説明

リアウインドウ表示装置

【課題】リアワイパーの旋回動作に伴って後続車両に対する合図の表示を行うことが可能なリアウインドウ表示装置を提供する。
【解決手段】固定端部12と可動端部14との間が扇状に展開可能であるとともに、固定端部12と可動端部14とを近づけて収容することが可能であって、展開時に後続車両に対して表示する合図を記載した展開部材16と、展開部材16の固定端部12を保持する基部18と、基部18を車両のリアウインドウ8に取着する取着部20と、展開部材16の可動端部14を車両のリアワイパーアーム2に連設する連設材22とを備えるリアウインドウ表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のリアワイパーの動作に連動して後続車両に合図を表示することが可能なリアウインドウ表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
後続車両に対して運転状況を通知する手段として、一般の車両には制動灯や方向指示器、非常点滅表示灯(所謂ハザードランプ)の取り付けが保安基準により義務付けられている。このうち、制動灯や方向指示器は使用頻度が高く、制動や進路変更などの本来の目的に使用されることが多い。
【0003】
非常点滅表示灯は、故障や渋滞などで車両を緊急停止させる際に使用したり、車が牽引される際などに点滅させて後続車両に注意を喚起したりするための装備である。ところが、車線変更や割り込みを行った直後に短期間非常点滅表示灯を点灯させることにより、進路を譲ってくれた後続車両に対して感謝の意思やお礼を伝える方法としても用いられることがある。
【0004】
しかし、非常点滅表示灯の点灯を後続車両に対するお礼として用いる用途は、特に定められている使用方法ではなく、一部の運転者が慣例として用いているものなので、誰もがその意味を理解できるわけではない。
【0005】
また、非常点滅表示灯は左右の方向指示器を同時に点滅させることでその機能を果たしているので、非常点滅表示灯を点滅させた車両の直後を走行している車両の運転者であれば左右の方向指示器が同時に点滅していることを視認できるが、右後方を走行中の車両からは右の方向指示器の点滅しか視認できない場合が多い。その場合には、左前方を走行している車両が右へ進路変更することを希望して、右方向指示器を点滅させているものと誤認してしまう可能性がある。この場合には、走行中の後続車両に余計な配慮を与えることとなる。
【0006】
非常点滅表示灯を用いることなく、お礼や追突の注意喚起の合図等をリアウインドウに表示する発明が、特開2005−255137号公報(特許文献1)に示されている。
【0007】
特許文献1には、リアウインドウのリアワイパーの払拭領域に配列した複数の基板上に、リアワイパーの払拭方向に向けて傾倒可能に支持された表示板を配したリアウインドウ表示装置が開示されている。特許文献1に記載されているリアウインドウ表示装置の表示板の一方の表面には、複数の表示板を組み合わせることで文字又は絵が表示されるように記載がなされている。
【0008】
そして、リアワイパーを待機位置から払拭反転位置まで動作させた際には、リアワイパーのワイパーブレードが表示板を払拭反転位置側に傾倒させてゆき、表示板の一方の面に記載された内容を表示して、後続車両に合図を提示することができる。
【0009】
また、リアワイパーが払拭反転位置から待機位置に戻る際には、ワイパーブレードが表示板を待機位置側に傾倒させてゆき、表示板の他方の面(例えば無地)を表示する。このようにリアワイパーを旋回動作させることによって、表示板の一方の面に描かれた文字や絵を表示して、後続車両に合図を提示することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−255137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
