説明

リストバンド用プリンター

【課題】 単体のリストバンドへの印字を可能にして、コストを低減させる一方、印字時における熱転写リボンの無駄送りを無くして印字経費を低減し、さらに従来に比して小型化し得るリストバンド用プリンターを提供する。
【解決手段】 サーマルヘッド7とプラテンローラ11間の装入間隙10内に供給される単体のリストバンド33の後部を後部ホルダ23によって進退可能に保持するとともに、第一位置決め手段25A又は第二位置決め手段25Bをリストバンド33の前端部と係合させて、後方からの引張操作を介して緊張するリストバンド33の前端部を前方にのみ移動可能に保持するとともに、リストバンド33が備える情報表示領域38の印字開始位置Pをサーマルヘッド7に対向する位置に位置決めできるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体の手首や足首に取り付けて個体の識別に使用するリストバンドに所要情報を印字するためのリストバンド用プリンターに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの医療機関においては、患者の取り違えによる医療事故を防止するためにリストバンドが使用されている。従来のリストバンドは、バンド状に加工された合成樹脂製の帯状材の表面に、患者の氏名や年齢等の文字情報を油性ペンで手書きし、これを患者の手首等に環状にして装着することにより、患者の識別に用いられていた。しかし、従来の手書きした文字情報は判読し難く、また、同姓同名による過誤が発生する可能性もあるため、近年、目視情報としての患者の氏名や年齢等の文字情報とともに患者固有のIDコードを表すバーコードをプリンターで印字しておき、該バーコードをバーコードリーダーで読み取ることで患者の取り違えを防止するようにしたコンピュータを用いる識別システムが導入されつつある。
【0003】
ところで、プリンターによってリストバンドに所要情報を印字する場合、単体のリストバンドをプリンターに装着して印字することはプリンターの送給機構上、極めて困難であるため、所定幅の帯状の連続シートに予めリストバンド形状の型抜き加工を施して、切り離し容易なリストバンド部を長手方向に沿って複数形成しておき(例えば、特許文献1参照)、これをロール状に巻き取った状態で、ロール紙用のラベルプリンターに装着してバーコードを含む所要情報をリストバンド部に印字した後、連続シートから個々のリストバンド部を切り離して使用している。
【特許文献1】特開2002−363808号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、所定幅の帯状の連続シートに予めリストバンド形状の型抜き加工を施して、切り離し容易な複数のリストバンド部を形成することにより、ラベルプリンターによる印字を可能にしたものにあっては、リストバンド部以外の余白部分が印字後に不要となるので、歩留まりが悪く、その余白部分に掛かる材料費によって、リストバンドがコスト高となるという問題点があった。
【0005】
また、印字に熱転写リボンを用いるラベルプリンターでは、印字に伴う連続シートの送り動作に連動して連続シートの送り量と同量の熱転写リボンが送給される。しかしながら、所要情報の印字は連続シートのリストバンド部に設けられている所定範囲の情報表示領域に対してのみ行われ、それ以外の連続シートの送り動作は、情報表示領域の印字開始位置をサーマルヘッドに対向する印字位置に合わせる供給送り動作と、印字後の排出送り動作であるため、上記のように連続シートの送り量と同量の熱転写リボンが連続シートの送り動作に連動して送られると、印字に使用されない部分まで無駄に送られてしまうという問題点があった。
【0006】
さらに、連続シートがロール状に巻き取られたロール体は径大であり、従来のラベルプリンターにあっては、この径大なロール状の連続シートを本体ケース内に収納させていることにより、外形寸法が大きく、比較的広い設置スペースを必要とするため、設置場所に制約を受けるという問題点があった。
【0007】
