本発明によれば、バルブ(5)は、中間赤外放射を反射し、近赤外放射に対して透過性を有するコーティング(8)を備えている。これにより、ランプ(1)の出射効率が高められ、特に近赤外スペクトル領域における出射効率が高められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可視光および赤外光を発生させる、バルブを有するランプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
光源としてのこの種の1つのランプが、ドイツ特許出願公開公報DE10027018A1号より知られており、これはヘッドランプに使用されるものである。この乗物用ヘッドランプは、反射器、レンズ、およびシールドを備えており、投射原理に従って動作する。ランプによって発せられた光は、反射器によって反射される。シールドおよびレンズは、反射された光束のビーム経路中に配されている。下向きの動作位置では、ヘッドランプから発せられる可視波長領域の光束は、ロービーム光束であり、近くの範囲を照明する。シールドは、少なくともいくらかの面積に亘って、赤外波長領域の光に対し、少なくとも部分透過性を有する。シールドを介して発せられた赤外波長領域の光は、主ビーム光束であり、遠くの範囲を照明する。この遠くの範囲は、感知装置によって記録され、表示装置によってその乗物のドライバーに対して表示される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の1つの目的は、遠くの範囲を赤外光で照明するための、ランプの出射効率を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的は、請求項1に記載された特徴によって達成される。本発明によれば、ランプのバルブは、中間赤外放射を反射し、近赤外放射に対して透過性を有するコーティングを備えている。赤外放射は、近赤外放射と中間赤外放射とに分けられる。反射された中間赤外放射によりフィラメントが熱せられるため、ランプの出射効率が高められる。近赤外放射は、近くの範囲および遠くの範囲へと発せされ、夜間視の用途に利用される。ここで、近くの範囲および遠くの範囲は感知装置によって記録され、表示装置によってその乗物のドライバーに対して表示される。表示の目的のためには、感知装置は、近赤外放射を本質上必要とするが、中間赤外放射は本質上必要としないと考えられる。
【0005】
ある有利な方式では、上記のランプのバルブが楕円形状を有する。この楕円形状のため、中間赤外放射は、コーティングによりフィラメント上へ均等に反射される。
【0006】
ある単純な方式では、上記のコーティングが、NbおよびSiOの37層の個別の層を伴う、干渉コーティングを有する。
【0007】
ある有利な方式では、上記のランプのバルブが、可視光を除去するコーティングを備える。これにより、通行人および対向車の不意のぎらつきが防止される。
【0008】
ある有利な方式では、上記のランプは、可視光を除去するコーティングを有する外側バルブを備える。この可視光を除去するコーティングは、単純な方法で、追加のバルブに施すことが可能である。
【0009】
ある単純な方式では、上記のコーティングは、FeおよびSiOの層を備える。
【0010】
ある有利な方式では、上記のコーティングは、バルブの下側領域に配される。これにより、コーティングは、下側反射器部分へのビーム経路中に配されたバリアとして作用する。近くの範囲および遠くの範囲が近赤外放射によって照明され、同時に、対向車をぎらつかせることなく近くの範囲を照明する、可視光のロービーム光束が発生させられる。
【0011】
ある有利な方式では、下側反射器部分は、近赤外放射を反射し、可視光に対して透過性を有する干渉コーティングを備える。ヘッドライトに使用されるランプは、近赤外放射と可視光との両方を発する。可視光は、上記の下側反射器部分において吸収される。それにより、遠くの範囲では可視光が防止され、対向車をぎらつかせることがなくなる。ランプ自体は、中間赤外放射を反射し、近赤外放射に対して透過性を有する、1つのみのコーティングを備える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面に示された実施形態の例を参照して、本発明をさらに説明するが、本発明は、これらの例に限定されるものではない。
【0013】
図1は、フィラメント2、導電性給電ワイヤ3ならびに4、内側バルブ5、および外側バルブ6を有するランプ1を示している。内側バルブ5の外側表面7には、中間赤外放射を反射し、近赤外放射を透過させるコーティング8が施されている。楕円形状の内側バルブ5に施されたコーティング8は、ランプの効率を高めるために、フィラメント2上へと中間赤外放射を反射する。