自動車のリアウインドウに装備されているリアワイパーは、雨天時等においてリアウインドウに付着した汚れや雨滴を払拭して、後方の視野を確保するためのものである。しかし、近年の車両においては、車両走行時における空気の流れは整流されるように形成されているために、リアウインドウに汚れ等が付着してリアワイパーを動作させて払拭する機会は非常に少ないものとなっている。
【0012】
特許文献1に記載されているリアウインドウ表示装置は、使用頻度が少ないリアワイパーの払拭領域に傾倒可能な複数の表示板を配し、ワイパーブレードによりゴトゴトと表示板を反転させてゆくものである。したがって、ゴム製のワイパーブレードをひどく損傷させる可能性がある。
【0013】
また、ゴム製のワイパーブレードが基板や表示板に乗り上げる際には、リアワイパーアームやワイパー駆動装置に大きな抵抗力が断続的に加わることになるので、リアワイパーアームやワイパー駆動装置に過大な負荷が加わって損傷させてしまう可能性もある。
【0014】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的は、リアワイパーに大きな負荷を加えることなく、リアワイパーの旋回動作に伴って後続車両に対する合図の表示を行うことが可能なリアウインドウ表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するための本発明に係るリアウインドウ表示装置は、固定端部と可動端部との間が扇状に展開可能であり、且つ固定端部と可動端部とを近づけて収容することが可能であって、展開時に後続車両に対して表示する合図を記載した展開部材と、前記展開部材の固定端部を保持する基部と、前記基部を車両のリアウインドウ又はリアウインドウ付近に取着する取着部と、前記展開部材の可動端部を車両のリアワイパーアームに連設する連設材とを備え、前記リアワイパーアームの旋回動作に伴い、前記展開部材が扇状に展開する動作と収容する動作とを行うことを特徴とする。
【0016】
本発明に係るリアウインドウ表示装置において、前記展開部材は複数の短冊片から構成され、各短冊片の長手方向における一端部付近には、各短冊片を回動可能に軸支する要部を有し、前記要部から離れた部位には、隣接する短冊片同士の離間範囲を定める連結部材を有している。更に、このリアウインドウ表示装置において、前記連設材は、前記展開部材の可動端部に対して回動可能に軸支されるとともに、前記リアワイパーアームに対して回動可能に軸支される連設腕を有することが好ましい。
【0017】
本発明に係るリアウインドウ表示装置において、前記展開部材は複数の短冊片から構成され、各短冊片の長手方向における一端部付近には、各短冊片を回動可能に軸支する要部を有し、隣接する前記短冊片を折り畳み可能な屈曲性を備える連結部材で連結している。更に、このリアウインドウ表示装置において、前記連設材は、前記展開部材の可動端部に対して回動可能に軸支されるとともに、前記リアワイパーアームに対して回動可能に軸支される連設腕を有することが好ましい。
【0018】
本発明に係るリアウインドウ表示装置において、前記展開部材を、網状、布状又はシート状の湾曲可能な部材で構成し、前記固定端部を、前記展開した展開部材を巻き取る截頭円錐形状の巻取体で構成し、前記基部は、前記巻取体を回動可能に軸支する軸体と、前記展開部材を巻取る方向に前記巻取体に回転力を付勢する巻取付勢部材とを有している。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るリアウインドウ表示装置によれば、リアワイパーアームの旋回動作に伴って展開部材を扇状に展開させて、その展開部材の表面に記載した合図を後続車両に提示することができる。この合図を後続車両の運転者が読み取ることで、気持ちよく運転を継続することが可能となる。
【0020】
また、本発明によれば、展開部材を複数の短冊片から構成し、リアワイパーの動作に伴って短冊片を扇状に展開させることで、その展開部材の表面に記載した合図を後続車両に提示することができる。
【0021】
また、本発明によれば、展開部材を複数の短冊片から構成するとともに、隣接する短冊片を折り畳み可能な連結部材で連結することによっても、短冊片を扇状に展開させて、その展開部材の表面に記載した合図を後続車両に提示することができる。
