説明

リアクトル磁心およびリアクトル

【課題】 軟磁性薄帯の積層体による複数ギャップ構造を用いた環状のリアクトル磁心、リアクトルにおいて、各磁心部の形状を最適化し銅損の増大を極力抑制したものを提供する。
【解決手段】 2つの対向する磁心継部5と、前記磁心継部5の間に配置された複数の磁心脚部6からなる環状のリアクトル磁心であって、前記磁心継部5と前記磁心脚部6は軟磁性薄帯の積層体であり、前記磁心継部5は前記磁心脚部6に向けた突出部2を有し、前記磁心脚部6は前記磁心継部5との間にギャップが形成され、かつn個(nは1以上の整数)の磁心ブロックから構成され、前記磁心継部5の突出部の長さAと前記磁心ブロック3の磁路方向の平均長さBとの比A/Bが、0.2以上2.0以下であることを特徴とするリアクトル磁心。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源回路、特にハイブリッド自動車に用いられるリアクトル磁心、およびリアクトルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
数十kHz以下の領域での電源回路用リアクトルでは、珪素鋼板、アモルファス軟磁性薄帯、ナノ結晶質軟磁性薄帯などが磁心材として主に用いられている。これらの磁心材は鉄を主成分とし、飽和磁束密度Bsと透磁率μが大きいという長所をもつが、珪素鋼板は高周波磁心損失が大きいという欠点を有する。
【0003】
最近、急速に普及しはじめたハイブリッド自動車では、大出力の電気モータを有しており、これを駆動する電源回路には高電圧大電流に耐えるリアクトルが用いられている。約10kHzで駆動されるこのリアクトルには小型化、低騒音化、低損失化の要求が強く、リアクトルに用いられる磁心材の磁気特性としては、高い飽和磁束密度Bsと適切な範囲の透磁率μrが要求される。ここでいう適切な範囲の透磁率μrについて以下、説明する。磁界Hと磁束密度Bには、B=μoμrHの関係がある。ここでμoは真空中の透磁率を示し、磁界Hはリアクトルに流れる電流に比例する。このため、透磁率の高い磁心材では小さなリアクトル電流でも飽和磁束密度Bsに達して、磁心飽和を起こす。よって、従来はリアクトル磁心材として高い飽和磁束密度Bsの磁性材を用い、この磁心材に空隙を設けて実効的な透磁率(実効透磁率)μreを低くし、巻線数との調整により必要なインダクタンスを得る設計がなされている。本用途での実用的な実効透磁率μreはおおよそ10から50までの範囲内にある。
【0004】
大電流用のリアクトル磁心には、飽和磁束密度Bsが高く低損失の磁性材が用いられる。一般に飽和磁束密度Bsが高く低損失な磁性材は透磁率も高いため、リアクトル磁心に用いる場合にはギャップ(空隙)を設ける。このギャップを構成する部材の透磁率は略1であることから、ギャップでは磁束が磁路の外側に漏れ出るフリンジング磁束が生じる。このため、ギャップ近傍のコイル表面に渦電流が生じ、損失が増大する問題点がある。
【0005】
例えば、特許文献1には、圧粉磁心を用いた円環状リアクトル磁心が一例として開示されている。このリアクトル磁心は、フリンジング磁束による損失増大を抑えるために、一箇所当りのギャップ長を小さくした複数ギャップ構造が用いられており、計6箇所のギャップを有するリアクトル磁心が記載されている。また、計8箇所のギャップを有するリアクトル磁心として特許文献2などがある。
【0006】
【特許文献1】特開2005−50918号公報
【特許文献2】特開2005−19764号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これら、複数ギャップ構造を用いたリアクトル磁心は殆どが軟磁性粉末を用いた圧粉体で構成されたものであり、かつ、その形状については詳細に検討がなされていない。従来の複数ギャップ構造のリアクトル磁心、リアクトルでは、ギャップからコイルへ磁束が漏れ、銅損が増大しやすいという問題がある。例えば、特許文献2などでは、計8箇所のギャップを有するリアクトル磁心が開示されているが、圧粉磁心により構成されるもので、かつ銅損を抑えるための技術的配慮はなされておらず、検討の余地がある。
