説明

リアクトル、コンバータ、および電力変換装置

【課題】小型で、放熱性に優れるリアクトルを提供する。
【解決手段】リアクトル1は、コイル2とコイル2が配置される磁性コア3とを具える組合体10と、組合体10を収納するケース4とを具える。ケース4は、リアクトル1が固定対象に設置されるときに固定対象に接する底板部40と、底板部40に接着剤により取り付けられ、組合体10の周囲を囲む側壁部41と、底板部40の内面にコイル2を固定する接合層42とを具える。底板部40は、側壁部41よりも熱伝導率が高い材料で構成される。リアクトル1は、熱伝導率が高い底板部40を具えることに加えて、接合層42によって底板部40にコイル2が接合されることで、コイル2の熱を底板部40に伝達し易く、放熱性に優れる。底板部40と側壁部41とを接着剤で一体化することで、両部40,41の厚さを薄くできるため、リアクトル1は、小型である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド自動車などの車両に搭載される車載用DC-DCコンバータといった電力変換装置の構成部品などに利用されるリアクトル、このリアクトルを具えるコンバータ、並びにこのコンバータを具える電力変換装置に関するものである。特に、小型で放熱性に優れるリアクトル、コンバータ、および電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電圧の昇圧動作や降圧動作を行う回路の部品の一つに、リアクトルがある。例えば、特許文献1は、ハイブリッド自動車などの車両に載置されるコンバータに利用されるリアクトルを開示している。このリアクトルは、コイルと、コイルが配置される環状の磁性コアと、コイルと磁性コアとの組合体を収納するケースと、ケース内に充填される封止樹脂とを具える。このリアクトルは、一般に、通電時に発熱するコイルなどを冷却するために、冷却ベースといった固定対象に固定されて利用される。
【0003】
上記ケースは、アルミニウムのダイキャスト品が代表的であり、上記冷却ベースに固定されて上記コイルなどの熱の放熱経路に利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-050408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
昨今、ハイブリッド自動車などの車載部品には、更なる小型化、軽量化が望まれている。しかし、従来のアルミニウムケースを具えるリアクトルでは、更なる小型化が難しい。
【0006】
アルミニウムは導電性材料であるため、少なくともコイルと電気的に絶縁する必要がある。従って、通常、コイルとケースの内面(底面及び側壁面)との間には、電気的絶縁距離を確保するために比較的大きな間隔が設けられている。この絶縁距離の確保のために小型化が難しい。
【0007】
例えば、ケースを省略することで、リアクトルの小型化を図ることができる。しかし、コイルや磁性コアがむき出しの状態になるため、コイルや磁性コアに対して粉塵や腐食といった外部環境からの保護や強度といった機械的な保護などを図ることができない。
【0008】
また、ケース内に充填する封止樹脂は、放熱性に優れることが望まれる。例えば、セラミックスからなるフィラーを含有させた樹脂を封止樹脂に利用することで放熱性を高められる。しかし、コイルと磁性コアとの組合体がつくる外形は複雑な形状であることから、上記組合体とケース内面との間に隙間やボイドが生じないように上記フィラーを含有する樹脂をケース内に充填しようとすると、時間が掛かり、リアクトルの生産性に劣る。また、封止樹脂中のフィラーの含有率を高めることで放熱性を向上できる反面、封止樹脂が脆化するため、熱衝撃によって破損し易くなる。従って、フィラーを含有する封止樹脂を用いなくても、放熱性に優れるリアクトルの開発が望まれる。
【0009】
そこで、本発明の目的は、小型でありながら放熱性に優れるリアクトルを提供することにある。更に、本発明の他の目的は、上記リアクトルを具えるコンバータ、このコンバータを具える電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ケースを分割構造とすると共に、ケースの内底面にコイルを固定する接合層を具える構成とすることで、上記目的を達成する。
【0011】
本発明は、コイルとこのコイルが配置される磁性コアとを有する組合体と、この組合体を収納するケースとを具えるリアクトルに係るものである。上記ケースは、上記リアクトルが固定対象に設置されるときに当該固定対象に接する底板部と、上記底板部に接着剤により取り付けられ、上記組合体の周囲を囲む側壁部と、上記底板部の内面に上記コイルを固定する接合層とを具える。そして、上記底板部の熱伝導率は、上記側壁部の熱伝導率と同等以上である。
【0012】
本発明リアクトルは、コイルにおいてリアクトルを固定対象に設置したときに設置側となる面が接合層によって底板部に固定されることから、コイルの熱を効率よく底板部に伝えられる。この底板部は、少なくとも側壁部の熱伝導率と同等以上の熱伝導性を有する材料から構成されることで、コイルの設置側の面からの熱を冷却ベースといった固定対象に効率よく伝達できる。従って、本発明リアクトルは、コイルの熱を上記底板部を介して、固定対象に伝達できるため、放熱性に優れる。特に、底板部と、側壁部とが別部材であることから、両者をそれぞれ異なる材質のものとすることができ、例えば、底板部を側壁部よりも熱伝導率が高い材料からなるものとすると、更に放熱性に優れるリアクトルとすることができる。接合層の厚さを薄くした場合、コイルの設置側の面と底板部の内面との間隔を小さくすることができ、この点からも、本発明リアクトルは、放熱性を高められる。
【0013】
また、接合層の厚さを薄くして上記間隔を小さくすることで、リアクトルの小型化を図ることができる。更に、底板部と、側壁部とが別部材であることから、両者の構成材料を容易に変更できる。例えば、側壁部を電気絶縁性に優れる材質のものとすることで、コイルの外周面と側壁部の内周面との間隔をも小さくできるため、本発明リアクトルは、より小型にできる。
【0014】
その他、本発明リアクトルは、底板部と、側壁部とが接着剤により取り付けられる別部材であることから、例えば、側壁部を取り外した状態で接合層を形成できる。ここで、底面と側壁とが一体に成形されて分離不可能である従来のケースにも、例えば、コイルが接触し得る内底面に接合層を形成できる。しかし、この場合、側壁が邪魔で、接合層を形成し難い。これに対して、本発明リアクトルは、接合層を容易に形成でき、リアクトルの製造性にも優れる。また、本発明リアクトルは、ケースを具えることで、コイル及び磁性コアに対して、環境からの保護、及び機械的保護を図ることができる。
【0015】
また、底板部と側壁部とを接着剤により固定することで、ケース内に封止樹脂を充填する場合、この封止樹脂の粘度や比重に関係なく、未硬化の封止樹脂が、上記接着剤によって底板部と側壁部との間からケースの外側に漏れることを防止できる。更に、底板部と側壁部との固定を接着剤で行うことで、両者の構成や組立て工程を簡易にできる。
【0016】
ここで、底板部と側壁部とを一体に取り付ける手法として、種々の手法を利用することができる。例えば、ボルトといった締結部材を利用することが考えられる。しかし、この場合、リアクトルを小型化し難くなる。例えば、底板部及び側壁部にボルト孔を設け、そのボルト孔にボルトをねじ込むことで両者を一体に固定することが考えられる。また、ケース内に封止樹脂を充填する場合、未硬化の封止樹脂が、底板部と側壁部との間からケースの外側に漏れることを防止するために、パッキンを配置することが好ましい。底板部の厚さや側壁部の厚さが薄いと、ボルトによって固定した際に、底板部や側壁部が変形する恐れがある。底板部及び側壁部の両者が変形すると、パッキンのつぶし代が不均一となり、そのつぶし代が小さい箇所から封止樹脂が漏れることがある。そのため、底板部と側壁部とが変形しないように、両者の厚さを厚くしたり、ボルトの貫通箇所付近を他の部分と比べて厚くする必要がある。この肉厚化により、リアクトルの小型化が困難である。
【0017】
また、底板部と側壁部とをボルトで固定する場合、封止樹脂の粘度が小さいと、パッキンを配置しているにも拘わらず、底板部と側壁部との間からケースの外側に封止樹脂が漏れることがある。封止樹脂を高温に加熱する場合、樹脂は加熱すると粘度が小さくなるため、漏出の防止を考慮すると、利用できる封止樹脂が限られる。従って、封止樹脂の種類に関係なく、底板部と側壁部との間からケースの外側に封止樹脂が漏れることを防止できるような両者の取り付け手法が望まれる。
【0018】
本発明リアクトルでは、上述のように、接着剤により底板部と側壁部とを取り付けることで、ボルトやパッキンを不要にできる。ボルトの不使用により、固定箇所の肉盛りが不要となり、底板部の厚さや側壁部の厚さを薄くすることができ、この点からも、本発明リアクトルは、小型化を図ることができる。また、本発明リアクトルは、パッキンという弾性体の仕様や封止樹脂の粘度の大小に拘わらず、上記接着剤によって封止樹脂の漏れを防止することができるため、利用可能な封止樹脂の選択の自由度を高められる。更に、本発明リアクトルは、ボルトといった締結部材やパッキンといった弾性体の削減、ボルト孔の形成や組立ての作業工程の削減が図れ、生産性に優れる。
【0019】
本発明の一形態として、上記接合層は、熱伝導率が0.1W/m・K以上の絶縁性材料により構成された形態が挙げられる。上記絶縁性材料の「絶縁性」とは、コイルと底板部との間が電気的に絶縁され得る程度の耐電圧特性を有することを言う。
【0020】
上記形態では、接合層が絶縁性材料により構成されることから、底板部が導電性材料から構成された場合でも、コイルを接合層に接触させることでコイルと底板部との間を確実に絶縁できる。従って、上記形態は、接合層を十分に薄くすることができ、この点から、コイルの熱を固定対象に伝達し易く、放熱性に優れる。熱伝導率が高いほど、放熱性を高められることから、熱伝導率が0.15W/m・K以上、更に0.5W/m・K以上、特に1W/m・K以上の絶縁性材料から構成された接合層を具える形態とすることができる。
【0021】
特に、上記接合層が、熱伝導率が2W/m・K超の材料により構成されている場合、当該接合層自体が熱伝導性に優れるため、接合層の厚さが多少厚くても、放熱性に優れるリアクトルとすることができる。接合層の厚さが厚くなるほど、絶縁性を高められる。このような放熱性に優れる接合層を具える形態は、少なくともコイルの設置側の面から当該接合層を介して効率よく放熱できることから、例えば、ケース内に封止樹脂を充填する形態とする場合、熱伝導性が劣る樹脂を封止樹脂に利用しても、当該接合層により放熱性を高められる。従って、上記放熱性に優れる接合層を具える形態は、利用可能な封止樹脂の選択の自由度を高められ、例えば、フィラーを含有していない樹脂を利用することができる。或いは、封止樹脂を有していない形態としても、上記放熱性に優れる接合層により、十分な放熱性を確保することができる。