【0014】
コーティング8は、合計37層の層を備えている。具体的には、ランプのバルブの表面から、170.94nm厚のNbの第1層、189.40nm厚のSiOの第2層、133.29nm厚のNbの第3層、229.68nm厚のSiOの第4層、146.3nm厚のNbの第5層、258.26nm厚のSiOの第6層、167.24nm厚のNbの第7層、242.48nm厚のSiOの第8層、152.63nm厚のNbの第9層、280.44nm厚のSiOの第10層、205.76nm厚のNbの第11層、304.82nm厚のSiOの第12層、226.07nm厚のNbの第13層、277.54nm厚のSiOの第14層、172.17nm厚のNbの第15層、357.67nm厚のSiOの第16層、210.09nm厚のNbの第17層、348.82nm厚のSiOの第18層、180.54nm厚のNbの第19層、509.90nm厚のSiOの第20層、152.30nm厚のNbの第21層、519.34nm厚のSiOの第22層、145.95nm厚のNbの第23層、506.86nm厚のSiOの第24層、163.68nm厚のNbの第25層、447.11nm厚のSiOの第26層、183.42nm厚のNbの第27層、443.45nm厚のSiOの第28層、170.87nm厚のNbの第29層、518.88nm厚のSiOの第30層、153.59nm厚のNbの第31層、573.54nm厚のSiOの第32層、387.73nm厚のNbの第33層、557.49nm厚のSiOの第34層、165.28nm厚のNbの第35層、543.59nm厚のSiOの第36層、および379.59nm厚のNbの第37層を備えている。
【0015】
楕円形状の外側バルブ6の外側表面9には、ランプ1が近くの範囲および遠くの範囲を近赤外光で照明するように、可視光を除去する第2のコーティング10が施されている。こうすることにより、近くの範囲および遠くの範囲を、夜間視装置を用いて見ることが可能となる。
【0016】
第2のコーティングは、合計12層の層を備えている。具体的には、ランプのバルブの表面から、38.82nm厚のFeの第1層、99.9nm厚のSiOの第2層、47.06nm厚のFeの第3層、102.39nm厚のSiOの第4層、228.8nm厚のFeの第5層、97.78nm厚のSiOの第6層、58.95nm厚のFeの第7層、100.39nm厚のSiOの第8層、52.29nm厚のFeの第9層、97.97nm厚のSiOの第10層、223.1nm厚のFeの第11層、および194.75nm厚のSiOの第12層を備えている。
【0017】
図2は、第1のコーティング8の反射率を、波長に対してプロットしたグラフである。コーティング8は、800から1000nmの範囲内にある近赤外放射(NIRと略す)に対して透過性を有し、1000nm以上の範囲内にある中間赤外放射(MIRと略す)に対して反射性を有する。コーティング8は、可視光に対しては、少なくとも部分透過性を有する。
【0018】
図3は、第2のコーティング10の透過率を、波長に対してプロットしたグラフである。このコーティングは、400から800nmの範囲内にある可視光(VISと略す)を吸収し、近赤外放射および中間赤外放射に対しては透過性を有する。
【0019】
図4および5は、反射器22内で使用される第2のランプ21を示している。ランプ21は、内側バルブ23と、部分的にコーティングされた外側バルブ24とを備えている。内側バルブは、フィラメント25が追加加熱されるように、中間赤外放射をフィラメント25上へと反射するコーティング8を備えている。コーティング8は、近赤外放射に対しては透過性を有する。外側バルブ24は、下側バルブ領域26に、コーティング10を備えている。このコーティング10は、可視光を除去し、近赤外放射に対してのみ透過性を有する。この近赤外放射が下側反射器部分27上に入射し、下側反射器部分27が、遠くの範囲に向かって、主ビーム光束としての近赤外放射を発する。
【0020】
換言すれば、近赤外光束と可視光のロービーム光束とを発生させるため、赤外光に対して透過性を有し可視光をブロックするバリア10によって部分的に包囲された、ランプ21が用いられる。バリア10は、フィラメント25と下側反射器部分27との間のビーム経路中において、ランプ21を包囲するガラスバルブ24上の部分コーティング10として配され、下側反射器部分27が近赤外の主ビーム光束のみを発生させるように、可視光をフィルタリングして除去する。上側反射器部分28は、可視光のロービーム光束を発生させる役割を担う。ランプ21および反射器22は、ヘッドランプの構成部品21および22である。