【0022】
また、本発明によれば、展開部材を網状、布状又はシート状の湾曲可能な部材で構成し、固定端部を截頭円錐形状の巻取体で構成し、基部に巻取体を回動可能に軸支する軸体と、展開部材を巻取る方向に巻取体に回転力を付勢する巻取付勢部材とを備えたように構成したので、展開部材を扇状に展開させて、その展開部材の表面に記載した合図を後続車両に提示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係るリアウインドウ表示装置のカバー体を取り外して構成を説明する斜視図である。
【図2】車両のリアウインドウにリアウインドウ表示装置を取着した状態を示す平面図であり、展開部材を収容した状態を示す図である。
【図3】車両のリアウインドウに取着したリアウインドウ表示装置の展開部材を、扇状に展開して合図を提示した状態を示す平面図である。
【図4】図3に示したA矢視図であり、展開部材の展開時における連結部材の働きを説明する図である。
【図5】展開部材の収容時における連結部材の働きを説明する図である。
【図6】図4に示す展開部材の他の実施形態を説明する図である。
【図7】吸盤式の取着部の構造を説明する断面図である。
【図8】接着式の取着部の構造を説明する断面図である。
【図9】リアウインドウ表示装置の他の実施例を説明する外観斜視図である。
【図10】車両のリアウインドウの下方にリアウインドウ表示装置を取着した状態を示す平面図であり、展開部材を巻き取って収容した状態を示す図である。
【図11】車両のリアウインドウに取着したリアウインドウ表示装置の展開部材を、扇状に展開して合図を提示した状態を示す平面図である。
【図12】展開部材に記載する合図の他の記載例を説明する図である。
【図13】展開部材に記載する合図の他の記載例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に係るリアウインドウ表示装置の実施形態について、図面を用いて詳説する。
【実施例1】
【0025】
図1〜図5は、本発明に係るリアウインドウ表示装置の第1実施例を説明する図である。このうち、図1は、リアウインドウ表示装置10のカバー体11(図2及び図3参照)を取り外して構成を説明する斜視図である。図2は、リアワイパー6の旋回動作に伴って展開と収容とを行う展開部材16を備えるリアウインドウ表示装置10を車両のリアウインドウ8に取着した状態を示す図であって、展開部材16を収容した状態を示す平面図である。また、図3は、展開部材16を扇状に展開した状態を示す平面図である。また、図4は、展開部材の展開時における連結部材の働きを説明する図であり、図5は、展開部材の収容時における連結部材の働きを説明する図である。
【0026】
(展開部材)
リアウインドウ表示装置10は、図1に示すように、固定端部12と可動端部14との間を扇状に展開可能に構成した展開部材16を有している。図1に示す実施例では、固定端部12と、可動端部14と、展開部材16とは複数の短冊片から構成され、各短冊片の長手方向における一端部付近には、各短冊片を束ねて回動可能に軸支する要部(かなめ部)30を備えている。
【0027】
各短冊片は、要部30の側が狭く、扇状に開く要部30の反対側が広い形状で形成されている。短冊片の数は図3の例では11枚であるが、特に限定されない。通常、10枚以上30枚以下とすることができる。各短冊片の材質は特に限定されないが、通常、シート状の樹脂材、金属材、又は樹脂と金属との複合材あり、そうした各短冊片は、要部30を中心として扇状に開く。なお、できるだけ風圧等に影響されないように、その厚さに対して高い剛性を有する素材であることが好ましい。
【0028】
要部30は、各短冊片の長手方向の一端部付近に設けられるが、その一端部付近とは、一端部(図1の右側端部のこと)から5mm〜10mm程度内側に入ったところである。この要部30は、ピン状部材が各短冊片の厚さ方向を貫通する態様で設けられ、各短冊片を回動可能に軸支する。ピン状部材の固定端部12側は、基部18を貫通し、その端部は抜け防止のいために例えば皿形状に加工されている。同様に、ピン状部材の可動端部14側は、その可動端部14を貫通し、その端部は抜け防止のために例えば皿形状に加工されている。