【0022】
本発明の一形態として、上記底板部及び上記側壁部の少なくとも一方は、上記底板部に上記側壁部を取り付けたときに、この底板部と側壁部との間から上記ケースの外側に上記接着剤が漏れ出ることを防止する堰部を具える形態が挙げられる。
【0023】
底板部と側壁部との間に接着剤を介在させて底板部と側壁部との両者を固定する場合、接着剤の量や粘度によっては、接着剤が硬化する前に、底板部と側壁部とによって接着剤が押し広げられるなどして、底板部と側壁部との間から接着剤が漏れ出る恐れがある。上記形態では、底板部と側壁部との間で押し広げられた接着剤が堰部によって堰止められ、ケースの外側に漏れ出ることを防止することができる。また、この堰部を底板部と側壁部とを固定するときの位置決めに利用することができ、両者の位置合わせを行い易い。この堰部は、両者に具えることができる。この場合、底板部及び側壁部の双方に接着剤を塗布した場合でも、上述のように接着剤の漏出を防止できる。底板部又は側壁部にのみ、堰部を具えていてもよい。底板部及び側壁部のいずれか一方にのみ堰部を具える場合、一方に具えられた堰部の内周縁に、他方の外周側縁が対応する位置に合わさるように、底板部に側壁部を嵌め込んで取り付けることによって、両者をずれることなく固定することができる。
【0024】
本発明の一形態として、上記底板部及び上記側壁部の少なくとも一方は、上記接着剤が充填される接着用溝を具える形態が挙げられる。
【0025】
接着剤が充填される接着用溝を具えることで、この接着用溝が、接着剤の塗布箇所の目印となるため、接着剤の塗布を行い易い。また、接着用溝に一定量の接着剤を充填可能なことで、十分な接着剤の塗布ができる。そして、接着用溝に接着剤が存在することで、底板部と側壁部との接触面積を大きくできるため、底板部と側壁部との両者をより強固に固定することができる。
【0026】
上記接着用溝は、底板部及び側壁部の少なくとも一方に具えられていればよく、双方に具えられていてもよい。底板部に接着用溝を具える場合、接着剤の充填が行い易い。一方、側壁部に接着用溝を具える場合、底板部の厚さを薄くできるので、冷却ベースといった固定対象に熱を伝達し易く、リアクトルの放熱性を向上できる。底板部と側壁部共に接着用溝を具える場合、底板部と側壁部との接触面積を大きくできるため、両者をより強固に固定することができる。
【0027】
本発明の一形態として、上記底板部及び上記側壁部の少なくとも一方は、上記接着剤に接する面が平坦である形態が挙げられる。
【0028】
接着剤に接する面が平坦であることで、底板部や側壁部の構成を簡易にすることができる。特に、底板部については、厚さを薄くできるので、冷却ベースといった固定対象に熱を伝達し易く、リアクトルの放熱性を向上できる。
【0029】
本発明の一形態として、上記側壁部は、その内側に上記組合体を位置決めするためのガイド部を具える形態が挙げられる。
【0030】
側壁部の内側にガイド部を具えることで、底板部に組合体を固定するときに、位置決めを行い易い。側壁部は底板部に対して位置決めができ、組合体は側壁部に設けられたガイド部に対して位置決めができる。よって、底板部、側壁部、組合体の三者の位置決めを行うための治具を用いずに、上記三者の位置合わせを容易に行うことができる。
【0031】
本発明の一形態として、上記接合層が絶縁性接着剤により構成された接着剤層を少なくとも一層具え、上記底板部が導電性材料により構成された形態が挙げられる。
【0032】
上記接合層が絶縁性接着剤から構成された接着剤層を具えることで、コイルと接合層との密着性を高められる。特に、上記接着剤層が多層構造である場合、一層あたりの接着剤層の厚さが薄くても、電気絶縁性能を高められる。ここで、接着剤層をできるだけ薄くすると、コイルと底板部との間の距離を短くできるため、放熱性の向上、リアクトルの小型化を図ることができる。しかし、接着剤層を薄くすると、ピンホールが存在する恐れがある。これに対し、多層構造とすることで、ある層のピンホールを隣接する別の層により塞ぐことができるため、優れた絶縁性能を有する接合層とすることができる。接着剤層の一層あたりの厚さ及び層数は、適宜選択することができ、合計厚さが厚いほど、絶縁性が高められ、薄いと放熱性が高められる。絶縁性能に優れる材質であれば、各接着剤層が薄く、かつ積層数が少なくても十分な放熱性、絶縁性を有することができる。例えば、接着剤層の合計厚さが2mm未満、更に1mm以下、特に0.5mm以下である接合層とすることができる。一方、上記底板部を導電性材料、代表的には、アルミニウムなどの金属により構成することで、これらの金属は一般的に放熱性に優れることから、リアクトルの放熱性を更に高められる。また、上記底板部が導電性材料により構成されていても、上述のように接合層が絶縁性材料により構成された接着剤層を具えるため、コイルと底板部との間の電気的な絶縁を確保することができる。
【0033】
本発明の一形態として、上記接着剤は、上記接合層を構成する上記絶縁性接着剤と同じである形態が挙げられる。
【0034】
底板部と側壁部とを固定する接着剤と、接合層(接着剤層)を構成する絶縁性接着剤とが同じであると、例えば、底板部の内面の全面に上記絶縁性接着剤を塗布することで、底板部と側壁部とを固定する接着剤層と、上記接合層とを同時に、かつ一体に形成できる。よって、底板部と側壁部とを固定するための接着剤を別途側壁部に塗布する必要がない。また、コイルを接合層に接触させ、かつ底板部と側壁部とを接触させ、各接触箇所を固定する際、同時に接着剤を硬化させることができる。よって、接着剤を塗布する工程や、接着剤を硬化する工程を簡素化することができ、この形態は、リアクトルの生産性に優れる。
【0035】
本発明の一形態として、上記接着剤は、上記接合層を構成する上記絶縁性接着剤と異なる形態が挙げられる。
【0036】
底板部と側壁部とを固定する接着剤と、接合層(接着剤層)を構成する絶縁性接着剤とが異なることで、利用可能な接着剤の選択の自由度を高められる。例えば、底板部と側壁部とを固定する接着剤は、底板部と側壁部との構成材料に拘わらず、底板部と側壁部との両者を強固に接続固定できる接着剤が挙げられる。一方、接合層を構成する絶縁性接着剤は、コイルからの熱をこの接合層を介して冷却ベースといった固定対象に効率よく伝達できる接着剤が挙げられる。このように各用途に合った接着剤を利用できる。
【0037】
本発明の一形態として、上記接合層と上記接着剤とは上記底板部の内面に配置されたシート状接着剤により一体に構成された形態が挙げられる。
【0038】
シート状接着剤を利用することで、接合層や底板部と側壁部とを固定する接着剤の配置作業が容易であり、この形態は、リアクトルの生産性に優れる。特に、シート状接着剤の大きさを調整することで、一つのシート状接着剤により、底板部と側壁部とを固定する接着剤層と、接合層とを一体に、かつ容易に形成できることから、上記形態は、リアクトルの生産性に優れる。また、この形態も、上述のように底板部及び側壁部における接着剤の接触面を平坦にすることができるため、底板部及び側壁部を簡単な形状にできる。
【0039】
本発明の一形態として、上記側壁部が絶縁性材料により構成された形態が挙げられる。
【0040】
上記側壁部を絶縁性材料により構成することで、当該側壁部とコイルとが絶縁されるため、当該側壁部の内面とコイルの外周面との間隔を狭められ、更なる小型化を図ることができる。また、絶縁性材料を樹脂などの金属材料よりも軽い材質とすると、従来のアルミニウムケースよりも軽量なケースとすることができる。なお、上記側壁部も、底板部と同様にアルミニウムといった導電性材料により構成することができる。この場合、放熱性を高められる。また、この場合、導電性かつ非磁性材料によりケースが構成されることで、ケースが磁気シールドとして機能し、漏れ磁束を抑制することができる。
【0041】
本発明の一形態として、上記接合層がアルミナのフィラーを含有するエポキシ系接着剤により構成された多層構造であり、上記底板部がアルミニウム又はアルミニウム合金により構成され、上記側壁部が絶縁性樹脂により構成された形態が挙げられる。
【0042】
上記アルミナのフィラーを含有するエポキシ系接着剤は、絶縁性及び放熱性の双方に優れ、例えば、熱伝導率が3W/m・K以上を満たすことができる。従って、上記形態は、放熱性に更に優れる。また、多層構造とすることで、上述のように各接着剤層を薄くしても高い電気絶縁性を確保できる。かつ、各接着剤層を薄くすることで、上述のようにリアクトルの小型化を図ることができる。更に、アルミニウム又はアルミニウム合金は、熱伝導率が高い(アルミニウム:237W/m・K)。従って、アルミニウムなどからなる底板部を具える上記形態は、当該底板部を放熱経路としてコイルの熱を冷却ベースといった固定対象に効率よく伝達でき、放熱性に更に優れる。また、絶縁性樹脂からなる側壁部を具える上記形態は、上述のようにコイルと側壁部との間隔を狭められることから、更に小型なリアクトルにすることができる。
【0043】
本発明リアクトルは、コンバータの構成部品に好適に利用することができる。本発明のコンバータとして、スイッチング素子と、上記スイッチング素子の動作を制御する駆動回路と、スイッチング動作を平滑にするリアクトルとを具え、上記スイッチング素子の動作により、入力電圧を変換するものであり、上記リアクトルが本発明リアクトルである形態が挙げられる。この本発明コンバータは、電力変換装置の構成部品に好適に利用することができる。本発明の電力変換装置として、入力電圧を変換するコンバータと、上記コンバータに接続されて、直流と交流とを相互に変換するインバータとを具え、このインバータで変換された電力により負荷を駆動するための電力変換装置であって、上記コンバータが本発明コンバータである形態が挙げられる。
【0044】
本発明コンバータや本発明電力変換装置は、放熱性に優れ、小型である本発明リアクトルを具えることで、コンパクトに構成することができる。
【発明の効果】
【0045】
本発明リアクトルは、小型であり、放熱性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】実施形態1のリアクトルを示す概略斜視図である。
【図2】実施形態1のリアクトルに具えるコイルと磁性コアとの組合体の概略を示す分解斜視図である。
【図3】実施形態1のリアクトルの概略を示す分解斜視図である。
【図4】実施形態1のリアクトルのケースを示し、(A)は図3の矢視IV-IV断面図(側壁部の設置側の拡大図)であり、(B)は接着用溝に接着剤を充填した状態の断面図であり、(C)は側壁部を底板部に固定した状態の断面図である。
【図5】実施形態2のリアクトルの概略を示す分解斜視図である。
【図6】実施形態4のリアクトルを示し、(A)はケースにおいて側壁部を底板部に固定した状態の断面図であり、(B)はケース内に組合体を設置した状態の断面図である。