本発明は、かかる従来の問題点を解消するものであって、単体のリストバンドへの印字を可能とし、これによって、連続シートにリストバンド形状の型抜き加工を施す場合に発生する余白部分を無くしてリストバンドのコストを低減させる一方、印字時における熱転写リボンの無駄送りを無くして印字経費を低減し、さらに従来に比して小型化し得るリストバンド用プリンターを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、一面に情報表示領域を備え、かつ長手方向の前端部に係止孔が形成された単体のリストバンドが装着され、その情報表示領域に所要情報を個々に印字するプリンターであって、装入間隙を介して対向配置され、何れか一方が印字位置と退避位置とに進退制御されるサーマルヘッド及びプラテンローラと、前記装入間隙内に供給されるリストバンドの後部を進退可能に保持する後部ホルダと、リストバンドの前端部と係合され、後方からの引張操作を介して緊張するリストバンドの前端部を前方にのみ移動可能に保持するとともに、情報表示領域の印字開始位置をサーマルヘッドに対向する位置に位置決めする第一位置決め手段及び/又は第二位置決め手段と、繰り出しローラと巻き取りローラとに掛け渡され、装入間隙内を通されてリストバンドとサーマルヘッドとの間に供給される熱転写リボンとを備えていることを特徴とするリストバンド用プリンターである。
【0009】
また、本発明は、一面に情報表示領域を備え、かつ長手方向の前端部に係止孔が形成された単体のリストバンドが装着され、その情報表示領域に所要情報を個々に印字するプリンターであって、装入間隙を介して対向配置され、何れか一方が印字位置と退避位置とに進退制御されるサーマルヘッド及びプラテンと、前記装入間隙内に供給されるリストバンドの後部を進退可能に保持する後部ホルダと、リストバンドの前端部と係合され、後方からの引張操作を介して緊張するリストバンドの前端部を前方にのみ移動可能に保持するとともに、情報表示領域の印字開始位置をサーマルヘッドに対向する位置に位置決めする第一位置決め手段及び/又は第二位置決め手段と、前記後部ホルダと第一位置決め手段又は第二位置決め手段とで保持されたリストバンドをサーマルヘッドの印字作動に同期させて搬送する送りローラと、繰り出しローラと巻き取りローラとに掛け渡され、装入間隙内を通されてリストバンドとサーマルヘッドとの間に供給される熱転写リボンと
を備えていることを特徴とするリストバンド用プリンターである。
【0010】
ここで、本発明にかかるリストバンド用プリンターの作動は所定の制御内容を備えた作動制御装置によって制御される。即ち、前記サーマルヘッド及びプラテンローラ(またはプラテン)の何れか一方が、印字時に退避位置から印字位置に進出制御され、装入間隙内に供給されたリストバンドと熱転写リボンを挟圧する。この状態でサーマルヘッドが印字作動制御され、これと同期してプラテンローラまたは送りローラが回転制御される。このプラテンローラまたは送りローラの回転によってリストバンドと熱転写リボンが同時に前方に送られる。このリストバンドと熱転写リボンの送り量は、情報表示領域に印字される所要情報の前後方向の長さに対応しており、サーマルヘッドの印字作動が完了すると、プラテンローラまたは送りローラが停止制御され、かつ印字位置にあるサーマルヘッドまたはプラテンローラ(プラテン)は退避位置に後退制御される。
【0011】
前記第一位置決め手段としては、リストバンドの係止孔に挿通されて、リストバンドの後方からの引張操作により規制手段に当接してリストバンドの始端位置を規定する位置決め位置から、印字に伴うリストバンドの送り動作に伴って係止孔から抜け出してリストバンドを開放する開放位置へ前方傾動する回動可能なピンとする構成が提案される。
【0012】
また、第二位置決め手段としては、リストバンドの係止孔に装着されるホックの軸部が前方から係合可能な、前方に向けて開口する係合溝とする構成が提案される。
【発明の効果】
【0013】
上述した本発明にかかるリストバンド用プリンターにあっては、単体のリストバンドを装入間隙内に供給して、その後部を後部ホルダで保持させるとともに、リストバンドの前端部を第一位置決め手段または第二位置決め手段に選択的に係合させて、後方からの引張操作を介してリストバンドの前端部を前方にのみ移動可能に保持させることにより、情報表示領域の印字開始位置をサーマルヘッドに対向する位置に位置決めすることができる。そして、この状態で印字操作を行うと、サーマルヘッドの印字作動と同期して回転制御されるプラテンローラまたは送りローラによって、リストバンドと熱転写リボンが同時に前方に送られて情報表示領域の所定位置に所要情報が印字される。ここで、リストバンドと熱転写リボンの送り量は、情報表示領域に印字される所要情報の前後方向の長さに対応していることにより、熱転写リボンが印字に必要な長さ分だけ送られて、無駄な送りが無いため、従来構成のものに比して印字経費が低減する。また、このように、単体のリストバンドを装着して情報表示領域の所定位置に所要情報を印字し得るので、従来のように、リストバンド形状の型抜き加工を施した連続シートを用いる必要がなく、その型抜き加工を施す場合における余白部分の発生が無いため、リストバンドのコストを低減させることができる。さらに、単体のリストバンドが随時装着でき、従来のように、径大なロール状の連続シートを本体ケース内に収納させる必要がないため、プリンターの外形寸法を小型化することができ、従来構成のものに比して設置可能な場所が拡大される。
