説明

リップアプリケーター

【課題】液体化粧料を、上下の唇に対して1動作で、同時に、かつ広い面ですばやく簡便に塗布することができ、且つコンパクトなリップアプリケーターを提供すること。
【解決手段】唇に液体化粧料を塗布するリップアプリケーターにおいて、扁平形状の塗布部の両面に液体化粧料が圧出される吐出口があり、その周囲に液体化粧料を広げるための区画を設けてなる、リップアプリケーターとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リップアプリケーターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リップグロス等の液体化粧料を唇に塗布するには、棒状の塗布体を使用したり、チューブや回転繰り上げ式の容器から圧出させた液体化粧料をアプリケーターを介して、上下の唇の各々に塗布する方法によるのが、一般的であった。
しかしながら、これらの方法では、狭い塗布部で塗り広げる必要があり、かつ上下の唇に塗り広げる必要があるため時間がかかり、必ずしも簡便な方法ではなかった。
【0003】
これに対し、両唇による圧縮により弾性変形し、且つ両唇の形状に合致した、微粉状または液状からペースト状の化粧料を含浸することのできる使用面を有する、平坦な支持部材を備え、その使用面を使用者が両唇で挟むことにより、両唇に同時に化粧料を塗布するメークアップ装置が提案されている。(特許文献1参照)
【0004】
しかし、特許文献1の装置は、一回限りの使い捨てメークアップ装置とする態様と、使用されていない場合に支持部材が浸されるようにされた化粧料用リザーバーを備えた多数回使用可能な装置とする態様とが開示されているが、一回限りの使い捨ての態様は、化粧料を含浸させた使用面は化粧料が露出しているため、乾燥等を避けるために密閉状態にする必要があり、多数回使用可能な態様は、構造が複雑となり、サイズも大きくなる。
更に又、特許文献1の装置では、唇の全体に化粧料が塗布される形となるが、リップグロス等で好んで行われるような、唇の中心部周辺のみに塗布したいという要望に対応することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2911430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、液体化粧料を、上下の唇に対し、1動作で、同時に、かつ広い面ですばやく簡便に塗布することができ、且つコンパクトなリップアプリケーターを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、塗布部の両表面に設けた吐出口から塗布部の表面に液体化粧料が圧出される構造とすることにより、前記課題を解決した。
即ち本発明は、唇に液体化粧料を塗布するリップアプリケーターにおいて、扁平形状の塗布部の両表面に吐出口があり、その周囲に液体化粧料を広げるための区画を設けてなる、リップアプリケーターである。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、液体化粧料を、上下の唇に対して1動作で、同時に、かつ広い面ですばやく簡便に塗布することができ、且つコンパクトなリップアプリケーターを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のリップアプリケーターの1例の斜視図である。
【図2】図1のリップアプリケーターの塗布部の斜視図である。
【図3】図1のリップアプリケーターの収納部の斜視図である。
【図4】図1のリップアプリケーターの連結部の斜視図である。
【図5】図1のリップアプリケーターの、右半分を断面図とした平面図である。
【図6】図1のリップアプリケーターの、上半分を断面図とした右側面図である。
【図7】塗布部を覆うカバーを設けたリップアプリケーターの1例の、カバーを半裁した形で示した、斜視図である。
【図8】図7のリップアプリケーターの1例を、全体を半裁した形で示した、斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のリップアプリケーターを、図1〜8により説明する。
リップアプリケーター1は、塗布部2、収納部3及び連結部4で構成している。
塗布部2は、両唇で挟むことのできる扁平形状であり、両表面における両唇で挟んだ際に両唇の中央が接する部位の近傍に吐出口21を設け、更に、吐出口21の周辺部分から塗布部2の前方端に至る部分に部分球状の曲面を有する凹状部22を設けている。
収納部3は、中空の容器であって、塗布部2を固定しかつ収納した液体化粧料を導流する首部31を有している。
連結部4は、塗布部2と収納部3の各々の接合方向の端面に対応する形状の板状部41の周縁に板状部41と直角に帯状部42を設けた形状を有し、板状部41には収納部3の首部31を通す為の貫通穴43を設けている。
【0011】