【図7】コイルと磁性コアとの組合体の別の形態の概略を示す分解斜視図である。
【図8】ハイブリッド自動車の電源系統を模式的に示す概略構成図である。
【図9】本発明コンバータを具える本発明電力変換装置の一例を示す概略回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図面において同一符号は同一部材を示す。なお、以下の説明では、リアクトルを設置したときに設置側を下側、その対向側を上側として説明する。
【0048】
{実施形態1}
図1〜図4を参照して、本発明の実施の形態1を説明する。なお、図4において、側壁部は説明上誇張して図示している。
≪全体構成≫
リアクトル1は、コイル2とコイル2が配置される磁性コア3との組合体10と、組合体10を収納するケース4とを具える。ケース4は、一面が開口した箱体であり、代表的には封止樹脂(図示せず)が充填され、組合体10は、コイル2を形成する巻線2wの端部を除いて封止樹脂に埋設される。リアクトル1の特徴の一つは、リアクトル1の製造時においてケース4が分割可能な構成となっていることにある。以下、各構成部材をより詳細に説明する。
【0049】
≪組合体≫
[コイル]
コイル2は、図2,図3を適宜参照して説明する。コイル2は、接合部の無い1本の連続する巻線2wを螺旋状に巻回してなる一対のコイル素子2a,2bと、両コイル素子2a,2bを連結するコイル連結部2rとを具える。各コイル素子2a,2bは、互いに同一の巻数で、軸方向から見た形状(端面形状)がほぼ矩形状である。これら両コイル素子2a,2bは、各軸方向が平行するように横並びに並列されており、コイル2の他端側(図3では紙面奥側)において巻線2wの一部がU字状に屈曲されてコイル連結部2rが形成されている。この構成により、両コイル素子2a,2bの巻回方向は同一となっている。
【0050】
巻線2wは、銅やアルミニウムといった導電性材料からなる導体の外周に、絶縁性材料からなる絶縁被覆を具える被覆線が好適である。ここでは、導体が銅製の平角線からなり、絶縁被覆がエナメル(代表的にはポリアミドイミド)からなる被覆平角線を利用している。絶縁被覆の厚さは、20μm以上100μm以下が好ましく、厚いほどピンホールを低減できて電気絶縁性を高められる。両コイル素子2a,2bは、上記被覆平角線をエッジワイズ巻きにして、中空の角筒状に形成されている。巻線2wは、導体が平角線からなるもの以外に、断面が円形状、楕円形状、多角形状などの種々の形状のものを利用できる。平角線は、断面が円形状の丸線を用いた場合よりも占積率が高いコイルを形成し易い。なお、各コイル素子を別々の巻線により作製し、各コイル素子を形成する巻線の端部を溶接などにより接合して一体のコイルとした形態とすることができる。
【0051】
コイル2を形成する巻線2wの両端部は、コイル2の一端側(図3において紙面手前側)においてターン形成部分から適宜引き延ばされて、例えば、ケース4の外部に引き出される(図1)。引き出された巻線2wの両端部は、絶縁被覆が剥がされて露出された導体部分に、導電材料からなる端子金具8が接続される。この端子金具8を介して、コイル2に電力供給を行う電源などの外部装置(図示せず)が接続される。端子金具8の詳細は後述する。
【0052】
[磁性コア]
磁性コア3の説明は、図2を適宜参照して行う。磁性コア3は、各コイル素子2a,2bがそれぞれ配置される一対の内側コア部31と、コイル2が配置されず、コイル2から露出されている一対の外側コア部32とを有する。ここでは、各内側コア部31はそれぞれ直方体状であり、各外側コア部32はそれぞれ、一対の台形状面を有する角柱状体である。磁性コア3は、離間して配置される内側コア部31を挟むように外側コア部32が配置され、各内側コア部31の端面31eと外側コア部32の内端面32eとを接触させて環状に形成される。これら内側コア部31及び外側コア部32により、コイル2を励磁したとき、閉磁路を形成する。
【0053】
内側コア部31は、磁性材料からなるコア片31mと、代表的には非磁性材料からなるギャップ材31gとを交互に積層して構成された積層体であり、外側コア部32は、磁性材料からなるコア片である。各コア片は、磁性粉末を用いた成形体や、絶縁被膜を有する磁性薄板(例えば、電磁鋼板)を複数積層した積層体が利用できる。
【0054】
上記成形体は、例えば、Fe、Co、Niといった鉄族金属、Fe-Si、Fe-Ni、Fe-Al、Fe-Co、Fe-Cr、Fe-Si-AlなどのFe基合金、希土類金属やアモルファス磁性体といった軟磁性材料からなる粉末を用いた圧粉成形体、上記粉末をプレス成形後に焼結した焼結体、上記粉末と樹脂との混合体を射出成形や注型成型などした成形硬化体が挙げられる。その他、コア片は、金属酸化物の焼結体であるフェライトコアなどが挙げられる。成形体は、種々の立体形状の磁性コアを容易に形成することができる。
【0055】
圧粉成形体は、上記軟磁性材料からなる粉末の表面に絶縁被膜を具えるものを好適に利用することができ、この場合、当該粉末を成形後、上記絶縁被膜の耐熱温度以下で焼成することにより得られる。絶縁被膜は、代表的には、シリコーン樹脂やリン酸塩からなるものが挙げられる。
【0056】
内側コア部31の材質と外側コア部32の材質とを異ならせた形態とすることができる。例えば、内側コア部31を上記圧粉成形体や上記積層体とし、外側コア部32を上記成形硬化体とすると、内側コア部31の飽和磁束密度を外側コア部32よりも高め易い。ここでは、各コア片は、鉄や鋼などの鉄を含有する軟磁性粉末の圧粉成形体としている。
【0057】
ギャップ材31gは、インダクタンスの調整のためにコア片間に設けられる隙間に配置される板状材であり、アルミナやガラスエポキシ樹脂、不飽和ポリエステルなど、上記コア片よりも透磁率が低い材料、代表的には非磁性材料により構成される(エアギャップの場合もある)。その他、ギャップ材31gとして、セラミックスやフェノール樹脂などの非磁性材料に磁性粉末(例えば、フェライト、Fe、Fe-Si、センダストなど)が分散した混合材料からなるものを用いると、ギャップ部分の漏れ磁束を低減できる。エアギャップとすることもできる。
【0058】
コア片やギャップ材の個数は、リアクトル1が所望のインダクタンスとなるように適宜選択することができる。また、コア片やギャップ材の形状は適宜選択することができる。
【0059】
その他、内側コア部31の外周に、絶縁性材料からなる被覆層を設けた構成とすると、コイル2と内側コア部31との間の絶縁性を高められる。上記被覆層は、例えば、熱収縮チューブや常温収縮チューブ、絶縁性テープや絶縁紙などを配置することで設けられる。上記収縮チューブを内側コア部31の外周に配置したり、絶縁性テープなどを貼り付けたりすることで、絶縁性を高めることに加えて、コア片とギャップ材とを一体化することもできる。
【0060】
磁性コア3では、内側コア部31の設置側の面と外側コア部32の設置側の面とは、面一になっていない。具体的には、リアクトル1を固定対象に設置したとき、外側コア部32において設置側となる面(以下、コア設置面と呼ぶ。図2において下面)が内側コア部31において設置側となる面よりも突出している。また、外側コア部32のコア設置面は、コイル2において設置側となる面(以下、コイル設置面と呼ぶ。図2において下面)と面一となるように、外側コア部32の高さ(リアクトル1を固定対象に設置した状態において、当該固定対象の表面に対して垂直な方向(ここでは、コイル2の軸方向に直交する方向であり、図2において上下方向)の長さ)を調整している。従って、磁性コア3は、リアクトル1を設置した状態において、側面から透視すると、H字状である。また、コア設置面及びコイル設置面が面一であることから、コイル2のコイル設置面だけでなく、磁性コア3のコア設置面も、後述する接合層42(図3)に接触することができる。更に、磁性コア3を環状に組み立てた状態において、外側コア部32の側面(図2において紙面手前及び奥の面)は、内側コア部31の側面よりも外方に突出している。従って、磁性コア3は、リアクトルを設置した状態において(図2では下方を設置側とした状態において)、上面又は下面から透視しても、H字状である。このような三次元形状の磁性コア3は、圧粉成形体とすることで形成が容易である上に、外側コア部32において内側コア部31よりも突出した箇所をも磁束の通路に利用できる。
【0061】
[インシュレータ]
組合体10は、コイル2と磁性コア3との間にインシュレータ5を具えて、コイル2と磁性コア3との間の絶縁性を高めている。インシュレータ5は、内側コア部31の外周に配置される周壁部51と、コイル2の端面(コイル素子のターンが環状に見える面)に当接される一対の枠状部52とを具えた構成が挙げられる。
【0062】
周壁部51は、ここでは、一対の断面]状体により構成され、各周壁部51は互いに接触せず、内側コア部31の外周面の一部のみに配置される構成としている。周壁部51は、内側コア部31の外周面の全周に沿って配置される筒状体とすることもできるが(後述する図7参照)、コイル2と内側コア部31との間の絶縁距離を確保することができれば、図2に示すように、内側コア部31の一部が周壁部51により覆われない形態としてもよい。また、ここでは、周壁部51は、表裏に貫通する窓部を具えるものを利用している。
【0063】
内側コア部31の一部が周壁部51から露出されることで、周壁部51の材料を低減することができる。また、封止樹脂を具える形態とする場合、上記窓部を有する周壁部51としたり、内側コア部31の全周が周壁部51により覆われない構成とすることで、内側コア部31と封止樹脂との接触面積を大きくすることができる上に、封止樹脂を流し込むときに気泡が抜け易く、リアクトル1の製造性に優れる。
【0064】
枠状部52は、平板状で、各内側コア部31がそれぞれ挿通される一対の開口部を有しており、内側コア部31を導入し易いように、内側コア部31の側に突出する短い筒状部を具える。また、一方の枠状部52には、コイル連結部2rが載置され、コイル連結部2rと外側コア部32との間を絶縁するための台座52fを具える。
【0065】
インシュレータの構成材料には、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、液晶ポリマー(LCP)などの絶縁性材料が利用できる。
【0066】
≪ケース≫
ケース4の説明は、図3,図4を適宜参照して行う。上記コイル2と磁性コア3との組合体10が収納されるケース4は、平板状の底板部40と、底板部40に立設する枠状の側壁部41とを具え、リアクトル1は、底板部40と側壁部41とが一体に形成されておらず、接着剤により固定される点、底板部40に接合層42を具える点を特徴の一つとする。
【0067】
[底板部及び側壁部]
(底板部)