【0021】
図6および7は、フィラメント33が反射器34の焦点に配された、ランプ32を有するヘッドランプ31を示している。ランプ32は、ランプのバルブ35上にコーティング8を備えている。このコーティング8は、可視光および近赤外放射に対して透過性を有し、中間赤外放射をフィラメント33上へと反射する。上側反射器部分36上に入射するビーム37および38は、可視光のロービーム光束37および38を発生させる。このロービーム光束37および38は、さらに近赤外放射も含む。下側反射器部分39は、近赤外放射を反射し、可視光を吸収する干渉コーティング40を備えている。反射器部分39は、道路に平行な平面内において近赤外放射の楕円状の分布を保証し、したがって夜間視の用途に最適化される。あるいは、可視光に対して透過性を有し赤外放射を反射するコーティング40が、赤外照明に最適化された下側反射器部分39の表面41上に配されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】赤外の主ビームおよびロービーム光束を発生させるための、内側バルブおよび外側バルブを有するランプを示した概略断面図
【図2】コーティングの反射率を、波長に対してプロットしたグラフ
【図3】可視光をブロックし赤外光を透過させるコーティングの透過率を、波長に対してプロットしたグラフ
【図4】赤外の主ビーム光束および可視光のロービーム光束を発生させるための、内側バルブおよび外側バルブを有する第2のランプを示した概略断面図
【図5】ランプが反射器内で使用される様子を示した図
【図6】第3のランプと第2の反射器とを有するヘッドランプを示した概略断面図
【図7】ヘッドランプの概略平面図
【符号の説明】
【0023】
1 ランプ
2 フィラメント
3 導電性給電ワイヤ
4 導電性給電ワイヤ
5 内側バルブ
6 外側バルブ
7 表面
8 コーティング
9 表面
10 コーティング
21 ランプ
22 反射器
23 内側バルブ
24 外側バルブ
25 フィラメント
26 下側領域
27 反射器部分
28 反射器部分
31 ヘッドランプ
32 ランプ
33 フィラメント
34 反射器
35 バルブ
36 反射器部分
37 ビーム
38 ビーム
39 反射器部分
40 コーティング
41 表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光および赤外光を発生させる、バルブを有するランプであって、
該バルブに、中間赤外放射を反射し、近赤外放射に対して透過性を有するコーティングが付与されていることを特徴とするランプ。
【請求項2】
前記バルブが、楕円形状を有していることを特徴とする請求項1記載のランプ。
【請求項3】
前記コーティングが、NbおよびSiOの37層の個別の層を伴う、干渉コーティングを有していることを特徴とする請求項1記載のランプ。
【請求項4】
前記バルブに、可視光を除去するコーティングが付与されていることを特徴とする請求項1または2記載のランプ。
【請求項5】
前記バルブが、可視光を除去するコーティングを有する外側バルブによって包囲されていることを特徴とする請求項1または2記載のランプ。
【請求項6】
前記可視光を除去するコーティングが、FeおよびSiOの層を含んでいることを特徴とする請求項4または5記載のランプ。
【請求項7】
前記可視光を除去するコーティングが、前記バルブの下側領域に配されていることを特徴とする請求項4、5または6記載のランプ。
【請求項8】
請求項1から7いずれか1項記載のランプを有するヘッドランプ。
【請求項9】
反射器と、請求項1から3いずれか1項記載のランプとを有するヘッドランプであって、
下側反射器部分に、近赤外放射を反射し、可視光に対して透過性を有するコーティングが付与されていることを特徴とするヘッドランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2006−510173(P2006−510173A)
【公表日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−558938(P2004−558938)
【出願日】平成15年12月4日(2003.12.4)
【国際出願番号】PCT/IB2003/005599
【国際公開番号】WO2004/053925
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips Electronics N.V.
【住所又は居所原語表記】Groenewoudseweg 1,5621 BA Eindhoven, The Netherlands