【0029】
固定端部12は、短冊片のうち、基部18に固定される基部側の短冊片を指している。なお、この固定端部12は、後述する基部18を指すもの、すなわち基部18が固定端部12を兼ねるものであってもよい。
【0030】
可動端部14は、リアワイパー6の旋回動作に伴って扇状に展開される短冊片のうち、最もリアワイパー側の短冊片を指している。なお、この可動端部14は、他の短冊片と同じ厚さのシート等であってもよいが、後述する連設腕24に固定され且つ安定した展開を実現するために、他の短冊片よりも厚く、剛性を有したシート状部材であることが好ましい。
【0031】
図1及び図2に示す状態は、リアワイパー6が旋回動作する前の状態であり、固定端部12と可動端部14とを近づけて展開部材16を収容した状態を表している。この展開部材16の表面側(図1に示す紙面上方のU方向)には、展開時において後続車両に対して表示する合図を記載してある(図3参照)。
【0032】
(基部)
基部18は、展開部材16の固定端部12を保持する部材である。この基部18は、上記のように、固定端部12を兼ねたものであってもよい。基部18の形状は、短冊片と同じ平面形状であることが意匠的にも好ましいが、必ずしも同一形状に限定されない。こうした基部18は、リアウインドウ表示装置全体のベース部材となることから、剛性を有する材料からなり、軽量で、且つある程度の厚さを有することが望ましい。剛性を有する材質は特に限定されず、エンジニアリングプラスチックや、軽量金属や、樹脂材料と強度アップ用の無機物や繊維とを複合させた複合材料等であってもよい。
【0033】
更に、基部18は、リアウインドウ表示装置10を車両(リアウインドウ8又はリアウインドウ8付近のボディ)に取着する取着部20が設けられている部材である。そのため、取着部20を設けるための突出部18aが設けられている。なお、取着部20は、基部18を車両(リアウインドウ8又はリアウインドウ8付近のボディ)に取着するための部材である。この取着部20については、後で詳しく説明する。
【0034】
(連設材)
連設材22は、展開部材16の可動端部14を車両のリアワイパーアーム2に連設する部材である。この連設材22は、リアワイパーアーム2に締結する締結部材26と、展開部材16の可動端部14に対して回動可能に軸支されるとともに締結部材26に対しても回動可能に軸支される連設腕24とを有している。こうした連設材22は、リアワイパー6の動作に伴って応力を受けるため、剛性を有する材料からなり、軽量で、且つある程度の厚さを有することが望ましい。剛性を有する材質は特に限定されず、エンジニアリングプラスチックや、軽量金属や、樹脂材料と強度アップ用の無機物や繊維とを複合させた複合材料等であってもよい。
【0035】
締結部材26は、図1の例では、コの字形の形状で構成され、そのコの字の隙間部分でワイパーブレード4に引っかける態様である。なお、締結部材26は、こうした形態に限定されない。
【0036】
(その他)
リアウインドウ表示装置10は、リアワイパー6側に開口部を開設したカバー体11(図2及び図3では、一点鎖線で表してある。)で覆うように構成してある。カバー体11は、リアウインドウ表示装置10の汚損を防止するとともに、車両の清掃を行う際に誤ってリアウインドウ表示装置10を損傷させることがないようにするためのものである。
【0037】
また、リアウインドウ8から突出する形で車両に取着するリアウインドウ表示装置10が、道路運送車両の保安基準を定める告示の別添20(外装の技術基準)の一般規定3.3の要件を満たすように、カバー体11外形の曲率半径が、2.5mm以上となるように形成することが好ましい。
【0038】
(装着状態と動作)
次に、図2及び図3を用いてリアウインドウ表示装置10の装着状態と、その動作について説明する。図2及び図3に示すように、リアウインドウ8には、リアウインドウ8の表面に付着した汚れや水滴を払拭するためのワイパーブレード4と、当該ワイパーブレード4を旋回摺動させるリアワイパーアーム2とを有するリアワイパー6が装備されている。また、リアウインドウ8には、リアワイパーアーム2の旋回動作に伴って扇状と収容とを行う展開部材16を備えるリアウインドウ表示装置10を装着してある。