よって本発明は、複数ギャップ構造を用いた環状のリアクトル磁心、リアクトルにおいて、各磁心部の形状を最適化し銅損の増大を極力抑制したものを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、2つの対向する磁心継部5と、前記磁心継部5の間に配置された複数の磁心脚部6からなる環状のリアクトル磁心であって、前記磁心継部5と前記磁心脚部6は軟磁性薄帯の積層体であり、前記磁心継部5は前記磁心脚部6に向けた突出部2を有し、前記磁心脚部6は前記磁心継部5との間にギャップが形成され、かつn個(nは1以上の整数)の磁心ブロックから構成され、前記磁心継部5の突出部の長さAと前記磁心ブロック3の磁路方向の平均長さBとの比A/Bが、0.2以上2.0以下であることを特徴とする。A/Bが、0.3以上1.4以下であるものがさらに好ましい。
【0009】
前記積層体の軟磁性薄帯は、非晶質合金薄帯または微結晶質合金薄帯であるものが好ましい。
【0010】
前記積層体の最大比透磁率が500以上であるものが好ましい。
【0011】
磁心脚部の周囲にコイルを巻回したこれらのリアクトル磁心を用いたリアクトルとすることができる。ハイブリッド自動車(HEV)用リアクトルとして特に有用である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、軟磁性薄帯の積層体を用いたリアクトル磁心、およびリアクトルとして、ギャップ部の漏れ磁束による銅損の増大を抑制した高効率のものを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のリアクトルは、磁心継部5から磁心脚部6に向けて突出した突出部を形成し、この突出部の長さAと、磁心脚部6を構成する磁心ブロック3の磁路方向の平均長さBとの比A/Bの適切化を図ることで、容易に銅損の増大を抑制できることを知見したものである。
すなわち、比A/Bが0.2より小さい場合は、一方の突出部(21、22)から磁心継部1を介して他方の突出部(23、24)に流れるまでの磁束の還流が停滞しやすく、最外部ギャップでの漏れ磁束量が大きくなり、コイル交流抵抗が増大する。また、比A/Bが2.0より大きい場合は、突出部が長いために磁心脚部の複数のギャップが中央に集中して配置されるため、この部分の磁気抵抗が大きくなり、全体的にフリンジング磁束量が大きくなって、コイル交流抵抗が増大する。従って比A/Bを0.2以上2.0以下に設定することで、フリンジング磁束が小さくなり、コイルに生じる渦電流損失を小さくすることができる。この磁心を用いることにより、低損失のリアクトルを実現できる。
【0014】
本発明において「突出部の長さA」とは、図6(a)に示すように、略U型になる磁心継部の谷の部分から、対向する磁心継部側へ突出している部位の長さである。磁心継部5aの突出部は、端部と一体的に成形されることもあるし、端部と突出部を別個に製造して接着したものでもよい。図6(b)のように磁心継部5bの内径側が円弧形状の場合は、他端の継部から最も離れた谷部7から突出した長さを突出部の長さAとする。図6(c)のように磁心継部51c、52cの各突出部の長さ(A1〜A4)が異なる場合は、各突出部の長さの平均値((A1+A2+A3+A4)/4)を突出部の長さAとする。
また、本発明において、「磁心ブロックの磁路方向の平均長さB」とは、各磁心ブロックの長さの平均値とする
【0015】
突出部2を含む磁心継部5の磁路方向の断面積と、磁心ブロック3の磁路方向の断面積は同じになるようにすることが好ましい。断面積が同じであれば、その間のギャップで漏洩磁束が発生しずらく、銅損の増加を抑制できる。
また、磁心継部5の端部1の磁路方向の断面積は、突出部2の磁路方向の断面積、磁心ブロック3の磁路方向の断面積と同じか、それよりも大きいことが好ましい。この寸法で形成することで、上記と同様に、銅損の増加を抑制できる。
また、磁心ブロック3は磁心の組み立てを容易にするために直方体状のI型磁心ブロックとすることが好ましい。台形形状などのものを適用した場合、磁心ブロックの磁路方向の平均長さBは、磁路の中央部(磁路断面の重心部)に沿った長さである。
【0016】
検討の結果、磁心ブロックの数により最適な比A/Bは多少変わるが、比A/Bが0.2〜2.0の範囲であれば、銅損の増加を抑制できることが解った。比A/Bが0.3〜1.4にすればさらに銅損の増加を抑制できる。ブロック数が少ないほど、比A/Bによるコイル交流抵抗の変動は大きく、ブロック数nが3個以下のものに適用することが更に好ましい。
【0017】
