説明

リアクトル

【課題】放熱性を改善したリアクトルを提供する。
【解決手段】リアクトル100は、磁性体のコアの周囲にコイルを捲回したものである。リアクトル100のコイル10は、側面(コイル外周面)の一部を除いて樹脂31で覆われている。さらにリアクトル100には、コイル10の樹脂から露出している部分を覆う金属製の放熱板33がその樹脂に取り付けられている。コイル10と放熱板33の裏面との間に、双方に接するゲル状あるいは硬化性の伝熱材32が配置されている、伝熱材32は、コイルの巻き線の間によく浸透し、コイル10の熱を放熱板33に良く伝える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リアクトル(コイルを利用した受動素子)に関する。なお、リアクトルは、「インダクタ」とも呼ばれる。
【背景技術】
【0002】
近年、ハイブリッド自動車や電気自動車が本格的に実用化され、普及が拡大している。ハイブリッド自動車や電気自動車はモータを駆動源とするため、モータ用の電気回路にリアクトルを備えることが多い。リアクトルは、インバータや電圧コンバータにおいて、電流を平滑化するのに用いられる。リアクトルの本体は、コアに巻き線(コイル)を巻いたものである。コアには、よくフェライトが用いられる。
【0003】
リアクトルは、コイル(巻き線)を巻き掛けられるボビンを有するものと有さないものがある。大電流を平滑化するためのリアクトルにはボビンを有するものが多い。両端にフランジを有するボビンにコアを通し(或いは、コアの回りに樹脂製のボビンを一体射出成形し)、ボビンのフランジ間にコイル(巻き線)が巻かれる。また、絶縁のため、コイル全体が絶縁体で覆わることがよくある。コイルのカバーは、樹脂成形(resin casting)で作るのがコスト的に有利である。例えば、特許文献1にそのようなリアクトルの例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−180140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リアクトルのコイルには大電流が流れるため、コイル自体が発熱する。コイル全体を樹脂で覆ってしまうと、熱が拡散し難い。本明細書が開示する技術は、放熱性を改善したリアクトルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示するリアクトルは、磁性体のコアの周囲にコイルを捲回したものである。そのリアクトルでは、コイルは、側面(コイル外周面)の一部を除いて樹脂で覆われている。さらに、リアクトルには、コイルの樹脂から露出している部分を覆う金属製の放熱板がその樹脂の部分に取り付けられている。そして、コイルと放熱板の裏面との間に、双方に接するゲル状あるいは硬化性の伝熱材が配置されている、ここで、「硬化性」とは、例えば熱硬化性、あるいは、常温吸湿硬化性のいずれでもよい。即ち、伝熱材には、ゲル状のものか、あるいは、最初はゲル状であるが時間の経過とともに硬化する材料のものが用いられる。そのような熱伝導材の具体例には、熱伝導性シリコン、あるいは、シリコングリスなどでよい。
【0007】
本明細書が開示する新規なリアクトルは、コイルの周面の一部を樹脂から露出させ、そこに金属製の放熱板をあてがう。放熱板とコイルの間には、硬化性の伝熱材を充填する。伝熱材は少なくとも最初はゲル状であるから、コイル巻き線の隙間に入り込む。そのため、熱はコイルから金属板へと効率よく移動する。上記の技術によれば、放熱性の良いリアクトルが得られる。
【0008】
本明細書が開示するリアクトルでは、金属製の放熱板が、プレス絞り加工によって容器状に形成されており、その容器状の空間にコイルが収まるように、コイルを覆う樹脂の部材に取り付けられていることが好ましい。そのような金属板は、組み付け性が良い。
【0009】
本発明のさらなる改良は、発明の実施の形態で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】リアクトルの分解斜視図である(一次成形品)。
【図2】リアクトル(一次成形品)の斜視図である。
【図3】リアクトル(二次成形品)の斜視図である。
【図4】放熱板を取り付けたリアクトルの側面図である。
【図5】変形例におけるリアクトルの側面図である。