【0039】
図2に示す状態は、例えばリアワイパー6が待機位置に存在している状態を表しており、この状態においては、展開部材16が収容された状態となっている。車両の運転者がリアワイパー6を作動させると、リアワイパー6は図2に示す待機位置から払拭反転位置に向けて移動する。リアワイパー6が払拭反転位置に移動した状態が、図3に示す状態である。
【0040】
リアワイパー6が払拭反転位置に移動すると、連設材22が可動端部14を引っ張るので、展開部材16が展開する。展開部材16の表面には、例えば図3に示すように「ありがとうございます」の合図が記載してあるので、展開部材16が展開すると、後続車両の運転者はその合図を読み取ることができる。
【0041】
例えば、高速道路の合流地点などにおいて車間に割り込んだ場合や、前方車両を回避するために車線変更を行った際にリアワイパー6を作動させる。すると、リアワイパー6の払拭動作に伴って、リアウインドウ表示装置10の展開部材16が展開するので、進路を譲ってくれた後続車両に対して「ありがとうございます」の合図を提示することができる。
【0042】
この合図を後続車両の運転者が見ることによって、進路を譲った際のお礼を直接感じ取ることができる。したがって、仮に後続車両の運転者が慌ただしく割り込まれたと感じた場合や、進路を妨害されたと感じた場合であっても、リアウインドウ表示装置10に表示された合図を読み取ることで、心が静まって運転に集中することができる。そして、トラブル発生の防止を図ることができる。
【0043】
(通気用開口)
図3に示すように、展開部材16の一部には、車両走行中に発生する風圧により展開部材16がばたつく不具合を減少させるために、通気用開口17を形成してある。この通気用開口17は任意に設けられるものであるが、前記不具合を減少させるという観点からは、設けられていることが好ましい。なお、展開部材16を構成している各短冊片を網状の素材や格子状の素材で構成して、展開部材16に加わる風圧を減少させることもできる。
【0044】
(連結部材)
図3に示すように、展開部材16を構成する短冊片の要部30から離れた部位には、隣接する短冊片同士の離間範囲を定める連結部材15を備えている。隣接する短冊片に対する連結部材15の働きを、図4及び図5に示す。
【0045】
図4は、図3に示したA矢視図(展開部材16を放射方向から要部30に向けて観察した側面図)であり、展開部材16における隣接する短冊片同士の離間範囲を定める連結部材15の働きを説明する図である。図4に示すように、展開部材16がリアワイパーアーム2に引っ張られて展開している状態では、連結部材15が隣接する短冊片を引っ張って、短冊片同士を所定の間隔に維持することができる。
【0046】
図5は、展開部材16を収容した場合における連結部材15の働きを説明する図である。図5に示すように、リアワイパーアーム2が払拭反転位置から待機位置に戻る場合には、隣接する短冊片同士が重なる位置まで連結部材15で引っ張って、各短冊片を束ねてゆくことができる。
【0047】
こうした動作を実現する連結部材15は、図5に示す形態(待機時の形態)に戻ろうとする性質を持つ材質又は構造であることが好ましい。例えば、ゴム特性を持つ弾性糸や弾性片、ばね特性を持つ弾性糸や弾性片等を挙げることが好ましい。連結部材15は、そうしたゴム特性やばね特性を持つ樹脂糸又は樹脂片、又は、ばね特性を持つ金属糸又は金属片を用い、短冊片の所定の位置に取り付けることにより、旋回動作を実現できる。
【0048】
連結部材15は、図5の例では、重なりあった短冊片の下面の中央部と、その下の短冊片の上面の中央部とに接合されている。この状態で、展開部材16を扇状に旋回動作すると、図4に示すように、連結部材15は上下の短冊片の中央部を引っ張り、展開時には短冊片同士を所定の間隔に維持するとともに、収容時には隣接する短冊片同士が重なる位置まで連結部材15で引っ張って各短冊片を束ねてゆくことができる。