【0014】
前記第一位置決め手段を、リストバンドの係止孔に挿通されて、リストバンドの後方からの引張操作により規制手段に当接してリストバンドの始端位置を規定する位置決め位置から、印字に伴うリストバンドの送り動作に伴って係止孔から抜け出してリストバンドを開放する開放位置へ前方傾動する回動可能なピンとする構成にあっては、リストバンドの係止孔にピンを挿通させた状態で、リストバンドを後方から引張することにより、リストバンドの前端部を前方にのみ移動可能に保持させることができるとともに、該リストバンドが備える情報表示領域の印字開始位置をサーマルヘッドに対向する位置に簡単に位置決めすることができる。また、印字作動に伴ってリストバンドは前方に送られるが、このリストバンドの送り動作に伴ってピンが回動し、開放位置で係止孔からピンが抜け出すまで該ピンによるリストバンドの前端部の保持が維持される。これにより、リストバンドの送り動作を安定させることができる。また、上記のように、リストバンドの送り動作に伴ってピンが回動し、開放位置で該ピンが係止孔から抜け出すので、リストバンドの前端部との係合が自動的に解除され、印字後はリストバンドを即座に取り出すことができる。
【0015】
また、第二位置決め手段として、リストバンドの係止孔に装着されるホックの軸部が前方から係合可能な、前方に向けて開口する係合溝とする構成にあっては、使用時にリストバンドを環状にした状態を保持するために用いられる止め具としてのホックが予め装着されているリストバンドへの印字に対応し得るものであって、リストバンドの係止孔に装着されたホックの軸部を係合溝内若しくは係合溝の前方に位置させた状態で、リストバンドを後方から引張することにより、前記軸部が係合溝の後縁に係合され、リストバンドの前端部を前方にのみ移動可能に保持させることができるとともに、該リストバンドが備える情報表示領域の印字開始位置をサーマルヘッドに対向する位置に簡単に位置決めすることができる。また、印字作動に伴ってリストバンドが前方に送られると、前方に向けて開口する係合溝からホックの軸部が抜け出るので、係合溝とリストバンドの前端部との係合が自動的に解除され、印字後はリストバンドを即座に取り出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明の一実施例を、添付図面に基づいて説明する。
図1〜図4は、本発明にかかるリストバンド用プリンター1の全体を示し、図1はその正面図、図2は平面図、図3は右側面図、図4は右側断面図である。リストバンド用プリンター1を構成する基台2は、略矩形の筐体状に形成されており、その内部には図示省略されているが複数のステッピングモータ,ギア機構,ベルト伝導機構等からなる駆動機構と、作動制御装置が収納されている。作動制御装置はマイクロプロセッサを備えており、該マイクロプロセッサは、リストバンド用プリンター1の作動に関する統括的な制御を処理実行する中央制御装置CPUと、動作プログラムが格納された記憶装置ROMと、必要なデータを随時読み書き可能な記憶装置RAMとによって構成されている。記憶装置RAMには、パーソナルコンピュータ等の外部のデータ作成装置から入力される入力データや、該入力データに基づいて中央制御装置CPUで生成される印字用データ等を記憶する記憶エリアが設けられている。また、基台2の前面には、作動制御装置に電気的に接続された電源スイッチ3,印字指示スイッチ4その他の所要スイッチが配設されている。
【0017】
基台2の天板を構成する取付基板5上には、その略中央部にハウジングケース6が設けられており、該ハウジングケース6内にはその前縁側に位置させてサーマルヘッド7(図4参照)が配設されている。該サーマルヘッド7はブラケット8により上下方向に支持されており、図示しないステッピングモータを駆動源とするギヤ機構及びカム機構を用いたシフト機構によって前方に進出する印字位置と、該印字位置から後退する退避位置とに進退制御される。サーマルヘッド7にはブラケット8の後部に配設された圧縮バネ9,9によって前方向への付勢力が付与されており、その付勢力によって印字位置ではサーマルヘッド7が常時一定の押圧力で後述する熱転写リボン14及びリストバンド33(図11参照)を介してプラテンローラ11に圧接するようになっている。
【0018】