リップアプリケーター1は、収納部3の首部31を連結部4の貫通穴43を経て塗布部2の挿入穴23に挿入することにより形成する。
図5及び図6に示すように、塗布部2の挿入穴23は、吐出口21の内側に至るまで連続しており、液体化粧料の流路を形成している。
而して、本発明のリップアプリケーター1を使用する場合には、収納部3内の液体化粧料に圧を加えて、塗布部2の両表面の各々に設けた2つの吐出口21から適量の液体化粧料を圧出させた後、塗布部2の凹状部22を両唇で挟むことにより、両唇に液体化粧料を塗布することができる。唇に液体化粧料がはみ出さずに適量を塗布するためには、塗布部2が唇の挟み圧により追随して形が変化することのない程度の硬さにすることが好ましい。
【0012】
塗布部2における吐出口21の形状は、両唇で挟んだ際に両唇の中央が接する部位から、リップアプリケーター1を口内に挿入する方向に対して直角に交差する直線状又は弧状であるのが唇で挟む事により液体化粧料を広げるという観点から好ましい。吐出口21は片面に数個あってもよい。
液体化粧料を唇に塗布する方法は、液体化粧料の種類により、唇の中心のみに塗布する場合だけではなく、唇の中心に塗布した後で両唇を摺り合わせて塗り広げる場合や、唇全体に塗布する場合等、種々あるので、片面毎の吐出口21の面積(開口面積)の合計は、液状化粧料の粘度等に応じて調整する必要があるが、0.2〜65mm2が唇における塗布領域を調節する観点からは好ましい。なお、前記数値は、吐出口21がスリットの場合は開口した際の面積とする。
【0013】
吐出口21のアプリケーター先端部からの距離は、5〜15mmが唇に挟んだ際に適切な部位に液体化粧料が付着するため、好ましい。
又、裏面側の吐出口21から圧出された液状化粧料が液体化粧料の粘度によっては滴下する恐れがあるが、その場合には、裏面側の吐出口21の1個における面積を表面側の吐出口21の1個における面積よりも小さくすることも有効である。なお、「表面」は、上唇が当たる面を意味し、「裏面」は、下唇が当たる面を意味する。
更に、裏面側の吐出口21又は全ての吐出口21をスリットにし、唇に塗布する際に開口して液体化粧料が吐出される形にする事は、液体化粧料の滴下の恐れに対して有効である。
【0014】
塗布部2における凹状部22は、口を軽く開けることにより、口の中に挿入でき、両唇で挟み易くする部分であり、その厚み(表面から裏面までの厚み)は、1〜10mmが適当であり、その幅は、10〜50mmが適当である。なお、凹状部22の表面に液溜まり部を設ける事は、一度で満遍なく液体化粧料を塗布するのに有効である。液溜まり部は複数の凹溝、或いは複数の凸部を設けることによる。凹溝、凸部ともに点状であっても線状であっても差し支えない。
図7及び8では、液溜まり部24に多数の点状の凸部25を設けた状態を示している。
但し、塗布部2全体が前記の厚みと幅のものであれば、凹状部22は必ずしも設けなくともよい。
【0015】
収納部3は、前記のように、塗布部2の吐出口21から液体化粧料を圧出させるために、収納した液体化粧料に圧を加えることのできるものである必要があり、例えば目薬容器のように、指で挟むことにより弾性変形して液体化粧料に圧を加える形のものが適当であるが、繰り出し機構を有するものやボトル、チューブ等の、同等の機能を有するものであっても、差し支えない。圧出や塗布の簡便さという観点ではボトルやチューブが好ましく、吐出量調節の簡便さという観点からは、繰り出し機構を有するものとするのが好ましい。
【0016】
連結部4は、塗布部2と収納部3とを両側から挿着させて固定すると共に、塗布部2と収納部3との連結箇所を、装飾的に隠す役割を有するものであるが、塗布部2と収納部3とを確実に固定でき、首部31を中心に回転する等のことが起こらないのであれば、必ずしも用いなくとも差し支えない。
収納部3を不用意に押すことで液体化粧料が圧出されないために、ロック機構(閉鎖機構)を設けることが好ましい。ロック機構としては、通常に採用される形式のもので差し支えなく、例えば中栓のようなもので、液体化粧料の流路を閉鎖/開放する形式のものを挙げることができる。
【0017】
ロック機構を作動させる方式としては、リップアプリケーターの構成要素の一部を回転させる回転式とリップアプリケーターの構成要素の一部を引き上げる(スライドさせる)引き上げ式がある。円筒状であれば回転式でもよいが、扁平形状のリップアプリケーターの場合は、引き上げる形式のほうが好ましい。
引き上げ式においては、引き上げない場合は閉鎖されて気密を確保し、引き上げると液状化粧料の流路が開放され、圧出させることが可能となる構成をとる事ができる。一方で引き上げない場合は液状化粧料の流路が開放され、圧出させることが可能となり、引き上げると閉鎖されて気密を確保することが可能となる構成もとる事ができる。
【0018】