【0049】
連結部材15は、図3の例では、扇状に開く先端側に一箇所設けられているが、中央付近に一箇所設けられて計2箇所設けられていることが好ましく、さらに要部30に近い箇所にもう一箇所設けられて計3箇所設けられていることがより好ましい。また、それ以上設けられていてもよい。なお、短冊片の要部側の端部を0とし、その反対側の端部を100としたとき、先端側に設けられる連結部材15の位置は、75〜98の位置が好ましく、さらに追加して設けられる中央付近の連結部材の位置は、40〜60の位置が好ましく、さらに追加して設けられる要部30付近の連結部材の位置は、20〜40の位置が好ましい。
【0050】
図6は、展開部材16を構成する他の展開部材116の実施形態である。図6中、(B)の形態は、(A)の形態に補助部材115bをさらに設けたものである。図6に示すように、隣接する短冊片を、いわゆる扇子のように、折り畳み可能で屈曲性を有するシート状の連結部材115で連結して構成することもできる。なお、図6は前述の図4及び図5と同様に、展開部材を放射方向から要部30に向けて観察した側面図である。図6に示す実施形態の展開部材116は、扇子と同様の構造であり、扇子における骨を短冊片とした場合に、連結部材115は和紙などで構成される扇面に相当する部分である。
【0051】
図6の場合においても、折り畳み可能で屈曲性を有するシート状の連結部材115は、展開して扇状に広がった形態が元の形状に戻ろうとする性質(形状記憶性又は形状安定性)を持つものであることが好ましく、例えば、ゴム特性又はばね特性を有する材質からなるものが好ましい。特に、折り目部分115aが元の折り形態に戻ろうとすることが好ましい。連結部材15こうした特性を持つ連結部材15は、展開後の収容時において、展開部材16を元の形状に容易に戻すことができる。
【0052】
図6(B)は、シート状の連結部材115を元の折り形態に戻ろうとするのを補助するための補助部材115bを設けた例である。この補助部材115bは、収容時に対面する連結部材115同士の中央を繋いでいる、すなわち、図6(B)では、上面側の対向面を繋ぐ補助部材115bと、下面側の対向面を繋ぐ補助部材115bとが設けられている。この補助部材115bは、図3の場合と同様、扇状に開く先端側に一箇所設けられていてもよいし、中央付近にさらにもう一箇所設けられていてもよいし、要部30に近い箇所にさらにもう一箇所設けられていてもよい。また、それ以上設けられていてもよい。なお、上記同様、短冊片の要部側の端部を0とし、その反対側の端部を100としたとき、先端側に設けられる連結部材15の位置は、75〜98の位置が好ましく、さらに追加して設けられる中央付近の連結部材の位置は、40〜60の位置が好ましく、さらに追加して設けられる要部30付近の連結部材の位置は、20〜40の位置が好ましい。
【0053】
(取着部)
次に、リアウインドウ表示装置10を車両のリアウインドウ8又はリアウインドウ8付近に取着させるための取着部20の構成例について、それぞれ図7及び図8を用いて説明する。
【0054】
図7は、吸盤式の取着部20の断面図である。吸盤式の取着部20は、リアウインドウ表示装置10の基部18を上方(図7に示すU方向)から挟み込む締結ノブ40と、基部18を下方(図7に示すD方向)から挟み込む吸盤ガイド44と、吸盤ガイド44及び基部18を共締めして締結ノブ40に螺合する引上げねじ42と、中央部が引上げねじ42に結合している吸盤46とから構成されている。
【0055】
吸盤46の素材として、柔軟性と耐候性と機密性とを備える塩化ビニール等の樹脂素材を用いることができる。
【0056】
取着部20を車両のリアウインドウ8又はリアウインドウ8付近の車両ボディに直接吸着させる場合には、まず、締結ノブ40を緩めて引上げねじ42を下方(図7に示すD方向)に下げた状態にしておき、吸盤46をリアウインドウ8又は車両ボディの所望の位置に押し付ける。その後、締結ノブ40を回して引上げねじ42を上方(図7に示すU方向)に上昇させる。すると、吸盤46の中央部も図7に示す「PRI」の位置から「SEQ」の位置まで上昇する。