前記サーマルヘッド7の前面側には、図4に示すように、適宜幅の装入間隙10を介してプラテンローラ11が対向配置されている。該プラテンローラ11は取付基板5上に回転可能に立設されており、その下端部が基台2内で図示しないステッピングモータにベルト伝導機構を介して連繋されて、該ステッピングモータの駆動力によって回転駆動される。そして、このプラテンローラ11の回転により、サーマルヘッド7が圧接された状態で該サーマルヘッド7とプラテンローラ11とに挟持される熱転写リボン14とリストバンド33とをプラテンローラ11の回転量に相当する長さ分だけ同時に前方(図1における右方向)に送るようになっている。
【0019】
前記ハウジングケース6の後部側には、熱転写リボン14(図11参照)が掛け渡される繰り出しローラ12と巻き取りローラ13が取付基板5上に回転可能に立設されている。巻き取りローラ13は、その下端部が基台2内で図示しないベルト伝導機構を介してプラテンローラ11に連繋されており、該プラテンローラ11の回転と連動して巻き取り方向に回転駆動される。繰り出しローラ12には熱転写リボン14をロール状に巻回したリボンロール15(図11参照)が装着され、該リボンロール15から引き出された熱転写リボン14が前記装入間隙10を通してサーマルヘッド7の前面側に供給され、印字作動に伴って送られる熱転写リボン14の使用済み部分を巻き取りローラ13によって順次巻き取るようになっている。尚、熱転写リボン14に当接するハウジングケース6の角部には、熱転写リボン14の送り移動に伴って従動回転する複数のガイドローラ16が配設されている。また、図示省略されているが、繰り出しローラ12と巻き取りローラ13には、熱転写リボン14を常時緊張させるテンション機構が付設されている。
【0020】
また、取付基板5上には、前記装入間隙10の左右方向の延長線上に前後両端部分を位置させてホルダ基板17が配設されている。該ホルダ基板17は、図2に示すように、その中間部分にプラテンローラ11との干渉を回避するための前面側に膨出した屈曲部18が形成されており、該屈曲部18から前後両端部分が左右方向に延成されている。このホルダ基板17の後端部分(図1において左側部分)には、該後端部分と略同一形状の支持板19がリストバンド33の厚みより若干広い支持間隙20を生じるようにして対設されており、該支持間隙20内には上方から立ち姿勢で装入されるリストバンド33の下側縁に当接して該リストバンド33の後部を所定高さ位置に保持する支持縁21が設けられている。また、ホルダ基板17の後端部分の上端部及び支持板19の上端部には、上部が相互に拡開するように傾斜した一対のガイド片22,22が配設されており、該ガイド片22,22の案内作用を介して支持間隙20内へのリストバンド33の装入を容易に行い得るようにしている。これにより、支持間隙20内に上方から立ち姿勢で装入されるリストバンド33の後部を所定高さ位置で進退可能に保持する後部ホルダ23が構成されている。また、この後部ホルダ23には、リストバンド33の装入を検出する光電センサ24が配設されており、該光電センサ24からの検出信号が上述した作動制御装置に入力されると、印字指示スイッチ4のON操作が有効となり印字作動が開始されることとなる。尚、光電センサ24としては、支持板19とホルダ基板17の、その何れか一方に配置される発光部と、他方に配置される受光部とがその下部で支持間隙20を横断する連結片によって連結されてなる断面コ字形のものが好適に用いられる。このようなものを用いることにより、支持間隙20を横断する連結片の上縁によって前記支持縁21を構成させることができ、その構造が簡略化される。
【0021】
また、ホルダ基板17の前端部分(図1において右側部分)には、リストバンド33の前端部と係合され、後方からの引張操作を介して緊張するリストバンド33の前端部を前方にのみ移動可能に保持し、かつ情報表示領域38(図9参照)の印字開始位置Pをサーマルヘッド7に対向する位置に位置決めする第一位置決め手段25Aと第二位置決め手段25Bとが夫々設けられている。
【0022】
第一位置決め手段25Aは、リストバンド33の係止孔39(図9参照)に挿通される回動可能なピン26によって構成されている。該ピン26は、ホルダ基板17の前端部分の背面側に水平回動可能に配設されている。即ち、図3に示すように、ホルダ基板17の前端部分の背面に固着されたブラケット27には上下方向の支軸28が回動可能に保持されており、該支軸28の上端部に一端を支持させて前記ピン26が側方突成されている。また、ホルダ基板17の前端には、図5等に示すように、前方に向けて開口する係合溝29がピン26の高さ位置に一致させて形成されており、該係合溝29が、ピン26の後方向への回動時に該ピン26に当接してそれ以上の後方向への回動を規制する規制手段となっている。