回転式は、流路の閉鎖/開放を行う部位(中栓)を回転で移動させる方式であるが、時計方向に回転させた場合は液状化粧料の流路が閉鎖されて気密を確保し、反時計方向に回転させた場合は、液状化粧料の流路が開放され、圧出させることが可能となる構成をとる事ができる。一方で、時計方向に回転させた場合は液状化粧料の流路が開放されて、圧出させることが可能となり、反時計方向に回転させた場合は閉鎖されて気密を確保することが可能となる構成もとる事ができる。
【0019】
図1〜8に示す例では、リップアプリケーター1は、全体として、外周縁が薄く中央部分が膨らんだ円盤と類似する形状を有しており、塗布部2及び収納部3は、それを半裁したような形状となっているが、必ずしもこれに限られるものではない。但し、塗布部2の方は、両唇で挟むには、このように、端部が弓形の形状が好ましいが、収納部3の方は、前記したように、繰り出し機構を有するものや、チューブ状や平面が円形、三角形、正方形、長方形、多角形その他の任意の形状のボトルを採用することができる。
又、図1〜8に示す例では、塗布部2は中実に成形しているが、吐出口21及び挿入穴23を設けてあれば、中空に成形しても差し支えない。
【0020】
なお、リップアプリケーター1の全体や、塗布部2及び/又は収納部3を覆うカバーを設け、収納部3を不用意に押して液体化粧料を圧出させてしまったり、吐出口21付近に残った液体化粧料に触れて衣服等を汚すこと等を防止することが適当である。カバーの固定及び気密を担保するため、両表面の吐出口21を挟み込むように嵌合させるカバーを設ける事が好ましい。
図7及び8に示したのは、塗布部2を覆うカバー5を設けた例であり、カバー5は、開口端を連結部4の帯状部42の片側に被せる形に挿入する形となっている。また、カバー5には、表面側の吐出口21及び裏面側の吐出口21に蓋をする2つの中足部51を設けている。中足部51は吐出口21に蓋をするような形で挟み込む事が好ましい。
この形状のカバーであれば、挟み込むためカバーの固定としても優れており、また吐出口21に蓋をするような形で挟み込むため、収納部3を不用意に押して液体化粧料を圧出させてしまうこと自体を防止することができ、吐出口21付近に残った液体化粧料が衣服等を汚すことも防止できる。更には気密を確保することもできるため、好ましい。
【0021】
本発明のリップアプリケーターは、熱可塑性樹脂を射出成形することにより製作するのが適当であり、天然ゴム、合成ゴム、ポリウレタン等の弾性材料、シリコーン、エラストマー、熱可塑性樹脂としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−メチルメタクリレート共重合体(EMMA)、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂(PC)、PET等のポリエステル樹脂、メタクリル酸エステル重合体等のアクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)等が使用できる、但し、全体、又は一部をアルミニウム、黄銅、鉄等の金属で製作することも可能である。
【0022】
本発明のリップアプリケーターは、リップグロス、リップエッセンスなど唇に塗布する種々の液体化粧料を適用することができるが、特に、リップグロスに適用することが好ましい。
また、適用する液体化粧料としては、常温(25℃)における粘度が1000〜100000Pa・sの液体である化粧料が好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明のリップアプリケーターは、上下の唇に対して、1動作で、同時に、かつ広い面ですばやく簡便に塗布することができ、且つコンパクトであり、リップグロス等の液体化粧料のリップアプリケーターとして、好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 リップアプリケーター
2 塗布部
21 吐出口
22 凹状部
23 挿入穴
24 液溜まり部
25 凸部
3 収納部
31 首部
4 連結部
41 板状部
42 帯状部
43 貫通穴
5 カバー
51 中足部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
唇に液体化粧料を塗布するリップアプリケーターにおいて、扁平形状の塗布部の両表面に、液体化粧料が圧出される吐出口があり、その周囲に液体化粧料を広げるための区画を設けてなる、リップアプリケーター。
【請求項2】
片面毎の吐出口の面積の合計が0.2〜65mm2である、請求項1に記載のリップアプリケーター。
【請求項3】
区画の幅が10〜50mmである、請求項1又は2に記載のリップアプリケーター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−213469(P2012−213469A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79889(P2011−79889)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)