【0057】
すると、吸盤46とリアウインドウ8又は車両ボディとで囲まれたチャンバー48内が負圧になるので、リアウインドウ表示装置10を車両のリアウインドウ8又は車両ボディに直接取着することができる。なお、取着部20をリアウインドウ8又は車両ボディから取り外す場合には、締結ノブ40を緩める。すると、吸盤46の中央部が図7に示す「SEQ」の位置から「PRI」の位置まで下がるので、チャンバー48内の気圧が大気圧に近づく。すると、容易に取着部20をリアウインドウ8から取り外すことが可能となる。
【0058】
次に、接着式の取着部の構成例について、図8を用いて説明する。図8は、接着式の取着部120の断面図である。接着式の取着部120は、リアウインドウ表示装置の基部18を上方(図8に示すU方向)から挟み込む締結ノブ40と、基部18を下方(図8に示すD方向)から挟み込む接着パッド144と、接着パッド144とリアウインドウ8とを接着する接着部材146と、から構成されている。このように構成した取着部120を用いても、リアウインドウ表示装置を車両のリアウインドウ8又は車両ボディに取着することができる。なお、接着部材146としては、接着剤や粘着剤を用いてもよいし、接着テープや粘着テープを用いてもよいし、具体例としてはスポンジテープ等を用いてもよい。
【実施例2】
【0059】
図9〜図11は、本発明に係るリアウインドウ表示装置の第2実施例を説明する図である。このうち、図9は、リアウインドウ表示装置210の外観斜視図である。図10は、リアワイパー6の旋回動作に伴って展開と収容とを行う展開部材216を備えるリアウインドウ表示装置210を、車両のリアウインドウ8の下方の車両ボディに取着した平面図であって、展開部材216を巻き取って収容した状態を示す平面図である。また、図11は、展開部材216を扇状に展開した状態を示す平面図である。
【0060】
リアウインドウ表示装置210は、図9に示すように、可動端部214の動きに連動して扇状に展開可能に構成した展開部材216を有している。図9に示すリアウインドウ表示装置210は、ロールカーテンを扇形に展開するようにしたものであり、展開部材216をカバー体211の内部から扇状に引き出したり、収容したりすることができるように構成されている。
【0061】
連設材222は、展開部材216の可動端部214を、車両のリアワイパーアーム2に締結するための部材であり、例えばコ字状の隙間をワイパーブレード2に挟んで固定することができる。
【0062】
取着部20は、リアウインドウ表示装置210を車両のリアウインドウ8付近の車両ボディに取着するためのものであり、上述の図7及び図8に示した取着部20、120等を用いることができる。ここで、付近とは、リアウインドウ8の近くで且つ隣接した位置のことであり、例えばリアウインドウ8から10mm〜100mm程度の位置のリアボディのことである。なお、リアウインドウ8上に直接取着できるスペースがある場合には、リアウインドウ8上に直接取着してもよい。
【0063】
展開部材216は、網状、布状又はシート状の湾曲可能で耐候性を有する部材で構成することが好ましい。展開部材216の固定端部212(図10に示す実施例では破線で表してある。)は、図10に示すように、展開部材216の一端を固定して展開部材216を巻き取ることを可能にした截頭円錐形状の巻取体で構成してある。固定端部212の両端は、基部218に配されている軸体(図示を省略)により回動可能に軸支されている。また、固定端部212の内部に配したゼンマイ等の巻取付勢部材(図示を省略)により、常時展開部材216を巻取る方向に向けて巻取体に回転力を付勢している。基部218には、リアウインドウ表示装置210をリアウインドウ8付近の車両ボディに取着させるための取着部20を取り付けてある。
【0064】
図10に示す状態は、例えばリアワイパー6が待機位置に存在している状態を表しており、この状態においては、固定端部212と可動端部214とが近づいており、展開部材216を巻き取って収容した状態となっている。
【0065】
