説明

リアクトル及びそれを用いた電力変換装置

【課題】中芯部における鋳巣の発生を抑制し、中芯部の強度及び放熱性を十分に確保することができるリアクトル及びそれを用いた電力変換装置。
【解決手段】リアクトル1は、通電により磁束を発生する筒状のコイル2と、樹脂に磁性粉末を混合した磁性粉末混合樹脂からなり、コイル2を内部に埋設してなるコア3と、コイル2の内周側において、コイル2の軸線方向Xに配設された柱状の中芯部4と、コイル2、コア3及び中芯部4を収容する有底箱型形状のケース5とを備えている。ケース5には、その底面部51の内表面511から軸線方向Xに突出してなり、中芯部4の少なくとも一部を構成する突出部53が設けられている。ケース5及び突出部53は、ダイカスト鋳造により一体的に成形されている。ケース5の底面部51には、突出部53が形成されている位置において、底面部51の外表面512から突出部53の突出方向に凹んでなる凹部54が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置等に用いられるリアクトル及びそれを用いた電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用のインバータ等の電力変換装置等に用いられるリアクトルとして、様々な構造のものが知られている(特許文献1、2参照)。
上記リアクトルとしては、例えば、通電により磁束を発生する筒状のコイルと、エポキシ樹脂等の絶縁性の樹脂に鉄粉等の磁性粉末を混合した磁性粉末混合樹脂からなり、コイルを内部に埋設してなるコアと、コイル及びコアを収容する金属製のケースとを備えたものがある。
【0003】
また、リアクトルは、コイルへの通電によってコイル及びコアが発熱することから、放熱性を向上させるために、コイルの内周側に金属製で柱状の中芯部を備えたものがある。中芯部の少なくとも一部は、ケースの底面部からケースの内側に向けて突出する突出部として形成されている。また、ケースと突出部とは、ダイカスト鋳造により一体的に成形されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−212632号公報
【特許文献2】特開2010−199257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記構成のリアクトルには、次のような問題があった。
すなわち、中芯部の少なくとも一部を構成する突出部は、ケースの底面部から突出するように形成されている。そのため、ケース及び突出部をダイカスト鋳造により一体的に成形する場合、図13に示すごとく、型971内のキャビティ972において、ケースの底面部を成形する領域951cから突出部を成形する領域953cに溶湯Mが流れ易い構造となっておらず、湯流れ性が良好とは言えなかった。なお、図中の矢印は、溶湯Mの流れの方向を示している。
【0006】
これにより、中芯部の少なくとも一部を構成する突出部に鋳巣が形成され易くなり、その突出部を含む中芯部の強度を十分に確保することができないおそれがあった。そして、中芯部を固定する際に、中芯部の破損や中芯部を固定する固定部品の破損が生じたり、それに伴って中芯部の放熱性が低下したり、振動や騒音の悪化を招いたりするおそれがあった。また、中芯部に形成された鋳巣によっても、中芯部の放熱性が低下するおそれがあった。
【0007】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたもので、中芯部における鋳巣の発生を抑制し、中芯部の強度及び放熱性を十分に確保することができるリアクトル及びそれを用いた電力変換装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一の態様は、通電により磁束を発生する筒状のコイルと、
樹脂に磁性粉末を混合した磁性粉末混合樹脂からなり、上記コイルを内部に埋設してなるコアと、
上記コイルの内周側において、該コイルの軸線方向に配設された柱状の中芯部と、
上記軸線方向の一方側を開口させてなり、上記コイル、上記コア及び上記中芯部を収容する有底箱型形状のケースとを備え、
該ケースには、その底面部の内表面から上記軸線方向に突出してなり、上記中芯部の少なくとも一部を構成する突出部が設けられており、
上記ケース及び上記突出部は、ダイカスト鋳造により一体的に成形されており、
上記ケースの上記底面部には、上記突出部が形成されている位置において、上記底面部の外表面から上記突出部の突出方向に凹んでなる凹部が形成されていることを特徴とするリアクトルにある(請求項1)。
