説明

リアクトル

【課題】良好な性能を維持しつつ製造の容易化によるコストダウンを図ることが可能なリアクトルを提供する。
【解決手段】I形コア部13及びC形コア部14を有する磁性体からなるコア12を備え、コア12は、I形コア部13の側面の一部からなるC形コア部14との接合面Jに、C形コア部14の同一方向へ向いた一対の端面からなるI形コア部13との接合面Jが接合されて閉磁路を構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇圧コンバータ等に用いられるリアクトルに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、燃料電池車両やハイブリッド車両は、燃料電池の出力電圧や、バッテリあるいはキャパシタなどの放電電圧を昇圧する昇圧コンバータを備えている。この昇圧コンバータに用いられるリアクトルとして、U字形コアとI字形コアとを組み合わせて磁気回路を構成し、U字形コアの両脚部の内側の研摩面間にI字形コアをI字形コアの両端面側にギャップが形成されるように配置したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−36547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のように、U字形コアの両脚部の内側にI字形コアを配置させる構造のリアクトルでは、I字形コアの長さ寸法や接合面の面精度のバラツキによってU字形コアの両脚部との接合面に対して隙間ができたり、その隙間にバラツキが生じてしまう。すると、リアクトルの磁気抵抗が大きく変化してしまい、インダクタンスに影響を与えてしまう。
【0005】
このため、I字形コアの長さ寸法や互いの接合面の面精度の公差を厳格に管理しなければならず、自動車等に用いるための大量生産に不向きであり、しかも、コストアップを招いてしまう。特に、U字形コアの互いに対向した接合面の研磨加工は困難であり、しかも、加工するための工具の逃げを設けなければならず、コストが嵩んでしまう。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、良好な性能を維持しつつ製造の容易化によるコストダウンを図ることが可能なリアクトルを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のリアクトルは、I形コア部及びC形コア部を有する磁性体からなるコアを備え、
前記コアは、前記I形コア部の側面の一部からなる前記C形コア部との接合面に、前記C形コア部の同一方向へ向いた一対の端面からなる前記I形コア部との接合面が接合されて閉磁路を構成している。
【0008】
この構成によれば、I形コア部においては、C形コア部との接合面がI形コア部の側面の一部から構成され、C形コア部においては、I形コア部との接合面が当該C形コア部の同一方向へ向いた一対の端面から構成される。したがって、コアを組み立てる際には、C形コア部における同一方向を向いた一対の端面に、I形コア部の側面の一部を同時に同一方向から当接させて接合させることが可能になるので、公差の影響を抑制してI形コア部とC形コア部との接合面同士を隙間なく接合させることができる。
これにより、製造の容易化によるコストの低減を図ることができ、I形コア部とC形コア部との隙間を極力なくし、磁気抵抗による損失を大幅に低減させることができる。また、I形コア部とC形コア部との隙間のバラツキも抑え、インダクタンスへの影響も抑えることができる。
なお、本発明における「C形」とは、閉ループ形状の一部が切り欠かれてなる全ての形状を含むものであり、C字形以外に例えばU字形、コ字形なども含む。
【0009】
また、本発明のリアクトルにおいて、前記I形コア部に非磁性体を有するギャップが設けられ、該ギャップを含む前記I形コア部にコイルが巻回されていても良い。
【0010】
また、本発明のリアクトルにおいて、前記ギャップの非磁性体に、セラミックを用いても良い。
【0011】
また、本発明のリアクトルにおいて、前記C形コア部は、前記一対の端面が、同一の研磨面に同時に当接されて研磨されることにより、前記接合面とされていても良い。
【0012】
また、本発明のリアクトルにおいて、前記コアは、前記コイルの巻回部に対して、前記コイルの非巻回部が、同一断面積を維持しつつ前記コイルの巻厚を含んだ高さ寸法と同一高さ寸法にされていても良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明のリアクトルによれば、良好な性能を維持しつつ製造の容易化によるコストダウンを図ることが可能なリアクトルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態に係るリアクトルの斜視図である。
【図2】実施形態に係るリアクトルの平面図である。
【図3】実施形態に係るリアクトルのコアの構造を示すコアの概略平面図である。
【図4】参考例に係るリアクトルのコアの構造を示すコアの概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るリアクトルの実施形態について図面を参照して説明する。