【図6】別の変形例におけるリアクトルの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を参照して実施例のリアクトルを説明する。図1にリアクトル本体90(樹脂カバーなし)の分解斜視図を示し、図2にリアクトル本体90(樹脂カバーなし)の斜視図を示す。図3にリアクトル本体90と放熱板33の組み立て斜視図を示す。図1と図2は、樹脂カバー成形前(二次成形前)の一次成形品を示している。なお、樹脂カバー31を備えた二次成形品のリアクトル本体90に伝熱材32と放熱板33が組み付けられてリアクトル100が完成する。
【0012】
リアクトル100は、例えば電気自動車の電流平滑化に使われる。リアクトル100は、例えば100[A]以上の電流許容値を有する大電流用であり、巻き線として平角線が用いられている。平角線は、断面が矩形の導線である。
【0013】
リアクトルの構造を概説する。リアクトル100は、リング状のコアが樹脂製のボビン2で覆われており、そのボビン2の2箇所に巻き線が巻き掛けられて2個のコイル10a、10bが形成されている。コイル10a、10bは、ボビン両端のフランジ3の間に巻かれている(図2)。コイル10a、10bは、一対のフランジ3の間(一方のフランジから他方のフランジまでの間)で樹脂カバー31に覆われる(図3)。樹脂カバー31からはコイルのリード線12が引き出されている。また、樹脂カバー31の一部は開口31aが形成され、コイル10a、10bの周面の一部が露出している。
【0014】
次に、リアクトル100を詳細に説明する。図1に示されているように、リング状のボビン2は、長手方向(X軸方向)のほぼ中央で2個の部品2a、2bに分割されている。従って夫々の部品2a、2bは、C形状をなしている。夫々の部品には、後述する放熱板33を取り付けるリブ5が設けられている。
【0015】
ボビン部品2aの内部にはC形状のコア22aが埋め込まれており、ボビン部品2bの内部にはC形状のコア22bが埋め込まれている。コア22a、22bは、フェライトでできている。ボビンの部品2a、2bを向かい合わせると、コア22a、22bも向かい合わせとなり、リング状のコアが形成される。
【0016】
ボビン2の夫々の部品2a、2bにはフランジ3が設けられている。ボビン2の両端のフランジ3の間で導線が巻き掛けられてコイル10a、10bが形成される。フランジ3にはスリット4が設けられている。図3に示すように、コイル10a、10bのリード線12が、スリット4を通過してフランジ3の外側(コイル軸方向外側)へと伸びている。
【0017】
製造手順に従ってリアクトル100をさらに説明する。まず、長手方向で2個に分割されたボビン2を用意する(図1)。ボビン部品2aは、C形状のコア22aを金型に入れ、コア22aの周囲のキャビティに樹脂を射出して成形する。即ち、コア入りボビン部品2aは、樹脂の射出成形で作られる。他方のボビン部品2bも同様である。
【0018】
次に図1に示すように、コイル10a、10bの夫々の端からボビン部品2a、2bを嵌める。このとき、ボビン2a、2bのフランジ3に設けられたスリット4に、コイルのリード線12を通す。スリット4の幅はリード線12の幅にほぼ等しく、リード線12はスリット4にぴったり嵌る。また、コイル10a、10bにボビン部品2a、2bを嵌める際、2個のボビン部品2a、2bの間に、スペーサ21を配置する。スペーサ21は、非磁性材料で作られている。スペーサ21の材料は例えばアルミナセラミックスである。ボビン2aと2bは接着剤により接合される。
【0019】
コイル10a、10bの両側からボビン部品2a、2bを嵌め込むと、図2に示したリアクトル本体90(ただし、樹脂カバー31なし)が得られる。樹脂カバー31成形前のリアクトル本体90を一次成形品と称することがある。次に、リアクトル本体90を別の金型に入れ、両端のフランジ3の間に樹脂を充填し、樹脂カバー31を形成する(図3)。ただし、前述したように、樹脂カバー31は、コイル10a、10bを完全に覆いはせず、コイル10a、10bの外周面の一部を露出させる。なお、図3のリアクトル本体90は、図1、図2とは上下が逆になっていることに留意されたい。図3では隠れて見えないが、フランジ3のスリット4の周囲も樹脂カバー31で覆われ。樹脂カバー31からリード線12が外へと伸びる。
【0020】
次に、コイル10a、10bの露出している部分を覆うように、放熱板33を取り付ける(図3)。放熱板33は、アルミ又は銅の金属板をプレス加工により容器状に成形したものであり、その容器の部分に露出したコイル10a、10bが収まる。放熱板33は、ボルト34によってリブ5に固定される。伝熱材32(後述)を含む放熱板33が取り付けられてリアクトル100が完成する。