【0009】
本発明の他の態様は、上記本発明の一の態様のリアクトルを含む、電力変換回路を構成する複数の電子部品と、
該複数の電子部品を収容するフレームとを備え、
該フレームは、上記リアクトルの上記ケース及び上記突出部と共に、ダイカスト鋳造により一体的に成形されていることを特徴とする電力変換装置にある(請求項4)。
【発明の効果】
【0010】
上記リアクトルにおいて、コイル、コア及び中芯部を収容するケースには、その底面部の内表面からコイルの軸線方向に突出してなる突出部が設けられている。また、ケース及び突出部は、ダイカスト鋳造により一体的に成形されている。また、ケースの底面部には、突出部が形成されている位置において、底面部の外表面から突出部の突出方向に凹んでなる凹部が形成されている。
【0011】
そのため、ケース及び突出部をダイカスト鋳造により一体的に成形する際に、型内のキャビティにおいて、溶湯がケースの底面部を成形する領域(以下、単に、ケースの底面部という)から突出部を成形する領域(以下、単に、突出部という)へと流れ易くなる。具体的には、ケースの底面部に流れ込んだ溶湯は、突出部の位置において凹部を避けるように、突出部の突出方向に流れようとする。すなわち、ケースの底面部に流れ込んだ溶湯を凹部の存在によって突出部へと誘導することができる。
【0012】
これにより、溶湯がケースの底面部から突出部へと流れ易くなり、突出部における湯流れ性を向上させることができるため、品質の良い突出部を成形することができる。その結果、突出部を含む中芯部における鋳巣の発生を抑制することができ、鋳巣の存在によって中芯部の強度及び放熱性が低下することを防止することができる。よって、中芯部の強度を十分に確保することができ、固定時の中芯部の破損、それに伴う中芯部の放熱性の低下、振動や騒音の悪化等を防止することができる。また、中芯部の放熱性を十分に確保することができ、中芯部を介したリアクトルの放熱性能を十分に発揮することができる。
【0013】
上記電力変換装置において、上記リアクトルを含む複数の電子部品を収容するフレームは、上記リアクトルのケース及び突出部と共に、ダイカスト鋳造により一体的に成形されている。そのため、フレームをダイカスト鋳造により成形すると同時に、リアクトルのケース及び突出部を成形することができ、さらに上述したような品質の良い突出部を成形することができる。これにより、製造効率を高めることができると共に、突出部を含む中芯部における鋳巣の発生を抑制し、中芯部の強度及び放熱性を十分に確保することができる高品質、高性能のリアクトルを備えたものとなる。
【0014】
このように、中芯部における鋳巣の発生を抑制し、中芯部の強度及び放熱性を十分に確保することができるリアクトル及びそれを用いた電力変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例1における、リアクトルの構造を示す断面説明図。
【図2】実施例1における、ケース及び突出部を示す断面説明図。
【図3】実施例1における、ケースの底面部の外表面を示す説明図。
【図4】実施例1における、ケース及び突出部をダイカスト鋳造により成形する工程を示す説明図。
【図5】実施例1における、ケース及び突出部に中間品及び蓋部を組み付ける工程を示す説明図。
【図6】実施例1における、ケース及び突出部にボルトを螺合させる工程を示す説明図。
【図7】実施例1における、ケースの凹部の別形状を示す断面説明図。
【図8】実施例1における、ケースの凹部の別形状を示す断面説明図。
【図9】実施例2における、リアクトルを用いた電力変換装置の構造を示す説明図。
【図10】実施例2における、フレームを示す斜視説明図。
【図11】実施例2における、フレームを示す平面図。
【図12】実施例2における、フレームを示す底面図。
【図13】背景技術における、ケース及び突出部をダイカスト鋳造により成形する際の溶湯の流れを示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
上記リアクトルにおいて、上記ケースに設けられた上記突出部は、上記中芯部の少なくとも一部を構成する。すなわち、突出部は、中芯部の一部を構成していてもよいし、中芯部の全てを構成していてもよい。
また、上記ケース及び上記突出部をダイカスト鋳造により成形する材料としては、強度、放熱性、防錆性、防水性等を確保するために、例えば、アルミニウム合金等を用いることができる。