また、このピン26及び係合溝29の高さ位置は、上述した後部ホルダ23によって後部が支持されたリストバンド33を水平状に保持する高さ位置に設定されている。そして、図6に示すように、ピン26をリストバンド33の係止孔39に挿通させた状態で、該リストバンド33を後方に引張すると、ピン26が後方向へ回動して係合溝29の後縁に当接することによって、リストバンド33の始端位置を規定する位置決め位置となり、情報表示領域38(図9参照)の印字開始位置Pをサーマルヘッド7に対向する位置に位置決めすることができ、また、印字に伴ってリストバンドが前方に送られると、その送り動作に伴ってピン26が回動し、係止孔39から自動的に抜け出してリストバンド33を開放する開放位置へ前方傾動させることができるようになっている。
【0023】
第二位置決め手段25Bは、上述した係合溝29によって構成されており、図7に示すように、リストバンド33の係止孔39に装着されるホック43の軸部46(図10参照)を前方から係合し得るようになっている。ここで、該係合溝29には、前方に至るに従って相互に拡開する上下一対の傾斜縁が形成されており、該傾斜縁によって係合溝29内へ軸部46を容易に案内し得るようにしている。この第二位置決め手段25Bにあっては、リストバンド33の係止孔39に装着されたホック43の軸部46を係合溝29内若しくは係合溝29の前方に位置させた状態で、リストバンド33を後方から引張することにより、前記軸部46が係合溝29の後縁に係合され、リストバンド33の前端部を前方にのみ移動可能に保持させることができるとともに、該リストバンド33が備える情報表示領域38(図9参照)の印字開始位置Pをサーマルヘッド7に対向する位置に簡単に位置決めすることができる。また、印字作動に伴ってリストバンド33が前方に送られると、前方に向けて開口する係合溝29からホック43の軸部46が抜け出るので、係合溝29とリストバンド33の前端部との係合を自動的に解除させることができる。
【0024】
また、前記後部ホルダ23及び位置決め手段25A,25Bを備えたホルダ基板17は、その前後両端部がヒンジ30,30によって取付基板5に対して起伏可能に枢結されており、ホルダ基板17を起立させた定常状態では、図5等に示すように、止め金具31によってプラテンローラ11を覆うカバー板32に固定されている。そして、前記止め金具31を外して、図8に示すように、手前に倒すことにより、熱転写リボン14の交換作業を容易に行い得るようになっている。
【0025】
図9(イ),(ロ)は、本発明にかかるリストバンド用プリンター1による印字に適した単体のリストバンド33の一例を示すものであって、該リストバンド33は、適宜の柔軟性及び弾性を有し、装着感に優れた厚さ0.4〜0.8mm程度のポリウレタン等の合成樹脂製シートが素材に用いられており、広幅に形成された略長方形状の表示片部34と、その前部に連成された狭幅の連結片部35と、後部に連成された狭幅のバンド片部36とを備え、さらに前記連結片部35の下側縁に折り返し片部37が連成されている。前記表示片部34の一面は情報表示領域38となっており、該情報表示領域38の前端が印字開始位置Pとなっている。この情報表示領域38には、図9(ハ)に示すように、患者の氏名,生年月日,血液型,患者固有のIDコードを表すバーコード等の所要情報42がリストバンド用プリンター1によって所定の情報表示形態で印字されることとなる。表示片部34の前部に連成された連結片部35には単一の係止孔39が形成されており、また、表示片部34の後部に連成されたバンド片部36には長さ調整用の透孔40が長手方向に沿って一定間隔で複数形成されている。また、連結片部35に連成された折り返し片部37にも単一の透孔41が形成されている。
【0026】
ここで、図9(イ)は、使用時にリストバンド33を環状にした状態を保持するために用いられる止め具としてのホック43(図9(ロ)参照)が係止孔39に装着されていないリストバンド33を示し、図9(ロ)は、ホック43が係止孔39に予め装着されているリストバンド33を示す。これらは市販品として入手され得る。該ホック43は、一対をなす雄ホック体44aと雌ホック体44bとで構成されており、互いに連結線45によって分離不能に連結されている。円形に形成された雄ホック体44aの上面中央には、図10(イ)に示すように、抜け止め段部47a,47bが段設された軸部46が突成されており、該軸部46を連結片部35の係止孔39に嵌合することにより、下側の抜け止め段部47aによる保持作用を介してホック43をリストバンド33に予め装着することができるようになっている。また、同じく円形に形成された雌ホック体44bの中央部には、前記軸部46と嵌合される嵌合孔48が開口されている。この雄ホック体44aと雌ホック体44bと連結線45とからなるホック43は、適宜の弾性を有する合成樹脂によって一体形成されている。