【0021】
放熱板33の裏面とコイル10a、10bの側面との間には、伝熱材32が充填されている。図4に、リアクトル100の側面図を示す。ただし、図4では、内部が理解できるように、放熱板33のみ断面を描いている。また、図4では、コイル10aと10bを合わせてコイル10と総称する。図4に良く示されているように、放熱板33の裏面とコイル10の側周面の双方に接するように伝熱材32が配置されている。伝熱材32は、シリコンを含む熱硬化性材料でできており、最初はゲル状であるが、加熱すると硬化する。図4の場合の組み立て手順は次の通りである。まず、コイル10の露出部を上にしてリアクトル本体90を配置し、その上にゲル状の伝熱材32を塗布し、放熱板33を取り付ける。最後にリアクトル100の全体を加熱し、伝熱材32を硬化させる。この場合、放熱板33を上から組み付けることができるので作業性がよいが、伝熱材32として流動性の低い材質のものを選定する必要がある。
【0022】
上記説明したリアクトル100の利点を説明する。リアクトル100では、コイル10の大部分は樹脂カバー31で覆われており、外部から絶縁される。ただし、コイル側面の一部は樹脂カバー31から露出しており、伝熱材32を介して金属製の放熱板33と接している。伝熱材32は、少なくとも最初はゲル状であり、コイル10の巻き線の間によく浸透する。コイルが発生する熱は、伝熱材32を介して放熱板33へと伝わり、外部へ散逸する。伝熱材32がコイル10の巻き線の間によく浸透しているので、コイル10の熱は効率よく放熱板33へと伝わる。即ち、リアクトル100は、放熱効率が良い。
【0023】
図5に、変形例のリアクトル200の側面図を示す。なお、リアクトルを構成する部品は、図1〜図4のリアクトル100と同一である。図5では組み立て手順が図4の場合と異なる。図5の場合は、コイル10の露出部を下にしてリアクトル本体90を配置し、伝熱材232を容器の底に入れた放熱板33を下から組み付ける。最後に加熱して伝熱材242を硬化させる。この場合では、伝熱材232の流動性が高くてもよいため、伝熱材232がコイル10の巻き線の間に良く浸透する。変形例のリアクトル200は、実施例のリアクトル100よりも伝熱材232がコイル巻き線の間に良く浸透するので、さらに放熱効率が良い。
【0024】
図6に、さらに別の変形例のリアクトル300の側面図を示す。この変形例は、金属平板を放熱板333に用いたものである。そのため、リアクトル本体90のコイル10の長手方向両側に垂直リブ55が設けられており、その頂面で放熱板333がボルト34で固定される。このリアクトル300では、金属平板を利用できるのでより安価に製造することができる。
【0025】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0026】
2:ボビン
2a、2b:ボビン部品
3:フランジ
4:スリット
5:リブ
10、10a、10b:コイル
12:リード線
21:スペーサ
22a、22b:コア
31:樹脂カバー
32、232:伝熱材
33、333:放熱板
34:ボルト
90:リアクトル本体
100、200、300:リアクトル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体のコアの周囲にコイルを捲回したリアクトルであり、
前記コイルは、側面の一部を除いて樹脂で覆われており、
前記コイルの樹脂から露出している部分を覆う放熱板が前記樹脂の部分に取り付けられており、
コイルと放熱板の裏面との間に、双方に接するゲル状あるいは硬化性の伝熱材が配置されている、
ことを特徴とするリアクトル。
【請求項2】
前記放熱板は金属製であってプレス絞り加工によって容器状に形成されており、その容器状の空間にコイルが収まるように、コイルを覆う樹脂に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のリアクトル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−105854(P2013−105854A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247934(P2011−247934)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)