底板部40は、矩形板であり、リアクトル1が固定対象に設置されるときに固定対象に接して配置される。図3に示す例では、底板部40が下方となる設置状態を示すが、底板部40が上方、或いは側方となる設置状態も有り得る。この底板部40は、ケース4を組み立てたとき、内側に配置される一面(内底面)に接合層42が形成されている。また、底板部40は、外周縁側に枠状の接合領域40fを具えている。接合領域40fの四隅には、それぞれから舌片状に突出した取付部400を有しており、各取付部400にはそれぞれ、固定対象にケース4を固定するボルト(図示せず)が挿通されるボルト孔400hが設けられている。ボルト孔400hは、後述する側壁部41のボルト孔411hに連続するように設けられている。ボルト孔400h,411hは、ネジ加工が成されていない貫通孔、ネジ加工がされたネジ孔のいずれも利用でき、個数なども適宜選択することができる。
【0068】
(側壁部)
側壁部41は、矩形枠状体であり、一方の開口部を底板部40により塞いでケース4を組み立てたとき、上記組合体10の周囲を囲むように配置され、他方の開口部が開放される。ここでは、側壁部41は、リアクトル1を固定対象に設置したときに設置側となる領域が上記底板部40の外形に沿った矩形状であり、開放された開口側の領域がコイル2と磁性コア3との組合体10の外周面に沿った曲面形状である。ケース4を組み立てた状態において、コイル2の外周面と側壁部41の内周面とは近接しており、コイル2の外周面と側壁部41の内周面との間隔は、0mm〜1.0mm程度と非常に狭い。また、ここでは、側壁部41の開口側の領域には、組合体10の外側コア部32の台形状面を覆うように配置される庇状部が設けられており、ケース4に収納された組合体10は、図1に示すようにコイル2が露出され、磁性コア3は実質的にケース4の構成材料に覆われる。上記庇状部を具えることで、耐振動性の向上、ケース4(側壁部41)の剛性の向上、その他、組合体10の外部環境からの保護や機械的保護を図ることができる。なお、上記庇状部を省略して、コイル2と共に、両外側コア部32の少なくとも一方の台形状面がいずれも露出される形態としてもよい。
【0069】
〔端子台〕
上記側壁部41の開口側の領域において、図3に示すように一方の外側コア部32の上方を覆う箇所は、端子金具8が固定される端子台410として機能する。
【0070】
端子金具8は、コイル2を構成する巻線2wの端部に接続される溶接面81と、電源などの外部装置側と接続するための接続面82と、溶接面81と接続面82とを繋ぐ連結部とを具える長方形状の板材であり、図3に示すように適宜な形状に屈曲されている。巻線2wの導体部分と端子金具8との接続には、TIG溶接などの溶接の他、圧着などが利用できる。端子金具8の形状は、例示であり、適宜な形状のものが利用できる。
【0071】
端子台410は、上記端子金具8の連結部が配置される凹溝410cが形成されている。凹溝410cに嵌め込まれた端子金具8は、その上方を端子固定部材9により覆われ、端子固定部材9をボルト91により締め付けることで、端子台410に固定される。端子固定部材9の構成材料には、後述するケースの構成材料に利用されるような絶縁性樹脂といった絶縁性材料を好適に利用することができる。なお、端子台を別部材とし、例えば、側壁部に別途端子台を固定する形態とすることができる。また、側壁部を後述するような絶縁性材料で形成する場合、端子金具をインサート成形することにより、側壁部、端子金具、端子台部分を一体とした形態とすることもできる。
【0072】
〔連結箇所〕
側壁部41の設置側の領域において、側壁部41と底板部40とを連結するために、側壁部41の外周を囲むようなフランジ部41fを具える。このフランジ部41fは、底板部40に具えられた接合領域40fと同様の形状と大きさをしている。このフランジ部41fは、側壁部41の構成材料のみで形成してもよいし、側壁部41の設置側の外周縁に対応した枠状体を別材料で形成して配置してもよい。
【0073】
〔取付箇所〕
上記フランジ部41fは、ケース4を冷却ベースといった固定対象に固定するための取付部411を具えている。この取付部411は、底板部40と同様に、フランジ部41fの四隅のそれぞれから突出して形成されており、各取付部411には、ボルト孔411hが設けられている。ボルト孔411hは、フランジ部41fの構成材料のみにより形成してもよいし、別材料からなる筒体を配置させて形成してもよい。
【0074】
(連結構成)
底板部40と側壁部41とは、接着剤により連結して一体化する。この連結構成として、底板部40及び側壁部41の少なくとも一方は、底板部40に側壁部41を取り付けたときに、この底板部40と側壁部41との間からケース4の外側に接着剤が漏れ出ることを防止する堰部を具える構成が挙げられる。そして、底板部40及び側壁部41の少なくとも一方は、接着剤が充填される接着用溝を具える構成が挙げられる。
【0075】
〔堰部〕
堰部は、底板部40に側壁部41を接着剤により取り付けるときに、接着剤が両部40,41の間からケース4の外側に漏れ出ることを防止する。堰部は、側壁部41又は底板部40に形成されていることが好ましい。本例では、側壁部41の設置側の領域に形成されたフランジ部41fに堰部41aが設けられている。具体的には、フランジ部41fは、図4に示すように、側壁部41を底板部40に取り付けたときに底板部40の一面に接する底面41dから底板部40側に向かって突出し、フランジ部41fの外周縁に沿って設けられた環状体を有する。環状体の外周縁は、フランジ部41fの外周縁と連続して形成されている。環状体の内周面は、側壁部41を底板部40に取り付けたときに、底板部40の側面と接触する箇所である。この環状体が堰部41aとして機能する。本例では、堰部41aの断面形状は、矩形状である。堰部41aの断面形状は、堰部41aの内周縁と底板部40の外周縁との間に隙間ができず、堰部41aで底板部40の側面を強固に押さえることができれば、矩形状の他、矩形以外の多角形状等であってもよい。堰部41aの高さ(底面41dからの突出長さ)は、底板部40の厚さと同等以下である。本例では、堰部41aの高さは、底板部40の厚さよりも小さくしている。堰部41aの厚さは、底板部40に側壁部41を取り付けたときに、堰部41aの内周縁と底板部40の外周縁との間に隙間ができず、堰部41aで底板部40の側面を強固に押さえることができる厚さであればよい。堰部41aは、フランジ部41fの構成材料のみで形成してもよいし、フランジ部41fの設置側の外周縁に対応した枠状体を別材料で形成して配置してもよい。前者の場合、フランジ部41fに堰部41aを一体成形するとよく、後者の場合、接着剤やボルトなどを利用して、フランジ部41fに堰部を取り付けるとよい。
【0076】
底板部40に堰部を具える場合、代表的には、底板部40の一面(図4では上面)の外周縁側において、当該一面から側壁部41に向かって突出し、かつ底板部40の外周縁に沿って環状体を設け、この環状体を堰部にするとよい。この場合、堰部は底板部40の外周縁側に形成されるので、底板部40は受け皿のような形状となる。底板部40に堰部を具える場合も、堰部は、底板部40の構成材料のみで形成してもよいし、別材料で形成して底板部40に組み合わせて配置してもよい。別材料で形成する場合、環状体の内周面を底板部40の側面に接するように当該環状体を配置してもよいし、底板部40の上面に環状体を配置してもよい。底板部40に具える堰部の断面形状は、底板部40に側壁部41を取り付けたときに、堰部の内周縁と側壁部41(フランジ部41f)の外周縁との間に隙間ができず、堰部で側壁部41(フランジ部41f)の側面を強固に押さえることができれば特に問わない。また、底板部40に具える堰部において底板部40の一面からの突出長さ(堰部とフランジ部41fの外周面との接触箇所の高さ)は、フランジ部41fの高さと同等以下であることが好ましい。なお、堰部は、側壁部41又は底板部40の外周縁の少なくとも一部に形成されていてもよい。つまり、堰部が環状体ではなく、C字状体としたり、複数の突片からなる構成としたりしてもよい。また、堰部は、側壁部41及び底板部40の双方に具えない構成としても構わない。
【0077】
〔接着用溝〕
接着用溝は、底板部40に側壁部41を接着剤により取り付けるときに、この接着剤が充填される。本例では、図4に示すように、側壁部41の設置側の領域に形成されたフランジ部41fに接着用溝41bが形成されている。接着用溝41bは、フランジ部41fの形状に沿って形成されており、側壁部41を下方から見たとき、矩形枠状である。フランジ部41fの四隅には更に取付部411(図1及び図3)を具えているので、この取付部411の形状に沿っても接着用溝41bは形成されている。具体的には、接着用溝41bは、フランジ部41fの内周縁と外周縁との間であって、取付部411が具えられている四隅については、各取付部411に設けられたボルト孔411hを囲むように形成されている。取付部411の外周縁とボルト孔411hとの間については、接着用溝41bを形成しなくても構わない。本例では、接着用溝41b(凹み)の断面形状は、図4(A)に示すように、矩形状であるが、矩形状の他、半円形状や矩形以外の多角形状等であってもよい。この凹み量(溝深さ)は、側壁部41と底板部40とを十分に固定出来るだけの接着剤が充填できれば特に問わない。また、接着用溝は、連続して形成されていなくてもよい。
【0078】
接着用溝は、側壁部41及び底板部40の少なくとも一方に形成されていることが好ましい。接着用溝が、上記のように側壁部41(フランジ部41f)に形成されている場合と、底板部40(接合領域40f)に形成されている場合と、底板部40(接合領域40f)と側壁部41(フランジ部41f)共に形成されている場合とが挙げられる。どの場合の接着用溝であっても、その形状は上述のフランジ部41fに形成された接着用溝と同様の形状とすることができる。接着用溝は複数形成してもよい。例えば、フランジ部41fもしくは接合領域40fのどちらかにのみ複数の接着用溝を並行して形成してもよいし、フランジ部41fと接合領域40f共に複数の接着用溝を並行して形成してもよい。フランジ部41fと接合領域40f共に接着用溝を形成する場合、側壁部41及び底板部40の両者を組み合わせたとき、各部40,41の接着用溝が対向するようにしてもよいし、対向せずにずれて配置するように各接着用溝を設けてもよい。フランジ部41f及び接合領域40fの双方が接着用溝を具えない構成としても構わない。
【0079】
接着用溝を具えない場合、側壁部41及び底板部40の少なくとも一方は、接着剤に接する面を平坦にすることができる。本例では、図3と図4に示すように、底板部40における接着剤に接する面が平坦となっている。他に、側壁部41のみが平坦である場合、側壁部41と底板部40共に平坦である形態にすることができる。
【0080】
(材質)