【0027】
そして、該ホック43によって使用時にリストバンド33を環状にした状態を保持させるには、図10(イ)に示すように、雄ホック体44aの軸部46をリストバンド33の連結片部35の係止孔39に嵌合した状態で、該リストバンド33を人体の手首等に環状に巻回し、バンド片部36に形成されている複数の透孔40の一つを選択することで長さを調整して、図10(ロ)に示すように、その選択した透孔40に雄ホック体44aの軸部46を嵌合する。次いで、折り返し片部37を折り返して透孔41に軸部46を嵌合させ、この状態で、雌ホック体44bの嵌合孔48を軸部46に嵌合させる。この時、軸部46の抜け止め段部47bを雌ホック体44bの嵌合孔48に強制嵌合させることにより、該抜け止め段部47bが嵌合孔48を通過すると、該嵌合孔48の口縁上面に係合され、図10(ハ)に示すように、取り外し不能な状態で一体化される。これにより、リストバンド33を環状にした状態を保持させることができる。
【0028】
また、上述した作動制御装置は、所定の制御内容を備えており、リストバンド用プリンター1の作動は該作動制御装置によって制御される。この作動制御装置によるリストバンド用プリンター1の作動制御を、図11に示す機構図に基づいて説明する。サーマルヘッド7は、印字時に退避位置から印字位置へ進出制御され、装入間隙10内に供給されたリストバンド33と熱転写リボン14とを介してプラテンローラ11に圧接される。この状態でサーマルヘッド7が印字作動制御され、このサーマルヘッド7の印字作動制御と同期してプラテンローラ11が回転制御される。このプラテンローラ11の回転によってリストバンド33と熱転写リボン14が同時に前方(図11における右方向)に送られる。このリストバンド33と熱転写リボン14の送り量は、情報表示領域38に印字される所要情報42(図9(ハ)参照)の前後方向の長さに対応しており、サーマルヘッド7の印字作動が完了すると、プラテンローラ11が停止制御され、かつサーマルヘッド7が退避位置に後退制御される。
【0029】
かかる構成にあって、ホック43が装着されていない単体のリストバンド33(図9(イ)参照)の情報表示領域38に、所要情報42(図9(ハ)参照)を印字する場合には、該リストバンド33を装入間隙10内に供給して、その後部を後部ホルダ23で保持させる一方、図6に示すように、リストバンド33の前端部の係止孔39に第一位置決め手段25Aのピン26を挿通させた状態で、該リストバンド33を後方から引張すると、ピン26が後方に回動して規制手段としての係合溝29の後縁に当接する。これにより、リストバンド33の前端部を前方にのみ移動可能に保持させることができるとともに、情報表示領域38の印字開始位置Pをサーマルヘッド7に対向する位置に簡単に位置決めすることができる。そして、この状態で印字指示スイッチ4をON操作すると、サーマルヘッド7の印字作動と同期して回転制御されるプラテンローラ11によって、リストバンド33と熱転写リボン14が同時に前方に送られて情報表示領域38の所定位置に所要情報42(図9(ハ)参照)が印字される。また、リストバンド33の前方への送り動作に伴ってピン26が回動し、開放位置で係止孔39からピン26が抜け出すまで該ピン26によるリストバンド33の前端部の保持が維持される。これにより、リストバンド33の送り動作を安定させることができる。また、上記のように、リストバンド33の送り動作に伴ってピン26が回動し、開放位置で該ピン26が係止孔39から抜け出すので、リストバンド33の前端部との係合が自動的に解除され、印字後はリストバンド33を即座に取り出すことができる。
【0030】
また、ホック43が予め装着されている単体のリストバンド33(図9(ロ)参照)の情報表示領域38に、所要情報42(図9(ハ)参照)を印字する場合には、該リストバンド33を装入間隙10内に供給して、その後部を後部ホルダ23で保持させる一方、図7に示すように、リストバンド33の係止孔39に装着されたホック43の軸部46を第二位置決め手段25Bの係合溝29内若しくは係合溝29の前方に位置させた状態で、リストバンド33を後方から引張することにより、前記軸部46が係合溝29の後縁に係合される。これにより、リストバンド33の前端部を前方にのみ移動可能に保持させることができるとともに、該リストバンド33の情報表示領域38の印字開始位置Pをサーマルヘッド7に対向する位置に簡単に位置決めすることができる。そして、この状態で印字指示スイッチ4をON操作すると、サーマルヘッド7の印字作動と同期して回転制御されるプラテンローラ11によって、リストバンド33と熱転写リボン14が同時に前方に送られて情報表示領域38の所定位置に所要情報42が印字される。また、このように印字作動に伴ってリストバンド33が前方に送られると、前方に向けて開口する係合溝29からホック43の軸部46が抜け出るので、係合溝29とリストバンド33の前端部との係合が自動的に解除され、印字後はリストバンド33を即座に取り出すことができる。