前記リアクトル磁心は、例えばロール冷却により鋳造された厚さ100μm以下の薄帯、例えば、非晶質合金薄帯または微結晶質合金薄帯の積層体で形成されているものが好ましい。これらの磁心材は鉄を主成分とし、飽和磁束密度Bsと透磁率μが大きく、高周波磁心損失が小さいという長所をもち、小型化・低損失化に好適な磁心材である。また、リアクトル磁心用の材料として、軟磁性粉末と樹脂を含む圧粉体が適用されており、これらの圧粉体を用いた場合は透磁率μrが軟磁性薄帯と異なるために、磁心継部の突出部の長さAと前記磁心ブロックの磁路方向長さBとの比A/Bの最適値は異なる範囲になる。
【0018】
本発明で用いる非晶質合金薄帯として、合金組成がFeaSibBcCdM′α(原子%)(但し、M′はCr,Mo,Zr,Hf及びNbからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素であり、76≦a≦84%、0<b≦30%、0<c≦25%、0≦d≦3%、0≦α≦5%を満たす非晶質軟磁性帯板がを用いることができる。不可避な不純物としてMn, S, P, Sn, Cu, Al, Ti, から少なくとも1種以上の元素を0.50%以下含有してもよい。例えば米国Metglas社製の鉄系非晶質軟磁性材2605SA1が用いえる。
また、微結晶質合金薄帯として、一般式:Fe100−x−y−z−α−β−γCuSiM′αM″βγ(原子%)(但し、M′はNb,W,Ta,Zr,Hf,Ti及びMoからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素、M″はV,Cr,Mn,Al,白金属元素,Sc,Y,Au,Zn,Sn,Reからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素、XはC,P,Ge,Ga,Sb,In,Be,Asからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素であり、x,y,z,α,β,及びγはそれぞれ0.1≦x≦3,0<y≦30,0<z≦25,5≦y+z≦30,0.1≦α≦30,0≦β≦10及び0≦γ≦10を満たす。)により表わされる組成を有し、組織の少なくとも50%が微細な結晶粒からなり、各結晶粒の最大寸法で測定した粒径の平均が1000Å以下であるFe基合金を用いることができる。例えば、日立金属製のナノ結晶質軟磁性材ファインメット(登録商標)が用いえる。
これら軟磁性薄帯の最大比透磁率μrは、最小でも500以上の範囲であるので、本発明で規定する寸法比でリアクトル磁心を構成することで、銅損の小さい高効率のリアクトルが得られる。
【0019】
リアクトルのギャップGは、磁気的に空隙部と同等の透磁率を持つ部分であり、エアギャップだけでなく、樹脂などの非磁性材による板状部材などでも良い。この板状部材により位置決めを容易に行うことができる。
【0020】
磁心継部5と磁心脚部6の太さは、最終製品のリアクトルの寸法、および必要なリアクトル特性により適宜決めるものである。積層鋼板を用いたリアクトルでは、各部の積層方向を小さくして、鋼板の積層枚数を減らすなどの考慮が必要となる。特に磁心脚部5は周囲にコイルを巻く必要があるため、磁心脚部6の周長は短い方が好ましい。よって、同じ断面積sを得るにしても、高さhと幅dは近い値であるほど周長が短くなる。これにより、巻きまわすコイルが短くて済み、コスト削減になるとともに、軽量化にも繋がる。但し上記したように、これらの寸法比は要望される最終製品としての収納性に併せる必要がある。
【0021】
軟磁性薄帯の積層方法は、かしめによるもの、軟磁性薄帯を巻き回しもしくは積層してから樹脂を含浸させる方法、樹脂を薄帯表面に塗布してお互いを接着させる方法など、既知の方法が採用できる。
【0022】
樹脂を薄帯表面に塗布してお互いを接着させる方法を用いる場合、軟磁性薄帯に塗布する樹脂溶液は、熱硬化性のものが好ましく、一般的に市販されている既知の樹脂が使用できる。通常は溶剤で5〜15重量%に希釈して使用する。溶剤乾燥後の厚さを薄くすれば占積率が向上するが、ピンホールなどの欠陥発生率も増え、積層体で隣接する金属薄帯間の絶縁が不十分となる恐れがある。従って、乾燥後の厚さとしては、0.5ミクロン〜3ミクロンが好ましい。
【0023】
非晶質合金薄帯は、焼鈍熱処理により、より良好な磁性特性を得ることができる。前記の組成のFe系非晶質合金薄帯では300〜400℃、Co系非晶質合金薄帯では、300〜600℃で行うことが好ましい。このとき、材料は脆化することが知られており、焼鈍熱処理中に非晶質合金薄帯積層体へ加圧すると欠けやクラックなどの欠陥を発生する恐れがある。よって、無負荷状態で焼鈍熱処理することが好ましい。金属薄帯表面の酸化防止のため、この焼鈍熱処理は圧着工程と同様の雰囲気とすることが好ましい。熱処理時間は0.1〜20hが好ましい。