ケース4の構成材料は、例えば、金属材料とすると、金属材料は一般に熱伝導率が高いことから、放熱性に優れたケースとすることができる。具体的な金属は、例えば、アルミニウムやその合金、マグネシウム(熱伝導率:156W/m・K)やその合金、銅(398W/m・K)やその合金、銀(427W/m・K)やその合金、鉄やオーステナイト系ステンレス鋼(例えば、SUS304:16.7W/m・K)が挙げられる。上記アルミニウムやマグネシウム、及びその合金を利用すると、軽量なケースとすることができ、リアクトルの軽量化に寄与することができる。特に、アルミニウムやその合金は、耐食性にも優れるため、車載部品に好適に利用することができる。金属材料によりケース4を形成する場合、ダイキャストといった鋳造の他、プレス加工などの塑性加工により形成することができる。
【0081】
或いは、ケース4の構成材料は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ウレタン樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂などの樹脂といった非金属材料とすると、これらの非金属材料は一般に電気絶縁性に優れるものが多いことから、コイル2とケース4との間の絶縁性を高められる。また、これらの非金属材料は上述した金属材料よりも軽く、リアクトル1を軽量にできる。上記樹脂に後述するセラミックスからなるフィラーを混合した形態とすると、放熱性を向上することができる。樹脂によりケース4を形成する場合、射出成形を好適に利用することができる。
【0082】
底板部40及び側壁部41の構成材料は同種の材料とすることができる。この場合、両者の熱伝導率は等しくなる。或いは、底板部40及び側壁部41が別部材であることから、両者の構成材料を異ならせることができる。この場合、特に、コイル2が載置される底板部40の熱伝導率が側壁部41の熱伝導率よりも大きくなるように、両者の構成材料を選択すると、底板部40に配置されるコイル2及び磁性コア3の熱を冷却ベースといった固定対象に効率よく伝達できる。ここでは、底板部40をアルミニウムにより構成し、側壁部41をPBT樹脂により構成している。
【0083】
[接合層]
底板部40において、コイル2のコイル設置面及び外側コア部32のコア設置面が接触する箇所に接合層42を具える。接合層42の構成材料は、コイル2を底板部40に固定可能な材料、代表的には、接着剤や樹脂が挙げられる。接合層42は、例えば、底板部40に接着剤や樹脂などを塗布したり、スクリーン印刷などを利用したりすることによって形成することができる。或いは、シート状接着剤を利用することができる。スクリーン印刷やシート状接着剤を利用すると、所望の形状の接合層42を精度よく形成できる。特に、シート状接着剤は、所望の形状の接合層42を簡単に形成でき、作業性に優れる。
【0084】
接着層42は、単層構造でも、多層構造でもよく、多層構造の場合、異種の材質でも同種の材質でもよい。例えば、上述のスクリーン印刷によって同材質の層を多層に形成したり、異種材質のシート状接着剤を多層に積層したりすることができる。単層及び多層のいずれの場合も、(合計)厚さが薄いほど、コイル2と底板部40との間隔を小さくできて、放熱性の向上及び小型化を図ることができ、厚いほど、コイル2の強固な保持、絶縁性材料からなる場合には、コイル2と底板部40との間の絶縁性の向上を図ることができる。
【0085】
接合層42のより具体的な構成材料は、例えば、絶縁性樹脂が挙げられる。絶縁性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂などが挙げられる。後述するセラミックスからなるフィラーを含有する絶縁性樹脂を利用することができる。絶縁性樹脂に放熱性及び電気絶縁性に優れるフィラーを含有することで、放熱性及び電気絶縁性に優れる接合層42を構成することができる。接合層42を絶縁性樹脂により構成する場合、特に、接着剤とすると、コイル2と接合層42との密着性を高められて好ましい。或いは、絶縁性樹脂に上記放熱性及び電気絶縁性に優れるフィラーを含有したシート状接着剤を利用すると、放熱性及び電気絶縁性に優れる接合層42をより簡単に形成することができる。
【0086】
接合層42の構成材料が例えば、熱伝導率が2W/m・K超の絶縁性材料であると、放熱性及び絶縁性に優れた形態とすることができる。熱伝導率が高いほど放熱性を向上することができ、3W/m・K以上、特に10W/m・K以上、更に20W/m・K以上、とりわけ30W/m・K以上の材料により構成された形態とすることができる。上述のフィラーを含有する材料から構成される場合、所望の熱伝導率となるようにフィラーの材質及び含有量を調整することができる。
【0087】
接合層42に加えて、例えば、放熱層を具えた形態とすることができる。放熱層の具体的な構成材料は、例えば、金属元素,B,及びSiの酸化物、炭化物、及び窒化物から選択される一種の材料といったセラミックスなどの非金属無機材料が挙げられる。より具体的なセラミックスは、窒化珪素(Si3N4):20W/m・K〜150W/m・K程度、アルミナ(Al2O3):20W/m・K〜30W/m・K程度、窒化アルミニウム(AlN):200W/m・K〜250W/m・K程度、窒化ほう素(BN):50W/m・K〜65W/m・K程度、炭化珪素(SiC):50W/m・K〜130W/m・K程度などが挙げられる。これらのセラミックスは、放熱性に優れる上に、電気絶縁性にも優れる。上記セラミックスにより放熱層を形成する場合、例えば、PVD法やCVD法といった蒸着法を利用することができる。或いは、上記セラミックスの焼結板などを適宜な接着剤により、底板部40に接合することでも、放熱層を形成することができる。放熱層の上に接合層42を形成する。なお、セラミックスによる放熱層は、上述のように絶縁性にも優れることから、当該放熱層にコイル2を直接接触させたリアクトルとすることができる。このリアクトルは、コイル2と底板部40との間に放熱層のみを介在させることで、放熱性を高められる上に、小型である。
【0088】
接合層42の厚さは、接合層42が絶縁性材料により構成されている場合、上述のセラミックスによる層などを具える場合には、1mm以下、更に0.5mm以下と薄くても、コイル2と底板部40との間の絶縁を確保することができる。また、接合層42が薄いことで、放熱性を高められる。或いは、接合層42の厚さは、接合層42が放熱性に優れる材料により構成されている場合、0.5mm以上、更に1mm以上といった厚さにしても、放熱性に十分優れる。
【0089】
なお、上述の接合層42の厚さは、形成時の厚さであり、コイル2と磁性コア3との組合体10が載置されると、形成時の厚さよりも薄くなり、0.1mm程度になる場合がある。この点は、実施形態3のシート状接着剤を利用した場合も同様である。
【0090】
ここでは、接合層42は、アルミナからなるフィラーを含有するエポキシ系接着剤(絶縁性接着剤)により形成されている(熱伝導率:3W/m・K)。また、ここでは、接合層42は、上記接着剤層の二層構造で形成され、一層の厚さを0.2mm、合計0.4mmとしている。接合層42は、コイル設置面及びコア設置面が接合層42に十分に接触できる面積を有していれば特に形状は問わない。ここでは、接合層42は、図2に示すようにコイル2のコイル設置面及び外側コア部32のコア設置面がつくる形状に沿った形状としている。
【0091】
[封止樹脂]
ケース4内に絶縁性樹脂からなる封止樹脂(図示せず)を充填した形態とすることができる。この場合、巻線2wの端部は、ケース4の外部に引き出して、封止樹脂から露出させる。封止樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。また、封止樹脂として、絶縁性及び熱伝導性に優れるフィラー、例えば、窒化珪素、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ほう素、ムライト、及び炭化珪素から選択される少なくとも1種のセラミックスからなるフィラーを含有すると、放熱性を更に高められる。
【0092】
≪リアクトルの製造≫
上記構成を具えるリアクトル1は、以下のようにして製造することができる。
【0093】
まず、コイル2と磁性コア3との組合体10を形成する。具体的には、図2に示すようにコア片31mやギャップ材31gを積層して内側コア部31を形成し、この外周にインシュレータ5の周壁部51を配置させた状態で、各コイル素子2a,2bに挿入する。両コイル素子2a,2bの端面及び内側コア部31の端面31eをインシュレータ5の枠状部52及び外側コア部32で挟むように、コイル2に枠状部52及び外側コア部32を配置して、組合体10を形成する。内側コア部31の端面31eは、枠状部52の開口部から露出されて外側コア部32の内端面32eに接触する。
【0094】
上記コア片31mやギャップ材31gは接着剤やテープなどにより接合して一体化してもよいが、ここでは、接着剤を利用しない形態としている。また、一対の周壁部51は、互いに係合する構成ではないが、内側コア部31と共にコイル素子2a,2b内に挿入され、更に外側コア部32が配置されることで、コイル素子2a,2bの内周面と内側コア部31との間に配置された状態が維持され、脱落することが無い。
【0095】
一方、図3に示すようにアルミニウム板を所定の形状に打ち抜いて底板部40を形成し、一面に所定の形状の接合層42を形成する(ここではスクリーン印刷を利用)。この接合層42の上に、上述のようにして組み立てた組合体10を接着して固定する。接合層42が接着剤により構成されることで、組合体10を底板部40に強固に固定することができる。
【0096】
他方、射出成形などにより所定の形状に構成した側壁部41を、上記組合体10の外周面を覆うように組合体10の上方から被せ、接着剤により、底板部40と側壁部41とを一体化する。接着剤は、シリンジとノズルを使って塗出しながら、接着用溝41bにノズルを動かして塗布する(図4(B))。接着用溝41bに接着剤を充填させた状態で、側壁部41を底板部40に取り付ける(図4(C))。このとき、側壁部41に形成された堰部41aの内周縁に底板部40の外周縁が接触するように、側壁部41を底板部40に嵌め込むことで、両者をずれることなく固定することができる。そして、接着剤が硬化する前に、接着用溝41b内の接着剤が側壁部41と底板部40とによって押し広げられても、この堰部41aによって、ケース4の外側に漏れ出ることはない。この状態で接着剤を硬化させる。この接着剤は、接合層42を構成する接着剤と異なることで、用途に応じて所望の特性のものを利用できる。例えば、接合層42を構成する接着剤には放熱性と絶縁性に優れる接着剤を利用し、側壁部41と底板部40とを一体化する接着剤には両者を強固に接合できる接着剤を利用する。組合体10は、端子台410及び上述した庇状部により外側コア部32が覆われ、これら庇状部などが当たり止めとなることで、側壁部41から脱落することを防止できる。端子台410や庇状部の内側に、外側コア部32の脱落を防止する位置固定部などを別途設けておいてもよい。この工程により、図1に示すように箱状のケース4が組み立てられると共に、ケース4内に組合体10が収納された状態とすることができる。