【0031】
そして、サーマルヘッド7の印字作動と同期して回転制御されるプラテンローラ11によって前方に送られるリストバンド33と熱転写リボン14の送り量は、情報表示領域38に印字される所要情報42の前後方向の長さに対応していることにより、熱転写リボン14が印字に必要な長さ分だけ送られることとなり、無駄な送りが無いため、従来構成のものに比して印字経費を低減させることができる。また、このように、単体のリストバンド33を装着して情報表示領域38の所定位置に所要情報42を印字し得るので、従来のように、リストバンド形状の型抜き加工を施した連続シートを用いる必要がなく、その型抜き加工を施す場合における余白部分の発生が無いため、リストバンド33のコストを低減させることができる。さらに、単体のリストバンド33が随時装着でき、従来のように、径大なロール状の連続シートを本体ケース内に収納させる必要がないため、プリンター1の外形寸法を小型化することができる。
【0032】
尚、上記実施例では、サーマルヘッド7を印字位置と退避位置とに進退制御するようにしているが、これに代えてプラテンローラ11を公知のシフト機構により進退制御するように構成することも可能である。
【0033】
図12は変形実施例を示し、この変形実施例は上記実施例におけるプラテンローラ11に代えて、プラテン49と送りローラ50,50を個別に設けたものである。プラテン49は装入間隙10を介してサーマルヘッド7に対向配置されており、印字時にサーマルヘッド7の対向面側で熱転写リボン14とリストバンド33とを支持する。また、送りローラ50,50は図示しないステッピングモータの駆動力によって回転駆動され、上述した作動制御装置の回転制御により、サーマルヘッド7とプラテン49とに挟持される熱転写リボン14とリストバンド33とをその回転量に相当する長さ分だけ同時に前方に搬送するようになっている。その他の構成は第一実施例と同じであり、同一部分に同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0034】
かかる構成にあって、サーマルヘッド7の印字作動と同期して回転制御される送りローラ50によって前方に送られるリストバンド33と熱転写リボン14の送り量は、情報表示領域38に印字される所要情報42の前後方向の長さに対応していることにより、熱転写リボン14が印字に必要な長さ分だけ送られて、無駄な送りが無いため、従来構成のものに比して印字経費を低減させることができる。
【0035】
尚、上記実施例では、第二位置決め手段25Bの係合溝29を、第一位置決め手段25Aにおけるピン26の後方向への回動量の規制手段としたが、規制手段はこれに限定されるものではなく、ピン26の側傍に該ピン26の後方向への回動時に当接する節度部材を配設して構成することもできる。また、第一位置決め手段25Aと第二位置決め手段25Bは実施例のように同時に設けてもよいし、何れかを単独で設けることも可能である。また、リストバンド33は、上記実施例で説明した形状のものに限定されるものではなく、少なくとも一面に情報表示領域38を備え、かつ長手方向の前端部に係止孔39が形成されていればよい。さらに、止め具としてのホック43にICを埋め込んだものも使用でき、この場合には、ICに格納されている情報と印字する情報とを一致させた状態で印字が可能であるため、印字ミスを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明にかかるリストバンド用プリンター1の正面図である。
【図2】同上のリストバンド用プリンター1の平面図である。
【図3】同上のリストバンド用プリンター1の右側面図である。
【図4】同上のリストバンド用プリンター1の右側断面図である。
【図5】第一位置決め手段25A及び第二位置決め手段25Bの構成を示す斜視図である。
【図6】第一位置決め手段25Aによってリストバンド33の前端部を保持する状態を示す作用説明図である。
【図7】第二位置決め手段25Bによってリストバンド33の前端部を保持する状態を示す作用説明図である。
【図8】ホルダ基板17を前方に倒した状態を示す作用説明図である。