【0024】
熱処理炉の雰囲気はアルゴン、窒素ガスなどの不活性ガス、真空中、場合によっては大気中でもよい。熱処理中の磁心の温度分布は10℃以下になるよう制御することが好ましい。平均昇温速度は0.3-100℃/minで時間0.5h以上でおこない、平均冷却速度0.3-300℃/ min程度で冷却を行うことが好ましい。さらには昇温速度1-20℃/min、最高温度300-370℃、1-3hで行うことが好ましい。また2段熱処理、250℃以下の低温で長時間熱処理するなどでも同様の効果が得られる。低温熱処理の場合でも熱処理パターンの一部で320から350℃の範囲を0.2-1h程度設けるのが好ましい。磁心のサイズが大きく熱容量が大きい場合および一度の多数の磁心を熱処理する場合は、磁心の温度分布を10℃以下に制御することが重要でありその手段として一旦目標とする保持温度よりも低い温度で保持後昇温し、目標温度まで持って行き保持し、冷却速度0.3-5℃/minで冷却する熱処理パターンで熱処理を行うことが好ましい。熱処理は、通常露点が-30℃以下の不活性ガス雰囲気中で行うことが望ましく、露点が-60℃以下の不活性ガス雰囲気中で熱処理を行うと、ばらつきが更に小さくより好ましい結果が得られる。
【0025】
次に本発明を実施例によって具体的に説明するが、これら実施例により本発明が限定されるものではない。
(実施例1)
本発明のリアクトル磁心として、まず図3に示すI型磁心ブロック数nが3つの環状リアクトル磁心を作成した。磁心継部5および磁心脚部6は鉄系非晶質磁性帯板(米国Metglas社製2605SA1材:厚さ25μm)の占積率82%の巻磁心を切断して作製した積層体である。半円環状の磁心端部11は、径方向の厚みを20.5mmに形成した。また、ブロック状の磁心部31〜36は、径方向の厚みが20.5mmになるよう形成した。
また、磁心脚部6は各々磁心継部5との間にギャップGを形成し、また、I型磁心ブロック31〜36を形成し、片方の磁心脚部6に3つずつ(31,32,33、及び、34,35,36)直列させた。また、磁心脚部6のI型磁心ブロック3は両端にギャップG1〜G4、G5〜G8が形成されるように配置した。また、ギャップG1〜G8は各I型磁心ブロック間、およびI型磁心ブロック3と突出部2間に設けているものであり、図示されていないが、板状セラミックをギャップ材として使用している。
このギャップG1〜G8の長さを全て足した総ギャップ長は18.9mmとした。磁心継部11,12間の距離(突出部21,22、ギャップG1〜G4、I型磁心ブロック31〜33を足した長さ)は87.9mmとした。
この条件で、突出部21,22の長さAと、各I型磁心ブロックの長さBを変えた各リアクトル磁心を作成した。このリアクトル磁心の磁心脚部に同一線材の76回巻コイルを装着し、直流重畳電流60A時でインダクタンス約300μHとなるリアクトルを9例作製し、比A/Bによりコイル交流抵抗がどのように変わるか比較した。比較した各々のリアクトルでの、突出部の長さA、I型磁心ブロックの長さB、寸法比A/B、コイル交流抵抗の値を表1に示す。表1のコイル交流抵抗は、前記リアクトルの直列抵抗を、プレシジョンLCRメータ4284A(アジレント社製)の測定器を使用し、電圧レベル0.5V、周波数10kHzで測定したものである。76回巻コイルのみの交流抵抗は0.121オームであった。表1の比A/Bとコイル交流抵抗の関係をグラフにしたものを図1に示す。図1からコイル交流抵抗は、比A/Bが0.6近傍で最小になることが解る。
【0026】
【表1】

【0027】
前述した実施例の磁心継部は巻き磁心から切り出した円弧状であるが、厚さ方向に軟磁性薄帯を積層したものでも同様の傾向が見られた。
また、磁心脚部の各I型磁心ブロックの長さの比を図4に示すように変えても、図1に示す曲線は殆ど変わることはなかった。比A/Bを適宜設定することで、容易かつ効果的にコイル交流抵抗を減らせることがわかった。
【0028】
(実施例2)
磁心脚部6のI型磁心ブロックの個数により、比A/Bとコイル交流抵抗との関係にどのような影響が有るかを調べた。
使用した環状リアクトル磁心の模式図を図5に示す。磁心継部5および磁心脚部6は鉄系非晶質磁性帯板(米国Metglas社製2605SA1材:厚さ25μm)の占積率82%の巻磁心を切断して作製した積層体である。