【0097】
ケース4から突出する巻線2wの端部に端子金具8の溶接面81を溶接して、側壁部41の端子台410(図3)の凹溝410c(図3)に端子金具8を嵌め込む。そして、端子固定部材9で端子金具8の連結部を覆い、ボルト91により、端子固定部材9を側壁部41に固定することで、端子金具8を端子台410に固定する。この工程により、封止樹脂を設けないリアクトル1が形成される。
【0098】
一方、ケース4内に封止樹脂(図示せず)を充填して硬化させることで、封止樹脂を具えるリアクトル1が形成される。なお、端子金具8をボルト91により端子台410に固定しておき、封止樹脂を充填後、巻線2wの端部と端子金具8の溶接面81とを溶接してもよい。
【0099】
≪用途≫
上記構成を具えるリアクトル1は、通電条件が、例えば、最大電流(直流):100A〜1000A程度、平均電圧:100V〜1000V程度、使用周波数:5kHz〜100kHz程度である用途、代表的には電気自動車やハイブリッド自動車などの車載用電力変換装置の構成部品に好適に利用することができる。
【0100】
≪効果≫
上記構成を具えるリアクトル1は、側壁部41と同等以上の熱伝導率を有する底板部40に、接合層42によってコイル2を接合していることで、使用時に生じたコイル2の熱及び磁性コア3の熱を底板部40を介して、冷却ベースといった固定対象に効率よく伝達できる。従って、リアクトル1は、放熱性に優れる。特に、リアクトル1では、絶縁性接着剤により接合層42が構成されることで、コイル2や磁性コア3と接合層42との密着性に優れることから、コイル2などの熱を底板部40に伝え易く、リアクトル1は放熱性に優れる。
【0101】
また、リアクトル1では、底板部40をアルミニウムといった熱伝導性に優れる材料により構成していることからも、コイル2からの熱を効率よく固定対象に伝達でき、放熱性に優れる。更に、リアクトル1では、底板部40が金属材料(導電性材料)により構成されているものの、接合層42が絶縁性接着剤により構成されていることから、0.4mmと非常に薄くてもコイル2と底板部40との間の絶縁性を確保することができる。かつ、接合層42が薄いことからも、コイル2などの熱を底板部40を介して固定対象に伝え易く、リアクトル1は放熱性に優れる。加えて、リアクトル1では、接合層42の熱伝導率が2W/m・K超であり、接合層42自体が熱伝導性に優れており、このような熱伝導性に優れる接合層42が底板部40とコイル2との間に介在されることからも、リアクトル1は放熱性に優れる。
【0102】
また、リアクトル1は、ケース4を具えることから、組合体10の環境からの保護、機械的保護を図ることができる。かつ、ケース4を具えていながらも、リアクトル1では、側壁部41を樹脂により構成していることで軽量である上に、コイル2の外周面と側壁部41の内周面との間隔を狭められるため、小型である。また、上述のように接合層42が薄いことからも、コイル2のコイル設置面と底板部40の内面との間隔を狭められるため、リアクトル1は、小型である。
【0103】
更に、リアクトル1では、底板部40と側壁部41とを別部材とし、組み合せて一体とする構成であることから、側壁部41を取り外した状態で底板部40に接合層42を形成できる。従って、リアクトル1は、接合層42を容易に形成でき、生産性に優れる。また、接合層42を具える底板部40に組合体10を接合する際にも、側壁部41を取り外した状態とすることができるため、押し付けなどが行い易く、生産性に優れる。更に、底板部40と側壁部41とが別部材であることから、それぞれの材質を異ならせることができるため、構成材料の選択の幅を広げられる。
【0104】
加えて、底板部40と側壁部41とを接着剤により固定することで密閉できる。そのため、ケース4内に封止樹脂を充填する場合、この封止樹脂の種類等に関係なく、未硬化の封止樹脂が、底板部40と側壁部41との間からケース4の外側に漏れ出ることを防止することができる。従って、パッキンを不要にでき、部品点数の削減を図ることができる。また、接着剤による固定なので、他の固定部材(ボルト等)が不要であり、部品点数の削減、組み立て作業工程の削減が図れ、生産性に優れる。更に、上記パッキンや上記ボルトなどが不要であることで、底板部40や側壁部41を厚くしたり、ボルトの固定箇所などの肉厚箇所を設ける必要がないため、リアクトル1は、小型である。
【0105】
{実施形態2}
次に、図5を参照して、実施形態2のリアクトル1を説明する。実施形態2のリアクトル1は、接合層42が実施形態1と同様に絶縁性接着剤で構成されている。しかし、実施形態2では、この絶縁性接着剤と、ケース4の底板部40と側壁部41とを固定する接着剤とが同じである点が、実施形態1と異なる。また、底板部40と側壁部41共に、接着剤に接する面が平坦である点が、実施形態1と異なる。以下、これらの相違点を中心に説明し、その他の構成は、実施形態1のリアクトル1と同様であるため、説明を省略する。
【0106】
実施形態2のリアクトル1では、側壁部41が接着用溝を有しておらず、フランジ部41fの底面が平坦である。このような側壁部41を具えるケース4内に組合体10を収納するには、以下のように行う。図5に示すように、底板部40の全面に絶縁性接着剤をスクリーン印刷により塗布し、底板部40の全面に絶縁性接着剤による接着剤層を形成する。この接着剤層の一部(少なくとも組合体10のコイル2が配置される箇所)が接合層42となり、他部が底板部40と側壁部41との両者を接着するための領域となる。ここでは、この接着剤層は、実施形態1と同様に熱伝導率が2W/m・K超の接着剤により構成されていることから、上記両者を接着するための領域も、放熱性に優れる。つまり、この形態は、底板部40の全内面が放熱性に優れる接着剤層を有することから、放熱性により優れる。この接着剤層の所定位置に組合体10を配置して接着する。組合体10の配置と同時に、側壁部41を底板部40に取り付ける。底板部40と側壁部41共に、接着剤に接する面が平坦であることから、底板部40と側壁部41とを固定するための接着剤を側壁部41に塗布する必要がない。側壁部41に形成された堰部の内周縁に底板部40の外周縁が接触するように、側壁部41を底板部40に嵌め込むことで、底板部40及び側壁部41の両者をずれることなく固定することができる。この状態で接着剤を硬化させ、組合体10及び側壁部41を底板部40に固定する。なお、接着剤は、熱伝導率が2W/m・K以下のものを利用することができる。
【0107】
この形態では、ケース4を構成する底板部40と側壁部41とを固定する接着剤と、接合層42を構成する材料(ここでは絶縁性接着剤)とが同じであるため、底板部40の内面の全面に接着剤を塗布することで上記接着剤層を形成することができ、接着剤を塗布する工程を簡素化することができる。また、この形態は、組合体10と側壁部41とを接着して固定したら、接着剤を硬化させる工程は一度でよいため、作業工程の削減が図れ、生産性に優れる。底板部40の内面の全面に一度に接着剤を塗布する以外に、ケース4の底板部40と側壁部41との接着面と、接合層42とに個別に接着剤を塗布しても良い。その際、底板部40における側壁部41との接着面と、接合層とで接着剤の材質や層数を変えて塗布してもよい。また、所定の形状を有するマスクを用いることによって、底板部40と側壁部41との接着面と、接合層42の形成領域とだけに接着剤を塗布してもよい。そうすることで、上記接着面と接合層42の形成領域との両者を同時に塗布することができ、接着剤の使用量の削減が図れる。
【0108】
また、この形態では、底板部40と側壁部41共に、接着用溝などを有しておらず、接着剤に接する面が平坦であるため、両部40,41の構成を簡易にすることができる。特に、底板部40については、厚さを薄くすることができ、冷却ベースといった固定対象に熱を伝達し易く、リアクトル1の放熱性を向上できる。
【0109】
{実施形態3}
実施形態3のリアクトルは、実施形態2のリアクトル1と同様に、底板部40と側壁部41とを固定する接着剤と、接合層42を構成する絶縁性接着剤とが同じである。但し、この接着剤として、シート状接着剤を利用する点が、実施形態2と異なる。以下、この相違点を中心に説明し、その他の構成は、実施形態2と同様であるため、説明を省略する。
【0110】
シート状接着剤は、所定の温度にすることで溶融及び再硬化可能なシート材であり、所望の形状に切断することができる。従って、シート状接着剤を利用すると、接合層42と、底板部40と側壁部41とを接着するための領域とを一体に具える接着剤層を容易に形成することができる。シート状接着剤には、熱伝導率が0.1W/m・K以上の絶縁性樹脂、例えば、エポキシ樹脂などにより構成されたものが挙げられる。シート状接着剤は、絶縁性樹脂からなることから、上述のように、1mm以下、更に0.5mm以下と薄くても、コイル2と底板部40(特に、導電性材料で構成される場合)との間を十分に絶縁することができる。例えば、エポキシ樹脂からなるシート状接着剤(熱伝導率:0.7W/m・K程度、厚さ(接着前):0.5mm程度)などが挙げられる。
【0111】
或いは、シート状接着剤は、電気絶縁性に優れるベース樹脂に、熱伝導性及び電気絶縁性に優れるフィラーが含有され、熱伝導率が2W/m・K超であるものを利用することができる。例えば、ベース樹脂がエポキシ樹脂からなり、球状の微細なフィラーを含有したもの(例えば、熱伝導率が2W/m・K〜2.5W/m・K程度のもの、更に5W/m・K以上、特に10W/m・K以上のもの)が挙げられる。このような熱伝導性に優れるシート状接着剤を利用する場合、接合層42は、放熱層としても機能し、その厚さをある程度厚くしても放熱性に優れるが、例えば、0.1mm〜0.15mm程度と薄くすると、コイル2と底板部40との間の間隔を小さくできることからも、放熱性を高められる。シート状接着剤は、公知のものや市販品を利用してもよい。
【0112】
実施形態3のリアクトルも、実施形態2のリアクトル1と同様に、底板部40及び側壁部41として、接着剤に接する面が平坦なものを利用できる。また、実施形態3のリアクトルは、実施形態2のリアクトル1と同様に製造することができる。具体的には、底板部40の輪郭に沿って切断して、所定の形状となったシート状接着剤を底板部40に配置し、シート状接着剤の上に、組合体10、側壁部41を配置した後、シート状接着剤を溶融・再硬化する。この硬化により、シート状接着剤のうち、底板部40と側壁部41との間に介在されていた領域により、底板部40と側壁部41とが一体化されると共に、組合体10のコイル2と底板部40との間に介在されていた領域(当該領域は接合層42となる)により、コイル2が接合層42を介して底板部40に固定される。
【0113】
実施形態3のリアクトルは、実施形態2と同様に、底板部40の全内面に亘って、放熱性に優れる接着剤層(シート状接着剤)を有することで、放熱性により優れる。また、実施形態3のリアクトルは、実施形態2と比較して上記接着剤層の形成が容易であり、工程が複雑化せず、生産性に優れる。