【図9】(イ)はホック43が装着されていないリストバンド33の平面図、(ロ)はホック43が予め装着されているリストバンド33の平面図、(ハ)は情報表示領域38に所要情報42が印字された状態を示すリストバンド33の平面図である。
【図10】ホック43の構成と、該ホック43によって使用時にリストバンド33を環状にした状態を保持させる手順を(イ)〜(ハ)で示した説明図である。
【図11】リストバンド用プリンター1の機構図である。
【図12】変形実施例の機構図である。
【符号の説明】
【0037】
1 リストバンド用プリンター
7 サーマルヘッド
10 装入間隙
11 プラテンローラ
12 繰り出しローラ
13 巻き取りローラ
14 熱転写リボン
23 後部ホルダ
26 ピン
25A 第一位置決め手段
25B 第二位置決め手段
29 係合溝(規制手段)
33 リストバンド
38 情報表示領域
39 係止孔
42 所要情報
43 ホック
46 軸部
49 プラテン
50 送りローラ
P 印字開始位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面に情報表示領域を備え、かつ長手方向の前端部に係止孔が形成された単体のリストバンドが装着され、その情報表示領域に所要情報を個々に印字するプリンターであって、
装入間隙を介して対向配置され、何れか一方が印字位置と退避位置とに進退制御されるサーマルヘッド及びプラテンローラと、
前記装入間隙内に供給されるリストバンドの後部を進退可能に保持する後部ホルダと、
リストバンドの前端部と係合され、後方からの引張操作を介して緊張するリストバンドの前端部を前方にのみ移動可能に保持するとともに、情報表示領域の印字開始位置をサーマルヘッドに対向する位置に位置決めする第一位置決め手段及び/又は第二位置決め手段と、
繰り出しローラと巻き取りローラとに掛け渡され、装入間隙内を通されてリストバンドとサーマルヘッドとの間に供給される熱転写リボンと
を備えていることを特徴とするリストバンド用プリンター。
【請求項2】
一面に情報表示領域を備え、かつ長手方向の前端部に係止孔が形成された単体のリストバンドが装着され、その情報表示領域に所要情報を個々に印字するプリンターであって、
装入間隙を介して対向配置され、何れか一方が印字位置と退避位置とに進退制御されるサーマルヘッド及びプラテンと、
前記装入間隙内に供給されるリストバンドの後部を進退可能に保持する後部ホルダと、
リストバンドの前端部と係合され、後方からの引張操作を介して緊張するリストバンドの前端部を前方にのみ移動可能に保持するとともに、情報表示領域の印字開始位置をサーマルヘッドに対向する位置に位置決めする第一位置決め手段及び/又は第二位置決め手段と、
前記後部ホルダと第一位置決め手段又は第二位置決め手段とで保持されたリストバンドをサーマルヘッドの印字作動に同期させて搬送する送りローラと、
繰り出しローラと巻き取りローラとに掛け渡され、装入間隙内を通されてリストバンドとサーマルヘッドとの間に供給される熱転写リボンと
を備えていることを特徴とするリストバンド用プリンター。
【請求項3】
第一位置決め手段が、リストバンドの係止孔に挿通されて、リストバンドの後方からの引張操作により規制手段に当接してリストバンドの始端位置を規定する位置決め位置から、印字に伴うリストバンドの送り動作に伴って係止孔から抜け出してリストバンドを開放する開放位置へ前方傾動する回動可能なピンであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のリストバンド用プリンター。
【請求項4】
第二位置決め手段が、リストバンドの係止孔に装着されるホックの軸部が前方から係合可能な、前方に向けて開口する係合溝であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のリストバンド用プリンター。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2006−1222(P2006−1222A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−182100(P2004−182100)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第3項適用申請有り 平成16年5月14日、15日 社団法人日本臨床衛生検査技師会開催の「第53回 日本医学検査学会「展示発表会」」に出品
【出願人】(000186566)小林記録紙株式会社 (169)
【出願人】(504238286)株式会社エムエスティ (8)
【Fターム(参考)】