図1及び図2に示すように、本実施形態に係るリアクトル11は、コア12を備えている。このコア12は、磁性体から形成されたもので、平面視でI字形に形成されたI形コア部13及び平面視でC字形に形成されたC形コア部14を有しており、I形コア部13には、コイル15が巻回されている。
【0016】
リアクトル11のコア12の材料としては、粒径50μm程度の鉄粉を圧縮した圧粉コア材またはアモルファス系のコア材が用いられている。このコア12において、I形コア部13の長さ方向中間部分にはギャップ21が設けられている。言い換えれば、I形コア部13は、その概ね半分の長さのI形コア部構成体を2つ用意し、それら2つのI形コア部構成体の一端同士を突き合わせたときの対向端面同士の間にギャップ21が設けられている。このギャップ21には、セラミックからなる非磁性体23が介在されている。
【0017】
I形コア部13には、少なくともギャップ21を含む所定範囲の外周側を覆うように、筒状のスリーブ22が設けられている。このスリーブ22は、絶縁性を有する樹脂から形成されている。コイル15は、I形コア部13のスリーブ22の外周側に巻回されており、スリーブ22によってI形コア部13とコイル15とが絶縁されている。
【0018】
I形コア部13に巻回されたコイル15としては、アルミニウムもしくは銅からなる丸線もしくは平角線が用いられている。コイル15にアルミニウムを用いれば、リアクトル11の軽量化を図ることができ、また、コイル15に平角線を用いれば、I形コア部13へ隙間なく巻回して高密度化による性能の向上を図ることができる。
【0019】
そして、I形コア部13は、ギャップ21を含む所定範囲の周囲にスリーブ22及びコイル15が設けられたサブアッセンブリの状態で組立工程へ搬送され、C形コア部14と接合される。これにより、組立工程における作業性の向上が図られる。
【0020】
また、コア12は、コイル15が巻回されたコイル巻回部12Aの断面積(図2の寸法Xの採寸方向と平行な断面の断面積)と、コイル15が巻回されていないコイル非巻回部12Bの断面積(図2の寸法W1の採寸方向と平行な断面の断面積)とが同一とされている。また、コア12は、コイル巻回部12Aに対して、コイル非巻回部12Bが、コイル巻回部12Aにおけるコイル15の巻厚を含んだ高さ寸法Hと同一高さ寸法とされている。したがって、コア12は、コイル非巻回部12Bでは、コイル巻回部12Aと同一の断面積を維持しつつ幅寸法(図2のW2)が小さくされている。このように、デッドスペースとなっていたコイル非巻回部12Bにおける上下のスペースへコア12のコイル非巻回部12Bを張り出させることにより、I形コア部13とC形コア部14との連結箇所における幅寸法W1及びC形コア部14における幅寸法W2を極力小さくすることができる。したがって、リアクトル11の全体の幅寸法X及び奥行き寸法Yを小さくし、リアクトル11のコンパクト化を図ることができる。
【0021】
上記のリアクトル11は、コイル非巻回部12Bの方がコイル巻回部12Aよりも体積が大きい。このような場合、コイル巻回部12Aの断面積の大きさを維持しつつ、リアクトル11の全体を小型化することができる。なお、コア12の上下からコイル15がはみ出さないようコア12の外形を大きくするが、コイル巻回部12Aの外形までは大きくしない。コイル巻回部12Aとコイル非巻回部12Bとを比較すると、コイル非巻回部12Bの方がコイル巻回部12Aよりも体積が大きいので、コイル非巻回部12Bをリアクトル11の全体の体格とし、コイル巻回部12Aは、コイル非巻回部12Bの外形の内側に入るようにする。
【0022】
図3に示すように、I形コア部13とC形コア部14との接合面Jは、I形コア部13のギャップ21の形成面に対して直交する平面とされている。具体的には、I形コア部13では、その両端近傍における側面の一部がC形コア部14との接合面Jとされ、このI形コア部13の接合面Jに、C形コア部14の同一方向へ向いた一対の端面からなるI形コア部13との接合面Jが接着材によって接合されている。そして、I形コア部13とC形コア部14とが接合されることにより、コア12は、閉磁路が形成されている。
【0023】
ここで、図4に示すように、I形コア部13とC形コア部14との分割箇所をギャップ21の形成面に対して平行な平面とした場合、C形コア部14の端部に張り出した張り出し部14a同士の間にI形コア部13を配設することとなる。したがって、この場合、ギャップ21の寸法を高精度に維持するためには、I形コア部13の長さ寸法も高精度にしなければならず、その加工に手間を要してしまう。また、C形コア部14におけるI形コア部13との接合面Jは、互いに対向する内側の面であるため、切削加工や研磨加工を行うことが困難であり、また、C形コア部14に工具逃げ用の溝の形成を要し、製造コストが嵩んでしまう。また、加工が困難なC形コア部14の接合面Jは、互いに対向しているため、高い平滑度に加工することが難しく、よって、I形コア部13の接合面Jとの隙間にバラツキが生じ、リアクトル11の磁気抵抗が大きく変化してしまい、インダクタンスに影響を与えてしまう。