【0017】
また、上記ケースの上記凹部の形状、大きさ等は、ケース及び突出部をダイカスト鋳造により一体的に成形する際に、溶湯がケースの底面部から突出部へと流れ易くなるという上述した効果を十分に発揮することができれば、任意で自由に設定することができる。また、溶湯の流れを確保するため、ケースの底面部から突出部への溶湯の流れを妨げないように設定することが望ましい。
【0018】
また、上記ケースの上記凹部は、上記突出部の中心軸上に設けられている構成とすることができる(請求項2)。
この場合には、ケース及び突出部を成形する際に、ケースの底面部から突出部への溶湯の流れをより均一にすることができる。これにより、突出部における湯流れ性をさらに高めることができる。
【0019】
また、上記ケースの上記凹部は、上記底面部の上記内表面の位置よりも上記突出方向側に凹んで形成されている構成とすることができる(請求項3)。
この場合には、ケース及び突出部を成形する際に、溶湯がケースの底面部から突出部へと確実に流れるようにすることができる。これにより、突出部における湯流れ性をさらに高めることができる。
【実施例】
【0020】
(実施例1)
リアクトルにかかる実施例について、図を用いて説明する。
本例のリアクトル1は、図1〜図3に示すごとく、通電により磁束を発生する筒状のコイル2と、樹脂に磁性粉末を混合した磁性粉末混合樹脂からなり、コイル2を内部に埋設してなるコア3と、コイル2の内周側において、コイル2の軸線方向Xに配設された柱状の中芯部4と、軸線方向Xの一方側を開口させてなり、コイル2、コア3及び中芯部4を収容する有底箱型形状のケース5とを備えている。
【0021】
ケース5には、その底面部51の内表面511から軸線方向Xに突出してなり、中芯部4の少なくとも一部を構成する突出部53が設けられている。ケース5及び突出部53は、ダイカスト鋳造により一体的に成形されている。ケース5の底面部51には、突出部53が形成されている位置において、底面部51の外表面512から突出部53の突出方向に凹んでなる凹部54が形成されている。
以下、これを詳説する。
【0022】
図1に示すごとく、リアクトル1は、例えば、車両用のインバータ、DC−DCコンバータ等の電力変換装置に用いられるものである。
リアクトル1は、通電により磁束を発生するコイル2と、コイル2への通電によって発生した磁束の磁路を構成するコア3と、コイル2及びコア3に発生した熱を伝達して放熱するための中芯部4と、コイル2、コア3及び中芯部4を収容するケース5とを備えている。
【0023】
コイル2は、銅線からなる導体線(図示略)を螺旋状に巻回して円筒状に形成されている。コイル2は、コア3の内部に埋設されている。
コア3は、絶縁樹脂であるエポキシ樹脂に磁性粉末である鉄粉を混合した磁性粉末混合樹脂からなる。コア3は、コイル2全体を覆うように配設されている。また、コア3は、コイル2と共にケース5内に収容されている。
【0024】
図1、図2に示すごとく、ケース5は、板状の底面部51と、その底面部51の外周部から立設された筒状の側面部52とを有し、軸線方向Xの一方側を開口させた有底箱型形状である。
ケース5には、底面部51の内表面511から軸線方向Xに突出してなる突出部53が設けられている。突出部53は、中芯部4の一部を構成しており、後述する中芯部4の筒状部41の嵌合凹部411に嵌合されている。また、突出部53には、ボルト11を螺合させる螺合穴531が形成されている。
【0025】
図1〜図3に示すごとく、ケース5の底面部51には、突出部53が形成されている位置において、底面部51の外表面512から突出部53の突出方向に凹んでなる凹部54が形成されている。
図2に示すごとく、凹部54は、円柱形状を呈しており、突出部53の中心軸530上に設けられている。また、凹部54は、底面部51の内表面511の位置よりも突出部53の突出方向側に凹んで形成されている。また、凹部54において、底面は曲面状に形成されており、開口部付近は底面部51の外表面512に近づくにしたがって内径が徐々に大きくなっている。
【0026】
図1、図2に示すごとく、ケース5及び突出部53は、アルミニウム合金からなり、ダイカスト鋳造により一体的に成形されている。
図1に示すごとく、ケース5の開口部59は、板状の蓋部6によって塞がれている。蓋部6には、ボルト11を挿通させる挿通孔61が設けられている。
【0027】