車両の運転者がリアワイパー6を作動させると、リアワイパー6は図10に示す待機位置から払拭反転位置に向けて移動する。リアワイパー6が払拭反転位置に移動した状態が、図11に示す状態である。リアワイパー6が払拭反転位置に移動すると、連設材222が可動端部214を引っ張るので、巻取体が回転して展開部材216が扇状に展開する。展開部材216の表面には、例えば図11に示すように「アリガドウ (^.^)(-.-)(_._)」の合図を記載してあるので、後続車両の運転者はその合図を読み取ることができる。
【0066】
展開部材に記載する合図として、図3及び図11に示すものの他に、図12に示す「サンキュー」の記載や、図13に示すように「有り難う」の文字に加えて人が微笑んでいる図柄を併せて表示することもできる。この他、可愛らしい動物の図柄を加えたり、漫画のキャラクターがお礼をしている様子を描いた図柄を加えたりすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明に係るリアウインドウ表示装置は、後続車両にお礼を提示する用途に加え、他の用途にも用いることができる。
【符号の説明】
【0068】
2 リアワイパーアーム
4 ワイパーブレード
6 リアワイパー
8 リアウインドウ
10、210 リアウインドウ表示装置
11、211 カバー体
12、212 固定端部
14、214 可動端部
15 連結部材
16、216 展開部材
17 通気用開口
18、218 基部
18a 突出部
20、120 取着部
22、222 連設材
24 連設腕
26 締結部材
30 要部
40 締結ノブ
42 引上げねじ
44 吸盤ガイド
46 吸盤
48 チャンバー
115 連結部材
115a 折り目部分
115b 補助部材
116 展開部材
144 接着パッド
146 接着部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定端部と可動端部との間が扇状に展開可能であり、且つ固定端部と可動端部とを近づけて収容することが可能であって、展開時に後続車両に対して表示する合図を記載した展開部材と、
前記展開部材の固定端部を保持する基部と、
前記基部を車両のリアウインドウ又はリアウインドウ付近に取着する取着部と、
前記展開部材の可動端部を車両のリアワイパーアームに連設する連設材と、
を備え、前記リアワイパーアームの旋回動作に伴い、前記展開部材が扇状に展開する動作と収容する動作とを行うことを特徴とするリアウインドウ表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載のリアウインドウ表示装置において、
前記展開部材は複数の短冊片から構成され、各短冊片の長手方向における一端部付近には、各短冊片を回動可能に軸支する要部を有し、
前記要部から離れた部位には、隣接する短冊片同士の離間範囲を定める連結部材を有している、するリアウインドウ表示装置。
【請求項3】
請求項1に記載のリアウインドウ表示装置において、
前記展開部材は複数の短冊片から構成され、各短冊片の長手方向における一端部付近には、各短冊片を回動可能に軸支する要部を有し、
隣接する前記短冊片を、折り畳み可能な屈曲性を備える連結部材で連結している、リアウインドウ表示装置。
【請求項4】
請求項1に記載のリアウインドウ表示装置において、
前記展開部材を、網状、布状又はシート状の湾曲可能な部材で構成し、
前記固定端部を、前記展開した展開部材を巻き取る截頭円錐形状の巻取体で構成し、
前記基部は、前記巻取体を回動可能に軸支する軸体と、前記展開部材を巻取る方向に前記巻取体に回転力を付勢する巻取付勢部材と有している、リアウインドウ表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−126493(P2011−126493A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−289308(P2009−289308)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(509350778)
【Fターム(参考)】