【0024】
ここで、インダクタンスLは、式(1)で表されるように、コイル15の巻き数Nと磁気抵抗Rとから決定される。また、磁気抵抗Rは、コア12の磁路長lcとギャップ21を含むコア12の全体のギャップ長さlgとから導かれる。
【0025】
【数1】

【0026】
式(1)で示されるように、接合面Jの隙間が変化すると、コア12の磁路長lcに対してギャップ21を含むコア12の全体のギャップ長さlgが変化し、この全体のギャップ長さlgの変化によってインダクタンスLも大きく変化する。例えば、全体のギャップ長さlgが大きくなると、インダクタンスLも大きく減少することとなる。
【0027】
これに対して、本実施形態に係るリアクトル11によれば、I形コア部13では、その両端近傍における側面の一部がC形コア部14との接合面Jとされ、このI形コア部13の接合面Jに、C形コア部14の同一方向へ向いた一対の端面からなるI形コア部13との接合面Jが接着材によって接合されている。
【0028】
このように接合されるI形コア部13とC形コア部14とからコア12を構成すると、コア12を組み立てる際に、C形コア部14の接合面JにI形コア部13の接合面Jを同時に同一方向から当接させて接合させることが可能になるので、公差の影響を抑制してギャップ21の寸法を高精度に維持しつつ、I形コア部13とC形コア部14との接合面Jを研磨して接着材によって隙間なく接合させることができる。これにより、製造の容易化によるコストの低減を図ることができ、I形コア部13とC形コア部14との隙間を極力なくし、磁気抵抗による損失を大幅に低減させることができる。また、I形コア部13とC形コア部14との隙間のバラツキも抑え、インダクタンスへの影響も抑えることができる。
【0029】
また、C形コア部14は、一対の端面が、同一の研磨面に同時に当接されて研磨されることにより、I形コア部13と接合される接合面Jとされている。このように、一対の端面を同一の研磨面で同時に研磨すれば、C形コア部14のそれぞれの接合面Jを同時に平滑面とすることができ、しかも、同一面内に精度良く配置させることができる。これにより、I形コア部13の接合面Jに対してさらに隙間なく接合させることができ、損失をさらに低減させることができる。
【0030】
また、I形コア部13に非磁性体を有するギャップ21が設けられ、このギャップ21を含むI形コア部13にコイル15が巻回されているので、大電流領域までインダクタンスを保つことができる。しかも、コイル15によってギャップ21が覆われているので、ギャップ21からの漏れ磁束を抑えることができ、漏れ磁束による電磁ノイズの発生や金属製のケースの発熱が抑えられた高効率なリアクトルとすることができる。
【0031】
また、I形コア部13のギャップ21に、セラミックからなる非磁性体23を設ければ、セラミックの表面の面粗さを小さくすることができるので、I形コア部13の接触面に対する密着度を高め、インダクタンス値への影響を抑えて良好な性能を維持させることができる。
【0032】
なお、上記実施形態では、一つのギャップ21をI形コア部13に設けたが、複数のギャップ21をI形コア部13に設けても良い。
【符号の説明】
【0033】
11…リアクトル、12…コア、12A…コイル巻回部(巻回部)、12B…コイル非巻回部(非巻回部)、13…I形コア部、14…C形コア部、15…コイル、21…ギャップ、23…非磁性体、J…接合面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
I形コア部及びC形コア部を有する磁性体からなるコアを備え、
前記コアは、前記I形コア部の側面の一部からなる前記C形コア部との接合面に、前記C形コア部の同一方向へ向いた一対の端面からなる前記I形コア部との接合面が接合されて閉磁路を構成しているリアクトル。
【請求項2】
前記I形コア部に非磁性体を有するギャップが設けられ、該ギャップを含む前記I形コア部にコイルが巻回されている請求項1に記載のリアクトル。
【請求項3】
前記ギャップの非磁性体に、セラミックを用いた請求項2に記載のリアクトル。
【請求項4】
前記C形コア部は、前記一対の端面が、同一の研磨面に同時に当接されて研磨されることにより、前記接合面とされている請求項1から3のいずれか一項に記載のリアクトル。
【請求項5】
前記コアは、前記コイルの巻回部に対して、前記コイルの非巻回部が、同一断面積を維持しつつ前記コイルの巻厚を含んだ高さ寸法と同一高さ寸法にされている請求項2から4のいずれか一項に記載のリアクトル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−253068(P2012−253068A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122223(P2011−122223)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)