磁心継部5は、実施例1と同様に、突出部21、23を備えたU字状磁心と、他端の突出部22,24を備えたU字状磁心の2つである。一方、磁心脚部6はI型磁心ブロックを片方の磁心脚部6に6つ直列させて配置したものを用いた。各I型磁心ブロックの長さを均等の長さにし、また、I型磁心ブロックは両端にギャップが形成されるように配置した。磁心継部11,12間の距離(突出部21,22、各ギャップ(図番表示せず)、各磁心脚部内のI型磁心ブロック31〜36を足した長さ)は、実施例1と同じく87.9mmとした。総ギャップ長も一定の18.9mmとし、1箇所当りのギャップ長は1.35mmとした。
その他の寸法、製造方法などは実施例1と同じである。
このリアクトル磁心の磁心脚部に同一線材の76回巻コイルを装着し、直流重畳電流60A時でインダクタンス約300マイクロHとなるリアクトルを作製し、比A/Bによりコイル交流抵抗がどのように変わるかを比較した。
比A/Bとコイル交流抵抗の値を表2に示す。また、それのグラフを図2に示す。I型磁心ブロックの数が増えるとコイル交流抵抗は小さくなることが解る。また、I型磁心ブロックの数が増えるに従い、コイル交流抵抗が極小となる比A/Bの値が若干大きくなる傾向がある。
【0029】
【表2】

【0030】
(実施例3)
実施例1〜2と同様の検討を、磁場解析ソフトを用いて検証したところ、コイル交流抵抗の値に差は発生するが、コイル交流抵抗と比A/Bとの大小関係については相関が取れていることが確認できた。
また、他の軟磁性帯板例えば、日立金属製のナノ結晶質軟磁性材ファインメット(登録商標)を用いたと仮定し、磁場解析ソフトにてコイル交流抵抗と比A/Bとの関係を解析したところ、コイル交流抵抗の値に多少の差は出るが、比A/Bとコイル交流抵抗の大小関係については同様の結果が得られた。環状リアクトル磁心に軟磁性帯板を用いる場合には、比A/Bについては本発明の範囲内とすることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係るリアクトルのコイル交流抵抗と比A/Bの関係を示す特性図である。
【図2】I型磁心ブロックの数を変えたときのコイル交流抵抗と比A/Bの関係を示す特性図である。
【図3】本発明に係るリアクトルの磁心全体を示す図である。
【図4】I型磁心ブロックの寸法比を変えたときの模式図である。
【図5】磁心ブロック数が異なる各リアクトル磁心の模式図である。
【図6】磁心継部の突出部を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0032】
11,12:端部、21〜24:突出部、31〜42:I型磁心ブロック、G:ギャップ、5:磁心継部、6:磁心脚部、7:谷部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの対向する磁心継部5と、前記磁心継部5の間に配置された複数の磁心脚部6からなる環状のリアクトル磁心であって、
前記磁心継部5と前記磁心脚部6は軟磁性薄帯の積層体であり、
前記磁心継部5は前記磁心脚部6に向けた突出部2を有し、
前記磁心脚部6は前記磁心継部5との間にギャップが形成され、かつn個(nは1以上の整数)の磁心ブロックから構成され、
前記磁心継部5の突出部の長さAと前記磁心ブロック3の磁路方向の平均長さBとの比A/Bが、0.2以上2.0以下であることを特徴とするリアクトル磁心。
【請求項2】
前記A/Bが、0.3以上1.4以下であることを特徴とするリアクトル磁心。
【請求項3】
前記積層体の軟磁性薄帯は、非晶質合金薄帯または微結晶質合金薄帯であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のリアクトル磁心。
【請求項4】
前記積層体の最大比透磁率が500以上であることを特徴とする請求項3に記載のリアクトル磁心。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4に記載のリアクトル磁心を用いたリアクトルであって、前記磁心脚部の周囲にコイルが巻回されたことを特徴とするリアクトル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−235525(P2008−235525A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−72163(P2007−72163)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)