図1に示すごとく、円柱状の中芯部4は、コイル2の内周側を貫通するように、コイル2の軸線方向Xに配設されている。中芯部4は、ケース5に設けられた突出部53と、その突出部53に嵌合された筒状部41とからなる。
筒状部41には、突出部53に嵌合させる嵌合凹部411が形成されている。また、筒状部41には、軸線方向Xの一方の端面から嵌合凹部411まで貫通してなると共に、ボルト11を挿通させる貫通孔412が設けられている。貫通孔412は、突出部53の螺合穴531及び蓋部6の挿通孔61にそれぞれ連通している。
【0028】
また、筒状部41は、ボルト11によりケース5に対して締結固定されている。具体的には、筒状部41の嵌合凹部411に突出部53を嵌合させた状態で、ボルト11を蓋部6の挿通孔61、筒状部41の貫通孔412に挿通させ、突出部53の螺合穴531に螺合させている。また、筒状部41は、アルミニウム合金からなり、ダイカスト鋳造により成形されている。
【0029】
次に、本例のリアクトル1の製造方法について簡単に説明する。
まず、ケース5及び突出部53をダイカスト鋳造により一体的に成形する。具体的には、図4に示すごとく、複数の型71を用いて、型71内のキャビティ72に溶湯M(溶解したアルミニウム合金)を圧入し、凝固させる。そして、離型後、成形品を取り出す。
なお、図4では、複数の型71と型71内のキャビティ72とを示している。また、キャビティ72において、ケース5の底面部51を成形する領域を底面部成形領域51c、突出部53を成形する領域を突出部成形領域53cとして示している。また、図中の矢印は、溶湯Mの流れの方向を示している。
【0030】
次いで、図5に示すごとく、予め作製しておいたコイル2、コア3及び筒状部41が一体となった中間品10をケース5及び突出部53に組み付ける。このとき、筒状部41の嵌合凹部411に突出部53を嵌合させる。そして、ケース5の開口部59を蓋部6によって塞ぐ。
次いで、図6に示すごとく、ボルト11を蓋部6の挿通孔61、筒状部41の貫通孔412に挿通させ、突出部53の螺合穴531に螺合させる。
以上により、図1のリアクトル1を得る。
【0031】
次に、本例のリアクトル1における作用効果について説明する。
本例のリアクトル1において、コイル2、コア3及び中芯部4を収容するケース5には、その底面部51の内表面511からコイル2の軸線方向Xに突出してなる突出部53が設けられている。また、ケース5及び突出部53は、ダイカスト鋳造により一体的に成形されている。また、ケース5の底面部51には、突出部53が形成されている位置において、底面部51の外表面512から突出部53の突出方向に凹んでなる凹部54が形成されている。
【0032】
そのため、図4に示すごとく、ケース5及び突出部53をダイカスト鋳造により一体的に成形する際に、型71内のキャビティ72において、溶湯Mがケース5の底面部51を成形する領域である底面部成形領域51c(以下、単に、ケース5の底面部51という)から突出部53を成形する領域である突出部成形領域53c(以下、単に、突出部53という)へと流れ易くなる。具体的には、ケース5の底面部51に流れ込んだ溶湯Mは、突出部53の位置において凹部54を避けるように、突出部53の突出方向に流れようとする。すなわち、ケース5の底面部51に流れ込んだ溶湯Mを凹部54の存在によって突出部53へと誘導することができる(図4参照)。
【0033】
これにより、溶湯Mがケース5の底面部51から突出部53へと流れ易くなり、突出部53における湯流れ性を向上させることができるため、品質の良い突出部53を成形することができる。その結果、突出部53を含む中芯部4における鋳巣の発生を抑制することができ、鋳巣の存在によって中芯部4の強度及び放熱性が低下することを防止することができる。よって、中芯部4の強度を十分に確保することができ、固定時の中芯部4の破損、それに伴う中芯部4の放熱性の低下、振動や騒音の悪化等を防止することができる。また、中芯部4の放熱性を十分に確保することができ、中芯部4を介したリアクトル1の放熱性能を十分に発揮することができる。
【0034】
また、本例では、ケース5の凹部54は、突出部53の中心軸530上に設けられている。そのため、ケース5及び突出部53を成形する際に、ケース5の底面部51から突出部53への溶湯Mの流れをより均一にすることができる。これにより、突出部53における湯流れ性をさらに高めることができる。
【0035】