【0114】
シート状接着剤を利用する形態においても、上述のセラミックスからなる放熱層を具える形態とすることができる。
【0115】
{実施形態4}
次に、図6を参照して、実施形態4のリアクトルを説明する。実施形態4のリアクトルは、ケース4の側壁部41の内側に組合体10を位置決めするためのガイド部41cを具える点が、実施形態1と異なる。実施形態4のリアクトルの製造方法は、底板部40と側壁部41とを接着剤によって一体化してから、組合体10を底板部40に固定する点が、実施形態1と異なる。以下、これらの相違点を中心に説明し、その他の構成は、実施形態1と同様であるため、説明を省略する。なお、図6(B)において、組合体10は説明上、模式的に図示しており、実際の組合体10は、実施形態1で説明したようにコイルとコイルが配置される磁性コアとを有する。
【0116】
ガイド部41cは、底板部40と側壁部41とが一体化したケース4内に組合体10を固定するときに、組合体10の位置決めを行う。本例では、図6に示すように、側壁部41の内側にガイド部41cが形成されている。より具体的には、側壁部41の内周面から突出する突起が設けられており、この突起がガイド部41cとして機能する。ガイド部41cにおける側壁部41から組合体10までの長さ(上記突起の突出長さ)は、組合体10がケース4内の所定の位置に配置されるようにあらかじめ所望の長さに揃えておくとよい。このガイド部41cは、側壁部41の内側の全周に亘って形成してもよいし、断続的に複数本形成してもよい。本例では、ガイド部41cの断面形状は矩形状であるが、組合体10を所定の位置に位置決めできれば、矩形状の他、矩形以外の多角形状や半円等であってもよい。ガイド部41cの構成材料は、樹脂等の非金属材料とすると、一般に電気絶縁性に優れるため、組合体10と側壁部41との間の絶縁性を高められて好ましい。本例では、ガイド部41cは、側壁部41を構成する絶縁性樹脂により構成され、側壁部41に一体に成形されている。
【0117】
上記構成を具えるリアクトルは、次のように製造することができる。まず、図6(A)に示すように、底板部40と側壁部41とを接着剤によって一体化する。このとき、側壁部41に形成された接着用溝41bに接着剤を充填させた状態で、側壁部41に形成された堰部41aの内周縁に底板部40の外周縁が接触するように、側壁部41を底板部40に嵌め込む。そうすることで、側壁部41は底板部40に対して位置決めができる。次に、図6(B)に示すように、底板部40の一面に所定の形状の接合層42を形成し、その上に組合体10を固定する。このとき、側壁部41に形成されたガイド部41cの先端に組合体10が接触するように、組合体10を底板部40に設置する。そうすることで、組合体10はガイド部41cに対して位置決めができる。その結果、底板部40、側壁部41、組合体10の三者の位置合わせを容易に行うことができる。この形態では、端子台410(図3参照)は側壁部41とは別部材とし、組合体10の固定後に取り付けることが好ましい。なお、底板部40と側壁部41とを一体化する前に、底板部40に接合層42を形成しておいてもよい。
【0118】
上記構成を具えるリアクトルは、上記方法以外に、実施形態2,3のように、底板部の全内面に接着剤を塗布した状態、又はシート状接着剤を配置した状態としておき、例えば、この底板部に側壁部と組合体とを同時に設置することでも製造することができる。このとき、側壁部と組合体とをガイド部によって合わせた状態にすることによって、底板部、側壁部、組合体の三者の位置合わせを容易に行うことができる。或いは、底板部の全内面に接着剤を塗布した状態、又はシート状接着剤を配置した状態としておき、例えば、この底板部に組合体を配置してから、ガイド部や堰部を利用して側壁部を適切な位置に配置することができる。側壁部を配置する際に、接着剤が未硬化であることで、組合体の位置をガイド部によりある程度調整することができる。その他に、実施形態1で述べたように、組合体を底板部に固定後、底板部と側壁部とを接着剤で一体化してもよい。
【0119】
{変形例1}
上述した実施形態では、底板部と側壁部とが異なる材質で構成された形態を説明したが、底板部と側壁部との両者が同材質で構成された形態とすることができる。例えば、両者をアルミニウムといった放熱性に優れる金属材料で構成すると、リアクトルの放熱性を更に高められる。特に、この形態では、封止樹脂を具える構成とすると、コイルや磁性コアの熱をケースに効率よく伝えられる上に、封止樹脂に絶縁性樹脂を利用することで、コイルの外周面と側壁部の内面との間の絶縁性を高められる。この形態では、接合層が絶縁性材料から構成されると、コイルのコイル設置面と底板部の内面との間隔を狭めても(=接合層の厚さを薄くしても)、コイルと底板部との間を絶縁できることから、放熱性を高められる上に、小型にできる。コイルの外周面と側壁部の内面との間には、絶縁性を確保できるように間隔を設ける。
【0120】
{変形例2}
上述した実施形態では、コイルと底板部との間に絶縁性接着剤により構成された接合層のみを具える形態を説明したが、窒化アルミニウムやアルミナなどのセラミックスから構成された放熱層と、絶縁性接着剤からなる接合層とを具える形態とすることができる。
【0121】
{変形例3}
上述した実施形態では、インシュレータ5の周壁部51と枠状部52とが一体化されない構成について説明した。その他、図7に示すインシュレータ5αのように、周壁部51αと枠状部52αとが互いに係合されて一体となる構成とすることができる。ここでは、インシュレータ5αを詳細に説明し、その他の構成は上述した実施形態と重複するため、説明を省略する。
【0122】
インシュレータ5αは、磁性コア3の内側コア部31が収納される一対の筒状の周壁部51αと、内側コア部31及び外側コア部32に接触する一対の枠状部52αとを具える。各周壁部51αは、内側コア部31の外形に沿った筒状体であり、両端部には、枠状部52αの嵌合凹凸部520が嵌め合わされる嵌合凹凸部510が設けられている。各枠状部52αは、実施形態の枠状部52と同様に平板状で、各内側コア部31がそれぞれ挿通される一対の開口部を有する。この開口部において、周壁部51αと接触する側には、周壁部51αと同様に嵌合凹凸部520が設けられ、外側コア部32と接触する側には、外側コア部32を位置決めするための]状の枠部521が設けられている。周壁部51αの嵌合凹凸部510と枠状部52αの嵌合凹凸部520とがそれぞれ嵌め合わされることで、互いの位置を保持することができる。
【0123】
上記インシュレータ5αを用いて、組合体を構成するには、以下のように行う。まず、一方の外側コア部32の内端面を上に向けた状態で当該外側コア部32を載置し、枠部521の開口側から一方の枠状部52αをスライドさせて枠部521を当該外側コア部32に嵌め込む。この工程により、一方の枠状部52αに対して、一方の外側コア部32が位置決めされる。
【0124】
次に、上記一方の枠状部52αの嵌合凹凸部520に、周壁部51αの嵌合凹凸部510を嵌め合わせて、当該枠状部52αに一対の周壁部51αを取り付ける。この工程により、一方の枠状部52αと周壁部51αとの位置関係が保持される。
【0125】
次に、周壁部51αに、コア片31m及びギャップ材31gを交互に挿入して積層させる。積層された内側コア部31は、周壁部51αによりその積層状態が保持される。ここでは、周壁部51αは、その一対の側面部に、上方向に開口したスリットを具える形状としているため、コア片31m及びギャップ材31gを周壁部51αに挿入する際にコア片31mを指などで支持できることから、挿入作業を安全かつ容易に行える。
【0126】
次に、コイル(図示せず)のコイル連結部側を下向きにして、両コイル素子を周壁部51αの外周に装着する。そして、周壁部51αに他方の枠状部52αを取り付け、当該他方の枠状部52αに他方の外側コア部32を上述のようにして取り付ける。この工程により、周壁部51αと他方の枠状部52αとの位置関係が保持されると共に、他方の枠状部52αに対して他方の外側コア部32が位置決めされる。上記工程により、コイルと磁性コア3との組合体が得られる。
【0127】
インシュレータ5αを用いることで、上述した実施形態と同様に、磁性コア3の形成にあたり接着剤を用いない構成することができる。特に、インシュレータ5αは、周壁部51αと枠状部52αとが係合することで一体化した状態を維持し易く、上記組合体をケースの底板部に配置する際などで取り扱い易い。
【0128】
更に、一方の外側コア部32の背面をケースの側壁部に接触させ、他方の外側コア部32の背面と側壁部との間に、他方の外側コア部32を一方の外側コア部32側に押圧する部材(例えば、板ばね)を挿入した構成とすると、振動や衝撃などの外的要因によってギャップ長が変化することを防止できる。上述の押圧部材を利用する形態では、ギャップ材31gとして、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどの弾性材料で構成された弾性ギャップ材とすると、ギャップ材31gが変形することでギャップ長を調整したり、ある程度の寸法誤差を吸収することができる。上記押圧部材や弾性ギャップ材は、上述した実施形態や変形例、後述する変形例についても利用することができる。
【0129】
{変形例4}
或いは、磁性コア3の形成にあたり接着剤を用いない別の構成として、例えば、磁性コアを環状に保持可能な帯状締付材(図示せず)を利用することが挙げられる。帯状締付材は、例えば、磁性コアの外周に配置される帯部と、帯部の一端に装着されて帯部がつくるループを所定の長さに固定するロック部とを具えるものが挙げられる。ロック部は、突条を有する帯部の他端側領域が挿通される挿通孔と、この挿通孔に設けられて帯部の上記突条に噛み込む歯部とを有するものが挙げられる。そして、帯部の他端側領域の突条とロック部の歯部とがラチェット機構を構成することで、上記所定の長さのループを固定可能なものが好適に利用できる。
【0130】
帯状締付材の構成材料は、非磁性で、リアクトルの使用時の温度などに耐え得る耐熱性を有する材料、例えば、ステンレス鋼といった金属材料、耐熱性ポリアミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂などの非金属材料が挙げられる。市販の結束材、例えば、タイラップ(トーマスアンドベッツインターナショナルインクの登録商標)、ピークタイ(ヘラマンタイトン株式会社製結束バンド)、ステンレススチールバンド(パンドウイットコーポレーション製)を利用してもよい。
【0131】