また、ケース5の凹部54は、底面部51の内表面511の位置よりも突出部53の突出方向側に凹んで形成されている。そのため、ケース5及び突出部53を成形する際に、溶湯Mがケース5の底面部51から突出部53へと確実に流れるようにすることができる。これにより、突出部53における湯流れ性をさらに高めることができる。
【0036】
このように、本例によれば、中芯部4における鋳巣の発生を抑制し、中芯部4の強度及び放熱性を十分に確保することができるリアクトル1を提供することができる。
【0037】
なお、本例のリアクトル1において、ケース5の底面部51に形成された凹部54は、図1、図2に示すような形状であるが、例えば、図7に示すごとく、断面の形状が略三角形状であってもよいし、図8に示すごとく、断面の形状が略四角形状であってもよい。
すなわち、凹部54の形状、大きさ等は、ケース5及び突出部53をダイカスト鋳造により一体的に成形する際に、溶湯Mがケース5の底面部51から突出部53へと流れ易くなるという上述した効果を十分に発揮することができれば、任意で自由に設定することができる。
【0038】
(実施例2)
本例は、図9〜図12に示すごとく、実施例1のリアクトル1を用いた電力変換装置8の例である。
本例の電力変換装置8は、同図に示すごとく、実施例1のリアクトル1を含む、電力変換回路を構成する複数の電子部品と、複数の電子部品を収容するフレーム84とを備えている。フレーム84は、リアクトル1のケース5及び突出部53と共に、ダイカスト鋳造により一体的に成形されている。
以下、これを詳説する。
【0039】
なお、本例では、図9に示すごとく、後述する半導体モジュール821と冷却管822とが積層されている方向を積層方向x、冷却管822の長手方向を横方向yとして説明する。
また、積層方向xにおいて、後述する冷媒導入管824及び冷媒排出管825がフレーム84から突出している側を前方、その反対側を後方として説明する。
【0040】
同図に示すごとく、電力変換装置8は、電力変換回路を構成する複数の電子部品であり、半導体素子を内蔵した複数の半導体モジュール821と、半導体モジュール821を冷却するための冷媒を流通させる複数の冷却管(冷媒流路)822とを交互に積層してなる積層体81を備えている。
半導体モジュール821は、積層方向xの両側から冷却管822によって挟持されており、隣り合う冷却管822の間には、2個の半導体モジュール821が挟持されている。また、半導体モジュール821は、IGBT等のスイッチング素子やFWD等のダイオードを内蔵している(図示略)。
【0041】
複数の冷却管822は、その長手方向(横方向y)の両端部において、隣り合う冷却管822同士が変形可能な連結管823によって連結されている。また、積層方向Xの前端に配設された冷却管822の両端部には、外部から冷媒を導入する冷媒導入管824と、外部に冷媒を排出する冷媒排出管825とが連結されている。冷媒導入管824及び冷媒排出管825は、その一部をフレーム84の外側に突出させている。
【0042】
冷媒導入管824から導入された冷媒は、冷媒導入管824側の連結管823を適宜通り、各冷却管822に分配されると共にその長手方向(横方向y)に流通する。そして、冷媒は、各冷却管822を流れる間に、半導体モジュール821との間で熱交換を行う。熱交換により温度上昇した冷媒は、冷媒排出管825側の連結管823を適宜通り、冷媒排出管825から排出される。
【0043】
なお、冷却管822等に流通させる冷媒としては、例えば、水やアンモニア等の自然冷媒、エチレングリコール系の不凍液を混入した水、フロリナート等のフッ化炭素系冷媒、HCFC123、HFC134a等のフロン系冷媒、メタノール、アルコール等のアルコール系冷媒、アセトン等のケトン系冷媒等の冷媒を用いることができる。
【0044】
また、積層体81の前方側には、リアクトル1が配置されている。リアクトル1は、積層体81の前端面811に当接している。
また、積層体81の後方側には、平板状の板ばねである弾性部材831と、一対の支承ピン832と、弾性部材831と積層体81の後端面812との間に配置された当接プレート833とからなる加圧部材82が設けられている。
【0045】
フレーム84は、積層体81を四方から囲むように形成されており、リアクトル1、積層体2及び加圧部材83を内側に収容している。また、フレーム84は、積層体81における積層方向xの両側に配置された前方壁部841及び後方壁部842と、前方壁部841と後方壁部842とをその両端において連結する一対の側方壁部843、844とを有する。加圧部材83の一対の支承ピン832は、弾性部材831の両端部とフレーム84の後方壁部842との間に配置されている。