上記帯状締付材は、組合体の組立時、帯部を、例えば、一方の外側コア部の外周、一方の内側コア部の外周とコイル素子の内周面との間、他方の外側コア部の外周、他方の内側コア部の外周とコイル素子の内周面との間に回し、ループ長をロック部で固定することで、磁性コアを環状に固定することができる。或いは、上記実施形態などで説明したようにコイルと磁性コアとの組合体を組み立てた後、外側コア部及びコイルの外周を囲むように帯部を配置させて、ループ長を固定することもできる。このような帯状締付材を利用することで、接着剤を用いることなく、磁性コアを一体化することができ、例えば、底板部に組合体を配置する際、組合体を取り扱い易い。また、コア片間の間隔を維持し易い。
【0132】
更に、磁性コアの外周やコイルの外周と帯状締付材との間に緩衝材が介在された構成とすると、帯状締付材の締付力によって磁性コアやコイルが損傷することを抑制できる。緩衝材は、環状の磁性コアが所定の形状を保持できる程度の締付力が磁性コアに作用するように、その材質、厚さ、個数、配置箇所などを適宜選択することができる。例えば、ABS樹脂、PPS樹脂、PBT樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂をコア形状に合わせて成形させた、厚さ:0.5〜2mm程度の成形部品や、シリコーンゴムなどのゴム状板材などを緩衝材に利用できる。
【0133】
{実施形態5}
実施形態1〜4のリアクトルや変形例のリアクトルは、例えば、車両などに載置されるコンバータの構成部品や、このコンバータを具える電力変換装置の構成部品に利用することができる。
【0134】
例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車といった車両1200は、図8に示すようにメインバッテリ1210と、メインバッテリ1210に接続される電力変換装置1100と、メインバッテリ1210からの供給電力により駆動して走行に利用されるモータ(負荷)1220とを具える。モータ1220は、代表的には、3相交流モータであり、走行時、車輪1250を駆動し、回生時、発電機として機能する。ハイブリッド自動車の場合、車両1200は、モータ1220に加えてエンジンを具える。なお、図8では、車両1200の充電箇所としてインレットを示すが、プラグを具える形態とすることができる。
【0135】
電力変換装置1100は、メインバッテリ1210に接続されるコンバータ1110と、コンバータ1110に接続されて、直流と交流との相互変換を行うインバータ1120とを有する。この例に示すコンバータ1110は、車両1200の走行時、200V〜300V程度のメインバッテリ1210の直流電圧(入力電圧)を400V〜700V程度にまで昇圧して、インバータ1120に給電する。また、コンバータ1110は、回生時、モータ1220からインバータ1120を介して出力される直流電圧(入力電圧)をメインバッテリ1210に適合した直流電圧に降圧して、メインバッテリ1210に充電させている。インバータ1120は、車両1200の走行時、コンバータ1110で昇圧された直流を所定の交流に変換してモータ1220に給電し、回生時、モータ1220からの交流出力を直流に変換してコンバータ1110に出力している。
【0136】
コンバータ1110は、図9に示すように複数のスイッチング素子1111と、スイッチング素子1111の動作を制御する駆動回路1112と、リアクトルLとを具え、ON/OFFの繰り返し(スイッチング動作)により入力電圧の変換(ここでは昇降圧)を行う。スイッチング素子1111には、FET,IGBTなどのパワーデバイスが利用される。リアクトルLは、回路に流れようとする電流の変化を妨げようとするコイルの性質を利用し、スイッチング動作によって電流が増減しようとしたとき、その変化を滑らかにする機能を有する。このリアクトルLとして、上記実施形態や変形例に記載のリアクトルを具える。放熱性に優れ、小型であるこれらのリアクトル1を具えることで、電力変換装置1100やコンバータ1110は、小型化に寄与することができる。
【0137】
なお、車両1200は、コンバータ1110の他、メインバッテリ1210に接続された給電装置用コンバータ1150や、補機類1240の電力源となるサブバッテリ1230とメインバッテリ1210とに接続され、メインバッテリ1210の高圧を低圧に変換する補機電源用コンバータ1160を具える。コンバータ1110は、代表的には、DC-DC変換を行うが、給電装置用コンバータ1150や補機電源用コンバータ1160は、AC-DC変換を行う。給電装置用コンバータ1150のなかには、DC-DC変換を行うものもある。給電装置用コンバータ1150や補機電源用コンバータ1160のリアクトルに、上記実施形態や変形例のリアクトルなどと同様の構成を具え、適宜、大きさや形状などを変更したリアクトルを利用することができる。また、入力電力の変換を行うコンバータであって、昇圧のみを行うコンバータや降圧のみを行うコンバータに、上記実施形態や変形例のリアクトルなどを利用することもできる。
【0138】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱することなく、適宜変更することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明リアクトルは、ハイブリッド自動車や電気自動車、燃料電池自動車などの車両に搭載される車載用コンバータといった電力変換装置などの構成部品に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0140】
1 リアクトル
2 コイル 2a,2b コイル素子 2r コイル連結部 2w 巻線
3 磁性コア 31 内側コア部 31e 端面 31m コア片 31g ギャップ材
32 外側コア部 32e 内端面
4 ケース 40 底板部 40f 接合領域
41 側壁部 41d 底面 41f フランジ部 41a 堰部 41b 接着用溝
41c ガイド部 42 接合層
400,411 取付部 400h,411h ボルト孔 410 端子台 410c 凹溝
5,5α インシュレータ 51,51α 周壁部 52,52α 枠状部
52f 台座 510,520 嵌合凹凸部 521 枠部
8 端子金具 81 溶接面 82 接続面
9 端子固定部材 91 ボルト
10 組合体
1100 電力変換装置
1110 コンバータ 1111 スイッチング素子 1112 駆動回路 L リアクトル
1120 インバータ
1150 給電装置用コンバータ 1160 補機電源用コンバータ
1200 車両
1210 メインバッテリ
1220 モータ
1230 サブバッテリ
1240 補機類
1250 車輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルとこのコイルが配置される磁性コアとを有する組合体と、この組合体を収納するケースとを具えるリアクトルであって、
前記ケースは、
前記リアクトルが固定対象に設置されるときに当該固定対象に接する底板部と、
前記底板部に接着剤により取り付けられ、前記組合体の周囲を囲む側壁部と、
前記底板部の内面に前記コイルを固定する接合層とを具え、
前記底板部の熱伝導率は、前記側壁部の熱伝導率と同等以上であることを特徴とするリアクトル。
【請求項2】
前記接合層は、熱伝導率が0.1W/m・K以上の絶縁性材料により構成されていることを特徴とする請求項1に記載のリアクトル。
【請求項3】
前記底板部及び前記側壁部の少なくとも一方は、前記底板部に前記側壁部を取り付けたときに、この底板部と側壁部との間から前記ケースの外側に前記接着剤が漏れ出ることを防止する堰部を具えることを特徴とする請求項1又は2に記載のリアクトル。
【請求項4】
前記底板部及び前記側壁部の少なくとも一方は、前記接着剤が充填される接着用溝を具えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項5】
前記底板部及び前記側壁部の少なくとも一方は、前記接着剤に接する面が平坦であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項6】
前記側壁部は、その内側に前記組合体を位置決めするためのガイド部を具えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項7】
前記接合層は、絶縁性接着剤により構成された接着剤層を少なくとも一層具え、
前記底板部は、導電性材料により構成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項8】
前記接着剤は、前記接合層を構成する前記絶縁性接着剤と同じであることを特徴とする請求項7に記載のリアクトル。
【請求項9】
前記接着剤は、前記接合層を構成する前記絶縁性接着剤と異なることを特徴とする請求項7に記載のリアクトル。
【請求項10】
前記接合層と前記接着剤とは、前記底板部の内面に配置されたシート状接着剤により一体に構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のリアクトル。
【請求項11】
前記側壁部は、絶縁性材料により構成されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項12】
前記接合層は、アルミナのフィラーを含有するエポキシ系接着剤により構成された多層構造であり、
前記底板部は、アルミニウム又はアルミニウム合金により構成され、
前記側壁部は、絶縁性樹脂により構成されていることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項13】
スイッチング素子と、前記スイッチング素子の動作を制御する駆動回路と、スイッチング動作を平滑にするリアクトルとを具え、前記スイッチング素子の動作により、入力電圧を変換するコンバータであって、
前記リアクトルは、請求項1〜12のいずれか1項に記載のリアクトルであることを特徴とするコンバータ。
【請求項14】
入力電圧を変換するコンバータと、前記コンバータに接続されて、直流と交流とを相互に変換するインバータとを具え、このインバータで変換された電力により負荷を駆動するための電力変換装置であって、
前記コンバータは、請求項13に記載のコンバータであることを特徴とする電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−30731(P2013−30731A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−280298(P2011−280298)
【出願日】平成23年12月21日(2011.12.21)
【分割の表示】特願2011−181861(P2011−181861)の分割
【原出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【特許番号】特許第4947504号(P4947504)
【特許公報発行日】平成24年6月6日(2012.6.6)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)