【0046】
加圧部材83の弾性部材831は、積層体81の後端面812に当接している当接プレート833と支承ピン832との間において、積層方向xに弾性変形した状態で挟持されている。また、弾性部材831は、当接プレート833を介して積層体81の後端面812を押圧している。これにより、積層体81は、弾性部材831の付勢力によって積層方向xに加圧された状態で、フレーム84内に保持されている。
【0047】
図10に示すごとく、フレーム84の前方壁部841とリアクトル1のケース5とは、一体的に形成されている。また、フレーム84の側方壁部843、844とリアクトル1のケース5の側面部52との間には、両者を連結する連結部845が形成されている。
そして、フレーム84は、アルミニウム合金からなり、リアクトル1のケース5及び突出部53と共に、ダイカスト鋳造により一体的に成形されている。
【0048】
また、図10、図11に示すごとく、ケース5には、底面部51の内表面511から突出してなる突出部53が設けられている。
また、図12に示すごとく、ケース5の底面部51には、突出部53が形成されている位置において、底面部51の外表面512から突出部53の突出方向に凹んでなる凹部54が形成されている。
【0049】
次に、本例の電力変換装置8における作用効果について説明する。
本例の電力変換装置8において、リアクトル1を含む複数の電子部品を収容するフレーム84は、リアクトル1のケース5及び突出部53と共に、ダイカスト鋳造により一体的に成形されている。そのため、フレーム84をダイカスト鋳造により成形すると同時に、リアクトル1のケース5及び突出部53を成形することができ、さらに実施例1と同様に品質の良い突出部53を成形することができる。これにより、製造効率を高めることができると共に、突出部53を含む中芯部4における鋳巣の発生を抑制し、中芯部4の強度及び放熱性を十分に確保することができる高品質、高性能のリアクトル1を備えたものとなる。
【符号の説明】
【0050】
1 リアクトル
2 コイル
3 コア
4 中芯部
5 ケース
51 底面部
511 内表面
512 外表面
53 突出部
54 凹部
X 軸線方向(コイルの軸線方向)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電により磁束を発生する筒状のコイルと、
樹脂に磁性粉末を混合した磁性粉末混合樹脂からなり、上記コイルを内部に埋設してなるコアと、
上記コイルの内周側において、該コイルの軸線方向に配設された柱状の中芯部と、
上記軸線方向の一方側を開口させてなり、上記コイル、上記コア及び上記中芯部を収容する有底箱型形状のケースとを備え、
該ケースには、その底面部の内表面から上記軸線方向に突出してなり、上記中芯部の少なくとも一部を構成する突出部が設けられており、
上記ケース及び上記突出部は、ダイカスト鋳造により一体的に成形されており、
上記ケースの上記底面部には、上記突出部が形成されている位置において、上記底面部の外表面から上記突出部の突出方向に凹んでなる凹部が形成されていることを特徴とするリアクトル。
【請求項2】
請求項1に記載のリアクトルにおいて、上記ケースの上記凹部は、上記突出部の中心軸上に設けられていることを特徴とするリアクトル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のリアクトルにおいて、上記ケースの上記凹部は、上記底面部の上記内表面の位置よりも上記突出方向側に凹んで形成されていることを特徴とするリアクトル。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のリアクトルを含む、電力変換回路を構成する複数の電子部品と、
該複数の電子部品を収容するフレームとを備え、
該フレームは、上記リアクトルの上記ケース及び上記突出部と共に、ダイカスト鋳造により一体的に成形されていることを特徴とする電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−30623(P2013−30623A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165735(P2011−165735)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)